説明

医薬品の調製におけるHMG−CoA還元酵素阻害剤およびファルネシルピロリン酸合成酵素阻害剤の使用

本発明は、ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)還元酵素阻害剤、およびファルネシルピロリン酸合成酵素阻害剤、またはこれらに関連した生理学上許容可能な塩のうちの1つを、細胞内におけるプレニル化タンパク質の蓄積または残存のうち少なくともいずれかに関係する病理学的または非病理学的状態、例えば早老症(ハッチンソン−ギルフォード症候群)、拘束性皮膚障害もしくは生理学的な老化についてヒトまたは動物を治療するために使用される組成物、特に医薬組成物、の調製において使用することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内におけるプレニル化タンパク質の蓄積または残存のうち少なくともいずれか一方と関係する病理学的または非病理学的状態の治療の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
真核細胞の核は、孔を備えた二重膜(核膜)によって境界が定められており、核膜は核および細胞質の2つのコンパートメントの間の分子の交換を制御している。この核膜は、核の内容物、すなわち遺伝物質および核ゲノムの機能に必要なすべての酵素機構を、ある程度隔離している。
【0003】
核膜は、2つの同心性の膜、すなわち小胞体とつながっている外膜と、内膜とから構成されている。内膜の内側面には、核ラミナと呼ばれる繊維性の密な網目が隣接している。これは、ラミンの重合体と関連タンパク質とを主成分とするタンパク質の格子である。脊椎動物では、ラミンには2つのサブクラス、すなわちAタイプラミン(ラミンAおよびC)とBタイプラミン(ラミンB1、B2およびB3)とがあり、いずれもラミナの生成に関与している。後者は、核膜の内膜に固定された他のタンパク質との会合によって適所に保持される(文献はグルンバウム(Gruenbaum)ら、2005を参照のこと)。
【0004】
ラミンは、中間径フィラメントファミリー(タイプV)に属するフィラメント状のタンパク質である。中間径フィラメントはいずれも共通の構造を、すなわち、短いN末端球状セグメント(ヘッド)と、他方のC末端球状セグメント(テイル)とが、いくつかのαらせんを成した長い中央ドメイン(ロッドドメイン)で隔てられた構造を有している。球状のテイルは特に、合成後の核への位置指定を可能にする核局在化シグナル(NLS)を含んでいる。中央ドメインは、2つの並列したラミン分子が会合し、二量体が逆向きに会合することによってフィラメントを構成するのを可能にする。この構造により、耐久性の高い機械的性質が付与される。
【0005】
ラミンAおよびラミンBだけが、前駆体の合成後に成熟化する(文献はグルンバウム(Gruenbaum)ら、2000を参照のこと)。ラミンCは、直接成熟型で合成される。
【0006】
ラミンAおよびラミンBの前駆体の終端は、特徴的なCaaXユニットである(Cはシステイン、aは非荷電の脂肪鎖を備えたアミノ酸、Xは任意のアミノ酸(ここではメチオニン)、文献はレヴィーおよびコー(Levy and Cau)、2003を参照のこと)。
【0007】
このC末端CaaXユニットにより、脂肪酸(一般に、C15脂肪酸のファルネシル)のファルネシルトランスフェラーゼによる取り付けが可能となる。このプレニル化(ファルネシルユニットは、イソプレンと呼ばれるC5脂肪族の基本ユニットから生じる)によって、プレラミンは細胞質ゾルで合成された後に小胞体の膜内に入ることができる。プレラミンはこの膜内でエンドプロテアーゼの作用を受けるが、エンドプロテアーゼ自体は小胞体の外膜に挿入されており、その活性部位は細胞質にある。プレラミンAの特異的エンドプロテアーゼはFace1(またはZMPSTE24(酵母STE24ホモログの亜鉛メタロプロテアーゼ)であり、Face2(またはRce1、Ras変換酵素)はプレラミンBに特異的である。これらの酵素は、システインとその次のアミノ酸(脂肪族)との間のペプチド結合の加水分解を触媒し、プレラミンを3アミノ酸だけ短縮する。その後、ファルネシル化されたシステインのカルボキシル末端は、イソプレニルシステイン−カルボキシメチルトランスフェラーゼ(ICMT)によって認識され、ICMTはエステル化によって該末端にメチル基を取り付ける。
【0008】
プレラミンAの成熟の場合だけ引き続きFace1による第2のエンドプロテアーゼ作用の切断が行われ、15アミノ酸のファルネシルペプチドおよび成熟ラミンAが放出される。このラミンA(もはや脂肪酸を含んでいない)は可溶性となり、自身の核局在化シグナルにより核内に取り込まれ、核ラミナ自体に、さらには核コンパートメントの残りの部分に位置し、正に核の骨格を構成している(グルンバウム(Gruenbaum)ら、2005)。他方、成熟ラミンBは依然としてC末端にファルネシル化およびメチルエステル化されたシステインを有している。したがって、成熟ラミンBは小胞体の外膜に、ひいては核膜の核質側の面に挿入された状態を維持し、専ら核ラミナと、自身が固定されている核膜の内膜にのみ存在する。
【0009】
用語「プレニル化」は、システインのチオール基に、炭素原子15個のファルネシル鎖(この場合はファルネシル化と呼ばれる)、または炭素原子20個のゲラニルゲラニル鎖(この場合はゲラニルゲラニル化と呼ばれる)(リード(Reid)ら、2004)いずれか、あるいはイソプレンの任意の他の誘導体を取り付けることを意味するものと解するべきである。
【0010】
C末端コンセンサス配列(CaaX)を認識するファルネシルトランスフェラーゼ(FTase)によって触媒されるファルネシル化は、該ユニットのシステイン残基にファルネシル基を優先的に取り付ける。
【0011】
ゲラニルゲラニル化は、上記ユニットのシステイン残基に、ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(GGTase)によりゲラニルゲラニル基を取り付けることである。
これらの脂肪酸は、ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムAを用いて細胞が特にコレステロール、ステロイド、ヘモグロビンのヘムおよびユビキノンを製造するために使用する生合成方法から生じる(ハンプトン(Hampton)ら、1996)。
【0012】
プレニル化タンパク質のファミリーは、ヒトゲノム中およそ300のタンパク質を含んでなり、その大多数はC末端のCaaXユニットによって特定することができる(リード(Reid)ら、2004)。Ras、Rho、Rabファミリーのタンパク質(レオン(Leung)ら、2006)、ミトコンドリアへの輸送機能を果たすある種のタンパク質(HDJ2)、一部の有系分裂タンパク質(CENPE、CENPF)は特にプレニル化されている(ウィンターヴァンおよびケーシー(Winter−Vann and Casey)、2005)。一般に、CaaXユニットにおいてXがセリン、メチオニン、システイン、アラニンまたはグルタミン酸である場合、優先的に付加されるイソプレノイドはファルネシルである。Xがロイシンである場合、そのCaaLユニットは、ゲラニルゲラニル基の転移を触媒するGGTaseによって認識されることが好ましいであろう(バッソ(Basso)ら、2006)。このシステインにイソプレン由来のその他の基を取り付けることも可能であると思われるが、これは文献に述べられていない。
【0013】
ヒトでは3つのラミン遺伝子が存在する。1q21.2−q21.3に位置しているLMNA遺伝子(ウィドナー(Wydner)ら、1996)は、選択的スプライシングによりラミンAおよびラミンCを生じる。LMNA遺伝子は12個のエキソンからなる。エキソン1の開始部は、ラミンAおよびCに共通のN末端の球状端部をコードし;エキソン1の終端部およびエキソン7の開始部までは、中央のらせん部分をコードし;最後に、その他のエキソンがC末端の球状端部をコードする(レヴィーおよびコー(Levy and Cau)、2003)。
