説明

医療用診療装置

【課題】フートコントローラ5と診療装置7の間に実物の線が存在することなく、かつ、フートコントローラ6で操作する内容の設定を任意に変更することができる医療用診療装置1を提供し、施術者の利便性を向上する。
【解決手段】診療に用いられる診療装置7と、施術者に操作入力された操作信号を前記診療装置7へ送信するフートコントローラ5とを備えた医療用診療装置1であって、前記フートコントローラ5は、前記操作入力された操作信号を無線送信する無線通信手段51を備え、前記診療装置7は、前記無線通信手段51から送信された前記操作信号を無線受信する無線通信手段43,46と、該診療装置7の操作項目と前記操作信号とを対応づけたフートコントローラ設定データ32を記憶する記憶手段41とを備えたことを特徴とする医療用診療装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば複数のインスツルメントを取り替えて用いるような診療装置に関し、特に歯科で歯や骨の切削や研磨といった診療に用いられるインスツルメントの駆動制御や診療椅子の駆動制御をワイヤレスのフートコントローラにより実行する診療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科の診療では、様々なインスツルメントを取り替えて接続し、使用する診療装置が利用されている。ここでいうインスツルメントは、マイクロモータハンドピース、エアタービンハンドピース、レーザハンドピース、あるいは超音波又はエアーで駆動するスケーラなど様々な種類が存在しており、その駆動力もモータ、エアー、超音波振動子の振動、あるいはレーザといった様々な動力が用いられる。
【0003】
このような診療装置のインスツルメント等の操作方法に特徴のあるものとして、診療装置に接続されたフートコントローラにより操作する医科歯科用治療装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この医科歯科用治療装置は、フートコントローラで医科歯科用治療椅子と制御用コンピュータを制御するものである。しかし、フートコントローラはコードにより有線接続されているため、設置範囲に制限があるという問題点や、コードが余ると施術者の足に絡まりかねないという問題点がある。
【0005】
一方、フートコントローラと治療台との間で赤外線又は超音波を信号媒体とした双方向のデータ通信を行う無線遠隔操作装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
しかし、この無線遠隔操作装置は、フートコントローラでの操作内容と、診療台の制御内容との対応づけを変更することはできない。このため、利便性に欠けるという問題点がある。
【0007】
また、各診療場面に応じた機能が記憶されたメモリを有し、これら複数の機能から少なくとも1つを選択して操作スイッチに割り当てるフートコントローラを使用した制御装置が提案されている(特許文献3参照)。
【0008】
しかし、この制御装置は、各診療場面に応じた機能のどれを操作スイッチに割り当てるか選択できるだけであり、任意に設定変更できるものではなかった。このため、設定の自由度がなく利便性の低いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−322918号公報
【特許文献2】特公昭62−016106号公報
【特許文献3】特開2006−263137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、上述した問題に鑑み、フートコントローラと診療装置の間に実物の線が存在することなく、かつ、フートコントローラで操作する内容の設定を任意に変更することができる医療用診療装置を提供し、施術者の利便性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、診療に用いられる診療装置と、施術者に操作入力された操作信号を前記診療装置へ送信するフートコントローラとを備えた医療用診療装置であって、前記フートコントローラは、前記操作入力された操作信号を無線送信するコントローラ側無線通信手段を備え、前記診療装置は、前記コントローラ側無線通信手段から送信された前記操作信号を無線受信する診療装置側無線通信手段と、該診療装置の操作項目と前記操作信号とを対応づけた設定データを記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
前記コントローラ側無線通信手段および診療装置側無線通信手段は、Zigbee(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)、赤外線、あるいは超音波といった適宜の通信方式を用いることができる。
前記記憶手段は、前記設定データを変更可能に記憶することができる。
【0013】
この発明により、無線で通信できるためにフートコントローラと診療装置の間に実物の線が存在することなく、かつ、フートコントローラで操作する内容の設定を任意に変更することができる。
【0014】
この発明の態様として、前記診療装置側無線通信手段は、1つの前記コントローラ側無線通信手段に対する複数の受信手段により構成されていることを特徴とする。
【0015】
これにより、通信障害等によってフートコントローラからの操作信号を受信できないことを防止でき、安定した動作を実現することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記フートコントローラは、電源手段の電池残量を検出する電池残量検出手段を備え、前記コントローラ側無線通信手段は、前記電池残量を無線送信する構成であり、前記診療装置は、前記診療装置側無線手段で受信した前記電池残量が所定量以下になると電池容量情報を報知する電池容量報知手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
前記電源手段は、充電可能な二次電池あるいは充電不可能な一次電池とすることができ、好ましくは二次電池とすることができる。
【0018】
前記所定量は、無線通信に必要な最小限の電池残量よりも多い量で、満タン状態からある程度消費して残り少ないと言える量など、適宜の量とすることができる。
【0019】
この態様により、電源手段の電池残量が少なくなったことを知らせることができ、無線通信が不可能となる前に電源手段の充電あるいは交換を実行することができる。これにより、フートコントローラの操作による動作制御の安定可動を実現することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記診療装置は、施術に用いられるインスツルメントと、該インスツルメントに駆動力を付与する駆動手段と、前記電池容量が予め定められた動作規制量以下になると前記フートコントローラの操作信号による前記駆動手段の駆動を制限する駆動制限手段とを備えることができる。
【0021】
