説明

半導体ウエハーの収納容器

【課題】 半導体ウエハーを安全且つ容易に収納、運搬、取り出しができ、搬送時の振動や衝撃から保護し破損を防止することができる半導体ウエハーの収納容器を提供する。
【解決手段】 容器部本体と蓋部からなる半導体ウエハーの収納容器であって、容器部本体が半導体ウエハーと当接する底面と該底面から立ち上がる側壁からなり、側壁が柔構造を有する内側壁及び外側壁の2重構造に形成され、容器部本体の外側壁と蓋部の外側壁内側が各々嵌合して密閉状態を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハーの収納、運搬、保管、取出しに使用する半導体ウエハーの収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に半導体ウエハーは、搬送用の収納容器に収納されて製造工程の各工程間、あるいは各工程内で搬送される。このような状況において、機械的強度が低い半導体ウエハーを収納する収納容器として様々な構造と形状の収納容器が用いられている。
【0003】
半導体ウエハーの収納容器は、通常、円盤状の半導体ウエハーを複数枚重ねて収納するために、円筒状の容器本体とその円筒部の外周を覆う円筒形の蓋から構成されており、運搬、搬送時の振動による衝撃で半導体ウエハーが移動したり破損したりしないように、衝撃を吸収するための特殊な構造を設けたり、クッション材を載置したりする工夫が施されている。
【0004】
このような半導体ウエハーの収納容器としては、例えば、容器内に複数枚の円盤状半導体ウエハーを収納するために、円形の合成樹脂シートの周縁部分の一定範囲を環状に立ち上がらせて環状の支えとしたトレーに、半導体ウエハーの両面をスペーサーシートで保護して1枚毎水平に載置し、この状態で積層した多数のトレーの上部と底部にクッション材を載置した構成のものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
この収納容器では、多数の部材を用いることから構造が複雑になり、容器の製造コストが高くなったり、容器内ヘ半導体ウエハーを収納する工程や、取り出す工程で多くの手間と時間を要することになる。
【0006】
また、半導体ウエハーを1枚毎にトレーに載置して容器に収容するため、半導体ウエハー1枚当たりの占める体積が大きくなり、段ボールケース等で梱包して輸送する場合には輸送コストが高くなる。
【0007】
他の半導体ウエハーの収納容器としては、自動機を使用して半導体ウエハーの装填及び取り出しを自在とした積層型包装容器が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0008】
この積層型包装容器は、円盤状半導体ウエハーの水平方向の移動を固定するために、容器本体に板ばねを設けた構造であるが、その構造が複雑であるため収納容器の製造コストが高くなり、さらに半導体ウエハーの収納及び取り出しに時間がかかるため生産性が低下する。
【0009】
一般的に、半導体ウエハーの形状は円盤状のほか、太陽発電用にモジュール化するための半導体ウエハー等として四角形の4隅を切り欠いた形状のものが用いられている。
【0010】
この四角形の4隅を切り欠いた形状の半導体ウエハーは角部分の強度が特に脆弱であるため、円盤状の半導体ウエハーと比べても破損する可能性が非常に高い。
【0011】
このような半導体ウエハーを複数枚重ねて収納し、安全に梱包、搬送が可能な従来の半導体ウエハーの収納容器は、剛構造の収納容器のみでは半導体ウエハーの破損を防止することが困難なため、収納容器内を柔構造とするためにクッション、スペーサー、トレー等を載置した複雑な構造と形状になっている。
【0012】
そのため、現状の半導体ウエハーの収納容器は製造コストが高くなるほか、半導体ウエハーの収納、搬送、さらにその後の処理工程での取り出し作業が複雑になり手間と時間がかかり、生産性低下の原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4329536号公報
【特許文献2】特開平9−86588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記問題を解決し、半導体ウエハーを安全且つ容易に収納、運搬、取り出しができ、搬送時の振動や衝撃から保護し破損を防止することができる半導体ウエハーの収納容器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の半導体ウエハーの収納容器は以下のことを特徴としている。
【0016】
第1に、容器部本体と蓋部からなる半導体ウエハーの収納容器であって、容器部本体が半導体ウエハーと当接する底面と該底面から立ち上がる側壁からなり、側壁が柔構造を有する内側壁及び外側壁の2重構造に形成され、容器部本体の外側壁と蓋部の外側壁内側が各々嵌合して密閉状態を形成することを特徴とする。