【0014】
実際、該遺伝子はスプライシングの違いによる4種の生成物をコードし、そのうちラミンCならびにプレラミンAが主な2つである(リンおよびウォーマン(Lin and Worman)、1993)。ラミンAおよびラミンCの作り分けは、プレメッセンジャーのエキソン10の選択的スプライシング部位を用いて、ラミンCがエキソン1〜10によってコードされ、ラミンAがエキソン1〜9と、エキソン10の最初の90塩基対と、エキソン11および12(ラミンAに特異的)とによってコードされるように行われる。
【0015】
従って、プレラミンAおよびラミンCのペプチドは、最初の566アミノ酸は同一であり、次いでラミンCおよびプレラミンAのC末端部はそれぞれ6個および98個の特異的アミノ酸を含んでいる。
【0016】
Bタイプラミンは3つの異なるタンパク質を含んでなる(シェルトン(Shelton)ら、1981)。すなわちラミンB1、B2(この2つが最も代表的なアイソフォームである)およびB3である。LMNB1遺伝子は5q23.3−q31.1に位置し、ラミンB1をコードする11個のエキソンを含んでなる(リンおよびウォーマン(Lin and Worman)、1995)。LMNB2遺伝子は19p13.3に位置し、選択的スプライシング機構によってラミンB2およびB3をコードする(ビアモンティ(Biamonti)ら、1992)。
【0017】
Bタイプラミンが発生の初期段階からすべての細胞において構成的に発現されるのに対し、Aタイプラミンは一般に胚系の細胞には存在せず(ロバー(Rober)ら、1989、スチュアート(Stewart)ら、1987)、あらゆる分化した体細胞において発現される。これらの発現は、組織に応じて生きている限り調節を受けている(デューク(Duque)ら、2006)。この発現は、ラミンAの発現は特異的に阻止されているがラミンCおよび他のラミンは全く同じように発現するマウスが、明白な表現型を示さないので、必須ではないように見える(フォング(Fong)ら、2006)。
【0018】
ラミンは、種々の機能を有する非常に多くのタンパク質を相手に相互作用する。従ってラミンは、核における数多くのプロセス、例えばDNAの複製および修復、転写およびスプライシングの制御、クロマチン構造の組織化に関与する(文献としては、シューメイカー(Shumaker)ら、2003、ザストロー(Zastrow)ら、2004、ハチソン(Hutchison)ら、2004、グルンバウム(Gruenbaum)ら、2005を参照のこと)。ラミナ構造の変質により、多数のヒトの遺伝性病変が生じる。変質は、ラミン、またはラミナの他のタンパク質をコードする遺伝子の突然変異に起因する。これらの病変は、総称してラミノパシーとして分類されている(ブレアス(Broers)ら、2006、マトー(Mattout)ら、2006)。近年、ラミンの成熟を担う酵素(特にFace1)の遺伝子中の突然変異であって、ラミノパシーのグループにも属する病変を生じるものが特定された(ナバロ(Navarro)ら、2004および2005)。
【0019】
現時点では、LMNB1遺伝子またはLMNB2遺伝子の突然変異に関連したヒトにおける唯一の病変は、LMNB1遺伝子の完全な重複によって引き起こされる白質ジストロフィである(パディアス(Padiath)ら、2006)。バラッケー−サイモン(Barraquer−Simon)症候群の患者のLMNB2で見つかった変異配列の潜在的な意味については疑問が残る(ヘゲル(Hegele)ら、2006)。しかしながら、RNAi(RNA干渉)実験によってin vitroで(ハーバース(Harborth)ら、2001)、またマウスモデルにおいて(ベルギュ(Vergnes)ら、2004)、Bタイプラミンが細胞の発生および完全性にとって不可欠であることが実証されている。これは、ラミンB1の欠損によりマウスで周産期死亡が引き起こされるからである。さらに、同じLMNB1欠損マウスの胚の繊維芽細胞の核は、LMNA遺伝子の突然変異を有する患者で観察されたものに近似した、核の形態の著しい変質を示す。加えて、Bタイプラミンが有糸分裂の際の分裂紡錘体の形成に必要であることが最近示されており、このことは、Bタイプラミンの役割が細胞周期の際に活動的かつ多種多様であって、核のアーキテクチャの維持に限られるものではないことを証明するようである(ツァイ(Tsai)ら、2006)。この後者の役割については、最近の論文が、Bタイプラミンの構造上の機能を実証している、すなわちラミンB1を人為的に失わせた細胞は、細胞内に、自由に回転する「漂う」核を有する(リ(Li)ら、2007)。2つのラミンB1およびB2の間に存在する機能上の重複性は、おそらく、このラミンが不可欠であることを直接反映するものでもあり、高い淘汰圧をかけ、かつ対応する遺伝子の配列のいかなる突然変異の影響も覆い隠している。
【0020】
LMNA遺伝子の突然変異に起因するA/Cラミンの機能的変質により、組織に単独に影響を及ぼす軽度なものから周産期において致命的な全身性のものに及ぶ臨床的範囲の実に種々な病変を含む、少なくとも15の障害が生じる。
【0021】
多くのLMNA遺伝子突然変異が、核膜中のタンパク質のアセンブリを明らかに変化させ、その機能発現を妨害する。様々な組織の細胞において、核の形態の変化がもたらされる。すなわち、核が細胞質中に遺伝物質を押し出すヘルニアを起こすことが多い(ゴールドマン(Goldman)ら、2004)。
【0022】
正常時に核膜と会合するタンパク質、Bラミン、核膜孔のある種のタンパク質、およびLAP2タンパク質は、このヘルニアの周辺には存在しない。
この形態学的異常に続いて、最終的に細胞死を引き起こすことになる機能的変質が生じる。用語「ラミノパシー」として分類されるすべての病変の中で、プレニル化型のタンパク質の異常な蓄積に関係するものだけが、本発明に関係がある。
【0023】
これらは主としてハッチンソン−ギルフォード症候群すなわち早老症(デサンドレ−ジオヴァノーリ(De Sandre−Giovannoli)ら、2003、エリクソン(Eriksson)ら、2003)、ならびに拘束性皮膚障害(ナバロ(Navarro)ら、2004)である。これら2つの症候群では、生理病理学的原因は、患者の細胞内における未成熟のファルネシル化プレラミンの蓄積および残存である。
【0024】
出生期前後において致死的な拘束性皮膚障害が特徴とする臨床症候は、ほとんどが子宮内での運動を制限する皮膚欠損の結果である。この病状は非常にまれである。皮膚は硬く張りつめ、所々に産生し、その結果例えば腋窩や頚部で裂傷を引き起こす。睫毛、眉および体毛は存在しないか、または非常にまばらである。多くの場合は羊水過多であり、胎児の運動の減少が妊娠第6月から認められる。骨格レベルでは、X線撮影から、あらゆる関節における収縮、脚の変形、貧弱で形成障害かつ二分割された鎖骨、リボン型の肋骨、管状をなした腕部長骨および頭蓋の鉱物質消失が明らかとなる。致死的な拘束性皮膚障害は常染色体劣性遺伝である。
【0025】
LMNAおよびZMPSTE24/Face1の突然変異が上記病状について報告されている(ナバロ(Navarro)ら、2004)。いずれの場合も、生理病理学的メカニズムは同じである。すなわち、プレラミンAは成熟することができず(Face1ヌル突然変異、またはプレラミンAの突然変異による切断部位の消失)、ファルネシル化されたままであり、したがって核膜に挿入された状態にとどまる。細胞内におけるこれらの異常な前駆体(恐らくラミンBおよびCが各々の相手と正常に相互作用するのを妨げる)の蓄積および残存は、細胞の死、ならびに即患者の死亡を引き起こす。当初考えられたように、細胞毒性をもたらすのは実際に成熟ラミンAの欠如ではなくファルネシル基の残存であることが、明白に実証されている(フォング(Fong)ら、2004)。
