説明

医用画像表示装置及び血流動態の分布像構成方法

【課題】撮像対象における血流動態を容易に認識することができない。
【解決手段】撮像対象の断層面に対する画像データを構成する画像データ構成部と、画像データから時間変化曲線を演算する時間変化曲線演算部と、時間変化曲線の特徴点を規定するパラメータを演算するパラメータ算出部と、パラメータから血流動態の時間軸情報を含む分布像を構成する分布像構成部とを有する医用画像表示装置を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内の医用画像に基づいて、撮像領域内の血流動態を反映した分布像を作成する医用画像表示装置及び分布像構成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、 MRI(Magnetic Resonance Imaging)やCT(Computed tomography)と共に医療分野で汎用的に用いられている診断装置の一つである。超音波診断装置は、小型、高空間分解能、高時間分解能等の特徴がある。さらに近年では、造影剤の普及に伴う血管造影技術や腫瘍造影技術の発達により、超音波診断装置を用いた診断性能の向上が期待されている。
【0003】
腫瘍周辺や内部の血流は、病変の有無だけでなくその組織の性状を示し、鑑別診断に重要な情報を与える。これまでは、血管の画像の取得に、X線による CTA(CT-Angiography)が主に用いられている。 CTAではヨード造影剤を静注し、血管内を造影剤が通過している段階で取得した複数のX線画像を再構成することにより、血管構造を立体的に可視化する。しかし、 CTAは被爆や造影剤による副作用の問題を含んでいる。
【0004】
一方、超音波を用いる画像診断手法は、撮像の際に被爆等の侵襲を伴わない特徴がある。また、造影剤には直径数μmの微小気泡が使用されるため造影剤自体に毒性がないという特徴がある。さらに、造影剤は時間の経過に伴って体が自然に備える代謝機能により体外に排出されるため患者の負担が少ないという特徴がある。造影剤は、医用分野で利用される数MHz の超音波に共振して強い非線形信号を発する。このため、非線形信号を特異的に検出して画像化することにより、微細な血管構造も高いコントラストで描出することができる。
【0005】
造影剤は超音波照射に対する挙動の違いから高音圧型と低音圧型に大別される。高音圧型は高音圧(メカニカル・インデックス:MI1.0〜1.9)の超音波照射により気泡を圧壊させ、その際に発せられる非線形信号により画像を構成する場合に用いられる。照射毎に造影剤が消失するため、同一領域の造影を観察するには撮像面を適宜変える必要がある。一方、低音圧型は(MI0.1〜0.9)の超音波照射により気泡を圧壊させずに共振させて得られる非線形信号で画像構成を行なう場合に用いられる。このため、低音圧型の造影剤の特性により持続的な造影効果が発揮され、同一領域の継続的な観察が可能になる。
【0006】
一部の造影剤は、動脈及び門脈と中心静脈を結ぶ類洞に存在するクッパー細胞の貪食作用を受ける。従って、造影剤が肝臓組織に充満した状態で超音波照射を行なうと、クッパー細胞が正常に機能している領域が高輝度に染影される。この染影を観察すると、腫瘍等の病変領域を輝度の欠損(defect)として識別できる。さらに輝度の高さや染影の持続時間は、クッパー細胞の機能を評価する一つの指標となる。このため、肝臓の機能診断にも有効と考えられている。
【0007】
このように、造影画像は微細な血管構造を観察する場合だけでなく、組織の機能を判断する上でも有効であり、腹部領域を中心に広く普及してきている。上述したように、低音圧型の造影剤は、超音波の照射によって共振し、非線形信号を発する。そのため造影効果が持続し、染影の経過を同一撮像面で観察することができる。
【0008】
染影過程は組織によって異なり、例えば正常な肝臓の場合、動脈、門脈、静脈の各血管がその経路の違いにより異なる時相で染影し、その後、肝臓組織が染影する。しかし腫瘍がある場合、血管増生や活性の程度に応じて異なる染影過程を呈する。このため、染影の動態を詳細に観察すれば、染影過程の様子から腫瘍の性状を知ることができる。このような組織による染影過程の違いは、心臓を起点とした血液の流路、流量、速度といった血流の変動、つまり血流動態を示している。
【0009】
染影過程の違いを定量化する上で重要な指標となるのが、造影剤の流入に伴う輝度の時間変化をプロットした時間輝度変化曲線(TIC: Time-Intensity Curve)である。例えば肝臓腫瘍の場合、腫瘍血管が動脈と門脈のどちらを起点にして形成されているかが鑑別上重要であるが、動脈は門脈に沿って走行しているため、門脈の染影が始まると両者の判別は単一の造影画像では困難である。しかし、各血管の TICを比較することで染影過程の違いを評価でき、腫瘍血管の起点となる血管を客観的に判断できる。
【0010】
特許文献1は、高低の各音圧を組み合わせた送信シーケンスで計測した TICから輝度平均値等の指標値を算出し、その値に応じて色分けされた画像を提示する技術に関する。 TIC計測は、造影剤が充満した組織に対する高音圧の超音波照射をトリガに開始し、撮像面内に再環流する造影剤の染影過程を低音圧照射に基づいて計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005-81073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上述した従来技術には、領域毎の血流動態を比較するために、動画を繰り返し再生しながら目視観察を行う必要があり、情報の客観性に欠ける、複数の領域を同時に観察できない、操作者の負担が大きい等の問題がある。また、組織の性状を評価するには心臓を起点とする血流動態の観察が重要であり、投与した造影剤が本来の血流の環流に沿って流れ、組織に到達した時点からの染影経過を観察する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、撮像対象の画像データのRF信号の時間変化曲線を演算により求めた後、当該時間変化曲線の特徴点を与えるパラメータを演算により求め、当該パラメータに基づいて血流動態の時間軸情報を含む分布像を構成する技術を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、血流動態における時間軸情報の違いを分布像として表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】超音波診断装置の構成例を示す図(実施例1)。
【図2】造影剤の投与からカラーマップ画像の表示に至る処理工程までを説明する図(実施例1)。
【図3】TICの計測例と平滑化処理例を説明する図(実施例1)。
【図4】表示形態の一例を示す図(実施例1)。
【図5】ナビゲーション画面の表示例を示す図(実施例1)。
【図6】カラーマップ画像の表示形態例を示す図(実施例1)。
【図7】カラーマップ画像を並列表示させた場合の表示形態例を示す図(実施例1)。
【図8】カラーマップ画像の表示範囲の変更入力例を説明する図(実施例1)。
【図9】カラーレンジの変更入力例を説明する図(実施例1)。
【図10】カラーレンジの変更入力例を説明する図(実施例1)。
【図11】カラーレンジ外の情報をカラーレンジ内の情報に重畳させる画像例を示す図(実施例1)。
【図12】カラーマップ画像に背景画像を重畳させる画像例を示す図(実施例1)。
【図13】TICの波形を簡略化するための処理概要を説明する図(実施例1)。
【図14】位置補正ベクトル演算部を有する超音波診断装置の構成例を示す図(実施例1)。
【図15】超音波診断装置の構成例を示す図(実施例2)。
【図16】異なる撮像面の位置関係を説明する図(実施例2)。
【図17】各撮像面の画像データによる三次元カラーマップの構成例を示す図(実施例2)。
【図18】位置補正ベクトル演算部を有する超音波診断装置の構成例を示す図(実施例2)。
【図19】位置補正処理動作を説明する図(実施例1)。
【図20】位置補正処理動作を説明する図(実施例2)。
【図21】位置補正処理を用いる TICの計測動作を説明する図(実施例1)。