【0017】
第2に、上記第1の発明の半導体ウエハーの収納容器において、半導体ウエハーと当接する底面の位置が、容器部本体の底部よりも上に位置していることを特徴とする。
【0018】
第3に、上記第1または第2の発明の半導体ウエハーの収納容器において、容器部本体の側壁が3面のみ形成されていることを特徴とする。
【0019】
第4に、上記第1から第3の発明の半導体ウエハーの収納容器において、蓋部の外側壁の角部に設けられた係止部と、容器部本体の外側壁の角部に設けられた係止部が各々嵌合することを特徴とする。
【0020】
第5に、上記第1から第4の発明の半導体ウエハーの収納容器において、容器部本体の外側壁、最上部の表面部、内側壁壁及び立ち上がり剛構造部の連続構造により、上下方向に対して剛性を有することを特徴とする。
【0021】
第6に、上記第1から第5の発明の半導体ウエハーの収納容器において、蓋部上面に形成された凹凸形状と、上に重ねた容器部本体の底面の凹凸形状が一致して嵌合することを特徴とする。
【0022】
第7に、上記第1から第6の発明の半導体ウエハーの収納容器において、容器部本体の内側壁の角部が、収納した半導体ウエハーの角部と当接しない形状であることを特徴とする。
【0023】
第8に、上記第1から第7の発明の半導体ウエハーの収納容器において、容器部本体の内側壁の角部底面が、収納した半導体ウエハーの角部底部と当接しない形状であることを特徴とする。
【0024】
第9に、上記第1から第8の発明の半導体ウエハーの収納容器において、容器部本体と蓋部が一体に成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記第1の発明によれば、容器部本体と蓋部からなる半導体ウエハーの収納容器であって、容器部本体が半導体ウエハーと当接する底面と該底面から立ち上がる側壁からなり、側壁が柔構造を有する内側壁及び外側壁の2重構造に形成されているので、水平方向からの振動や衝撃を内側壁及び外側壁で緩衝して収納された半導体ウエハーを保護することができる。
【0026】
また、容器部本体の外側壁と蓋部の外側壁内側が各々嵌合して密閉状態を形成するので、半導体ウエハーの収納部は完全な密閉状態とすることができる。
【0027】
上記第2の発明によれば、上記第1の発明の半導体ウエハーの収納容器において、
半導体ウエハーと当接する底面の位置が、容器部本体の底部よりも上に位置しているので、平面に容器部本体を置いた状態で底部に加わる振動や衝撃は直接底面に伝わることがない。
【0028】
上記第3の発明によれば、上記第1又は第2の発明の半導体ウエハーの収納容器において、容器部本体の側壁が3面のみ形成されているので、側壁が形成されていない部分から半導体ウエハーをスライドさせることにより、容易な半導体ウエハーの収納及び取り出しが可能となる。
【0029】
上記第4の発明によれば、上記第1から第3の発明の半導体ウエハーの収納容器において、蓋部の外側壁の角部に設けられた係止部と、容器部本体の外側壁の角部に設けられた係止部が各々嵌合するので、容器部本体に被せた蓋部は前記係止部により固定され、輸送中の振動等によっても容易に蓋部が外れることがなく、より確実に密閉して半導体ウエハーを保護することが可能となる。
【0030】
上記第5の発明によれば、上記第1から第4の発明の半導体ウエハーの収納容器において、容器部本体の外側壁、最上部の表面部、内側壁壁及び立ち上がり剛構造部の連続構造により、上下方向に対して剛性を有するので、上部から荷重等がかかった場合であっても収納容器は潰れることがなく、収納された半導体ウエハーを十分に保護することができる。
【0031】
上記第6の発明によれば、上記第1から第5の発明の半導体ウエハーの収納容器において、蓋部上面に形成された凹凸形状と、上に重ねた容器部本体の底面の凹凸形状が一致して嵌合するので、安定した状態で収納容器を複数個積み重ねることが可能となる。
【0032】
上記第7の発明によれば、上記第1から第6の発明の半導体ウエハーの収納容器において、容器部本体の内側壁の角部が、収納した半導体ウエハーの角部と当接しない形状であるので、脆弱な半導体ウエハーの角部の破損を防止することができる。
【0033】
上記第8の発明によれば、上記第1から第7の発明の半導体ウエハーの収納容器において、容器部本体の内側壁の角部底面が、収納した半導体ウエハーの角部底部と当接しない形状であるので、半導体ウエハーの角部の破損をより確実に防止することができる。
【0034】
