説明

医療用X線スキャン装置

【課題】 本発明の目的は、複数のX線管球を順次曝射させる医療用多管球X線スキャナー装置において、X線を遮断するためにグリッドに印加するバイアス電源を、簡単な構成で作ることを目的とする。
【解決手段】 X線管2が曝射から曝射停止に移行する時期に、曝射時にコンデンサC1に充電されていた電圧を、X線管2のアノード、カソード、コンデンサC3及びダイオードQ3のルートで放電させ、その放電によりコンデンサC3に充電されたマイナス電圧をスイッチS1によってグリッド2bへ印加するとにより、X線管2のX線が遮断される構成とした。コンデンサC2もコンデンサC3と同じ役割を担うが、各X線管に共用される。コンデンサC1及びC2は、アノード2aとカソード2cとに高電圧を供給するケーブルの浮遊容量で構成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のX線管を順次、曝射(照射、放射)させて被検体を撮像するするX線CT装置等に用いられる医療用X線スキャン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被検体の断層像を撮影するための医療用として、例えばX線CT装置が広く利用されている。X線CT装置は、被検体の断層像を取得するため、X線管装置が架台に収容され、回転しながら曝射する構成にされている。しかし、X線管装置を組み込んだ架台は、かなり重量があり、回転スピードに影響し、結果として、撮像スピードが遅くなる欠点があった。
【0003】
そこで、R−R型CTスキャナと呼ばれている装置があって、例えば、図7のように中央部に被検体を収容できる空間を有するドーナツ状の形状を有する架台300の内部に、複数のX線管(100,101,102)がほぼ等間隔に配置され、そのX線管に対向する位置の架台300にX線検出器(200,201、202)を配置した曝射方式が考えられてきた。図7は、3つのX線管による曝射例で、X線管100に対して被検体を挟んだ対向位置にあるX線検出器200とが被検体に対して120度回転しつつ、X線管100が曝射し、被検体からの透過X線をX線検出器200が、検出することにより撮像を行っている。次の120度をX線管101とX線検出器201で撮像し、さらに次の120度を、X線管102とX線検出器202で撮像することにより、順次、撮像範囲(回転角度範囲)を分担して、撮像する。そうすることにより、例えば、X線管100とX線検出器200が動作しているときは、他は待機(停止)状態であるから、図7の散乱X線1があったとしても、それが雑音としての影響が無い撮像が得られ、結果として画質の良好な診断画像が得られる。また、図7では、120度だけ回転すれば良いので、一度で360度回転させるより、回転スピードが上げられる。なお、散乱X線2のような散乱は、X線検出器200の入力面に設けられたコリメータなどで正面角度以外の角度からの入力を防止するようにされている。
【0004】
ところで、図7の各X線管としては、一般に、アノード、グリッド、カソードを有する三極X線管を使用し、グリッドのバイアス電源を制御することにより、曝射状態、曝射停止状態(X線遮断状態)を設定している。図5に示すように、三極X線管(以下、「X線管」という。)の管電流(アノードを流れる電流)を流す曝射状態では、カソードに対するグリッド電圧をほぼゼロとし、X線を遮断するため(曝射停止状態とするため)には、X線管のグリッド電圧を、カーソード電圧よりマイナス数千ボルトの電圧(カットオフ電圧)を印加する必要がある。しかし、アノードをアース側とし、カソードをマイナス電圧とすると、カソードには、―80kV〜―140kVの高絶対電圧(ここでは、符号を取り除いた電圧値の大きいことを表現するために、高絶対電圧と言う。以下、同じ。)が、印加される。したがって、グリッド制御用のバイアス電源は、このカソードの高絶対電圧回路中に配置しなければならないため、絶縁を確保する必要があり、そのために、装置が大型化し、CTスキャナが回転する架台300に搭載するのは困難であった。
【0005】
一方、X線管のグリッドを制御するバイアス電源の簡易化を図ったものとして、本発明の出願人と同一出願人による、特許文献1記載のものがあった。特許文献1の技術は、浮遊容量の充放電を利用したもので、その動作概要を図6を用いて説明する。
【0006】
