説明

半固体TiB2プレカーサー混合物

本発明は、酸化ホウ素が金属酸化物内で見出される緊密に結合したクラスターを生成させるような方法で混合した金属酸化物と酸化ホウ素を含む金属ホウ化物プレカーサー混合物に関する。さらにまた、本発明は、上記金属ホウ化物プレカーサー混合物と炭素質成分でもって製造した炭素複合体材料にも関する。最後に、本発明は、金属酸化物と酸化ホウ素を供給する工程;金属酸化物と酸化ホウ素を、酸化ホウ素を液化し且つ金属酸化物を含浸し得る温度で機械的に混合して金属酸化物と酸化ホウ素の緊密に結合したクラスターを生成させる工程を含む上記金属ホウ化物プレカーサー混合物の製造方法も教示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、炭素質成分と混合したとき、アルミニウム電気分解セルのカソードまたはセルライニングにおいて使用するのに適する炭素複合体材料を生成する成分を含む金属ホウ化物プレカーサー混合物の製造に関する。
【0002】
背景技術
TiB2のような金属ホウ化物は、電気分解セル用のラミングペースト、セルライニングおよびカソードを製造するための炭素成分との混合物において使用されている。金属ホウ化物は、金属ホウ化物を添加する電気分解セル部品の表面湿潤性を改善することが知られている。二ホウ化チタンは、優れた性能の点で好ましいが、極めて高価であるというかなりの欠点を有する。
二ホウ化チタンは、一般に、等モル量の酸化チタンと酸化ホウ素を還元剤と一緒に混合することによって製造する。例えば、炭素とアルミニウムは、双方とも既知の還元剤である。上記両酸化物の二ホウ化チタンへのこの還元は、アルミニウム生産用の電気分解セルの立上げ、従って、TiB2の現場生産時において可能であることも知られている。しかしながら、上記各プレカーサーからの金属ホウ化物の現場生成は、各反応物を互いに十分に混合した場合にのみ適切に進行し、とりわけ、金属酸化物とホウ素化合物間の接触を金属ホウ化物の生産においては必要とすることが知られている。
【0003】
Khazai等は、米国特許第5,160,698号において、各反応物の微粉砕混合物を使用する金属ホウ化物の製造方法を教示している。該粒状反応物の混合物は、金属化合物、炭素、および加熱して該混合物を約0.05〜約0.5ミクロンの平均粒度を有する金属ホウ化物に転換する約200ミクロンの粒度を有するホウ素源を含む。金属化合物は、炭素および上記ホウ素源との制御条件下で且つ1200℃〜2500℃の温度での反応によって相応する金属ホウ化物に転換させ得る化合物である。
Mietchi等は、ヨーロッパ特許 EP 1 141 446 B1号において、アルミニウムの生産において使用する湿潤性で耐腐蝕/酸化性の炭素複合体材料を教示している。Mietchi等は、電気分解セルにおいて使用するときに耐腐蝕/酸化性で且つ溶融アルミニウムによって湿潤性であると同時に比較的安価で製造するのが容易である、カソードブロック、接合用ペースト等に製造し得る炭素複合体材料を提供している。Mietchi等は、好ましくは微分割され、相応する金属ホウ化物を生成させるセル始動中にプレカーサーの有効な反応を可能にするのに十分に小さい平均粒度を有するプレカーサー混合物を使用している。
金属酸化物とホウ素化合物を含有する炭素複合体混合物の製造においては、金属酸化物とホウ素化合物の偏析が粒子を微分割した場合でさえも生じ得る。さらにまた、酸化ホウ素は、ブロック製造において使用する炭素バインダーに対して有害な作用を有するようである。従って、混合と焼成は、困難であり、低品質の製品しかもたらさない。本発明の目的は、従来技術における欠点の少なくとも幾つかを克服することである。
【0004】
発明の概要
本発明の1つの局面によれば、金属酸化物と酸化ホウ素(boric oxide)(B2O3)を含み、上記金属酸化物と上記酸化ホウ素がクラスター中で物理的に結合しており、上記酸化ホウ素が上記金属酸化物によって緊密に支持(intimately supported)されていることを特徴とする金属ホウ化物プレカーサー混合物を提供する。
本発明のもう1つの局面によれば、アルミニウム電気分解セルにおいてカソードおよびセル壁材料の少なくとも1つとして使用する炭素複合体材料(carbon composite material)を提供し、該複合体材料は、炭素質成分(carbonaceous component)、および金属酸化物と酸化ホウ素を含む金属ホウ化物プレカーサー混合物を含み、上記金属酸化物と上記酸化ホウ素がクラスター中で物理的に結合しており、上記酸化ホウ素が上記金属酸化物によって緊密に支持されていることを特徴とする。
