説明

半導体ウェハのクラック検査方法及び半導体素子の製造方法

【課題】 この発明は、装置が大型化することなく、検査のばらつきが少ない太陽電池用シリコンウェハのクラックの検出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 この発明のシリコンウェハのクラックの検出方法は、シリコンウェハ1に超音波発生装置3から超音波31を付与し、シリコンウェハ1を共振させ、この共振により、シリコンウェハ1内に不可視クラックが存在する場合にはクラックを成長させて亀裂を生じさせ、欠陥があるシリコンウェハ1を判別可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウェハの検査方法に関し、特に、太陽電池に用いられる半導体ウェハのクラックを検出し、クラックが存在する半導体ウェハを選別するための検査方法及びこれを用いた半導体素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単結晶や多結晶の結晶系太陽電池の基板などとして用いられるシリコンウェハ(半導体ウェハ)は、コストダウンやシリコン材料の削減等により、その薄型化が進められている。
【0003】
そして、シリコンウェハを製造する工程やデバイス工程においてクラックが発生しやすくなっている。
【0004】
例えば、太陽電池を直・並列に接続し、太陽電池モジュール化した場合、このようなクラックがある太陽電池が1枚でもあると、その太陽電池モジュールの出力電力を大きく低下させてしまう。このため、クラックの有無検査を行い、クラックのあるものを精度良く検出し、取り除くことが重要である。
【0005】
このクラックは、目視できるクラックであれば、製造ラインに投入する前に予め取り除くことができる。しかし、クラックの種類には、内部割れなど不可視な内部クラックがある。この不可視な内部クラックは目視で確認することができず、内部クラックがあるシリコンウェハを製造ラインに投入すると、その製造工程の過程で、クラックが拡大し、やがてウェハ全体の割れとなるおそれがある。
【0006】
従来、シリコンウェハの検査では、不可視の内部クラックなどの欠陥は、検査員が打音破壊試験により選別しているのが実情である。
【0007】
しかしながら、検査員の習熟度や個人の能力等により、不良検出率に大きなばらつきが発生するという問題がある。
【0008】
また、シリコンウェハのクラック検出方法としては、シリコンは赤外線を透過する性質を利用した方法がある。単結晶シリコンウェハに赤外線を照射すれば、単結晶シリコンウェハの内部クラックにて赤外線が散乱もしくは吸収されるので、クラックを透過した赤外線透過光は、クラック以外の単結晶シリコンウェハを透過した赤外線透過光よりも赤外線の強度が弱い。これにより、単結晶シリコンウェハを透過した赤外線画像において、クラックは暗部として認識される。このようにして、単結晶シリコンウェハの内部クラックを検出することができる。このような半導体ウェハの検査装置としては、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−351669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した赤外線照射を行うものにあっては、検査装置が大型化するという難点がある。また、打音破壊試験は、簡易な方法であるが、検査員の習熟度や個人の能力等により、不良検出率にばらつきが発生するという問題がある。
【0011】
この発明は、装置が大型化することなく、検査のばらつきを少なくできる半導体ウェハのクラックの検出方法及びこれを用いた半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の一態様は、半導体ウェハにエネルギーを付与し、このエネルギーにより、半導体ウェハ内に存在する不可視クラックを成長させて亀裂を生じさせ、欠陥がある半導体ウェハを判別可能とするものである。
【0013】
また、この発明の一態様は、半導体ウェハにエネルギーを付与し、このエネルギーにより半導体ウェハ内に存在する不可視クラックを成長させて亀裂を生じさせ、亀裂が生じた半導体ウェハを排除した後に、残った半導体ウェハに活性領域を形成するものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、半導体ウェハにエネルギーを与えることにより、不可視のクラックがある欠陥のウェハに対して、亀裂を大きくして割れにより破壊し、破壊されたウェハは除去し、不可視クラックの入っていない良品を選別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施形態にかかるクラック検出方法の概略構成図である。
【図2】シリコンウェハ(半導体ウェハ)に超音波を付与する状態を示す模式図である。
【図3】シリコンウェハ(半導体ウェハ)に不可視クラックがある状態を示す平面図である。
【図4】不可視クラックが成長し割れた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0017】
図1ないし図4を参照して、太陽電池用のシリコンウェハ(半導体ウェハ)のクラック検出方法の構成を説明する。
【0018】
