説明

医用画像処理装置、医用画像処理方法

【課題】臓器領域を抽出するために記憶するデータ量を削減し、かつ正確に臓器領域の抽出を行う。
【解決手段】所望の抽出対象臓器の臓器名が入力されると(S71)、医用画像処理装置3は、入力された所望の抽出対象臓器の臓器名をキーとして記憶装置13の分割条件テーブル51を検索し、分割条件を決定し(S72)、決定された分割条件に基づいて分割される医用画像2に対して、第1の分割領域に含まれる画素数が最大、および/または第2の分割領域に含まれる画素数が最小となるように、臓器領域を抽出するための閾値を決定し(S73)、決定された閾値に従って閾値処理を行い、医用画像2の臓器領域を抽出する(S74)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像から臓器領域を抽出する医用画像処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、X線CT装置、MRI装置、超音波診断装置等の医用画像撮影装置によって取得された医用画像に対して、所望の臓器領域のみを抽出する画像処理方法が知られている。
例えば、特許文献1では、各画素の濃度などを基に画像の特徴量を算出し、算出した特徴量を予め記憶された各部位の特徴量と比較してマッチングさせることにより部位を認識することが記載されている(特許文献1の段落[0031] 参照)。また、特許文献1では、医用画像との対比に用いられる解剖図、および各解剖図の内容などを表す各属性をまとめて記録した属性情報を保持し(特許文献1の段落[0026]参照)、マッチングによって認識した部位と属性情報に記録された部位とが一致する解剖図を検索することが記載されている(特許文献1の段落[0044]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−73397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、臓器の大きさや形は個人差があり、全ての被検者に一致する特徴量や解剖図などのテンプレートを記録しておくことは、膨大な記録容量が必要となる。
また、同じ臓器であっても、臓器領域を示す画素値は、一般に撮影ごとに異なる。例えば、X線CT装置によって取得された腹部の断層像から肝臓を抽出する場合、肝臓領域を示すCT値は、装置の調整状況や撮影条件によって異なる。これらの違いを吸収するために統計的に算出された特徴量や解剖図などのテンプレートを使う場合、一致する率が低下してしまうため、正確な臓器領域の抽出を行うことができない。
【0005】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、臓器領域を抽出するために記憶するデータ量を削減し、かつ正確に臓器領域の抽出を行うことができる医用画像処理装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために第1の発明は、医用画像から臓器領域を抽出する医用画像処理装置であって、臓器ごとに、前記医用画像の領域の中で、当該臓器に関連付けられる領域である第1の分割領域と、前記第1の分割領域を除いた領域である第2の分割領域とに分割する分割条件を記憶する記憶手段と、前記分割条件に基づいて分割される前記医用画像に対して、前記第1の分割領域に含まれる画素の集合に基づく統計量、および/または前記第2の分割領域に含まれる画素の集合に基づく統計量に応じて、臓器領域を抽出するための閾値を決定する決定手段と、前記決定手段によって決定される前記閾値に従って閾値処理を行い、前記医用画像の臓器領域を抽出する抽出手段と、を具備することを特徴とする医用画像処理装置である。
【0007】
第2の発明は、医用画像から臓器領域を抽出する医用画像処理方法であって、臓器ごとに、前記医用画像の領域の中で、当該臓器に関連付けられる領域である第1の分割領域と、前記第1の分割領域を除いた領域である第2の分割領域とに分割する分割条件に基づいて分割される前記医用画像に対して、前記第1の分割領域に含まれる画素の集合に基づく統計量、および/または前記第2の分割領域に含まれる画素の集合に基づく統計量に応じて、臓器領域を抽出するための閾値を決定する決定ステップと、前記決定ステップによって決定される前記閾値に従って閾値処理を行い、前記医用画像の臓器領域を抽出する抽出ステップと、を含むことを特徴とする医用画像処理方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、臓器領域を抽出するために記憶するデータ量を削減し、かつ正確に臓器領域の抽出を行うことができる医用画像処理装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像処理システム1の概略構成を示す図