図6において、高電圧電源部1のスイッチSpをオンにし、X線管2のアノード2aとカソード2cに高絶対電圧を印加し、曝射を開始する。カソード2cにはフィラメントがありフィラメント電源(不図示)により加熱されている。このとき、コンデンサC1が充電される。ダイオードQ1は、導通状態である。このとき、コンデンサC2も充電しようとするが、ダイオードQ1が、導通しているため、放電され、充電されない。また、グリッド2bとカソード2c間の電圧は、ダイオードQ1により、ほぼ同電位にされているので、グリッド2bは、管電流を通過させる(X線を曝射している状態)。
【0007】
次に、スイッチSpがオフにされたとき、未だコンデンサC2は充電されないが、グリッド2bとカソード2c間の電圧は、コンデンサC2が充電されていないからほぼ同電位のままなので、充電されていたコンデンサC1は、アノード2a、カソード2c及びコンデンサC2で構成される閉ループに対して放電を開始する。放電を開始するとダイオードQ1は、非導通状態となり、コンデンサC2が充電されていく。そして、コンデンサC1とコンデンサC2の結合点は、カソード2cに対して、マイナス電圧に充電され、カットオフ電圧になったところで、グリッド2bは、遮断状態となる。
【0008】
特許文献1の技術によれば、このコンデンサC1及びC2の代わりに、高絶対電圧を供給するための電源ケーブルの浮遊容量を利用して行うことができる。
【0009】
【特許文献1】特開平11―204289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の従来技術には、次のような問題があった。つまり、多管球のCTスキャン装置(R−R型CTスキャン装置)のグリッド制御用のバイアス電源を回転する架台に搭載するのは困難なので、上記特許文献1の技術を採用することにより、バイアス電源を簡単化して架台に取り組もうとすると、特許文献1の技術、特に、コンデンサをケーブルの浮遊容量として用いたときは、浮遊容量が多管球の各グリットに対して、同時に、同一作用をもたらすため、多管球の個々を曝射、曝射停止の各状態に制御するバイアス電源には利用できないとという欠点があった。
【0011】
本発明の目的は、複数のX線管球を順次曝射させる医療用X線スキャナー装置において、曝射停止するためのグリッドのバイアス電源をコンデンサから供給する各管球のグリッドに対して共通に使用するコンデンサと各管球毎に分離して利用できるコンデンサとに分ける構成にすることにより、多管球の個々のグリッドのバイアス電源を簡易化できる技術を提供することである。
さらに、その共通して使用するコンデンサとして、ケーブルの浮遊容量を用いることができるバイアス電源を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記、目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、アノード、カソード及びグリッドを有する複数のX線管と、
前記複数のX線管の前記カソードと前記アノード間に高絶対電圧を印加するための高絶対電圧電源部と、
一端が前記アノードに接続され他端が第1の結合点とされた第1のコンデンサと、前記第1の結合点と前記カソードとの間に接続され、前記第1の結合点の電位が前記カソードの電位より高いときにオンする第1のスイッチ機能素子とを備えた共通機能部と、
一端が前記カソードに接続され他端が第2の結合点とされた第2のコンデンサと、前記第2の結合点と前記第1の結合点との間に接続され、前記第2の結合点の電位が前記第1の結合点の電位より高いときにオンする第2のスイッチ機能素子と、一つの前記X線管のグリッドを曝射時に該X線管のカソード側に接続させ、曝射停止時に前記第2の結合点側に接続させるように切り替える切替部とを有する個別機能部を前記複数のX線管に対応して並列に備え、
前記複数のX線管を順次、曝射させる構成とした。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第2のスイッチ機能素子に並列に第3のコンデンサが接続されている構成とした。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、内部から外側に向けて芯線、第1の線材及び第2の線材が互いに絶縁されて同軸状に形成されたケーブルを有し、前記第2の線材に前記X線管のアノードが接続され、前記芯線に前記カソードが接続されて、前記高絶対電圧が供給される構成を備え、さらに前記第1のコンデンサとして第2の線材と第1の線材との間の浮遊容量を用い、前記第3のコンデンサとして前記芯線と第1の線材間の浮遊容量を用い、前記2の線材を前記第1の結合点とした構成を備えた。
