説明

半導体ウェハ保護用粘着フィルム及び半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール

【課題】半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能を維持したままブロッキングの発生が抑制された半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールを提供する。
【解決手段】一方の面S1の表面粗さRaが0.10μm〜0.30μmであり、当該面S1の表面粗さRyが1.00μm〜3.00μmであり、当該面S1に島状の凹部を複数有する基材フィルム12の他方の面S2の側に、粘着剤層14と、少なくとも当該粘着剤層14と対向しない側の面の表面粗さRyが0.50μm未満であるセパレーターフィルム16と、をこの順に有する半導体ウェハ保護用粘着フィルム10が、芯材に巻き取られてなる半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ保護用粘着フィルム及び半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、半導体ウェハの厚みを薄くするために、集積回路が形成された半導体ウェハの表面(当該集積回路が形成された側の表面)に半導体ウェハ保護用粘着フィルムを貼付する工程と、半導体ウェハの半導体ウェハ保護用粘着フィルムが貼付された面に対して反対側の面(裏面)を研磨やエッチング等により加工する工程と、前記加工後の半導体ウェハから半導体ウェハ保護用粘着フィルムを剥離する工程と、前記剥離後の半導体ウェハをダイシング加工する工程と、を含んだ方法が用いられている。
【0003】
ここで、半導体ウェハ保護用粘着フィルムは、通常、基材フィルムと粘着剤層とセパレーターフィルムとがこの順に積層された構造となっている。そして、使用直前に(上記の貼付の直前に)、セパレーターフィルムが剥離除去され、露出された粘着剤層側で半導体ウェハに貼付される。
半導体ウェハ保護用粘着フィルムには、半導体ウェハの加工時(例えば研磨時やエッチング時)における集積回路への液体(研磨液やエッチング液)の侵入を抑制するために、半導体ウェハの集積回路形成面の凹凸に対する密着性(追従性)が要求されている。
【0004】
近年、半導体ウェハ保護用粘着フィルムについて種々の検討がなされている。
例えば、融点が200℃以上の樹脂から形成されている層を有する半導体ウェハ保護用粘着フィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、半導体ウェハ保護用粘着フィルムではないが、太陽電池作製時の封止工程における、太陽電池用セルの破損、脱気不良、樹脂の流出等の抑制を課題とし、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂を成形して得られるフィルム表面に特定の形状の凹部を形成してなる太陽電池用封止膜が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3594581号公報
【特許文献2】特開2002−185027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、半導体ウェハ保護用粘着フィルムは、運搬効率等の観点より、芯材に巻き取られたフィルムロール(半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール)の形態で取り扱われている。
しかしながら、本発明者等の検討により、半導体ウェハ保護用粘着フィルムをフィルムロールの形態としたときに、半導体ウェハ保護用粘着フィルムと半導体ウェハ保護用粘着フィルムとの間にブロッキングが生じる場合があることが判明した。
本明細書中では、半導体ウェハ保護用粘着フィルムと半導体ウェハ保護用粘着フィルムとの間に生じた密着部分を「ブロッキング」という。ブロッキングを起こすと半導体ウェハ保護用粘着フィルムをウェハ貼り機で繰出す際、繰出し性が悪化し張力変動を起こしたり、剥離帯電が発生しやすくなる。
この点に関し、もし仮に特許文献2に記載のフィルムを半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールに転用したとしても、特許文献2に記載のフィルムでは凹凸が大きすぎるため、半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能を備えつつ、ブロッキングの発生を抑制することは困難である。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能(例えば、半導体ウェハの集積回路形成面の凹凸に対する密着性)を維持したまま、フィルムロールとしたときに、ブロッキングの発生を抑制できる半導体ウェハ保護用粘着フィルムを提供することを目的とする。
また、本発明は、半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能(例えば、半導体ウェハの集積回路形成面の凹凸に対する密着性)を維持したまま、ブロッキングの発生が抑制された半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
<1> 一方の面の表面粗さRaが0.10μm〜0.30μmであり、当該面の表面粗さRyが1.00μm〜3.00μmであり、当該面に島状の凹部を複数有する基材フィルムの他方の面の側に、粘着剤層と、少なくとも当該粘着剤層と対向しない側の面の表面粗さRyが0.50μm未満であるセパレーターフィルムと、をこの順に有する半導体ウェハ保護用粘着フィルムが、芯材に巻き取られてなる半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール。
【0009】
<2> 前記基材フィルムが、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体(アルキル基の炭素数1〜4)、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数3〜8)から選択される少なくとも1種を含む<1>に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール。
<3> 前記粘着剤層が、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーンゴム系粘着剤、及びアクリル系粘着剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む<1>又は<2>に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール。