本発明のさらにもう1つの局面によれば、以下の工程を含むことを特徴とする、金属ホウ化物プレカーサー混合物の製造方法を提供する:ホウ素成分を供与する粒子表面を有する金属酸化物を調製する工程;上記金属酸化物と上記ホウ素成分を機械的に混合して粒状混合物を調製する工程;および、上記粒状混合物を、上記ホウ素成分が液化酸化ホウ素となり上記粒子表面に含浸して金属酸化物と酸化ホウ素の物理的に結合したクラスターを生成し且つ酸化ホウ素が金属酸化物によって緊密に支持される温度に加熱する工程。
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面と関連して行う以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0005】
発明を実施するための形態
図1は、本発明の金属ホウ化物プレカーサー混合物の製造方法の1つの実施態様に従うブロックフローダイアグラムである。上記プレカーサー混合物は、金属酸化物と酸化ホウ素を含む。
本発明の金属酸化物は、必ずしも限定するものではないが、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化バナジウム(V2O5およびV2O3)、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロムおよび酸化モリブデン、並びにこれらの組合せから選択し得る。本発明の好ましい実施態様においては、金属酸化物はTiO2またはZrO2であり、とりわけ好ましい実施態様においてはTiO2である。
好ましい実施態様における上記プレカーサー混合物の酸化ホウ素は、オルトホウ酸(H3BO3)およびメタホウ酸(HBO2)からなる群から選ばれるホウ素成分から生成させる。明らかに、酸化ホウ素(B2O3)もホウ素成分または出発物質として使用し得る。
【0006】
好ましい実施態様においては、本発明の金属ホウ化物プレカーサーは、金属ホウ化物を生成させるためのセル操作下に化学量論的に結合するのに必要とする理論質量パーセントの金属酸化物/酸化ホウ素を有する。従って、金属酸化物がTiO2である場合、下記の反応1により反応させてTiB2を生成させるのに必要なB2O3の量は、それぞれ、53質量%/47質量%のTiO2/B2O3である。これらの質量%は好ましいが、これらの質量比からの小さい変更は許容される。とりわけ、小過剰のホウ素化合物により、限られた範囲において常に生じ得る稀発を補正し得る。
【化1】

出発ホウ素成分が酸化ホウ素でない場合、出発成分の質量比は異なる。例えば、TiO2/H3BO3の場合、その比は、それぞれ、金属ホウ化物プレカーサー中で所定の53質量%/47質量%のTiO2/B2O3を生成させる40/60質量%/質量%である。
【0007】
好ましい実施態様においては、金属酸化物とホウ素成分を、200ミクロン未満の平均粒度を有する粒状物質として供与する。上記方法の第1工程においては、2つの出発物質を機械的に混合して粒状混合物を生成させる粒状物混合工程10が存在する。好ましい実施態様においては、金属酸化物は、ホウ素成分が中に入り得る高量の穴を含む。
上記方法の第2工程は加熱/焼成工程20であり、上記粒状混合物を600℃まで漸進的に加熱する。
本発明の金属ホウ化物プレカーサー混合物を製造する方法の1つの実施態様においては、温度を、下記の段階的方法で漸進的に上昇させる:
a) 25℃から120℃:120℃の温度を15分間維持する(この温度において、存在し得る表面水分を蒸発させる;
b) 120℃から400℃:400℃の温度を15分間維持する。この温度において、金属ホウ化物プレカーサーを生成させる反応が、ホウ素成分の分解および水蒸気の発生を伴って始まり得る;
c) 400℃から600℃:温度を6時間よりも長く、好ましい実施態様においては20時間よりも長く維持する。これらの長めの時間は、反応が完了し、生成したB2O3が液状にあり、且つ生じ得る分解反応において発生した水蒸気が金属ホウ化物プレカーサー混合物から拡散する時間を有するのを確実にするように機能する。熟練者であれば、上記プレカーサー混合物は、液化酸化ホウ素を得るための多くの方法で、酸化ホウ素が液体となる少なくとも約450℃まで加熱し得ることを理解するであろう。
