説明

医薬用運搬体及び作用体並びに化学用相間移動剤としてのアンモニウム塩及びアンモニウム塩−鉱酸塩クラスレート化合物

本発明は、炭酸水素残基等の酸性二塩基酸残基を有するアンモニウム塩及び安定に保存可能なアンモニウム塩−鉱酸塩クラスレート化合物(包接化合物)、それらの製造方法並びに該化合物の医薬用途及び化学合成用途に関する。本発明の課題は、一般式(I)(式中、R1、R2、R3及びR4は、アルコール、エーテル、シリルエーテル、エステル、アミノ又はアミドの各官能基を付加的に有していてもよい、直鎖又は分枝のアルキル及び置換アルキル、H又はアリールアルキルを表し、アリールは炭素数1〜4のアルキル基、OH、NR(Rは炭素数1〜4のアルキル基を有するO−アルキル又はH)、COOH、COOR、CN、NO等の付加的な基を有していてもよい芳香族環又は芳香族複素環であり、カチオンの陽性Nは作用物質の一部であってもよく、Yは有機ジカルボン酸の二塩基酸残基又はHY=HCOに相当するCOであり、xはクラスレート化合物が生成するため鉱酸塩の分子数を表す0.5〜30又は0である)で表される酸性二塩基酸アニオン残基を有するアンモニウム塩及びアンモニウム塩−鉱酸塩クラスレート化合物(包接化合物、クラスター)を包含する、医薬用途及び化学合成用途の化合物を製造することによって解決される。医薬用途において前記アンモニウム塩/鉱酸塩クラスターはビヒクル及び含窒素塩基作用物質を適用する新規な形態の作用物質として使用される。化学においてこれらの剤は、作用物質及び環状カーボネート等の有用製品の合成に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸水素残基等の酸性二塩基酸残基を有するアンモニウム塩及び安定に保存可能なアンモニウム−鉱酸塩クラスレート化合物(クラスター、包接化合物)、それらの製造方法、並びに本発明の医薬用途及び化学合成用途に関する。
【0002】
前記医薬用途としては、アンモニウム塩を主に酸性塩及び安定な塩クラスターの形で作用分子一体化化合物、所謂プロドラッグとして利用することであり、前記化学合成用途としては、アンモニウム塩をハロヒドリンを介したエナンチオ選択的又はジアステレオ選択的な環状カーボネート等の作用物質及び有用物質の合成において相間移動触媒として主に利用することである。
【背景技術】
【0003】
医薬用途における多くの作用物質の短所は、インビトロでは有効であるにもかかわらず投与経路の多くで本来の目標器官に全く到達できないことがしばしばあることである。その理由は目標器官に輸送される途中で代謝され失活するからである。作用物質がこのように変化することを避けるために、通常はこれら作用物質を安定物質に変換して、可能な限り細胞内で初めて本来の作用物質を放出させるか、例えば肝臓を通過する場合などに種々の酵素の影響を受けて作用物質を放出させている。ここで重要なことは、作用物質を制御下で放出させて、高いバイオアベイラビリティーを保証することである。例えば全身投与において多くの作用物質は、腸管外投与により血管を通って最終的に目標器官に運ばれる。作用物質は当該物質を取り囲んでいる媒体と適合していなければならない。注入、特に経皮投与や経口投与の場合、効果が減少し完全に消失することがある。効果の完全消失は、特に経口投与において胃を通過する際に頻繁に観察される。局所麻酔剤として知られるプロカインタイプの塩基性エステルの場合、特にコリンエステラーゼ等のエステラーゼによって分解されることが知られている。プロカイン及びその等価物に関して、塩酸プロカインや重炭酸ナトリウム等の投与時に観察される十分な作用とバイオアベイラビリティーを提供するプロドラッグはこれまで文献報告されていない(Weber,Oettmeier,Reuter PCT/EP98/01742;Dhaliwal,Masih US5149320;US5209724;Shumakov,Onishchenko et.al. SU878297;Thut,Turner US5505922)。溶血作用が確認されているノボカイン(E.R.Hammerland u.K.Pederson−Bjergard;J.pharm.Sci 1961,50,24)、イエナカインの名前でも知られている塩基性且つ低溶解性の炭酸ジプロカイニウム等の知られた製剤も、プロカイン作用物質コンジュゲート(Kasch,Goldschmidtt:PCT/EP00/13036)と同様、前記の基準を満たさない。この場合、いわゆる修飾剤(PCT/US93/05631)の利用は、これまで成果を上げていない。プロカイン及びその類似体は多様な生物学的効果を有するが、これらの製剤は吸収されにくく、従ってバイオアベイラビリティーが低いために、その効果は腸管外投与においては十分に利用できない。その理由は何よりもこれら製剤の溶解度が低く、沈澱する傾向があるからである。更に、例えば塩基と組み合わせて調製した注入液は保存性が極めて限定され、30℃を越える温度ではわずか30分で代謝され、p−アミノ安息香酸及びジエチルアミノエタノールに分解する。プロカイン類似体、特に塩酸プロカインの分解を抑えるために、ベンジルアルコール等の安定剤を添加するが、これ自体がアレルギー等の好ましくない副作用を惹起する可能性がある。この他の原因は、多くの場合に等張性及び/又はpH性のバランスが失われることである。
【0004】