<4> 前記セパレーターフィルムが、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムからなる群から選ばれる少なくとも1種のフィルムからなる<1>〜<3>のいずれか1項に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール。
<5> 前記基材フィルムの複数の凹部の底を含む平面は、当該基材フィルムの前記粘着剤層と対向する側の面と平行である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール。
【0010】
<6> 一方の面の表面粗さRaが0.10μm〜0.30μmであり、当該面の表面粗さRyが1.00μm〜3.00μmであり、当該面に島状の凹部を複数有する基材フィルムの他方の面の側に、粘着剤層と、少なくとも当該粘着剤層と対向しない側の面の表面粗さRyが0.50μm未満であるセパレーターフィルムと、をこの順に有する半導体ウェハ保護用粘着フィルム。
【0011】
<7> 前記基材フィルムが、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体(アルキル基の炭素数1〜4)、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数3〜8)から選択される少なくとも1種を含む<6>に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルム。
<8> 前記粘着剤層が、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーンゴム系粘着剤、及びアクリル系粘着剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む<6>又は<7>に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルム。
<9> 前記セパレーターフィルムが、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムからなる群から選ばれる少なくとも1種のフィルムからなる<6>〜<8>のいずれか1項に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルム。
<10> 前記基材フィルムの複数の凹部の底を含む平面は、当該基材フィルムの前記粘着剤層と対向する側の面と平行である<6>〜<9>のいずれか1項に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能(例えば、半導体ウェハの集積回路形成面の凹凸に対する密着性)を維持したまま、フィルムロールとしたときに、ブロッキングの発生を抑制できる半導体ウェハ保護用粘着フィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能(例えば、半導体ウェハの集積回路形成面の凹凸に対する密着性)を維持したまま、ブロッキングの発生が抑制された半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールの一例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の一例に係る半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールを、軸方向に垂直な平面で切断した切断面の一部を示す概略断面図である。
【図4】本発明における基材フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図5】実施例1における基材フィルムのレーザ顕微鏡写真(倍率400倍)である。
【図6】比較例1における基材フィルムのレーザ顕微鏡写真(倍率400倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルムは、一方の面の表面粗さRaが0.10μm〜0.30μmであり、当該面の表面粗さRyが1.00μm〜3.00μmであり、当該面に島状の凹部を複数有する基材フィルムの他方の面の側に、粘着剤層と、少なくとも当該粘着剤層と対向しない側の面の表面粗さRyが0.50μm未満であるセパレーターフィルムと、をこの順に有して構成される。
また、本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールは、上記本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルムが芯材に巻き取られてなるものである。
【0015】
以下、本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルム及び本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールの例について、図面を参照して説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0016】
図1は、本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルムの一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、半導体ウェハ保護用粘着フィルム10は、基材フィルム12と、粘着剤層14と、セパレーターフィルム16と、がこの順に積層された積層体である。
【0017】
図2は、本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールの一例を示す概略斜視図である。
図2に示す半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール20は、芯材22に、半導体ウェハ保護用粘着フィルム10が巻き取られた構成となっている。
ここで、半導体ウェハ保護用粘着フィルム10は、基材フィルム12側が内側となるように巻き取られていてもよいし、セパレーターフィルム16側が内側となるように巻き取られていてもよい。
【0018】
図3は、半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール20を、軸方向に垂直な平面で切断した切断面の一部を示す概略断面図である。