【図22】TICの平滑化による位置補正処理を説明する図(実施例1)。
【図23】画像データの保存トリガを説明する図(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、後述する装置構成や処理動作の内容は発明を説明するための一例であり、本発明は、後述する装置構成や処理動作に既知の技術を組み合わせた発明や後述する装置構成や処理動作の一部を既知の技術と置換した発明も包含する。以下では、医用画像表示装置の一形態である超音波診断装置について説明する。
【0017】
(A)実施例1
以下に、本発明の実施例1を説明する。ここでは、医用画像として2次元画像(断層画像)を表示する場合について説明する。
【0018】
(全体構成)
図1に、実施例1に係る超音波診断装置のブロック構成例を示す。図1に示す超音波診断装置は、探触子2、送信ビームフォーマ3、受信ビームフォーマ4、A/D変換器5、D/A変換器6、TGC(time gain compensation)7、包絡線検波部8、スキャンコンバータ(SC)9、画像メモリ10、 TIC演算制御部11、TIC演算部12、描画情報入力部13、パラメータ算出部14、表示情報入力部15、分布像構成部16、表示部17で構成される。
【0019】
探触子2は、撮像対象1に対して超音波信号を送受信するデバイスである。例えば圧電素子で構成される。送信ビームフォーマ3及び受信ビームフォーマ4は、探触子2を構成する圧電素子に所望の送受信ビームが形成されるように所定の時間遅延を与えるデバイスである。A/D変換器5及びD/A変換器6は、送受信信号をデジタル変換又はアナログ変換するデバイスである。TGC7は、超音波信号が生体内部を伝播する過程で生じる振幅減衰を補正するデバイスである。包絡線検波部8は、受信したRF信号を検波して画像信号に変換するデバイスである。SC9は、画像信号から二次元の画像データを構成するデバイスである。画像メモリ10は、SC9で構成された画像データを所定のサンプリング間隔で保存するデバイスである。 TIC演算制御部11は、画像データのサンプリング間隔の設定、 TIC計測を行なう関心領域の設定等、 TICの計測処理に関係のある制御動作を実行するデバイスである。 TIC演算部12は、 TIC演算制御部11で設定される制御内容に基づいて TICを計測するデバイスである。描画情報入力部13は、 TICから算出するパラメータを指定するためのデバイスである。パラメータ算出部14は、 TIC演算部12で計測した TICから前記描画情報に対応するパラメータを算出するためのデバイスである。表示情報入力部15は、表示部17に表示されるカラーマップ画像や TICの表示形態を変更するためのデバイスである。分布像構成部16は、パラメータに基づいてカラーマップ画像を構成するためのデバイスである。表示部17は、分布像構成部16で構成したカラーマップ画像を表示するためのデバイスである。
【0020】
(画像データ構成部の処理動作)
図1では、探触子2による超音波の受信から画像データの構成までの処理動作を実行するシステムを画像データ構成部と呼び、対応する部分を破線で囲んで示している。画像データ構成部で構成される画像は、汎用的に使用されている超音波診断装置の白黒画像(Bモード)や造影剤画像(送受信シーケンスやフィルタ処理等により造影剤からの信号を強調した画像)を指し、その構成手法は一般的に既知である。このため、以下では簡単に説明する。
【0021】
探触子2の超音波照射面は、複数の圧電素子が一列に配列された1次元アレイの構成を有し、各素子が超音波の送受信を担う。各圧電素子には、送信ビームフォーマ3から与えられる電圧パルスがD/A変換器6を介して入力され、各圧電素子の圧電振動によって撮像対象1に向けて超音波が照射される。この時、各圧電素子には所定の時間遅延が電子的に与えられており、各圧電素子から送信された超音波は撮像対象1の内部の所定の位置で焦点を結ぶ。撮像対象1で反射された超音波(反射エコー)は各圧電素子で受信され、伝播過程で生じた信号の減衰分を補正するためにTGC7で伝播距離に応じた振幅補正が実行される。続いて、受信信号はA/D変換器5を介して受信ビームフォーマ4に送られ、焦点位置から各圧電素子までの距離に応じた遅延時間を掛けて加算結果が出力される(整相加算)。
【0022】
造影剤からの信号を強調して画像化する手法には、例えば互いの位相が反転した2つの信号を送信し、その受信信号を加算する方法が良く知られている。受信信号の加算により組織成分が主に含む基本周波数成分が抑圧される一方で、造影剤からの信号が主に含む高調波成分は増強される。
【0023】
超音波の送受信を、圧電素子列に沿った全ての走査線で行なうことで、撮像対象1の2次元的な反射エコー分布が得られる。受信ビームフォーマ4からは実部と虚部に分けられたRF(Radio Frequency)信号が出力され、包絡線検波部8に送られる。包絡線検波部8に送られた信号は、ビデオ信号に変換された後、SC9に出力される。SC9は、入力したビデオ信号の走査線間に画素補間を加え、二次元の画像データに再構成する。再構成された画像データは、表示部17に表示される。
【0024】
(カラーマップの構成動作)
次に、SC9で構成された画像データによる TICの計測及び血流動態を反映したカラーマップ画像の構成に至るまでの処理工程を、図2に示すフローチャートに従って説明する。
【0025】
(工程0)
まず操作者は、一般的な使用方法で探触子2を操作しながら表示部17に表示される画像データを確認し、着目する領域に撮像面を確定する。この状態で、造影剤が投与される。造影剤の投与は操作者等の指示に従って実行される。
【0026】
(工程1)
この後、適切なタイミングで、撮像面の画像データが画像メモリ10に保存される。保存の開始及び終了は、超音波診断装置の操作パネル上に設置された TICスイッチに対する操作者の操作入力等を通じて実行される。なお、画像データの保存開始トリガは、 TIC演算部12とSC9に出力される。SC9は、保存開始トリガを入力すると、画像メモリ10に対する画像の保存を開始する。
【0027】
ここで、 TICスイッチを探触子2に設けると、操作者の操作性を更に向上することができる。また、取得した画像データとその直前に取得した画像データを比較し、輝度変化が大きくなった時点から自動的に画像データの保存を開始する機能(すなわち、自動的に保存開始トリガを発生する機能)を超音波診断装置内に搭載すると、操作性を更に向上することができる。
【0028】
例えば以下に示す処理機能を搭載する。まず、取得した画像とその直前に取得した画像のデータ値の差分を画素毎に計算し、それらの総和を算出する。次に、算出された総和が例えば 0.5秒(フレームレート20の時、10フレームに相当)に亘って増大を続けるか否かを判定し、該当する事象の検出時点から画像データの保存を自動的に開始する。
【0029】
なお、造影剤の流入開始から輝度上昇までには一般に数秒を要する。また、動脈と門脈、その他の血管に造影剤が流入するまでの時間差も、造影剤の流入開始から1秒以上を要する。このため、前述したように流入開始から 0.5秒の時点から画像データを取得したとしても、各血管の血流動態を反映した画像データを取得することができる。
【0030】
もっとも、図23に示すように、取得された画像データは自動的に保存し、操作者の手動操作に基づいた又は前述した自動機能に基づいた保存開始トリガの入力時点から予め設定された秒数(1秒から数秒)だけ遡った時点以降の画像データを残し、それ以前の画像データを廃棄するシステムを採用すれば、造影剤の流入開始以前の画像データも保存することができる。
【0031】
この実施例の場合、画像メモリ10に保存する画像データのサンプリング間隔は、操作者が予め TIC演算制御部11に設定する。 TICを高精度に計測するためには、SC9で構成される全ての画像データを保存することが好ましい。しかし、搭載された又は搭載可能な画像メモリ10の記憶容量に制限がある場合、画像データを取得するフレームレートを考慮してサンプリング間隔を設定し、画像メモリ10に対する負荷を低減する必要がある。造影剤の流入に伴う画像データ上の輝度上昇は数秒で平衡状態に至る。このため、少なくても4Hz程度のサンプリングは必要である。例えばフレームレートが20Hzの場合、少なくとも5フレーム毎の割合で画像データを保存する。
