半導体ウエハーの高圧処理チャンバー
【課題】改良されたシール手段を有する処理チャンバーを開示する。
【解決手段】処理チャンバー101は下部要素150と上部要素110とシール付勢器とを有する。シール付勢器は処理空間140を維持するために下部要素150に対して上部要素110を維持するように構成されている。シール付勢器はさらに処理空間140内で発生する処理圧力に対して非線形に変化するシール付勢空洞115内のシール圧力を発生させるように構成されている。一つの実施形態において、シール付勢器は上部要素110および下部要素150の一方に対して負ではない最終的な力を閾値以上において最小化するように構成されている。P1がシール圧力であり、P2が処理圧力であり、A1がシール付勢空洞の断面積であり、A2が処理空間の断面積であるとした場合に、最終的な力は、式P1*A1−P2*A2に従う。
【解決手段】処理チャンバー101は下部要素150と上部要素110とシール付勢器とを有する。シール付勢器は処理空間140を維持するために下部要素150に対して上部要素110を維持するように構成されている。シール付勢器はさらに処理空間140内で発生する処理圧力に対して非線形に変化するシール付勢空洞115内のシール圧力を発生させるように構成されている。一つの実施形態において、シール付勢器は上部要素110および下部要素150の一方に対して負ではない最終的な力を閾値以上において最小化するように構成されている。P1がシール圧力であり、P2が処理圧力であり、A1がシール付勢空洞の断面積であり、A2が処理空間の断面積であるとした場合に、最終的な力は、式P1*A1−P2*A2に従う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、「半導体ウエハーの高圧処理チャンバー」を発明の名称とした2003年2月10日に出願された米国特許出願第10/364,284号の一部継続出願である。この「半導体ウエハーの高圧処理チャンバー」を発明の名称とした2003年2月10日に出願された米国特許出願第10/364,284号を引用することによって本明細書の記載に替えることとする。
【0002】
本発明は、処理チャンバーの分野に関する。特に、本発明は、高圧処理チャンバーを確実にシールする機構と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体素子は、素子層を形成し、処理の残留物を除去し、その他の処理工程を行う処理チャンバー内に配置されて加工される。さらに、特定の処理チャンバーは、超臨界温度で且つ超臨界圧力で半導体ウエハーをクリーニングするために用いられる。
【0004】
一般に、処理チャンバーは、上部要素と下部要素とを有する。これら二つの要素は、接合されると処理空間を形成し、処理中、この処理空間内にウエハーが入れられる。処理中においては、処理空間がシール状態にあって、処理空間が正常な動作状態、例えば、高圧状態または大気状態または超臨界状態に維持されることが非常に重要である。また、外の環境から処理空間をシールすることは、(a)処理されるウエハーがそれを使用不可能にするような混入物質に曝されず、(b)処理空間内に注入される有害な化学物質のような処理物質が周囲に放出されないことを保証する。
【0005】
処理空間は、ウエハーが処理されている間に処理空間内で発生する処理力に対抗するためにシール力を加えることによって保持されている。処理力は、上部要素と下部要素とを強制的に離し、処理空間シールを開け、処理空間を開放するように作用する。シール力は、油圧ピストンによって生じる。処理空間が処理力に関わらず維持されることを保証するために、ワークが処理される前にシール力が最大限に達成可能な処理力に設定される。この場合、達成可能な最大処理力が全く達成されなくても或いは処理サイクル全体のほんの一部でしか達成されなかったとしても、シール力は、この最大限に達成可能なレベルに維持されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第09/912,844号明細書
【特許文献2】米国特許出願第10/121,791号明細書
【特許文献3】米国特許出願第09/704,641号明細書
【特許文献4】米国特許出願第10/289,830号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような処理チャンバーには、いくつかの欠点がある。第一に、非常に長い間、達成可能な最大シール力に耐えるシール部品であっても、シール力を繰り返し受けた後には故障する傾向がある。第二に、シール面の大きな接触力が、処理空間内に持ち込まれる粒子状物質を発生させ、ウエハーを汚染する。第三に、油圧油を加圧するのに用いられる設備は、処理チャンバーをシールするために用いられ、ウエハーを処理するために用いられないので、処理機構のコストが上がる。第四に、油圧部品を超臨界処理物質を用いている超臨界部品と置き換えるように設計されることもできるこれらの機構は高価である。これらの機構は、超臨界の処理物質が再利用される前に膨張および圧縮されなければならないので、複雑なリサイクル技術が必要となる。
【0008】
従って、必要なものは、(1)処理空間を維持するために継続的な必要以上のシール力を必要とすることなく、(2)空間内に持ち込まれる混入物質の数を減らし、(3)処理空間シールを維持するための処理にすでに用いられている要素を使用し、(4)処理機構がコンパクトでより効率的に動作するために小さな付勢空間を使用する処理機構である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、最適なシールのためのアルゴリズムに追従するシール圧力を用いて処理空間を維持する半導体の処理機構を対象とする。本発明の第一の態様では、半導体処理機構は、上部要素と下部要素とシール手段とを有する。上部要素および下部要素は、接合されて処理空間を形成するように構成されている。シール付勢器は、処理空間を維持するために下部要素に対して上部要素を維持するように構成されている。さらに、シール付勢器は、処理空間内で発生する処理圧力に対して非線形に変化するようにシール付勢空洞内のシール圧力を制御するように構成されている。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、シール付勢器は、上部要素および下部要素の一方に対して負ではない最終的な力を閾値以上において最小化するように構成されている。P1がシール圧力であり、P2が処理圧力であり、A1がシール付勢空洞の断面積であり、A2が処理空間の断面積であるとした場合に、最終的な力は、式P1*A1−P2*A2に従う。好ましくは、シール付勢器は、処理サイクル中、圧力差P1−P2を略一定に維持するように構成されている。好ましくは、シール付勢器は、第一空洞とシール付勢空洞とを有する。第一空洞は、シール付勢空洞に連結されている。シール付勢器は、第一空洞内で発生する第一圧力が該第一圧力よりも大きいシール付勢空洞内の第二圧力を発生させるように構成されている。好ましくは、断面積A1は、断面積A2よりも大きい。
【0011】
別の実施形態において、処理機構は、処理空間に連結された超臨界状態を発生させる手段をさらに有する。処理機構が処理空間に連結されたCO2供給容器をさらに有してもよい。好ましくは、上部要素および下部要素は、超臨界処理チャンバーを形成する。好ましくは、シール付勢器は、下部要素に連結され且つ処理空間を維持するように構成された油圧ピストンを有する。
【0012】
本発明の第二態様において、処理空間を維持する方法は、処理空間内の処理圧力を発生させることと、処理空間を形成すると共に該処理空間を維持するためにシール圧力を制御することとを含む。処理サイクル中、シール圧力は、処理圧力に対して非線形に変化する。好ましくは、P1がシール圧力であり、P2が処理圧力であり、A1がシール付勢空洞の断面積であり、A2が処理空間の断面積であるとした場合に、シール圧力は、式ΔF=P1*A2−P2*A2による処理圧力に関連づけられる。シール圧力は、ΔFを閾値よりも大きく維持するように変化する。好ましくは、処理空間の断面積は、シール付勢空洞の断面積よりも小さい。好ましくは、処理圧力を発生する工程は、処理空間内の高圧処理流体を収容することも含む。高圧処理流体は、超臨界二酸化炭素を含む。好ましくは、シール圧力を制御する工程は、シール付勢空洞内の油圧を発生させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一つの実施形態の開位置にある処理機構の側断面図である。
【図2】本発明のシール付勢空洞および処理空間の両方を形成するために用いられるプレートの、(A)は上面図であり、(B)は側断面図であり、(C)は下面図である。
【図3】閉位置にある図1の処理機構である。
【図4】閉位置にある図1の処理機構とヨークおよびスタンドの組立体である。
【図5】開位置にある図4のすべての処理機構とヨークおよびスタンドの組立体である。
【図6】本発明の一つの実施形態の正常処理中のバランスシリンダーの側断面図である。
【図7】異常処理中の図6のバランスシリンダーである。
【図8】本発明の一つの実施形態の処理チャンバーおよび対応するバルブ組立体の側断面図および概略図である。
【図9】本発明の別の実施形態の処理チャンバーおよびそれに対応するバルブ組立体の側断面図および概略図である。
【図10】本発明の別の実施形態の処理チャンバーおよびそれに対応するバルブ組立体の側断面図および概略図である。
【図11】本発明の別の実施形態の処理チャンバーおよびそれに対応するバルブ組立体の側断面図および概略図である。
【図12】本発明の一つの実施形態の作動状態を示す圧力または力対時間のグラフである。
【図13】本発明の一つの実施形態の作動状態を示す力の差分対処理圧力のグラフである。
【図14】本発明の一つの実施形態の作動工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、素子の処理中に処理空間を効率的に維持する機構および方法を対象とする。半導体ウエハーは、処理チャンバー内で処理されるときに一連の処理温度および処理圧力を受ける。処理が正確に行われるように、つまり、半導体ウエハーが混入物質に曝されることなく処理されるように、処理空間は、処理中、密閉されてシールされた状態でなければならない。さらに、処理空間は、最低限必要な力でシールされた状態であるべきである。
【0015】
ここで用いられる処理圧力とは、素子の処理中、処理空間内に生じる圧力を言い、従って、素子の処理中に変化する。処理力とは、処理圧力によって発生し、処理空間の面に働く力を言う。シール圧力とは、シール付勢空洞(後述)内で生じる圧力を言う。シール力とは、シール圧力によって発生し、シール付勢空洞の面に働く力を言う。本発明では、シール力は、処理力と釣り合いを取り、処理空間シールを維持するために用いられる。それ故、以下に述べるように、処理空間を効率的に維持するためには、シール力は、処理力よりもわずかばかり大きいものである必要がある。処理とは、限定するものではないが、(a)半導体ウエハーになされるクリーニング、蒸着、イオン注入、あるいは、他のタイプの処理を含む様々な素子加工工程中に半導体素子になされる処理と、(b)半導体ウエハー以外の素子になされる処理とを言う。処理物質とは、処理空間内での処理に用いられる物質を言い、例えば、HCI、CO2、および、超臨界CO2を含む。処理空間が維持されている間に行われる処理を通常処理と言う。処理空間が維持されていない間に行われる処理を異常処理と言う。処理空間シールとは、処理空間を形成するために用いられるシールを言う。処理空間シールは、シール要素の接触表面と、上部要素および下部要素の一方とによって形成される。
【0016】
本発明の実施形態は、処理圧力をシール圧力と釣り合わせることによって処理空間を維持する。(a)シール付勢空洞の面の表面積が処理空間の面の表面積よりも十分に大きく、あるいは、(b)シール圧力が処理圧力よりも十分に大きいことを保証することによって、シール力は処理力よりも十分に大きくなる。こうして、処理空間シールは、シール付勢空洞を予圧することなく、最高処理力に対抗する力を作り出すために必要なシール圧力を以て維持される。従って、処理圧力は、シール力が処理力と等しいかあるいはいくらか大きくなるように、処理圧力で追従し、あるいは、変動すると言える。こうして、それら力は、処理空間シールを維持するために釣り合っている。
【0017】
従って、本発明の実施形態は、シール面の接触力が決して過度にならないので、シールの接触面の摩耗を減少させる。さらに、釣り合いの取れた力を受ける構成要素が、シール圧力のすべての力に耐えるように設計されている必要はない。構成要素は、釣り合いの取れた処理力を超えるシール力にだけ耐える必要がある。
【0018】