図3に示すように、半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール20は、半導体ウェハ保護用粘着フィルム10同士が積層された構造となっている。そして、半導体ウェハ保護用粘着フィルム10の基材フィルム12の面S1が、隣接する半導体ウェハ保護用粘着フィルム10のセパレーターフィルム16の一方の面と対向(例えば接触)している。
【0019】
図1に示す半導体ウェハ保護用粘着フィルム10において、基材フィルム12は、粘着剤層14と対向する側の面S2と、粘着剤層14と対向しない側の面S1と、を有している。
前記面S1は、図示しない島状の凹部を複数有している。
前記面S1の表面粗さRaは0.10μm〜0.30μmであり、面S1の表面粗さRyは1.00μm〜3.00μmである。
セパレーターフィルム16は、少なくとも粘着剤層14と対向しない側の面の表面粗さRyが0.50μm未満となっている。
半導体ウェハ保護用粘着フィルム10を以上の構成としたことにより、フィルムロールとしたときに、ある半導体ウェハ保護用粘着フィルム10の基材フィルム12と、隣接する半導体ウェハ保護用粘着フィルム10のセパレーターフィルム16と、の間に適度な空間が生じる。この適度な空間によりブロッキングの発生が抑制される。
更に、この適度な空間により、半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能が適切に維持される。
【0020】
本発明において、表面粗さRa及びRyは、JIS B0601(1994)で規定される表面粗さRa及びRyを指し、レーザ顕微鏡((株)キーエンス製、VK-9500/9510-Generation II)を用い、対物レンズ50倍、ピッチ0.01μmの測定条件で測定された値を指す。
また、島状の凹部とは、基材フィルムの法線方向からレーザ顕微鏡(倍率400倍)で観察したときに一定以上の面積を有する凹部であれば特に限定はない。
島状の形状についても特に限定はなく、円形、楕円形、多角形、不定形のいずれであってもよい。
島状の凹部の面積としては、直径10μmの円の面積以上であることが好ましい。
凹部の深さは、例えば0.10μm〜3.00μm(より好ましくは0.50μm〜1.00μm)である。
【0021】
前記表面粗さRyが3.00μmを超えると、フィルムロールとしたときにブロッキングが顕著となる。
また、前記表面粗さRyが3.00μmを超えると、フィルムロールとしたときに、半導体ウェハ保護用粘着フィルムのセパレータ層及び粘着剤層が、その半導体ウェハ保護用粘着フィルムの基材フィルム表面の凹凸や、隣接する半導体ウェハ保護用粘着フィルムの基材フィルム表面の凹凸の影響を受けて歪んでしまう。その結果、半導体ウェハ保護用粘着フィルムの粘着剤層と、半導体ウェハの集積回路形成面側の凹凸と、の密着性が悪くなり、半導体ウェハの加工時(例えば研磨時やエッチング時)において集積回路へ液体(研磨液やエッチング液)が侵入し易くなる。
このように、前記表面粗さRyが3.00μmを超えると、半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能が損なわれる。
【0022】
一方、前記表面粗さRyが1.00μm未満であると、巻き取り時に半導体ウェハ保護用粘着フィルム同士が密着しすぎてしまう結果、ブロッキングが顕著となる。更に、半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能が損なわれる。
【0023】
また、前記表面粗さRaが0.30μmを超えると、ブロッキングが顕著となる。更に、前記表面粗さRaが0.30μmを超えると、前記表面粗さRyが3.00μmを超える場合と同様の理由により、半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能が損なわれる。
前記表面粗さRaが0.10μm未満であると、巻き取り時に半導体ウェハ保護用粘着フィルム同士が密着しすぎてしまう結果、ブロッキングが発生する。
【0024】
また、前記面S1が島状の複数の凹部を有しない場合、巻き取り時に半導体ウェハ保護用粘着フィルム同士が密着しすぎてしまう結果、ブロッキングが顕著となる。
【0025】
基材フィルム12の粘着剤層14と対向する側の面S2の表面粗さには特に限定はないが、粘着剤層14の平坦性を高くし半導体ウェハとの密着性を向上させる観点からは、平坦性が高いことが好ましい。具体的には、面S2の表面粗さRyは0.50μm未満であることが好ましい。
【0026】
半導体ウェハ保護用粘着フィルム10は、上記以外のその他の部材(例えば、中間層、保護層、等)を有していてもよい。
例えば、基材フィルム12の粘着剤層14と対向しない側の面S1に、基材フィルム12を保護するための保護フィルム等が設けられていてもよい。但し、この保護フィルムは、芯材に巻き取る前に除去されることが好ましい。
【0027】
図4は、基材フィルム12の概略断面図である。
図4に示すように、前記基材フィルム12の複数の凹部Oの底を含む平面S3は、当該基材フィルム12の面S2と平行(実質的に平行であればよい)であることが好ましい。前記平面S3と前記面S2とが平行であることにより、薄い空気層がより好適に形成され、ブロッキングがより効果的に抑制される。
【0028】
以下、本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルム及び半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールを構成する各要素について説明する。
【0029】
<基材フィルム>
本発明における基材フィルムは樹脂を少なくとも1種含むことが好ましい。
前記樹脂としては特に限定はないが、ウェハの凹凸を吸収する柔軟性の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体(アルキル基の炭素数1〜4)、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数3〜8)が挙げられる。
これらの内、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、酢酸ビニル単位の含有量が5〜50質量%程度のエチレン−酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
【0030】
本発明における基材フィルムは、単一の樹脂からなる層であってもよいし、2種以上の樹脂を含む層であってもよい。
また、本発明における基材フィルムは、単層構成であっても2層以上の構成であってもよい。
