説明

医薬製品および使用方法

医薬製品は、容器を含む。次いで、この容器は、ニッケルまたはニッケル合金の層を含む壁を有する貯蔵部を備え、この層はその貯蔵部の内部に面している。この製品はまた、その容器内に配置された、セボフルラン、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロセンからなる群より選択されるハロゲン化麻酔剤を含む。別の局面によると、医薬製品を使用する方法は、ニッケルまたはニッケル合金の層を含む壁を有する貯蔵部を備える容器を得る工程を包含し得、この層は、その貯蔵部の内部に面している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許は、医薬製品およびその使用方法に関し、より具体的には、ハロゲン化麻酔剤用の医薬製品およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麻酔剤を、液体形態から、患者に投与され得る気体形態に変換するために、噴霧器として知られる機械を使用することが周知である。液体麻酔剤は、代表的に、ボトルタイプの容器において保管される。使用においては、その容器は、噴霧器のポートと嵌合され、液体が容器の内部チャンバーから噴霧器のレザバへ移動される。液体麻酔剤は、次いで、気化されて、酸素(および必要に応じて他の気体)と混合される。気体混合物が、次いで、患者に投与され得る。
【0003】
多数の異なる材料が、そのような麻酔剤との使用のための容器の製造のために使用されている。
【0004】
ガラスは、選択肢である伝統的な材料である。もちろん、ガラスは特定のチャレンジを提示する。ガラスは、破損を避けるために注意深い取り扱いを必要とし、そして破損が起こった場合は、製品は失われ、負傷が生じ得る。さらに、特許文献1は、特定のハロゲン化吸入麻酔剤がガラスの成分と反応し得、その麻酔剤の分解を引き起こし得ることを理論化している。特に、ガラス中の酸化アルミニウムが、麻酔剤を分解する反応においてルイス酸として働くと仮定されている。
【0005】
代わりに、特定のプラスチックが、セボフルランのようなハロゲン化麻酔剤の保管のための容器における使用のために示唆されている。例えば、特許文献2は、「Kel−F」プラスチック(「Kel−F」は、ポリクロロトリフルオロエチレンについての商標名であると理解される)の、セボフルランを保持するための容器の作製のための使用を説明している。特許文献3は、セボフルランを保持するための、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で裏打ちされた容器を説明している。同様に、以下の特許は、セボフルランのためのプラスチック容器を説明している:特許文献4(ポリエチレンナフタレート);特許文献5(ポリメチルペンテン);特許文献6(ポリプロピレン、ポリエチレンおよびアイオノマー樹脂)ならびに、特許文献7。特許文献8はまた、液体吸入剤を有する熱可塑性容器の使用を教示している。
【0006】
プラスチック容器はガラス容器よりも破損しにくいが、プラスチック容器はなお一般的な使用条件下で破損しやすい。さらに、多くのプラスチックは蒸気透過性であり、このことは、吸入麻酔剤が時間とともに容器から逃げることを可能にし得る。蒸気透過性はまた、周囲の蒸気が容器内に入ることを許容し、このことは製剤の水含量におけるコンタミネーションおよび/または変化の可能性につながる。付言すれば、吸入麻酔剤は強力な有機溶媒特性を有し、そしてそれゆえプラスチックの溶解および/または反応を引き起こし得、このことはその吸入麻酔剤における測定可能な不純物につながる。さらに、プラスチック容器は、その容器の加工および処理の間に必要とされ得る高温に曝露された場合に、変形に供される。
【0007】
さらに代わりに、いくつかは金属容器の使用を示唆している。例えば、特許文献9は、セボフルランを保持するための、ステンレススチール、ガラスまたはプラスチック製のセボフルラン用容器を記載している。より最近の発見は、セボフルラン、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロセンのような麻酔剤のための容器を作製するためのアルミニウムの使用である。特に、裏打ちされていないか、またはエナメルもしくはラッカー(このエナメルもしくはラッカーは、エポキシ−フェノール樹脂を含み得る)で裏打ちされているかのいずれかの、アルミニウム容器が示唆されている。特許文献10を参照のこと。
【0008】
他方、特定の金属は、麻酔剤、特にハロゲン化麻酔剤のための容器における使用には受容可能ではないことが示唆されている。特許文献11を参照のこと。特に、セボフルランの分解がガラス容器で観察され、この分解はその容器中に存在する微量のルイス酸によって活性化されると考えられることが記載されている。ルイス酸の1つの供給源として特許文献11においては酸化アルミニウムが特定されているが、特許文献11には、同様にルイス酸を提供する他の「酸化する」金属が存在することが記載されている。特に、ニッケルおよびニッケル合金は、例示的な酸化する金属として特定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,990,176号明細書
