説明

医療用コネクタ

【課題】簡単な構造で、かつ、一定の剛性を確保しつつ、省スペース化および小型化ならびにロック解除の操作性の向上を図ることができるロック構造を有する医療用コネクタを提供すること。
【解決手段】ロック機構は、コネクタプラグ110に設けられた第1係合部材(ロックツメ120)と、コネクタレセプタクル150に設けられ、第1係合部材と係合可能な第2係合部材(ロックツメ160)と、係合状態を解除するための操作部(ロック解除ボタン122、124)とを有する。第1係合部材と第2係合部材のいずれか一方(ロックツメ120)は、コネクタプラグ110の挿抜方向に対して垂直な方向に、対応するコネクタ本体112の外周面116に沿ってスライド可能であり、かつ、係合状態を保持する方向に、弾性力によって付勢されており、かつ、操作部が操作されると、係合状態を解除する方向に、前記弾性力に抗してスライドされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気コネクタは、機器側に取り付けられるコネクタレセプタクル(以下単に「レセプタクル」という)と、ケーブルに取り付けられレセプタクルに嵌合可能なコネクタプラグ(以下単に「プラグ」という)とからなっている。また、電気コネクタには、レセプタクルとプラグの嵌合状態を保持または解除するためにロック機構を備えているものがある。
【0003】
ロック機構を備えた電気コネクタの一例として、例えば、心電計に用いられる心電図計測用コネクタや生体情報モニタに用いられる生体信号計測用コネクタなどの医療用コネクタがある。
【0004】
図1は、従来の医療用コネクタの一例を示す図である。特に、図1(A)は、そのプラグ側の外観を示す側面図、図1(B)は、そのプラグ側の内部構造を示す断面図である。
【0005】
図1に示すコネクタ10は、いわゆる洗濯バサミ方式(またはテコ方式)と呼ばれるロック構造を有する。このコネクタ10は、プラグ12の筐体14の上部および下部(つまり、コネクタ本体16の上方および下方)に、ロック機構18、20がそれぞれ設けられている。ロック機構18、20は、おのおの、ロックツメ22、スプリング24、およびロック解除ボタン26を有する。ロックツメ22は、スプリング24の弾性力によって、レセプタクル側のロックツメ(図示せず)と噛み合う方向に付勢されている。ロック解除ボタン26が押されると、ロックツメ22は、テコの原理によって、スプリング24の弾性力に抗して、レセプタクル側のロックツメ(図示せず)との噛み合わせが開放される方向に移動する。これにより、ロックが解除されて、コネクタ10(プラグ12とレセプタクル)を外すことが可能になる。
【0006】
また、図示しないが、電気コネクタにおける他の方式のロック構造として、例えば、ロック解除の専用ボタンを持たない半ロック構造のものも知られている。半ロック構造では、一般的に用いられている噛み合うツメに角度を設けることにより、ロック解除の専用ボタンを設けることなくコネクタ(プラグとレセプタクル)の挿抜を可能にしている。
【0007】
また、さらに他の方式として、特許文献1(および当該文献の明細書の従来技術)には、医療用電気機器に使用されるコネクタに設けられる各種ロック機構が開示されている。ここには、プラグに機械的なロック機構を組み込んだ方式や、機械的なロック機構をレセプタクルに設ける構成などがいろいろ示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−22391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図1に示す従来のコネクタ10におけるロック構造の場合、ロックツメ22とロック解除ボタン26の間の長さに比例して機構部分(つまり、ロック機構18、20)の容積が大きくなるため、コネクタ10の幅または上下のサイズが大きくなる。そのため、多数のコネクタを配置する場合には、コネクタの取り付け間隔をその分大きくしなければならない。すなわち、テコ方式のロック機構は、コネクタ本体16と比較して占有容積が大きいため、ロックツメ22とロック解除ボタン26の間の長さが長くなるほど、コネクタ10のサイズが大型化して、さらに大きなスペースを必要とする。
【0010】
