説明

医薬組成物

【課題】 糖尿病などの予防・治療に有用な、医薬組成物を提供する。
【解決手段】 本発明は、下式で示されるインドール−N−グルコシド誘導体、または、その薬理学的に許容しうる塩を有効成分とする、新規医薬組成物に関する。
本発明の有効成分は、ナトリウム依存性グルコース輸送担体(SGLT)に対する阻害作用を有し、高血糖を是正することから、本発明の医薬組成物は、糖尿病、糖尿病性合併症、肥満症などの疾患の予防・治療に有用である。


(式中、R1はフッ素または塩素であり、R2は水素またはフッ素である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SGLT阻害活性を有する新規化合物を含有してなる医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の治療においては食事療法および運動療法が必須であるが、これだけで充分なコントロールが得られないときは、必要に応じてインスリンまたは経口糖尿病薬が使用される。現在、糖尿病治療薬としては、ビグアナイド系化合物、スルホニルウレア系化合物、インスリン抵抗性改善薬およびα−グルコシダーゼ阻害薬が用いられている。しかしながら、ビグアナイド系化合物には乳酸アシドーシス、スルホニルウレア系化合物には重篤な低血糖、インスリン抵抗性改善薬には浮腫および心不全、α−グルコシダーゼ阻害薬には腹部膨満および下痢などの副作用があり、このような問題点のない新しい糖尿病治療薬の開発が望まれている。
【0003】
近年、糖尿病の進展に、糖尿病の病態そのものである高血糖自身が関与する、というグルコース・トキシシティー・セオリーが提唱されている。慢性的な高血糖が、インスリン分泌を低下させると共に、インスリン感受性を低下させ、これがさらなる血糖値の上昇を引き起こすという悪循環を生むとするものである〔非特許文献1、非特許文献2等参照〕。本理論によれば、高血糖を是正することは、様々な合併症を抑制するのみならず、前述の悪循環を断ち切ることで、糖尿病の効率的な治療にもつながることになる。
【0004】
高血糖を是正するための一つの方法としては、血中の過剰な糖を尿中に直接排泄させるやり方が考えられる。例えば、腎臓の近位尿細管に存在するナトリウム依存性グルコース輸送担体(SGLT)を阻害することで、腎臓での糖再吸収を阻害し、糖の尿中排泄を促進して血糖を降下させることができる。事実、SGLT阻害作用を有するフロリジンを、糖尿病モデル動物に持続的に皮下投与して高血糖を是正し、血糖値を長期間正常に保つことによって、インスリン分泌およびインスリン抵抗性が改善することが確認されている〔非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5等〕。
【0005】
また、糖尿病モデル動物にSGLT阻害薬を長期間処置することにより、該モデル動物の腎臓への悪影響や血漿中電解質の異常を全く引き起こすことなく、インスリン分泌応答およびインスリン感受性を改善し、かつ糖尿病性腎症や神経障害の発症・進展を抑制することが報告されている。〔非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8等〕。
【0006】
以上のことから、SGLT阻害薬は糖尿病患者において血糖値を低下させることによって、インスリン分泌およびインスリン抵抗性を改善し、かつ糖尿病及び糖尿病性合併症の発症進展を抑制することが期待される。
【0007】
特許文献1には、下記構造を有するヘテロ二環N−グリコシド化合物が記載されている。
【0008】
【化1】

【0009】
この化合物はSGLT阻害薬として、糖尿病等の予防・治療に有用であることが示されている。しかし、この文献には環Aがシクロアルキル(シクロプロピルなど)で置換された化合物は具体的には記載されていない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の有効成分(I)において、R2が水素である化合物が好ましい。
【0018】
また、R1がフッ素でR2が水素(すなわち、式(I)におけるインドール部分が4−フルオロインドール)であるもの、R1が塩素でR2が水素(すなわち、式(I)におけるインドール部分が4−クロロインドール)であるもの、またはR1とR2が共にフッ素(すなわち、式(I)におけるインドール部分が4,6−ジフルオロインドール)であるものが好ましい。
【0019】
本発明の医薬組成物の有効成分としてとりわけ好ましいのは、
4−クロロ−3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール;
4−フルオロ−3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール;
4−クロロ−6−フルオロ−3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール;または
4、6−ジフルオロ−3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール;