【特許文献2】米国特許第4,250,334号明細書
【特許文献3】米国特許第5,679,576号明細書
【特許文献4】米国特許第6,074,668号明細書
【特許文献5】米国特許第6,083,514号明細書
【特許文献6】米国特許第6,162,443号明細書
【特許文献7】米国特許第6,558,679号明細書
【特許文献8】米国特許第5,505,236号明細書
【特許文献9】米国特許第5,990,176号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2002/0068767号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2008/0087283号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下においてより詳細に説明されるように、本開示は、上で考察された慣習的なシステムおよび方法の有利な代替を具現化する改善されたシステムを説明する。
【0011】
(要旨)
1つの局面において、医薬製品は容器を含む。次いで、この容器は、ニッケルまたはニッケル合金を備える壁を有する貯蔵部を備え、この層はその貯蔵部の内部に面している。この製品はまた、上記容器内に配置された、セボフルラン、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロセンからなる群より選択されるハロゲン化麻酔剤もまた含む。
【0012】
別の局面によると、医薬製品を使用する方法は、ニッケルまたはニッケル合金の層を含む壁を有する貯蔵部を備える容器を得る工程を包含し得、この層は、その貯蔵部の内部に面している。この方法はまた、上記容器に、セボフルラン、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロセンからなる群より選択されるハロゲン化麻酔剤を充填する工程も包含し得る。
【0013】
本開示のさらなる局面は、本特許の特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本開示に従う容器の斜視図である。
【図2】図2は、図1の貯蔵部の壁の部分断面図である。
【図3】図3は、別の実施形態に従う、図1の貯蔵部の壁の部分断面図である。
【図4】図4は、図1の閉鎖部の部分断面図である。
【図5】図5は、図1の容器のための代替の閉鎖部の、斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面と合わせて以下の説明から、本開示がより完全に理解されるものと考えられる。いくつかの図面は、より明確に他の要素を示す目的で、選択された要素を省略することによって、簡略化され得る。いくつかの図面における要素のそのような省略は、対応する詳細な説明において明示的に記述されている場合を除いて、例示的な実施形態のいずれかにおける特定の要素の存在または非存在を示すものでは必ずしもない。図面はいずれも、必ずしも縮尺通りではない。
【0016】
以下の文書は本発明の異なる実施形態の詳細な説明を記載しているが、本発明の法的な範囲は本特許の最後に記載される特許請求の範囲の文言によって規定されることが理解されるべきである。詳細な説明は、単なる例示として解釈されるべきであり、本発明の全ての可能な実施形態を記載してはいない。なぜなら、全ての可能な実施形態を記載することは、不可能ではないとしても、現実的でないからである。現在の技術、または本特許の出願後に開発される技術のいずれかを用いて、本発明を規定する特許請求の範囲の範囲内になお入る多数の代替的な実施形態が実施され得る。
【0017】
ある用語が、「本明細書中で使用される場合、用語「〜」は、これにより・・・を意味すると定義される」との文章、または類似の文章を用いて本特許において明示的に定義されない限り、明示的にせよ暗示的にせよいずれにおいても、用語の意味を、その明らかな、または通常の意味を超えて限定する意図は存在せず、そしてそのような用語が、本特許の任意のセクション(請求項の文言以外)においてなされた任意の言及に基づいて、範囲を限定するものと解釈されるべきではないこともまた、理解されるべきである。本特許の最後にある特許請求の範囲において記載された任意の用語が単一の意味と一致する様式において本特許において言及されている限り、それは、読者を混乱させないように明確にするためにのみなされており、そのような特許請求の範囲の用語が、含意により、またはそれ以外により、その単一の意味に限定されることを意図していない。最後に、特許請求の範囲の構成要件が、任意の構造の記載なく、用語「手段」および機能を記載することによって規定されている場合を除いて、任意の特許請求の範囲の構成要件が米国特許法第112条第6パラグラフに基づいて解釈されることは意図されない。