【0032】
(工程2)
次に、 TIC演算部12は、画像メモリ10に保存した画像データ(画像サイズ(xmax*ymax))を構成する単一画素(x,y)(x=1…xmax,y=1…ymax)に着目し、図3に示すように、取得した全ての時系列の画像データから同じ位置にある画素の輝度値f(f1(x,y),f2(x,y)…fn(x,y))を計測する。なお、横軸に時間、縦軸に輝度値を設定し、計測した輝度値をプロットすると図3の中段に示すように各画素(x,y)に対応する輝度変化曲線( TIC)が得られる。
【0033】
ここで、 TICは超音波造影前からの輝度変化が重要になる。このため、各時点の輝度値fi(x、y)(ただし、iは自然数)と初期値f1(x,y)との差分値を計算し、“0”を差分値の始点とする。ただし、初期値f1(x,y)の情報は保持されるので、操作者は必要に応じ、差分値fi(x,y)から元の TICを復元して確認することができる。 TICの計測は、画像メモリ10に保存した画像データの画素を単位として実行しても良く、予め設定された画素範囲を単位として実行しても良い。
【0034】
なお、予め設定した画素範囲を単位とする場合には、該当領域の平均輝度値を TICに用いれば良い。また、 TICの計測範囲(すなわち、画像の構成範囲)は、操作者が画像データ上に設定する関心領域の範囲に限定して実行しても良い。関心領域の設定は、画像データの保存を開始する前に、表示部17に表示される画像データ上に予め設定しても良く、画像データの保存を終了した後に表示部17に表示される画像データ上で設定しても良い。画像データの保存を開始する前に関心領域を設定する場合には、画像メモリ10に保存する画像データ自体を関心領域の範囲に限定することも可能であり、この場合には、画像メモリ10の負荷を低減できる。 TICの計測範囲を限定する関心領域の情報は、 TIC演算制御部11に入力される。
【0035】
次に、 TIC演算部12は、計測された TICに対する平滑化処理を実行する。図3の下段に平滑化処理のイメージを示す。平滑化処理は、 TICの時間軸方向への平均化処理であり、画素の位置ずれやノイズの影響で生じる輝度の起伏が低減される。この実施例の場合、計測した TICのサンプリング点数を維持するために、以下に示すように、 TICの各時間ti(i=1,2,…)に対する輝度値Itiを算出する。例えば輝度値Itiを5点平均化として求める場合、平滑化処理後の各時間の輝度値を、It1=(It1+It2+It3+It4+It5)/5、It2=(It2+It3+It4+It5+It6)/5…のように各時点から連続する5点の平均値として計算する。なお、工程2における TICの計測処理は、画像メモリ10に保存した画像データに対して関心領域を設定する場合を除き、画像データの保存と同時に実行される。
【0036】
ところで、 TIC演算部12による TICの計測時には、患者の体動や操作者の手振れが大きいと画像データ内で撮像対象の位置ずれが生じ、 TICの計測誤差が生じ得る。この位置ずれを補正するため、超音波診断装置には位置補正ベクトル演算部を搭載することが望ましい。図14に、位置補正ベクトル演算部18を備えた超音波診断装置の構成例を示す。なお、図14には、図1との対応部分に同一符号を付しており、位置補正ベクトル演算部18以外は、図1に示す超音波診断装置と同一の装置構成を有している。
【0037】
この位置補正ベクトル演算部18は、必要に応じ、 TIC演算部12による計測処理の前段階で位置補正処理を実行する。位置の補正処理は、一般に知られるパタンマッチング処理を適用する。まず、位置補正ベクトル演算部18は、取得された最初の画像データ上に位置補正の基準となる基準領域を設置する。次に、位置補正ベクトル演算部18は、位置補正の対象となる画像データ上に探索領域を設定する。探索領域の中心位置は、基準領域と同じであり、その大きさは補正すべき位置ずれの大きさに応じて操作者が任意に設定する。
【0038】
図19に、位置補正ベクトル演算部18による補正動作イメージを示す。位置補正ベクトル演算部18は、図19に示すように、探索領域から基準領域と同一と見なせるマッチング領域を探索し、マッチング領域の中心位置と探索領域の中心位置とを結ぶベクトルを位置補正ベクトルとして計測する。マッチング領域の探索方法には、例えば探索領域内で基準領域を一画素ずつずらしながら差分絶対値の総和を計算し、その値が最小となる領域とする方法を使用する。探索の指標とする値は、前述した差分絶対値の総和の他に、最小二乗和や相互相関演算による相関値等がある。
【0039】
この後、 TIC演算部12は、保存した各画像データから輝度値を読み取る際に、計測した位置補正ベクトルに応じて読み取る画素位置を調整する。これにより、撮像対象の位置ずれの影響を抑制した TIC計測を実現することができる。図21では、位置補正機能のイメージを示す。図21の上段に位置補正機能が無い場合のイメージを示し、図21の中段に位置補正機能がある場合のイメージを示す。図中、ft0は基準となる画像データ、ft1、ft2、ft3、ft4、ft5は位置補正の対象となる画像である。また、観察ターゲット211、 TICの計測位置212、各画像データ上における観察ターゲット211の位置座標を示す。
【0040】
位置補正をしない場合(図中上段)、位置ずれによる観察ターゲット211の位置変化に関わらず TICの計測位置212は固定である。このことは、図中下段に示す TICの計測に使用する画素位置が、全ての時点tで同じ画素(x0,y0)であることからも確かめられる。この場合、観察ターゲット211と TICの計測位置212が一致しないため、輝度値の計測時に誤差が生じる。一方、位置補正を実行する場合(図中中段)、観察ターゲット211の位置変化に追従して TICの計測位置212も移動する。このことは、図中下段に示す TICの計測に使用する画素位置が、時点tの経過と共に変化することからも確かめられる。この場合、観察ターゲット211と TICの計測位置212が一致するため、正確な TIC計測が可能となる。
【0041】
この他、 TICの起伏が位置ずれによって生じることを前提にし、隣接する TICから平滑化に近づく輝度を選択することにより、位置ずれの影響を補正する方法もある。具体的な処理内容を、図22を用いて以下に説明する。図22には、補正対象の画素(x0,y0)及びそれに隣接する2つの画素(x1,y1)、(x2,y2)の時刻t0 からt8 に至る輝度変化のそれぞれを、丸印、三角印、四角印で示している。
【0042】
図22においては、位置ずれを補正する前の TICを破線で示す。図22の場合、 TICは、時刻t3 からt8 にかけて起伏が大きい。一方、位置ずれを補正した後の TICでは、時刻t1 の輝度値を、時刻t1 に対応する各画素(x0,y0)、(x1,y1)、(x2,y2)の輝度値のうち時刻t0 と時刻t2 の輝度値の平均値に最も近い値を選択的に用いている。同様に、時刻t2 の輝度値は、時刻t2 に対応する各画素(x0,y0)、(x1,y1)、(x2,y2)の輝度値のうち時刻t1 と時刻t3 の輝度値の平均値に最も近い値を選択的に用いている。この処理を繰り返し、着目する画素の TICの起伏を周囲の画素の輝度値で補正して平滑化する。これにより、図22の実線に示す TICが計測される。図に示すように、起伏が取り除かれている。
【0043】
なお、この実施例では、隣接する2つの画素について補正処理を実行する例を説明したが、補正時に参照する画素の個数に制限は無く、例えば隣接する8個全ての画素を用いて補正処理を実行しても良い。ただし、補正精度と処理負荷との間にはトレードオフの関係があり、補正に用いる画素の数は、処理時間との兼ね合いで決定することが望ましい。
【0044】
(工程3)
工程3では、血流動態を示すカラーマップの構成処理が開始される。この工程3は、操作者が操作パネル上又は表示画面上の所定のスイッチに対する操作入力によって描画情報入力部13を起動することで開始される。描画情報入力部13の起動と同時に、画像メモリ10に保存した画像データが時系列順に動画像として表示部17に再生される。表示する再生画像はSC9から表示部17に表示される画像を、データ圧縮して保持したものでも良い。