【図2】医用画像2の分割の一例を示す図
【図3】医用画像2の分割の一例を示す図
【図4】医用画像2の分割の一例を示す図
【図5】分割条件テーブル51の一例を示す図
【図6】臓器選択画面の一例を示す図
【図7】臓器領域抽出処理の一例を示すフローチャート
【図8】臓器選択画面の一例を示す図
【図9】臓器領域抽出処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
最初に、図1を参照しながら、本発明の医用画像処理装置3を適用した医用画像処理システム1の構成について説明する。
図1に示すように、医用画像処理システム1は、病院等に設置され、医用画像処理装置3、医用画像撮影装置5、画像データベース7等が、ネットワーク9を介して接続されている。
【0011】
医用画像処理装置3は、医用画像の画像処理を行うコンピュータである。
医用画像処理装置3は、CPU(Central Processing Unit)11、主メモリ12、記憶装置13、通信インタフェース(通信I/F)14、表示メモリ15、コントローラ16、表示装置17、マウス18、キーボード19等を備え、各部はバス20を介して接続されている。
【0012】
CPU11は、主メモリ12または記憶装置13等に格納されるプログラムを主メモリ12のRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス20を介して接続された各部を駆動制御し、医用画像処理装置3が行う各種処理を実現する。また、CPU11は、本発明の実施の形態において、臓器領域抽出処理を実行する。
【0013】
主メモリ12は、ROM(Read Only Memory)、RAM( Access Memory)等により構成される。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。また、RAMは、ROM、記憶装置13等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、CPU11が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0014】
記憶装置13は、HDD(ハードディスクドライブ)や他の記録媒体へのデータの読み書きを行う装置であり、CPU11が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、後述する処理を実行するためのアプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、CPU11により必要に応じて読み出されて主メモリ12のRAMに移され、各種の手段として実行される。
【0015】
通信I/F14は、通信制御装置、通信ポート等を有し、医用画像処理装置3とネットワーク9との通信を媒介する。また通信I/F14は、ネットワーク9を介して、画像データベース7や、他のコンピュータ、或いは、医用画像撮影装置5等との通信制御を行う。
【0016】
表示メモリ15は、CPU11から入力される表示データを一時的に蓄積するバッファである。蓄積された表示データは所定のタイミングで表示装置17に出力される。
表示装置17は、液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、表示メモリ15を介してCPU11に接続される。表示装置17はCPU11の制御により表示メモリ15に蓄積された表示データをディスプレイ装置に表示する。
【0017】
コントローラ16は、マウス18をバス20に接続させるためのインタフェースであり、マウス18とのデータの送受信を行う。
マウス18、キーボード19は、入力装置であり、ユーザからの指示を受け付けて、データの入力を行う。