【0018】
本開示に従い、医薬製品が開示される。この医薬製品は、ニッケルまたはニッケル合金の層を含む容器を含み、この層は、その容器の内部に面している。この容器は、例えば、ボトルまたはドラムの形態である得る。その容器は、貯蔵部における麻酔剤の漏れ、またはその麻酔剤へのアクセスを制限するために、密封され得、そのためのキャップ、バルブアセンブリ、または他のデバイスを備え得る。この貯蔵部は、セボフルラン(フルオロメチル2,2,2−トリフルオロ−1−[トリフルオロメチル]エチルエーテル)、デスフルラン(1,2,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、イソフルラン(1−クロロ−2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル)、エンフルラン(2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル−ジフルオロメチルエーテル)、メトキシフルラン(2,2−ジクロロ−1,1−ジフルオロエチルメチルエーテル)、および、ハロセン(2−ブロモ−2−クロロ−1,1,1−トリフルオロエタン)のようなハロゲン化麻酔剤を保持し得、これらは、その貯蔵部の内部に配置され得る。特定の実施形態に従うと、その貯蔵部は、セボフルラン、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロセンからなる群より選択されるハロゲン化麻酔剤を保持し得る。これらのハロゲン化麻酔剤は全て、周囲条件下で液体であり得る。
【0019】
図1は、上述の医薬製品における使用のための麻酔剤容器50の実施形態を図示する。これは、容器50の例示的な形態であり、本開示の範囲をそれに限定することは意図されない。上記の通り、この容器は、ドラムなどの、図1において図示されたもの以外の形態をとり得る。
【0020】
図示された容器50は、ボトルの形態で貯蔵部52を備え、その貯蔵部は内部56を規定する壁54を有する。図示された実施形態に従うと、壁54は、内部56と流体連絡している通路60を有するネック58もまた規定する。図1に図示されるように、ボトル形状の貯蔵部52の実施形態は、貯蔵部52の最も広い部分よりも小さな断面のネック58を有しするが、これは必ずしも本開示の全ての実施形態においてそのようである訳ではない。さらに、貯蔵部52はフランジ62を有し、これは貯蔵部52のネック58に位置され得る。図1に図示されるように、フランジ62は、壁54の外面64から垂れ、ネック58を通って通路60と連絡する開口部68の周りのリム66を規定し得る。
【0021】
本開示の実施形態に従うと、図2において見られるように、壁54は、受容部52の内部56に面する、ニッケルまたはニッケル合金の層70を含む。例示的なニッケル合金としては、ニッケル−鉄合金、ニッケル−亜鉛合金、HASTELLOY、INCONEL、およびMONEL商標(HASTELLOYは、Indiana,KokomoのHaynes International,Inc.の登録商標であり、INCONELおよびMONELは、West Virginia,HuntingtonのHuntington Alloys Corpの登録商標である)の下で入手可能な合金、Nickel200ならびにAlloy20が挙げられるが、これらに限定されない。図示された実施形態に従うと、壁54はまた、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、または何らかの他の金属(例えば、スチール)の層80も含み得る。1つの例として、貯蔵部52は、2ピースまたは3ピースのスチール構造であり得る。図示された実施形態に従うと、層70は、貯蔵部52の内部56に面している層80の表面82上に配置され得る。特定の実施形態に従うと、層70は、層80の両表面上に配置され得る。図3を参照のこと。
【0022】
実施形態に依存して、層70は、連続的であっても不連続的であってもよい。層
70が連続的である場合、層70は、貯蔵部52の全内部56に面して配置され得る。層70が不連続的である場合、層70のこの不連続性は、層70を不連続的に(例えば、パターン)作製しようという意識的な決定の結果であってもよいし、層70が表面82上に形成されるときの加工条件の結果(例えば、不完全なめっき)としてのものであってもよい。連続的であろうと不連続的であろうと、層70の少なくとも一部は、貯蔵部52内に配置された麻酔剤と直接的に接触している。
【0023】
層70が層80の上に配置されて壁54を規定する場合、層70は、慣習的なめっき技術を用いて層80上に配置され得る。層70は、材料が貯蔵部52を規定するように成形される前に層80上に配置されてもよいし(例えば、貯蔵部52は、ニッケルめっきされたスチール製である)、あるいは、層70は、層80が貯蔵部52を規定するように成形された後に層80上に配置されてもよい。さらに、他の材料が、ニッケルおよび/またはニッケル合金層70と組み合わされ得る。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が、ニッケルおよび/またはニッケル合金層70と組み合わせて使用され得る。すなわち、PTFEは、ニッケルまたはニッケル合金とともに同時堆積されてもよいし、あるいは、ニッケルまたはニッケル合金がめっきされ、次いでPTFEが層70内に例えば注入されてもよい。