化学合成用途において、ハロヒドリンからPET(陽電子放射断層撮影)に必要とされる環状カーボネート等の作用物質及び有用物質を製造する場合、従来は高価で環境負荷が大きいが効果の低い方法(ホスゲンによる変換、ウレタン製造、転位反応)を用いてきた。エナンチオ選択的合成又はジアステレオ選択的合成はこれまでに実施されていない。ビシナルのハロヒドリンから環状カーボネートを製造する際に用いる相間移動塩は、収率が低いために技術的重要性を得るに至っていない。例えばハロゲン化テトラブチルアンモニウム(ハロゲン化物=Cl、Br又はI)及びNaHCOを使用すると、わずかな変換しか確認されないか或いは全く確認できなかった。
【0005】
【特許文献1】PCT/EP98/01742
【特許文献2】US5149320
【特許文献3】US5209724
【特許文献4】SU878297
【特許文献5】US5505922
【特許文献6】PCT/EP00/13036
【特許文献7】PCT/US93/05631
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、プロカイン、リドカイン又はジエチルアミノエタノール等の含窒素作用物質塩基の可能性をより良好に利用することを可能にし、それにより従来技術の短所の解決に役立つ化合物、その製造方法、並びに医薬用途及び化学合成用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は本発明に係る、一般式(I):
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R1、R2、R3及びR4は、アルコール、エーテル、シリルエーテル、エステル、アミノ又はアミドの各官能基を付加的に有していてもよい、直鎖又は分枝のアルキル及び置換アルキル、H又はアリールアルキルを表し、アリールは炭素数1〜4のアルキル基、OH、NR(Rは炭素数1〜4のアルキル基を有するO−アルキル又はH)、COOH、COOR、CN、NO等の付加的な置換基を有していてもよい芳香族環又は芳香族複素環であり、カチオンの陽性Nは作用物質の一部であってもよく、Yは有機ジカルボン酸の二塩基酸残基、又はHY=HCOに相当するCO−−であり、xはクラスレート化合物が生成するため鉱酸塩の分子数を表す0.5〜30又は0である)で表される酸性二塩基酸アニオン残基を有するアンモニウム塩及びアンモニウム塩−鉱酸塩クラスレート化合物(包接化合物、クラスター)を含有する医薬用途及び化学合成用途の化合物によって解決される。
【0010】
本発明に係る化合物は、特定の実施形態においてクラスレート化合物の生成を促進する鉱酸塩の他に及び/又は代わりに、デキストラン、セルロースエステル、又はトウモロコシ澱粉等の澱粉が、クラスレート化合物生成傾向を有する安定剤として含有することができる。
【0011】
本発明に係る化合物は、クラスレート化合物の生成を促進する鉱酸塩として1価、2価及び3価の鉱酸塩カチオン、例えばNa、K、Li、Mg++、Ca++、Zn++、Fe++、Fe+++、Mn++、アニオンとしてCl、Br、J、F、SO−−、SO−−、HSO−−、HCO、PO3−、HPO−−、HPO、SiO4−、AlO、SiO−−及び/又は[(AlO12(SiO2−を含むことができる。
【0012】
本発明に係る化合物は、医薬用途としては、アンモニウム塩及びアンモニウム塩−鉱酸塩クラスターが作用物質成分の塩基から誘導され、作用物質成分塩基は、プロカイン、置換プロカイン、エピネフリン、テトラカイン、リドカイン、ブポバカイン、ポントカイン、プロポキシカイン、オクタカイン、メピバカイン、プリロカイン、ジブカイン、イソカイン、マルカイン、エチドカイン、ピリドカイン、ユーカイン、ブタカイン、コカイン、アルチカイン、N,N−ジエチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N−エチル−N−メチルアミノエタノール、又はエステル化、エーテル化若しくはシリル化されていてもよい遊離アルコール官能基又は保護アルコール官能基を有するN,N−ジエチルアミノプロパルギルである。化学合成用途としては、アンモニウム塩成分として重炭酸テトラアルキルアンモニウムを含有するアンモニウム塩及びアンモニウム塩−鉱酸塩クラスターである。
【0013】
本発明に係る前記化合物の医薬用途及び化学合成用途に好適な化合物は、
重炭酸プロカイニウム[ProcH](フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードプロカイニウム)、
重炭酸N−アルキルプロカイニウム[アルキル−Proc]
重炭酸リドカイニウム[リドカインH]
重炭酸N−アルキルリドカイニウム[アルキル−リドカイン]である。
【0014】
本発明は更に、本発明に係る化合物の製造方法を対象とする。本発明の鉱酸アンモニウム塩、例えばNRHSO、NRHSO、(NRHPO、NRPO、NRハロゲン化物(Cl、Br、Iのハロゲン化物)及び/又は有機酸アンモニウム塩、例えばNRトシレート、NROCO−(アキル)−COOH(Rは、R1、R2、R3及びR4についての記載と同義であり、アルキルは炭素数0〜12のアルキル基)を、NaHCO、NHHCO、Ca(HCO、Mg(HCO又はKHCOと共に適切な溶媒中で、場合によっては塩を安定化させるために必要なドライアイス等COを加圧下で添加して、対応する1置換、2置換、3置換又は第4級重炭酸アンモニウムに変換する。