【0015】
請求項4に記載の発明は、アノード、カソード及びグリッドを有する複数のX線管と、
前記複数のX線管のカソードとアノード間に曝射時に高絶対電圧を印加する高絶対電圧電源部と、曝射時に前記グリッドとカソード側とを接続する、前記複数のX線管に対応した複数の第1のスイッチと、一端が前記アノードに接続され曝射時に前記高絶対電圧により充電される第1のコンデンサとを含む共通機能部と、
一端を前記カソードに接続され、前記第1のスイッチが解放された曝射停止開始時に前記第1のコンデンサの放電電流をX線管を介して受けて充電される第2のコンデンサと、前記第2コンデンサの他端を前記グリッドに接続して前記充電により形成された負方向電圧を印加することによって前記X線管を曝射停止状態にする第2のスイッチとを有するグリッド駆動部を前記X線管に対応して複数備え、
前記第1のコンデンサの他端と各グリッド駆動部の前記第2のコンデンサの他端とを結び、前記各X線管の曝射停止開始時において、前記第1のコンデンサの放電が前記第2のコンデンサの充電を形成する方向へのみ電流が流れるようにするダイオードを前記グリッド駆動部に対応して前記複数有する結合部とを備え、
前記複数のX線管を順次、曝射させる構成とした。
【0016】
請求項5に記載の発明は、複数のX線管のグリッドに対して共通に使用する第1のコンデンサと、各X線管毎に分離して使用する第2のコンデンサとに分けて構成し、さらに、結合部により、1つのX線管の曝射時に前記第1のコンデンサを充電させる充電ルートを形成させ、前記1つのX線管が曝射から曝射停止に移行する曝射停止開始時に、前記第1のコンデンサの電圧を放電させて、その放電電流によって、前記1つのX線管に対応する第2のコンデンサを充電させる充放電ルートを形成させ、かつその充電された第2のコンデンサの電圧を前記1つのX線管のグリッドに印加させて曝射を停止させる構成を備えた。
【発明の効果】
【0017】
請求項1、2、4及び5に記載の本発明よれば、複数のX線管を備えたX線スキャン装置において、簡易な構成でグリッドのバイアス電源を供給して、パルス状のX線を高速に曝射、停止できる。さらに、簡易な構成であるため、電源の小型化が図れる。
【0018】
さらに、その共通して使用するコンデンサとして、ケーブルの浮遊容量を用いる構成とし、高絶対電圧供給用のケーブルを兼用できる構成としたので、より小型化、スキャンの速度アップが図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る医療用X線スキャン装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の構成を示す図である。図2は、図1の実施形態における充放電の動作を説明するための図である。図3は、図1の実施形態の動作タイミングを説明するための図である。図4は、図1の実施形態における高絶対電圧供給用のケーブルであって、その浮遊容量を実施形態の一部のコンデンサとして用いるケーブルの構造を示す図である。
【0020】
図1において、図6におけるブロックの名称及び符号が同一のものは、機能も同一である。図1のX線管2、X線管3、X線管4は、同じ機能のX線管である。同様に、個別機能部40、個別機能部50,個別機能部60も同一機能であり、結合部20により、共通機能部10に対して並列に結合されている。以下の説明では、共通機能部10、結合部20、個別機能部40及びX線管2のラインを中心に、図6と異なるところを主に説明する。また、図1において、カソードは、フィラメントも兼ねており、そのフィラメント電源に接続されているが、そのフィラメント電源の図示及び説明は省略する。
【0021】
図1において、タイミング信号発生手段5は、例えば、X線CT診断装置等の制御部(不図示)から、曝射をコントロールするための制御信号を受けて、X線管2、X線管3及びX線4を順次、曝射させるためのタイミング信号を生成し、スイッチS1〜スイッチS2を駆動する。そのタイミング信号発生手段5が出力するタイミング波形を図3に示す。図3で、スイッチS2,S4及びS6がオンするときが、曝射状態であり、スイッチS1,S3及びS5がオフするときが、曝射停止状態(待機状態)である。曝射と曝射の間は、X線管の曝射を切り替えるための遷移時間Δtを持たせている。
【0022】