また、隣接する上下または左右のコネクタ10の間隔が小さい場合には、ロック解除ボタン26を含むロック解除部に手が入らないため、さらに大きなコネクタ取り付け間隔を必要とする。すなわち、コネクタ10の取り付け間隔が小さい場合には、操作スペースが小さくなるため、ロック解除ボタン26を操作しにくい。
【0011】
また、テコ方式のロック機構の場合、ロックツメ22は、構造上、一定以上の強度と剛性を必要とするため、金属の使用が不可欠である。そのため、非常に困難な静電気対策を別途施す必要がある。
【0012】
一方、半ロック構造のコネクタの場合、オスとメスのピンの嵌合力が強くないと、コネクタ(プラグとレセプタクル)が容易に外れてしまう。そのため、半ロック構造のコネクタの場合、嵌合状態の保持力を維持するために嵌合力を強くする必要がある。その結果、コネクタ(プラグとレセプタクル)の挿抜に強い力を必要とする。
【0013】
このため、コネクタを手の力で挿抜するためには十分な操作スペースが必要となり、隣接するコネクタの間隔が大きくならざるを得ない。すなわち、コネクタの間隔が小さい場合には、手を入れてコネクタの挿抜作業を行うことができず、結局、小さい操作スペースでは使えない。
【0014】
また、コネクタの抜き差し力を一定の期間中、一定の力に維持するためには、強固な構造と材質を必要とする。これは、一方では、コネクタのサイズを大きくする要因となり、他方では、多くの場合、金属など剛性のある材質を使用する必要が生じるため、静電気対策に支障をきたす要因となる。
【0015】
さらに、半ロック構造のコネクタでは、レセプタクルへのプラグ挿入時にクリック感が十分に得られず、確実な挿入と構成するピン間の接続が確認できにくい。
【0016】
なお、特許文献1(および当該文献の明細書の従来技術)記載の各種ロック構造は、主に、内視鏡などの滅菌域で使用する部分と非滅菌域に属する部分とを着脱自在に接続・固定するための電気コネクタを対象としているため、いずれも構造が複雑であり、心電計や生体情報モニタなどに用いられる医療用コネクタには適していない。
【0017】
例えば、心電計には1台で複数の被験者の心電図を効率よく取得できるよう、心電図信号を取得するためのコネクタを複数備えているものがある。また、生体情報モニタの場合、1人の患者から計測するパラメータが多いため、通常、一度に多くのコネクタを使用し、かつ、患者の症状や容態などにより計測するパラメータを変更したり、患者の退院や入院病棟の移動などによりモニタリングする患者が変更となる(入れ替わる)ため、コネクタの抜き差しの頻度も非常に高い。したがって、心電計や生体情報モニタなどに使用される医療用コネクタは、このような特殊な使用環境に適したものであることが望ましい。具体的には、医療用コネクタは、多種多様なコネクタが密集していても簡単に抜き出しできるように構成されていることが望ましい。
【0018】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で、かつ、一定の剛性を確保しつつ、省スペース化および小型化ならびにロック解除の操作性の向上を図ることができるロック構造を有する医療用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の医療用コネクタは、コネクタプラグとコネクタレセプタクルの嵌合状態を保持または解除するロック機構を有する医療用コネクタにおいて、前記ロック機構は、前記コネクタプラグのコネクタ本体の外周部に設けられた第1係合部材と、前記コネクタレセプタクルのコネクタ本体の外周部に設けられ、前記第1係合部材と係合可能な第2係合部材と、前記第1係合部材と前記第2係合部材の係合状態を解除するための操作部と、を有し、前記第1係合部材と前記第2係合部材のいずれか一方は、前記コネクタプラグの挿抜方向に対して垂直な方向に、対応するコネクタ本体の外周面に沿ってスライド可能であり、かつ、前記第1係合部材と前記第2係合部材の係合状態を保持する方向に、弾性力によって付勢されており、かつ、前記操作部が操作されると、前記第1係合部材と前記第2係合部材の係合状態を解除する方向に、前記弾性力に抗してスライドされる、構成を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡単な構造で、かつ、一定の剛性を確保しつつ、省スペース化および小型化ならびにロック解除の操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来の医療用コネクタの一例を示す図であり、(A)は、そのプラグ側の外観を示す側面図、(B)は、そのプラグ側の内部構造を示す断面図