【0015】
本発明に係る重炭酸テトラアルキルアンモニウム、例えば重炭酸テトラブチルアンモニウム又は重炭酸N−アルキルプロカイニウムは、好ましくはNRHSOをNaHCO又はNHHCOで変換する。この重炭酸テトラアルキルアンモニウムはアセトニトリル等の非プロトン性溶媒中におけるその場(in situ)化学合成用途に好ましい。またこの重炭酸テトラアルキルアンモニウムは、ラセミ体の光学活性トランス−1,2−ハロゲンヒドリン若しくはトランス−1,3−ハロゲンヒドリン(ハロゲンはCl、Br又はI)等の基質に対する試薬として直接利用することにより、環状カーボネートを立体特異的に製造する。
【0016】
前記一般式(I)、NRHCOx鉱酸塩、で表される本発明の重炭酸アンモニウム−鉱酸塩クラスレート化合物(包接化合物、クラスター)を得るためには、まず金属炭酸水素塩及び/又は金属++炭酸水素塩、好ましくはアルカリ炭酸水素塩又はアルカリ土類炭酸水素塩及び/又は重炭酸アンモニウムの存在下で、加圧調製された炭酸(HO/CO)、場合によってはその他の鉱酸塩及び/又はデキストラン、セルロースエステル又は澱粉を添加することにより、鉱酸塩又は二塩基性の有機酸アンモニウム塩を低温で変換し、次いで鉱酸塩等の水結合剤、又は凍結乾燥で脱水する。この場合にクラスレート化合物(包接化合物、クラスター)として生成する鉱酸塩とデキストラン、セルロースエステル又は澱粉との安定化作用に基づき、医薬用途及び化学合成用途に安定に保存可能な該鉱酸塩が固体物質として得られる。
【0017】
本発明によれば、重炭酸モノアルキルアンモニウム、重炭酸ジアルキルアンモニウム及び重炭酸トリアルキルアンモニウムを、塩基性アミン、例えばプロカイン、リドカイン又はジエチルアミノエタノールと重炭酸アンモニウム(NHHCO)及び/又は炭酸との変換反応により低温でその場製造できる。この場合、ドライアイス/水を添加してもよい。しかし、これを安定に保存可能な固体の塩に変換するためには、脱水の前に鉱酸塩又はデキストラン、セルロースエステル、又はトウモロコシ澱粉等の澱粉をクラスレート化合物生成傾向を有する剤として添加する必要がある。
【0018】
本発明によれば、重炭酸プロカイニウム、重炭酸リドカイニウム又は重炭酸N,N−ジエチル−N−(1−ヒドロキシエチル)アンモニウムを含有する鉱酸塩クラスレート化合物(クラスター)を、プロカイン、リドカイン又はジエチルアミノエタノールを重炭酸アンモニウム及び安定化作用のある鉱酸塩で変換することにより低温で製造でき、これらを脱水すれば安定に保存可能な固体の塩クラスターが得られる。
【0019】
本発明に係る化合物は、痛み及び炎症過程、酸血症、腫瘍疾患、心臓循環疾患、ホストの防御低下に起因する自己免疫疾患の各治療;回復期;並びに「ウェルネス」、ストレス予防、及び老人医学における「アンチエージング」の医薬用途に利用できる。
【0020】
本発明に係る方法で製造可能な化合物は医薬用途に、固体として経口、経皮、経鼻、経肛門及び経舌投与に、或いは液剤又は懸濁物として腸管外及び腹腔内投与又は吸引に用いることができる。これ以外にも賦形剤、安定剤、希釈剤、その他医薬品分野における通常の助剤等の添加物を含有できる。前記化合物の調製にあたっては、可能な限りプロトン性希釈剤を排除し、注入、注射、吸引等の短時間の使用を除いては極端な加熱及び湿度を避けるべきである。
【0021】
本発明に係る方法で製造可能な医薬用途の化合物は、CO及びHCO等の呼吸器系内因性物質及び塩クラスターに含有される過剰な重炭酸塩を作用物質の輸送に用い、炭酸脱水酵素インヒビターの付加的投与によってバイオアベイラビリティーを更に改善する。
【0022】
本発明に係る方法により製造可能であり、注入液及び注射液の調製、錠剤又は粉末剤及びインプラントに適した固体化合物である塩クラスターは、作用物質を制御放出させることができるため、ターゲティング及びバイオアベイラビリティーの改善に寄与する作用物質クラスターである。
【0023】
本発明に係る方法で製造可能な医薬用途の化合物は、作用物質として有効量0.01mg〜2000mgを投与すると適合性及びバイオアベイラビリティーが改善される。
【0024】
以下、従来技術で提起された問題を驚くべき方法で解決する重要なステップについて更に詳しく説明する。
【0025】
驚くべきことに、生物学的に活性な作用物質の成分としても機能し得る置換アミン、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アミン、及びそれらの酸性塩は、重炭酸塩をアニオンとするアンモニウム塩(NRHCO)に変換することができ、塩自体又は安定なクラスターとして新しい性質を示すことが分かった。これら物質は、特異的な性質に基づいて新しい医薬用途及び化学用途に利用できる。これらの塩(塩クラスター)は次のスキームにより製造できる。
【0026】
【化3】

【0027】
一般的従来技術において、重炭酸アンモニウム及び対応するN置換化合物が非常に不安定であり、固体で製造されることがこれまで疑問視されてきたことを知らないならば、ここに式で示した無水環境または含水環境における変換はなんら特別の意味を持たないであろう。しかし、N置換重炭酸アンモニウムが前記変換式に従って生成することが発見されたのである。この事実は、電導度及び凝固点降下測定、質量分析、UV及びIR測定、及び構造解析のためのDO中のNMR等の物理化学的分析データによって証明される。