ユーザは、表示装置17、マウス18、キーボード19等を使用して対話的に医用画像処理装置3を操作する。
【0018】
ネットワーク9は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、イントラネット、インターネット等の各種通信網を含み、医用画像処理装置3、医用画像撮影装置5、画像データベース7等の通信接続を媒介する。
【0019】
画像データベース7は、医用画像撮影装置5によって撮影された医用画像を蓄積して記憶するものであり、例えば病院や医療センター等のサーバ等に設けられる。
図1に示す画像処理システム1では、画像データベース7はネットワーク9を介して医用画像処理装置3に接続される構成であるが、医用画像処理装置3の記憶装置13に画像データベース7を設けるようにしてもよい。
医用画像撮影装置5は、X線CT装置、MRI装置、超音波診断装置等であり、医用診断に利用される画像を撮影する。
【0020】
次に、図2〜図5を参照しながら、本発明の実施の形態において記憶装置13に記憶されるデータについて説明する。
本発明の実施の形態では、医用画像処理装置3は、医用画像から、所望の臓器を示す画素群、すなわち所望の臓器領域を閾値処理によって抽出する。本発明の実施の形態では、臓器領域を抽出するための閾値は、予め記憶される値ではなく医用画像ごとに決定される。医用画像処理装置3は、医用画像ごとに閾値を決定するために、各臓器がどの辺りに存在しているのかという大まかな情報だけを記憶装置13に記憶しておく。より正確には、医用画像の領域の中で、各臓器に関連付けられる領域(以下、「第1の分割領域」という。)と、第1の分割領域を除いた領域(以下、「第2の分割領域」という。)とに分割するための分割条件を記憶装置13に記憶しておく。
そして、医用画像処理装置3は、第1の分割領域に含まれる画素数が最大、かつ第2の分割領域に含まれる画素数が最小となるように、臓器領域を抽出するための閾値を決定する。
尚、本発明の実施の形態によって抽出される臓器領域とは、肝臓、腎臓、脾臓などの臓器の領域だけでなく、骨、脂肪、筋肉などの組織の領域も含むものとする。
【0021】
図2〜図4には、分割条件に基づいて分割される医用画像2の一例が示されている。本発明の実施の形態において例示する医用画像2は、X線CT装置によって撮影され、再構成された腹部の断層画像である。但し、本発明の技術的思想は、医用画像2にのみ適用されるものではなく、画素値がある程度の分布を持つものであれば、装置、撮影条件、撮影箇所、画像処理の条件(断層画像であれば、例えば断層面の方向や位置)等によらず適用可能である。
分割条件は、(1)医用画像2を分割するための分割基準点、分割線、分割座標系、分割基準図形などを定義する分割方式、(2)分割方式によって分割された複数の分割領域の中から、第1の分割領域を特定するための特定条件、が含まれる。
【0022】
図2は、肝臓を抽出する場合の分割条件の一例を示している。
図2(a)における分割条件は、分割方式「分割基準点が腹部領域の重心21a、および分割線が分割基準点を通り、直交する2本の直線22a、23aによる分割」、特定条件「分割領域B」によって定義される。すなわち、第1の分割領域は、分割領域Bであり、第2の分割領域は、分割領域A、C、Dとなる。
分割基準点となる腹部領域の重心21aの座標は、医用画像処理装置3が、医用画像2ごとに、公知の技術(エッジ抽出処理)を用いて算出する。例えば、医用画像処理装置3は、エッジ抽出処理によって腹部と空気との境界を抽出し、腹部の内部を示す画素群を腹部領域とし、重心21aの座標を算出する。腹部と空気との境界を抽出する処理は、予め特徴量などを記憶しておかなくても、公知の技術によって正確に行うことが可能である。
【0023】
図2(a)を参照すれば分かるように、分割領域Bには肝臓を示す画素が多く、分割領域A、C、Dには肝臓を示す画素が少ないので、分割領域B(第1の分割領域)に含まれる画素数が最大、かつ分割領域A、C、D(第2の分割領域)に含まれる画素数が最小となるように閾値を決定し、決定された閾値を用いて閾値処理を行うことで、肝臓領域を抽出することができる。
腹部領域の重心21aを基準として分割しているので、性別、年齢などによって生じる臓器の大きさや形の個体差に関わらず、画一的に分割条件を定義し、記憶部13に記憶することができる。
【0024】