前記駆動手段は、インスツルメントを駆動する駆動媒体(エアー、水、電気など)を供給する適宜の装置で構成することができる。
【0022】
前記動作規制量は、無線通信に必要な最小限の電池残量よりも多い量で、満タン状態からある程度消費して残り少ないと言える量など、適宜の量とすることができる。
【0023】
前記駆動制限手段は、既にインスツルメントを駆動していればその駆動を継続してフートコントローラでは停止できない制限をする、インスツルメントを停止していればフートコントローラでは駆動できないように停止状態を維持する制限をする、あるいは急激な動作や停止を制限するなど、適宜の制限とすることができる。
【0024】
これにより、意図せずにインスツルメントが駆動あるいは停止等することを防止でき、安全性を高めることができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記電源手段は、充電可能な二次電池で構成され、前記フートコントローラは、前記二次電池の充電に用いる充電用電源端子を備えていることを特徴とする。
これにより、二次電池で構成される電源手段に充電用電源端子から充電することができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記設定データは、施術に用いるインスツルメントの駆動手段の駆動に関する施術用操作設定に関するデータと、該インスツルメントに関連しない他の駆動手段に関する施術外動作用操作設定に関するデータとで構成され、前記診療装置は、前記インスツルメントを出し入れするホルダと、該ホルダへのインスツルメントの出し入れを検出するホルダ検出手段とを備え、インスツルメントの取り出しを検出した場合、前記フートコントローラの操作信号を受信すると前記施術用操作設定に関するデータに応じた前記インスツルメントの駆動手段の駆動を許容し、全てのインスツルメントが前記ホルダに収納されている状態を検出した場合、前記フートコントローラの操作信号を受信すると前記施術外動作用操作設定に関するデータに応じた前記他の駆動手段の駆動を許容する構成とすることができる。
【0027】
前記ホルダ検出手段は、スイッチ、重量センサ、赤外線センサ、光センサ、磁気センサ、または近接センサなど、ホルダに対するインスツルメントの取り出し/収納を検出可能な適宜の手段で構成することができる。
【0028】
前記施術用操作設定に関するデータは、ハンドピース等のライトON/OFF、注水ON/OFF、正転/逆転、コップ給水、マイクロモータの回転数設定、レンジ切換、スケーラ等のパワー調整、光重合器等の照射時間設定など、インスツルメントの駆動に関連するデータとすることができる。
【0029】
前記施術外動作用操作設定に関するデータは、診療椅子の上昇/下降、背面シートの起立/傾斜、無影灯のライトON/OFF/調光、モード切換(治療モード/レジンモード)など、インスツルメントの駆動に関連しないデータとすることができる。
【0030】
この態様により、インスツルメントの取り出し状態に応じてフートコントローラの操作により適切な動作制御を実行することができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記診療装置は、前記インスツルメントの出し入れ後の状態で前記設定データに基づいて実行可能な操作項目を表示する表示装置を備えることができる。
【0032】
これにより、インスツルメントの出し入れ等によって変更された実行可能な操作項目を表示装置に表示でき、施術者は現在フートコントローラで操作可能な項目を目視にて確認できる。
【0033】
またこの発明の態様として、前記診療装置側無線通信手段は、前記設定データを他の診療装置に送信する設定データ送信処理と、他の診療装置から前記設定データを受信する設定データ受信処理とが実行可能な双方向の通信手段であり、前記診療装置側無線通信手段により他の医療用診療装置から前記設定データを受信すると、前記記憶手段に記憶している設定データに登録する構成とすることができる。
【0034】
この態様により、1つの診療装置で登録した設定データを他の診療装置に転送することができる。従って、施設内に複数の診療装置を設置している場合に、施術者が1つの診療装置で自分用にカスタマイズして登録した設定データを他の診療装置に転送することで、他の診療装置でも同じ環境で診療を行うことができる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記記憶手段は、施術者毎に異なる複数の前記設定データを記憶する構成であり、前記診療装置は、現在採用している設定データがどの施術者のものかを表示する現在状態表示手段を備えたことを特徴とする。
【0036】
この態様により、施術者は自分用の設定になっているかを確認してフートコントローラの操作等を行うことができる。
【0037】
またこの発明は、診療に用いられる診療装置と、施術者に操作入力された操作信号を前記診療装置へ送信するフートコントローラとを備えた医療用診療装置を操作制御する医療用診療装置の操作制御方法であって、前記フートコントローラは、前記操作入力された操作信号を無線送信するコントローラ側無線通信手段が備えられ、前記診療装置は、前記コントローラ側無線通信手段から送信された前記操作信号を無線受信する診療装置側無線通信手段と、該診療装置の操作項目と前記操作信号とを対応づけた設定データを記憶する記憶手段とが備えられ、前記フートコントローラで操作入力された操作信号を受信すると、前記診療装置は、前記設定データに記憶された前記操作信号と対応する操作項目の動作を実行する
医療用診療装置の操作制御方法とすることができる。
【0038】
これにより、フートコントローラと診療装置の間に実物の線が存在して邪魔されるといったことがなく、かつ、フートコントローラで操作する内容の設定を任意に変更して操作制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0039】
この発明により、フートコントローラと診療装置の間に実物の線が存在することなく、かつ、フートコントローラで操作する内容の設定を任意に変更することができる医療用診療装置を提供し、施術者の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】医療用診療装置の構成を示す斜視図。
【図2】フートコントローラの外観を示す斜視図。
【図3】医療用診療装置の構成を示すブロック図。
【図4】フートコントローラ設定データ等のデータ構成図
【図5】メインメニュー画面の画面構成図。
【図6】ハイスピードハンドピース(HS1)の設定画面の画面構成図。
【図7】ロースピードハンドピース(LS1)の設定画面の画面構成図。
【図8】フートコントローラからの送信処理のフローチャート。
【図9】診療装置の制御手段が実行するログイン処理のフローチャート。
【図10】診療装置の制御手段が実行する診療処理のフローチャート。