共通機能部10は、ほぼ図6と同じであるが、図6では、ダイオードQ1を用いていたのを図1では、ツエナーダイオードQ2も用いている。これは、後記するように、危険防止のためであり、ツエナーダイオードQ2がコンデンサC2の充放電に寄与する機能としては、図6のダイオードQ1と同じである。
【0023】
図1において、結合部20は、個別機能部40,50及び60を共通機能部10に結合させるもので、ダイオードQ3,Q4及びQ5により、各共通機能部をOR結合させている。結合部20の主な役割は、後記するように、曝射停止時に、スイッチS1,S3及びS5のいずれか1つオンにされたとき、コンデンサC1の放電電流により、コンデンサC3、C4又はC5の内いずれか1つを充電させるための経路を形成するものである(詳細は、次の動作説明を参照)。見方を変えれば、個別機能部40,50,60が、交互に共通機能部10を利用できるように結合させるものである。なお、スイッチS1とS2,スイッチS3とS4及びスイッチS5とS6のそれぞれが対で組合せを構成し、曝射状態と曝射停止状態を切り替える切替部を構成している。
【0024】
次に、図1を構成する回路動作を、図2(A)及び(B)を基に、等価的に説明する。図2(A)及び(B)は、グリッド2bがカソード2cの電位と同じ状態(曝射状態)から、切替によって、グリッド2bがカソード2cの電位より、カットオフ電圧にバイアスされる状態(曝射停止状態)までの過程を説明するための図である。そして、図2(A)は、高電圧電源部1のスイッチSpがオンされ、アノード2aとカソード2c間に高絶対電圧が印可されたとき(曝射状態)の、充電電流ルートを示す概略等価回路である。図2(B)は、高電圧電源部1のスイッチSpがオフにされたとき(曝射停止状態)の、放電電流及び充電電流の各ルートを示す概略等価回路である。
【0025】
図2(A)では、機能としては図6と同じ機能をである。ここでは、時刻t0にスイッチS1がオフにされ、スイッチS2がオンにされる。したがって、グリッド2bとカソード2cの電位が同じになり、X線管2には、管電流が流れ、X線が曝射される。一方、ツエナーダイオードQ1は、短絡状態となり、コンデンサC1は、高絶対電圧により充電される。そして、コンデンサC2は、ほとんど充電されない。
【0026】
図2(B)では、時刻t1にスイッチS1がオンにされ、スイッチS2がオフにされる。したがって、グリッド2bの電位は、カソード2cの電位と同じではなくなるが、図5に示す0とカットオフ電圧の間にある(つまり、管電流が流れうる状態にある。)。この状態で高絶対電圧はオフにされるが、コンデンサC1には、高絶対電圧が充電されているので、充電された高絶対電圧により、アノード2a、カソード3c、コンデンサC3、及びダイオードQ3の放電電流ルートが形成され、放電される。このとき、コンデンサC3にとっては充電されることになる。
【0027】
図2(B)では、コンデンサC3の第2の結合点で見れば、カソード2cの電位に対してマイナス方向へ充電される。この第2の結合点の電位が、図5で示されるカットオフ電圧を超えると、X線管2は、遮断状態となり、実質的な曝射停止状態となる。
【0028】
上記の現象を言い換えると、曝射時にコンデンサC1にエネルギーを充電し、曝射停止を開始したとき、その充電したエネルギーをコンデンサC2へ移し、コンデンサC2のエネルギーでX線管2の曝射を停止させる構成としている。つまり、コンデンサC1のエネルギーの再利用を図って、グリッドのバイアス電源を作っている(グリッド駆動部30)。
【0029】
図3において、曝射停止開始時である時刻t1から、実質的な曝射停止状態となるための移行期間が、遷移時間Δtである。コンデンサC3が充電されるときの波形図を図3に示す。なお、図2(B)において、コンデンサC3が充電されるときは、ツエナーダイオードQ2がオフにされ、コンデンサC2も充電されている。
【0030】
そして、次に、時刻t2(=t1+Δt)でスイッチS4がオン、スイッチ5がオフにされX線管3の曝射が始まり、上記個別機能部50が、上記の個別機能部40と同じ動作により曝射停止状態に切り替えられる。以下、同様に、X線管4の曝射状態、被曝射状態が切り替えられる。このようにして、複数のX線管が順次、動作する。
【0031】