前述の閾値の決定処理は、次のように定式化できる。
閾値が上限と下限の2つの場合を考える。T(T1、T2)(T1<T2):閾値、pi(i=1、・・・、n):第1の分割領域に含まれる画素の画素値、qj(j=1、・・・、n):第2の分割領域に含まれる画素の画素値、s1={T1≦pi≦T2を満たす画素の総数}、s2={T1≦qj≦T2を満たす画素の総数}とすると、「第1の分割領域に含まれる画素数が最大、かつ第2の分割領域に含まれる画素数が最小となるように閾値を決定する」ことは、「s1/s2(第1の分割領に含まれる画素数を、第2の分割領域に含まれる画素数によって除した値)を最大にするT1、T2を求める」ことと定式化できる。
【0025】
尚、閾値決定処理を行う前に、医用画像2の一部を抽出するようにしても良い。例えば、公知の技術によって、腹部と空気との境界を抽出し、腹部の内部を示す画素群のみを抽出し、腹部の外部を示す画素(空気を示す画素)群は、閾値決定処理の対象外としても良い。
また、第1の領域が医用画像2全体の領域とほぼ等しい場合などの特殊な場合には、第1の分割領域に含まれる画素数が最大となるように閾値を決定しても良いし、第2の分割領域に含まれる画素数が最小となるように閾値を決定しても良い。すなわち、s1を最大にするT1、T2を求めても良いし、s2を最小にするT1、T2を求めても良い。
【0026】
図2(b)における分割条件は、分割方式「分割基準点が脊椎領域の重心21b、および分割線が分割基準点を通り、直交する2本の直線22b、23bによる分割」、特定条件「分割領域F」によって定義される。すなわち、第1の分割領域は、分割領域Fであり、第2の分割領域は、分割領域E、G、Hとなる。
分割基準点となる脊椎領域の重心21bの座標は、医用画像処理装置3が、医用画像2ごとに、公知の技術によって算出する。例えば、医用画像処理装置3は、一般的な骨のCT値の範囲を記憶装置13に記憶しておき、骨を示す画素群を抽出する。次に、医用画像処理装置3は、骨を示す画素が連結している領域(以下、「連結領域」という。)ごとに面積を算出し、脊椎に相当する面積を持つ連結領域(腹部の断層画像であれば、最も大きい面積を持つ連結領域)を脊椎領域とする。そして、医用画像処理装置3は、脊椎領域の重心21bの座標を算出する。骨のCT値は、他の臓器や組織と比較して差異が大きいことから、装置の調整状況や撮影条件によって生じる誤差も含めてCT値の範囲を定義しておけば良い。また、例えば、医用画像処理装置3は、後述する図3の例のように、本発明の実施の形態による閾値処理によって脊椎領域を抽出し、脊椎領域の重心21bの座標を算出しても良い。
図2(b)では、脊椎領域の重心21bを基準として分割しているので、性別、年齢などによって生じる臓器の大きさや形の個体差に関わらず、画一的に分割条件を定義し、記憶部13に記憶することができる。
【0027】
図2(a)と図2(b)を比較すると、分割領域Bよりも分割領域Fの方が肝臓を示す画素がより多いことが分かる。但し、断層画像のスライス位置(被検者の体軸方向の位置)によっては、分割領域Fよりも分割領域Bの方が肝臓を示す画素がより多いこともある。そこで、断層画像の場合、医用画像処理装置3は、スライス位置ごとに分割条件を記憶装置13に記憶するようにしても良い。
【0028】
図3は、極座標系を分割座標系とした角度分割を示している。
図3(a)では、分割基準点は腹部領域の重心31とする。そして、分割基準点が原点、直線32の位置が偏角θ=0度、直線33が動径の極座標系による分割を考える。
図3(b)のグラフは、横軸が「偏角θ」、縦軸が「動径上の画素群の中で所定の臓器を示す画素数」である。実線34は、肝臓を示す画素数を示している。また、点線35は、脊椎を示す画素数を示している。
実線34は、偏角θが150度から190度間がピークであるから、分割方式「分割基準点が腹部領域の重心31、および分割基準点を原点とした極座標系による角度分割」の場合、特定条件「偏角θ=150度から190度」と定義することで、肝臓を抽出する場合の分割条件となる。
また、点線35は、偏角θが250度から190度間がピークであるから、分割方式「分割基準点が腹部領域の重心31、および分割基準点を原点とした極座標による角度分割」の場合、特定条件「偏角θ=250度から290度」と定義することで、脊椎を抽出する場合の分割条件となる。