また、本発明の実施形態は、設備の破損を防止する。例えば、ワークまたは他の異物がそれらシール面の間に何かの事情で置かれている場合、これらシール面は、ワークまたは他の異物に処理設備を破損するような過度の力を与えることはない。シール力がこのような環境において小さいことを保証することによって、処理設備への破損量が減少する。
【0019】
また、本発明の実施形態は、シール付勢空洞がリークしあるいはシール流体で満たされていない場合のような、シール圧力が閾値以下の場合に、処理空間は、予め決められた方法で通気されることを保証する。従って、処理物質が周囲の環境に散布されない。
【0020】
さらに、本発明の実施形態は、処理空間シールを維持するために付勢されなければならないシール付勢空洞の大きさを減少させる。シール圧力が処理圧力を大きく超えるというよりはむしろ釣り合うために、シール付勢空洞に作用する最終的な力が減少するので、他の実施形態はシール付勢空洞の大きさを減少させる。従って、処理空間をより効率的に維持することができる。
【0021】
図1は、本発明の一つの実施形態による処理組立体100の断面図を示している。図1は、後述するように、半導体ウエハーを処理組立体100に挿入したり処理組立体100から取り除いたりすることができる開位置にある処理組立体100を示している。処理組立体100は、処理チャンバー101に連結されたバランスシリンダー170を有する。以下で詳細に述べるように、バランスシリンダー170は、(a)通常処理中に処理空間140をしっかりとシールする(すなわち、維持する)ことと、(b)シール付勢空洞内に臨界圧力が維持されていないときに処理チャンバー101を通気して処理を一時中断することとの両方を保証する。
【0022】
バランスシリンダー170は、シリンダーキャビティを上部槽171と下部槽173とに分割するピストン172を有する。ピストン172のハウジングは、通風孔175を有する。そして、通風孔175は、ピストン172が図1の矢印1で示す方向に十分な距離をスライドしたときに下部槽173が通風孔175を通して通気されるように下部槽173に配置されている。上部槽171は、第一パイプ180の第一端部に接続される開口を有する。下部槽173は、第二パイプ181の第一端部に接続される開口を有する。さらに、バランスシリンダーは、第一端部および第二端部を有するパイプ190を受け入れるように構成されている。第一端部は、下部槽173内にあって、外側の供給源と下部槽173との間で流体の連通を可能にしている。
【0023】
処理チャンバー101は、上部要素110と下部要素150とを有する。上部要素110は、該上部要素110の内部空洞をシール付勢空洞115と上部処理空洞116とに分割するプレート120を有する。また、上部要素110は、パイプ180の第二端部がシール付勢空洞115に作用関係をもって連結されるようにしてパイプ180を収容するように構成されている。このようにして、シール付勢空洞115は、上部槽171に連通している。さらに、後述のように、好ましくは、シール付勢空洞115と上部槽171とによって形成される空間は隔離されている。
【0024】
また、上部要素110は、パイプ181の第二端部が上部処理空洞116に連通するようにしてパイプ181を収容するように構成されている。プレート120は、上部要素110の内部空洞内でスライド可能に取り付けられており、ピストンシール125を有する。従って、図1に示すように、プレート120が矢印1方向にスライドすると、シール付勢空洞115の容積が減少し、上部処理空洞116の容積が増加する。図1に示されているように、プレート120の断面は、逆さのU字型である。逆U字型の端部は、以下に詳述するOリングのようなシール要素131を含むシール面130である。下部要素150は、圧盤155に連結された上面156を有する。
【0025】
図2は、それぞれ、プレート120の(A)上面図、(B)側断面図、(C)下面図を示している。図2(A)は、シール付勢空洞115から見たプレート120を示している。また、図2(A)は、シール付勢空洞115の表面を形成するプレート120の外面135を示している。外面135は、半径134とそれに相当する表面積とを有する。図2(B)は、プレート120の側断面図を示している。また、図2(B)は、プレート120の断面が逆U字型を有することを示している。また、図2(B)は、プレート120の内面136の半径を矢印132によって表している。内面136は、処理機構100が閉位置にあるときに処理空間140(図3)の表面を形成する。また、図2(B)は、シール面130と、該シール面130のシール溝内に収容されたシール要素131とを示しており、両方とも以下に詳述する。図2(C)は、図3の処理空間140から見たプレート120の下面図を示している。図2(A)から図2(C)に示すように、内面136と外面135とは、プレート120のそれぞれ反対側の面である。好ましくは、図2(A)から図2(C)に示すように、半径134で示された外面135の表面積は、矢印132で示された内面136の表面積よりも大きい。一つの実施形態ではあるが、内面136と外面135とは、両方とも略平面である。
【0026】
もちろん、図2(A)から図2(C)は、プレート120を円形で示しているが、プレート120は、他の幾何学的な形状であっても非幾何学的な形状であってもよい。さらに、図2(A)から図2(C)は、プレート120上に配置されたシール要素131およびそれに対応するシール溝(図示略)を円形の形で示しているが、当然のことながら、シール要素131およびそれに対応する溝が他の幾何学的な形状であっても非幾何学的な形状であってもよいし、処理機構100内の他の構成要素に配置されていてもよい。例えば、シール要素131とそれに対応する溝を下部構成要素150(図1)の表面156上、圧盤155(図1)上、あるいは、他の場所に配置することも可能である。
【0027】
作動時には、図3に示したように、処理されるべき半導体ウエハー(図示略)が圧盤155上に配置され、後述するように、上部要素110と下部要素150とが処理空間140を形成するように接合されている。このとき、処理組立体100は、閉位置にある。処理空間140は、プレート120の内面136とシールリング131と上面156の一部とによって形成されている。圧盤155は、処理空間140内に収容されている。以下に詳述するように、プレート120、したがって、シールリング131を下部要素150の上面156に押し付ける圧力をシール付勢空洞115内に発生させ、これにより、処理空間シールを形成することによって処理空間140が維持される。このとき、半導体ウエハーを処理するために処理物質が処理空間140内に注入される。なお、限定するものではないが、本発明では、クリーニング工程、蒸着工程、または、その他の半導体加工工程にて使用される真空処理、低圧処理、大気圧処理、高圧処理、および、超臨界処理を含む処理方法の幾つか或いはこれらの組合せを使用して半導体ウエハーを処理してもよい。
【0028】
また、図3は、処理中に処理空間140を維持するのを補助するために下部要素150に上部要素110をしっかりと連結する付加的なクランプの役割を果たすヨーク188(図4)の断面185A−Bおよび186A−Bを示している。また、図3は、処理チャンバー101の片側を共に固定するヨーク188の左上部アーム185Aおよび左下部アーム185Bと、処理チャンバー101の反対側を共に固定するヨーク188の右上部アーム186Aおよび右下部アーム186Bとを示している。左上部アーム185Aと左下部アーム185Bとは、左アーム185(図4)の一部を形成する。右上部アーム186Aと右下部アーム186Bとは、右アーム186(図4)の一部を形成する。
【0029】
図4は、処理チャンバー101とヨーク188と処理組立体100(図1)を支持するために用いられるスタンド組立体250とを示している。また、図4は、閉位置にある図3の処理チャンバー101を示している。単純化のため、図4および図5は、バランスシリンダー170、または、パイプ180、l81、190を示していない。また、図4は、上部要素110を下部要素150にしっかりと連結するためにヨークアーム185,186が処理チャンバー101周りでどのように合体させているかを示している。ヨーク188は、当業者に公知の様々な構造を有する。例えば、ヨークアーム185、186は、それらが図4の矢印2に示す方向に移動したときに上部要素110と下部要素150とが互いに向かって押されて固定されると共にヨークアーム185、186が矢印3に示す方向に移動したときに上部要素110と下部要素150とが分離することができるように楔形にされている。
【0030】
なお、上部要素110を下部要素150によりしっかりとクランプするためにヨーク以外の構造を用いてもよい。処理中に上部要素110を下部要素150にしっかりと連結する付加的な構造を提供するために、例えば、上部要素110および下部要素150の一方に配置されるTボルトと上部要素110および下部要素150の他方に配置されるナットとを用いてもよい。
【0031】
また、図4は、ベース209と、該ベース209に連結されており且つヨーク188の高さとそれに取り付けられた処理チャンバー101の高さとを調節可能なようにヨーク188がスライド可能に取り付けられている下方延長部207と、上部要素110を下部要素150に対して固定された状態にするために処理チャンバー101の中央に追加の力を共に与えるクランプ201および重り203と、これらクランプ201および重り203を着脱可能にする上方延長部205とを有するスタンド組立体を示している。
【0032】
図5は、ヨーク188およびスタンド組立体250と開位置にある図4の処理チャンバー101とを示している。図5では、重り203がクランプ201から持ち上げられており、クランプ201がヨーク188から持ち上げられており、ヨーク188が矢印3で示す方向に移動することによって処理チャンバー101から取り外されている。半導体ウエハーを処理チャンバー101内に挿入したり処理チャンバー101から取り除いたりすることができるように、上部要素110は、下部要素150から離されている。
【0033】
本発明の一つの実施形態の動作を説明するために再び図3を参照する。作動中、半導体ウエハー(図示略)は、圧盤155の上に置かれる。上部要素110が下部要素150と接合され、上部要素110を下部要素150にしっかりと保持するためにヨークアーム185A−Bおよび186A−Bが配置される。次に、水のような非圧縮性流体あるいは略非圧縮性流体のようなシール物質がバランスシリンダー170の上部槽171内に注入され、そして、シール付勢空洞115内へ流れる。もちろん、油のような他の非圧縮性流体をシール物質として用いてもよい。さらに、非圧縮性若しくは略非圧縮性の流体以外のシール物質を本発明に従って用いてもよい。もちろん、非圧縮性流体あるいは略非圧縮性流体を処理前、例えば、半導体処理機構100が開位置にあるときの何時に注入してもよい。
【0034】
次に、処理物質が下部槽173内に注入される。処理物質は、例えば、ドライクリーニング、ウェットクリーニング、超臨界クリーニング、あるいは、他のクリーニング方法で用いられるクリーニング物質である。あるいは、処理物質は、半導体素子または非半導体素子を処理するために用いられる物質でもよい。本発明の一つの実施形態において、クリーニング物質は、後に超臨界状態になって処理空間140内の半導体ウエハー表面からフォトレジストの残留物を取り除くために用いられるCO2である。CO2は、例えば、パイプ190を通じて下部槽173内に注入され、その後、蓋をされる。そして、CO2は、パイプ181を通じて処理空間140内に移動する。それから、CO2は、処理空間140内に入ると超臨界状態になって超臨界CO2を形成する。そのとき、超臨界CO2は、処理空間140の至る所に循環して圧盤155上の半導体ウエハーの残留物を取り除く。
【0035】
超臨界チャンバーの作用と超臨界CO2の使用は、「半導体ウエハーを処理するための超臨界処理チャンバー」を発明の名称とした2001年7月24日に出願された特許文献1と、「流れ促進特性を有する半導体基板の高圧処理チャンバー」を発明の名称とした2002年4月10日に出願された特許文献2と、「ワークの超臨界処理の方法と装置」を発明の名称とした2000年11月1日に出願された特許文献3とに記載されており、引用することによって本明細書の記載に替えることとする。
【0036】