【0031】
前記基材フィルムの製造方法としては、カレンダー法、Tダイ押出法、インフレーション法、キャスト法等、公知の技術の中から、生産性、得られるフィルムの厚み精度等を考慮して適宜選択することができる。
【0032】
上記で例示した樹脂をフィルム状に成形加工する際には、必要に応じて、安定剤、滑剤、酸化防止剤、顔料、ブロッキング防止剤、可塑剤、粘着付与剤、柔軟材等を添加してもよい。基材フィルムを成型加工する際に安定剤等の各種添加剤を添加した場合、添加剤が粘着剤層に移行して、粘着剤の特性を変化させたり、ウェハ表面を汚染することがある。このような場合には、基材フィルムと粘着剤層の間にバリヤー層を設けることが好ましい。また、基材フィルムと粘着剤層との接着力を高めるために、基材フィルムの片表面にコロナ放電処理または化学処理等を施すことが好ましい。
【0033】
基材フィルムが複数層の樹脂層からなる場合には、多層製膜機により押出法で製膜したり、予め製膜しておいた樹脂フィルムに対して、押出法で製膜した別の樹脂フィルムをドライラミネートする方法が挙げられる。この場合には、予め製膜しておいた樹脂フィルムと、別の樹脂フィルムとの接着力を高めるために両者の間に新たに接着層を設けたり、樹脂フィルムの表面にコロナ放電処理等の易接着処理を施すことが好ましい。また、基材フィルムと粘着剤層の接着力を高めるために、基材フィルムの粘着剤層を設ける面にはコロナ放電処理または化学処理等を施すことが好ましい。
【0034】
本発明における基材フィルムの厚み(基材フィルム全体の厚み)は、ウェハの凹凸の吸収をより好適に行う観点より、50μm〜350μmであることが好ましく、100μm〜300μmがより好ましい。
【0035】
また、本発明における基材フィルムは、引張弾性率が10MPa〜1500MPaであることが好ましい。この範囲であれば、ウェハの凹凸の吸収がより良好となり、半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能がより好適に維持される。
本発明において引張弾性率は、動的粘弾性測定器(ティー・エイ・インスツルメンツ社製 RSA III)により、温度23℃の測定条件で測定された値を指す。
【0036】
基材フィルムの粘着剤層と対向しない側(粘着剤層が設けられていない側)の面に、上記の性状(島状の凹部を複数有する性状、当該面の表面粗さRa及びRyが前記の範囲である性状)の凹凸を設ける方法には特に限定はなく、基材フィルムの成形後の加工により設けてもよいし、基材フィルムの成形と同時に設けてもよい。
【0037】
<粘着剤層>
本発明における粘着剤層は粘着剤を少なくとも1種含有する。
前記粘着剤としては特に制限はなく、例えば、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーンゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤(アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル等)、等が挙げられる。
これらの粘着剤の中でも、粘着剤物性の制御、再現性等を考慮するとアクリル系粘着剤が好ましい。
また、例えば、放射線硬化型、熱硬化型、加熱発泡型等の粘着力スイッチング機能を有する粘着剤、スイッチング機能を有しない通常の粘着剤のどちらも本発明に用いることができる。
【0038】
以下、本発明の粘着剤の例として、アクリル系粘着剤のうち、粘着力スイッチング機能を有する紫外線硬化型のアクリル系粘着剤について例示する。
前記アクリル系粘着剤としては、分子中に光重合性炭素−炭素二重結合が導入されたアクリル酸エステル系共重合体100質量部と、分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物0.1〜20質量部と、光開始剤5〜15質量部と、を含み、必要に応じて架橋剤により上記アクリル酸エステル系共重合体を架橋させて得られる粘着剤を用いることができる。
【0039】
分子中に光重合性炭素−炭素二重結合が導入されたアクリル酸エステル系共重合体は、具体的には、エチレン性二重結合を有するモノマーと、官能基を有する共重合性モノマーと、を混合し、共重合させ、得られた共重合体を、この共重合体に含まれるカルボキシル基、ヒドロキシル基、グリシジル基などの官能基と反応しうる基を有する光重合性炭素−炭素二重結合を含むモノマーと、反応させたものである。
【0040】
上記エチレン性二重結合を有するモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルモノマー、酢酸ビニルの如きビニルエステル、アクリロニトリル、アクリアミド、スチレン等のエチレン性二重結合を有するモノマーの中から、1種又は2種以上が用いられる。
【0041】
上記官能基を有する共重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、Nーメチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは1種でもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0042】
上記エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基を有する共重合性モノマーとの割合は、前者70〜99質量%に対し、後者30〜1質量%が好ましい。さらに好ましくは、前者80〜95質量%に対し、後者20〜5質量%である。
【0043】
エチレン性二重結合を有するモノマーと官能基を有する共重合性モノマーとの共重合体中に光重合性炭素−炭素二重結合を導入する方法としては、上記共重合体中に存在するカルボキシル基、ヒドロキシル基、グリシジル基などの官能基と反応し得る基を有する光重合性炭素−炭素二重結合を含む光反応性モノマーを反応させればよい。例えば、これらの官能基の組み合わせとして、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジル基、水酸基とイソシアネート基等、容易に付加反応が起こる組み合わせが望ましい。又、付加反応に限らずカルボン酸基と水酸基との縮合反応等、光重合性炭素−炭素二重結合が容易に導入できる反応であれば如何なる反応を用いてもよい。
【0044】
分子中に光重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としては、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。これらの分子量は、10,000以下のものが好ましい。さらに好ましくは5,000以下である。