【0026】
2003年4月、下顎末端異形成症や、早期老化をもたらすいくつかの疾患に共通の症状の照合から、本発明者らは、早老症すなわち早期老化の最も典型的かつ最も深刻なものが、LMNA遺伝子の突然変異に起因することを示した(デサンドレ−ジオヴァノーリ(De Sandre−Giovannoli)ら、2003)。ハッチンソン−ギルフォード症候群とも呼ばれるこの疾病に罹患した小児は、最大で正常な人より10倍速い促進老化を患い、期待寿命は13年以下である。フランス国では、およそ600万人に1人の小児が罹患する。症状は、皮膚の老化、禿頭症、顎の大きさの縮小ならびに老年期に関係する問題、例えば関節の硬直および心血管障害である。心血管障害、例えば心筋梗塞またはアテローム性動脈硬化症などは、死亡の原因となることが多い。
【0027】
関与する突然変異であってLMNA遺伝子のエキソン11に位置するものは、プレmRNAの隠れたスプライシング部位を活性化し、その結果150ヌクレオチドの欠失mRNAを生じる(デサンドレ−ジオヴァノーリ(De Sandre−Giovannoli)ら、2003、エリクソン(Eriksson)ら、2003)。この欠失mRNAが翻訳されて、正常なラミンAへと成熟することができない異常なプレラミンA、プロゲリン(progerin)となる。すなわち、プロテアーゼ認識部位を含んでなるエキソン11の50アミノ酸が存在しないことにより、プロゲリンの2回目の切断が妨げられ、そのC末端にファルネシル基が維持される。したがってプロゲリンは核膜の核質側の面に挿入されたままとなり、核膜は特徴的な変質、すなわち細胞質ゾルへの核質のヘルニアおよび辺縁部ヘテロクロマチンの分布異常を示す(ゴールドマン(Goldman)ら、2004)。さらに、プロゲリンの細胞毒性の原因は、成熟(切断、メチル化)を担う酵素のうちのいくつかが存在する小胞体外膜への固定にさらに必要とされるファルネシル基の残存である(フォング(Fong)ら、2004)。
【0028】
これらの全身性の病変には、通常時に老化と関連する症候の出現を早期に伴うという特殊性がある。これらに共通する生理病理学的特徴は、プレニル化ラミンが生成され、述べたような結果を伴うことである。
【0029】
最近の2つの研究により、短縮型または非短縮型のファルネシル化プレラミンの核内蓄積を低減することにより、細胞レベルの表現型の出現が有効に防止されることが示されている。1つは、Face1プロテアーゼが欠損している早老マウスモデルに対して実施された(ペンダス(Pendas)ら、2002)。このマウスを、半量のラミンAを発現するマウス(LMNA+/−マウス)と交配させると、Face1の欠如の影響はより小さくなる(ベレラ(Verela)ら、2005)。第2の研究は、隠れたスプライシング部位を標的とするモルホリノ(アンチセンスオリゴヌクレオチド)でHGPS患者の細胞を処理すると突然変異の表現型が排除されることを示している(スカフィディおよびミステリ(Scaffidi and Mistelli)、2005)。
【0030】
いくつかの最近の研究(スカフィディおよびミステリ(Scaffidi and Mistelli)、2006、ツアオ(Cao)ら、2007)から、生理的な老化プロセスへのラミンAの関与が示されている。特に、生理的な老化の際に、異常なラミンAが時間をかけて細胞核の辺縁に蓄積することが実証された。この異常ラミンは事実プロゲリンであり、細胞がその正常な一生の間に、かつエキソン11の隠れたスプライシング部位を時折偶発的に使用して機能する間に、産生されたプロゲリンがラミナの下に少しずつ蓄積する。最終的に、「正常な」老化細胞は、上記の偶発的なスプライシング事象によって引き起こされるラミノパシーのヘルニアの特徴を示し、このことが該細胞の死亡をもたらすのかもしれない。
【0031】
同一の分子メカニズムが、第1には早老症の個体における早期老化の症候の原因となり、第2に、はるかに低いレベルで、突然変異を持たない個体の生理的な老化に関与するように思われる。
【0032】
先行技術には、プロゲリンの病的な産生によって引き起こされた細胞表現型の改善について述べられた2つの治療的手法が存在する。これらの解決策の第1は、エキソン11の上記の隠れたスプライシング部位を、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて(スカフィディおよびミステリ(Scaffidi and Mistelli)、2005)、またはsiRNAを生産するレトロウイルスを用いて(ホアン(Huang)ら、2005)処理することにより「マスキング」して、スプライセオソームが該スプライシング部位を使用するのをごく単純に阻止することである。その結果はin vitroでは有望であるが、これは「遺伝子」療法の問題となり、この手法をめぐる薬物の開発は、in vivoでの効果を得るためのOASのベクター化に関係するあらゆる障害を伴って、必然的に長期的かつ複雑である。第2の解決策は、ファルネシルトランスフェラーゼ、すなわちファルネシルピロリン酸からプレラミン上へのファルネシル基の転移を触媒する酵素を阻害することから成る。そのような阻害剤(FTI)が使用される場合、培養物のHGPS細胞(早老症)において一部分だけ「正常な」核膜が回復し、またRDマウス(KO ZMPSTE24)の生存率は改善される(グリンおよびグラバー(Glynn and Glover)、2005、ケーペル(Capell)ら、2005、トート(Toth)ら、2005、フォング(Fong)ら、2006)。
【0033】
しかしながら、ファルネシル化の阻害は代償性のゲラニルゲラニル化を引き起こす可能性がある(ビショップ(Bishop)ら、2003)。
さらに、FTIはプロテアソームを阻害して細胞周期の停止を引き起こすことが最近報告されている(デムヤネッツ(Demyanets)ら、2006、エフューおよびキィオマーシ(Efuet and Keyomarsi)、2006)。したがってこの治療が、ユビキチン化はされるがプロテアソームで分解されないであろうプロゲリンの核質中への蓄積を引き起こすことは確実である。
【0034】
さらに、in vivoにおけるプロゲリンのファルネシル化レベルの低減は非常に低く、約5%であることが最近の研究から報告されているが(ヤング(Young)ら、2006)、このレベルはin vitroで観察された核の形態の回復について説明するには十分でない。
【0035】
最後に、FTIはタンパク質のプレニル化経路のうち1経路のみに特異的であり、翻訳後プレニル化の広域阻害剤として考えることはできない。
さらに、この経路の酵素のうちの1つであるメバロン酸キナーゼが全く存在しないと幼時に死亡することが報告されている(この酵素をコードする遺伝子の機能のホモ接合型突然変異による喪失、ホフマン(Hoffmann)らにより報告された症候群、2003)。
【0036】
長い研究の末、本発明者らは、ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA還元酵素の阻害剤(スタチンファミリー)およびファルネシルピロリン酸合成酵素の阻害剤(アミノ−ビスホスホネートファミリー、NBP)、またはこれらの生理学上許容可能な塩のうちの1つを併用することが、C15およびC20の両方、または特徴解析されていない形式のあらゆるタンパク質プレニル化経路を遮断するという点で、細胞内におけるプレニル化タンパク質の蓄積または残存のうち少なくともいずれかに関係する病理学的または非病理学的状態の有効な治療法であることを示した。本発明者らはまた、ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)還元酵素の阻害剤とファルネシルピロリン酸合成酵素の阻害剤との併用は、早老症患者の繊維芽細胞における正常な表現型の回復という相乗効果を有することを見出した。この併用による効果は、個別に使用した一方または他方の阻害剤の効果より明らかに大きい。