【図2】本発明の一実施の形態に係る医療用コネクタの構成を示す斜視図
【図3】図2の医療用コネクタのプラグ側を示す図であり、(A)は、プラグの平面図、(B)は、図3(A)のB−B線に沿う断面図、(C)は、プラグの正面図、(D)は、プラグの側面図
【図4】図2の医療用コネクタのプラグ側の分解斜視図
【図5】図2の医療用コネクタのロック機構を説明するための図であり、(A)は、コネクタ嵌合状態を示す平面図、(B)は、コネクタ嵌合状態を示す側面図、(C)は、図5(A)のC−C線に沿う断面図、(D)は、コネクタ分離状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
図2は、本発明の一実施の形態に係る医療用コネクタの構成を示す斜視図である。
【0024】
図2に示す医療用コネクタ(以下単に「コネクタ」という)100は、例えば、心電計に用いられる心電図計測用コネクタや生体情報モニタに用いられる生体信号計測用コネクタなどの医療用コネクタであって、プラグ110とレセプタクル150を有する。レセプタクル150は、機器側に取り付けられるコネクタである。また、プラグ110は、ケーブル180に取り付けられ、レセプタクル150に嵌合可能なコネクタである。
【0025】
プラグ110とレセプタクル150は、オス/メスの組み合わせで使用され、互いに極性が異なる。オスは、電気的接点つまり芯線の接続部(金属の電極部分)が凸形状になっている側であり、メスは、電気的接点つまり芯線の接続部が凹形状になっている側である。図2に示す例では、プラグ110のコネクタ本体112はオス(凸)であり、レセプタクル150のコネクタ本体152はメス(凹)であるが、もちろん、これに限定されるわけではなく、オスとメスは逆であってもよい。
【0026】
コネクタ100は、芯線の本数に対応するピン数を有する。図2に示す例では、コネクタ100のピン数は、15ピンである。そのため、プラグ110のコネクタ本体112(オス)には、15本のコネクタピン114が設けられ、レセプタクル150のコネクタ本体152(メス)には、15個のピン穴154が設けられている。もちろん、コネクタ100のピン数は、これに限定されない。
【0027】
また、コネクタ100は、図2に示すように、タッチプルーフ構造を採用している。すなわち、プラグ110およびレセプタクル150のコネクタ本体112、152は、おのおの、金属の電極がむき出しになっておらず、手が電極に接触しない構造になっている。なお、タッチプルーフ構造の具体例は、図2に示す例に限定されず、周知の任意の構造を採ることができる。
【0028】
また、コネクタ100は、プラグ110とレセプタクル150の嵌合状態を保持または解除するロック機構を有する。
【0029】
本実施の形態では、コネクタ100のロック機構は、例えば、プラグ110のコネクタ本体112の長手方向外周部に、そのコネクタ本体112の長手方向外周面116に沿ってスライド可能な係合部材を設け、この係合部材として、プラグ110の引き抜き方向に対して垂直または垂直に近い角度で噛み合うロックツメ120を採用して構成されている。
【0030】
具体的には、コネクタ100のロック機構は、図2に示すように、プラグ110側に、コネクタ本体112の長手方向外周面116に沿って上下にスライド可能なロックツメ120(第1係合部材)を有し、レセプタクル150側に、プラグ110側のロックツメ120と噛み合う固定されたロックツメ152(第2係合部材)を有する。プラグ110側のスライド可能なロックツメ120とレセプタクル150側の固定されたロックツメ160とは、ロック位置ではプラグ110の引き抜き方向に対して垂直または垂直に近い角度で互いに噛み合い(ロック状態)、ロック解除位置ではプラグ110側のロックツメ120が下方(図中の矢印Aの方向)に下がり互いの噛み合わせが開放されるように構成されている。プラグ110側のロックツメ120の上下方向の移動は、ロック位置(上限)とロック解除位置(下限)の間に規制されている。