【0028】
しかし医薬用途及び化学用途に要求される性質を有し安定な乾燥固体物質は再び構成要素に分解する可能性があるため、この固体物質を製造することは必ずしも可能ではないことが、前記式から明らかとなり、また対応する物質が検出されることによって証明される。この分解は、主に目標物質を得るための特定の反応条件が厳密に維持されない場合に観察される。
【0029】
【化4】

【0030】
プロカインの割合を少なく又はゼロに抑え及び/又は同時に重炭酸プロカイニウムに水分を接触させないようにしないと、炭酸ジプロカイニウムが容易に生成し、水溶液中に沈澱する。炭酸ジプロカイニウムの塩基度が高くなると、プロカインの鹸化も開始する。アンモニウム塩クラスターの製造においてこのプロセスを回避又は予防するためには、炭酸又はドライアイスとしてのCO及び水を添加する。
【0031】
本発明による溶液は、重炭酸プロカイニウム又は重炭酸リドカイニウム等それ自体不安定な化合物を、鉱酸塩及び/又はデキストラン、澱粉又はセルロースに取り込んだ、いわゆるクラスレート化合物又はクラスターからなる。驚くべきことに塩化ナトリウム等の単純な鉱酸塩だけでも成功する。これらの塩及びクラスターにおいて、アンモニウム塩は塩格子に配位しているか、包囲されて閉じ込められる。塩酸プロカインと重炭酸ナトリウムの水溶液を室温で混合することによって製造した現在まで用いられている注入液に対して物理化学的修飾を施すことによって、強塩基性物質、例えばプロカインや炭酸ジプロカイニウム等のカーボネートの割合を実用的に抑制することができた。少量のカーボネートであっても重炭酸プロカイニウムの分解を触媒し、プロカイン又は炭酸ジプロカイニウムを生成する。この製造方法においてCOを添加してpHを下げることにより、NRHCO含量を100%に高め、塩又はクラスター生成能力のあるその他の化合物に取り込むことにより生物系に適応する元来の独特の機構が維持される。
【0032】
塩クラスター内に存在する重炭酸アンモニウムは潜在的に炭酸を含有しているが、炭酸は通常の条件では室温で遊離されないが、水溶液に、特に有機水溶液においては迅速に遊離される。
【0033】
一方では医薬目的においてクラスレートから作用物質が特定の目標に向けて放出され、他方では化学合成目的においてCO又は炭酸水素残基が、例えば環状カーボネートを立体選択的に製造するための反応薬として用いられる。
【0034】
作用物質クラスターの代謝に関する運動学的調査の結果、溶解した化合物の安定性は生理学的条件下において、プロカイン等の作用物質を全身又は局所投与し、目標への最適な輸送を保証するのに十分であることが明らかになった。クラスターに固定された炭酸を含有する作用物質は、水に溶解すると過剰な重炭酸塩の存在下であっても高い緩衝能を示す典型的な酸塩基対を生成する。この酸塩基対は、酸血症等で生理pHを維持又は修正するために用いることができるのみならず、卓越した性質、例えば高いバイオアベイラビリティーの基本前提である良好な溶解性も有する。CO/HCOバランスも含めた静脈血の生理系は、塩クラスターによっては損なわれい。更にこの系は酸塩基対の安定化を促進する。
【0035】
炭酸脱水酵素インヒビターを含有するエステラーゼインヒビターによって的確に制御され得るコリンエステラーゼは、過剰な重炭酸塩に影響を受かる。その結果、酵素作用は低下し、間接的にプロカイニウム塩等を分離し、更にはその寿命又はバイオアベイラビリティーを高める。
【0036】
重炭酸プロカイニウム塩クラスター型である安定した水溶性のN置換重炭酸アンモニウムを、例えば重炭酸ナトリウムとしての付加的重炭酸残基と組み合わせると、作用物質を患者に負担なく使用することが可能となり、これは注射液及び注入液に限定されない。塩クラスターから得られる溶液の正確な分析に基づく組成により、従来技術に比べて改善されている。前記の用量範囲で使用可能な塩クラスターの生理的適合性及び信頼性は、pH測定及び毒物学的検査によって明らかとなる。注入液のpH値は付加的に使用される重炭酸残基に応じて、塩クラスターの酸塩基対によりpH範囲7.3〜8.3に調整され、一定に保つことができる。前述の各用途と並んで、酸血症において手厚い治療に使用することが可能となる。
【0037】
重炭酸プロカイニウムは塩酸プロカインと比較すると溶血反応を起こさないが、これは何よりも塩クラスターが作用物質成分である重炭酸プロカイニウムに対して高い緩衝能を有することによる低毒性に起因する。暗視野顕微鏡を用いた検査の結果、塩が過剰に存在しても赤血球は損なわれず、破裂しないことが明らかである。
【0038】
ニワトリ胚の毒物学的検査により、とりわけ重炭酸プロカイニウムクラスターの血管拡張作用に基づき心拍数が一時的に上昇するが急速に収まるという、心臓への作用が認められる一方で、忍容性も確認される。例えば塩クラスターの懸濁油を添加した際等に受ける損傷によって発生した血管の傷は作用物質の影響により修復された。
【0039】
塩酸プロカインを使用した場合よりも良好な忍容性が保証されることを確認した後に、投与試験により塩クラスターの効力を調べた。塩クラスターを粉末、カプセル又は錠剤で用いることにより、その閾値は更に低くなる。胃腸を通過する際に起こりうる分解を回避するための錠剤コーティングは必ずしも必要ない。なぜならばプレス成形過程において、好ましい腸溶性の保護層が形成されるからである。