【0024】
さらに、層80を、プラスチックのようなポリマーを用いて形成することが可能であり得る。限定のためではなく例示として、層80は、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリプロピレンのようなプラスチック製であってもよいし、または、ポリプロピレン(化学的適合性のため)/ナフタレン(剛性のため)のような複数材料製でさえあってもよい。そのような層80は、例えば、射出成形またはブロー成形技術を用いて、貯蔵部52を規定するように成形され得る。例えば真空メタライゼーション技術を用いて形成されて、層70は層80上に配置され得るが、層80がプラスチック製であるという知見により、代わりに他の技術が使用され得ることが認識される。さらに、中間層が層80上に配置されて、層70がその上に配置されることを許容し得ることが認識される。例えば、層70が塗布される前に、銅の層が層80上に配置され得る。
【0025】
比較試験において、アルミニウム層の上に配置されたニッケル層を含む壁を有する貯蔵部が、既存の技術と類似した性能特性を有することが、予想外に示された。具体的には、試験は、貯蔵部の内部に面するニッケル層を有するアルミニウム貯蔵部と、貯蔵部の内部に面するエポキシ−フェノール樹脂層を有するアルミニウム貯蔵部とについて実施された。双方の貯蔵部がセボフルランで充填され、約1ヶ月(ニッケル層を有する貯蔵部については44日、エポキシ−フェノール樹脂層を有する貯蔵部については1ヶ月)の期間55℃で保管された。その期間の最後に、セボフルランが視覚的に検査され、特定の化学分析が実施された。両方の容器におけるセボフルランは透明かつ無色であり、pHはほぼ同じ(ニッケル層を有する貯蔵部由来のセボフルランについては5.7であり、エポキシ−フェノール樹脂層を有するセボフルランについては5.6)であった。さらに、ガスクロマトグラフィーを用いて、0.05ppm(信頼性をもって検出することができる下限)よりも大きな、または使用された溶媒マトリックス(このケースにおいては、イソオクタン)において見出される半揮発性不純物のレベルよりも大きな半揮発性不純物は、2つの異なる貯蔵部から取り出されたセボフルランのサンプルにおいては検出されなかった。さらに、再度ガスクロマトグラフィーを用いて、両方の貯蔵部に含有されるセボフルランにおいて検出される不純物は、ほぼ類似の量(両方の貯蔵部について、セボフルラン99.998wt.%;総不純物:0.0016wt.%)で存在した。セボフルランのような麻酔剤とのニッケルの使用の致命性を考慮すると、試験結果の類似性は予測されなかったものであると考えられる。
【0026】
図1にまた図示されているように、容器50は、閉鎖部90を備え、この閉鎖部90は、開口部68を覆ってフィットして、麻酔剤が貯蔵部52から漏れることを防止し得る。閉鎖部90は、容器50の特徴を傷つけることのないように選択されるべきであり;閉鎖部90は、構造的完全性、不活性、および蒸気障壁特性を提供し得る。図示されるように、閉鎖部90はキャップの形態である。キャップ90は、キャップ90およびフランジ62上に形成されたねじ山の使用により、貯蔵部52のネック58に取り付けられ得る。あるいは、キャップ90は単純に、「スナップオフ(snap−off)」フィットによって適所に保持され得る。
【0027】
閉鎖部90は、アルミニウムもしくは他の金属製であってもよいし、ポリマー材料製であってもよい。図4に図示されているように、閉鎖部90は、裏打ちされている。すなわち、閉鎖部90は、内面94を有する壁92を有し得、この内面94上に不活性ライニングの層96が配置される。層96は、エナメルまたはラッカーであり得、例えば、エポキシ−フェノール樹脂を含んでもよいし、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含んでもよい。1つの適したライニングは、Norton Performance Plastics Corporation,150 Day Road,Wayne N.J.07470−4699(Saint−Gobain Performance Plasticsの子会社)から入手可能な、「Plytrax100」の名称で市販されており、発泡ポリエチレン裏地と面しているPTFEを有する。層96はまた、ニッケルまたはニッケル合金のものであってもよい。
【0028】