【0045】
再生される造影画像上に関心領域を設定すると、図4に示すように、関心領域ROI の TICが表示画面41に並べて表示される。関心領域ROI は任意の位置に複数個設置することができる。複数の TICを画面上に表示する場合には、 TICの並列表示と重畳表示を自由に選択できる。また、操作者が指定する関心領域ROI 又は TICだけを重畳表示し、それ以外の TICについては並列表示する等、表示の形態は操作者が自由に編集できる。図4の表示例は、ある2つの関心領域ROI に対応する 2つの TICを重畳的に表示し、その他4つの関心領域ROI に対応する TICについては並列表示する例を示している。
【0046】
(工程4)
工程4では、表示された TICを利用して、操作者が描画情報を選択入力する。描画情報の選択入力は、図5に示すように、ナビゲーション画面51に基づいて実行される。図5は、ナビゲーション画面の一例を示している。ナビゲーション画面51には、適当な TIC( TICの模式図又は表示画面41を構成するいずれかの TIC)と、代表的な描画情報が表示される。なお、ナビゲーション画面51の画面上には、各描画情報と TICの物理量(値、範囲等)との関係を、操作者が容易に理解できるように、各描画情報に付された識別用の符号(図5の場合には、数値)付きの線分や網掛けが TICの表示領域に重複して表示される。
【0047】
図5の場合、以下に説明する描画情報(1) から(9) が、操作者の選択入力用に表示される。描画情報(1) は、流入開始時間である。流入開始時間は、静脈から投与した造影剤が関心領域ROI に流入して染影が開始される時間を示す。描画情報(2) は、平衡輝度到達時間である。平衡輝度到達時間は、造影剤が充分に環流して輝度値が平衡状態に至った時間を示す。描画情報(3) は、消失開始時間である。消失開始時間は、平衡状態から造影剤が消失して TICの低下が開始する時間を示す。描画情報(4) は、持続時間である。持続時間は、 TICが閾値とする輝度に到達してから造影剤の消失によって閾値を割り込むまでの時間、換言すると TICが閾値を越えている時間長を示す。描画情報(5) は、閾値輝度到達時間である。閾値輝度到達時間は、閾値とする輝度に到達する時間を示す。描画情報(6) は、 TIC上昇率である。 TIC上昇率は血流速を反映した指標であり、染影開始から平衡状態に至るまでの TICの時間変化率で与えられる。描画情報(7) は、TIC下降率である。 TIC下降率は、造影剤の消失速を反映した指標であり、平衡状態から TICが下降する際の TICの時間変化率で与えられる。描画情報(8) は、平衡輝度である。平衡輝度は、血流量を反映した指標で造影剤が充分に環流して平衡状態に至った際の輝度値である。描画情報(9) は、積分値である。積分値は、 TICを計測する間の総流量を示唆する指標であり、 TICの時間積分値(図5の網掛け領域)である。
【0048】
操作者は、表示部17に表示されるポインタを操作して、画面上で所望の番号を選択することにより、描画情報を操作入力する。描画情報入力部13は、選択的に操作入力された描画情報及び対応する TIC上の番号を画面上で強調表示し、操作者による選択項目の識別を容易にしている。図5の場合には、強調表示に下線を使用している。なお、その他の強調表示として対応文字の太字化、着色などを使用する。
【0049】
なお、ナビゲーション画面51上における描画情報の表示の順番は、操作者が過去に選択した頻度や画像診断(例えば腫瘍診断)の重要性等に基づいてランク付けすることが可能であり、操作者が自由に変更することができる。また、閾値輝度到達時間や持続時間を算出する際に必要な閾値は、例えば TIC上に設置される矢印(図5の(5)または(4)を示す矢印)を動かして画面上から設定することができる。この実施例の場合、閾値の設定時には、指定位置の輝度値が画面表示される。輝度値が数値として表示されることで、感覚によらない閾値の設定が可能となる。
【0050】
勿論、ナビゲーション画面51を構成する描画情報は一例であり、項目の追加、削除、表示される文面の変更の他、 TICに基づいて計測できる描画情報を新たに定義する等、描画情報は操作者が自由に編集できる。
【0051】
(工程5)
この工程では、工程4で操作入力を通じて選択された描画情報に対応するパラメータを、パラメータ算出部14によって算出する。パラメータの算出には、典型的な TICの特徴を有する関数を規定し、計測した TICを規定した関数の形に簡略化することで算出する。図13に、パラメータ算出部14による算出イメージを示す。図13には、計測された TIC(破線)と規定の関数で簡略化した TIC(実線)とを示す。規定する関数は、輝度値0から始まり、第1時点で線形的に上昇し、第2時点で平衡状態の輝度値に達し、その後一定の時間平衡状態となった後に第3時点で線形的に下降する形とする。すなわち、 TICの形状を線分の組み合わせで近似した関数を想定する。
【0052】
まず、パラメータ算出部14は、第1時点から第2時点の輝度上昇を示す傾きを算出する。この際、パラメータ算出部14は、測定期間の全範囲に対応する輝度値を時間平均化した平均輝度値Iavgと当該平均輝度値の1/2(すなわちIavg/2)を TICに基づいて算出し、 TICが各輝度値を与える時間tupavg、tupavg/2とtdownavg、tdownavg/2を求める。ここで、時間tupは TICが上昇する期間の時間を意味し、時間tdownは TICが下降する期間の時間を意味する。
【0053】
各時間が求まると、パラメータ算出部14は、輝度変化の傾き(単位時間当たりの輝度変化)を算出する。輝度が上昇する期間の傾きは TICの上昇率であり、輝度が下降する期間の傾きは TICの下降率である。ここで、 TICの上昇率は、(Iavg−Iavg/2)/(tupavg−tupavg/2)として計算され、 TICの下降率は、(Iavg−Iavg/2)/(tdownavg−tdownavg/2)として計算される。
【0054】
次に、パラメータ算出部14は、算出された傾き(上昇率)とその算出に使用した2点を通る直線(関数)を求め、輝度値が“0”になる時点を算出する。パラメータ算出部14は、算出された時点を第1時点とする。この時間は流入開始時間に対応する時間である。
【0055】
続いて、パラメータ算出部14は、平均輝度値Iavgを与える上昇期間の時間tupavgと下降期間の時間tdownavgの間を計算範囲に定め、当該計算範囲について測定された TICの輝度平均値を改めて算出する。パラメータ算出部14は、この輝度平均値を、 TICの平衡状態を与える輝度値(平衡輝度値)とする。
【0056】
平衡輝度値が算出されると、パラメータ算出部14は、 TICの上昇期間における傾きの算出に使用した2つの計測点を通る直線が平衡輝度値に達する時点を第2時点とし、 TICの下降期間における傾きの算出に使用した2つの計測点を通る直線が平衡輝度値に達する時点を第3時点とする。
【0057】
なお、前述した計算処理において、下降期間における TICの輝度値がIavg/2に達しない場合は、第2時点から平衡状態が持続すると仮定し、第3時点の時間を計測の終了時間、輝度は平衡輝度値とする。以上の計算により、パラメータ算出部14は、流入開始時間、平衡輝度到達時間、消失開始時間、 TIC上昇率、 TIC下降率、平衡輝度を自動的に算出することができる。
【0058】
因みに、持続時間、閾値輝度到達時間、積分値は、操作者が閾値を入力すれば、上述したような簡略化処理を適用しなくても、測定された TICから直接算出することができる。このため、持続時間、閾値輝度到達時間、積分値については、前述したような簡略化処理は必ずしも必要でない。しかし、前述したような TICの特徴を示す関数に閾値を適用すれば、描画情報の変更を即座にカラーマップに反映させることができる。
【0059】