【0031】
また、ロック状態、つまり、プラグ110側のロックツメ120とレセプタクル150側のロックツメ160の係合(噛み合わせ)状態を解除するため、プラグ110には、2つのロック解除ボタン122、124(操作部)が設けられている。一方のロック解除ボタン(以下「上部ロック解除ボタン」という)122は、プラグ110の上部に設けられ、他方のロック解除ボタン(以下「左右ロック解除ボタン」という)124は、プラグ110の左右に一対設けられている。左右一対の左右ロック解除ボタン124は、誤って(意図せずに)解除されないよう、手で触りにくい場所、例えば、プラグ110の本体後方の左右に設けられている。
【0032】
次に、プラグ110側のロック機構について、図3および図4を用いてより詳細に説明する。図3は、図2のコネクタ110のプラグ110側を示す図であり、特に、図3(A)は、プラグ110の平面図、図3(B)は、図3(A)のB−B線に沿う断面図、図3(C)は、プラグ110の正面図、図3(D)は、プラグ110の側面図である。図4は、図2のコネクタ100のプラグ110側の分解斜視図である。なお、図3および図4において、図2と共通する部分には同一の符号を付している。
【0033】
プラグ110側のロック機構は、構成部品として、例えば、図4によく示すように、筐体118、ロックカバー126、第1スライドロック部材128、第2スライドロック部材130、上部ロック解除ボタン122、左右ロック解除ボタン124、第1スプリング132、および第2スプリング134を有する。プラグ110の構成部品のうち、コンタクトピン114以外の部品、具体的には、筐体118(コンタクト本体112のコンタクトピン114以外の部分を含む)、ロックカバー126、第1スライドロック部材128、第2スライドロック部材130、上部ロック解除ボタン122、および左右ロック解除ボタン124は、すべて、樹脂で成形されている。
【0034】
筐体118には、第1スライドロック部材128をコネクタ本体112の長手方向外周面116に沿って上下にスライド可能に収容するためのスライド溝136が形成されている。第1スライドロック部材128には、一対のロックツメ120が一体的に形成されている。この一対のロックツメ120は、第1スライドロック部材128が筐体118のスライド溝136に収容された状態において、コネクタ本体112を挟んで左右対称位置に設けられている。第1スライドロック部材128の上部には、第1スプリング132を介して、上部ロック解除ボタン122が取り付けられている。第1スプリング132の弾性力によって、第1スライドロック部材128は上方(つまり、ロック位置の方向)に付勢されている。また、上部ロック解除ボタン122を押し下げることによって、第1スライドロック部材128は、第1スプリング132の弾性力に抗して、下方(つまり、ロック解除位置の方向)に移動する。
【0035】
一方、筐体118の底部には、ロックカバー126が取り付けられている。ロックカバー126の内側には、第2スプリング134を収容した第2スライドロック部材130がプラグ110の挿抜方向にスライド可能に設けられている。第2スプリング134の弾性力によって、第2スライドロック部材130はプラグ110の引き抜き方向に付勢されている。第2スライドロック部材130には、前方部に第1テーパ部130aが形成され、側部の左右に第2テーパ部130bが形成されている。第1テーパ部130aは、第1スライドロック部材128と当接し、第2スライドロック部材130がプラグ110の挿入方向に移動すると第1スライドロック部材128を下方へ押し下げるように作用する。また、第2テーパ部130bは、左右ロック解除ボタン124と当接し、左右ロック解除ボタン124が手で挟んで押されると、第2スライドロック部材130を、第2スプリング134の弾性力に抗して、プラグ110の挿入方向に移動させるように作用する。これにより、第1スライドロック部材128は、上記のように、第2スライドロック部材130の第1テーパ部130aの作用によって下方へ押し下げられる。
【0036】