しかしながら、図1において図示されているキャップ90は、本開示に従う容器に含まれ得る1つの例示的な閉鎖部である。図5は、図1および4に図示されているキャップ90の代替的な閉鎖部100を図示する。閉鎖部100は、キャップ102、挿入部(または、トップハット(top hat))104、およびガスケット106を含む。組み立てられると、金属挿入部104は、キャップ102において形成される空間108に受容され、ガスケット106は挿入部104に隣接する。挿入部104は水の障壁を規定し、他方ガスケット106が(付随する容器内に配置された液体麻酔剤に関して)液体の障壁を規定する。
【0029】
具体的には、キャップ102は、壁112を備える閉鎖端部110を有し、この壁112が円筒状のカップ形状の空間108を規定する。段状のセクション114はショルダー116を規定し、組み立てられるとともにこのショルダー116に対して挿入部104が据えられる。さらなる壁118は、段状のセクション114からロック機構120へ垂れ、このロック機構120は、付随する貯蔵部上の適所にキャップ102を保ち、そして閉鎖部100が以前に貯蔵部から取り外されたか否かの目視検査を提供するために使用される。壁118は内面122を有し、この内面122は、貯蔵部上に形成された類似のねじ山を受容するためにねじ山を付けられて、閉鎖部100をその貯蔵部に開放可能に固定し得る。キャップ102は、層80に関して上に記載されたプラスチックのうちの1つのような、プラスチック製であり得る。
【0030】
挿入部104は、閉鎖端部132を有する円筒形カップ130と、開口端部134とを備える。リムまたはフランジ136が、カップ130の開口端部134に取り付けられる。リムまたはフランジ136は、2つの対向表面138、140を規定する。組み立てられると、表面138はショルダー116に隣接し、表面140は環状ガスケット106に隣接する。挿入部104は、金属製であってもよいし、プラスチックのようなポリマー製であってもよい。例示的な金属およびプラスチックは、層80に関して上に記載されたものを含み得る。
【0031】
上記の開示に従って、カップ130およびフランジ136は、カップ130およびガスケット106の内部に(そしてそれゆえ、付随する貯蔵部の内部に)面する(図2と同様)か、または両方の表面に面する(図3と同様)、ニッケルまたはニッケル合金の層を含む。ニッケルもしくはニッケル合金の層、または、そのニッケルまたはニッケル合金が配置される層に関して上に記載された任意の代替形態は、閉鎖部100のこの実施形態に関して等価に適用される。さらに、この実施形態の変形に従うと、挿入部104は、フランジ136なしで形成され得、その場合、環状ガスケット106は、カップ130の開口部134においてカップ130とフィットする。
【0032】
さらなる代替として、上記閉鎖部は、代わりに、例えば米国特許第5,505,236号および同第5,617,906号(これらの特許の開示は、その全体が本明細書中に援用される)に記載されているような、バルブアセンブリの形態のものであり得る。バルブアセンブリの形態の閉鎖部と、カップの形態の閉鎖部との両方を、本開示に従う単一の実施形態において使用することもまた可能であり、カップは麻酔剤の損失に対する障壁を提供し、バルブアセンブリへのアクセスとバルブアセンブリのコンタミネーションとを制限する。
【0033】
一般論として、代替的に、適したバルブアセンブリは、容器からの麻酔剤の損失を最小限にするために閉じ、そして、容器から別の貯蔵部またはデバイス(例えば、噴霧器)への麻酔剤の移動を許容するために(例えば、噴霧器のポートとの相互作用により)開く。上に記載されたキャップ型の閉鎖部と同様に、バルブアセンブリが容器上にねじ込みまたはスナップされてもよいし、または、クリンプされたフェルールが貯蔵部へのバルブアセンブリの固定のために使用されてもよい。あるいは、バルブアセンブリは、使用前には貯蔵部と組み立てられるが、製造時には貯蔵部と永久に固定されなくてもよい。
【0034】
図示されてはいないが、容器が患者への投与のための最終製品を供給するために用いられるべきものである場合には、その容器(貯蔵部または閉鎖部)の成分は、インデックスエレメント(indexing element)と共に提供され得る。このインデックスエレメントは、その容器が対応するインデックスエレメントを有する噴霧器とのみ嵌合することを可能にする。このことは、麻酔剤が、その特定の麻酔剤の投与のために、またはその特定の容器の使用のために設計された噴霧器を介してのみ投与されることを確実にすることを補助し得る。同様に、容器のサイズおよび形状が、特定のタイプの吸入麻酔剤を示すように変えられ、異なるタイプの麻酔剤が噴霧器中で混合されることを避け得る。
【0035】
さらに、単一ピースのボトル形状の貯蔵部の実施形態が図示されているが、本開示はそれに限定されない。貯蔵部は、代わりに、2ピースの貯蔵部、または3ピースの貯蔵部としてさえ、形成され得る。さらに、貯蔵部は、最終の分配を待っているバルク薬物形態または未加工製造形態の吸入麻酔剤の配送、混合、または保持の間の使用のための、より大きなタンクまたはドラムの形態のものであり得る。サイズまたは形状に拘らず、その容器は、別の容器の内部に配置され得ることもまた、認識される。そのような実施形態に従うと、上に記載された容器は、例えばプラスチックまたはスチールの外層またはジャケット内に配置された内層の形態であり得る。