前述のように、本発明は、処理空間140(図3)が処理中に維持されることを保証する。図6は、処理空間140(図3)が維持されている時、つまり、通常処理中のバランスシリンダー170を示している図1および図3のバランスシリンダー170の詳細な概略図である。以下に詳述するように、図6および図7を参照すると、半導体素子が処理空間140内で処理されている間に処理空間140が維持されることを保証するために、バランスシリンダー170が用いられている。図6に示すように、上部槽171には、水または油のような非圧縮性流体177が入っている。非圧縮性流体177は、パイプ180を通って流れ、そして、完全にあるいは部分的にシール付勢空洞(例えば、図3に符号115で示されている空洞)を満たす。好ましくは、上部槽171とシール付勢空洞(図3に符号115で示されている空洞)とによって形成された空間は、隔離されている。また、好ましくは、超臨界状態になることが可能なクリーニング液178がパイプ190内に注入され、それによって、完全にあるいは部分的に下部槽173を満たし、そして、閉じた処理チャンバー101の処理空間140内に注入される。処理中、クリーニング液178は、処理空間140内の半導体ウエハーがクリーニングされるように超臨界状態になる。もちろん、流体を注入して該流体を超臨界状態または他の処理状態にする工程は、複数の処理サイクルにおいて何度も行われる。作動中に、ピストン172は、開口175を塞ぐように配置される。
【0037】
バランスシリンダー170は、処理空間140がしっかりとシールされることを保証する。このことは、処理空間140内の処理圧力をシール付勢空洞115内のシール圧力と釣り合わせることによって達成される。一例として、図3および図6において、処理圧力がシール圧力よりも大きいとする。ここで、シール付勢空洞115がパイプ180を介して上部槽171に連通しているので、これら両方の圧力は等しく、処理空間140がパイプ181を介して下部槽173に連通しているので、これら両方の圧力は等しい。従って、処理圧力がシール圧力よりも大きい場合、ピストン172は、矢印4(図6)で示す方向に押しやられる。ここで、上部槽171とシール付勢空洞115とによって形成される空間が隔離されているので、矢印4の方向へのこの動きは、シール圧力を増加させ、処理圧力を減少させる。これは、処理圧力がシール圧力に等しくなるまで、または、釣り合うまで続く。同様に、処理圧力がシール圧力より小さい場合、ピストン172が矢印5(図6)で示す方向に押され、シール圧力を減少させ、処理圧力を増加させる。この場合もやはり、この押圧は、上部槽内の流体が非圧縮性流体または略非圧縮性流体であるので、処理圧力がシール圧力に等しくなるまでまたは釣り合うまで続く。従って、処理圧力は、シール圧力と釣り合い或いは追従し、シール圧力が最大限に可能な処理圧力に予圧される必要はない。
【0038】
図7は、適切な圧力がシール付勢空洞115内に維持されていないとき、つまり、異常処理中の図6のバランスシリンダー170の詳細な概略図である。これは、いくつかの原因のため起きる可能性がある。例えば、シール付勢空洞115がリークして上部槽171から受け取る非圧縮性流体177を保持できない場合である。あるいは、上部槽171、従って、シール付勢空洞115が、何かの事情によって非圧縮性流体177で満たされていない場合である。いずれにしても、シール付勢空洞115内の圧力が十分でない(つまり、シール圧力が閾値圧力を下回っている)と、半導体クリーニング処理が損なわれる。また、処理空間140が維持されていないので、処理中、処理物質178が処理空間140(図3)からリークし、半導体ウエハーを汚染してしまう外部粒子が処理チャンバーに入るかもしれない。本発明の実施形態はこれが発生しないことを保証する。
【0039】
図7に示すように、シール圧力が閾値を下回ると、ピストン172が矢印4で示す方向に移動する。すると、ピストン通風孔175が下部槽173に位置し、処理物質178が通風孔175を通じて排出され、支障なく、容器(図示略)、外気、あるいは、貯蔵可能な他の容器に送られる。従って、処理物質178が処理空間140に入らず、半導体処理が損なわれることはない。さらに、この通気処理が素子の処理を停止させたり一時停止させたりするために用いられる信号を送信してもよい。
【0040】
図8〜図10は、低圧チャンバー内で低い圧力を受け、それを増大させて大きいシール圧力を生成する増圧器を有する実施形態を示している。従って、図8〜図10の実施形態は、シール圧力を生成するために比較的小さい圧力を発生させてこれを維持することを要求している。それ故に、これら実施形態は、処理空間を維持するのに少ないエネルギーと小さいスペースがあればよいので、より効率的である。
【0041】
例えば、水のような非圧縮性流体を必要なシール圧力に圧縮するのに増圧器を用いることによって、高圧油圧機器の必要性がなくなる。増圧器の圧力は、超臨界処理流体が増圧器に入ったときに気相に拡張するように十分低く選択される。超臨界処理流体が気相に拡張するとその密度は減少し、増圧器によって非圧縮性流体を所要のシール圧力に圧縮するために必要とされる臨界処理流体の体積は、増圧が用いられない場合よりも小さい。このような構造は、処理空間シールを維持するために処理機構内に注入されなければならない臨界処理液体のコストを削減し、従って、処理機構の効率を増加させる。
【0042】
図8は、本発明の一つの実施形態の処理チャンバーとそれに関連したバルブ組立体とを有する処理組立体300の側断面図および概略図である。処理組立体300は、処理チャンバー700と、CO2供給容器360と、シールリーク検出器340と、水容器320と、排出口321と、空気作動バルブ323、324、325、330、342、343と、水フィルター322と、圧力比安全バルブ341と、電子制御装置350と、圧力変換器370、375と、セットポイント信号源379と、通風孔362、371と、圧力調整器352と、圧力リリーフバルブ331とを有する。一つの実施形態として、電子調整器350は、ミネソタ州エルクリバーのテスコムコーポレーションによって製造されたER3000のような電子圧力制御装置である。
【0043】
処理チャンバー700は、上部要素302と下部要素304とを有する。上部要素302は、内面301を有する。下部要素304は、上部空間406とシール付勢空洞410と増圧器908とを有する。また、下部要素304は、ワーク受台305を収容する。ワーク受台305は、上部空間406に収容された圧盤306とシール付勢空洞410内に収容されたベース980とを備える。圧盤306は、ワーク受台305が矢印6の方向である上方と、矢印7の方向である下方にスライドできるように、ネック315にスライド可能に取り付けられたステムを有する。また、圧盤306は、シール要素520を含む。好ましくは、シール要素520は、Oリングのようなガスケットを有する。説明を簡略化するために、他の構成要素に対するシール要素520の高さは誇張されている。さらに、図8は、圧盤306上にある半導体ウエハー400を示している。
【0044】
図8に示すように、水容器320は、空気作動バルブ323に連結され、この空気作動バルブ323は、水フィルター322に連結されている。水フィルター322は、空気作動バルブ325に連結され、この空気作動バルブ325は、シール付勢空洞410に連結されている。排出口321は、空気作動バルブ325に連結され、この空気作動バルブ324は、シール付勢空洞410に連結されている。シールリーク検出器340は、ネック315とピストンシール809とに連結されている。圧力比安全バルブ341は、処理空間510と、通風孔362と、空気作動バルブ343と、増圧器908とに連結されている。圧力リリーフバルブ331は、通風孔371と、空気作動バルブ330と、圧力変換器375と、圧力調整器352とに連結されている。空気作動バルブ330は、増圧器908と、通風孔371と、圧力リリーフバルブ331と、圧力変換器375と、圧力調整器352とに連結されている。電子調整器350は、セットポイント信号源379と、圧力変換器375と、圧力調整器352とに連結されている。CO2供給容器360は、圧力調整器352と、空気作動バルブ343を介して処理空間510とに連結されている。圧力変換器370は、空気作動バルブ342によって通風孔362と圧力比安全バルブ341とに連結されている。
【0045】
増圧器908は、低圧チャンバー705と、低圧チャンバー705の断面積よりも小さい断面積を備えるネック303と、低圧チャンバー705内に収容されたベース392およびネック303内に収容されたヘッド391を備えるピストン310と、ピストンシール809とを有する。ネック303がシール付勢空洞410に連通しているので、ヘッド391が矢印6の方向である上方に移動すると、シール付勢空洞410内の圧力が増加する。好ましくは、ベース392の断面積は、ヘッド391の断面積よりも大きい。
【0046】
図8は、閉位置にある処理チャンバー700を示している。処理空間510は、内面301と、シール要素520と、圧盤306の内面とによって形成される。図8に示すように、シール要素520は、好ましくは、処理空間510の断面積が圧盤306の断面積よりも小さくなるように圧盤306内に配置される。従って、処理空間シールは、内面301とシール要素520とによって形成されている。
【0047】
ベース980が上方へ移動すると、処理組立体300を閉位置にするようにシール要素520が内面301に押しつけられる。閉位置では、処理空間510が形成される。ベース980が下方へ移動すると、処理組立体300を開位置にするようにシール要素520が内面301から離される。開位置では、処理空間510が解放されて半導体ウエハー400を圧盤306上に挿入したり圧盤306から取り除いたりすることができる。
【0048】
以下に詳細に述べるように、処理組立体300が開位置にあるときに半導体ウエハーが圧盤306上に配置される。そして、ワーク受台305、ひいては、圧盤306を矢印6の方向に動かすためにシール物質がシール付勢空洞410内に注入される。このとき、処理機構300は、閉位置となる。それから、半導体ウエハーが処理空間510内で処理されている間に処理空間シール(ひいては、処理空間510)が維持されることを保証するために増圧器908が用いられる。処理が完了すると、処理機構300を開位置に動かすためにシール物質がシール付勢空洞410から取り除かれる。そして、半導体ウエハーが圧盤306から取り外される。もちろん、半導体ウエハー以外の素子も本発明に従って処理することができる。
【0049】
作動中、処理組立体300は、低圧水を水容器320からシール付勢空洞410内に注入することによって閉位置とされる。低圧水は、水容器320から、空気作動バルブ323と水フィルター322とパイプ915および918と、空気作動バルブ325とパイプ916とを通してシール付勢空洞410内へ移動する。また、低圧水は、ヘッド391とベース980との間のシール付勢空洞410に入る。低圧水は、シール付勢空洞410内に流入するとベース980を上方へ移動させると共にヘッド391を下方へ移動させる。ベース980を上昇へ移動させることで、シール要素520を上面301に押し付け、それによって、処理空間510を形成する。このとき、処理組立体300は、閉位置にある。圧盤306が処理空間510を形成するために上方へ移動し、ヘッド391がその限界まで(例えば、ピストンシール809に接するまで)下方に移動したことを位置センサー(図示略)が検知すると、空気作動バルブ323、325が閉じてこのとき低圧水で満たされているシール付勢空洞410を隔離する。
【0050】
低圧水のような低圧物質を用いることで、シール付勢空洞410を素早く満たすためには比較的小さなエネルギー量があればよい。すなわち、水が低圧でシール付勢空洞410内に流入するので、水を供給する構成要素は、高圧水を移送したり保持したりすることを必要としない。従って、処理組立体300は、シール付勢空洞410を満たして処理空間510を形成するために高圧設備を用いている処理組立体よりも効率的に動作する。
【0051】
処理組立体300が閉位置になると、低圧のCO2ガスがCO2供給容器360から低圧チャンバー705内へ注入される。CO2ガスは、CO2供給容器360から圧力調整器352を介し、パイプ901C、空気作動バルブ330、パイプ901Aを通って低圧チャンバー705内へ移動する。CO2ガスを低圧チャンバー705内へ注入することは、ピストン310上にベース392、ひいては、ヘッド391を矢印6の方向である上方に押す力を及ぼす。ヘッド391上の低圧水は、隔離されているのでシール付勢空洞410から外へ流出することはない。そして、低圧水は、圧縮された状態になり、ヘッド980、ひいては、圧盤306を上方に押し、内面301にシール要素520を押し付け、処理空間510を維持する。
【0052】
次に、素子の処理工程中、CO2が処理空間510内に注入され、それ故、処理圧力が増加する。CO2は、CO2供給容器360から空気作動バルブ343を介してパイプ900Aを越えて処理空間510内に移動する。また、セットポイント信号源379は、所要の処理圧力と等しい処理圧力セットポイントにセットされる。また、圧力変換器370は、処理圧力を監視する。圧力変換器370は、処理圧力が処理圧力セットポイントに等しいと検知すると、処理空間510内へのCO2の流れを停止するために空気作動バルブ343に送信される信号を発する。
【0053】
このとき、処理圧力が望ましい作動圧力にセットされ、半導体ウエハーが処理可能となる。処理圧力によって発生する処理力は、今述べたようなシール力によって釣り合っている。