上記第9の発明によれば、上記第1から第8の発明の半導体ウエハーの収納容器において、容器部本体と蓋部が一体に成形されているので、半導体ウエハーの収納容器の成形工数を少なくすることができ、製造コストを抑えることができる。また、容器部本体と蓋部を嵌合する際に各々の向きを考慮する必要がないため、半導体ウエハーの収納、取り出しを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)は、一体成形された本発明の容器部本体を示す図である。(b)は、(a)のX1−X1断面図である。
【図2】(a)は、一体成形された本発明の容器蓋部を示す図である。(b)は、(a)のX2−X2断面図である。
【図3】(a)は、実施例2で用いた一体成形された容器部本体を示す図である。(b)は、(a)のX3−X3断面図である。
【図4】(a)は、実施例3で用いた一体成形された容器部本体を示す図である。(b)は、(a)のX4−X4断面図である。
【図5】(a)は、本発明の他の実施形態の収納容器を示す図である。(b)は、(a)のX5−X5断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の半導体ウエハーの収納容器の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0037】
本発明の半導体ウエハーの収納容器は、容器部本体及び蓋部から構成されている。図1に、四角形の4隅を切り欠いた形状の半導体ウエハーを収納するための一体成形された容器部本体1を示す。図1(a)は容器部本体1の平面図、図1(b)は、(a)のX1−X1断面図である。また、図2に容器の蓋部14を示す。図2(a)は蓋部14の平面図、図2(b)は、(a)のX2−X2断面図である。
【0038】
容器部本体1は、底面3と、これより一段低く設定された底面2により底面が形成されており、底面2縁部から立ち上がる内側壁8、最上部の表面部10、外側壁9、立ち上がり剛構造部12により連続した側壁が形成されている。そして、この側壁は3面のみ形成され、1面は側壁を設けない形状となっている(図1中、右端部)。また、外側壁9から下方に連続する外側面5及び、壁を設けない部分の底面2及び底面3から下方に連続する外側面7により壁が形成されている。
【0039】
上記の形状とする本発明の容器部本体1に、四角形の4隅を切り欠いた形状の半導体ウエハーを収納する場合、内側壁8に囲まれた空間に、底面2及び底面3に対して水平に半導体ウエハーを載置する。収納された半導体ウエハーの周縁部は、内側壁8と広い領域で当接した状態となる。
【0040】
内側壁8、最上部の表面部10、外側壁9から形成される側壁において、内側壁8と外側壁9は最上部10により十分離れた構成となっており、内側壁8と外側壁9の間には空間を設けているため、外側壁9は弾性変形が可能であり、半導体ウエハーを収納した状態で搬送時に外側壁9にかかる水平方向の振動や衝撃の応力を吸収することができる。
【0041】
ここで、収納された半導体ウエハーの周縁部は、内側壁8と広い領域で当接して収納されるため、半導体ウエハーの周縁部に局所的な応力は発生しない。しかし、半導体ウエハーの切り欠いた4隅の角部には局所的な応力がかかる可能性があるため、内側壁8の円弧状内側壁11を外側に広がった円弧状として、半導体ウエハーの角部が内側壁8と当接しない形状とすることにより、半導体ウエハーの特に脆弱な角部を振動や衝撃から保護することができる。
【0042】
さらに、半導体ウエハーの下面は底部3と当接するが、半導体ウエハーの角部の下面底部は、一段低い底面2の位置となり当接しない状態となる。これにより、半導体ウエハー面に対して垂直方向に振動や衝撃が生じた場合でも、半導体ウエハーの角部と底面との当接が避けられ、半導体ウエハーの角部の破損をさらに確実に防止することができる。
【0043】
また、底面2及び底面3は、外側面5及び外側面7により形成された壁により、底辺6より高い位置となっている。これにより、容器部本体1を平坦な作業台等に置いた場合に作業台等からの振動や衝撃を受けても、これらの振動や衝撃は外側面5及び外側面7で吸収されて、底面3に載置した半導体ウエハーに直接伝わることがない。
【0044】
本発明の容器部本体1では、1面のみを、内側壁8、最上部の表面部10、外側壁9による側壁を設けない形状とすることにより、この部分から半導体ウエハーを容易に収納、取り出しをすることができる。
【0045】
この側壁が設けられていない部分の下部には、それ自体は弾性変形しうる外側面7を有するが、この両端に設けた変形しない立ち上がり剛構造部12によって側壁が設けられていない部分の弾性変形が少ない構造となっている。しかしながら、この外側面7と反対側の外側面5及び外側壁9の弾性変形によって搬送時の半導体ウエハーに加わる振動や衝撃を十分に吸収することができる。
【0046】
なお、本発明の容器部本体1は、内側壁8、最上部の表面部10、外側壁9及び立ち上がり剛構造部12が連続した剛構造となっているので、収納容器の上部からの荷重に対して変形しない構造となっている。
【0047】