【0037】
早老症患者の細胞に対して併用すると、タンパク質のプレニル化が阻害され、したがってファルネシル化されていないプレラミンAが出現し核の症状が改善される。
この結果から、ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)還元酵素の阻害剤およびファルネシルピロリン酸合成酵素の阻害剤、またはこれらの生理学上許容可能な塩のうちの1つを、細胞内におけるプレニル化タンパク質の蓄積または残存のうち少なくともいずれかに関係する病理学的または非病理学的状態の治療のための組成物、特に医薬組成物の調製において使用することを想起することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
したがって、本発明の目的は、ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)還元酵素の少なくとも1つの阻害剤、およびファルネシルピロリン酸合成酵素の少なくとも1つの阻害剤、またはこれらの生理学上許容可能な塩のうちの1つを、細胞内におけるプレニル化タンパク質の蓄積または残存のうち少なくともいずれかに関係する病理学的または非病理学的状態の治療のための組成物、特に医薬組成物の調製において使用することである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)還元酵素の阻害剤でありかつファルネシルピロリン酸合成酵素の阻害剤でもある化合物を使用することも、本発明の範囲内にある。
【0040】
好都合なことに、本発明による組成物は、ファルネシル化タンパク質またはゲラニルゲラニル化タンパク質のうち少なくともいずれか一方の細胞内における蓄積または残存のうち少なくともいずれかに関係する病理学的または非病理学的状態の治療を意図するものであってよい。
【0041】
特に具体的には、本発明による組成物は、細胞内におけるプロゲリンの蓄積または残存のうち少なくともいずれかに関係する病理学的または非病理学的状態の治療、さらにより具体的には、短縮型であれ修飾型であれファルネシル化されたプレラミンAの細胞内における蓄積または残存のうち少なくともいずれかに関連した状態の治療を意図するものであってよい。
【0042】
特に、生理的な老化は生きている間に細胞内にプロゲリンが蓄積することと関係があること、およびプロゲリンは特に間充織細胞に集中することが認められるので、本発明による組成物は、特に皮膚または血管内皮のうち少なくともいずれか一方に関して細胞老化作用を予防することを意図するものであってよい。
【0043】
本発明による組成物は、任意の生物、ヒトまたは動物を、特に細胞老化作用の予防のために治療することを意図するものであってよい。したがって該組成物は、ヒトの医学および獣医学の両方に適用されるものである。
【0044】
本発明によれば、ファルネシルピロリン酸合成酵素の任意の阻害剤またはその生理学上許容可能な塩のうちの1つを、本発明による組成物の調製に使用することができる。
生理学上許容可能な塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸もしくはリン酸や、カルボン酸、例えば酢酸、ギ酸、プロピオン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、グリオキシル酸もしくはアスパラギン酸や、アルカンスルホン酸、例えばメタンスルホン酸もしくはエタンスルホン酸、またはアリールスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸もしくはパラトルエンスルホン酸とともに形成された塩である。
【0045】
ファルネシルピロリン酸合成酵素を特に阻害するのは、ポリホスホネートファミリーを構成するもののうちの1つ、特にアミノビスホスホネート(NBP)、またはその生理学上許容可能な塩のうちの1つであってよい。
【0046】
ポリホスホネートは、骨粗鬆症の治療および骨再生治療において非常によく使用される合成分子である。
用語「ホスホネート」は、ホスファートに非常によく似た分子に対して用いられる:
【0047】
【化1】

ビスホスホネート(BP)のコアは、例えばATPにみられるようなP−O−P結合であってただし酸素が炭素に置き換えられたものに相当する。このことにより、ビスホスホネート分子に格別な安定性が付与される。
【0048】
単純なビスホスホネートは、2つのホスファート基(OP−)がビスホスホネート基に置き換えられたADPに相当する。
【0049】
【化2】

中央の炭素は、ホスファートの酸素とは違って2つの結合に関与することが可能であり、この炭素上にグラフトされた基の性質によってビスホスホネートの特異性が生じる。
「側」鎖(R1およびR2)が、アミン官能基(NH)またはより広くは1以上の窒素原子を含んでなる場合、アミノビスホスホネート(すなわちNBP)と呼ばれる。
【0050】
当然、他の置換基が酸素に結合されてもよい。
溶液中のピロリン酸またはピロホスファート(PPi)
【0051】
【化3】

は、多くの代謝反応において基質輸送体として用いられ、反応が終わると元の状態に戻る。ピロホスファートに連結された分子を使用する代謝経路のうちの1つが、タンパク質のプレニル化経路である。
【0052】
ゲラニル−PP(C10)にイソペンテニル−PP(C5の基本ユニット)をグラフトしてファルネシル−PPを生じる、ファルネシルピロリン酸合成酵素(FPS)という酵素で触媒される反応から、PPiが放出される。
【0053】
NBPによって特異的に阻害されるのはこのステップである。これに関して、また例として、アミノビスホスホネート(ファルネシルピロリン酸合成酵素阻害剤)は:
アレンドロン酸またはそのイオン形態であるアレンドロネート;
クロドロン酸またはそのイオン形態であるクロドロネート;
エチドロン酸またはそのイオン形態であるエチドロネート;
イバンドロン酸またはそのイオン形態であるイバンドロネート;
メドロン酸またはそのイオン形態であるメドロネート;
ネリドロン酸またはそのイオン形態であるネリドロネート;
オルパドロン酸またはそのイオン形態であるオルパドロネート;
パミドロン酸またはそのイオン形態であるパミドロネート;
リセドロン酸またはそのイオン形態であるリセドロネート;
チルドロン酸またはそのイオン形態であるチルドロネート;
ゾレドロン酸またはそのイオン形態であるゾレドロネート;
ジホスホン酸4−N,N−ジメチルアミノメタンまたはそのイオン形態であるジメチルアミノメタンジホスホネート;
【0054】
α−アミノ−(4−ヒドロキシベンジリデン)ジホスホネート
から選択することができる。
本発明によれば特に、ゾレドロン酸(ゾレンドロン酸とも呼ばれる)またはそのイオン形態であるゾレドロネート(ゾレンドロネートとも呼ばれる)を使用することが好ましい。
【0055】
本発明によれば、任意のHMG−CoA還元酵素阻害剤、またはその生理学上許容可能な塩のうちの1つを、組成物の調製に使用することができる。
特に、HMG−CoA還元酵素阻害剤は、脂溶性であれ水溶性であれスタチンファミリーの分子、またはその生理学上許容可能な塩のうちの1つであってよい。
【0056】
スタチンはキノコにおいて発見された。スタチンは、コレステロールおよびステロイドの生合成における主要酵素であってコエンザイムAに結合したヒドロキシメチルグルタラートの還元を触媒してメバロン酸(メバロナート溶液)とするHMG−CoA還元酵素に対し阻害活性を有する。この阻害は、ヒドロキシメチルグルタラートの骨格を備えた構造的アナロジーによってもたらされる。関与する代謝経路は確かにコレステロール生合成経路であるが、該経路はプレニル基の合成経路でもある。プレニル基は炭素数5のイソプレンを基本ユニットとするポリマーであって、細胞のおよそ300種のタンパク質を修飾し、該タンパク質に親油性の尾部を取り付けて、特に該タンパク質が細胞膜に固定されるのを可能にするために用いられる。