【0008】
加熱/焼成工程20の後、プレカーサー混合物を、モールド内で、温度を25℃に低下させることによって固化する。この固化工程30において、加熱/焼成工程20において液化した溶融B2O3は、固化して金属酸化物粒子、例えば、TiO2結晶上で緊密に支持されるようになる。TiO2粒子が孔を含む場合、B2O3は、これらの孔に入り込み得る。従って、金属酸化物と酸化ホウ素は、物理的結合を生じ、好ましい実施態様においては、酸化ホウ素は、金属酸化物の粒子表面の孔内に見出される。
固化プレカーサー混合物をモールドから取出す、即ち、離型する。この後は、破砕工程40および粉砕工程50と続く。好ましい実施態様においては、破砕工程40は、ジャークラッシャーにおいて実施する。粉砕工程50は、好ましくは、ロッドミルまたは酸化ホウ素の融点を越えないような低発熱を有する任意の装置において実施する。粉砕工程50からの所望生成物粒度は、篩分けし得る;好ましい実施態様においては、金属ホウ化物プレカーサー混合物は、150ミクロン(−100メッシュ)未満の平均粒度を有する。
【0009】
以下、金属ホウ化物プレカーサー混合物を生成させる加熱/焼成工程20において生じる反応を、金属酸化物が酸化チタンである好ましい実施態様を参照することにより、さらに詳細に説明する。出発ホウ素化合物がオルトホウ酸(H3BO3)である場合、およそ40%TiO2対60%H3BO3(質量による)より正確には39.3質量%対60.7質量%の割合が、金属ホウ化物プレカーサーにおいて適切な質量%(即ち、それぞれ、53質量%/47質量%のTiO2/H3BO3)を生じる。しかしながら、上述したように、最終複合体中でのB2O3の稀発を補正するためには、35%〜40%のTiO2対60%〜65%のH3BO3の割合を使用し得る。混合後の加熱処理は、下記の近似反応式に従うH3BO3の分解をもたらす:
【化2】

従って、水蒸気は、2つの温度、およそ170℃および300℃で発生する。金属酸化物とホウ素成分を焼成するとき、室温から600℃までの全体的反応は、下記の式によって示される:
【化3】

【0010】
従って、40/60質量%/質量%割合のTiO2/H3BO3を出発物質として使用する場合、反応3(上記)の終了後、最終混合物中の得られるTiO2/B2O3割合は、それぞれ、53/47質量%/質量%である。TiO2/B2O3のこの最終質量パーセントは、出発TiO2/H3BO3混合物からの26.5%の理論的水分損失と同じである。TiO2/H3BO3のこの最終質量パーセントは、反応1(上記で定義した)における1モルのプレカーサーから1モルのTiB2を生成させるのに必要である1:1のモル比に相応する。
450℃よりも高い温度では、B2O3は液体であり(B2O3は、およそ450℃の融点を有する)、TiO2粒子を湿らせる。金属酸化物は高い融点を有し、TiO2の場合は1800℃よりも高く、固形結晶形のままであることに触れなければならない。
プロセス条件下において、溶融B2O3は、TiO2粒子をコーティーングし含浸する。B2O3は、そのようにして緊密に混合し、金属酸化物に物理的に結合され、半固体を生成する。TiO2粒子が孔を含む実施態様においては、これらの孔は、B2O3によるTiO2中へのより良好な含浸を可能にし、TiO2/B2O3接触を最大にする。TiO2/B2O3間のこの緊密な接触により、B2O3/炭素質(バインダーまたはピッチ)相互作用が抑制されるものと信じている。
【0011】
さらに、ホウ素成分の1部はNa2B4O7であり得ることも見出している。このものは、700℃を越える融点を有し、従って、単独源としてではなくホウ素成分の1部として使用し得、Na2B4O7は、液体酸化ホウ素と混じり合い、TiO2をコーティーングし含浸する。この化合物はB2O3よりも高温で揮発性が低いので、ホウ素の損減をより有効に制御し得る。好ましい実施態様ではないものの、ホウ素成分は、高い処理温度を使用する場合、Na2B4O7単独であり得る。同様に、ホウ砂(Na2B4O7の水和形)もNa2B4O7の代りに使用し得る。
焼成中のホウ素損減を最小限にするには、小割合の酸化ホウ素を炭化ホウ素(B4C)で置換え得る;炭化ホウ素は、通常の焼成温度においては揮発しない。少量において、炭化ホウ素は、酸化チタンおよびアルミニウムと反応してTiB2を生成させる。
【0012】