【0045】
光開始剤としては、ベンゾイン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いてもよい。光開始剤の添加量は、上記共重合体100質量部に対して、5〜15質量部である。好ましくは5〜10質量部である。
【0046】
上記紫外線硬化型粘着剤には架橋剤を添加してもよい。架橋剤として、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリーグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。
【0047】
上記紫外線硬化型粘着剤は、トルエン、酢酸エチル等の有機溶剤の存在下における溶液重合、又は、水系エマルジョン重合の何れによっても製造することができる。又、濃度又は粘度調整の為に溶剤又は水を添加したり、あるいは、熱重合禁止剤等の添加剤を添加することもできる。
【0048】
本発明に用いる粘着剤塗布液には、粘着特性を調整するためにロジン系、テルペン樹脂系等のタッキファイヤー、各種界面活性剤等を本発明の目的に影響しない程度に適宜含有してもよい。また、塗布液がエマルション液である場合は、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の造膜助剤を本発明の目的に影響しない程度に適宜添加してよい。また、酢酸エチルやトルエン等の有機溶剤によって、所望の粘度、固形分に調製してよい。
【0049】
粘着剤層の厚みは通常3μm〜100μmであるが、凹部や段差(例えば、集積回路における凹部や段差)を表面に有する半導体ウェハに対してよく密着して研磨液の浸入を抑制するという観点からは、10μm〜100μmであることがより好ましい。
【0050】
また、本発明における粘着剤層は、引張弾性率が3MPa〜50MPaであることが好ましい。
引張弾性率がこの範囲であれば、ウェハの凹凸の吸収をより良好に行うことができ、半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能がより好適に維持される。
また、前記粘着剤層は、ガラス板の表面に貼着し60分間放置後に前記ガラス板の表面から剥離したときの粘着力(JIS Z0237)が3N/25mm〜50N/25mmであることが好ましい。
粘着力が上記範囲であれば、半導体ウェハとの密着性及び半導体ウェハからの剥離性がより良好となり、半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能がより好適に維持される。
【0051】
本発明において、基材フィルムの片面に粘着剤層を設ける際には、上記粘着剤を溶液又はエマルション液(以下、これらを総称して粘着剤塗布液と称する)として、ロールコーター、コンマコーター、ダイコーター、メイヤーバーコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター等の公知の方法に従って塗布、乾燥して粘着剤層を形成する方法を用いることができる。この際、塗布した粘着剤層を環境に起因する汚染等から保護する為に、塗布した粘着剤層の表面にセパレーターフィルムを貼着することが好ましい。
【0052】
あるいは、セパレーターフィルムの片面に、上記した公知の方法に従って粘着剤塗布液を塗布、乾燥して粘着剤層を形成した後、ドライラミネート法等の慣用の方法を用いて粘着剤層を転写させる方法(以下、転写法という)をとってもよい。
【0053】
粘着剤を乾燥する際の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜300℃の温度範囲において、10秒〜10分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは、80〜200℃の温度範囲において15秒〜5分間乾燥する。本発明においては、架橋剤と粘着剤ポリマーとの架橋反応を十分に促進させる為に、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後に、半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを40〜80℃において5〜300時間程度加熱してもよい。
【0054】
<セパレーターフィルム>
本発明におけるセパレーターフィルムは、前記粘着剤層を保護するためのものであり、使用直前(半導体ウェハ保護用粘着フィルムを半導体ウェハに貼付する直前)に、半導体ウェハ保護用粘着フィルムから剥離除去されるものである。
本発明におけるセパレーターフィルムは、少なくとも前記粘着剤層に対向しない側の面の表面粗さRyが0.50μm未満である。
表面粗さRyが前記範囲であることにより、ブロッキングの発生が抑制される。
本発明におけるセパレーターフィルムは、両面の表面粗さRyが0.50μm未満であってもよい。
【0055】
前記セパレーターフィルムの材質には特に限定はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、等)、等を用いることができる。
前記セパレーターフィルムは、上記材質を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
また、前記セパレーターフィルムは、単層構成であっても、2層以上の構成であってもよい。
【0056】
特に、セパレーターフィルムとしては、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムからなる群から選ばれる少なくとも1種のフィルムからなることが好ましい。
【0057】
セパレーターフィルム全体の厚みは、ウェハの凹凸の吸収をより良好に行う観点より、10μm〜90μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。
【0058】
<芯材>
本発明の半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムロールにおける芯材(例えば、前記芯材22)としては特に限定はなく、半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムロールの分野において公知の芯材を用いることができる。
芯材の材質として、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリプロピレン(PP)、等が挙げられる。