または、その薬理学的に許容し得る塩である。
【0020】
本発明の有効成分の特徴は、インドール環3位のp−シクロプロピルフェニルメチル基と4位のハロゲン原子(特にフッ素または塩素)の組み合わせにある。
【0021】
本発明の有効成分(I)は、ナトリウム依存性グルコース輸送担体の阻害活性(SGLT阻害作用)を有し、これにより尿中への糖の排泄を促進し、優れた血糖降下作用を示す。インスリン非依存型糖尿病モデル動物に、本発明の有効成分を投与したところ、血糖値の改善が見られた。
【0022】
また、本発明の有効成分は毒性が低く、副作用面あるいは実用化面で好ましい特性を有する。
【0023】
このため、本発明の医薬組成物は血糖降下剤として好適に使用することができる。また本発明の医薬組成物は、糖尿病、糖尿病合併症(糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症など)、遅延創傷治癒、インスリン抵抗性、高血糖症、高インスリン血症、高脂肪酸血症、高グリセロール血症、高脂血症、肥満症、高トリグリセリド血症、X症候群、メタボリック症候群、アテローム硬化症、過血糖あるいは高血圧症などの予防または治療剤として好適に使用することができる。とりわけ、糖尿病(1型または2型糖尿病など)、糖尿病合併症(糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症)、または肥満症の予防または治療剤として、あるいは過血糖(特に食後の過血糖)の予防または治療剤として好適に使用することができる。
【0024】
本発明の有効成分(I)は、遊離の形でもまたその薬理学的に許容しうる塩の形でも本発明の目的に用いることができる。薬理学的に許容しうる塩としては、たとえばリチウム、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属塩;カルシウムまたはマグネシウムなどのアルカリ土類金属塩;並びに亜鉛またはアルミニウムとの塩;および有機塩基たとえばアンモニウム、コリン、ジエタノールアミン、リジン、エチレンジアミン、t−ブチルアミン、t−オクチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N−メチルグルコサミン、トリエタノールアミンおよびデヒドロアビエチルアミンとの塩;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸との塩;あるいはギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマール酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩;またはアスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。
【0025】
また、有効成分(I)の薬理学的に許容しうる塩とは、その分子内塩、溶媒和物あるいは水和物等をいずれも含む。
【0026】
本発明の有効成分である化合物(I)およびその薬理学的に許容しうる塩は、経口的にも非経口的にも投与することができ、本発明の医薬組成物は、有効成分(I)と経口もしくは非経口投与に通常用いられる医薬担体からなる適当な製剤としうる。かかる医薬担体としては、例えば、結合剤(シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビット、トラガント、ポリビニルピロリドン等)、賦形剤(乳糖、砂糖、コーンスターチ、リン酸カリウム、ソルビット、グリシン等)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ等)、崩壊剤(バレイショデンプン等)および湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)等をあげることができる。また、これら医薬製剤は、経口投与する場合には、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤の如き固形製剤であってもよく、溶液、懸濁液、乳液の如き液体製剤であってもよい。一方、非経口投与する場合には、例えば、注射用蒸留水、生理的食塩水、ブドウ糖水溶液等を用いて注射剤や点滴剤として、あるいは坐剤等とすることができる。
【0027】
本発明の有効成分(I)またはその薬理学的に許容し得る塩の投与量は、投与方法、患者の年令、体重、状態或いは疾患の種類・程度によっても異なるが、通常、1日当り約0.01〜100 mg/kg、とりわけ約0.01〜30 mg/kg程度とするのが好ましい。
【0028】
本発明の有効成分(I)またはその薬理的に許容しうる塩は、式(II)
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、R3は水酸基の保護基を表し、他の記号は前記と同一意味を有する。)