【図11】フートコントローラ設定データの転送処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0041】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例】
【0042】
図1は、医療用診療装置1の構成を示す斜視図である。医療用診療装置1は、ベースンユニット3、該ベースンユニット3にハンガーアーム2cを介して接続されるアシスタントハンガー2、診療椅子4、および、該診療椅子4の診療基台部6に接続された診療装置トレー部9と、独立して配置されるフートコントローラ5により構成されている。このうち、ベースンユニット3、診療椅子4、および診療装置トレー部9により、診療装置7が構成されている。
【0043】
アシスタントハンガー2は、エアーや水を放出するスリーウェイシリンジ(図示省略)や吸引を行うサラエバエジェクタ2a,バキュームシリンジ2bが取り出し可能に収納されるユニットである。このアシスタントハンガー2に収納されているサラエバエジェクタ2a,バキュームシリンジ2bやスリーウェイシリンジは、歯科診療の施術者又はアシスタントによって使用され、口腔内の洗浄や吸引等に用いられる。
【0044】
ハンガーアーム2cは、アシスタントハンガー2を支持するアームである。このハンガーアーム2cが上下左右に屈曲可動することで、アシスタントハンガー2の高さや位置を適宜変更できるようになっている。
ベースンユニット3は、うがい用の水を放出するノズル3bと、コップを載置するコップ載置部3cと、うがい後の水を受けるベースン3aとを備えている。
【0045】
診療椅子4は、施術者の操作によって背面シート4bの傾動と診療椅子4の昇降を行う歯科診療台であり、診療基台部6を有している。診療基台部6には、油圧等による昇降駆動手段44(図3参照)が内蔵されており、診療椅子4は、この昇降駆動手段44に支持されている。診療椅子4は、ヘッドレスト4a、背面シート4b、および座面シート4cにより構成されている。背面シート4bは、座面シート4cに起伏自在に取り付けられ油圧シリンダ等による傾動駆動手段45(図3参照)により傾動する。ヘッドレスト4aは、背面シート4bに対して固定あるいは距離・角度調節自在に装着されている。この傾動や昇降、距離・角度調節といった操作は、フートコントローラ5、あるいは診療装置トレー部9のタッチパネルモニタ8aが施術者によって操作される又は施術者によって手動で操作されることによって行われる。
【0046】
診療基台部6には、主電源ボタン6aが設けられている。この主電源ボタン6aが足操作等によって押されると主電源ONとなる。
診療装置トレー部9は、本体装置8、表示装置10、複数のインスツルメント16(16A〜16E)、およびインスツルメント16を保持するホルダ14(14A〜14E)により主に構成されている。
表示装置10は、本体装置8の背面側に起立して設けられており、各種操作用の画面や患者のカルテ情報等を表示する。
【0047】
本体装置8は、上面にトレーテーブル8cが設けられている。このトレーテーブル8cは、上面が平面であり、薬品や治療器具等を載置できるようになっている。トレーテーブル8cの前面は、タッチパネルモニタ8aと操作ボタン8bが設けられている。これらのタッチパネルモニタ8aと操作ボタン8bの操作状況を表示装置10に表示することができる。なお、表示装置10をタッチパネルモニタで構成してもよい。
【0048】
トレーテーブル8cの前面下方には、複数のホルダ14(14A〜14E)が設けられている。このホルダ14には、インスツルメント16(16A〜16E)が1つずつ収納され、該インスツルメント16の取り出しと収納を検出するインスツルメント検出手段26(図3参照)のセンサが設けられている。これにより、施術者は、使用するインスツルメント16をホルダ14から取り出し、使用後に再度ホルダ14に収納することができ、インスツルメント検出手段26のセンサはこの取り出しと収納を検出することができる。
【0049】
このホルダ14に収納されるインスツルメント16は、それぞれ接続チューブ18(18A〜18E)の一端に接続されており、この接続チューブ18の他端がトレーテーブル8cの下面に設けられている本体装置8に接続されている。
【0050】
接続されたインスツルメント16A〜16Eと接続チューブ18A〜18Eとホルダ14A〜14Eは、図1の符号でアルファベットA〜Eを付して示すようにそれぞれ1つずつ1対1対応している。従って、本体装置8は、それぞれのインスツルメント16A〜16Eと接続チューブ18A〜18Eとホルダ14A〜14Eをセットとして取り扱う。
【0051】
図2は、フートコントローラ5の外観を示す斜視図である。フートコントローラ5は、1つのジョイスティック5a、4つのニ方向スイッチ5b、および1つのフートペダル5cを有しており、主に施術者の足での操作入力を受け付ける足踏操作ユニットである。
【0052】
施術者によって操作部(ジョイスティック5a〜フートペダル5c)のいずれかが踏まれると、操作信号を診療装置トレー部9へ無線送信する。これらの操作部の操作により、医療用診療装置1は、インスツルメント16の駆動、インスツルメント16の注水のON/OFF切り替え、診療椅子4の昇降、背面シート4bの起伏等、種々の動作を実行する。
【0053】
このジョイスティック5a、4つのニ方向スイッチ5b、およびフートペダル5cのいずれか1つは、これらの他のジョイスティック5a、4つのニ方向スイッチ5b、およびフートペダル5cの操作による機能を切り替える機能切替スイッチとしてもよい。この場合、機能切替スイッチを操作して、各操作部(ジョイスティック5a〜フートペダル5c)により操作する機能を切り替えることができる。そして、この機能切替スイッチで操作する機能を切り替えた場合、表示装置10又はタッチパネルモニタ8aに切り替え後に実行可能な操作内容を表示するとよい。
【0054】
また、フートコントローラ5は、持ち運びや吊り収納のために保持したり、フートコントローラ5が転がったときに各操作部(ジョイスティック5a〜フートペダル5c)が操作されないためのフック部5dが設けられている。このフック部5dは、充電用の接続端子56(図3参照)が設けられている。これにより、フートコントローラ5が医療用診療装置や施術者の控え室等に設けた(図示省略)充電装置に接続されると、該充電装置の接続端子にフートコントローラ5の接続端子56が接触して通電し、充電できるようになっている。
【0055】
図3は、医療用診療装置1の構成を示すブロック図である。医療用診療装置1は、CAN/BUSライン20に接続して、診療椅子4、フートコントローラ5、および診療装置トレー部9が設けられている。
【0056】
診療椅子4は、制御手段42に接続して、記憶手段41、無線通信手段43,46、昇降駆動手段44、および傾斜駆動手段45が設けられている。
記憶手段41は、各種データやプログラムを記憶する。このデータには、ユーザデータ31(図4参照)やフートコントローラ設定データ32(図4参照)が含まれる。
【0057】
制御手段42は、各種制御動作や演算動作を実行する。