また、芯材の形状は通常円筒形であり、例えば、直径75mm〜150mm、軸方向についての長さ150mm〜1000mm、厚み5mm〜10mmの円筒形の芯材を用いることができる。
【0059】
<半導体ウェハ保護用粘着フィルム及び半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールの製造方法>
本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルムを製造する方法としては公知の方法を用いることができ、例えば、セパレーターフィルム上に粘着剤塗布液を塗布して粘着剤層を形成し、形成された粘着剤層上に、溶融押出しにより作製された基材フィルムを積層する方法を用いることができる。
また、溶融押出しにより基材フィルムを作製し、作製された基材フィルム上に、粘着剤塗布液を塗布して粘着剤層を形成し、形成された粘着剤層上にセパレーターフィルムを積層してもよい。
【0060】
基材フィルムは、例えば、原料となる樹脂を溶融押出しし、押し出された樹脂を、冷却ロール(キャスティングロール)の外周面上に密着させて冷却することにより固化させ、固化した樹脂を冷却ロールから剥離して、長尺状の基材フィルムを得る方法を用いることができる。
このとき、冷却ロールとして、外周面上に凹凸を有する冷却ロールを用いることで、冷却ロールの外周面上の凹凸形状を作製される基材フィルムの片面に転写することができる。従って、冷却ロールの外周面上の凹凸形状を適宜調整することで、一方の面の表面粗さRaが0.10μm〜0.30μmであり、当該面の表面粗さRyが1.00μm〜3.00μmであり、当該面に島状の凹部を複数有する基材フィルムを得ることができる。
【0061】
粘着剤層は、例えば、セパレーターフィルム上(または基材フィルム上に)粘着剤塗布液を塗布して形成される。粘着剤層の形成方法の詳細については既述のとおりである。
このとき、使用時におけるセパレーターフィルムと粘着剤層との剥離性の観点から、セパレーターフィルムの粘着剤層と対向する側には、予めシリコーン離型処理等の離型処理を施しておくことが好ましい。
【0062】
セパレーターフィルムと粘着剤層との積層体と、基材フィルムと、の積層(または、基材フィルムと粘着剤層との積層体と、セパレーターフィルムと、の積層)はドライラミネート等の公知の方法を用いて行うことができる。
ドライラミネートの好ましい条件としては、例えば、ラミネート温度10〜80℃(より好ましくは20〜40℃)、ラミネート圧力200〜2000N/m(より好ましくは500〜1500N/m、ラミネート速度3〜50m/分(より好ましくは10〜30m/分)の条件が挙げられる。
【0063】
本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールを製造する方法としては、本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールを、巻き取り器を用いて巻き取る公知の方法をそのまま適用することができる。
巻き取りの好ましい条件としては、例えば、巻き取り張力10〜350N/m(より好ましくは30〜300N/m)、巻き取り速度3〜50m/分(より好ましくは10〜30m/分)の条件が挙げられる。
【0064】
本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルム及び本発明の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールを製造する際には、半導体ウェハ表面の汚染防止の観点から、基材フィルム、セパレーターフィルム、粘着剤主剤等、全ての原料資材の製造環境、粘着剤塗布液の調製、保存、塗布及び乾燥環境は、米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持されていることが好ましい。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、下記の実施例は、米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持された環境下で行った。
【0066】
〔実施例1〕
<基材フィルムの作製>
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(三井・デュポンポリケミカル(株)製、商品名:エバフレックス(登録商標)、品番:EV460)を、単軸単層押出機を用いてTダイ法溶融押出しし、押し出された樹脂を、外周面に凹凸を有するキャスティングロール(冷却ロール)の該外周面に密着させて冷却固化し、固化した樹脂をキャスティングロールから剥離した。
以上により、厚み160μm、幅300mm、長さ200mの長尺状の基材フィルム(単層フィルム)を作製した。
【0067】
上記キャスティングロールは、鉄製のロール(直径200mm、軸方向の長さ500mm)の外周面にセラミックを溶射し、溶射後、円筒研磨を行うことにより作製されたものである。
【0068】
上記で作製された基材フィルムをレーザ顕微鏡((株)キーエンス製、VK-9500/9510-Generation II)を用い、対物レンズ50倍、ピッチ0.01μmの測定条件により観察したところ、上記基材フィルムの片面には、キャスティングロール外周面の凹凸が転写され、凹凸が形成されていた。以下、基材フィルムの凹凸が形成された側の面を、「基材フィルムの凹凸面」ともいう。
上記で作製された基材フィルムの引張弾性率を動的粘弾性測定器(ティー・エイ・インスツルメンツ社製 RSA III)により、温度23℃の測定条件で測定したところ、48MPaであった。
【0069】
基材フィルムの作製条件の詳細は以下のとおりである。
−基材フィルム作製条件−
・シリンダー温度230℃
・アダプター温度230℃
・Tダイ温度230℃
・キャスティングロール温度18℃
【0070】
図5は、作製された基材フィルムの凹凸面側のレーザ顕微鏡写真(倍率400倍)である。
図5に示すように、基材フィルムの凹凸面には、島状の凹部が複数存在していた。図5では、複数存在する凹部のうちの6個に矢印を付している。
次に、図5中の水平方向の直線に沿って、上記レーザ顕微鏡により、対物レンズ50倍、ピッチ0.01μmの測定条件で表面粗さRa、Ryを測定した。
レーザ顕微鏡の波形により、基材フィルムの複数の凹部の底を結んでなる仮想平面と、当該基材フィルムの前記粘着剤層が存在する側の面と、が略平行であることが確認された。
また、レーザ顕微鏡で観察した結果、実施例1の基材フィルムの凹凸面側には、なだらかな凹凸が存在していた。
また、得られた表面粗さRa、Ryを表1に示した。
【0071】