で示される化合物から水酸基の保護基を除去し、要すれば薬理学的に許容しうる塩とすることにより製造することができる。
【0031】
水酸基の保護基としては、慣用の保護基を用いることができ、例えばベンジル基やアセチル基、またはトリメチルシリル基などのアルキルシリル基を用いることができる。また水酸基の保護基としては、隣接する水酸基とともにアセタール(例えば、イソプロピリデン基、ベンジリデン基)やシリルアセタール(例えば、ジ−tert−ブチルシリレン基)を形成していてもよい。
【0032】
脱保護は、除去される保護基の種類に応じ、還元、加水分解、酸処理、フッ化物処理などの常法により実施することができる。
【0033】
還元の場合には、例えば、適当な溶媒中(メタノール、エタノールなど)、水素雰囲気下、触媒(パラジウム−炭素、白金など)を用いて処理すればよい。
【0034】
加水分解の場合には、適当な溶媒中(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、水など)、塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなど)で処理すればよい。
酸処理の場合は、適当な溶媒中(例えば、メタノール、エタノールなど)、酸(例えば、塩酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸など)で処理すればよい。
【0035】
フッ化物処理の場合には、適当な溶媒中(メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランなど)、フッ化物(フッ化水素、フッ化水素−ピリジン、フッ化テトラブチルアンモニウム等)で処理すればよい。
【0036】
式(II)で示される化合物は、以下の製造工程で製造することができる。
【0037】
【化4】

【0038】
(ただし、記号は前記と同一意味を有する。)
まず、式(V)で示される化合物をホルミル化して、式(IV)で示される化合物を製造する。
【0039】
ホルミル化は適当な溶媒中(例えば、ジメチルホルムアミド、ジクロロエタンなど)、室温から加熱下(例えば、25〜80℃)に、フィルスマイヤ−試薬(ジメチルホルムアミド又はN−メチルホルムアニリドを、オキシ塩化リン、塩化チオニルまたは塩化オキサリルで処理して生成させる)を用いることにより実施できる。
【0040】
次に、式(IV)で示される化合物と、ArLiまたはArMgBr(ただし、Arは下式:
【0041】
【化5】

【0042】
で示される)をカップリングさせ、式(III)で示される化合物を製造する。
【0043】
カップリングは、適当な溶媒中(例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなど)、冷却下から室温(例えば、−78℃〜25℃)で実施することができる。
【0044】
そして、式(III)で示される化合物を還元して式(II)で示される化合物を製造する。
【0045】
還元は、適当な溶媒中(アセトニトリル、ジクロロメタンなど)、酸(トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸などの有機酸、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体、四塩化チタンなどのルイス酸)の存在下、冷却下から室温(例えば、−30℃〜25℃)でシラン試薬(トリエチルシラン、トリイソプロピルシランなど)で処理することにより、実施できる。
【0046】
原料化合物である式(V)の化合物は、以下の式に示される工程により製造することができる。
【0047】
【化6】

【0048】
(ただし、記号は前記と同一意味を有する。)
(工程1)まず、式(IX)で示される化合物とD−グルコースを、適当な溶媒中(例えば、メタノール、エタノールなど)、触媒(例えば、塩化アンモニウム、酢酸など)の存在もしくは非存在下に縮合させることにより、式(VIII)で示される化合物を製造する。
(工程2)次に、式(VIII)の化合物を、適当な溶媒中(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタンなど)、室温又は冷却下に酸化剤(2,3−ジクロロ−5、6−ジシアノ−1、4−ベンゾキノンなど)で処理することにより、式(VI)で示される化合物を製造する。
(工程3)そして常法により式(VI)で示される化合物の水酸基を保護することにより、式(V)で示される化合物を製造することができる。
【0049】
なお、酸化剤で処理する工程(工程2)と水酸基を保護する工程(工程3)は、上記工程図において工程4と工程5として示すように、その順を入替えて実施してもよい。
【0050】
式(IX)で示される化合物は以下の工程により、製造することができる。
【0051】
【化7】

【0052】
(ただし、R4はC1−6アルキルであり、他の記号は前記と同一意味を有する。)