【0057】
主なポリプレンは、いずれもピルバートおよびHMG−CoAから生じるものであり、ゲラニル(C10)、ファルネシル(C15)およびゲラニルゲラニル(C20)である。
【0058】
スタチンはいずれも全体的に見て肝臓選択性を有するが、すべてが同じ様式で細胞内に侵入するわけではない。その理由は、プラバスタチンおよびロスバスタチンがいずれも親水性で、したがって水溶性であるのに対し、他のスタチンは全て親油性で、したがって原形質膜(脂質二分子膜)を通って自由に拡散することが可能であり、間違いなくより大きな毒性を有することが明らかであるからである。水溶性スタチンは、細胞内に侵入するために、特異的輸送体である有機アニオン輸送体3すなわちOAT3、またはSLC22A8を必要とする(タケダ(Takedaa)ら、2004)。
【0059】
これらは高コレステロール血症の治療に非常によく使用されており、まれな副作用もよく解析されている。この副作用は、横紋筋融解症の特定の症例(使用される分子に応じて症例の1%〜7%、エヴァンス(Evans)ら、2002)にみられ、治療を受けている患者にその前兆的症候である筋肉痛があれば治療は即時停止される。
【0060】
この点に関して、また例として、スタチンは、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、リバスタチン、メバスタチン(またはコンパクチン)、フルインドスタチン、ベロスタチン、フルバスタチン、ダルバスタチン、セリバスタチン、ペントスタチン、ロスバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、またはこれらの生理学上許容可能な塩のうちの1つから選択することができる。
【0061】
ロバスタチン、プラバスタチンおよびシンバスタチンは真菌の代謝産物に由来する分子であり、その他(アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチンおよびロスバスタチン)は完全な合成物である。本発明によれば特に、水溶性の半天然スタチンであるプラバスタチンが使用される。
【0062】
当然ながら、本発明に従って1つまたは2つ以上ものファルネシルピロリン酸合成酵素阻害剤を、1つまたは2つ以上ものHMG−CoA還元酵素阻害剤とともに使用することが可能である。
【0063】
本発明の特定の形態によれば、組成物は、タンパク質のプレニル化の抑制を必要とする病理学的または非病理学的状態の治療を意図するものであってよい。これらの病変は病名の付いたものでもそうでないものでもよく、例えばコステロ症候群もしくはヌーナン症候群、心臓・顔・皮膚症候群、またはRasおよびシグナル伝達タンパク質の異常プレニル化もしくは持続的プレニル化と関係する疾病であってよい。
【0064】
本発明のさらに別の特定の形態によれば、組成物は、自然なものであれ、早発性のものであれ、促進性のものであれ老化の症候を示す病理学的または非病理学的状態の治療を意図するものであってよい。特に、血管内皮の劣化(血管内皮の保護)、皮膚の老化、および骨の溶解の症候の症例である。
【0065】
特に、本発明の組成物は、早老症(HGPS、ハッチンソン−ギルフォード早老症候群)および拘束性皮膚障害(RD)の治療を意図した医薬組成物である。
本発明によれば、ファルネシルピロリン酸合成酵素阻害剤およびHMG−CoA還元酵素阻害剤は、好都合なように生理学的に有効な量で組成物中に存在する。
【0066】
一般的に言えば、投与すべき用量は、患者、病状、投与様式などに従って当業者が調節することができる。当然ながら、恐らく他の有効成分または生理的なレベルの許容可能な任意のビヒクル(安定化剤を含めた、バッファー、生理食塩水、等張液など)と併用して、反復投与を実施することもできる。
【0067】
一般に、阻害剤の1日量は、必要な治療効果を得るための最小量になるだろう。
本発明による、ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)還元酵素阻害剤およびファルネシルピロリン酸合成酵素阻害剤を使用する組成物は、消化管経路もしくは非経口経路用に製剤化することができる。
【0068】
前記組成物はまた、少なくとも1つの他の有効成分、特に治療上有効な他の成分を、同時もしくは個別に用いるため、または長期にわたって用いるために含んでいてもよい。
本発明に従って、ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)還元酵素阻害剤およびファルネシルピロリン酸合成酵素阻害剤を、1つ以上の添加剤を含んだ混合物中または不活性のビヒクルすなわち生理学的に不活性かつ無毒のビヒクル中に含めて、組成物中で用いることができる。生理学的な使用に適合し、かつ当業者に周知の塩溶液、生理溶液、等張溶液、バッファー溶液などを例として挙げることができる。
【0069】
組成物は、分散剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤などから選択された1以上の作用薬またはビヒクルを含むことができる。製剤(液体製剤、注射可能な製剤、または固体製剤のうち少なくともいずれか)に使用することができる作用薬またはビヒクルは特に、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、シクロデキストリン、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、ラクトース、植物油または動物油、アラビアゴムなどである。
【0070】
組成物は、恐らくは長期放出もしくは遅延放出のうち少なくともいずれか一方を供するガレノス製剤型またはデバイスを用いて、注射可能な懸濁物、ゲル剤、油剤、錠剤、坐剤、散剤、カプセル剤などの形態に製剤化することができる。この種の製剤については、セルロース、カーボネートまたはデンプンのような作用薬が有利に使用される。
【0071】
投与は、当業者に周知の任意の方法により、好ましくは経口経路または注射によって、典型的には筋肉内、静脈内もしくは腹腔内経路で達成することができる。
経口経路による投与が好ましい。
長期にわたる治療の場合には、好ましい投与方法は舌下投与、経口投与、または経皮投与であろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】水溶性スタチン(プラバスタチン P、20〜100μM)およびアミノビスホスホネート(NBP ゾレドロネート Z、20〜100μM)の用量を増加させて処理した参照用の「正常な」繊維芽細胞についてウェスタンブロット法で得られた結果を示す図。レーンA〜Iはそれぞれ、P20/Z20、P20/Z60、P20/Z100、P60/Z20、P60/Z60、P60/Z100、P100/Z20、P100/Z60、P100/Z100である。レーンJは、プレラミンAが存在する陽性対照(DR患者の繊維芽細胞)、レーンKは溶媒(PBS)のみで処理した陰性対照である。
【図2】上記製品各々の有効量で得られた結果を示す図。
【図3】2つの製品を一緒に投与した場合に得られた優れた効果を示す図。
【図4】老化細胞に対する2つの製品の共同作用を示す図。
【図5a】早老症のモデルマウス(Face1酵素を合成しない)に対する2つの製品の共同作用を示す図。3か月齢の、それぞれ野生型マウス、Zmpste24−/−マウス、およびZmpste24−/−で治療を受けたマウスを示す写真。
【図5b】早老症のモデルマウス(Face1酵素を合成しない)に対する2つの製品の共同作用を示す図。3か月齢の、野生型マウス(n=6)、Zmpste24−/−の非治療群(n=7)、および治療群(n=8)の体重を示す図。