無線通信手段43,46は、いずれもフートコントローラ5の無線通信手段51から送信される信号を無線で受信する装置である。この無線通信手段43,46は、受信のみ実行可能としてもよいが、この実施例では双方向の通信を実行する。
【0058】
ここで、無線通信手段43と無線通信手段46は、異なる周波数で信号を受信する。これにより、一方の周波数帯に妨害電波等が存在しても、他方の周波数帯で無線通信することができるため、フートペダル5との通信を安定化することができる。
【0059】
この無線通信手段43,46は、Zigbee(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)、赤外線、あるいは超音波といった適宜の通信方式を用いることができる。中でもZigbee(登録商標)またはブルートゥース(登録商標)が好ましく、特にZigbee(登録商標)を用いることが好ましい。
【0060】
昇降駆動手段44は、制御手段42からの制御信号に従って、油圧等により診療椅子4(図1参照)の昇降を行う。
傾斜駆動手段45は、制御手段42からの制御信号に従って、油圧等により背面シート4bの傾動を行う。
【0061】
フートコントローラ5は、制御手段52に接続して、無線通信手段51、報知手段53、ジョイスティック5a、ニ方向スイッチ5b、およびフートペダル5cが設けられている。また、各部に動作電力を供給する電源手段54が設けられている。
【0062】
無線通信手段51は、診療椅子4の無線通信手段43,46と無線で通信する装置である。この無線通信手段51は、送信のみ実行可能としてもよいが、この実施例では双方向の通信を実行する。この無線通信手段51の通信規格は、無線通信手段43,46と同一の通信規格を用いる。また、無線通信手段51は、異なる周波数で信号を送信することができる。従って、無線通信手段43と無線通信手段46の両方に対してそれぞれ適した周波数帯で無線通信を行うことができる。これにより、送信側を1つとしてコストダウンを図っている。
【0063】
制御手段52は、各種制御動作や演算動作を実行する。
報知手段53は、制御手段52の制御信号に従って、音声あるいはアラーム音により適宜の報知を行う。
【0064】
電源手段54は、充電可能な二次電池であり、各部に動作電力を供給する。この電源手段54には、電池残量検出手段54aが設けられている。電池残量検出手段54aは、電源手段54に蓄電されている容量、つまり電池の残量を検出し、検出した電池残量を制御手段52に送信する。
【0065】
また、電源手段54には、充電制御手段55が接続されている。充電制御手段55は、接続端子56を通じて充電用の電力供給が行われると、適宜調整して電源手段54に供給し充電させる。
【0066】
診療装置トレー部9は、制御手段24に接続して、駆動手段25、インスツルメント検出手段26、表示装置10、およびポインティングデバイス27を備えている。
【0067】
制御手段24は、各種制御動作や演算動作を実行する。
駆動手段25は、接続チューブ18(図1参照)を介してインスツルメント16に必要な駆動媒体(エアー、水、電気など)を供給する。
【0068】
インスツルメント検出手段26は、光センサや磁気センサなどのセンサで構成されており、ホルダ14に対するインスツルメント16の収納/取出を検出する。検出した信号は制御手段24へ送信される。
【0069】
ポインティングデバイス27は、マウスやタッチパッド、ポインティングスティックといった適宜のポインティングデバイスで構成され、入力された座標情報を制御手段24へ送信する。
診療装置7の制御手段24には、さらにコンピュータ22が接続され、このコンピュータ22には、さらに表示装置10が接続されている。コンピュータ22は、CAN/BUSライン20に接続せず、診療装置トレー部9に直接接続されている。これにより、診療用の各機器の信頼性をCAN/BUSライン20を用いて維持した上で、コンピュータ22の利便性を利用できるようにしている。
【0070】
図4(A)は、ユーザデータ31のデータ構成図を示し、図4(B)は、フートコントローラ設定データ32のデータ構成図を示す。
ユーザデータ31は、ユーザ名と設定データアドレスの項目で構成されている。これにより、ユーザ(施術者)毎に設定データが格納されている場所を管理している。
【0071】
フートコントローラ設定データ32は、ユーザ(施術者)の分だけ存在している。このフートコントローラ設定データ32は、インスツルメント16を示すインスツルメント表示部32aと操作項目を設定する操作項目設定部32bとで構成されている。操作項目設定部32bは、ジョイスティック(上,下,左,右)、ニ方向スイッチA(上,下)、ニ方向スイッチB(上,下)、ニ方向スイッチC(上,下)、ニ方向スイッチD(上,下)、およびフートペダル(踏込量増加,踏込量減少,踏込量連動)といった操作側入力項目毎に登録可能に構成されている。
【0072】
そして、インスツルメント16の取り出し状態に対応して、各操作側入力項目の操作が行われた際に実行する操作項目(動作,機能)が操作項目設定部32bに登録されている。この登録されている操作項目(動作,機能)には、次のようなものがある。
【0073】
<施術用操作設定(インスツルメントの駆動に関連する)>
インスツルメント16の一種であるハンドピース等のライトON/OFF,
インスツルメント16の一種であるハンドピース等の注水ON/OFF,
インスツルメント16の一種であるハンドピース等のマイクロモータの正転/逆転,
ベースンユニット3のコップ給水,
インスツルメント16の一種であるハンドピース等のマイクロモータの回転数設定,
インスツルメント16の一種であるハンドピース等のマイクロモータのレンジ切換,
インスツルメント16の一種であるスケーラ等のパワー調整,
インスツルメント16の一種である光重合器等の照射時間設定,
【0074】
<施術外動作用操作設定(インスツルメントの駆動に関連しない)>
診療椅子4の上昇/下降,
診療椅子4の背面シート4bの起立/傾斜,
無影灯のライトON/OFF/調光,
モード切換(治療モード/レジンモード)
【0075】
このようにして、インスツルメント16が取り出されているか、あるいは全てのインスツルメント16が収納されているかによって、フートコントローラ5の各操作部(ジョイスティック5a〜フートペダル5c)で同じ操作をしても、診療椅子4や診療装置トレー部9で実行される動作が異なるようになっている。
【0076】
そして、このような詳細に定められたフートコントローラ設定データ32がユーザ別に登録できるため、施術者は自分好みの操作設定を自由に登録することができる。自分用のフートコントローラ設定データ32を登録しない場合には、デフォルト設定を使用すればよい。
【0077】