【0040】
経鼻投与には、一方では噴霧ガスを使った鼻内スプレーで投与する粉末が適しており、他方では食塩に溶解させた粉末(作用物質含量プロカイン65mg/吸引剤)又は対応する錠剤が鼻及び鼻腔範囲の局所投与(わずかながら全身投与も)に適した方法である。このようにすることによって鼻腔内の痛みや炎症が治療され、痛みが隣接部位(頭痛、歯痛)に伝播することを防ぐことができる。この種の投与は従来プロカイン/塩基注射によって行われていたが、塩クラスター溶液を使用すれば患者の負担がより少なく実施できる最適な代替法となる。
【0041】
リウマチ性関節炎、多発性硬化症(MS)、慢性炎症性腸疾患、神経炎、脊髄炎等の炎症の全身治療には、コルチコイドがそのあらゆる副作用を伴って使用されている。プロカインクラスターはこの場合も長期間治療すれば全身投与又は局所投与において比較可能な抗炎症効果を生じさせることができる。本方法によれば、望ましくないコルチコイドの副作用が生じることがない。
【0042】
プロカインクラスターの予防的投与は、耳鳴等のストレス性疾患の拡大又は慢性化を緩和する。この場合、プロククラスターの作用は何よりも作用物質塩基の神経由来作用及び抗酸化作用に帰せられる。マクロファージの研究で証明されるように、過剰な重炭酸ナトリウムはこのプロセスを促進する(多核白血球における化学発光)。
【0043】
クラスター生成によるN置換重炭酸アンモニウムの安定化によって、従来不安定化合物として分類されている化合物を固体としてで製造することが可能となるだけでなく、作用物質のための生理的に適応する担体及び運搬体等の多様な性質に基づきバイオアベイラビリティーを著しく改善する。影響を及ぼす添加物を使用することなしにクラスター及びクラスレート化合物から注射及び注入用の水溶液を調製できる。この化合物の別の長所は、PET(陽電子放射断層撮影)に必要な1,3−及び1,2−cis(Z)環状カーボネートを立体選択的に合成するための反応薬として使用できることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明を何らかの意味で制限するものではない。
I 重炭酸テトラアルキルアンモニウムの化学合成用途について
実施例1 16β,17β−カルボニルジオキシ−3−メトキシ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン
16α−ブロモ−17β−ヒドロキシ−3−メトキシ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン(11g、30.11mMol)をアセトニトリル(50mL)に溶解し、BuNHSO(10g)及びNaHCO(20g)を添加した後、室温で16時間攪拌する。その場で生成したBuNHCOをジアステレオ選択的に反応させてcis−(Z)環状カーボネートにする一方、同時に生成したNaSOは微量の水の結合に関与する。変換達成後、懸濁物を濾過して残渣をアセトニトリルで洗浄し、濾液を細砕した氷(約100mL)に撹拌しながら入れる。生成物を完全に結晶化するために冷蔵庫に約16時間放置する。メタノール/塩化メチレンから再結晶して16β,17β−環状カーボネート(8g)を得る。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例2 16β,17β−カルボニルジオキシ−3−メトキシメチルオキシ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン
16α−ブロモ−17β−ヒドロキシ−3−メトキシ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン(3g、7.6mMol)をアセトニトリル(50mL)に溶解し、BuNHSO(3g)及びNaHCO(6g)を添加した後、室温で16時間攪拌する。変換達成後、懸濁物を濾過して残渣をアセトニトリルで洗浄し、濾液を細砕した氷(約50mL)に撹拌しながら入れる。生成物を完全に結晶化するために冷蔵庫に約16時間放置する。酢酸エステルから再結晶して16β,17β−環状カーボネート(2g)を得る。この環状カーボネートはPET(陽電子放射断層撮影)に必要な前駆体の製造に用いる。
【0047】
【表2】

【0048】
実施例3 16α,17α−カルボニルジオキシ−3−メトキシメチルオキシ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン
16β−ブロモ−17α−ヒドロキシ−3−メトキシメチルオキシ−エストラ−1,3,5(10)−トリエン(3g、7.6mMol)を実施例2と同様に変換する。氷水中に沈澱させた後、16α,17α−環状カーボネートを溶解して、酢酸エステルから再結晶させる。
【0049】
【表3】

【0050】
実施例4 16β,17β−カルボニルジオキシ−3−メトキシメチルオキシ−5−アンドロステン