蓋部14は、外側面51及び外側壁91の高さが容器部本体1の外側面5及び外側壁9の高さとほぼ同じであり、容器部本体1に蓋部14を被せたときに、蓋部14の外側面51及び外側壁91は、容器部本体1の3面の外側面5及び外側壁9と各々嵌合するようになっている。
【0048】
また、容器部本体1の側壁を設けない部分下部の外側面7は蓋部14の外側面71と互いに嵌合し、容器部本体1の外側壁の角部の円弧状部と蓋部14の外側壁の角部の円弧状部が互いに嵌合して、さらに容器部本体1の最上部の表面部10が、蓋部14の上部平面21の内側と密着して支えるので、一体として上下方向に対する剛構造を構成する。
【0049】
前記のように、容器部本体1と蓋部14の周囲は、外側面5と外側面51、外側面7と外側面71が嵌合して密閉されるようになっているが、さらに容器部本体1の外側壁の角部に設けた係止部(破線部)13と蓋部14の外側壁の角部に設けた係止部(破線部)131が各々嵌合することによって容器本体1と蓋部14を確実に固定することができ、半導体ウエハー収納後の工程や搬送時において、振動や衝撃で蓋部が外れない構造となっている。
【0050】
本発明の容器部本体1に蓋部14を適用した収納容器に、半導体ウエハーを収納して複数個積み重ねた場合、蓋部14の上部円弧状部41と、その上に重なる容器本体1の底辺6の円弧状部が嵌合し、さらに、蓋部14の上部平面21及び上部平面31と容器本体部1の底面2及び底面3が各々嵌合するので、収納容器は互いにずれることなく安定して積み重ねることができる。このような収納容器の構造によって半導体ウエハーは搬送時の振動や衝撃から保護される。
【0051】
また、収納容器中に半導体ウエハーを収納可能枚数を重ねて収納する場合、その最上部に位置する半導体ウエハーは、蓋部14の上部平面21の内側と接するため、上部平面31との間の間隙により積み重ねられた他の収納容器の荷重を直接受けることはない。
【0052】
さらに、蓋部14の中央部表面31は周辺の表面21より高い位置となっているので、上部からの応力は収納された半導体ウエハーの中央部には及ばない。また、上部表面21は容器本体の剛構造を有する最上部の表面部10と嵌合、密着するため、上部表面21は、面に垂直な応力を受けても変形しない。このような蓋部14の表面構造によって、積層収納された最上部の半導体ウエハーは保護される。
【0053】
前記のような構成による本発明の半導体ウエハーの収納容器は、平行方向の振動や衝撃が加わった場合には、容器部本体1と蓋部14の外側壁9と外側壁91の嵌合した側壁の柔構造による弾性変形によって緩衝される。また、収納容器に上部からの荷重が加わった場合には、容器部本体1と蓋部14の互いに嵌合する外側面5と外側面51、外側面7と外側面71、外側壁9と外側壁91、対応する4隅の円弧状部分、容器部本体1の最上部の表面部10、内側壁8、外側壁9及び立ち上がり剛構造部12からなる剛構造により、収納された半導体ウエハーを保護することが可能となる。
【0054】
さらに、半導体ウエハーを載置する容器本体の底面2と底面3及び蓋部の上部平面21と上部平面31からなる面構造によって、収納容器全体が過度に変形することはなく、従って半導体ウエハーに歪みを生じさせるような応力は発生しない。
【0055】
本発明の半導体ウエハーの収納容器は、上記のような形状とすることにより容器本体への半導体ウエハーの収納を容易にし、さらに、梱包、搬送後に収納容器からの半導体ウエハーの取り出しを安全かつ容易にすることができる。また、半導体ウエハーの収納容器内にクッション材等を用いなくとも、梱包、輸送時に半導体ウエハーの破損を防止することが可能となる。
【0056】
本発明の半導体ウエハーの収納容器は、本発明の基本的な構成を有していれば上記の構成に限定されるものではなく、各構成部の形状の変更が可能である。例えば、図3に示す容器部本体15の外側壁92のような形状とすることにより側面からの衝撃をより効率的に緩衝させることもできる。
【0057】
さらに図5に示すように容器部本体17と蓋部18を、接続部100を介して一体とし、容器部本体底面から立ち上がる柔構造を有する内側壁8及び外側壁9の側壁を4面設けた形状とすることもできる。
【0058】
このように、容器部本体17と蓋部18を一体とすることにより、半導体ウエハーの収納容器の構成部品点数を少なくすることができ、製造コストを抑えることができる。また、半導体ウエハーのサンプル用簡易収納容器等として、容器単体の持ち運びや郵送等に好適に用いることもできる。
【0059】
なお、この図5に示す半導体ウエハーの収納容器の構成では、上記の図1、3、4に示す容器部本体の構成と異なり、外側壁から連続する外側面がないため、容器部本体の下方からの振動や衝撃は外側面によって緩衝することができないが、この場合の底面3にかかる振動や衝撃は底面2の凹凸形状により緩衝され、底面3に接している半導体ウエハーに直接伝わることはない。