このように構成されるフートコントローラ設定データ32は、事前に施術者等によって登録されている。この事前登録は、操作可能な機能が予め複数登録されており、この登録された機能から各操作部(ジョイスティック5a〜フートペダル5c)の操作単位でどの機能をどのように動作させるか施術者に選択させることで実行される。これにより、施術者が好みの設定を事前に登録しておき、診療時に当該設定を呼び出せば(この実施例ではログインによって自動的に呼び出される)、フートコントローラ5を操作して設定済みの各種動作制御を行うことができる。
【0078】
図5は、表示装置10又はタッチパネルモニタ8aに表示する診療画面の1つであるメインメニュー画面70の画面構成図である。
【0079】
メインメニュー画面70は、インスツルメント選択ボタン71(71A〜71E)、ログインユーザー表示部73、およびホームボタン75が設けられている。
【0080】
インスツルメント選択ボタン71(71A〜71E)は、複数の接続チューブ18に接続されている各インスツルメント16のいずれかを選択するボタンである。押下されると、そのインスツルメント16の設定画面(図6及び図7参照)に移行する。図示の例では、エアタービンを用いた2つのハイスピードハンドピース(HS2,HS1)や、マイクロモータを用いた1つのロースピードハンドピース(LS1)などが選択可能に表示されている。
【0081】
ログインユーザー表示部73は、ログインしているユーザー(施術者)の氏名を表示する。これにより、現在の表示画面やインスツルメント16の駆動設定等がどの施術者用にカスタマイズされた状態であるかを一目でわかるようにしている。
【0082】
ホームボタン75は、メインメニューへ移行するためのボタンであり、現在の画面がメインメニューであるから選択不可能な状態で画面に表示されている。
【0083】
図6は、図5に示したハイスピードハンドピース(HS1)のインスツルメント選択ボタン71が選択された場合に表示する設定画面80Aの画面構成図である。
【0084】
この設定画面80Aには、ログインユーザー表示部73、注水ボタン82、ライトボタン83、可変/一定ボタン84、およびホームボタン75等が設けられている。
【0085】
注水ボタン82は、注水のON/OFFを選択許容するボタンである。初期状態は、エアタービンハンドピースの設定データにおける「注水」項目に記憶されている内容となる。
【0086】
ライトボタン83は、ライトのON/OFFを選択許容するボタンである。初期状態は、エアタービンハンドピースの設定データにおける「ライト」項目に記憶されている内容となる。
【0087】
可変/一定ボタン84は、回転数へのフートスイッチ踏込み量反映の有(可変)/無(一定)を選択許容するボタンである。初期状態は、エアタービンハンドピースの設定データにおける「回転数へのフートスイッチ踏込み量反映」項目に記憶されている内容となる。
【0088】
ホームボタン75は、選択されると図5のメインメニュー画面70に戻るボタンである。
【0089】
図7は、インスツルメント16としてマイクロモータを用いたロースピードハンドピース(LS1)が選択された場合の設定画面80Bの画面構成図である。
【0090】
この設定画面80Bには、ログインユーザー表示部73、チップエアボタン81、注水ボタン82、ライトボタン83、可変/一定ボタン84、速度レンジ切替ボタン85、回転数表示部86、設定回転数表示部87、回転数調節ボタン88、およびホームボタン75が設けられている。
【0091】
チップエアボタン81は、チップエアーのON/OFFを選択許容するボタンである。このチップエアボタン81と注水ボタン82の設定は関連づけられており、チップエアーOFFで注水ONとすることはできず、また注水ON時にチップエアーをOFFすることはできないように制御される。
【0092】
注水ボタン82、ライトボタン83、および可変/一定ボタン84は、上述した図6の注水ボタン82、ライトボタン83、および可変/一定ボタン84と同一であるため、その詳細な説明を省略する。
【0093】
速度レンジ切替ボタン85は、回転速度レンジを選択許容するボタンである。例えば、「UL」はULTRA LOW(約100〜300rpm,チップエアーOFF)であり、「L」はLOW(約100〜3,000rpm,チップエアーOFF)であり、「M」はMEDIUM(約100〜9,000rpm,チップエアーON)であり、「H」はHIGH(約100〜40,000rpm,チップエアーON)であるとすることができる。
【0094】
回転数表示部86は、マイクロモータの現在の回転数を表示する。
設定回転数表示部87は、設定された最高回転数を表示する。
【0095】
回転数調節ボタン88は、マイクロモータの最高回転数を変える操作を許容する。これにより、設定される最高回転数を少しずつ増減する、あるいは大きく増減する設定変更が可能である。
【0096】
この設定画面80A,80B等により、各種のインスツルメント16の設定を詳細に行うことができる。
【0097】
これらの図6、図7に示す設定画面80A,80Bは、どのインスツルメント16がホルダ14から取り出されているかによって変更される。すなわち、ホルダ14からインスツルメント16が取り出されると、そのインスツルメント16に適した設定画面80(80A,80B)が表示される。そして、その設定画面80の各項目内には、ログインしている施術者がカスタマイズして登録したフートコントローラ設定データ32に基づく設定が適用される。従って、施術者は、ホルダ14からインスツルメント16を取り出せば、自分専用の最適な設定でフートコントローラ5を操作して施術することができる。
【0098】
また、設定画面80A,80Bの操作は、フートコントローラ5、タッチパネルモニタ8a、およびポインティングデバイス27の操作を組み合わせて実行することができるため、本体装置8の操作ボタン8bを見ずに簡単に操作することができる。また、マルチタッチ等により、安全性を重視した操作も実現できる。
【0099】
図8は、フートコントローラ5の制御手段52が実行する動作を示すフローチャートである。
制御手段52は、操作部(ジョイスティック5a〜フートペダル5c)のいずれかの操作を検出するまで待機する(ステップS1:No)。
【0100】
操作入力を検出すると(ステップS1:Yes)、制御部52は、信号送信を実行する(ステップS2)。この信号送信は、操作部(ジョイスティック5a〜フートペダル5c)が操作されたことによる操作信号と、電源手段54の電池の残量(二次電池の残量)を示す電池残量信号とで構成されている。なお、電池残量は、電源手段54内に設けられている電池残量検出手段54aによって検出される。
【0101】
制御手段52は、診療椅子4に設けられた無線通信手段43,46から応答信号を受信するまで待機する(ステップS3:No)。この待機中に予め定められた所定時間が経過しタイムオーバーになると(ステップS4:Yes)、制御手段52は、報知手段53によりエラー報知を行って(ステップS5)、処理を終了する。このエラー報知は、ビープ音を鳴らす、「信号が正しく受信されません。タッチパネルモニタ8aをお使い下さい」と音声で案内するなど、適宜の方法によって報知する。
【0102】