パラメータ算出部14は、算出したパラメータを画像メモリ10に格納する。もっとも、各画素について算出される全てのパラメータを画像メモリ10に格納すると、画像メモリ10の容量負荷が大きくなる。そこで、画像メモリ10の負荷を低減するために、画像データを構成する各画素において保存する情報を、 TICの簡略化処理で算出した TICの初期値、第1時点、第2時点、第3時点、 TIC下降率に制限しても良い。これら5つの情報があれば各画素の TICの概略は再現でき、カラーマップ画像の構成が可能である。
【0060】
なお、前述の説明では、 TICの変化を線分で近似したが、以下に示すように任意の関数を用いて近似することもできる。例えば第1時点以降における平衡輝度をA、時間をt、造影剤の流入に伴う輝度変化率をβとする関数y=A(1−e―βt)を規定し、一般的に知られるフィッティング処理で TICの特徴を与えるA及びβを演算により算出しても良い。また、造影剤の流入開始時間をパラメータt0として導入し、関数y=A(1−e―β(t+t0))とし、0<t<t0 においてy=Aとすれば、造影剤が流入する前段階からのデータに対するフィッティング処理も可能となる。
【0061】
(工程6)
この工程では、前工程で算出されたパラメータの各値の大きさに応じて色分けされたカラーマップ画像が構成される。カラーマップ画像は分布像構成部16が作成し、表示部17の画面上に表示する。図6に、カラーマップ画像を含む表示画面41の表示形態例を示す。図6に示す表示画面41は、保存された画像データに当たる造影画像の表示部、選択した関心領域ROI に対応する TICの表示部、描画情報の表示部、操作者によって選択された描画情報に基づいて作成されたカラーマップ画像の表示部とで構成される。
【0062】
なお、描画情報の表示部では、操作者により選択された1つ又は複数の描画情報が、その他の描画情報と区別可能に強調表示される。図6は、流入開始時間が選択された例であり、対応文字が太線で囲むように表示されている。また、 TICの表示部には、操作者によって選択された描画情報に対応する位置又は対応する物理量を表す矢印が表示される。図6の場合、流入開始時間を示す矢印が示されている。図6の場合、造影画像中で選択された関心領域ROI が2つであるので、対応する2つの TICが重複的に表示されている。さらに、図6における TICは、関心領域ROI に存在する画素に関する TICの平均値に対応する。
【0063】
カラーマップ画像の表示部は、造影画像を構成する画素毎に、操作者が選択した描画情報について算出されたパラメータの値に応じた色を付して表示する。この色分けされた画素の集合がカラーマップ画像である。図6は、流入開始時間の違いを色分けで示すカラーマップ画像の例である。カラーマップ画像の近傍位置にはカラーバーが付随的に表示される。カラーバーは、パラメータと色との関係を例示的に示す。図6の例は、色が濃いほど流入開始時間が速いことを示す。なお、パラメータと色との対応関係は操作者が自由に変更することができ、例えば色の階調やパラメータの大小と色の濃淡等の対応付けを変更することができる。カラーバーは「遅い」、「速い」といった定性的な情報だけでなく、実際に算出したパラメータの数値のように定量的な情報を表示することもできる。
【0064】
関心領域の位置や描画情報は、操作者がポインタ等を用いて画面上で自由に変更することができる。また、複数個の描画情報が操作者により選択された場合、図7に示すように、表示画面41には、各描画情報に対応するカラーマップ画像が並列的に表示される。複数のカラーマップ画像を同じ表示画面41内に並列的に表示させることで、血流量や流入開始時間の違いの比較が容易になる。
【0065】
例えば肝臓腫瘍の場合、腫瘍血管の起点となる血管、腫瘍組織の血流量等が診断上重要な情報になるが、流入開始時間、平衡輝度又は積分値等の描画情報によるカラーマップ画像を並列表示して比較することで、例えば動脈を起点に増生されている血管、腫瘍組織の分布や密度等を評価できる。
【0066】
表示画面41に表示する情報は、 TIC、描画情報、造影画像、カラーマップ画像等の中から操作者が自由に組み合わせることができ、各情報に対応する表示部の配置や表示部の大きさは操作者が自由に編集できる。
【0067】
(カラーマップ画像の表示形態の変更)
次に、カラーマップ画像の表示形態の変更手法について説明する。カラーマップ画像の表示形態の変更は、カラーバーに基づいて行う場合、 TICに基づいて行う場合、カラーマップ画像に基づいて行う場合がある。なお、カラーマップ画像の表示に使用するパラメータの使用範囲を調整することで、例えば適当に狭めることで類似した血流動態を示す領域を強調して表示することができる。
【0068】
まず、カラーバーに基づいて表示形態を変更する場合を、図9を用いて説明する。なお、図9は、閾値輝度到達時間についてカラーマップ画像の表示例である。この場合、表示形態の変更のためには、カラーバーの近傍に表示された2つの矢印が操作される。2つの矢印の指定により、カラーマップ画像上で着目する色の領域、すなわちパラメータの範囲を限定的に指定できる。矢印位置の修正により、色の最適化を実行できる。
【0069】
例えば閾値輝度到達時間のカラーマップ画像に対して表示レンジを5秒から15秒に限定すると、限定された範囲内で色の再配分を実現できる。同時に、 TICの表示部には、操作者により限定された範囲が分かるように、限定された領域が識別可能に表示される。図9では、限定された5秒から15秒の範囲が網掛けによって表示されている。
【0070】
次に、 TICに基づいて表示形態を変更する場合を説明する。この場合、前述した TIC上の網掛け範囲をポインタにより調整することにより、すなわち評価する時間や輝度の範囲を調整することにより実現できる。この変更例の場合、網掛け範囲の調整に伴い、カラーマップ画像の表示が追従的に変化する。また、 TICに基づく表示形態の変更では、以下に示すような機能も実現できる。通常、造影剤が還流しない領域では正確なパラメータを算出できない。このため、これらの領域部分がカラーマップ画像上にノイズとして表示される場合がある。そこで、そのような場合には、造影剤が環流しない領域をカラーマップ画像から除く領域ために、 TICに閾値となる輝度を設定し、これを超えない領域をカラーマップ画像上で0に指定すれば、カラーマップ画像の視認性と表示される情報の精度を高めることができる。もっとも、カラーマップ画像に必要に応じてメディアンフィルタを適用し、カラーマップ画像からモザイクノイズを除去し、視認性を向上させても良い。
【0071】
次に、カラーマップ画像に基づいて表示形態を変更する場合について説明する。この手法に対応する操作画面例を図8に示す。図8は、カラーマップ画像上に関心領域81を設定することにより、表示形態を変更する手法を説明する。この手法の場合、操作者によって設定された関心領域81の範囲内で色の再配分が決定され、決定された色配分が画面全体に適用される。この手法は、着目する領域の範囲の色のレンジを拡大できるため、パラメータの僅かな違いを色の違いで明瞭に区別できる。
【0072】
また、図10に示すように、カラーマップ画像上にポインタ等で基準領域を設定し、当該基準領域に対応するパラメータの値を基準として、パラメータ間の色を再配分することも可能である。なお、図10は、流入開始時間を示すカラーマップ画像の場合について表している。このカラーマップ画面上で、操作者が基準領域として特定の血管を指定すると、カラーバーには対応する色の位置が矢印で表示される。図10は、0秒から20秒を表示レンジとするカラーバーを表しているが、指定された血管領域のパラメータに対応する8秒の位置に矢印が表示されている。基準領域が確定されると、8秒以降のパラメータで色の再配分がなされ、カラーマップ画像が再構成される。なお、カラーバーの表示レンジは、基準領域に指定された8秒から20秒の範囲に再設定される。因みに、カラーバーの近傍には、変更前のパラメータの値と共に、基準領域に対応するパラメータを0秒とした換算値も併記される。図10では、括弧内に換算値が示されている。この場合も、カラーマップ画像上で指定されたパラメータの範囲は、図10に示すように、 TIC上に網掛け等の指定範囲を識別できる形態で表示される。勿論、 TIC上の指定範囲を変更することにより、パラメータの使用範囲を調整することもできる。この処理により基準となる血管に対する造影剤の流入開始のタイミングの違いを詳細に評価できる。