図3では、腹部領域の重心31を基準として分割しているので、性別、年齢などによって生じる臓器の大きさや形の個体差に関わらず、画一的に分割条件を定義し、記憶部13に記憶することができる。
尚、図3のように極座標による角度分割の場合であっても、分割基準点は、脊椎領域の重心としても良いことは言うまでもない。
【0029】
図4は、脾臓を抽出する場合の分割条件の一例を示している。
図4では、分割基準点は腹部領域の重心41とする。そして、分割基準点が原点、直線42の位置が偏角θ=0度、直線43、44が動径の極座標系による分割を考える。
図4における分割条件は、分割方式「分割基準点が腹部領域の重心41、分割基準点を原点とした極座標による角度分割、および分割基準点を同心とする2つの同心円45、46による分割」、特定条件「偏角θ=−30度から5度、および半径0.8×R0〜1.0×R0(R0は腹部内部を近似した円(以下、「分割基準円」という。)の半径)」によって定義される。
分割基準円は、医用画像処理装置3が、医用画像2ごとに、公知の技術を用いて算出する。例えば、医用画像処理装置3は、図2(a)の場合と同様に、エッジ抽出処理によって腹部と空気との境界を抽出し、腹部の内部を示す画素群を腹部領域とする。そして、腹部領域の面積から円の公式を用いて、分割基準円の半径R0を算出する。
【0030】
図4を参照すれば分かるように、前述の特定条件によって特定される領域(第1の分割領域)には脾臓を示す画素が多く、それ以外の領域(第2の分割領域)には脾臓を示す画素が少ないので、第1の分割領域に含まれる画素数が最大、かつ第2の分割領域に含まれる画素数が最小となるように閾値を決定し、決定された閾値を用いて閾値処理を行うことで、脾臓領域を抽出することができる。
【0031】
図4に示す例では、腹部内部を円によって近似し、分割基準円を定義したが、それ以外の図形、例えば楕円、長方形などの多角形によって近似して、分割基準図形を定義しても良い。楕円、多角形などの分割基準図形の算出処理は、円の場合と同様である。
従って、図4に示す例の分割条件をより一般化すると、分割条件は、分割基準図形の重心からの距離(図4に示す例であれば、同心円の半径)または方向(図4に示す例であれば偏角)に応じて決定されるものであっても良い。
分割基準図形の重心からの距離または方向に応じて分割することで、性別、年齢などによって生じる臓器の大きさや形の個体差に関わらず、画一的に分割条件を定義し、記憶部13に記憶することができる。
【0032】
図5は、前述した分割条件を臓器ごとに記憶する分割条件テーブル51を示している。分割条件テーブル51は、記憶装置13に記憶される。分割条件テーブル51は、1つのレコードが臓器名、分割方式、特定条件によって定義される。図5では、データ内容を模式的に「臓器1、分割方式1、特定条件1」等と示しているが、実際には、図2に示す例であれば、臓器名が「肝臓」、分割方式が「分割基準点が腹部領域の重心21a、および分割線が分割基準点を通り、直交する2本の直線22a、23aによる分割」、特定条件が「分割領域B」と定義される。
尚、分割方式は、複数の臓器で共通であっても良い。また、分割方式が複数の臓器で共通の場合、特定条件は、臓器間で一部の領域が重複するように定義されても良い。
【0033】
次に、図6〜図9を参照しながら、医用画像処理装置3による臓器領域抽出処理について説明する。
図6、図7に示す臓器領域抽出処理は、所望の抽出対象臓器の臓器名を受け付けることで、臓器領域抽出処理を実行する。
図6に示すように、医用画像処理装置3のCPU11は、医用画像2を表示装置17に表示するとともに、臓器リスト61を表示する。
図7に示すように、ユーザは、マウス18等を用いて、表示装置17に表示されるマウスポインタ62を移動し、臓器リスト61からいずれかの臓器名をクリックすることで、所望の抽出対象臓器の臓器名を入力する(S71)。
【0034】
次に、CPU11は、S71において入力された所望の抽出対象臓器の臓器名を検索条件として記憶装置13の分割条件テーブル51を検索し、分割条件(分割方式および特定条件)を決定する(S72)。
次に、CPU11は、S72において決定された分割条件に基づいて分割される医用画像2に対して、第1の分割領域に含まれる画素数が最大、および/または第2の分割領域に含まれる画素数が最小となるように、臓器領域を抽出するための閾値を決定する(S73)。