16α−ブロモ−17β−ヒドロキシ−3−メトキシメチルオキシ−5−アンドロステン(3g、7.25mMol)をアセトニトリル(50mL)に溶解し、重炭酸N−エチルプロカイニウム(硫酸水素N−エチルプロカイニウム及びNaHCO、或いはN−エチルプロカイニウムオキシド、NaHSO及びNaHCOからその場生成可能)(3g)を添加した後、室温で30時間攪拌する。変換達成後、懸濁物を濾過して残渣をアセトニトリルで洗浄し、濾液を氷水(約50mL)に撹拌しながら入れる。ステロイドを単離させるためにエーテルで抽出し、溶剤を蒸発させた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーに付す。溶離剤としてトルエン/酢酸エステル混合物(30:1)を使用する。酢酸エステル/ヘキサンから結晶した16β,17β−環状カーボネート(900mg)を得る。
【0051】
【表4】

【0052】
II 医薬用途について
実施例5 重炭酸プロカイニウム塩クラスター
a)ProcHCL(加圧下のNaHCOCO
塩酸プロカイン(5456g、20mMol)を冷却したCO飽和水(100mL)と0℃〜−4℃で混合した後、NaHCO(6721g)を添加する。次いで透明で均質な溶液を凍らせ、凍結乾燥させる。凍結乾燥は重量が安定するまで、即ち重量の減少が確認されなくなるまで行う。重炭酸プロカイニウム(11.9g、理論量の97.7%)を含有する塩クラスターが得られ、直接医薬用途及び化学合成用途に利用できる。医薬用途において塩クラスターは、一方では打錠に適しており、圧縮成型の際に錠剤に胃の通過が可能となるように被覆を施す。他方では塩クラスターは注射及び注入の調製にも適しており、水の添加による低張性投与も、重炭酸ナトリウム液又は等張食塩水の添加による等張性投与も選択できる。
【0053】
熱分析(0.609g=初期値の1/20):初期値の1/20で重炭酸プロカイニウム(0.99mMol)に相当するCO(22.2mL、0.99mMol)が遊離する。
【0054】
【表5】

【0055】
b)プロカイン/炭酸(NaHCO
プロカイン(236mg、1mMol)を水(30mL)に懸濁させ、0℃に冷却して、プロカインが完全に溶解するまで二酸化炭素を溶液に送入する。反応終了、即ち重炭酸プロカイニウムの生成は電導度測定及び凝固点降下の決定によって求める(塩生成による電導度の上昇、明確な凝固点降下)。重炭酸プロカイニウム/炭酸溶液の凍結乾燥で重炭酸プロカイニウムはその構成要素であるプロカイン、CO及び水に分解するので、NaHCOを含有する均質溶液(4mMol)を低温で添加する。透明な溶液を凍結した後、凍結乾燥させ、過剰なCOを負圧で抜き取る。重炭酸プロカイニウム(0.65g、理論量の95.6%)を含有する塩クラスターを得る。
【0056】
c)プロカイン/HSO/NaHCO/CO
プロカイン(236mg、1mMol)を水(5mL)に懸濁させ、0℃に冷却して1nHSO(2mL)と混合する。透明な溶液に、NaHCO(0.336g、4mMol)を含有し加圧下でCO飽和させた冷却した均質溶液(5mL)と0℃〜−4℃で混合する。透明な溶液を凍結した後、重量減少が確認されなくなるまで凍結乾燥させる。重炭酸プロカイニウムを含有する塩クラスター(0.57g、理論量の94.2%)を得る。
【0057】
d)プロカイン/NaHSO/NaHCO/CO
プロカイン(236mg、1mMol)を、NaHSO(120.05mg)を含有する水溶液(7mL)と混合する。透明な溶液に、加圧下でCO飽和したNaHCO(0.336g、4mMol)を含有する冷却した均質溶液(5mL)と0℃〜−4℃で混合する。透明な溶液を凍結した後、重量減少が確認されなくなるまで凍結乾燥させる。重炭酸プロカイニウムを含有する塩クラスター(0.54g、理論量の91%)を得る。
【0058】
e)プロカイン/CO/水/NaHCO/NaCl
プロカイン(4.72g、20mMol)を水(100mL)に約5℃で懸濁させた後、NaHCO(5.04g、60mMol)及びNaCl(1168g)とやはり低温で混合する。この懸濁物に10分間隔でその都度ドライアイス(一回量:0.25cm)を強く撹拌しながら添加する。この手順をプロカインが完全に溶解するまで繰り返す。冷却した透明な溶液を凍結した後、凍結乾燥させる。凍結乾燥は重量安定まで、即ち重量減少が確認されなくなるまで行う。重炭酸プロカイニウムを含有する塩クラスター(12g、理論量の98.3%)が得られ、直接医薬用途及び化学合成用途に利用できる。
【0059】
f)塩酸プロカイン(49102g)をCO飽和した炭酸(2000mL)に溶解し、NaHCO(60.49g)及びNaCl(172.6g)と低温で処理する。次いで透明な溶液を凍らせ、凍結乾燥させる。凍結乾燥は重量が安定するまで、即ち重量の減少が確認されなくなるまで行う。重炭酸プロカイニウムを含有する塩クラスター(281.24g、理論量の99.63%)が得られ、直接医薬用途及び化学合成用途に利用できる。特に等張性注入液(水100mL中プロククラスター1.15g)の調製に使用できる。
【0060】
実施例6 重炭酸リドカイニウム塩クラスター
塩酸リドカイニウム(2705g、10mMol)を水(約5mL)に溶解し、加圧下でCO飽和させた、NaHCO(3361g、40mMol)を含有する冷却した均質溶液(40mL)と0℃〜−4℃で混合する。次いで透明な均質溶液を徐々に凍らせ、凍結乾燥させる。このとき過剰なCOを負圧で抜き取る。重量減少が確認されなくなるまで反応混合物を凍結乾燥させる。塩酸リドカイニウムを含有する塩クラスター(5.65g、理論量の93%)を得る。
【0061】