【図5c】早老症のモデルマウス(Face1酵素を合成しない)に対する2つの製品の共同作用を示す図。治療した雌(n=7)(白抜きの菱形)の生存が、治療していないマウス(n=7)(黒塗りの菱形)と比較して顕著に延長したことを示す生存曲線(カプランマイヤー法)。
【図5d】早老症のモデルマウス(Face1酵素を合成しない)に対する2つの製品の共同作用を示す図。治療したマウスおよび非治療マウスの脛骨をμCT走査装置によって3Dで再構成した断層撮影画像(上図)。下図は、骨体積(左側、a)および1平方ミリメートル当たりの骨梁の数(右側、b)を示す。
【図5e】早老症のモデルマウス(Face1酵素を合成しない)に対する2つの製品の共同作用を示す図。肝細胞に関する核異常(%)の定量。左側は、DAPIを用いた核の蛍光標識であり、右側は異常な核の計数である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以降の実施例は、本発明をどのようにも限定することなく、本発明を例証するものである。
【実施例1】
【0074】
水溶性のヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)還元酵素阻害剤およびファルネシルピロリン酸合成酵素阻害剤の併用の、正常細胞および早老症細胞の培養物に対する相乗作用
【0075】
A)プロトコール
細胞および細胞培養
細胞株は、コリエル研究所(Coriell Institute)から得た参照用の繊維芽細胞であるAG16409、または拘束性皮膚障害に罹患した患者の生検材料から得た繊維芽細胞のいずれかである。これらの細胞株をP2室において5%CO下37℃で培養する。
【0076】
標準完全培地は、RPMI(インビトロジェン(Invitrogen))に、ウシ胎児血清20%(インビトロジェン);L−グルタミン200mM(インビトロジェン);1×ペニシリン/ストレプトマイシン/ファンギゾン混合物(100×ストック、キャンブレックス(Cambrex))、を補足したものである。
【0077】
細胞のハーベスト
細胞は、以下の方法(75cmの大型フラスコ、BDファルコン(BD Falcon)用のプロトコール)でトリプシン処理することによってハーベストする。すなわち、培地を吸引除去し;細胞を、10mlの1×PBS(インビトロジェン)で洗浄し、10ml;
【0078】
5mlの1×トリプシン/EDTA溶液(キャンブレックス)を加え;フラスコを37℃でおよそ6分間インキュベートし(この間に細胞が剥がれる);15mlの完全培地で希釈してトリプシンを抑制し;細胞を、16℃で毎分1000回転として10分間遠心分離処理して濃縮し;濃縮した細胞を2mlの1×PBSに再懸濁し、同一条件下で再度遠心分離処理し;細胞を、後に使用するために冷凍するか、あるいはこの洗浄済みの濃縮細胞から移植を行う。
【0079】
処理薬物
使用するプラバスタチン溶液(水溶性スタチン)は以下のように調製する。すなわち、40mgのプラバスタチン(シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)、P4498)を滅菌水に溶解して10mMのストック溶液を作製する。
【0080】
試験した終濃度は、該ストック溶液を完全培地で希釈して得られた500nM、1、5、50および100μMとした。
使用するゾレドロネート(NBP)の溶液は以下のように調製する。すなわち、(1−ヒドロキシ−2−イミダゾ−ル−1−イル−ホスホノ−エチル)ホスホン酸のストック溶液(0.8mg/ml、ノバルティス(Novartis))を濃度2mMに調節する。
【0081】
試験した終濃度は、該ストック溶液を完全培地で希釈して得られた500nM、1、5、50および100μMとした。
ウェスタンブロット
・細胞の調製
ウェスタンブロット実験については、細胞は以下のように処理する。すなわち、およそ7.5×10個の細胞を大型フラスコに播種し、ほぼコンフルエントになるまで(4日間)下記条件で培養する。
【0082】
4日後に、細胞を1×PBSで洗浄し、処理薬物を加えた完全培地中に入れる。
細胞を、37℃のインキュベータで処理時間(順次または同時に6〜72時間)インキュベートする。
【0083】
処理終了時に、細胞をトリプシン処理(上記プロトコール)し、得られた濃縮細胞をタンパク質の抽出まで−80℃に保存する。
・ウェスタンブロット用のタンパク質の抽出
細胞濃縮物を300μlの溶解バッファーすなわち:
トリトンX100 1%
SDS 0.1%
デオキシコール酸ナトリウム 0.5%
NaCl 50mM
EDTA 1mM
トリスHCl(pH7.4) 20mM
プロテアーゼ阻害剤 1ペレット/50ml
(ロッシュ(Roche) 11697498001)
の中に入れる。
即座に:
オルトバナジン酸ナトリウム 1mM
PMSF 1mM
を添加する。
細胞を、30秒間×2回の音波処理に供する(ブランソン(Brandson)Sonifier(R)細胞破砕器B15)。
【0084】
細胞破砕片を、4℃で毎分10,000回転として10分間遠心分離処理する。
タンパク質上清を使用時まで−80℃に保存する。
タンパク質の用量決定は解凍時に実行する。
・ウェスタンブロット用のゲル
ラミンA/Cの異なる形態を検出するためには通常、8%アクリルアミドゲル
アクリルアミド/ビスアクリルアミド(37/1) 8%
トリスHCl(pH8.8) 375mM
SDS 0.1%
APS 0.1%
TEMED 0.01%
が使用される。
上記の分離ゲル上に濃縮ゲル
アクリルアミド/ビスアクリルアミド(37.5/1) 3%
トリスHCl(pH8.8) 375mM
SDS 0.1%
APS 0.1%
TEMED 0.01%
を注ぐ。
試料のタンパク質濃度を分析し、アリコートをチューブ1本当たり50μgに調節して溶解バッファーで15μlとする。
【0085】
5μlのローディングバッファーを各試料に添加する。
SDS 4%
トリスHCl(pH6.8) 100mM
グリセロール 20%
β−メルカプトエタノール 20%
ブロモフェノールブルー 微量
試料を95℃で5分間加熱することにより変性させ、ウェルに入れる。
泳動は、以下のバッファーすなわち
トリスベース 0.3%
グリシン 1.44%
SDS 0.1%
の中で、50ボルト、次いで100ボルトで行う。
・トランスファー
トランスファーメンブレン(Hybon P、アマシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences))を、エタノール中に浸漬させた後に、滅菌水中で5分間、ならびにトランスファーバッファーすなわち
【0086】
トリスベース 12mM
グリシン 96mM
エタノール 20%
の中で10分間液浴させることによって準備する。
ゲルをトランスファーバッファー中で20分間湿らせ、次いでサンドイッチを組み立てる(Miniprotean(R)システム、バイオラッド(Biorad))。
【0087】
トランスファーは、低温チャンバ内で、10ボルトで一般に一晩かけて実施する。
メンブレンを1×PBS中ですすぎ、湿気を避けて保存し、検出を行う際に使用する。
・検出
メンブレンを、飽和溶液すなわち
カゼイン 10%
トゥイーン20 0.1%
PBS 1×
の中で、室温で1時間インキュベートする。
メンブレンを洗浄バッファー(0.1%トゥイーン20/1×PBS)中で10分間ずつ2回すすぐ。
【0088】
一次抗体を飽和バッファー中で希釈する(詳細および希釈については以下の「免疫標識」を参照のこと)。
メンブレンを一次抗体とともに室温で1時間撹拌しながらインキュベートする。
終了したら洗浄バッファーで3回すすぎ、次いで同じバッファーで15分間ずつ3回洗浄する。
【0089】
二次抗体(ペルオキシダーゼ結合システム、ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson Immunoresearch))を飽和バッファー中で1/10000に希釈する。