まず、式(XIII)で示される化合物を、適当な溶媒中(メタノール、エタノール、トルエンなど)、酸(たとえば、塩化亜鉛、塩酸、ポリリン酸、トリフルオロ酢酸など)の存在下、加熱して環化することにより、式(XII)で示される化合物を製造する。
【0053】
次に、式(XII)で示される化合物を適当な溶媒中(例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水など)、室温又は加熱下、塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなど)で加水分解することにより、式(XI)で示される化合物を製造する。
【0054】
さらに、式(XI)で示される化合物を、適当な溶媒中(例えば、キノリンなど)、触媒(例えば、銅)の存在下に脱炭酸して、式(X)で示される化合物を製造する。
【0055】
そして、式(X)で示される化合物を、適当な溶媒中(例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジクロロメタンなど)、室温または加熱下、酸(例えば、トリフルオロ酢酸、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯塩、ボラン・モルホリン錯塩)の存在下、還元剤(例えば、トリエチルシラン、水素化ホウ素亜鉛)で処理することにより、式(IX)で示される化合物を製造することができる。
【0056】
式(XIII)で示される化合物は、式(XIV)
【0057】
【化8】

【0058】
(ただし、記号は前記と同一意味を有する)
で示される化合物と、適当な溶媒中(アセトニトリル、メタノール、エタノール、水)、室温又は加熱下に、酸(塩酸、酢酸など)の存在下、CH3COCO2R4(ただし、R4は前記と同一意味を有する)と反応させることにより製造するか、あるいは、式(XV)
【0059】
【化9】

【0060】
(ただし、記号は前記と同一意味を有する)
で示される化合物を、適当な溶媒中(水、メタノール、エタノール)、室温又は冷却下、酸(例えば、塩酸など)の存在下に亜硝酸ナトリウムで処理して、対応するジアゾニウム塩化合物を製した後、適当な溶媒中(例えば、メタノール、エタノール、水)、室温又は冷却下に、塩基(酢酸ナトリウム、水酸化カリウムなど)の存在下でCH3COCH(CH3)CO2R4(ただし、R4は前記と同一意味を有する)と反応させることにより製造することができる。
【0061】
以下、本発明の医薬組成物の有効成分について、例を上げて説明する。
【0062】
製造例1
3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−4−フルオロ−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール
(1)4−フルオロインドリン(185 mg)、D−グルコース(267 mg)及び水(0.74 ml)−エタノール(9 ml)の混合物をアルゴン雰囲気下24時間還流した。溶媒を留去して粗体の4−フルオロ−1−(β−D−グルコピラノシル)インドリンを得た。この化合物は精製せずに次の工程に用いた。
【0063】
(2)上記化合物をクロロホルム(8 ml)に懸濁し、ピリジン(0.873 ml)、無水酢酸(1.02 ml)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(触媒量)を加えた。室温で21時間攪拌後、溶媒を減圧下留去した。残渣を酢酸エチルに溶解し、10%硫酸銅水溶液で洗い、ついで飽和重曹水で洗浄した。乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=90:10−60:40)で精製して、4−フルオロ−1−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)インドリン(365 mg)を得た。APCI−Mass m/Z 468(M+H)。
【0064】
(3)上記化合物(348 mg)を1,4−ジオキサン(14 ml)に溶解し、2,3−ジクロロ−5、6−ジシアノ−1、4−ベンゾキノン(306 mg)を加えた。室温で33時間攪拌したのち、飽和重曹水を加え有機溶媒を減圧下留去した。残渣を酢酸エチルで抽出し、有機相を洗浄、乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=90:10−60:40)で精製し、さらにエタノールから再結晶して、4−フルオロ−1−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)インドール(313 mg)を得た。融点:132−135℃. APCI−Mass m/Z 483(M+NH4)。
【0065】