【0073】
その一方で、カラーマップ画像上での領域変更やパラメータの範囲変更により、カラーバーのレンジから外れる領域部分はカラーマップ画像上から消失するため、全体像の把握がむしろ困難になる場合がある。そこで、欠落した情報を補足するために、欠落した情報を表示するための色をカラーバーに設定し、カラーマップ画像に重畳させて補うことができる。例えば図10に示す流入開始時間のカラーマップ画像の場合、パラメータを8秒以降に限定することで、0秒から7秒の情報は欠落する。そこで、図11に示すように、8秒から20秒のパラメータで構成されるレンジ内画像と共に、0秒から7秒のレンジ外画像を用意し、両者を重畳した重畳画像を構成して表示画面41に表示しても良い。
【0074】
上述したカラーマップ画像の表示形態の変更は、カラーバー、 TIC又はカラーマップ画像のいずれかを起点に実行しているが、それぞれの変更は他の表示部にも反映される。
【0075】
また、再生画像から特定の造影画像を選択し、この造影画像と演算処理を通じて構成したカラーマップ画像とを重畳的に表示させることもできる。図12に、この種の表示例を示す。この場合、背景画像には、保存した画像に対して血管強調等の画像処理を行った画像を利用することもできる。背景画像には、例えば各画素で計測した TICの最大輝度又は TICの平均輝度を算出して血管構造を強調した画像を用いることができる。また、構成したカラーマップ画像同士を重ねて表示することも可能である。また、組織弾性を示す画像やCT画像、MRI画像などを背景画像として重畳することもできる。このように、背景画像は特に限定されない。
【0076】
(まとめ)
前述したように、この実施例に係る超音波診断装置を用いれば、カラーマップ画像に加え、ドプラや造影画像等の一般的に知られる超音波画像、CT画像、 MRI画像等の医療画像を同一画面内に並列的に表示又は重畳的に表示させることができ、操作者又は観察者による観察領域の観察が容易な表示形態を実現できる。
【0077】
特に、血流動態に関係する治療法の効果判定においては、治療前後のカラーマップ画像を並列表示することが有効である。例えばレーザー、薬剤、高音圧超音波その他により腫瘍の栄養供給路となる血管を遮断し、下流の腫瘍を壊死させる治療法がある。この治療の効果判定では、術後の血流の再還流の有無だけでなく、再還流があった場合、その血流が動脈性か門脈性かが重要な観察項目となる。動脈性の場合は血管の閉塞不足、門脈性の場合は迂回血管の再形成が疑われ、各々に応じて追加治療の内容が変わる。従って、治療前後のカラーマップ画像を並列表示し、両者の血流動態を正確に比較することができる実施例に係る超音波診断装置の採用により、診断精度の向上と治療効果の向上を実現することができる。
【0078】
なお、前述の説明では、 TIC演算制御部11、描画情報入力部13、表示情報入力部15のそれぞれに対して、操作者が個別に情報を入力するものとして説明したが、入力する情報を初期設定値として予め入力しておけば、操作者の入力作業を省略することもできる。すなわち、探触子による画像データの取得から画像表示までの一連の処理を自動化することができる。
【0079】
その際、臨床上での用途別に初期設定の内容をパッケージ化にしておけば、操作者による初期設定作業を簡略化することができる。例えば肝臓の腫瘍診断を用途とする場合、腫瘍血管と腫瘍組織の性状を知ることが重要な診断項目となる。つまり心臓を起点にした腫瘍血管と腫瘍組織の染影開始のタイミングや肝臓のクッパー細胞が取り込む造影剤の量等が重要な指標となる。例えば図5の例であれば、9つの描画情報の中から流入開始時間、持続時間、積分値等の最低限必要と考えられる描画情報の組み合わせを、肝臓の腫瘍診断用のパッケージとして用意する。この場合、操作者は、この肝臓の腫瘍診断用のパッケージを選択するだけで、操作者は細かい設定を行わなくても必要な情報を表示部17に自動的に表示させることができる。
【0080】
(B)実施例2
次に、本発明の実施例2を説明する。この実施例では、実施例1に記載の技術を、三次元画像の表示に拡張する場合について説明する。すなわち、医用画像として3次元画像を表示する場合について説明する。
【0081】
(全体構成)
図15に、実施例2に係る超音波診断装置のブロック構成図を示す。なお、図15に対しては、図1との対応部分に同一符号を付して示す。実施例2に係る超音波診断装置は、探触子2、送信ビームフォーマ3、受信ビームフォーマ4、A/D変換器5、D/A変換器6、TGC(time gain compensation)7、包絡線検波部8、スキャンコンバータ(SC)9、画像メモリ10、 TIC演算制御部11、TIC演算部12、描画情報入力部13、パラメータ算出部14、表示情報入力部15、分布像構成部16、表示部17、送信制御部19で構成される。
【0082】
図15に示す超音波診断装置の場合、送信制御部19が追加される点で実施例1の超音波診断装置と異なっている。従って、その他の構成要素については、実施例1と実施例2は、基本的に同じである。ただし、この実施例に係る超音波診断装置では、三次元情報を撮像できる探触子2を使用する。探触子2は三次元情報を撮像できるものであれば、形状、内部構成、動作態様について特に制限は無い。例えば実施例1に記載の1次元アレイの探触子にモータ等の駆動装置を備えて探触子を機械的に動かすものや二次元アレイを持つ探触子であれば良い。
【0083】
送信制御部19は、複数の異なる断面の画像データを取得するための送信シーケンスを制御するデバイスである。このため、送信制御部19は、送信ビームフォーマ3を制御対象とする。送信シーケンスは、三次元情報を取得する領域の大きさ(方位方向、深さ方向、スライス方向)と画像データのフレームレート、 TICを計測する際のサンプリング間隔によって決まる。 TICのサンプリング間隔は、実施例1でも記載したように4Hz程度必要である。そのため画像データのフレームレートが20Hzの場合には、スライス方向の異なる位置で最大5断面の撮像が可能である。三次元情報を取得するスライス方向の領域幅を5mmに設定した場合、各撮像断面の間隔は1mmとなり、この値が、探触子2をスライス方向に移動する際の間隔として設定される。撮像断面の枚数や TICのサンプリング間隔を増大させるには、画像データを取得するフレームレートを上げれば良く、そのためには方位方向又は深さ方向の領域幅を狭める等、着目する領域が含まれるように操作者の用途に応じて調整する。
【0084】
(カラーマップ画像の構成動作)
探触子2を通じて取得される画像データに基づいた TIC計測、描画情報の入力、パラメータの算出及び表示部17に表示される各種情報の表示形態については、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0085】
次に、カラーマップ画像の三次元表示を実現する分布像構成部16の処理動作について説明する。図16に撮像時の操作例を示す。図16は、1次元アレイの探触子2をスライス方向(矢印方向で示す。)に移動させることにより、第1撮像面から第5撮像面の5つの異なる位置で撮像対象を撮像する場合を仮定する。送信シーケンスは、第1撮像面から第5撮像面まで順に撮像し、これを1スキャンとして操作者が計測を終了するまで繰り返す。取得した画像データは、図17に示すように撮像断面毎に振り分けられ、 TIC計測とパラメータの算出が行なわれた後、二次元のカラーマップ画像が構成される。
【0086】
各カラーマップ画像にはメディアンフィルタ等のノイズ除去フィルタが適用される。構成した二次元のカラーマップ画像は撮像時の各撮像面の位置間隔で立体的に配置される。撮像断面の間に生じる空間は線形補完処理等により画素の補完がなされ、三次元カラーマップ画像が構成される。カラーマップ画像の三次元化により、組織による血流動態の違いを立体的に観察できる。
【0087】