応答信号を受信した場合(ステップS3:Yes)、制御手段52は、正常動作が完了したと判定して処理を終了する。
【0103】
図9は、診療装置7の制御手段24が実行するログイン処理の動作を示すフローチャートである。
制御手段24は、起動時に初期設定処理を実行し(ステップS11)、ログインされるまで待機する(ステップS12:No)。
【0104】
施術者によってログイン操作が行われると(ステップS12:Yes)、制御手段24は、パスワード等によるユーザ認証を実行する(ステップS13)。
ユーザ認証に失敗した場合(ステップS14:No)、制御手段24は、表示装置10又はタッチパネルモニタ8aにエラー報知を行い(ステップS15)、ステップS12処理を戻す。
【0105】
ユーザ認証に成功すれば(ステップS14:Yes)、制御手段24は、個人設定の有無を判定する(ステップS16)。この判定は、診療椅子4の記憶手段41に記憶されたユーザデータ31を参照し、ログインしたユーザに設定データアドレスが登録されているか否かによって判定する。
【0106】
個人設定がある場合(ステップS16:Yes)、制御手段24は、診療椅子4の記憶手段41に記憶されているフートコントローラ設定データ32を、登録されていた個人設定に変更する(ステップS17)。
【0107】
個人設定がない場合(ステップS16:No)、制御手段24は、デフォルト設定を採用する(ステップS18)。
このようにして、個人設定とデフォルト設定のいずれかの設定を採用した後、制御手段24は、採用した設定の診療画面としてメインメニュー画面70を表示し(ステップS19)、診療処理を開始する(ステップS20)。このとき表示する診療画面には、ステップS13でログイン認証した施術者の氏名をログインユーザー表示部73に表示し、フートコントローラ5の設定を含めてどの施術者用の設定になっているのかを明示する。
【0108】
図10は、診療装置7の制御手段24が実行する診療処理の動作を示すフローチャートである。
制御手段24は、インスツルメント検出手段26によりホルダ14に対してインスツルメント16が出し入れされたか(ピックアップされたか収納されたか)否かを検出する(ステップS21)。
【0109】
出し入れを検出した場合(ステップS21:Yes)、制御手段24は、フートコントローラ5の設定等に関する対応情報を取得する(ステップS22)。ここで複数のインスツルメント16のピックアップを検出した場合は、最後にピックアップを検出したインスツルメント16の対応情報を取得する。
【0110】
そして、制御手段24は、表示装置10又はタッチパネルモニタ8aに表示する画面、およびフートコントローラ5で操作できる設定を変更し(ステップS23)、変更後の設定で診療画面(設定画面80A,80B)を表示する(ステップS24)。
【0111】
このフートコントローラ5で操作できる設定の情報は、操作部(ジョイスティック5a、ニ方向スイッチ5b、フートペダル5c)のどれがどう操作されると、診療装置トレー部9や診療椅子4がどう動作するかを対応付けた実行用フートコントローラ設定データである。
【0112】
この実行用フートコントローラ設定データは、フートコントローラ設定データ32のうちホルダ14から取り出されているインスツルメント16に対応するものと同一である。例えば、インスツルメント16としてハイスピードハンドピース(エアタービン)が取り出された場合は、図4(B)に示したエアタービンハンドピースの設定を読み出して変更し、図6に示した設定画面80Aを表示する。
【0113】
全てのインスツルメント16がホルダ14に収納されている場合はフートコントローラ設定データ32のうち「全インスツルメント収納」に対応するものと同一となる。この場合は、診療椅子4の上昇/下降など、インスツルメント16に関係のない動作のみ可能となる。
【0114】
前記ステップS21でインスツルメント16の出し入れを検出しなかった場合(ステップS21:No)、制御手段24は、ステップS25に移動してフートコントローラ5から信号受信がないか確かめる。
【0115】
フートコントローラ5から信号受信がない場合(ステップS25:No)、制御手段24は、タッチパネルモニタ8aへの操作入力を受け付け(ステップS26)、受け付けた操作入力に対応する処理を実行する(ステップS27)。この処理では、インスツルメント16の設定変更や駆動、ライトのON/OFF、診療椅子4の上昇/下降など、適宜の操作が行われる。
【0116】
フートコントローラ5から信号を受信した場合(ステップS25:Yes)、制御手段24は、無線通信手段43,46によりフートコントローラ5へ応答信号の送信を実行する(ステップS28)。この応答信号の送信は、無線通信手段43,46の両方から実行する。これにより、フートコントローラ5は、応答信号を確実に受信することができる。
【0117】
なお、ステップS25においてフートコントローラ5からの信号を無線通信手段43,46の一部でしか受信できなかった場合、その受信できた無線通信手段43,46の一部からのみ応答信号を送信してもよい。この場合、フートコントローラ5は、全ての無線通信手段43,46から応答があったか、一部の無線通信手段43,46から応答があったかにより、どの無線通信手段43,46で受信できているか確認することや、その旨を報知することができる。
【0118】
制御手段24は、ステップS25での信号受信を、全ての無線通信手段43,46で受信できたか否か判定する(ステップS29)。そして、一部でも受信できていない無線通信手段43,46が存在していれば(ステップS29:No)、制御手段24は、受信できない無線通信手段43,46が存在している旨を表示装置10等により報知し(ステップS30)、次のステップS31へ処理を進める。
【0119】
ステップS25での信号受信を全ての無線通信手段43,46で受信できていれば(ステップS29:Yes)、制御手段24は、そのまま次のステップS31へ処理を進める。
【0120】
ここで、一部の無線通信手段43,46に受信不良があっても、他の無線通信手段43,46によりフートコントローラ5からの信号を正常に受信できていれば、受信不良の報知をせずに次のステップS31へ処理を進める。
【0121】
制御手段24は、受信信号に対応する設定処理を取得する(ステップS31)。ここで、受信信号には、フートコントローラ5の操作部(ジョイスティック5a〜フートペダル5c)が操作された操作信号が含まれている。この操作信号に対応する操作に対して、どのような動作が割り当てられているのかを、ステップS23で変更された後の実行用フートコントローラ設定データから取得する。これにより、現在取り出されているインスツルメント16(あるいは全て収納されている状態)に対応した適切な動作を取得できるようにしている。
【0122】
制御手段24は、電池容量が十分か判定し、十分であれば(ステップS32:Yes)、取得した設定処理の動作を実行する(ステップS33)。ここで、電池容量が十分とは、動作規制が必要な電池残量として予め定められた動作規制量よりも現在の電池残量が多い場合を指す。