【0054】
圧力変換器370は、理圧力を監視し、関連する処理信号を電子制御装置350に送信する。また、圧力変換器375は、低圧チャンバー705内で生じる増圧器の圧力を監視し、関連するシール信号を電子制御装置350に送信する。これら処理信号およびシール信号が処理圧力がシール圧力よりも大きいことを示す場合、電子制御装置350は、圧力調整器352に信号を送信する。このとき、圧力調整器352は、CO2をCO2供給容器360から低圧チャンバー705に送り、従って、増圧器圧力、ひいては、シール圧力を増加させる。
【0055】
また、電子制御装置350は、処理圧力セットポイントが変化したときにシール力が処理力と釣り合うことも保証する。例えば、低い処理圧力が望ましい場合、処理圧力セットポイントを減少させることが可能である。空気作動バルブ342は、処理圧力を減少させるために開くことができる。圧力変換器370は、この処理圧力の低下を検知し、処理信号を電子制御装置350に送信する。そして、電子制御装置350は、圧力調整器352を稼働させ、通風孔362を介して低圧チャンバー705を通気し、それ故、増圧器圧力が減少する。通気は、シール力が処理力と等しくなるまで続けられる。
【0056】
処理空間510内の処理が完了すると、処理組立体300が開位置とされる。このことは、シール付勢空洞410内の低圧水をパイプ916および917と空気作動バルブ324とを介して排出口321から外へ排出することによって達成される。もちろん、空気作動バルブ323、324、325の動作は、(a)処理組立体300を開位置とするためには低圧水が水供給容器320からシール付勢空洞410内へ移動され、(b)処理機構300を閉位置とするためには低圧水がシール付勢空洞410から排出口321を介して外へ移動されるように調整されていなければならない。
【0057】
処理中、CO2は、半導体ウエハー400の表面をクリーニングするために処理空間510内で循環する。その後、空気作動バルブ343が開かれて、処理空間510内で用いられたCO2がCO2供給容器360に戻され、その後に続く処理工程に用いられる。なお、CO2は、一つ又は複数の処理サイクルにおいて、単独で処理空間510内を循環せしめられてもよいし、他の処理物質と組み合わされて処理空間510内を循環せしめられてもよい。
【0058】
圧力比安全バルブ341は、図1および図6のバランスシリンダー170と同様に機能する。圧力比安全バルブ341は、ピストン333を有する。ピストン333は、増圧器908によって増圧された増圧器圧力が処理力に等しい又は略等しいシール力を生成して処理空間510を維持するように、移動して処理圧力と増圧器圧力とをきめ細かく釣り合わせる。低圧チャンバー705内の圧力がこの値(低圧ポイント)を下回ると、処理空間510は、パイプ900A、900B、900Cを介して通風孔362を通って外へ通気される。従って、圧力比安全バルブ341は、処理力をシール力と釣り合わせるためにバルブ組立体を補完して処理空間510を維持する。
【0059】
次に、処理組立体300の安全機構について説明する。圧力リリーフバルブ331は、増圧器圧力が閾値圧力を絶対に超えないことを保証している。増圧器圧力が閾値圧力を超えた場合、圧力リリーフバルブ331が開いてパイプ901A、901C、901D、902を介して低圧チャンバー705を通風孔371から外へ通気する。シールリーク検出器340は、ピストンシール809およびネック315を監視する。いずれかにリークが発生したとき、シールリーク検出器340は、例えば、点滅光を稼働してオペレータに警告したり、処理組立体300を機能停止させて処理を中断したり、あるいは、他の措置を講じたりする予防措置を取ることができる。
【0060】
図9は、本発明の別の実施形態の処理組立体400の側断面図および概略図を示している。処理組立体400は、該処理組立体400が圧力調整器801、802を制御するために電子圧力制御装置800を用いているという点で図8の処理組立体300と異なる。図8と比較すると、同じ参照符号を付した要素は同じ機能を果たす。処理組立体400は、圧力変換器380と、電子圧力制御装置800と、圧力調整器801、802と、セットポイント信号源810とを有する。圧力変換器380は、処理空間510と電子圧力制御装置800と圧力調整器801とに連結されている。電子圧力制御装置800は、セットポイント信号源810と圧力調整器801、802とに連結されている。
【0061】
電子圧力制御装置800は、処理圧力と増圧器圧力との両方を制御する。また、電子圧力制御装置800は、圧力調整器801および802を制御するためにセットポイント信号源810によって決定されたセットポイントを用いる。圧力調整器801は、処理圧力を制御し、圧力調整器802は、増圧器圧力を制御する。処理空間510内の圧力が処理セットポイントを超えた場合、処理組立体400は、処理空間510と低圧チャンバー705との両方を通気する。電子圧力制御装置800は、図8に示された構造を以て可能であるよりもさらに持続的かつ正確な処理圧力の制御を可能にする。
【0062】
図10は、本発明の別の実施形態の処理組立体500の側断面図および概略図を示している。処理組立体500は、該処理組立体500が増圧器圧力を制御する圧力調整器902を制御するために電子圧力制御装置900を用いているという点で図8の処理組立体300と異なる。図8と比較すると、同じ参照符号を付した要素は同じ機能を果たす。処理組立体500は、圧力変換器385と、電子圧力制御装置900と、圧力調整器901、902と、セットポイント信号源909とを有する。圧力変換器385は、処理空間510と圧力調整器901と電子圧力制御装置900とに連結されている。また、電子圧力制御装置900は、セットポイント信号源909と圧力調整器902とに連結されている。圧力調整器901は、CO2供給容器360と、処理空間510と、通風孔362と、圧力比安全バルブ341と、低圧チャンバー705と、空気作動バルブ330とに連結されている。圧力調整器902は、CO2供給容器360と空気作動バルブ330と圧力リリーフバルブ331とに連結されている。
【0063】
電子調整器900は、セットポイント信号源909からの外部セットポイントを用いる。また、電子圧力制御装置900は、圧力調整器902に信号を送り、増圧器圧力を制御する。増圧器圧力が上昇して処理圧力から生じる力との釣り合いを取るための力を発生すると、処理圧力をシール圧力に追従させるために、増圧器908から圧力信号が圧力調整器901に送信される。処理圧力は、電子圧力制御装置900に連結された圧力変換器385によって監視される。
【0064】
さらに別の実施形態(図示略)では、外部セットポイントに応答する電子圧力制御装置を備える圧力調整器は、処理圧力を監視し、シール圧力を制御する圧力調整器を調節する。その調節によってシール圧力が処理圧力を追従することが保証される。
【0065】
図11は、本発明の別の実施形態の処理機構600の側断面図および概略図を示している。処理機構600は、上板921および下板922を備える処理チャンバー920と、ピン位置センサー925と、複数のピン(図示略)を備える圧盤982と、ワーク受台位置センサー926と、ピストン965に連結されたワーク受台981と、差圧スイッチ932と、圧力スイッチ933と、シール付勢器950、増圧器975と、入力部9440、9441、9444および出力部9442、9443を備える圧力調整器ユニット944と、空気作動バルブ952と、圧力変換器930、931、934と、圧力リリーフバルブ945、947、968と、フィルター961と、ソレノイドバルブ960と、出力部9510および入力部9511、9512を備えるソレノイドバルブ951と、流方向制御装置966と、通気孔971と、油圧油容器967と、圧縮空気供給器972、999と外部セットポイント946とを有する。
【0066】
上板921および下板922は、圧盤982を入れる処理空間980を形成する。また、上板921は、処理空間980の一部を形成する内面989を有する。圧盤982は、処理空間980内で処理される半導体ウエハー(図示略)のようなワークを支持する。ピストン965は、面9502を備えるヘッド962を有する。ヘッド962は、後述するように内部空洞9501内に収容されている。
【0067】
流方向制御装置966は、チェックバルブ963とニードルバルブ964とを有する。増圧器975は、低圧チャンバー942と、高圧チャンバー941と、低圧チャンバー942を高圧チャンバー941に連結するピストン943とを有する。また、増圧器975は、低圧チャンバー942に連結された入力部9750と高圧チャンバー941に連結された出力部9751とを有する。図8の増圧器908と同様に、入力部9750で生じる低圧は、出力部9751で生じる高圧に変換される。一つの実施形態では、空気圧制御装置944は、ジョージア州30087、ストーンマウンテン、センターパークコート2220にあるTSIソリューションから販売されているMAC PPC93Aを含む。また、一つの実施形態では、フィルター961は、3ミクロンフィルターである。
【0068】
増圧器975の出力部9751は、流方向制御装置966に連結され、チェックバルブ963の入力部とニードルバルブ964の入力部とに連結されている。流方向制御装置966の出力部、ひいては、チェックバルブ963の出力部およびニードルバルブ964の出力部は、圧力リリーフバルブ945に連結されている。圧力リリーフバルブ945は、フィルター961およびソレノイドバルブ960に連結されている。ソレノイドバルブ960の出力部は、フィルター961に連結されている。フィルター961は、低圧の油圧油を供給するために用いられる油圧油容器967に連結されている。ソレノイドバルブ960の出力部は、差圧スイッチ932およびシール付勢器950に連結されている。シール付勢器950の内部空洞9501(シール付勢空洞)は、ソレノイドバルブ951の出力部9510に配管されることによって連結されている。また、圧力リリーフバルブ961は、パイプに連結されている。ソレノイドバルブ951の第一出力部9511は、空気作動バルブ952の出力部に連結されている。空気作動バルブ952の入力部は、圧縮空気供給器972に連結されている。ソレノイドバルブ951の第二出力部9521は、通風孔971に連結されている。
【0069】
図11に示すように、処理空間980は、圧力変換器931および差圧スイッチ932に連結されている。圧力調整器ユニット944の第一入力部9440は、圧力変換器931に連結され、圧力調整器ユニット944の第二入力部9441は、外部セットポイント946に連結され、圧力調整器ユニット944の第三入力部9444は、圧縮空気供給器999に連結されている。圧力調整器ユニット944の第一出力部9442は、圧力リリーフバルブ947および通風孔(図示略)を介して外気に連結されている。圧力調整器ユニット944の第二出力部9443は、増圧器975の入力部9750に連結されている。圧力リリーフバルブ947は、パイプによって増圧器975の入力部9750に連結され、同様に圧力変換器934にも連結されている。圧力変換器は、空気作動バルブ947と増圧器975の入力部9750の間の圧力を監視するために用いられる。
【0070】
作動中、ワーク(図示略)は、圧盤982の表面から延びるピン(図示略)に配置される。また、ワークは、ピンを引っ込めることによって圧盤982の表面に配置され、その後、ピンを伸ばすことによって表面から取り除かれる。ピンと圧盤の表面との関係は、ピン位置センサー925によって監視される。ピンの使用は、例えば、「リフト機構を有する半導体ウエハーの高圧互換バキュームチャック」を発明の名称とした2002年11月6日に出願された特許文献4に記載されており、これを引用することによって本明細書の記載に替えることとする。
【0071】
次に、図8の処理組立体300に関して前述したように、処理チャンバー920を閉じるために、低圧油が、油圧油容器967から空気作動バルブ960の入力部を介してシール付勢空洞9501内へ送られる。次に、ワークを処理するために、超臨界CO2のような処理物質が処理空間980内に注入される。処理空間980内の圧力(処理圧力)が圧力変換器931によって電気信号へ変換される。電気信号は、圧力調整器ユニット944に送信され、対応する圧力のような機械的な出力信号を発する。通常作動中、機械的出力信号は、増圧器975の入力部9750に送信される。そして、増圧器975は、その出力部9751に高圧出力を発生させる。図8の処理組立体300に関して前述したように、処理チャンバー920をシールするために、高圧出力は、流方向制御装置966を介してシール付勢空洞9501へ送られる。
【0072】
異常作動中、流方向制御装置966の出力部をフィルター961、ひいては、油圧油容器967に作用上の関係をもって連結するために圧力リリーフバルブ945が用いられる。あるいは、異常処理中、流方向制御装置966の出力部を油圧油容器967に作用上の関係をもって連結するためにソレノイドバルブ960が用いられてもよい。