(4)上記化合物(3.50 g)とN,N−ジメチルホルムアミド(3.49 ml)を1,2−ジクロロエタン(70 ml)に溶解し、オキシ塩化リン(2.10 ml)を加えた。混合物を70℃で1時間攪拌し、水(100 ml)を0℃で加えた。混合物を酢酸エチルで抽出し、洗浄、乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=90:10−50:50)で精製し、さらにエタノールから再結晶して、4−フルオロ−1−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)−インドール−3−カルボキシアルデヒド(2.93g)を得た。融点:190−192℃. APCI−Mass m/Z 511(M+NH4)。
【0066】
(5)マグネシウム屑(664 mg)と1、2−ジブロモエタン(1滴)のテトラヒドロフラン(40 ml)溶液に、1−ブロモ−4−シクロプロピルベンゼン(WO 96/07657参照)(5.21 g)のテトラヒドロフラン(12 ml)溶液を滴下した。室温で30分攪拌した後、この混合物を4−フルオロ−1−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)インドール−3−カルボキシアルデヒド(4.35 g)のテトラヒドロフラン(130 ml)溶液に、アルゴン雰囲気下、−78℃で滴下した。混合物を同温で30分攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。酢酸エチルで抽出し、乾燥後、溶媒を減圧下留去して、粗体の4−シクロプロピルフェニル 4−フルオロ−1−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)インドール−3−イル メタノールを得た。この化合物は精製することなく次の工程に用いた。
【0067】
(6)上記化合物とトリエチルシラン(2.11 ml)のジクロロメタン(44 ml)-アセトニトリル(87 ml)溶液に、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯塩(1.34 ml)を、アルゴン雰囲気下、0℃で加えた。混合物を同温で20分攪拌後、飽和重曹水を加えた。溶媒を減圧下留去した後、残渣を酢酸エチルで抽出した。乾燥し、不溶物を濾去後、濾液を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=90:10−50:50)で精製し、エタノールで粉末化して、3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−4−フルオロ−1−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)インドール(4.71 g)を得た。融点:190−192℃. APCI−Mass m/Z 613(M+NH4)。
【0068】
(7)上記化合物(4.67 g)をメタノール(47 ml)-テトラヒドロフラン(93 ml)に溶解し、ナトリウムメトキシド(28%メタノール溶液、1滴)を加えた。室温で1時間攪拌後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=99:1−90:10)で精製して、3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−4−フルオロ−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール(3.23 g)を泡状物として得た。これをエタノール−水で結晶化して1/2水和物の結晶を得た。融点:110−112℃。APCI−Mass m/Z 445(M+NH4), 428(M+H)。
【0069】
製造例2
4−クロロ−3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール
(1)4−クロロインドリン(2.88 g)とD−グルコース(3.38 g)のエタノール(150 ml)-水(10 ml)混合物をアルゴン雰囲気下で終夜還流した。溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:0−88:12)で精製して、4−クロロ−1−(β−D−グルコピラノシル)インドリン(3.35 g)を得た。APCI−Mass m/Z 316/318(M+H)。
【0070】
(2)上記化合物(3.3 g)を1,4−ジオキサン(150 ml)に溶かし、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(2.85 g)を加えた。混合物を室温で12時間攪拌した後、飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出した。洗浄、乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:0−86:14)で精製して、4−クロロ−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール(2.01 g)を得た。APCI−Mass m/Z 314/316(M+H)。
【0071】