熱分析(0.607g=初期値の1/10):初期値の1/10で重炭酸リドカイニウム(0.95mMol)に相当するCO(21.2mL、0.95mMol)。
【0062】
【表6】

【0063】
実施例7 N,N−ジエチル−N−(1−ヒドロキシエチル)−重炭酸アンモニウム塩クラスター
a)N,N−ジエチル−N−(1−ヒドロキシエチル)−アミン(ジエチルアミノエタノール)(1.76g、15.04mMol)を当量の希塩酸で中和し、CO飽和炭酸溶液(100mL)と0℃〜4℃で混合する。次いでNaHCO(6721g、80mMol)を添加し、重炭酸塩が完全に溶解するまで撹拌する。その後で透明な均質溶液を凍らせ、凍結乾燥させる。凍結乾燥は重量が安定するまで、即ち重量の減少が確認されなくなるまで行う。N,N−ジエチル−N−(1−ヒドロキシエチル)−重炭酸アンモニウム含有する塩クラスター(8.7g、理論量の96.34%)が得られ、直接医薬用途及び化学合成用途に利用できる。医薬用途ではこの塩クラスターは打錠に適している。錠剤は分解を予防するために低温で保存しなければならない。CO遊離:塩クラスター(0.0501g)から塩クラスターの含量100%に相当するCO(1.85mL)が遊離する。
【0064】
b)N,N−ジエチル−N−(1−ヒドロキシエチル)−アミン(ジエチルアミノエタノール)(1.76g、15.04mMol)を、CO飽和炭酸溶液(100mL)と0℃〜4℃で混合する。次いで10分間隔でドライアイス(一回量:約0.25cm)を添加し、この手順を約8回繰り返す。次にNaHCO(5055g、60mMol)及びNaCl(0.879g、15.04mMol)を添加し、塩に完全に溶解するまで反応混合物を約5℃で撹拌する。その後で透明な均質溶液を凍らせ、凍結乾燥させる。凍結乾燥は重量が安定するまで、即ち重量の減少が確認されなくなるまで行う。N,N−ジエチル−N−(1−ヒドロキシエチル)−重炭酸アンモニウムを含有する塩クラスター(8.3g、理論量の96.39%)が得られ、直接医薬目的に使用できる。医薬用途の場合、塩クラスターは錠剤化に適している。錠剤は分解を予防するために低温で保存しなければならない。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

(式中、R1、R2、R3及びR4は、アルコール、エーテル、シリルエーテル、エステル、アミノ又はアミドの各官能基を付加的に有していてもよい、直鎖又は分枝のアルキル及び置換アルキル、H又はアリールアルキルを表し、アリールは炭素数1〜4のアルキル基、OH、NR(Rは炭素数1〜4のアルキル基を有するO−アルキル又はH)、COOH、COOR、CN、NO等の付加的な置換基を有していてもよい芳香族環又は芳香族複素環であり、カチオンの陽性Nは作用物質の一部であってもよく、Yは有機ジカルボン酸の二塩基酸残基、又はHY=HCOに相当するCOであり、xはクラスレート化合物が生成するため鉱酸塩の分子数を表す0.5〜30又は0である)で表される酸性二塩基酸アニオン残基を有するアンモニウム塩及びアンモニウム塩−鉱酸塩クラスレート化合物(包接化合物、クラスター)を含有する医薬用途及び化学合成用途の化合物。
【請求項2】
特定の実施形態においてクラスレート化合物の生成を促進する鉱酸塩の他に及び/又は代わりに、デキストラン、セルロースエステル、又はトウモロコシ澱粉等の澱粉が、クラスレート化合物生成傾向を有する安定剤として含有されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
クラスレート化合物の生成を促進する鉱酸塩として、1価、2価及び3価の鉱酸塩カチオン、例えばNa、K、Li、Mg++、Ca++、Zn++、Fe++、Fe+++、Mn++、アニオンとしてCl、Br、J、F、SO−−、SO−−、HSO−−、HCO、PO3−、HPO−−、HPO、SiO4−、AlO、SiO−−及び/又は[(AlO12(SiO2−を含む、請求項1及び2に記載の化合物。
【請求項4】
医薬用途としては、アンモニウム塩及びアンモニウム塩−鉱酸塩クラスターが作用物質成分の塩基から誘導され、作用物質成分塩基は、プロカイン、置換プロカイン、エピネフリン、テトラカイン、リドカイン、ブポバカイン、ポントカイン、プロポキシカイン、オクタカイン、メピバカイン、プリロカイン、ジブカイン、イソカイン、マルカイン、エチドカイン、ピリドカイン、ユーカイン、ブタカイン、コカイン、アルチカイン、N,N−ジエチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N−エチル−N−メチルアミノエタノール、又はエステル化、エーテル化若しくはシリル化されていてもよい遊離アルコール官能基又は保護アルコール官能基を有するN,N−ジエチルアミノプロパルギルであり、化学合成用途としては、アンモニウム塩成分として重炭酸テトラアルキルアンモニウムを含有するアンモニウム塩及びアンモニウム塩−鉱酸塩クラスターである、先の請求項に記載の化合物。
【請求項5】
医薬用途及び化学合成用途に用いる先の請求項のいずれか1項に記載の化合物であって、
重炭酸プロカイニウム[ProcH](フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードプロカイニウム)、
重炭酸N−アルキルプロカイニウム[アルキル−Proc]
重炭酸リドカイニウム[リドカインH]