図2(A)及び(B)の充放電電流ルートの形成、X線管2,3、4の曝射に対応してそれぞれについて順番に行われ、同時には、形成されないようにされている。その重要な役割が、ダイオードQ3,Q4及びQ5で構成される結合部20である。そして、ダイオードQ3,Q4及びQ5は、第1の結合点が第2の結合点より低い電圧の時だけオンになるので、X線管2,3又は4のいずれかが曝射状態になっていれば、オフになる。このとき(曝射時)は、コンデンサC3,C4及びC5にカソードに対してマイナス電圧に充電された電圧は、ほぼ保持されている。つまり、各第2の結合点の電圧は、ほぼカットオフ電圧に保持されている。したがって、スイッチS1,S3、又はS3のいずれかがオンされたとき(曝射停止状態に切り替えられたとき)は、素早くほぼカットオフ電圧に保持されている電圧を各グリッドに供給できるので、実質的な曝射停止状態へ移行するスピードを早くすることがでる。
【0032】
また、上記図2(B)においては、ツエナーダイオードQ1がオフであり、コンデンサC2もコンデンサC3と同じように充電される。したがって、コンデンサC3の充電が不十分で、第2の結合点の電圧が第1の結合点より高い場合はオンになり、コンデンサC2に充電された第1の結合点の電圧(カソードに対してマイナスの電圧)で、グリッド2bにカットオフ電圧を供給できる。つまり、コンデンサC3及びC2の双方が、補完しあいながらカットオフ電圧を供給できる。ただし、コンデンサC2は、各X線管に対して、共通に利用される。
【0033】
なお、上記のことから、ツエナーダイオードQ2は、曝射状態のときのみオンになるスイッチでも構成できる。また、ダイオードQ3,Q4及びQ5は、それぞれ、時間Δtだけ、つまりコンデンサC3,C4,C5が充電される期間をオンにするスイッチでも構成できる。これらを、スイッチで構成した場合の駆動タイミングは、タイミング信号生成手段5で容易に作りだせる。特許請求の範囲に記載の「スイッチ機能素子」とは、上記のことから、ダイオードでスイッチ動作させてもよいし、スイッチで動作させることもできるという趣旨である。
【0034】
また、第1の結合点のカソード2cに対する電圧は、カットオフ電圧よりさらにマイナスの電圧になる必要はないので、カットオフ電圧付近で、かつそれより幾らか低い電圧で一定になるようににするために、ツエナーダイオードQ2のツエナー効果を利用している。言い換えると、コンデンサC3の放電とコンデンサC2及びC3の充電とは、バランスするように動作するが、不安定である。そのため危険を防止するうえから、ツエナーダイオードQ2により、カットオフ電圧付近でリミットさせるようにしたものである。
【0035】
上記において、各X線管の曝射時に、スイッチS2,S4又はS6のいずれかが、オンになり、グリッドとカソードとの間が短絡し、同電位になることを説明したが、曝射時のグリッドとカソードとの間に、例えば、数オームの抵抗があっても、動作することができる。
【0036】
上記のコンデンサC1及びコンデンサC2は、高電圧電源部1からX線管2,3及び4へ電圧を供給するケーブルの浮遊容量を利用できる。図4は、そのケーブルの断面図である。
【0037】
図4において、第1の部材及び第2の部材は、金属のシールド部材で構成されている。そして、絶縁部材、第1の部材、絶縁部材及び第2の部材が、芯線を中心として、順に同軸状に構成されている。この構造において、芯線の端を高圧電源部1と各X線管のカソード間の配線に用い、第2の部材を高圧電源部1と各X線管のアノード間の配線に用い、図1の第1の結合点を第1の部材とする。そうすることにより、コンデンサC1として第1の部材と第2の部材の間にある浮遊容量を利用し、コンデンサC2として芯線と第1の部材間の浮遊容量を利用できる。
【0038】
したがって、このケーブルの浮遊容量を利用してX線管のグリッドのバイアス電圧を供給する実施形態を、図7のような、架台300内に設けることにより、絶縁を確保したバイアス制御用の電源を収納することなく、構成できる。したがって、小型化(軽量化)に寄与し、より高速スキャンを行える効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態の構成を示す図である。
【図2】図1の実施形態における充放電の動作を説明するための図である。
【図3】図1の実施形態の動作タイミングを説明するための図である。
【図4】図1の実施形態における高絶対電圧供給用のケーブルであって、その浮遊容量を実施形態の一部のコンデンサとして用いるケーブルの構造を示す図である。
【図5】X線管のグリッド電圧対管電流(アノード電流)の特性を示す図である。