勿論、実施例2の場合にも、 TIC計測の際に生じる撮像対象の位置ずれの影響を低減することが望ましい。図18に、位置補正ベクトル演算部18を搭載した超音波診断装置の構成例を示す。図18は、図14に示す実施例1の構成に対応する。しかし、図18に示す超音波診断装置は、探索範囲が三次元に拡張される点で異なる。
【0088】
この実施例の場合、三次元化処理では、図20に示すように、図16又は図17の第3撮像面に基準領域を設定する。まず、同一撮像面内、つまり第3撮像面内に属する他の複数の撮像面の間で、基準領域と位置補正の対象となる画像データとの差分絶対値が最小となる位置を探索する。
【0089】
次に、隣接する第2撮像面及び第4撮像面の画像データから、先に探索を行った画像データと同一時相(スキャン)で取得した画像データを選択し、探索領域を設定して評価指標の最小値を算出する。この後、各撮像面において算出した最小値を比較し、最小となる領域がマッチング領域となり、位置補正ベクトルが確定する。
【0090】
着目する画素の TICを周囲の画素の TICと比較し、平滑化する手法も実施例1と同様にして適用される。補正に用いる画素は同一撮像面から選択しても良く、隣接する他の撮像面から選択しても良い。時刻毎の輝度の選択方法は、実施例1に記載の方法と同様である。なお、三次元のカラーマップ画像は、CT画像や MRI画像と並列的に表示又は重畳的に表示させることも可能である。
【0091】
(C)まとめ
実施例に係る超音波診断装置は、撮像対象に超音波を送受信するための探触子2と、探触子により取得した信号に基づいて画像データを構成する画像データ構成部と、画像データを保存するための画像メモリ10と、画像データの取得の制御と TICの計測を制御する TIC演算制御部11と、画像データ上の輝度値から TICを計測する TIC演算部12と、カラーマップ画像の構成に必要とされる、 TICの特徴点を与えるパラメータを TICから算出するパラメータ算出部14と、パラメータから血流動態を反映したカラーマップ画像を構成する分布像構成部16と、分布像構成部で構成したカラーマップ画像を表示する表示部17と、表示された画像の表示形態を変更するための表示情報入力部15を有することを特徴とする。この特徴により、撮像対象の血流動態のうち時間軸情報を反映したカラーマップ画像を自動的に作成して操作者又は観察者に提供することができる。
【0092】
また、 TIC演算制御部11には、保存する画像データに対する関心領域の設定やサンプリング間隔の設定機能を搭載することが望ましい。この設定機能により、画像データの保存や TIC計測の処理工程に関係する制御を実行できる。
【0093】
また、 TIC演算部12における TICの計測では、計測点の数を維持した時間方向の平均化処理により平滑化することが望ましい。平滑化により、ノイズその他の特異点情報を取り除くことができる。
【0094】
また、 TIC演算部12における TICの計測処理は、保存した画像データの全画素又は予め設定する領域毎に実行されることが望ましい。領域の設定は、処理負荷や画像メモリ10の容量負荷を考慮して選択することが望ましい。なお、全画素について TICを計測すると、撮像対象1についての精細な画像情報を取得できる。一方、TICの計測範囲を限定したり、 TICを計測する単位領域を複数画素に拡大する場合には、処理負荷や容量負荷の削減を実現できる。
【0095】
また、 TIC演算部12は、造影剤の環流により出現する輝度変化の特徴点を、事前に設定した簡略化された近似関数を用いて計測することにより、 TICの特徴点の算出に要する処理負荷を大幅に低減することができる。
【0096】
また、 TIC演算部12が特徴点の計測に使用する近似関数は、計測開始から第1時点までは一定値で、第1時点から第2時点まで線形的に上昇し、第2時点から第3時点までは一定値となり、第3時点から線形的に下降する形状であること、又は計測開始から第1時点まで一定値で、第1時点以降は、平衡輝度A、時間t、造影剤の流入に伴う輝度変化をβとして一般的に知られる TICを表す関数y=A(1−e−βt)で与えられることが望ましい。
【0097】
また、前述した超音波診断装置は、操作者が画像診断に必要とする描画情報を入力するための描画情報入力部13を有することが望ましい。描画情報入力部13を通じてパラメータ算出部14で算出すべき描画情報を指定することで、パラメータ算出部14におけるパラメータ算出のための処理負荷と算出されたパラメータを用いるカラーマップ画像が描画されるまでの時間の短縮とを実現できる。
【0098】
ここでの描画情報の入力は、表示部17に表示されるナビゲーション画面に表示される描画情報及び描画情報を示す情報を反映した TICに対する操作者の入力により実現されることが望ましい。また、描画情報の入力は、予め描画情報を設定することにより省略されることが望ましい。
【0099】
また、ナビゲーション画面又は描画情報における表示項目の追加、削除、文面の変更等は、操作者が自由に編集できることが望ましい。
【0100】
また、表示部17には取得した画像データに対応する静止画像又は動画像が表示され、操作者が静止画像又は動画像上に設定する関心領域ROI に対応する TICが静止画像又は動画像と並列的に表示又は重畳的に表示されることが望ましい。なお、重畳表示する TICは、操作者による関心領域ROI 又は TICの指定により特定される。
【0101】
また、描画情報入力部13に入力される情報は、造影剤の流入開始時間、平衡輝度到達時間、造影剤の消失開始時間、造影剤の持続時間、予め設定する閾値に到達する時間、輝度上昇率又は下降率、平衡状態の輝度、総流量等の血流動態に関係する情報であることが望ましい。
【0102】
また、パラメータ算出部14で算出されるパラメータは、描画情報入力部13に入力された情報を反映したものであり、造影剤の還流に伴う輝度変化を示す TICから算出される値であることが望ましい。
【0103】
また、分布像構成部16で構成される分布像は、パラメータ算出部14で算出されたパラメータの値に応じて色分けされたカラーマップ画像であることが望ましい。
【0104】
また、表示部17におけるカラーマップ画像の表示形態は、描画情報、取得した画像データの静止画像又は動画像、操作者が指定する関心領域の TIC、カラーマップ画像のうち、表示する情報の組み合わせや配置、大きさを操作者が自由に編集できることが望ましい。
【0105】
また、分布像構成部16で構成されるカラーマップ画像は、操作者がカラーマップ画像上に設定する関心領域ROI の範囲内で色レンジを最適化できることが望ましい。
【0106】
また、分布像構成部16は、カラーマップ画像に付属するパラメータの値と表示色との関係を示すカラーバー上の範囲を矢印等で指定することにより、指定範囲に含まれる領域についてカラーマップ画像を再構成することが望ましい。この機能の搭載により、表示色のレンジを最適化できる。なお、分布像構成部16は、カラーマップ画像上に基準領域を指定することにより、基準領域を基準としたカラーマップ画像を再構成機能を搭載することが望ましい。また、分布像構成部16は、着目する領域の TIC上に対する操作入力の検出時、カラーマップ画像に表示するパラメータの範囲を限定できる機能を搭載することが望ましい。
【0107】
また、表示情報入力部15は、計測した TIC、保存した画像データ、構成したカラーマップ画像等の情報に基づいて、表示する描画情報の組み合わせや表示サイズの大きさ、背景画像や再構成した画像同士の組み合わせ等に関する表示形態全般の情報を受け付け、受け付けた情報を分布像構成部16又は表示部17に反映させることが望ましい。
【0108】
また、分布像構成部16には、着目するパラメータの範囲に含まれるカラーマップ画像と含まれないカラーマップ画像の両方を構成し、着目する領域と着目領域に含まれない領域を色の濃淡や色の配分で区別した後、両画像を重畳的に表示する機能を搭載することが望ましい。
【0109】
また、分布像構成部16には、異なる描画情報で構成したカラーマップ画像、超音波画像、 MRI画像、CT画像、 PET画像その他同一の撮像対象を映す画像を、背景画像として組み合わせて表示する機能を搭載することが望ましい。
【0110】
また、分布像構成部16には、取得した画像データを用いて血管強調等の画像処理を行った画像を背景画像とし、その上にカラーマップ画像を重ねて表示する機能を搭載する異が望ましい。