また、第1スライドロック部材128に形成された一対のロックツメ120の先端上部には、それぞれ、レセプタクル150側の固定されたロックツメ160のテーパ部160aに対応するテーパ部120aが形成されている。プラグ側ロックツメ120のテーパ部120aは、プラグ110の挿入時において、レセプタクル側ロックツメ160のテーパ部160aと当接すると、先端角度の押し込み力によってプラグ側ロックツメ120(つまり、第1スライドロック部材128)を、第1スプリング132の弾性力に抗して、下方へ押し下げるように作用する。
【0037】
次に、上記構成を有するロック機構の作用について、図5を用いて説明する。図5は、図2のコネクタのロック機構を説明するための図であり、特に、図5(A)は、コネクタ嵌合状態を示す平面図、図5(B)は、コネクタ嵌合状態を示す側面図、図5(C)は、図5(A)のC−C線に沿う断面図、図5(D)は、コネクタ分離状態を示す側面図である。
【0038】
まず、プラグ110をレセプタクル150に挿入する場合について説明する。
【0039】
プラグ110のコネクタ本体112をレセプタクル150のコネクタ本体152に差し込むと、プラグ側ロックツメ120のテーパ部120aとレセプタクル側ロックツメ160のテーパ部160aが互いに当接する。そして、プラグ110のコネクタ本体112をレセプタクル150のコネクタ本体152にさらに差し込んでいくと、先端角度の押し込み力によってプラグ側ロックツメ120(つまり、第1スライドロック部材128)が、第1スプリング132の弾性力に抗して下方へ押し下げられ、レセプタクル側ロックツメ160と噛み合う状態になる。そして、プラグ側ロックツメ120とレセプタクル側ロックツメ160が噛み合う状態になると、その後、第1スプリング132の弾性力によって、プラグ側ロックツメ120(つまり、第1スライドロック部材128)が自動的に上方へ移動し、ロック状態となる。すなわち、プラグ側ロックツメ120とレセプタクル側ロックツメ160が係合し(噛み合い)、第1スプリング132の弾性力によってその係合状態が保持され(ロック状態)、プラグ110とレセプタクル150とが電気的に接続される(コネクタ嵌合状態)。このとき、プラグ110とレセプタクル150は接続状態で固定的に保持されるため、プラグ110を引き抜こうとしてもそのままでは引き抜けない。
【0040】
次に、プラグ110をレセプタクル150から引き抜く場合について説明する。
【0041】
この場合には、まず、ロック状態を解除する。
【0042】
本実施の形態では、上記のように、2つのロック解除ボタン122、124を用いた2つのロック解除機構が設けられている。1つのロック解除機構は、左右ロック解除ボタン124を押す→第2スライドロック部材130が前方に移動する→第1スライドロック部材128が下方に移動することによってロックが外れる、というものである。もう1つのロック解除機構は、上部ロック解除ボタンを押す122→第1スライドロック部材128が下方に移動することによってロックが外れる、というものである。なお、後者の場合、上部ロック解除ボタンの押下は左右ロック解除ボタン124と連動しない。
【0043】
すなわち、前者の場合、左右ロック解除ボタン124を手で挟んで押すと、第2スライドロック部材130の第2テーパ部130bは左右ロック解除ボタン124と当接しているため、第2スライドロック部材130が、第2スプリング134の弾性力に抗して、プラグ110の挿入方向(図中の矢印Cの方向)に移動する。これにより、第1スライドロック部材128(つまり、プラグ側ロックツメ120)は、第2スライドロック部材130の第1テーパ部130aの作用によって下方(図中の矢印Bの方向)へ押し下げられ、プラグ側ロックツメ120とレセプタクル側ロックツメ160の係合状態(噛み合わせ)が開放され、ロックが解除される。なお、左右ロック解除ボタン124を開放すると、第1スプリング132および第2スプリング134の弾性力によって第1スライドロック部材128および第2スライドロック部材130はそれぞれ元の位置に戻る。
【0044】
一方、後者の場合、上部ロック解除ボタン122を手で押すと、左右ロック解除ボタン124と連動することなく、第1スライドロック部材128(つまり、プラグ側ロックツメ120)は、第1スプリング132の弾性力に抗して、下方(図中の矢印Bの方向)へ押し下げられ、プラグ側ロックツメ120とレセプタクル側ロックツメ160の係合状態(噛み合わせ)が開放され、ロックが解除される。なお、上部ロック解除ボタン122を開放すると、第1スプリング132の弾性力によって第1スライドロック部材128は元の位置に戻る。