【0060】
上記説明では、収納する半導体ウエハーの形状を、四角形の4隅を切り欠いたものとして説明したが、本発明の半導体ウエハーの収納容器に収納する半導体ウエハーの形状はこれに限定されるものではなく、例えば円盤状の形状半導体ウエハーを収納することも可能である。
【0061】
さらに、半導体ウエハーの収納容器の大きさも、収納する半導体ウエハーの大きさ、形状に合わせて適宜設定することができる。
【0062】
次に、本発明の半導体ウエハーの収納容器を構成する材料及び成形方法について説明する。
【0063】
本発明の半導体ウエハーを収納する容器を構成する材料は、上記本発明の構成に適合するものであれば特に制限なく用いることができる。これらのものとしては、例えば、樹脂、樹脂コーテイング紙、フイルムコーテイング紙、弾性を有する金属等を挙げることができる。本発明においては、特に樹脂を好適に用いることができ、なかでも熱可塑性樹脂を好適に用いることができる。
【0064】
熱可塑性樹脂としては、その種類や組成は特に限定されず、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリアセタール等のポリエーテル類、ポリスチレンやポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAと略称する)等のビニルポリマー類、脂肪族ポリアミドや芳香族ポリアミド等のポリアミド類、脂肪族ポリエステルや芳香族ポリエステル等のポリエステル類、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート等の単独重合体、これら2種以上のポリマーの繰り返し単位あるいは連鎖を含む共重合体、エラストマー成分を含む耐衝撃性ポリスチレン、耐衝撃性PMMA、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂等のポリマーアロイが挙げられ、なかでもポリエステル類が好適な対象として例示される。
【0065】
また、収納容器の成形方法は、一般に用いられている成形方法であれば特に限定されず、射出成形、射出圧縮成形、真空成形、真空圧空成形、反応射出成形等を挙げることができる。このようにして成形された収納容器を構成する樹脂層は単層でも複層でもよく、また、収納容器の各部分の樹脂厚さは、収納された半導体ウエハーを振動や衝撃から保護できる厚さであれば、すべてが同じ厚さであっても異なる厚さであってもよい。さらに必要に応じて帯電防止等の表面処理を施してもよい。
【0066】
以下、本発明に係る半導体ウエハーの収納容器を用いた振動試験についての実施例について詳述する。
【実施例1】
【0067】
図1に示す容器部本体1と、図2に示す蓋部14の組み合わせによる収納容器に、四角形の4隅を切り欠いた形状のシリコン半導体ウエハー100枚を収納し、仕切り用の段ボール板以外にはクッション材は全く使用せず、半導体ウエハーを収納した容器30個(半導体ウエハーの総収納枚数3000枚)を段ボールケース1個に梱包した。
【0068】
このようにして荷造りをした梱包物の搬送時における半導体ウエハーの破損の有無を評価するために、IMV株式会社製複合環境振動試験機VSr5500−220Tを用い、加振周波数5〜100Hz、加速度0.75G、加振方向X、Y、Z方向の試験条件下で、3時間振動試験(耐久試験)を行った。
【0069】
試験後、梱包物を開封し、取出した半導体ウエハーを目視及び実体顕微鏡で調べた結果、3000枚の半導体ウエハーは1枚もひびや割れの破損がないことが確認された。
【0070】
この結果から、本発明の各々一体成形された容器本体及び蓋部からなる半導体ウエハー収納容器が、クッション材を全く使用しなくとも段ボール梱包での搬送が可能であり、さらには、開封後の収納容器からの半導体ウエハーの取出しも容易に行えることが立証された。
【0071】
さらに、同様に荷造りした梱包物を、国内の一般道及び高速道路約200kmのトラック便輸送し、梱包物を開封し、収納容器中の半導体ウエハーを目視及び実体顕微鏡で調べた結果、3000枚の半導体ウエハーは1枚もひびや割れの破損がなく、実際の輸送においても全く問題がないことが確認された。
【実施例2】
【0072】
図1に示す容器部本体1の壁9の断面形状を、凹凸ないし波型の壁92とした図3に示す容器部本体15と、図2に示す蓋部14の組み合わせによる収納容器に、四角形の4隅を切り欠いた形状の半導体ウエハーを各100枚収納し、総数3000枚の半導体ウエハーを収納した半導体ウエハーの収納容器30個を段ボールケース1個に梱包した。この梱包物についても、実施例1と同様に振動試験(耐久試験)及び国内の一般道及び高速道路約200kmのトラック便輸送試験を行い、半導体ウエハーの破損の有無を調べた。その結果、いずれの試験においても、半導体ウエハーは1枚もひびや割れの破損がないことが確認された。