【0073】
圧力リリーフバルブ947は、入力部9750の圧力が設定値に達すると増圧器975の入力部9750を通気するように、増圧器975の低圧側でのフェイルセーフ機構として機能する。また、圧力リリーフバルブ945は、出力部9751の圧力が設定値に達すると増圧器975の出力部9751を通気するように、増圧器975の高圧側での同様の機能を果たす。
【0074】
ワークが処理空間980内で処理されているときに、処理圧力が圧力変換器931によって圧力調整器ユニット944に送信される電気信号に変換される。すると、圧力調整器ユニット944は、増圧器975の入力部9750に送られる低圧を発生させる。低圧は、増圧器975の入力部9750に送られたときに出力部9751に発生する高圧に変換されて処理力に略等しいシール力を発生させる圧力である。作動中、圧力調整器ユニット944は、外部セットポイント946を圧力変換器931からの電気(フィードバック)信号と比較する。外部セットポイント946がフィードバック信号よりも小さい場合、圧力調整器ユニット944は、圧力リリーフバルブ947を介して増圧器975を外気に通気する。外部セットポイント946がフィードバック信号よりも大きい場合、圧力調整器ユニット944は、圧縮空気を圧縮空気供給器999から圧力調整器ユニット944の入力部9444に送り、出力部9443を介して増圧器975の入力部9750内へ送る。このようにして、シール力は処理力に追従して調整される。
【0075】
もちろん、圧力リリーフバルブ945、947、968は、構成要素間に伝達される圧力が決して既定値を超えないことを保証している。また、圧力変換器930、934は、処理機構600内で用いられるパイプに沿って圧力を表示し、監視するために用いられている。
【0076】
また、本発明の他の構成は、処理圧力とシール力との間の関係を有効に使うことによって、図11の処理空間980のような処理空間を効率的に維持するためにも使用可能である。本発明の一つの実施形態は、処理圧力を処理力に関連づける式を用い、最低限のシール力を算出するためにその式を用いる。この最小値にシール力を制限することによって、処理空間は、最低限必要とされるエネルギーを有効に用いることで維持される。
【0077】
(1)プレートの第一面の断面積とプレートの第二面の断面積とが異なり、(2)第一面に働く圧力と第二面に働く圧力との間の圧力差が一定である場合、(3)プレート上の最終的な力は一定でなく可変であると考えられる。従って、例えば、圧力P1が断面積A1の第一面に生じ、圧力P2が断面積A2の第二面に生じる場合、プレート上の最終的な力(ΔF)は、式1によって与えられる。
ΔF=P1*A1−P2*A2 …(1)
ここで、ΔFは、プレートの片側の、プレートの反対側よりも大きい割増力に相当する。プレートが完全に釣り合っている場合、ΔFは、0に等しい。もちろん、プレートが処理空間を形成するために用いられる場合には、プレートを釣り合わせることによって(すなわち、ΔF>0を保つことによって)処理空間が維持される。ΔFが0よりも大きい場合、処理空間は、必要以上の余分で不必要なエネルギーを必要とする大きい力を用いて維持されている。
【0078】
式1を再び参照すると、A1がA2に等しい場合、ΔFは、A1*(P1−P2)に等しく、したがって、圧力差P1−P2(=ΔP)が一定である場合、ΔFは、一定である。ΔPが一定でない場合、ΔFは、ΔPに関して直線的に変化する。A1がA2に等しくない場合には、ΔFとΔPとの間の関係は異なり、本発明によって有効に用いられる関係である。実際には、最終的な力ΔFは、必ずしも圧力差P1−P2に比例するとは限らないと考えられる。従って、例えば、A1=100in2、A2=200in2、P1=3,000lbf/in2、P2=1,600lbf/in2の場合に、圧力差(P1−P2)またはΔP=3,000lbf/in2−1,600lbf/in2=1,400psid(「psid」はポンド/平方インチ差圧力を意味する)となる。そのとき、最終的な力ΔFは、P2*A2−P1*A1=1,600lbf/in2*200in2−3,000lbf/in2*100in2=20,000lbfd(「lbfd」は重量ポンド差圧力を意味する)となる。しかし、ΔPが変化しないように(すなわち、1,400psidの状態であるように)P1=2,500lbf/in2とP2=1,100lbf/in2である場合に、ΔFはP2*A2−P1*A1=1,100lbf/in2*200in2−2,500lbf/in2*100in2=−30,000lbfdとなる。従って、圧力が変化するときに、たとえ、ΔPが一定の状態でも、ΔFは、大きさと方向を変更することができる。図11の処理機構600のような処理機構において、ΔFは、処理空間980のような処理空間内の圧力(Pvol)と共に変化する。
【0079】
後述するように、本発明の実施形態は、処理空間を効率的に維持するために、この関係を有効に使用する。上述した例を用いると、P1が増加すれば、ΔFも増加する。図11を参照すると、P1は、処理空間980内の圧力(Pvol)に相当し、P2は、シール圧力(Pseal)に相当する。従って、Pvolが増加し且つΔPが一定に維持されるときには、ΔFが不必要に増加する。ΔF(ひいては、Pseal)は、処理空間を維持する間、エネルギーを節約するために減少する。(PsealがPvolに追従しなくてもよい)この非線形関係が、処理空間を維持するのに用いられる処理機構内へのエネルギー入力を減らすために用いられる。エネルギーは、例えば、図11のMACバルブ944の入力部9444で処理機構内へ注入される。
【0080】
先の検討および以下のグラフが、圧力差ΔPが略一定である処理機構を表している。この限定は、主に、議論を単純化するために用いられる。また、MACバルブ944を制御するアルゴリズムを単純化するためにも用いられる。もちろん、ΔPは、本発明の実施形態に従って変更することができる。
【0081】
図12を本発明の背後にある原理を説明するために用いる。図12は、時間t1をt8に増加させる一つまたは複数の処理サイクルに関する、図11の処理機構11の圧力または力対時間のグラフ1200である。グラフ1200は、左側の縦軸と右側の縦軸との二つの縦軸を有する。「圧力」とラベル表示しているpsigまたはpsidの単位の左側の縦軸は、以下に詳述するように、線210、215、220によって表される値を測るために用いられる。「力」とラベル表示しているlbfまたはlbfdの単位の右側の縦軸は、同様に以下により詳述するように、線225、230、235で表された値を測るために用いられる。なお、グラフ1200は、横軸に時間を示しているが、グラフ1200は、圧力差と力差との間の関係を説明するために用いられ、同様に、力対圧力のグラフとして参照することができる。
【0082】
図11を参照すると、処理機構600は、処理空間980を有する。処理空間980は、(1)処理空間980の面989に働く処理力と、(2)油圧ピストン965の面9502に働くシール力とを釣り合わせることによって維持される。ΔFが処理空間980を維持するために必要とされる先の割増力に相当する。一つの実施形態において、面9502の断面積は、面989の断面積よりも大きい。好ましくは、処理機構600は、高圧処理を行うように構成されている。例えば、処理機構600は、超臨界CO2を処理空間980内に注入し、あるいは、超臨界CO2を処理空間980内で発生させるように構成される。好ましくは、処理空間980は、超臨界温度と超臨界圧力とに耐えるように構成され、CO2供給容器のような超臨界物質を供給するための容器に連結されている。
【0083】
グラフ1200は、測定に左側の縦軸を用いて、時間に対する圧力のプロットを三本の線で示している。すなわち、Pvolがpsigで測定されるPvol対時間の線210と、Psealがpsigで測定されるPseal対時間の線215と、そして、psidで測定され、ΔPがPseal−Pvolと等しいΔP対時間の線220である。同様に、グラフ1200は、時間に対する力のプロットを三本の線で示している。すなわち、lbfで測定され、面989に働く力対時間の線225と、lbfで測定され、面9502に働く計算された油圧力対時間の線230と、lbfdで測定され、線225と線230の間の差分であって計算されたシール力であるΔF対時間の線235である。線220は、ΔPが略一定の状態である場合に、ΔFが圧力の減少に応じて減少することを示している。
【0084】
表1は、図12のグラフ1200をプロットするために用いられる値を一覧表にしている。表1を参照すると、「処理圧力」と表示された第二列には、Pvolの値が入っている。「シール圧力」と表示された第三列には、処理空間980を維持するために十分なPsealの値が入っている。「MAC圧力」と表示された第一列には、処理空間980を維持するのに十分な力を発生させるために十分なシール圧力(Pseal)に変換されるMACバルブ944によって発生される圧力の値が入っている。「ΔP」と表示された第四列には、第二列および第三列の対応する値の間の差分(ΔP=Pseal−Pvol)の値が入っている。「処理力」と表示された第五列には、面989に生じる力の値が入っている。「シール力」と表示された第六列には、面9502に生じる力の値が入っている。「ΔF」と表示された第七列には、第五列および第六列の対応する値の間の差分の各値が入っている。
【0085】
図13は、表1におけるいくつかの点において、1000lbfd単位系の力の差分ΔF対psig単位系のPvolをプロットしたグラフ1300を示している。グラフ1300は、ΔPが略一定である場合には、ΔFは、Pvolと共に直接的に変化することを示している。もちろん、この関係は、ΔPが略一定でなく変化する場合であっても、同様に保たれる。例として、グラフ1300は、ΔPが196psidと226psidとの間で変化するが略一定であるときに処理圧力が28psigと1218psigとの間にあることを示している。
【0086】
この関係は、二つの結論を有している。第一に、処理空間を維持するため(すなわち、処理シールを維持するため)に最低限必要な力が存在する場合、最小の圧力であっても処理空間を維持するために十分な力があるようにΔPを選択しなければならない。この場合、圧力が上昇するにつれ、最終的な力ΔFが、先のこの最低限のレベル(ΔFthresh)を超えて非効率の処理を増加させる。その代わりに、MACバルブ944は、ΔFがΔFthreshを決して超えないように、処理空間を維持するのに最低限のエネルギーを用いて制御されるように最適化される。第二の結論は、所要のシール力(すなわち、Pseal)が処理力(すなわち、Pvol)よりも緩やかな割合で増加する場合、Psealは、Pvolに後れを取り、まだ処理空間を維持することが可能である。従って、シール力を発生させるために用いられるMACバルブ944の応答時間は、処理圧力における変化と同じくらい早い必要はない。
【表1】
再び図11を参照すると、MACバルブ944は、上式1の関係に従うように制御される。例えば、MACバルブ944は、本発明に従ってPseal(すなわち、シール力)を効率的に変更するようにプログラムされ或いはMACバルブ944を制御する制御装置に連結されている。MACバルブ944は、上述したように、最終的に必要なPseal、すなわち、シール力に変換される圧力を発生させるようにプログラムされる。
【0087】
また、MACバルブ944は、ΔFが閾値ΔFthreshを下回らないように制御される。ΔFthreshは、例えば、わずかな圧力の揺れを許容し、たとえ、MACバルブ944がPvolの変化に応じてPsealをゆっくりと増加させても、処理空間が維持されることを保証する力の差分に相当する。もちろん、MACバルブ944は、処理空間980を一定に維持するのに十分素早く圧力間を切り替わるように構成されていなければならない。
【0088】
図14は、本発明の一つの実施形態のシール工程1400を示している。第一工程1401、すなわち、スタート工程では、初期化工程が実行される。図11を参照すると、第一工程1401では、ウエハーが圧盤982に配置され、処理空間980が形成される。他の初期化工程は、処理空間980内で達成される最大処理圧力を決定したり、他の処理パラメーターを算出したりすること等を含む。次に、工程1402において、処理空間980を維持するために最小力差分(ΔFthresh)が必要とされているか否かが判断される。最小力差分が必要であるときには、工程1410が実行され、さもなければ、工程1405が実行される。
【0089】
工程1410では、最小力差分が算出される。工程1405では、ΔFthreshが0lbfに設定される。なお、工程1405において、ΔFthreshが環境に適した別の値に設定されてもよい。工程1410または工程1405の後に、工程1415が実行される。
【0090】