【0045】
このように左右ロック解除ボタン124または上部ロック解除ボタン122を操作(押下)してロック状態を解除しながら、レセプタクル150からプラグ110を引き抜くことによって、プラグ110とレセプタクル150が分離され、両者の嵌合状態が解消される(コネクタ分離状態)。
【0046】
このように、本実施の形態では、プラグ110の左右ロック解除ボタン124を手で挟んで押すと、プラグ側ロックツメ120が下がり、レセプタクル側ロックツメ160との噛み合わせが開放されて(ロック解除)、コネクタ100(プラグ110とレセプタクル150)を外すことが可能となる。
【0047】
また、上部ロック解除ボタン122を押しても、左右ロック解除ボタン124と連動することなく、プラグ側ロックツメ120が下がりロックが解除される。
【0048】
一方、レセプタクル150へのプラグ110挿入時は、ロックツメ120、160の先端角度(テーパ部120a、160a)の押し込み力によってプラグ側ロックツメ120が下がり、ロック完了後に第1スプリング132の弾性力によりプラグ側ロックツメ120が自動的に上がりロック状態となる。
【0049】
このように、本実施の形態によれば、プラグ110のコネクタ本体112の長手方向外周部に、そのコネクタ本体112の長手方向外周面116に沿ってスライド可能な係合部材を設け、この係合部材として、プラグ110の引き抜き方向に対して垂直または垂直に近い角度で噛み合うロックツメ120を採用した。このため、電極以外の構成部品を樹脂で成形したとしても、一定の剛性を確保しつつ、小さなスプリング力(第1スプリング132、第2スプリング134の弾性力)によってロックまたはロック解除を行うロック構造を、簡単な構造で得ることができる(構造の簡単化、剛性の確保)。また、コネクタ100(プラグ110、レセプタクル150)の中央にコネクタ本体112、152を配置することによって、コネクタサイズを小さくすることができる(小型化)。
【0050】
また、本実施の形態におけるロック機構を設けることによって、ピン数が多くても、コネクタ100(プラグ110とレセプタクル150)の挿抜力を低く抑えることができる(挿抜力の低減)。このため、プラグ110の上部および本体後方の左右にロック解除ボタン122、124をそれぞれ配置することと相俟って、コネクタ100の取り付け間隔を小さくすることができ(省スペース化)、操作スペースが狭い場所でもコネクタ100(プラグ110とレセプタクル150)の挿抜作業を容易に行うことができる(ロック解除の操作性の向上)。
【0051】
また、コネクタ100(プラグ110とレセプタクル150)嵌合時のクリック感がスプリング力(第1スプリング132、第2スプリング134の弾性力)によって得られるため、確実な挿入と構成するピン間の接続とをより確実に判別することができる。
【0052】
また、ロックツメ120、160の噛み合い角度を直角から若干変化させることにより、コネクタ100のコード(ケーブル180)が引っ張られた際に一定の引っ張り力以上でロックが解除され、接続する機器本体がテーブルなどから落下するのを防止することができる。
【0053】
要するに、本実施の形態によれば、(1)ピン数が多いコネクタでもピンの嵌合力を弱くでき、挿抜に大きな力を必要としない、(2)ロックツメにより確実にコネクタを保持することが可能、(3)小さなスプリング力によって、プラグの抜け防止を維持することができ、また、プラグ挿入時のロックのクリック感を得ることができるため、ピンの接続性を確実に得ることができ、信頼性が向上する、(4)上部または左右のどちらかのロック解除ボタンを押してロックツメをスライドさせることにより、狭いスペースでも容易にロックを外すことができる、(5)ピン数が多いタッチプルーフ構造を設けつつも、小型のコネクタ形状にすることができる、などといった特徴(効果)を奏することができる。
【0054】