【実施例3】
【0073】
図1に示す容器部本体1の内測壁8の2つの角11の形状を、半導体ウエハーの4隅の形状に合わせた形状の内測壁111とした図4に示す容器部本体16と、図2に示す蓋部14の組み合わせによる半導体ウエハーの収納容器に、四角形の4隅を切り欠いた形状の半導体ウエハーを各100枚収納し、総数3000枚の半導体ウエハーを収納した半導体ウエハーの収納容器30個を段ボールケース1個に梱包した。この容器部本体16の構造では、半導体ウエハーの周縁部のすべてが壁8及び壁111と接する状態となる。
【0074】
この梱包物を、実施例1と同様に振動試験(耐久試験)を行ったところ、23枚の半導体ウエハーにおいて、4隅を切り欠いた部分のうち、壁111の近傍と当接する半導体ウエハーの角の部分にひびの発生が認められた。この結果から、半導体ウエハーの4隅の切り欠いた角の部分が最も振動や衝撃によって破損しやすいことが明らかとなり、半導体ウエハーの収納容器の内測壁の形状は、半導体ウエハーと当接しない形状のものがより好ましいことが確認された。
【符号の説明】
【0075】
1 容器部本体
2 底面
3 底面
5 外側面
6 底辺
7 外側面
8 内側壁
9 外側壁
10 最上部の表面部
11 円弧状内側壁
12 立ち上がり剛構造部
13 係止部(破線部)
14 蓋部
15 容器部本体
16 容器部本体
17 容器部本体
18 蓋部
21 上部平面
22 上部平面
31 上部平面
32 上部平面
41 上部円弧状部
51 外側面
61 底辺
71 外側面
81 外側壁
91 外側壁
92 外側壁
93 外側壁
100 接続部
111 内側壁
131 係止部(破線部)
132 係止部(破線部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器部本体と蓋部からなる半導体ウエハーの収納容器であって、容器部本体が半導体ウエハーと当接する底面と該底面から立ち上がる側壁からなり、側壁が柔構造を有する内側壁及び外側壁の2重構造に形成され、容器部本体の外側壁と蓋部の外側壁内側が各々嵌合して密閉状態を形成することを特徴とする半導体ウエハーの収納容器。
【請求項2】
半導体ウエハーと当接する底面の位置が、容器部本体の底部よりも上に位置していることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウエハーの収納容器。
【請求項3】
容器部本体の側壁が3面のみ形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体ウエハーの収納容器。
【請求項4】
蓋部の外側壁の角部に設けられた係止部と、容器部本体の外側壁の角部に設けられた係止部が各々嵌合することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の半導体ウエハーの収納容器。
【請求項5】
容器部本体の外側壁、最上部の表面部、内側壁壁及び立ち上がり剛構造部の連続構造により、上下方向に対して剛性を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の半導体ウエハーの収納容器。
【請求項6】
蓋部上面に形成された凹凸形状と、上に重ねた容器部本体の底面の凹凸形状が一致して嵌合することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の半導体ウエハーの収納容器。
【請求項7】
容器部本体の内側壁の角部が、収納した半導体ウエハーの角部と当接しない形状であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の半導体ウエハーの収納容器。
【請求項8】
容器部本体の内側壁の角部底面が、収納した半導体ウエハーの角部底部と当接しない形状であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の半導体ウエハーの収納容器。
【請求項9】
容器部本体と蓋部が一体に成形されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の半導体ウエハーの収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−71880(P2012−71880A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219785(P2010−219785)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(510260123)ヒロパックス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】