工程1415では、ウエハーが処理空間980内で処理される。次に、工程1420において、PvolおよびPsealが読み込まれ、Psealが処理空間980を維持するように変更される。本発明の一つの実施形態では、Psealが処理空間980を効率的に維持するように上式1に従って変更される。つまり、Psealは、Pvolに遅れを取り、確実にΔF>ΔFthreshとなるようにすることによって処理空間980をまだ維持するように設定される。なお、単純化のため、図14は、工程1420が工程1415の後に実行されるように示しているが、当然のことながら、工程1420は、工程1415中、つまり、ウエハーが処理されている間に実行される。
【0091】
次に、工程1430において、ウエハーの処理が完了したか否かが判断される。処理が完了していないときには、工程1420が再び実行される。処理が完了しているときには、工程1435が実行される。工程1435では、処理空間980が非処理状態に戻り、処理空間980が開放され、ウエハーが圧盤982から取り除かれる。次に、工程1440において、処理工程が完了する。
【0092】
前述のように、Psealは、本発明に従って、工程1420を実行するようにプログラムされたMACバルブ944によって制御される。前述のように、MACバルブ944は、上式1に記載の通り、シール力に変換される圧力を発生させるようにプログラムされるか、さもなければ、制御される。
【0093】
特許請求の範囲によって定めされる本発明の意図と範囲から逸脱することなく他の様々な改良が実施形態にできることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0094】
101 処理チャンバー
110 上部要素
140 処理空間
150 下部要素
【技術分野】
【0001】
本願は、「半導体ウエハーの高圧処理チャンバー」を発明の名称とした2003年2月10日に出願された米国特許出願第10/364,284号の一部継続出願である。この「半導体ウエハーの高圧処理チャンバー」を発明の名称とした2003年2月10日に出願された米国特許出願第10/364,284号を引用することによって本明細書の記載に替えることとする。
【0002】
本発明は、処理チャンバーの分野に関する。特に、本発明は、高圧処理チャンバーを確実にシールする機構と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体素子は、素子層を形成し、処理の残留物を除去し、その他の処理工程を行う処理チャンバー内に配置されて加工される。さらに、特定の処理チャンバーは、超臨界温度で且つ超臨界圧力で半導体ウエハーをクリーニングするために用いられる。
【0004】
一般に、処理チャンバーは、上部要素と下部要素とを有する。これら二つの要素は、接合されると処理空間を形成し、処理中、この処理空間内にウエハーが入れられる。処理中においては、処理空間がシール状態にあって、処理空間が正常な動作状態、例えば、高圧状態または大気状態または超臨界状態に維持されることが非常に重要である。また、外の環境から処理空間をシールすることは、(a)処理されるウエハーがそれを使用不可能にするような混入物質に曝されず、(b)処理空間内に注入される有害な化学物質のような処理物質が周囲に放出されないことを保証する。
【0005】
処理空間は、ウエハーが処理されている間に処理空間内で発生する処理力に対抗するためにシール力を加えることによって保持されている。処理力は、上部要素と下部要素とを強制的に離し、処理空間シールを開け、処理空間を開放するように作用する。シール力は、油圧ピストンによって生じる。処理空間が処理力に関わらず維持されることを保証するために、ワークが処理される前にシール力が最大限に達成可能な処理力に設定される。この場合、達成可能な最大処理力が全く達成されなくても或いは処理サイクル全体のほんの一部でしか達成されなかったとしても、シール力は、この最大限に達成可能なレベルに維持されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第09/912,844号明細書
【特許文献2】米国特許出願第10/121,791号明細書
【特許文献3】米国特許出願第09/704,641号明細書
【特許文献4】米国特許出願第10/289,830号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような処理チャンバーには、いくつかの欠点がある。第一に、非常に長い間、達成可能な最大シール力に耐えるシール部品であっても、シール力を繰り返し受けた後には故障する傾向がある。第二に、シール面の大きな接触力が、処理空間内に持ち込まれる粒子状物質を発生させ、ウエハーを汚染する。第三に、油圧油を加圧するのに用いられる設備は、処理チャンバーをシールするために用いられ、ウエハーを処理するために用いられないので、処理機構のコストが上がる。第四に、油圧部品を超臨界処理物質を用いている超臨界部品と置き換えるように設計されることもできるこれらの機構は高価である。これらの機構は、超臨界の処理物質が再利用される前に膨張および圧縮されなければならないので、複雑なリサイクル技術が必要となる。
【0008】
従って、必要なものは、(1)処理空間を維持するために継続的な必要以上のシール力を必要とすることなく、(2)空間内に持ち込まれる混入物質の数を減らし、(3)処理空間シールを維持するための処理にすでに用いられている要素を使用し、(4)処理機構がコンパクトでより効率的に動作するために小さな付勢空間を使用する処理機構である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、最適なシールのためのアルゴリズムに追従するシール圧力を用いて処理空間を維持する半導体の処理機構を対象とする。本発明の第一の態様では、半導体処理機構は、上部要素と下部要素とシール手段とを有する。上部要素および下部要素は、接合されて処理空間を形成するように構成されている。シール付勢器は、処理空間を維持するために下部要素に対して上部要素を維持するように構成されている。さらに、シール付勢器は、処理空間内で発生する処理圧力に対して非線形に変化するようにシール付勢空洞内のシール圧力を制御するように構成されている。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、シール付勢器は、上部要素および下部要素の一方に対して負ではない最終的な力を閾値以上において最小化するように構成されている。P1がシール圧力であり、P2が処理圧力であり、A1がシール付勢空洞の断面積であり、A2が処理空間の断面積であるとした場合に、最終的な力は、式P1*A1−P2*A2に従う。好ましくは、シール付勢器は、処理サイクル中、圧力差P1−P2を略一定に維持するように構成されている。好ましくは、シール付勢器は、第一空洞とシール付勢空洞とを有する。第一空洞は、シール付勢空洞に連結されている。シール付勢器は、第一空洞内で発生する第一圧力が該第一圧力よりも大きいシール付勢空洞内の第二圧力を発生させるように構成されている。好ましくは、断面積A1は、断面積A2よりも大きい。
【0011】
別の実施形態において、処理機構は、処理空間に連結された超臨界状態を発生させる手段をさらに有する。処理機構が処理空間に連結されたCO2供給容器をさらに有してもよい。好ましくは、上部要素および下部要素は、超臨界処理チャンバーを形成する。好ましくは、シール付勢器は、下部要素に連結され且つ処理空間を維持するように構成された油圧ピストンを有する。
【0012】
本発明の第二態様において、処理空間を維持する方法は、処理空間内の処理圧力を発生させることと、処理空間を形成すると共に該処理空間を維持するためにシール圧力を制御することとを含む。処理サイクル中、シール圧力は、処理圧力に対して非線形に変化する。好ましくは、P1がシール圧力であり、P2が処理圧力であり、A1がシール付勢空洞の断面積であり、A2が処理空間の断面積であるとした場合に、シール圧力は、式ΔF=P1*A2−P2*A2による処理圧力に関連づけられる。シール圧力は、ΔFを閾値よりも大きく維持するように変化する。好ましくは、処理空間の断面積は、シール付勢空洞の断面積よりも小さい。好ましくは、処理圧力を発生する工程は、処理空間内の高圧処理流体を収容することも含む。高圧処理流体は、超臨界二酸化炭素を含む。好ましくは、シール圧力を制御する工程は、シール付勢空洞内の油圧を発生させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一つの実施形態の開位置にある処理機構の側断面図である。
【図2】本発明のシール付勢空洞および処理空間の両方を形成するために用いられるプレートの、(A)は上面図であり、(B)は側断面図であり、(C)は下面図である。
【図3】閉位置にある図1の処理機構である。
【図4】閉位置にある図1の処理機構とヨークおよびスタンドの組立体である。
【図5】開位置にある図4のすべての処理機構とヨークおよびスタンドの組立体である。
【図6】本発明の一つの実施形態の正常処理中のバランスシリンダーの側断面図である。
【図7】異常処理中の図6のバランスシリンダーである。
【図8】本発明の一つの実施形態の処理チャンバーおよび対応するバルブ組立体の側断面図および概略図である。
【図9】本発明の別の実施形態の処理チャンバーおよびそれに対応するバルブ組立体の側断面図および概略図である。
【図10】本発明の別の実施形態の処理チャンバーおよびそれに対応するバルブ組立体の側断面図および概略図である。
【図11】本発明の別の実施形態の処理チャンバーおよびそれに対応するバルブ組立体の側断面図および概略図である。
【図12】本発明の一つの実施形態の作動状態を示す圧力または力対時間のグラフである。
【図13】本発明の一つの実施形態の作動状態を示す力の差分対処理圧力のグラフである。
【図14】本発明の一つの実施形態の作動工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、素子の処理中に処理空間を効率的に維持する機構および方法を対象とする。半導体ウエハーは、処理チャンバー内で処理されるときに一連の処理温度および処理圧力を受ける。処理が正確に行われるように、つまり、半導体ウエハーが混入物質に曝されることなく処理されるように、処理空間は、処理中、密閉されてシールされた状態でなければならない。さらに、処理空間は、最低限必要な力でシールされた状態であるべきである。
【0015】
ここで用いられる処理圧力とは、素子の処理中、処理空間内に生じる圧力を言い、従って、素子の処理中に変化する。処理力とは、処理圧力によって発生し、処理空間の面に働く力を言う。シール圧力とは、シール付勢空洞(後述)内で生じる圧力を言う。シール力とは、シール圧力によって発生し、シール付勢空洞の面に働く力を言う。本発明では、シール力は、処理力と釣り合いを取り、処理空間シールを維持するために用いられる。それ故、以下に述べるように、処理空間を効率的に維持するためには、シール力は、処理力よりもわずかばかり大きいものである必要がある。処理とは、限定するものではないが、(a)半導体ウエハーになされるクリーニング、蒸着、イオン注入、あるいは、他のタイプの処理を含む様々な素子加工工程中に半導体素子になされる処理と、(b)半導体ウエハー以外の素子になされる処理とを言う。処理物質とは、処理空間内での処理に用いられる物質を言い、例えば、HCI、CO2、および、超臨界CO2を含む。処理空間が維持されている間に行われる処理を通常処理と言う。処理空間が維持されていない間に行われる処理を異常処理と言う。処理空間シールとは、処理空間を形成するために用いられるシールを言う。処理空間シールは、シール要素の接触表面と、上部要素および下部要素の一方とによって形成される。
【0016】
本発明の実施形態は、処理圧力をシール圧力と釣り合わせることによって処理空間を維持する。(a)シール付勢空洞の面の表面積が処理空間の面の表面積よりも十分に大きく、あるいは、(b)シール圧力が処理圧力よりも十分に大きいことを保証することによって、シール力は処理力よりも十分に大きくなる。こうして、処理空間シールは、シール付勢空洞を予圧することなく、最高処理力に対抗する力を作り出すために必要なシール圧力を以て維持される。従って、処理圧力は、シール力が処理力と等しいかあるいはいくらか大きくなるように、処理圧力で追従し、あるいは、変動すると言える。こうして、それら力は、処理空間シールを維持するために釣り合っている。
【0017】
従って、本発明の実施形態は、シール面の接触力が決して過度にならないので、シールの接触面の摩耗を減少させる。さらに、釣り合いの取れた力を受ける構成要素が、シール圧力のすべての力に耐えるように設計されている必要はない。構成要素は、釣り合いの取れた処理力を超えるシール力にだけ耐える必要がある。
【0018】