得られた基材フィルムの凹凸面の反対側の面に、コロナ処理機を用いて表面張力が54mN/m以上となるようにコロナ処理を施した。
【0072】
<粘着剤塗布液の調製>
アクリル酸エチル48質量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル27質量部、アクリル酸メチル20質量部、メタクリル酸グリシジル5質量部、及び重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5質量部を混合し、トルエン65質量部、酢酸エチル50質量部が入った窒素置換フラスコ中に撹拌しながら80℃で5時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌して反応させた。
反応終了後、冷却し、これにキシレン25質量部、アクリル酸2.5質量部、及びテトラデシルベンジルアンモニウムクロライド1.5質量部を加え、空気を吹き込みながら80℃で10時間反応させ、光重合性炭素−炭素二重結合が導入されたアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。この溶液に、共重合体(固形分)100質量部に対して光開始剤としてベンゾイン7質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学ポリウレタン(株)製、商品名:オレスターP49−75S)1.0質量部、1分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亜合成化学工業(株)製、商品名:アロニックスM−400)5質量部を添加し、トルエン及び酢酸エチルにより塗布に適した粘度に調製して粘着剤塗布液を得た。
【0073】
<半導体ウェハ保護用粘着フィルムの作製>
シリコーン離型処理を施した厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東セロ(株)製:SP−PET)をセパレーターフィルムとして用意した。
このセパレーターフィルムの表面粗さRyは、両面とも0.50μm未満であった。
前記セパレーターフィルムのシリコーン離型処理面に、上記で得られた粘着剤塗布液を、コンマコーターを用いて、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工し、乾燥させて粘着剤層を形成し、粘着剤層付きのセパレーターフィルムを得た。
次に、粘着剤層付きのセパレーターフィルムと基材フィルムとを、セパレーターフィルムの粘着剤層形成面と、基材フィルムのコロナ処理面と、が接する向きで重ね合わせ、下記条件でドライラミネートして積層した。
【0074】
−ドライラミネート条件−
・ラミネート温度25℃
・ラミネート圧力500N/m
・ラミネート速度10m/分
【0075】
以上により、基材フィルムと、粘着剤層と、セパレーターフィルムと、がこの順に積層されてなる半導体ウェハ保護用粘着フィルムを得た。
【0076】
上記粘着剤層付きのセパレーターフィルムからセパレーターフィルムを剥離し、粘着剤層を単体として取り出し、測定用サンプルを得た。
得られた測定用サンプルをガラス板の表面に貼着し、60分間放置後に前記ガラス板の表面から剥離したときの粘着力をJIS Z0237に従って測定したところ、4N/25mmであった。
【0077】
<半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールの作製>
直径75mmの円筒状の芯材(ABS製)の円筒部分に、巻き取り器(片岡機械株式会社社製、2軸ターレットワインダー)の回転軸を通し、前記芯材の外周面の一部に、上記で得られた半導体ウェハ保護用粘着フィルムの一端(長手方向についての一端)を固定した。
このとき、芯材の外周面と、半導体ウェハ保護用粘着フィルムのセパレーターフィルムと、が接する向きで固定した。
次に、前記回転軸を回転させて半導体ウェハ保護用粘着フィルムを巻き取り、半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール(以下、「フィルムロール」ともいう)を得た。
巻き取り条件の詳細は以下のとおりである。
【0078】
−巻き取り条件−
・巻き取り張力270N/m
・巻き取り速度10m/分
【0079】
<評価>
(ブロッキングの評価)
得られた半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールについて、目視により、フィルムとフィルムとの間に生じた密着部分(ブロッキング)の発生の有無を確認した。
評価結果を下記表1に示す。
【0080】
〔実施例2〜3〕
実施例1において、円筒研磨の条件の調整により、作製される基材フィルムの凹凸面のRa及びRyを下記表1に示すように調整したこと以外は実施例1と同様にして半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を下記表1に示す。
実施例2〜3の基材フィルムについて、実施例1と同様にしてレーザ顕微鏡で観察した結果、実施例1と同様に基材フィルムの表面にはなだらかな凹凸が存在しており、かつ、島状の凹部が複数存在していた。また、レーザ顕微鏡の波形により、実施例1と同様に基材フィルムの複数の凹部の底を結んでなる仮想平面と、当該基材フィルムの前記粘着剤層が存在する側の面と、が略平行であることが確認された。
【0081】
〔比較例1〜2〕
実施例1において、キャスティングロールの表面をサンドブラスト処理により加工することにより、作製される基材フィルムの凹凸面のRa及びRyを下記表1に示すように調整したこと以外は実施例1と同様にして半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を下記表1に示す。
【0082】
図6は、比較例1の基材フィルムの凹凸面側のレーザ顕微鏡写真(倍率400倍)である。
図6に示すように、基材フィルムの凹凸面には島状の凹部が存在しなかった。
また、実施例1と同様にしてレーザ顕微鏡で観察した結果、比較例1及び2の基材フィルムでは、実施例1の基材フィルムに比べて急峻で高密度な凹凸が存在していた。
次に、図6中の水平方向の直線に沿って表面粗さRa、Ryを測定した。
比較例2の基材フィルムについても同様に、表面粗さRa、Ryを測定した。
得られた表面粗さRa、Ryを表1に示した。
【0083】
〔比較例3〕
実施例1において、キャステングロールの表面処理を鏡面ハードクロムメッキとしたこと以外は実施例1と同様にして半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールを作製し、実施例1と同様の評価を行った。