【図6】従来技術を説明するための図である。
【図7】多管球X線スキャンによるCTスキャンを説明するための図である。
【符号の説明】
【0040】
1 高圧電源部
2、3、4 X線管
5 タイミング信号発生手段
10 共通機能部
20 結合部
30 グリッド駆動部
40、50、60 個別機能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、カソード及びグリッドを有する複数のX線管と、
前記複数のX線管のカソードと前記アノード間に高電圧を印加するための高電圧電源部と、一端が前記アノードに接続され他端が第1の結合点とされた第1のコンデンサと、前記第1の結合点と前記カソードとの間に接続され、前記第1の結合点の電位が前記カソードの電位より高いときにオンする第1のスイッチ機能素子とを備えた共通機能部と、
一端が前記カソードに接続され他端が第2の結合点とされた第2のコンデンサと、前記第2の結合点と前記第1の結合点との間に接続され、前記第2の結合点の電位が前記第1の結合点の電位より高いときにオンする第2のスイッチ機能素子と、一つの前記X線管のグリッドを曝射時に該X線管のカソード側に接続させ、非曝射時に前記第2の結合点側に接続させるように切り替える切替部とを有する個別機能部を前記複数のX線管に対応して並列に備え、
前記複数のX線管を順次、曝射させることを特徴とする医療用X線スキャン装置。
【請求項2】
前記第2のスイッチ機能素子に並列に第3のコンデンサが接続されていることを特徴とする請求項1に記載の医療用X線スキャン装置。
【請求項3】
内部から外側に向けて芯線、第1の線材及び第2の線材が互いに絶縁されて同軸状に形成されたケーブルを有し、前記第2の線材に前記X線管のアノードが接続され、前記芯線に前記カソードが接続されて、前記高電圧が供給される構成を備え、さらに前記第1のコンデンサとして第2の線材と第1の線材との間の浮遊容量を用い、前記第3のコンデンサとして前記芯線と第1の線材間の浮遊容量を用い、前記2の線材を前記第1の結合点とした構成を備えたことを特徴とする請求項2に記載の医療用X線スキャン装置。
【請求項4】
アノード、カソード及びグリッドを有する複数のX線管と、
前記複数のX線管のカソードとアノード間に曝射時に高電圧を印加する高電圧電源部と、曝射時に前記グリッドとカソード側とを接続する、前記複数X線管に対応した複数の第1のスイッチと、
一端が前記アノードに接続され曝射時に前記高電圧により充電される第1のコンデンサとを含む共通機能部と、
一端を前記カソードに接続され、前記第1のスイッチが解放された曝射停止開始時に前記第1のコンデンサの放電電流をX線管を介して受けて充電される第2のコンデンサと、前記第2コンデンサの他端を前記グリッドに接続して前記充電により形成された負方向電圧を印加することによって前記X線管を曝射停止状態にする第2のスイッチとを有するグリッド駆動部を前記X線管に対応して複数備え、
前記第1のコンデンサの他端と各グリッド駆動部の前記第2のコンデンサの他端とを結び、前記各X線管の曝射停止開始時において、前記第1のコンデンサの放電が前記第2のコンデンサの充電を形成する方向へのみ電流が流れるようにするダイオードを前記グリッド駆動部に対応して前記複数有する結合部とを備え、
前記複数のX線管を順次、曝射させることを特徴とする医療用X線スキャン装置。
【請求項5】
複数のX線管のグリッドに対して共通に使用する第1のコンデンサと、各X線管毎に分離して使用する第2のコンデンサとに分けて構成し、さらに、結合部により、一つのX線管の曝射時に前記第1のコンデンサを充電させる充電ルートを形成させ、前記一つのX線管が曝射から曝射停止に移行する曝射停止開始時に、前記第1のコンデンサの電圧を放電させて、その放電電流によって、前記一つのX線管に対応する第2のコンデンサを充電させる充放電ルートを形成させ、かつその充電された第2のコンデンサの電圧を前記一つのX線管のグリッドに印加させて曝射を停止させる構成を備えたことを特徴とする医療用X線スキャン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−244939(P2006−244939A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61828(P2005−61828)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】