【0090】
この溶液中でメンブレンを室温で30〜45分間撹拌しながらインキュベートする。
終了したら洗浄バッファーで3回すすぎ、次いで同じバッファーで15分間ずつ3回洗浄する。
【0091】
検出は、アマシャム・バイオサイエンシズのECL Plus(TM)ウェスタンブロッティングシステムキットを用いて供給業者の指示書に従って実施する。
発色後、メンブレンをBiomax(TM)MRフィルム(コダック(Kodak))に、十分なシグナルを呈するのに必要な時間曝露する。
【0092】
免疫標識
・細胞の調製
細胞培養物をトリプシン処理し、細胞をノイバウアー(Neubauer)型血球計数盤で計数する。
【0093】
実験用の培養ウェル(ヌンク(Nunc)、参照番号177399)に、1ウェル当たり細胞5×10個の割合で播種する。
完全培地に処理薬物(スタチン、NBPまたは両方)を添加し、細胞を適当な時間培養する。
【0094】
終了したら培地を吸引除去し、ウェルを取り壊す。
このプレートを1×PBS中で洗浄する。
細胞を、PBS中に4%のパラホルムアルデヒド溶液の中で室温にて10分間固定処理する。
【0095】
1×PBS中で10分間洗浄する。
細胞を、エタノール濃度を増大させた溶液の中で3分間ずつ連続的に液浴させて(70%、90%、100%、100%液浴については繰り返す)、脱水する。
【0096】
乾燥させた後、プレートを使用時まで−80℃で保存する。
・標識
解凍後、細胞を50μlの透過化溶液すなわち
PBS 1×
トリトンX100 0.5%
RNS 5%
(ウサギ正常血清、ベクター(Vector)S5000)
プロテアーゼ阻害剤 50mlあたり1ペレット
(ロッシュ 11697498001)
の中で高湿チャンバ内にて室温で5分間インキュベートする。
50μlのインキュベーション溶液すなわち
PBS 1×
RNS 5%
プロテアーゼ阻害剤 50mlあたり1ペレット
(ロッシュ 11697498001)
の中で、各15分間のプレインキュベーション液浴を3回実施する。
一次抗体を50μlのインキュベーション溶液中で1/100に希釈し、高湿チャンバ内で室温で1時間細胞と接触させる。
【0097】
使用する一次抗体は2種類:
マウス抗ラミンA/C(N末端側)、クローン4A7、G モーリス(G Morris、英国オズウェストリ市(Oswestry))提供
【0098】
ヤギ抗プレラミンA(C末端15aa)、製品番号SC6214、サンタクルーズバイオテクノロジー社(Santa Cruz Biotechnology Inc.)
である。
50μlの1×PBS中で各15分間のすすぎを3回実施する。
二次抗体を用いたインキュベーションは、50mlのインキュベーション溶液中で高湿チャンバ内にて室温で1時間実施する。二次抗体は2種類:
【0099】
ロバ抗マウス抗体、ジャクソン・イムノリサーチ、1/100に希釈
ロバ抗ヤギ抗体、ジャクソン・イムノリサーチ、1/200に希釈
である。
50μlの1×PBS中で各10分間のすすぎを3回実施する。
50ng/mlのDAPI溶液(セルバ(SERVA)、参照番号18860))100μlとともに、高湿チャンバ内にて室温で15分間インキュベートする。
【0100】
プレートホルダタンクで1×PBS中で各5分間のすすぎを3回実施する。
PBS中0.1%のトゥイーン20溶液で5分間の、最後のすすぎを実施する。
・封入
細胞を少量のVectaShield(R)(ベクター社)中に浸し、カバーグラスで覆い、coolSNAP(プリンストン(Princeton))カメラシステムを装備した蛍光顕微鏡(ライカDMR、ライカマイクロシステムズ(Leica Microsystems))で観察する。
【0101】
B)結果
B.1)ウェスタンブロット(図1)
参照用の「正常な」繊維芽細胞を、水溶性スタチン(プラバスタチン P、20〜100μM)とアミノビスホスホネート(NBP ゾレドロネート Z、20〜100μM)とを組み合わせて処理した(レーンA〜IはそれぞれP20/Z20、P20/Z60、P20/Z100、P60/Z20、P60/Z60、P60/Z100、P100/Z20、P100/Z60、P100/Z100)。ウェスタンブロットにより、上記2種類の分子の濃度増加に従って未成熟型の(切断を受けていない)プレラミンAの大きさに相当するバンドが「出現」することが示され、このことはファルネシル化がラミンAの成熟に必要であることを裏付けている。この結果は、代謝経路の2箇所でファルネシル−PPの合成を阻止すると、1箇所で阻止するよりも少なくともex vivoではプレラミンAのファルネシル化の阻害に一層有効であることを示している。
【0102】
B.2)免疫組織化学法における用量および時間応答性(図2)
一方では参照用の健康な細胞について、またHGPS患者の細胞について2つのパラメータを測定することにより、用量応答曲線および時間応答曲線から最大の効力を決定することが可能となった。プラバスタチン(水溶性)/ゾレドロネート(NBP)の最も有効な組み合わせは、1μMのプラバスタチンで24時間、次にゾレドロネートで12時間の場合に得られ、健康な細胞について毒性は観察されないが、HGPS細胞(核異常を有する細胞)については「変形した」細胞の数が75%から40%まで減少する。同時に、健康な細胞について得られたプレラミンAのレベルは最大である。
【0103】
B.3)免疫組織化学法における処理の効果(図3)
処理を受けた健康な細胞で産生されるプレラミンAのレベル(概算35%)は、プラバスタチンおよびゾレドロネートを併用すると、これらの分子が単独で添加された場合(それぞれ25%および15%)よりもはるかに高いので、プラバスタチンおよびゾレドロネートの作用の組み合わせはより高い効力を示す。他方、変形した核(健康な細胞に対する毒性の症候)のレベルは最小(10%未満)であり、例えばプラバスタチン単独で処理された細胞の場合(およそ12%)よりも低い。処理:プラバスタチン100μMで12時間、ゾレドロネート20μMで6時間。
【0104】
B.4)免疫組織化学法における老化細胞に対する作用(図4)
「継代」数(細胞の再播種の回数)によって、したがって細胞の世代によって、異常な核の比率は増加するが、これが未処理のHGPS細胞の特徴である。HGPS細胞を処理すると、この比率が維持され、さらには多少減少すらする(偽薬で処理した細胞の80%以上に対して40%未満)。処理:プラバスタチン1μMで24時間、ゾレドロネート1μMで12時間。
【0105】
B.5)結論
プラバスタチン/ゾレドロネートの併用は、これらの分子が別々に投与された場合には効果がほとんど観察されない用量で有効である。
【0106】
したがって、プレニル化経路の阻止による生理学的な効果が、細胞培養物について発表された論文中で単独処理に用いられた用量(クスヤマ(Kusuyama)ら、2006、血管細胞前駆細胞に対して単独で10μMのプラバスタチン;フリント(Flint)ら、1997、新生児ラットの筋細胞に対して単独で25μMのプラバスタチン)よりもはるかに低い用量において得られる。
【実施例2】
【0107】
水溶性のヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)還元酵素阻害剤と、ファルネシルピロリン酸合成酵素阻害剤との併用の、早老症候群モデルマウスに対する効果(図5)
【0108】
ここで使用されるZmpste24−/−のKOマウスは、バレーラ(Varela)ら、2005によって挙げられた論文に記載されているものである。このマウスは、飼育場において空気調節下で、昼12時間/夜12時間のサイクルで、温度20±2℃および湿度50%として、欲しいときに食物と水とを得られるようにして育てられたものである。2つの分子(ゾメタ(Zometa)100μg/kg/日およびプラバスタチン100μg/kg/日)を1×PBSに溶解し、マウスに1月齢から死亡するまで腹腔内経路で毎日注射する。対照は、1×PBS単独で処理した同じ種類の野生型マウスである。体重を毎日計測し、マウスの生存について曲線で示す(図5b)。