重炭酸N−アルキルリドカイニウム[アルキル−リドカイン]である化合物。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の化合物の製造方法であって、NRHSO、NRHSO、(NRHPO、NRPO、NRハロゲン化物(Cl、Br、Iのハロゲン化物)等の鉱酸アンモニウム塩及び/又はNRトシレート、NROCO−(アキル)−COOH(Rは、R1、R2、R3及びR4についての記載と同義であり、アルキルは炭素数0〜12のアルキル基)有機酸アンモニウム塩を、NaHCO、NHHCO、Ca(HCO、Mg(HCO又はKHCOと共に適切な溶媒中で、場合によっては塩を安定化させるために必要なドライアイス等COを加圧下で添加して、対応する1置換、2置換、3置換又は第4級重炭酸アンモニウムに変換する、製造方法。
【請求項7】
重炭酸テトラブチルアンモニウム又は重炭酸N−アルキルプロカイニウム等の重炭酸テトラアルキルアンモニウムを、NRHSOをNaHCO又はNHHCOで変換することにより調製し、化学合成用途の重炭酸テトラアルキルアンモニウムをアセトニトリル等の非プロトン性溶媒中においてその場調製し、ラセミ体の光学活性トランス−1,2−ハロゲンヒドリン若しくはトランス−1,3−ハロゲンヒドリン(ハロゲンはCl、Br又はI)等の基質に対する試薬として直接利用することにより、環状カーボネートを立体特異的に製造することを特徴とする、先の請求項に記載の化合物の製造方法。
【請求項8】
前記一般式(I)、NRHSO*x鉱酸塩、で表される重炭酸アンモニウム−鉱酸塩クラスレート化合物(包接化合物、クラスター)を得るために、まず金属炭酸水素塩及び/又は金属++炭酸水素塩、好ましくはアルカリ炭酸水素塩又はアルカリ土類炭酸水素塩及び/又は重炭酸アンモニウムの存在下で、加圧調製された炭酸(HO/CO)、場合によってはその他の鉱酸塩及び/又はデキストラン、セルロースエステル又は澱粉を添加することにより、鉱酸塩又は二塩基性の有機酸アンモニウム塩を低温で変換し、次いで鉱酸塩等の水結合剤、又は凍結乾燥で脱水し、これによりクラスレート化合物(包接化合物、クラスター)として生成する鉱酸塩とデキストラン、セルロースエステル又は澱粉との安定化作用に基づき、医薬用途及び化学合成用途の安定に保存可能な該鉱酸塩が固体物質として得られること特徴とする、先の請求項に記載の化合物の製造方法。
【請求項9】
重炭酸モノアルキルアンモニウム、重炭酸ジアルキルアンモニウム及び重炭酸トリアルキルアンモニウムを、塩基性アミン、例えばプロカイン、リドカイン又はジエチルアミノエタノールと重炭酸アンモニウム(NHHCO)及び/又は炭酸とのドライアイス/水を使用下での変換反応により低温でその場製造し、これを安定に保存可能な固体の塩に変換するために、脱水の前に鉱酸塩又はデキストラン、セルロースエステル、又はトウモロコシ澱粉等の澱粉をクラスレート化合物生成傾向を有する剤として添加することを特徴とする、先の請求項のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5に記載の医薬用途の化合物の、痛み及び炎症過程、酸血症、腫瘍疾患、心臓循環疾患、ホストの防御低下に起因する自己免疫疾患の各治療;回復期;並びに「ウェルネス」、ストレス予防、及び老人医学における「アンチエージング」における使用。
【請求項11】
前記化合物を医薬用途に、固体として経口、経皮、経鼻、経肛門及び経舌投与に、或いは液剤又は懸濁物として腸管外及び腹腔内投与又は吸引に用い、これ以外にも賦形剤、安定剤、希釈剤、その他医薬品分野における通常の助剤等の添加物を含有でき、前記化合物の調製にあたっては、可能な限りプロトン性希釈剤を排除し、注入、注射、吸引等の短時間の使用を除いては極端な加熱及び湿度を避けることを特徴とする、請求項1〜5に記載の化合物の使用。
【請求項12】
医薬用途のためにCO及びHCO等の呼吸器系内因性物質及び塩クラスターに含有される過剰な重炭酸塩を作用物質の輸送に用い、炭酸脱水酵素インヒビターの付加的投与によってバイオアベイラビリティーを更に改善することを特徴とする、請求項1〜5に記載の化合物の使用。
【請求項13】
製造可能な固体化合物であり、注入液及び注射液の調製、錠剤又は粉末剤及びインプラントに適した塩クラスターは、少ない用量で作用物質を制御放出させることによりターゲティング及びバイオアベイラビリティーの改善に寄与する作用物質クラスターであることを特徴とする、請求項1〜5に記載の化合物の使用。
【請求項14】
医薬用途のために作用物質として有効量0.01mg〜2000mgを投与すると適合性及びバイオアベイラビリティーが改善されることを特徴とする、請求項1〜5に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2008−506723(P2008−506723A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521790(P2007−521790)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001288
【国際公開番号】WO2006/007835
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(507020484)
【Fターム(参考)】