【0123】
電池容量が不十分であれば(ステップS32:No)、制御手段24は、現在の動作状態を維持し(ステップS34)、表示装置10等により電池不足を報知する(ステップS35)。
【0124】
現在の動作状態の維持は、例えばインスツルメント16を駆動中であれば停止操作信号を受けていても停止せずにそのまま駆動する、あるいは、インスツルメント16が停止中であれば駆動操作信号を受けていても駆動せずにそのまま停止するなど、そのままの状態を維持することにより行う。これにより、インスツルメント16が急停止して施術の妨げになることなどを防止できる。
【0125】
図11は、ある診療装置7(図示の診療装置7A)に登録されたフートコントローラ設定データ32を、他の診療装置7(図示の診療装置7B)へ転送して登録する処理のフローチャートを示す。
【0126】
診療装置7Aの制御手段24は、タッチパネルモニタ8aにより設定転送の操作がされるまで待機し(ステップS41:No)、設定転送の操作がされると(ステップS42:Yes)、現在ログインしているユーザ(施術者)のフートコントローラ設定データ32を診療椅子4の記憶手段41または制御手段24のメモリから取得する(ステップS42)。
【0127】
制御手段24は、取得したフートコントローラ設定データ32を転送したい診療装置7Bへ向けて送信する(ステップS43)。このとき、特定の診療装置7Bを指定して送信してもよく、また、通信可能な全ての診療装置7に対して送信してもよい。また、送信方法は、無線通信手段43,46により無線通信で行う、あるいは、CAN/BUSライン20を通じて有線通信で行うなど、通信可能な適宜の装置により実行する。
【0128】
別の診療装置7Bの制御手段24は、設定データを受信するまで待機し(ステップS44:No)、設定データを受信すると(ステップS44:Yes)、フートコントローラ設定データ32を登録することで記憶する(ステップS45)。
【0129】
診療装置7Bの制御手段24は、送信元の診療装置7Aに応答送信を送信する(ステップS46)。
【0130】
診療装置7Aの制御手段24は、診療装置7Bから所定時間内に応答があれば(ステップS47:Yes)、正常終了を表示装置10又はタッチパネルモニタ8aに表示し(ステップS48)、応答がなければ(ステップS47:No)、エラー情報を表示装置10又はタッチパネルモニタ8aに表示して(ステップS49)、処理を終了する。
【0131】
以上の構成および効果により、無線で通信できるためにフートコントローラ5と診療装置7の間における実物の線の存在を排除することができる。このため、足元の制限がなくなり、コードによるフートコントローラ5の配置の制限や足操作時のコードの余りなどを排除することができる。
【0132】
また、フートコントローラ設定データ32を変更することで、フートコントローラ5で操作する内容の設定を任意に変更することができる。
【0133】
また、複数の受信手段として無線通信手段43,46を備えているため、通信障害等によってフートコントローラ5からの操作信号を受信できないことを防止でき、安定した動作を実現することができる。特に、無線通信手段43,46は、それぞれ異なる周波数で信号を受信するため、一方の周波数帯に妨害電波等が存在していても他方の周波数帯で無線通信を行うことができる。
【0134】
また、フートコントローラ5は、電池残量検出手段54aで検出した電源手段54の電池残量を診療装置7に知らせるため、電池残量が少ないことを施術者等に報知することができ、無線通信が不可能となる前に電源手段54の充電あるいは交換を実行することができる。これにより、フートコントローラ5の操作による動作制御の安定可動を実現することができる。
【0135】
また、電池残量が少ない場合、フートコントローラ5の操作によるインスツルメント16の駆動制御を制限するため、意図せずにインスツルメント16が駆動あるいは停止等することを防止でき、安全性を高めることができる。
【0136】
また、電源手段54が二次電池であり、フートコントローラ5に接続端子56が設けられているため、電源手段54の電池残量が不足しても容易に充電することができる。
【0137】
また、ホルダ14のインスツルメント検出手段26でインスツルメント16の出し入れを検出し、その検出に応じて適切なフートコントローラ設定データ32を採用するため、施術者が手作業で切替等せずともフートコントローラ5の操作により適切な動作制御を実行することができる。これにより、治療椅子4の移動から治療へのスムーズな流れを実現でき、施術者のストレスを軽減できる。
【0138】
また、インスツルメント16の出し入れ等によって変更された実行可能な操作項目を表示装置10又はタッチパネルモニタ8aの設定画面80に表示するため、施術者は、現在フートコントローラ5で操作可能な項目を目視にて確認できる。
【0139】
また、施術者が1つの診療装置7Aで自分用にカスタマイズして登録した設定データを他の診療装置7Bに転送できるため、施術者は、他の診療装置7Bでも同じ環境で診療を行うことができる。
【0140】
また、メインメニュー画面70および設定画面80には、ログインユーザー表示部73が設けられてログインしている施術者を表示するため、診療装置7がどの施術者用の設定で動作しているか容易に目視確認できる。従って、施術者は自分用の設定になっているか否かを確認してフートコントローラ5の操作等を行うことができる。
【0141】
また、フートコントローラ5は、診療装置7から応答信号がなければ無線通信に失敗していることを認識でき、またその旨を報知するため、無線通信できないことにより診療に不都合をきたすことを極力防止できる。
【0142】
また、1つの診療装置7で登録したフートコントローラ設定データ32を他の診療装置7に転送して登録できるため、施術者は、異なる診療装置7でもフートコントローラ5による操作内容を共通にでき、同じ環境で便利に利用することができる。
【0143】
また、設定画面80には、インスツルメント16を用いた診療操作やコンピュータ操作に関するログインユーザー表示部73などを1つの画面に表示できるため、便利に使用することができる。
【0144】
また、フートコントローラ設定データ32の登録の際、予め登録されている複数の操作項目から選択して登録できるため、簡単な操作でカスタマイズすることができる。
【0145】
また、フートコントローラ5の操作によるインスツルメント16の操作項目や操作内容などは、診療装置7の記憶手段41(診療椅子4内)に記憶されているため、フートコントローラ5から送信する操作信号をスイッチのON/OFFなど単純な信号とすることができる。
【0146】
なお、フートコントローラ5のフートペダル5cは、踏込み量に応じた駆動制御を可能にする構成としたが、ON/OFF信号のみを送信する構成にしてもよい。この場合、より簡易に駆動制御を行うことができる。