したがって、本実施の形態によれば、一度に多くのコネクタを使用しかつ抜き差しの頻度も非常に高いという特殊な使用環境に適した医療用コネクタを、簡単な構造で、かつ、一定の剛性を確保しつつ、得ることができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、レセプタクル側ロックツメ160を固定し、プラグ側ロックツメ120をスライド可能に構成しているが、これに限定されず、プラグ側ロックツメを固定し、レセプタクル側ロックツメをスライド可能に構成することも可能である。
【0056】
また、本実施の形態では、プラグ110の上部と左右の2箇所にロック解除ボタン122、124を設けているが、これに限定されず、いずれか一方のみであってもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、医療用コネクタを例にとって説明したが、これは最も好適な例を示したにすぎず、これに限定されない。本実施の形態におけるロック構造は、電気コネクタに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
100 医療用コネクタ
110 コネクタプラグ
112、152 コネクタ本体
114 コネクタピン
116 長手方向外周面
118 筐体
120 プラグ側ロックツメ
120a、130a、130b、160a テーパ部
122 上部ロック解除ボタン
124 左右ロック解除ボタン
126 ロックカバー
128 第1スライドロック部材
130 第2スライドロック部材
132 第1スプリング
134 第2スプリング
136 スライド溝
150 レセプタクル
154 ピン穴
160 レセプタクル側ロックツメ
180 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタプラグとコネクタレセプタクルの嵌合状態を保持または解除するロック機構を有する医療用コネクタであって、
前記ロック機構は、
前記コネクタプラグのコネクタ本体の外周部に設けられた第1係合部材と、
前記コネクタレセプタクルのコネクタ本体の外周部に設けられ、前記第1係合部材と係合可能な第2係合部材と、
前記第1係合部材と前記第2係合部材の係合状態を解除するための操作部と、を有し、
前記第1係合部材と前記第2係合部材のいずれか一方は、
前記コネクタプラグの挿抜方向に対して垂直な方向に、対応するコネクタ本体の外周面に沿ってスライド可能であり、かつ、
前記第1係合部材と前記第2係合部材の係合状態を保持する方向に、弾性力によって付勢されており、かつ、
前記操作部が操作されると、前記第1係合部材と前記第2係合部材の係合状態を解除する方向に、前記弾性力に抗してスライドされる、
医療用コネクタ。
【請求項2】
前記第1係合部材および前記第2係合部材は、それぞれ、対応するコネクタ本体の長手方向の外周部に設けられている、
請求項1記載の医療用コネクタ。
【請求項3】
前記第1係合部材および前記第2係合部材は、それぞれ、対応するコネクタ本体を挟んで一対設けられ、
前記第1係合部材および前記第2係合部材のうちスライド可能な側の一対の係合部材は、連動して移動する、
請求項2記載の医療用コネクタ。
【請求項4】
前記第1係合部材および前記第2係合部材は、互いに前記コネクタプラグの挿抜方向に対して垂直または垂直に近い角度で噛み合うツメ状のロック部材である、
請求項1記載の医療用コネクタ。
【請求項5】
前記操作部は、前記コネクタプラグおよび前記コネクタレセプタクルのうちスライド可能な係合部材が設けられた側の筐体の上部、下部、および左右の少なくとも1つに配置されている、
請求項1記載の医療用コネクタ。
【請求項6】
前記第1係合部材は、スライド可能であり、
前記第2係合部材は、固定されている、
請求項1記載の医療用コネクタ。
【請求項7】
電極以外の構成部品はすべて樹脂で成形されている、
請求項1記載の医療用コネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−70951(P2011−70951A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221472(P2009−221472)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)
【Fターム(参考)】