(3)上記化合物(2.01 g)をジクロロメタン(100 ml)に懸濁し、無水酢酸(4.24 ml)とN,N−ジイソプロピルエチルアミン(7.8 ml)および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(78 mg)を加えた。室温で30分攪拌後、洗浄、乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をジエチルエーテル-ヘキサンから結晶化して4−クロロ−1−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)インドール(2.94 g)を得た。APCI−Mass m/Z 499/501(M+NH4)。
【0072】
(4)上記化合物を製造例1−(4)と同様に処理して、4−クロロ−1−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)インドール−3−カルボキシアルデヒドを得た。APCI−Mass m/Z 527/529(M+NH4)。
【0073】
(5)上記化合物と1−ブロモ−4−シクロプロピルベンゼン(WO 96/07657参照)を製造例1−(5)と同様に処理して、粗体の4−クロロ−1−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)インドール−3−イル 4−シクロプロピルフェニル メタノールを得た。この化合物は精製せずに次の工程に使用した。
【0074】
(6)上記化合物を製造例1−(6)と同様に処理して、4−クロロ−3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−1−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)インドールを得た。APCI−Mass m/Z 629/631(M+NH4)。
【0075】
(7)上記化合物を製造例1−(7)と同様に処理して、4−クロロ−3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−1−(β−D−グルコピラノシル)インドールを得た。APCI−Mass m/Z 444/446(M+H), 461/463(M+NH4)。
【0076】
製造例3
3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−4,6−ジフルオロ−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール
題記化合物を、4,6−ジフルオロインドリンを用いて、製造例1と同様に処理することにより製造した。APCI−Mass m/Z 463(M+NH4)。
【0077】
製造例4
4−クロロ−3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−6−フルオロ−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール
題記化合物を、4−クロロ−6−フルオロインドリンから、製造例1と同様にして処理することにより製造した。APCI−Mass m/Z 479/481(M+NH4)。
【0078】
参考例1:4−フルオロインドリン
水素化ホウ素ナトリウム(560 mg)のジエチルエーテル(6 ml)懸濁液に塩化亜鉛(1.0 Mジエチルエーテル溶液、7.4 ml)を滴下した。混合物をアルゴン雰囲気下室温で1日攪拌し、4−フルオロインドール(500 mg)のジエチルエーテル(5 ml)溶液を加えた。アルゴン雰囲気下、室温で12日間攪拌した後、冷0.5N塩酸(30 ml)を0℃で加えた。その後、混合物を2N水酸化ナトリウム水溶液を0℃で加えてアルカリ性とし、酢酸エチルで抽出した。乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0−80:20)で精製して、標記化合物(351 mg)を得た。APCI−Mass m/Z 138(M+H)。
【0079】
参考例2:4−クロロインドリン
4−クロロインドール(3.15 g)、トリエチルシラン(8.30 ml)及びトリフルオロ酢酸(32 ml)の混合物を50℃で30分間攪拌し、その後混合物を減圧下濃縮した。残渣に飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出した。乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0−80:20)で精製して、標記化合物(2.89 g)を得た。APCI−Mass m/Z 154/156(M+H)。
【0080】
参考例3:4,6−ジフルオロインドリン
(1)3,5−ジフルオロフェニルヒドラジン塩酸塩(5.0 g)、ピルビン酸エチル(4.6 ml)およびエタノール(25 ml)混合物を1時間還流し、溶媒を減圧下留去した。残渣をヘキサンで粉末化して、2−(3,5−ジフルオロフェニルヒドラジノ)プロピオン酸エチル(4.65g)を得た。融点:139−141℃.APCI−Mass m/Z 243(M+H)。