比較例3の基材フィルムの凹凸面について、実施例1と同様にしてレーザ顕微鏡により、表面粗さRa、Ryを測定した。
比較例3の基材フィルムの凹凸面について、レーザ顕微鏡で観察した結果、実施例1と同様に基材フィルムの表面にはなだらかな凹凸が存在していた。
評価結果を下記表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1に示すように、実施例1〜3の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールでは、ブロッキングが発生しなかった。
一方、基材フィルムの表面粗さRyが3.00μmを超える比較例1及び2の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール、及び、基材フィルムの表面粗さRyが1.00μm未満である比較例3の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールでは、ブロッキングが発生した。
【0086】
また、実施例1〜3の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロールを用い、半導体の研磨処理を行ったところ、実施例1〜3の半導体ウェハ保護用粘着フィルムは、半導体ウェハの集積回路形成面側の凹凸との密着性を十分に備えており、半導体ウェハ保護用粘着フィルムとしての機能を維持していることが確認された。
【符号の説明】
【0087】
10 半導体ウェハ保護用粘着フィルム
12 基材フィルム
14 粘着剤層
16 セパレーターフィルム
22 芯材
O 島状の凹部
S1 粘着剤層と対向しない側の面
S2 粘着剤層と対向する側の面
S3 仮想平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面の表面粗さRaが0.10μm〜0.30μmであり、当該面の表面粗さRyが1.00μm〜3.00μmであり、当該面に島状の凹部を複数有する基材フィルムの他方の面の側に、粘着剤層と、少なくとも当該粘着剤層と対向しない側の面の表面粗さRyが0.50μm未満であるセパレーターフィルムと、をこの順に有する半導体ウェハ保護用粘着フィルムが、芯材に巻き取られてなる半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール。
【請求項2】
前記基材フィルムが、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体(アルキル基の炭素数1〜4)、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数3〜8)からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール。
【請求項3】
前記粘着剤層が、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーンゴム系粘着剤、及びアクリル系粘着剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は請求項2に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール。
【請求項4】
前記セパレーターフィルムが、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムからなる群から選ばれる少なくとも1種のフィルムからなる請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール。
【請求項5】
前記基材フィルムにおける前記複数の島状の凹部の底を含む平面は、当該基材フィルムの前記粘着剤層と対向する側の面と平行である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルムロール。
【請求項6】
一方の面の表面粗さRaが0.10μm〜0.30μmであり、当該面の表面粗さRyが1.00μm〜3.00μmであり、当該面に島状の凹部を複数有する基材フィルムの他方の面の側に、粘着剤層と、少なくとも当該粘着剤層と対向しない側の面の表面粗さRyが0.50μm未満であるセパレーターフィルムと、をこの順に有する半導体ウェハ保護用粘着フィルム。
【請求項7】
前記基材フィルムが、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合体(アルキル基の炭素数1〜4)、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンの炭素数3〜8)からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項6に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルム。
【請求項8】
前記粘着剤層が、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーンゴム系粘着剤、及びアクリル系粘着剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項6又は請求項7に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルム。
【請求項9】
前記セパレーターフィルムが、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムからなる群から選ばれる少なくとも1種のフィルムからなる請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルム。
【請求項10】
前記基材フィルムにおける前記複数の島状の凹部の底を含む平面は、当該基材フィルムの前記粘着剤層と対向する側の面と平行である請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の半導体ウェハ保護用粘着フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−243613(P2011−243613A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111934(P2010−111934)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】