また、本発明の実施形態は、設備の破損を防止する。例えば、ワークまたは他の異物がそれらシール面の間に何かの事情で置かれている場合、これらシール面は、ワークまたは他の異物に処理設備を破損するような過度の力を与えることはない。シール力がこのような環境において小さいことを保証することによって、処理設備への破損量が減少する。
【0019】
また、本発明の実施形態は、シール付勢空洞がリークしあるいはシール流体で満たされていない場合のような、シール圧力が閾値以下の場合に、処理空間は、予め決められた方法で通気されることを保証する。従って、処理物質が周囲の環境に散布されない。
【0020】
さらに、本発明の実施形態は、処理空間シールを維持するために付勢されなければならないシール付勢空洞の大きさを減少させる。シール圧力が処理圧力を大きく超えるというよりはむしろ釣り合うために、シール付勢空洞に作用する最終的な力が減少するので、他の実施形態はシール付勢空洞の大きさを減少させる。従って、処理空間をより効率的に維持することができる。
【0021】
図1は、本発明の一つの実施形態による処理組立体100の断面図を示している。図1は、後述するように、半導体ウエハーを処理組立体100に挿入したり処理組立体100から取り除いたりすることができる開位置にある処理組立体100を示している。処理組立体100は、処理チャンバー101に連結されたバランスシリンダー170を有する。以下で詳細に述べるように、バランスシリンダー170は、(a)通常処理中に処理空間140をしっかりとシールする(すなわち、維持する)ことと、(b)シール付勢空洞内に臨界圧力が維持されていないときに処理チャンバー101を通気して処理を一時中断することとの両方を保証する。
【0022】
バランスシリンダー170は、シリンダーキャビティを上部槽171と下部槽173とに分割するピストン172を有する。ピストン172のハウジングは、通風孔175を有する。そして、通風孔175は、ピストン172が図1の矢印1で示す方向に十分な距離をスライドしたときに下部槽173が通風孔175を通して通気されるように下部槽173に配置されている。上部槽171は、第一パイプ180の第一端部に接続される開口を有する。下部槽173は、第二パイプ181の第一端部に接続される開口を有する。さらに、バランスシリンダーは、第一端部および第二端部を有するパイプ190を受け入れるように構成されている。第一端部は、下部槽173内にあって、外側の供給源と下部槽173との間で流体の連通を可能にしている。
【0023】
処理チャンバー101は、上部要素110と下部要素150とを有する。上部要素110は、該上部要素110の内部空洞をシール付勢空洞115と上部処理空洞116とに分割するプレート120を有する。また、上部要素110は、パイプ180の第二端部がシール付勢空洞115に作用関係をもって連結されるようにしてパイプ180を収容するように構成されている。このようにして、シール付勢空洞115は、上部槽171に連通している。さらに、後述のように、好ましくは、シール付勢空洞115と上部槽171とによって形成される空間は隔離されている。
【0024】
また、上部要素110は、パイプ181の第二端部が上部処理空洞116に連通するようにしてパイプ181を収容するように構成されている。プレート120は、上部要素110の内部空洞内でスライド可能に取り付けられており、ピストンシール125を有する。従って、図1に示すように、プレート120が矢印1方向にスライドすると、シール付勢空洞115の容積が減少し、上部処理空洞116の容積が増加する。図1に示されているように、プレート120の断面は、逆さのU字型である。逆U字型の端部は、以下に詳述するOリングのようなシール要素131を含むシール面130である。下部要素150は、圧盤155に連結された上面156を有する。
【0025】
図2は、それぞれ、プレート120の(A)上面図、(B)側断面図、(C)下面図を示している。図2(A)は、シール付勢空洞115から見たプレート120を示している。また、図2(A)は、シール付勢空洞115の表面を形成するプレート120の外面135を示している。外面135は、半径134とそれに相当する表面積とを有する。図2(B)は、プレート120の側断面図を示している。また、図2(B)は、プレート120の断面が逆U字型を有することを示している。また、図2(B)は、プレート120の内面136の半径を矢印132によって表している。内面136は、処理機構100が閉位置にあるときに処理空間140(図3)の表面を形成する。また、図2(B)は、シール面130と、該シール面130のシール溝内に収容されたシール要素131とを示しており、両方とも以下に詳述する。図2(C)は、図3の処理空間140から見たプレート120の下面図を示している。図2(A)から図2(C)に示すように、内面136と外面135とは、プレート120のそれぞれ反対側の面である。好ましくは、図2(A)から図2(C)に示すように、半径134で示された外面135の表面積は、矢印132で示された内面136の表面積よりも大きい。一つの実施形態ではあるが、内面136と外面135とは、両方とも略平面である。
【0026】
もちろん、図2(A)から図2(C)は、プレート120を円形で示しているが、プレート120は、他の幾何学的な形状であっても非幾何学的な形状であってもよい。さらに、図2(A)から図2(C)は、プレート120上に配置されたシール要素131およびそれに対応するシール溝(図示略)を円形の形で示しているが、当然のことながら、シール要素131およびそれに対応する溝が他の幾何学的な形状であっても非幾何学的な形状であってもよいし、処理機構100内の他の構成要素に配置されていてもよい。例えば、シール要素131とそれに対応する溝を下部構成要素150(図1)の表面156上、圧盤155(図1)上、あるいは、他の場所に配置することも可能である。
【0027】
作動時には、図3に示したように、処理されるべき半導体ウエハー(図示略)が圧盤155上に配置され、後述するように、上部要素110と下部要素150とが処理空間140を形成するように接合されている。このとき、処理組立体100は、閉位置にある。処理空間140は、プレート120の内面136とシールリング131と上面156の一部とによって形成されている。圧盤155は、処理空間140内に収容されている。以下に詳述するように、プレート120、したがって、シールリング131を下部要素150の上面156に押し付ける圧力をシール付勢空洞115内に発生させ、これにより、処理空間シールを形成することによって処理空間140が維持される。このとき、半導体ウエハーを処理するために処理物質が処理空間140内に注入される。なお、限定するものではないが、本発明では、クリーニング工程、蒸着工程、または、その他の半導体加工工程にて使用される真空処理、低圧処理、大気圧処理、高圧処理、および、超臨界処理を含む処理方法の幾つか或いはこれらの組合せを使用して半導体ウエハーを処理してもよい。
【0028】
また、図3は、処理中に処理空間140を維持するのを補助するために下部要素150に上部要素110をしっかりと連結する付加的なクランプの役割を果たすヨーク188(図4)の断面185A−Bおよび186A−Bを示している。また、図3は、処理チャンバー101の片側を共に固定するヨーク188の左上部アーム185Aおよび左下部アーム185Bと、処理チャンバー101の反対側を共に固定するヨーク188の右上部アーム186Aおよび右下部アーム186Bとを示している。左上部アーム185Aと左下部アーム185Bとは、左アーム185(図4)の一部を形成する。右上部アーム186Aと右下部アーム186Bとは、右アーム186(図4)の一部を形成する。
【0029】
図4は、処理チャンバー101とヨーク188と処理組立体100(図1)を支持するために用いられるスタンド組立体250とを示している。また、図4は、閉位置にある図3の処理チャンバー101を示している。単純化のため、図4および図5は、バランスシリンダー170、または、パイプ180、l81、190を示していない。また、図4は、上部要素110を下部要素150にしっかりと連結するためにヨークアーム185,186が処理チャンバー101周りでどのように合体させているかを示している。ヨーク188は、当業者に公知の様々な構造を有する。例えば、ヨークアーム185、186は、それらが図4の矢印2に示す方向に移動したときに上部要素110と下部要素150とが互いに向かって押されて固定されると共にヨークアーム185、186が矢印3に示す方向に移動したときに上部要素110と下部要素150とが分離することができるように楔形にされている。
【0030】
なお、上部要素110を下部要素150によりしっかりとクランプするためにヨーク以外の構造を用いてもよい。処理中に上部要素110を下部要素150にしっかりと連結する付加的な構造を提供するために、例えば、上部要素110および下部要素150の一方に配置されるTボルトと上部要素110および下部要素150の他方に配置されるナットとを用いてもよい。
【0031】
また、図4は、ベース209と、該ベース209に連結されており且つヨーク188の高さとそれに取り付けられた処理チャンバー101の高さとを調節可能なようにヨーク188がスライド可能に取り付けられている下方延長部207と、上部要素110を下部要素150に対して固定された状態にするために処理チャンバー101の中央に追加の力を共に与えるクランプ201および重り203と、これらクランプ201および重り203を着脱可能にする上方延長部205とを有するスタンド組立体を示している。
【0032】
図5は、ヨーク188およびスタンド組立体250と開位置にある図4の処理チャンバー101とを示している。図5では、重り203がクランプ201から持ち上げられており、クランプ201がヨーク188から持ち上げられており、ヨーク188が矢印3で示す方向に移動することによって処理チャンバー101から取り外されている。半導体ウエハーを処理チャンバー101内に挿入したり処理チャンバー101から取り除いたりすることができるように、上部要素110は、下部要素150から離されている。
【0033】
本発明の一つの実施形態の動作を説明するために再び図3を参照する。作動中、半導体ウエハー(図示略)は、圧盤155の上に置かれる。上部要素110が下部要素150と接合され、上部要素110を下部要素150にしっかりと保持するためにヨークアーム185A−Bおよび186A−Bが配置される。次に、水のような非圧縮性流体あるいは略非圧縮性流体のようなシール物質がバランスシリンダー170の上部槽171内に注入され、そして、シール付勢空洞115内へ流れる。もちろん、油のような他の非圧縮性流体をシール物質として用いてもよい。さらに、非圧縮性若しくは略非圧縮性の流体以外のシール物質を本発明に従って用いてもよい。もちろん、非圧縮性流体あるいは略非圧縮性流体を処理前、例えば、半導体処理機構100が開位置にあるときの何時に注入してもよい。
【0034】
次に、処理物質が下部槽173内に注入される。処理物質は、例えば、ドライクリーニング、ウェットクリーニング、超臨界クリーニング、あるいは、他のクリーニング方法で用いられるクリーニング物質である。あるいは、処理物質は、半導体素子または非半導体素子を処理するために用いられる物質でもよい。本発明の一つの実施形態において、クリーニング物質は、後に超臨界状態になって処理空間140内の半導体ウエハー表面からフォトレジストの残留物を取り除くために用いられるCO2である。CO2は、例えば、パイプ190を通じて下部槽173内に注入され、その後、蓋をされる。そして、CO2は、パイプ181を通じて処理空間140内に移動する。それから、CO2は、処理空間140内に入ると超臨界状態になって超臨界CO2を形成する。そのとき、超臨界CO2は、処理空間140の至る所に循環して圧盤155上の半導体ウエハーの残留物を取り除く。
【0035】
超臨界チャンバーの作用と超臨界CO2の使用は、「半導体ウエハーを処理するための超臨界処理チャンバー」を発明の名称とした2001年7月24日に出願された特許文献1と、「流れ促進特性を有する半導体基板の高圧処理チャンバー」を発明の名称とした2002年4月10日に出願された特許文献2と、「ワークの超臨界処理の方法と装置」を発明の名称とした2000年11月1日に出願された特許文献3とに記載されており、引用することによって本明細書の記載に替えることとする。
【0036】