【0081】
(2)上記化合物(4.65 g)のトルエン(47 ml)懸濁液にポリリン酸(23 g)を加え、アルゴン雰囲気下、3時間還流した。室温に冷却後、水と酢酸エチルを加え、室温で攪拌した。不溶物を濾去し、水相を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を洗浄、乾燥し、溶媒を減圧下留去した。残渣をジイソプロピルエーテル-ヘキサン(1:1)で粉末化して4,6−ジフルオロインドール−2−カルボン酸エチル(3.48 g)を得た。融点:153−154℃. ESI−Mass m/Z 224(M−H)。
【0082】
(3)上記化合物(3.48 g)、4N水酸化ナトリウム水溶液(7.73 ml)及びエタノール(35 ml)の混合物を15分間還流し、溶媒を減圧下留去した。残渣に水を加え、エチルエーテルで洗浄した後、6N塩酸で酸性化した。酢酸エチルで抽出し、洗浄、乾燥後溶媒を減圧下留去して、粗体の4,6−ジフルオロインドール−2−カルボン酸(3.01 g)を得た。融点:253−254℃(分解). ESI−Mass m/Z 196(M−H)。
【0083】
(4)上記化合物(3.0 g)、銅(粉末;2.9 g)及びキノリン(30 ml)の混合物をアルゴン雰囲気下、200℃で5時間攪拌した。室温に冷却後、不溶物を濾去し、酢酸エチルで洗浄した。濾液を6N塩酸と飽和食塩水で洗浄した。水相を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機相を乾燥、ろ過後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1−6:1)で精製して、4,6−ジフルオロインドール(2.60 g)を得た。ESI−Mass m/Z 152(M−H)。
【0084】
(5)上記化合物(2.33 g)1,4−ジオキサン(30.4 ml)に溶解し、ボラン・モルホリン錯塩(6.15 g)と36%塩酸(2.64 ml)を室温で加えた。混合物を2時間還流し、室温に冷却した。その後6N塩酸(12.2 ml)を加え、15分間還流した。混合物を10%水酸化ナトリウム水溶液で塩基性にし、水を加えたのち、酢酸エチルで抽出した。有機相を洗浄、乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1−6:1)で精製して、4,6−ジフルオロインドリン(2.05 g)を得た。APCI−Mass m/Z 156(M+H)。
【0085】
参考例4:4−クロロ−6−フルオロインドリン
(1)3−クロロ−5−フルオロアニリン(8.0 g)の6N塩酸(28 ml)懸濁液に、亜硝酸ナトリウム(4.17 g)の水(5.2 ml)溶液を0℃で加えた。混合物を0℃で30分間攪拌したのち、水酸化カリウム(17.0 g)、酢酸ナトリウム(17.0 g)、2−メチルアセト酢酸エチル(8.72 g)、水(80 ml)及びエタノール(64 ml)の混合物に0℃で加えた。同温で2時間攪拌後、酢酸エチルで抽出した。溶媒を減圧下留去した。残渣を水と酢酸エチルに溶解し、不溶物を濾去した。有機相を洗浄、乾燥後、溶媒を減圧下留去した。残渣をヘキサンで粉末化して、2−(3−クロロ−5−フルオロフェニルヒドラジノ)プロピオン酸エチル(4.0g)を得た。APCI−Mass m/Z 259/261(M+H)。
【0086】
(2)上記化合物を参考例3-(2)、(3)、(4)及び(5)と同様に処理して、4−クロロ−6−フルオロインドリンを得た。APCI−Mass m/Z 172/174(M+H)。
【0087】
試験例
1.ヒトSGLT2阻害作用確認試験
(1)試験化合物
前記製造例記載化合物を用いた。
【0088】
(2)試験方法
24穴プレートに、ヒトSGLT2安定発現CHOK1細胞を40×104個/穴で播種した。10%ウシ胎児血清、50IU/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン、400μg/mlゲネチシン(Geneticin)を含むHam's F−12培地中で、37℃、5%CO2存在下2日間培養した後、メチル−α−D−グルコピラノシド(α−MG)取り込み実験に供した。培地を除去し、緩衝液(137 mM塩化ナトリウム、5 mM塩化カリウム、1 mM塩化カルシウム、1 mM塩化マグネシウム、50 mM 2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸、20 mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを含む緩衝液、pH7.4)で1回洗浄後、試験化合物を含む緩衝液を1穴あたり250μl加えた。試験化合物は、ジメチルスルフォキシド(DMSO)に溶解し、緩衝液に添加した(DMSOの終濃度0.5%)。