太陽電池用のシリコンウェハ1としては、単結晶シリコンや多結晶シリコンからなるものが用いられる。シリコンウェハ1の形状や大きさは特に限定されないが、形状としては例えば正方形、矩形または円形または半円形もしくは一部にオリエンタルフラット部を持った略円形の形状を有する。また、その大きさは正方形なら例えば100mm〜200mm角程度、円形なら直径100mm〜200mm程度の大きさである。そして、その厚みは、例えば100μm〜300μm程度である。この実施形態においては、略正方形の結晶シリコンウェハ1の内部クラックを検出する例につき説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、この結晶シリコンウェハ1は、ウェハ搬送部2により搬送され、超音波発生装置3の上を通過する。ウェハ搬送部2は、ローラー20が複数個一列に配設されており、各ローラー20の端部はベルト22で互いに連結されている。搬送駆動部21と連結されたローラー20が回転することでベルト21が回転し、これにより他のローラー20も回転し、結晶シリコンウェハ1が搬送される。ローラー20の回転の運転または停止、回転速度は搬送駆動部21で制御される。
【0020】
結晶シリコンウェハ1は、ウェハ供給部(図示せず)よりウェハ搬送部2の上に載置され、図1の矢印方向に結晶シリコンウェハ1が搬送される。
【0021】
図1及び図2に示すように、搬送される結晶シリコンウェハ1に対して、超音波発生装置3より、超音波31が与えられる。超音波発生装置3から発生される超音波31は、結晶シリコンウェハ1が共振する振動数とする。超音波発生装置3を通過する結晶シリコンウェハ1は、超音波31が面に当たり共振する。結晶シリコンウェハ1は、共振することにより、内部クラック10が成長し、亀裂が大きくなり、やがて結晶シリコンウェハ1には、図4に示すように、割れ10aが発生し、不良がある欠陥の結晶シリコンウェハ1として選別することができる。
【0022】
内部クラック10が存在しない良品の結晶シリコンウェハ1には、割れが発生しないので、そのまま後の製造工程に送ることができる。
【0023】
上記した超音波発生装置3は、例えば、厚みが、200μmの単結晶シリコンウェハ1であれば、出力1200W、振動周波数48kHzまたは25kHzに設定することで、共振により、内部クラック10を成長させ、シリコンウェハ1に亀裂を大きくして割れ10aが生じさせて検査することができた。
【0024】
また、同様に出力が500W、振動周波数25kHzに設定することで、共振により、内部クラック10を成長させ、シリコンウェハ1に亀裂を大きくして割れ10aが生じさせて検査することができた。
【0025】
この出力並びに振動周波数は、検査するシリコンウェハの厚み、単結晶シリコンか多結晶シリコンかにより、適宜選択をすればよい。
【0026】
このように、シリコンウェハ1に超音波発生装置3による超音波31を与えることにより、不可視のクラックがある欠陥のシリコンウェハ1に対して、超音波の振動による亀裂を大きくして割れ10aにより破壊する。破壊されたシリコンウェハ1は除去し、不可視クラックの入っていない良品のみ選別できる。欠陥があるシリコンウェハ1を排除することができるので、セル工程のカセット内で割れが発生することが防げる。シリコンウェハが割れると、割れ屑の除去や割れ屑が他の太陽電池に付着してエッチングなどの不良などが発生するが、このような不良も未然に防げる。また、シリコンウェハ1に対して超音波31を与えるだけで良品のシリコンウェハを選別することができるので、選別装置の大型化を抑制することができる。
【0027】
また、上記のように欠陥があるシリコンウェハを排除した後、良品のシリコンウェハに活性領域を形成することで、太陽電池等の半導体素子を歩留り良く製造することができる。
【0028】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
例えば、上述の実施の形態において、超音波31を与えることにより、シリコンウェハ1中に存在する不可視のクラックを大きくして破壊するようにしたが、シリコンウェハ1に与えるエネルギーは超音波によるものに限るものではない。
【0030】
また、この発明は上述のシリコンウェハに限らず、他の半導体ウェハに対しても用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 シリコンウェハ
2 ウェハ搬送部
20 ローラー
3 超音波発生装置
31 超音波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハにエネルギーを付与し、このエネルギーにより、半導体ウェハ内に存在する不可視クラックを成長させて亀裂を生じさせ、欠陥がある半導体ウェハを判別可能とする、半導体ウェハのクラック検出方法。
【請求項2】
上記エネルギーは超音波エネルギーであり、前記半導体ウェハに超音波エネルギーを付与することにより、半導体ウェハを共振させ、この共振により、前記不可視クラックを成長させて亀裂を生じさせる、半導体ウェハのクラック検出方法。
【請求項3】
前記半導体ウェハを超音波発生装置の上を搬送し、半導体ウェハに超音波エネルギーを付与する、請求項2に記載の半導体ウェハのクラック検出方法。
【請求項4】
半導体ウェハにエネルギーを付与し、このエネルギーにより半導体ウェハ内に存在する不可視クラックを成長させて亀裂を生じさせ、亀裂が生じた半導体ウェハを排除した後に、残った半導体ウェハに活性領域を形成する、半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記エネルギーは超音波エネルギーである、請求項4に記載の半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−99543(P2012−99543A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243781(P2010−243781)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】