【0109】
マウスの死亡時に、脛骨を解剖してμCT走査装置によって断層撮影で分析する。1ミリメートル当たりの骨梁の数を、ヒルデブラント(Hildebrand)ら、1997に記載の方法によって計測する(図5d)。
【0110】
肝細胞をサンプリングし、パラホルムアルデヒド中4℃で固定し、パラフィンに包埋し、クロマチンをDAPI(4’6−ジアミジノ−2−フェニルインド−ル)で標識した後に共焦点顕微鏡法で分析する。異常な核の割合(%)を、計数により概算する(図5e)。
【0111】
治療したマウスの生存は大幅に改善され、特に雌については最大で平均寿命の延長がおよそ80%である(図5c)。疾病の臨床症状は、PBS単独で治療した個体と比較していずれも大幅に低減される。
【表1】









【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシメチルグルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)還元酵素の阻害剤およびファルネシルピロリン酸合成酵素の阻害剤、またはこれらの生理学上許容可能な塩のうちの1つの、細胞内におけるプレニル化タンパク質の蓄積または残存のうち少なくともいずれかに関係する病理学的または非病理学的状態の治療のための組成物の調製における使用。
【請求項2】
組成物は、細胞内におけるファルネシル化タンパク質またはゲラニルゲラニル化タンパク質のうち少なくともいずれか一方の蓄積または残存のうち少なくともいずれかに関係する病理学的または非病理学的状態の治療を意図するものであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
組成物は、細胞内におけるプロゲリンの蓄積または残存のうち少なくともいずれかに関係する病理学的または非病理学的状態の治療を意図するものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
組成物は、細胞内におけるファルネシル化プレラミンAの蓄積または残存のうち少なくともいずれかに関係する病理学的または非病理学的状態の治療を意図するものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
ファルネシル化プレラミンAは短縮型であってもよいことを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
ファルネシルピロリン酸合成酵素の阻害剤は、アミノビスホスホネート(NBP)のファミリーの分子、またはその生理学上許容可能な塩のうちの1つであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
アミノビスホスホネートは、
アレンドロン酸またはそのイオン形態であるアレンドロネート;
クロドロン酸またはそのイオン形態であるクロドロネート;
エチドロン酸またはそのイオン形態であるエチドロネート;
イバンドロン酸またはそのイオン形態であるイバンドロネート;
メドロン酸またはそのイオン形態であるメドロネート;
ネリドロン酸またはそのイオン形態であるネリドロネート;
オルパドロン酸またはそのイオン形態であるオルパドロネート;
パミドロン酸またはそのイオン形態であるパミドロネート;
リセドロン酸またはそのイオン形態であるリセドロネート;
チルドロン酸またはそのイオン形態であるチルドロネート;
ゾレドロン(もしくはゾレンドロン)酸またはそのイオン形態であるゾレドロネート(もしくはゾレンドロネート);
ジホスホン酸4−N,N−ジメチルアミノメタンまたはそのイオン形態であるジメチルアミノメタンジホスホネート;
α−アミノ−(4−ヒドロキシベンジリデン)ジホスホネート
から選択することが可能であり、好ましくはゾレドロン酸またはそのイオン形態であるゾレドロネートであることを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
HMG−CoA還元酵素の阻害剤は、スタチンファミリーの分子、またはその生理学上許容可能な塩のうちの1つであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
HMG−CoA還元酵素の阻害剤は水溶性スタチンであることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
スタチンは、アトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、リバスタチン、メバスタチン、フルインドスタチン、ベロスタチン、フルバスタチン、ダルバスタチン、セリバスタチン、ペントスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチンもしくはロバスタチン、またはこれらの生理学上許容可能な塩のうちの1つから選択することができることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
組成物は、タンパク質のプレニル化の阻止を必要とする病理学的または非病理学的状態の治療を意図するものであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
組成物は、自然なものであれ、早発性のものであれ、促進性のものであれ老化の症候を示す病理学的または非病理学的状態の治療を意図するものであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
組成物が治療の対象とする症候は、血管内皮の劣化(血管内皮の保護)、皮膚の老化、および骨の溶解であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
組成物は医薬組成物である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
医薬組成物は、早老症または拘束性皮膚障害の治療を意図したものである、請求項14に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【公表番号】特表2009−541475(P2009−541475A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517336(P2009−517336)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001144
【国際公開番号】WO2008/003864
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(501374149)ユニヴェルシテ ドゥ ラ メディテラネ(エックス−マルセイユ ドゥー) (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LA MEDITERRANEE(AIX−MARSEILLE II)
【出願人】(509005694)
【氏名又は名称原語表記】ASSOCIATION FRANCAISE CONTRE LES MYOPATHIES(AFM)
【出願人】(509005683)
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE HOPITAUX DE MARSEILLE
【出願人】(509005568)ユニベルシダード デ オビエド (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSIDAD DE OVIEDO
【Fターム(参考)】