また、対照用として、DMSOのみを含む緩衝液を、SGLT非特異的な取り込み量測定用として、SGLT阻害物質フロリジン(終濃度100μM)を含む緩衝液を、それぞれ同様に調製し、同じく1穴あたり250μlずつ添加した。37℃で10分間静置後、α−MGと(U−14C)−α−MG(α−MGの終濃度0.5mM)を含む緩衝液を、1穴あたり50μlずつ加え、さらに37℃で2時間静置した。次に、細胞に添加した緩衝液を全て除去し、氷冷したリン酸緩衝液を1穴あたり400μlずつ加え、直ちに除去した。この洗浄操作を、さらに2回繰り返し行った。その後、0.3NNaOHを1穴あたり300μlずつ加え、細胞を可溶化し、可溶化液中の放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定した。結果は、蛋白濃度で補正した。対照の取り込みからSGLT非特異的な取り込みを差し引いた値を100%とし、各試験化合物がそれを50%阻害する濃度(IC50値)を、プロビット法(ロジスティックモデル)によって求めた。
【0089】
(3)結果
結果は下表のとおりである。
【0090】
【表1】

2.尿糖排泄促進作用確認試験
(1)被験化合物
前記製造例記載化合物を用いた。
(2)実験方法
6週齢の雄性SDラットを2日間代謝ケージで予備飼育後、実験に用いた。被験化合物(30 mg/kg)は、0.2% Tween80を含む0.2%カルボキシメチルセルロース(CMC)溶液に懸濁し、10 ml/kg宛経口投与した。対照群には、溶媒(0.2% Tween80を含む0.2% CMC溶液)のみを経口投与した。1群あたりの匹数は3匹とした。投与直後から代謝ケージにて24時間尿を採集し、グルコース脱水素酵素法にて、尿中のグルコース濃度を測定した。尿量と尿中グルコース濃度から、1日あたりの尿糖排泄量を算出した。
(3)結果
結果は下表のとおりである。なお、1日あたりの尿糖排泄量(mg)は、下式で定義されるA、BまたはCで表した。
A≧2400 mg;2400 mg>B≧2000 mg;2000 mg>C
【0091】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の有効成分である式(I)で示される化合物、またはその薬理学的に許容しうる塩は、SGLT阻害作用を有し、血糖降下作用を奏する。このため、本発明の医薬組成物は、血糖降下剤として、また、糖尿病、糖尿病性合併症(糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経症など)、肥満症、過血糖等の予防・治療剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

(式中、R1はフッ素または塩素であり、R2は水素またはフッ素である。)
で示される化合物、またはその薬理的に許容しうる塩を有効成分とする医薬組成物。
【請求項2】
R2が水素である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
R1がフッ素でR2が水素であるか、R1が塩素でR2が水素であるか、またはR1とR2が共にフッ素である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
有効成分が、
4−クロロ−3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール;
4−フルオロ−3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール;
4−クロロ−6−フルオロ−3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール;および
4、6−ジフルオロ−3−(4−シクロプロピルフェニルメチル)−1−(β−D−グルコピラノシル)インドール;
から選ばれる化合物、またはその薬理学的に許容し得る塩である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
血糖降下剤である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
糖尿病、糖尿病合併症、遅延創傷治癒、インスリン抵抗性、高血糖症、高インスリン血症、高脂肪酸血症、高グリセロール血症、高脂血症、肥満症、高トリグリセリド血症、X症候群、メタボリック症候群、アテローム硬化症、過血糖あるいは高血圧症の予防または治療剤である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
糖尿病、糖尿病合併症、または肥満症の予防または治療剤である請求項1記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2009−196984(P2009−196984A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12660(P2009−12660)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】