そのようにして製造した粉砕金属ホウ化物プレカーサー混合物は、今や、アルミニウム電気分解セル用に適切な炭素複合体材料として製造し得る。
上記プレカーサーを、グラファイトまたは焼成無煙炭であり得る炭素材料およびピッチバインダーと混合する。好ましくは、10〜40質量%のプレカーサー混合物を使用する。より好ましくは、20〜35質量%のプレカーサー混合物を使用する。ピッチ対炭素材料との割合は、当業者にとって周知の通常の手段によって製造を容易にするように調整する。
ある実施態様においては、二ホウ化チタン(titanium diboride)も同様に炭素複合体材料に添加し得る。このことは、特定の粒度または形態の組合せが、セル環境に暴露させた後に、複合体中で望まれ、この組合せが上記プレカーサー混合物単独の反応によっては達成し得ない場合に有利であり得る。例えば、10〜40質量%のプレカーサー混合物と40〜0質量%二ホウ化チタンを使用する組合せを使用し得る。
典型的な複合体材料においては、30質量%の上記金属ホウ化物プレカーサー混合物を51質量%のグラファイトに添加し、およそ19質量%のバインダーピッチと混合する。
上記金属ホウ化物プレカーサー混合物の50質量%は、−100+200メッシュの粒度を有し、一方、他の50質量%は、−200メッシュである。
製造した炭素複合体混合物は、通常の成形および焼成操作によってさらに加工して電気分解セルのカソードとして典型的に使用する炭素ブロックを形成させ得る。そのような成形部品は、一般に、使用前に、約1100〜1200℃の温度で焼成する。そのような温度は、存在する炭素が上記金属ホウ化物プレカーサー混合物を金属ホウ化物に還元せしめるには十分でない。また、上記炭素複合体混合物は、セル中で直接使用することもできる(炭素ブロックの周りおよび間のギャップを固定するための“ラミング混合物として、その場合、焼成はセル始動中に生じる)。
【0013】
実施例1 炭素ブロックの比較
下記の表1は、2つの異なる金属ホウ化物プレカーサー材料を使用して製造した複合体炭素ブロック間の比較を示している。ブロックAは、本発明のプレカーサー混合物を使用して製造し、一方、ブロックBは、EP 1 141 446 B1号の材料と同様な微細に混合したが別々のTiO2/B2O3材料(即ち、炭素質成分との混合前に熱処理および破砕していない)を使用した。

表1

*この試験において使用したTiO2粒子は、微細である(小クラスター内でゆるく凝集した1ミクロン球体)。
【0014】
ブロックAおよびブロックB双方の混合中、ピッチの硬化が両例において観察されたが、ブロックBにおいてはるかに高い度合であった。ブロックBにおいては、バインダーは混合工程の終了時にその流動性の殆どを喪失し、標準手法によってブロック形に成形するのが極めて難しい小さい極めて硬質の球形の材料が形成された。生(焼成前)状態のブロックAおよびブロックB双方の外観を、それぞれ、図2aおよび図2bにおいて示している。図2aのブロックAの上面付近には大きな欠陥の痕跡はないのに対し、ブロックB(図2b)においては観察される有孔性がありそうであることが理解できる。
何ら理論によって拘束することは望まないが、混合中のバインダーピッチの硬化は、おそらく昇温下でのピッチ- B2O3接触によるものと信じている。事実、B2O3は、有機反応を触媒するその能力について知られている酸化合物である(Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, vol. 4, 5th Edition, John Wiley and Sons, pg. 249)。このことは、混合工程中の流動性の喪失をどうにか説明し得る中炭素鎖長のより長鎖の易動性の低い炭素鎖への急速な重合の結果を有する。焼成後、両炭素複合体材料を試験した。微細混合した別々の酸化物材料から製造したブロックBは、重大なマクロ有孔性を含むことを観察した。
【0015】
下記の表2は、焼成後に測定したブロックAおよびBの幾つかの特性を示している(表2において、S.D.は、平均値の標準偏差である)。

表2:焼成後のブロックAおよびBの特性(3サンプル)

【0016】
ブロックAおよびBは共に同様な嵩密度と同一の公称組成を有し、このことは、両ブロックが焼成後極めて類似した有効性レベルも有することを意味している。ブロックBの室温圧縮強度は、ブロックAの室温圧縮強度よりも幾分優れていた。これは、室温強度を改善し得る全体に亘っての別個の“ガラス状” B2O3の存在に起因する異なる室温ミクロ構造によるものと信じている。しかしながら、このことは、高温であるほど低い機械的強度を生じることに注目されたい;何故ならば、B2O3は、その場合、液体状であるからである。