【0036】
本開示に従う医薬製品の使用に関しては、方法は、ニッケルまたはニッケル合金を含む壁を有する貯蔵部を含む容器を得る工程を包含し、その層は貯蔵部の内部に面している。この方法はまた、その容器に、セボフルラン、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロセンからなる群より選択されるハロゲン化麻酔剤を充填する工程を包含する。さらに、この方法は、いったん充填が完了したら、その容器を、例えば閉鎖部、バルブアセンブリなどで密封する工程を包含し得る。この使用方法は、さらに(または、代替的に)、セボフルラン、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロセンからなる群より選択されるハロゲン化麻酔剤を容器から分配する工程を包含し得る。そのような方法はまた、上記ハロゲン化麻酔剤の分配前に容器を開封する工程を包含し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルまたはニッケル合金の層を含む壁を有する貯蔵部を備える容器であって、該層は、該貯蔵部の内部に面している、容器と、
該容器内に配置された、セボフルラン、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロセンからなる群より選択される、ハロゲン化麻酔剤と
を含む、医薬製品。
【請求項2】
前記壁がアルミニウムまたはアルミニウム合金を含む、請求項1に記載の医薬製品。
【請求項3】
前記層は、前記アルミニウムまたはアルミニウム合金上にめっきされている、請求項2に記載の医薬製品。
【請求項4】
前記層は連続的である、前記請求項のいずれか1項に記載の医薬製品。
【請求項5】
前記層は不連続である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬製品。
【請求項6】
前記層はポリテトラフルオロエチレンを含む、前記請求項のいずれか1項に記載の医薬製品。
【請求項7】
前記壁がプラスチックを含み、前記層が該プラスチック上に配置されている、請求項1に記載の医薬製品。
【請求項8】
前記容器が閉鎖部を備える、前記請求項のいずれか1項に記載の医薬製品。
【請求項9】
前記閉鎖部がキャップを備える、請求項8に記載の医薬製品。
【請求項10】
前記閉鎖部が、該閉鎖部上に配置された不活性ライニング層を有する、請求項8または9に記載の医薬製品。
【請求項11】
前記閉鎖部上に配置された前記層がポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項10に記載の医薬製品。
【請求項12】
前記閉鎖部が挿入部を有するキャップを備え、該挿入部は、前記貯蔵部の内部に面するニッケルまたはニッケル合金の層を備える、請求項8に記載の医薬製品。
【請求項13】
前記挿入部がアルミニウムまたはアルミニウム合金を含み、前記ニッケルまたはニッケル合金の層が、該アルミニウムまたはアルミニウム合金上にめっきされている、請求項12に記載の医薬製品。
【請求項14】
前記貯蔵部がボトルの形態である、前記請求項のいずれか1項に記載の医薬製品。
【請求項15】
医薬製品の使用方法であって、該方法は、
ニッケルまたはニッケル合金の層を含む壁を有する貯蔵部を備える容器を得る工程であって、該層は該貯蔵部の内部に面している、工程、および
該容器に、セボフルラン、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロセンからなる群より選択されるハロゲン化麻酔剤を充填する工程
を包含する、方法。
【請求項16】
いったん前記充填が完了したら前記容器を密封する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記容器から、セボフルラン、デスフルラン、イソフルラン、エンフルラン、メトキシフルランおよびハロセンからなる群より選択される前記ハロゲン化麻酔剤を分配する工程をさらに包含する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記ハロゲン化麻酔剤を分配する前に、前記容器を開封する工程をさらに包含する、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−525937(P2012−525937A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509978(P2012−509978)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/033903
【国際公開番号】WO2010/129796
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】