【0147】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の表示装置は、実施形態の表示装置10又はタッチパネルモニタ8aに対応し、
以下同様に、
駆動制限手段は、ステップS34を実行する制御手段24に対応し、
ホルダ検出手段は、インスツルメント検出手段26に対応し、
設定データは、フートコントローラ設定データ32に対応し、
診療装置側無線通信手段および複数の受信手段は、無線通信手段43,46に対応し、
双方向の通信手段は、無線通信手段43,46あるいはCAN/BUSライン20との通信部に対応し、
他の駆動手段は、昇降駆動手段44および傾斜駆動手段45に対応し、
コントローラ側無線通信手段は、無線通信手段51に対応し、
電池容量報知手段は、報知手段53に対応し、
二次電池は、電源手段54に対応し、
充電用電源端子は、接続端子56に対応し、
現在状態表示手段は、ログインユーザー表示部73に対応し、
設定データ送信処理は、ステップS43に対応し、
設定データ受信処理は、ステップS44に対応し、
電池容量情報は、電池残量に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
この発明は、歯科用ユニットなどの歯科用の診療装置を始めとして、耳鼻咽喉科、産婦人科、泌尿器科、眼科などで用いられる、接続チューブを介して多種多様なインスツルメントを接続する診療装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0149】
1…医療用診療装置、5…フートコントローラ、7…診療装置、8a…タッチパネルモニタ、10…表示装置、14…ホルダ、16…インスツルメント、24…制御手段、25…駆動手段、26…インスツルメント検出手段、32…フートコントローラ設定データ、41…記憶手段、43,46…無線通信手段、44…昇降駆動手段、45…傾斜駆動手段、51…無線通信手段、53…報知手段、54…電源手段54a…電池残量検出手段、56…接続端子、73…ログインユーザー表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診療に用いられる診療装置と、施術者に操作入力された操作信号を前記診療装置へ送信するフートコントローラとを備えた医療用診療装置であって、
前記フートコントローラは、
前記操作入力された操作信号を無線送信するコントローラ側無線通信手段を備え、
前記診療装置は、
前記コントローラ側無線通信手段から送信された前記操作信号を無線受信する診療装置側無線通信手段と、
該診療装置の操作項目と前記操作信号とを対応づけた設定データを記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とする
医療用診療装置。
【請求項2】
前記診療装置側無線通信手段は、
1つの前記コントローラ側無線通信手段に対する複数の受信手段により構成されていることを特徴とする
請求項1記載の医療用診療装置。
【請求項3】
前記フートコントローラは、
電源手段の電池残量を検出する電池残量検出手段を備え、
前記コントローラ側無線通信手段は、前記電池残量を無線送信する構成であり、
前記診療装置は、
前記診療装置側無線手段で受信した前記電池残量が所定量以下になると電池容量情報を報知する電池容量報知手段を備えたことを特徴とする
請求項1または2記載の医療用診療装置。
【請求項4】
前記診療装置は、
施術に用いられるインスツルメントと、
該インスツルメントに駆動力を付与する駆動手段と、
前記電池容量が予め定められた動作規制量以下になると前記フートコントローラの操作信号による前記駆動手段の駆動を制限する駆動制限手段とを備えた
請求項3記載の医療用診療装置。
【請求項5】
前記電源手段は、充電可能な二次電池で構成され、
前記フートコントローラは、
前記二次電池の充電に用いる充電用電源端子を備えていることを特徴とする
請求項3または4のいずれか1つに記載の医療用診療装置。
【請求項6】
前記設定データは、施術に用いるインスツルメントの駆動手段の駆動に関する施術用操作設定に関するデータと、該インスツルメントに関連しない他の駆動手段に関する施術外動作用操作設定に関するデータとで構成され、
前記診療装置は、
前記インスツルメントを出し入れするホルダと、
該ホルダへのインスツルメントの出し入れを検出するホルダ検出手段とを備え、
インスツルメントの取り出しを検出した場合、前記フートコントローラの操作信号を受信すると前記施術用操作設定に関するデータに応じた前記インスツルメントの駆動手段の駆動を許容し、
全てのインスツルメントが前記ホルダに収納されている状態を検出した場合、前記フートコントローラの操作信号を受信すると前記施術外動作用操作設定に関するデータに応じた前記他の駆動手段の駆動を許容する構成である
請求項1から5のいずれか1つに記載の医療用診療装置。
【請求項7】
前記診療装置は、前記インスツルメントの出し入れ後の状態で前記設定データに基づいて実行可能な操作項目を表示する表示装置を備えた
請求項6記載の医療用診療装置。
【請求項8】
前記診療装置側無線通信手段は、
前記設定データを他の診療装置に送信する設定データ送信処理と、
他の診療装置から前記設定データを受信する設定データ受信処理とが実行可能な双方向の通信手段であり、
前記診療装置側無線通信手段により他の医療用診療装置から前記設定データを受信すると、前記記憶手段に記憶している設定データに登録する
請求項1から7のいずれか1つに記載の医療用診療装置。
【請求項9】
前記記憶手段は、施術者毎に異なる複数の前記設定データを記憶する構成であり、
前記診療装置は、現在採用している設定データがどの施術者のものかを表示する現在状態表示手段を備えたことを特徴とする
請求項1から8のいずれか1つに記載の医療用診療装置。
【請求項10】
診療に用いられる診療装置と、施術者に操作入力された操作信号を前記診療装置へ送信するフートコントローラとを備えた医療用診療装置を操作制御する医療用診療装置の操作制御方法であって、
前記フートコントローラは、
前記操作入力された操作信号を無線送信するコントローラ側無線通信手段が備えられ、
前記診療装置は、
前記コントローラ側無線通信手段から送信された前記操作信号を無線受信する診療装置側無線通信手段と、
該診療装置の操作項目と前記操作信号とを対応づけた設定データを記憶する記憶手段とが備えられ、
前記フートコントローラで操作入力された操作信号を受信すると、前記診療装置は、前記設定データに記憶された前記操作信号と対応する操作項目の動作を実行する
医療用診療装置の操作制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−161112(P2011−161112A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29571(P2010−29571)
【出願日】平成22年2月13日(2010.2.13)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】