ブロックBは、ブロックAよりもはるかに高い電気抵抗を有することが分かる。電気抵抗は、原材料の性質と材料のミクロ構造にほぼ依存している性質である。両材料は、同じ公称組成を有し、同様な有孔性を示し、それで、その違いは、主として、ミクロ構造に基づいている。ブロックBにおいては、導電性バインダー相内での大画分のB2O3の存在が絶縁体として作用し、ひいては、導電性バインダー相が電気を通す能力を著しく低下させるものと信じている。電導性はカソードブロックの主要性質であるので、このことは、乾式混合酸化物を使用する最も重大な欠点の1つである。
【0017】
図3a、図3b)i)および図3b)ii)は、ブロックA(図3a)およびB(図3b(i)および(ii))の材料ミクロ構造の概要を示している。図3b(i)においては、B2O3が近位のTiO2粒子を含まないピッチ相内に分散して見出される。図3b(ii)においては、TiO2は炭素混合物中に分散しており、酸化ホウ素粒子はTiO2の近くには存在していないことが分かる。
一方、B2O3は、ブロックA中では、TiO2粒子の周りでほぼ常に見出される。ブロックAにおいては、図3aにおいて分かるように、マトリックス内で拡散している代りに、酸化物はクラスター内にほぼ位置したままであり、このことは、連続炭素ネットワークの形成を可能にするものと推測する。この炭素ネットワークは、最終的には、より高い電導性を有する本発明の複合体材料を提供する。
【0018】
炭素複合体材料における本発明の金属ホウ化物プレカーサー混合物の使用は、TiB2の現場生成において有効であることが証明された。図4は、アルミニウム還元セル内での数日間の電気分解後の転換プレカーサー混合物粒子の顕微鏡写真である。この顕微鏡写真は、転換反応の副生成物であるアルミナのマトリックス内のTiB2粒子を示している。炭素も、上記材料の成分であり、TiB2粒子の近くに見出される。実験室試験片および工業的サイズのセルカソードサンプルの双方からの観察は、TiB2が、材料表面において、金属アルミニウムとの反応により急速に形成され得ることを示している。しかしながら、TiB2は、還元セル内での200日後のブロック表面下の深部でも観察されている。これは、浴中に溶解しカソードを経て輸送されたアルミニウムとの反応により得る。
上記金属ホウ化物プレカーサー混合物、上記金属ホウ化物プレカーサー混合物から製造した炭素複合体材料、および上記金属ホウ化物プレカーサー混合物の製造方法は、各成分の単純な機械的混合物を使用するときに直面する問題を回避しながら、上記材料の製造コストを大いに低める可能性を明らかに提供する。
【0019】
上記した本発明の各実施態様は、単に例示を意図する。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好ましい実施態様に従って金属ホウ化物プレカーサー混合物を製造するプロセス図である。
【図2a】本発明の好ましい実施態様に従う金属ホウ化物プレカーサー混合物を使用して製造した生炭素複合体ブロック(ブロックA)の顕微鏡写真であり、小TiO2粒子とB2O3バインダー様相を示す。
【図2b】EP 1 141 446 B1号の材料と同様な微細に混合しているが個別のTiO2/B2O3材料を使用して製造した生炭素複合体ブロック(ブロックB)の顕微鏡写真である。
【図3a】本発明のTiO2/B2O3プレカーサー混合物を含むブロックAの炭素複合体材料微細構造の顕微鏡写真である。
【図3b)i)】バインダー相中に分散酸化ホウ素を含むが緊密なTiO2を含まないブロックBの低倍率での炭素複合体材料微細構造の顕微鏡写真である。
【図3b)ii)】材料中に分散TiO2を含むが緊密な酸化ホウ素を含まないブロックBの低倍率での炭素複合体材料微細構造の顕微鏡写真である。
【図4】アルミニウム還元セル内での数日間の電気分解後の転換プレカーサー混合物粒子の顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物と酸化ホウ素(B2O3)を含み、前記金属酸化物と前記酸化ホウ素がクラスター中で物理的に結合しており、前記酸化ホウ素が前記金属酸化物によって緊密に支持されていることを特徴とする金属ホウ化物プレカーサー混合物。