【0035】
次に、CPU11は、S73において決定された閾値に従って閾値処理を行い、医用画像2の臓器領域を抽出する(S74)。
次に、CPU11は、S74において抽出された臓器領域を記憶装置13に保存する(S75)。
CPU11は、保存された臓器領域に基づいて、所望の抽出対象臓器の領域が視認できるように、表示装置17に医用画像2に重畳して臓器領域の輪郭線を表示したり、臓器領域を着色表示したりする。また、CPU11は、保存された臓器領域をその他の画像処理のために用いる。
【0036】
図8、図9に示す臓器領域抽出処理は、医用画像2内における抽出対象臓器の位置情報を受け付けることで、臓器領域抽出処理を実行する。
図8に示すように、医用画像処理装置3のCPU11は、医用画像2を表示装置17に表示する。
図9に示すように、ユーザは、マウス18等を用いて、表示装置17に表示されるマウスポインタ81を移動し、医用画像2内をクリックすることで、抽出対象臓器の位置情報(x座標、y座標)を入力する(S91)。
【0037】
次に、CPU11は、S91において入力された抽出対象臓器の位置情報を検索条件として記憶装置13の分割条件テーブル51を検索し、抽出対象臓器を特定する(S92)。具体的には、CPU11は、分割条件テーブル51に記憶される分割条件に基づいて医用画像2を分割し、S91において入力された抽出対象臓器の位置情報が、特定条件に基づいて特定される第1の分割領域に含まれる臓器名を抽出対象臓器として特定する。
尚、S91において入力された位置情報によっては、抽出対象臓器が複数特定される場合がある。
【0038】
次に、CPU11は、S92において特定された抽出対象臓器の臓器名を表示装置17に表示する(S93)。S92において抽出対象臓器が複数特定された場合、CPU11は、複数の臓器名を表示する。
次に、ユーザは、マウス18等を用いて、表示装置17に表示されるマウスポインタを移動し、表示されている臓器名をクリックすることで、所望の抽出対象臓器を選択する(S94)。
以降、S95〜S98は、図7のS72〜75と同様である。
【0039】
以上、本発明の実施の形態では、医用画像処理装置3が、臓器ごとに、医用画像2の領域の中で、臓器に関連付けられる領域である第1の分割領域と、第1の分割領域を除いた領域である第2の分割領域とに分割する分割条件を記憶し、分割条件に基づいて分割される医用画像2に対して、第1の分割領域に含まれる画素数が最大、および/または第2の分割領域に含まれる画素数が最小となるように、臓器領域を抽出するための閾値を決定し、決定される閾値に従って閾値処理を行い、医用画像2の臓器領域を抽出する。
本発明の実施の形態に係る医用画像処理装置3によって、臓器領域を抽出するために記憶するデータ量を削減し、かつ正確に臓器領域の抽出を行うことができる。
【0040】
尚、前述の説明では、第1の分割領域に含まれる画素数と、第2の分割領域に含まれる画素数とによって閾値を決定したが、本発明の実施の形態ではこの例に限定されない。本発明の実施の形態は、第1の分割領域に含まれる画素の集合に基づく統計量、および/または第2の分割領域に含まれる画素の集合に基づく統計量に応じて閾値を決定すると一般化することができる。すなわち、定式化される閾値決定条件は、第1、第2の分割領域に含まれる画素数に加えて、第1、第2の分割領域に含まれる画素の集合に基づく平均、分散、最小値、最大値などが含まれるものであっても良い。
【0041】
また、前述の説明では、分割条件(分割方式および特定条件)は、全て記憶部13に記憶されているものとしたが、一部または全部の条件をユーザが入力できるようにしても良い。
例えば、ユーザが、表示装置17に表示されている医用画像2に対して、第1の分割領域をマウス18等で直接指定しても良い。また、ユーザが、腹部の重心、脊椎の重心などの分割基準点をマウス等で直接指定しても良い。また、ユーザが、分割線を直接指定しても良い。また、ユーザが、腹部などを近似する分割基準図形を決定しても良い。また、ユーザが、分割基準図形の大きさを直接指定しても良い。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る医用画像処理装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0043】