【0111】
また、描画情報入力部13及び表示情報入力部15は、操作者が入力する情報を術前に予め設定することが可能であり、また設定内容を保存して次回に反映させることができることが望ましい。
【0112】
また、描画情報入力部13は、ナビゲーション画面に表示する描画情報を、操作履歴上での選択頻度や診断上の重要性に基づくランク付けにより設定でき、又は操作者が自由に並び替えて表示できることが望ましい。
【0113】
また、前述した超音波診断装置は、算出されたパラメータに基づいて血流動態を反映した三次元カラーマップ画像を構成する分布像構成部16を有することが望ましい。三次元的な表示により、血流動態の識別性を高めることができる。この場合、探触子2は、一次元アレイ型の探触子にモータ等の駆動部が備えられたもの、二次元アレイ型の探触子等の複数の異なる撮像面における画像データを取得できるものを用いることが望ましい。
【0114】
また、分布像構成部16において構成される三次元カラーマップ画像は、異なる撮像面で構成された二次元のカラーマップ画像を立体的に組み合わせて構成したものであることが望ましい。
【0115】
また、 TIC演算部12による TICの計測は、位置補正ベクトル演算部18による撮像対象の空間上の位置ずれの補正後に実行することが望ましい。
【0116】
また、分布像構成部16で構成される三次元カラーマップ画像は、異なる描画情報で構成した三次元カラーマップ画像、超音波画像、 MRI画像、CT画像、 PET画像その他同一の撮像対象を映す画像を、背景画像として組み合わせて表示することが望ましい。
【0117】
(D)他の実施例
前述の実施例では、本発明を超音波診断装置に応用する場合について説明した。すなわち、超音波を用いて撮像された画像データ上の輝度変化を TICとして画素単位で計測し、 TICに基づいて算出されるパラメータをカラーマップ画像に変換する場合について説明した。しかし、本発明の特徴は、画像データの取得方法ではなく、取得された画像データに対する信号処理にある。従って、本発明は、超音波画像以外のデジタル画像、例えば MRI画像、CT画像等のデジタル画像の処理にも適用できる。
【0118】
また、各実施例では、輝度値を処理対象として血流動態の時間軸情報を含む分布像を構成しているが、輝度値に変換する前のRF信号を処理対象としても良い。RF信号を処理対象とする場合には、RF信号の時間変化曲線を演算により求め、その特徴点を規定するパラメータに基づいて血流動態の時間軸情報を含む分布像を構成すれば良い。
【符号の説明】
【0119】
1…撮像対象、2…探触子、3…送信ビームフォーマ、4…受信ビームフォーマ、5…A/D変換器、6…D/A変換器、7…TGC、8…包絡線検波部、9…SC、10…画像メモリ、11… TIC演算制御部、12… TIC演算部、13…描画情報入力部、14…パラメータ値算出部、15…表示情報入力部、16…分布像構成部、17…表示部、18…位置補正ベクトル演算部、19…送信制御部、41…表示画面、51…ナビゲーション画面、211…観察ターゲット、212… TICの計測位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象の断層面に対する画像データを構成する画像データ構成部と、
前記画像データから時間変化曲線を演算する時間変化曲線演算部と、
前記時間変化曲線の特徴点を規定するパラメータを演算するパラメータ算出部と、
前記パラメータから血流動態の時間軸情報を含む分布像を構成する分布像構成部と、
を有する医用画像表示装置。
【請求項2】
前記撮像対象に対応する前記画像データ間の位置補正ベクトルを演算する位置補正ベクトル演算部を更に有し、
前記時間変化曲線演算部は、前記位置補正ベクトルにより位置補正した画像データに基づいて時間変化曲線を計測する
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像表示装置。
【請求項3】
操作者の操作を通じて描画情報を入力する描画情報入力部を更に有し、
前記パラメータ算出部は、入力された前記描画情報に基づいて血流動態の分布像を構成のためのパラメータを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像表示装置。
【請求項4】
前記描画情報は、血流動態に関係する情報である造影剤の流入開始時間、平衡輝度到達時間、造影剤の消失開始時間、造影剤の持続時間、予め設定する閾値に到達する時間、輝度上昇率、輝度下降率の少なくとも一つである
ことを特徴とする請求項3に記載の医用画像表示装置。
【請求項5】
前記パラメータ算出部は、前記時間変化曲線の特徴点のうち、入力された前記描画情報に対応する特徴点について、血流動態の分布像を構成するためのパラメータを算出する
ことを特徴とする請求項3に記載の医用画像表示装置。
【請求項6】
前記分布像構成部は、前記パラメータの値に応じた色分けにより、前記分布像としての二次元又は三次元のカラーマップ画像を構成する
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像表示装置。
【請求項7】
操作者により表示情報を入力する表示情報入力部を更に有し、
前記分布像構成部は、前記描画情報、取得した画像データの静止画像又は動画像、関心領域の時間変化曲線、前記パラメータに応じた色分けに基づいて血流動態の分布像を構成する請求項1に記載の医用画像表示装置。
【請求項8】
画像データ構成部が、撮像対象の断層面に対する画像データを構成する工程と、
時間変化曲線演算部が、前記画像データから時間変化曲線を演算する工程と、
パラメータ算出部が、時間変化曲線の特徴点を規定するパラメータを演算する工程と、
分布像構成部が、パラメータから血流動態の時間軸情報を含む分布像を構成する工程と、
有することを特徴とする血流動態の分布像構成方法。
【請求項9】
位置補正ベクトル演算部が、前記撮像対象に対応する前記画像データ間の位置補正ベクトルを演算する工程を更に有し、
前記時間変化曲線を演算する工程は、前記位置補正ベクトルにより位置補正した画像データに基づいて時間変化曲線を計測する
ことを特徴とする請求項8記載の血流動態の分布像構成方法。
【請求項10】
操作者の操作を通じて描画情報を入力する工程を更に有し、
前記パラメータを演算する工程は、入力された前記描画情報に基づいて血流動態の分布像を構成するためのパラメータを算出する
ことを特徴とする請求項8に記載の血流動態の分布像構成方法。
【請求項11】
前記描画情報が、血流動態に関係する情報である造影剤の流入開始時間、平衡輝度到達時間、造影剤の消失開始時間、造影剤の持続時間、予め設定する閾値に到達する時間、輝度上昇率、輝度下降率の少なくとも一つである
ことを特徴とする請求項10に記載の血流動態の分布像構成方法。
【請求項12】
前記パラメータを演算する工程は、前記時間変化曲線の特徴点のうち、入力された前記描画情報に対応する特徴点について、血流動態の分布像を構成するためのパラメータを算出する
ことを特徴とする請求項10に記載の血流動態の分布像構成方法。
【請求項13】
前記血流動態の分布像を構成する工程は、前記パラメータの値に応じた色分けにより、前記分布像としての二次元又は三次元のカラーマップ画像を構成する
ことを特徴とする請求項8に記載の血流動態の分布像構成方法。
【請求項14】
前記カラーマップ画像には、色と前記パラメータの値との対応関係を示すカラーバーが付属されており、前記カラーマップ画像に表示するパラメータの値の範囲又は色の使用レンジは、画面上での操作入力を通じて操作者が自由に変更できる
ことを特徴とする請求項13に記載の血流動態の分布像構成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−110211(P2011−110211A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269121(P2009−269121)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】