【請求項2】
前記金属酸化物が孔を有する粒子構造体を含み、前記酸化ホウ素が前記孔内に見出される、請求項1記載の混合物。
【請求項3】
前記金属酸化物がTiO2である、請求項1または2記載の混合物。
【請求項4】
TiO2/B2O3の質量パーセントが、55〜51質量%TiO2/45〜49質量%B2O3である、請求項3記載の混合物。
【請求項5】
TiO2/B2O3の質量パーセントが、53質量%TiO2/47質量%B2O3である、請求項3または4記載の混合物。
【請求項6】
150ミクロンよりも小さい平均粒度分布からなる、請求項1〜5のいずれか1項記載の混合物。
【請求項7】
アルミニウム電気分解セルにおいてカソードおよびセル壁材料の少なくとも1つとして使用する炭素複合体材料であって、炭素質成分、および金属酸化物と酸化ホウ素を含む金属ホウ化物プレカーサー混合物を含み、前記金属酸化物と前記酸化ホウ素がクラスター中で物理的に結合しており、前記酸化ホウ素が前記金属酸化物によって緊密に支持されていることを特徴とする炭素複合体材料。
【請求項8】
前記金属酸化物が孔を有する粒子表面を含み、前記酸化ホウ素が前記孔内に見出される、請求項7記載の複合体。
【請求項9】
前記炭素質成分が、グラファイトまたは焼成無煙炭とピッチとの混合物である、請求項7または8記載の複合体。
【請求項10】
10〜40質量%金属ホウ化物プレカーサー混合物の組成からなる、請求項9記載の複合体。
【請求項11】
二ホウ化チタンを含む、請求項10記載の複合体。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか1項において定義した炭素複合体材料によって製造した炭素ブロック部品。
【請求項13】
下記の工程を含むことを特徴とする、金属ホウ化物プレカーサー混合物の製造方法:
ホウ素成分を供与する粒子表面を有する金属酸化物を調製する工程;
前記金属酸化物と前記ホウ素成分を機械的に混合して粒状混合物を調製する工程;および、
前記粒状混合物を、前記ホウ素成分が液化酸化ホウ素となり前記粒子表面に含浸して金属酸化物と酸化ホウ素の物理的に結合したクラスターを生成し且つ酸化ホウ素が金属酸化物によって緊密に支持される温度に加熱する工程。
【請求項14】
前記ホウ素成分が、オルトホウ酸(H3BO3)、メタホウ酸(HBO2)および酸化ホウ素(B2O3)からなる群から選ばれる、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ホウ素成分が、オルトホウ酸(H3BO3)である、請求項13記載の方法。
【請求項16】
オルトホウ酸(H3BO3)が、加熱したとき、液化酸化ホウ素(B2O3)と水に分解する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記クラスターの酸化ホウ素を固化させる工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項18】
加熱が、前記粒状混合物の温度を450℃よりも高く漸進的に上昇させることによる、請求項13記載の方法。
【請求項19】
温度が600℃を越えない、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b)i)】
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【図3b)ii)】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−508228(P2010−508228A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534968(P2009−534968)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001951
【国際公開番号】WO2008/052336
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(591094930)アルカン・インターナショナル・リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】ALCAN INTERNATIONAL LIMITED
【Fターム(参考)】