1………医用画像処理システム
2………医用画像
3………医用画像処理装置
5………医用画像撮影装置
7………画像データベース
9………ネットワーク
11………CPU
12………主メモリ
13………記憶装置
14………通信I/F
15………表示メモリ
16………コントローラ
17………表示装置
18………マウス
19………キーボード
20………バス
21a、31、41………腹部領域の重心
21b………脊椎領域の重心
22a、22b、23a、23b、32、33、42、43、44………直線
34………実線
35………点線
45、46………同心円
51………分割条件テーブル
61………臓器リスト
62、81………マウスポインタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像から臓器領域を抽出する医用画像処理装置であって、
臓器ごとに、前記医用画像の領域の中で、当該臓器に関連付けられる領域である第1の分割領域と、前記第1の分割領域を除いた領域である第2の分割領域とに分割する分割条件を記憶する記憶手段と、
前記分割条件に基づいて分割される前記医用画像に対して、前記第1の分割領域に含まれる画素の集合に基づく統計量、および/または前記第2の分割領域に含まれる画素の集合に基づく統計量に応じて、臓器領域を抽出するための閾値を決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定される前記閾値に従って閾値処理を行い、前記医用画像の臓器領域を抽出する抽出手段と、
を具備することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記医用画像を表示し、前記医用画像内における抽出対象臓器の位置情報を受け付ける受付手段と、
前記位置情報に基づいて前記分割条件を検索し、前記抽出対象臓器を特定する特定手段と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記分割条件は、被検者を示す画素群の重心または脊髄を示す画素群の重心を分割基準点とし、前記分割基準点を通る直線によって分割するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記分割条件は、被検者を示す画素群の重心または脊髄を示す画素群の重心を分割基準点とし、前記分割基準点を原点とした極座標系による角度分割であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記分割条件は、円、楕円または多角形のいずれかの図形によって被検者を示す画素群を近似して分割基準図形とし、前記分割基準図形の重心からの距離または方向に応じて分割するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記第1の分割領域に含まれる画素数を、前記第2の分割領域に含まれる画素数によって除した値が最大となるように、臓器領域を抽出するための閾値を決定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
医用画像から臓器領域を抽出する医用画像処理方法であって、
臓器ごとに、前記医用画像の領域の中で、当該臓器に関連付けられる領域である第1の分割領域と、前記第1の分割領域を除いた領域である第2の分割領域とに分割する分割条件に基づいて分割される前記医用画像に対して、前記第1の分割領域に含まれる画素の集合に基づく統計量、および/または前記第2の分割領域に含まれる画素の集合に基づく統計量に応じて、臓器領域を抽出するための閾値を決定する決定ステップと、
前記決定ステップによって決定される前記閾値に従って閾値処理を行い、前記医用画像の臓器領域を抽出する抽出ステップと、
を含むことを特徴とする医用画像処理方法。

【図1】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−55392(P2012−55392A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199521(P2010−199521)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】