前述のように、本発明は、処理空間140(図3)が処理中に維持されることを保証する。図6は、処理空間140(図3)が維持されている時、つまり、通常処理中のバランスシリンダー170を示している図1および図3のバランスシリンダー170の詳細な概略図である。以下に詳述するように、図6および図7を参照すると、半導体素子が処理空間140内で処理されている間に処理空間140が維持されることを保証するために、バランスシリンダー170が用いられている。図6に示すように、上部槽171には、水または油のような非圧縮性流体177が入っている。非圧縮性流体177は、パイプ180を通って流れ、そして、完全にあるいは部分的にシール付勢空洞(例えば、図3に符号115で示されている空洞)を満たす。好ましくは、上部槽171とシール付勢空洞(図3に符号115で示されている空洞)とによって形成された空間は、隔離されている。また、好ましくは、超臨界状態になることが可能なクリーニング液178がパイプ190内に注入され、それによって、完全にあるいは部分的に下部槽173を満たし、そして、閉じた処理チャンバー101の処理空間140内に注入される。処理中、クリーニング液178は、処理空間140内の半導体ウエハーがクリーニングされるように超臨界状態になる。もちろん、流体を注入して該流体を超臨界状態または他の処理状態にする工程は、複数の処理サイクルにおいて何度も行われる。作動中に、ピストン172は、開口175を塞ぐように配置される。
【0037】
バランスシリンダー170は、処理空間140がしっかりとシールされることを保証する。このことは、処理空間140内の処理圧力をシール付勢空洞115内のシール圧力と釣り合わせることによって達成される。一例として、図3および図6において、処理圧力がシール圧力よりも大きいとする。ここで、シール付勢空洞115がパイプ180を介して上部槽171に連通しているので、これら両方の圧力は等しく、処理空間140がパイプ181を介して下部槽173に連通しているので、これら両方の圧力は等しい。従って、処理圧力がシール圧力よりも大きい場合、ピストン172は、矢印4(図6)で示す方向に押しやられる。ここで、上部槽171とシール付勢空洞115とによって形成される空間が隔離されているので、矢印4の方向へのこの動きは、シール圧力を増加させ、処理圧力を減少させる。これは、処理圧力がシール圧力に等しくなるまで、または、釣り合うまで続く。同様に、処理圧力がシール圧力より小さい場合、ピストン172が矢印5(図6)で示す方向に押され、シール圧力を減少させ、処理圧力を増加させる。この場合もやはり、この押圧は、上部槽内の流体が非圧縮性流体または略非圧縮性流体であるので、処理圧力がシール圧力に等しくなるまでまたは釣り合うまで続く。従って、処理圧力は、シール圧力と釣り合い或いは追従し、シール圧力が最大限に可能な処理圧力に予圧される必要はない。
【0038】
図7は、適切な圧力がシール付勢空洞115内に維持されていないとき、つまり、異常処理中の図6のバランスシリンダー170の詳細な概略図である。これは、いくつかの原因のため起きる可能性がある。例えば、シール付勢空洞115がリークして上部槽171から受け取る非圧縮性流体177を保持できない場合である。あるいは、上部槽171、従って、シール付勢空洞115が、何かの事情によって非圧縮性流体177で満たされていない場合である。いずれにしても、シール付勢空洞115内の圧力が十分でない(つまり、シール圧力が閾値圧力を下回っている)と、半導体クリーニング処理が損なわれる。また、処理空間140が維持されていないので、処理中、処理物質178が処理空間140(図3)からリークし、半導体ウエハーを汚染してしまう外部粒子が処理チャンバーに入るかもしれない。本発明の実施形態はこれが発生しないことを保証する。
【0039】
図7に示すように、シール圧力が閾値を下回ると、ピストン172が矢印4で示す方向に移動する。すると、ピストン通風孔175が下部槽173に位置し、処理物質178が通風孔175を通じて排出され、支障なく、容器(図示略)、外気、あるいは、貯蔵可能な他の容器に送られる。従って、処理物質178が処理空間140に入らず、半導体処理が損なわれることはない。さらに、この通気処理が素子の処理を停止させたり一時停止させたりするために用いられる信号を送信してもよい。
【0040】
図8〜図10は、低圧チャンバー内で低い圧力を受け、それを増大させて大きいシール圧力を生成する増圧器を有する実施形態を示している。従って、図8〜図10の実施形態は、シール圧力を生成するために比較的小さい圧力を発生させてこれを維持することを要求している。それ故に、これら実施形態は、処理空間を維持するのに少ないエネルギーと小さいスペースがあればよいので、より効率的である。
【0041】
例えば、水のような非圧縮性流体を必要なシール圧力に圧縮するのに増圧器を用いることによって、高圧油圧機器の必要性がなくなる。増圧器の圧力は、超臨界処理流体が増圧器に入ったときに気相に拡張するように十分低く選択される。超臨界処理流体が気相に拡張するとその密度は減少し、増圧器によって非圧縮性流体を所要のシール圧力に圧縮するために必要とされる臨界処理流体の体積は、増圧が用いられない場合よりも小さい。このような構造は、処理空間シールを維持するために処理機構内に注入されなければならない臨界処理液体のコストを削減し、従って、処理機構の効率を増加させる。
【0042】
図8は、本発明の一つの実施形態の処理チャンバーとそれに関連したバルブ組立体とを有する処理組立体300の側断面図および概略図である。処理組立体300は、処理チャンバー700と、CO2供給容器360と、シールリーク検出器340と、水容器320と、排出口321と、空気作動バルブ323、324、325、330、342、343と、水フィルター322と、圧力比安全バルブ341と、電子制御装置350と、圧力変換器370、375と、セットポイント信号源379と、通風孔362、371と、圧力調整器352と、圧力リリーフバルブ331とを有する。一つの実施形態として、電子調整器350は、ミネソタ州エルクリバーのテスコムコーポレーションによって製造されたER3000のような電子圧力制御装置である。
【0043】
処理チャンバー700は、上部要素302と下部要素304とを有する。上部要素302は、内面301を有する。下部要素304は、上部空間406とシール付勢空洞410と増圧器908とを有する。また、下部要素304は、ワーク受台305を収容する。ワーク受台305は、上部空間406に収容された圧盤306とシール付勢空洞410内に収容されたベース980とを備える。圧盤306は、ワーク受台305が矢印6の方向である上方と、矢印7の方向である下方にスライドできるように、ネック315にスライド可能に取り付けられたステムを有する。また、圧盤306は、シール要素520を含む。好ましくは、シール要素520は、Oリングのようなガスケットを有する。説明を簡略化するために、他の構成要素に対するシール要素520の高さは誇張されている。さらに、図8は、圧盤306上にある半導体ウエハー400を示している。
【0044】
図8に示すように、水容器320は、空気作動バルブ323に連結され、この空気作動バルブ323は、水フィルター322に連結されている。水フィルター322は、空気作動バルブ325に連結され、この空気作動バルブ325は、シール付勢空洞410に連結されている。排出口321は、空気作動バルブ325に連結され、この空気作動バルブ324は、シール付勢空洞410に連結されている。シールリーク検出器340は、ネック315とピストンシール809とに連結されている。圧力比安全バルブ341は、処理空間510と、通風孔362と、空気作動バルブ343と、増圧器908とに連結されている。圧力リリーフバルブ331は、通風孔371と、空気作動バルブ330と、圧力変換器375と、圧力調整器352とに連結されている。空気作動バルブ330は、増圧器908と、通風孔371と、圧力リリーフバルブ331と、圧力変換器375と、圧力調整器352とに連結されている。電子調整器350は、セットポイント信号源379と、圧力変換器375と、圧力調整器352とに連結されている。CO2供給容器360は、圧力調整器352と、空気作動バルブ343を介して処理空間510とに連結されている。圧力変換器370は、空気作動バルブ342によって通風孔362と圧力比安全バルブ341とに連結されている。
【0045】
増圧器908は、低圧チャンバー705と、低圧チャンバー705の断面積よりも小さい断面積を備えるネック303と、低圧チャンバー705内に収容されたベース392およびネック303内に収容されたヘッド391を備えるピストン310と、ピストンシール809とを有する。ネック303がシール付勢空洞410に連通しているので、ヘッド391が矢印6の方向である上方に移動すると、シール付勢空洞410内の圧力が増加する。好ましくは、ベース392の断面積は、ヘッド391の断面積よりも大きい。
【0046】
図8は、閉位置にある処理チャンバー700を示している。処理空間510は、内面301と、シール要素520と、圧盤306の内面とによって形成される。図8に示すように、シール要素520は、好ましくは、処理空間510の断面積が圧盤306の断面積よりも小さくなるように圧盤306内に配置される。従って、処理空間シールは、内面301とシール要素520とによって形成されている。
【0047】
ベース980が上方へ移動すると、処理組立体300を閉位置にするようにシール要素520が内面301に押しつけられる。閉位置では、処理空間510が形成される。ベース980が下方へ移動すると、処理組立体300を開位置にするようにシール要素520が内面301から離される。開位置では、処理空間510が解放されて半導体ウエハー400を圧盤306上に挿入したり圧盤306から取り除いたりすることができる。
【0048】
以下に詳細に述べるように、処理組立体300が開位置にあるときに半導体ウエハーが圧盤306上に配置される。そして、ワーク受台305、ひいては、圧盤306を矢印6の方向に動かすためにシール物質がシール付勢空洞410内に注入される。このとき、処理機構300は、閉位置となる。それから、半導体ウエハーが処理空間510内で処理されている間に処理空間シール(ひいては、処理空間510)が維持されることを保証するために増圧器908が用いられる。処理が完了すると、処理機構300を開位置に動かすためにシール物質がシール付勢空洞410から取り除かれる。そして、半導体ウエハーが圧盤306から取り外される。もちろん、半導体ウエハー以外の素子も本発明に従って処理することができる。
【0049】
作動中、処理組立体300は、低圧水を水容器320からシール付勢空洞410内に注入することによって閉位置とされる。低圧水は、水容器320から、空気作動バルブ323と水フィルター322とパイプ915および918と、空気作動バルブ325とパイプ916とを通してシール付勢空洞410内へ移動する。また、低圧水は、ヘッド391とベース980との間のシール付勢空洞410に入る。低圧水は、シール付勢空洞410内に流入するとベース980を上方へ移動させると共にヘッド391を下方へ移動させる。ベース980を上昇へ移動させることで、シール要素520を上面301に押し付け、それによって、処理空間510を形成する。このとき、処理組立体300は、閉位置にある。圧盤306が処理空間510を形成するために上方へ移動し、ヘッド391がその限界まで(例えば、ピストンシール809に接するまで)下方に移動したことを位置センサー(図示略)が検知すると、空気作動バルブ323、325が閉じてこのとき低圧水で満たされているシール付勢空洞410を隔離する。
【0050】
低圧水のような低圧物質を用いることで、シール付勢空洞410を素早く満たすためには比較的小さなエネルギー量があればよい。すなわち、水が低圧でシール付勢空洞410内に流入するので、水を供給する構成要素は、高圧水を移送したり保持したりすることを必要としない。従って、処理組立体300は、シール付勢空洞410を満たして処理空間510を形成するために高圧設備を用いている処理組立体よりも効率的に動作する。
【0051】
処理組立体300が閉位置になると、低圧のCO2ガスがCO2供給容器360から低圧チャンバー705内へ注入される。CO2ガスは、CO2供給容器360から圧力調整器352を介し、パイプ901C、空気作動バルブ330、パイプ901Aを通って低圧チャンバー705内へ移動する。CO2ガスを低圧チャンバー705内へ注入することは、ピストン310上にベース392、ひいては、ヘッド391を矢印6の方向である上方に押す力を及ぼす。ヘッド391上の低圧水は、隔離されているのでシール付勢空洞410から外へ流出することはない。そして、低圧水は、圧縮された状態になり、ヘッド980、ひいては、圧盤306を上方に押し、内面301にシール要素520を押し付け、処理空間510を維持する。
【0052】
次に、素子の処理工程中、CO2が処理空間510内に注入され、それ故、処理圧力が増加する。CO2は、CO2供給容器360から空気作動バルブ343を介してパイプ900Aを越えて処理空間510内に移動する。また、セットポイント信号源379は、所要の処理圧力と等しい処理圧力セットポイントにセットされる。また、圧力変換器370は、処理圧力を監視する。圧力変換器370は、処理圧力が処理圧力セットポイントに等しいと検知すると、処理空間510内へのCO2の流れを停止するために空気作動バルブ343に送信される信号を発する。
【0053】
このとき、処理圧力が望ましい作動圧力にセットされ、半導体ウエハーが処理可能となる。処理圧力によって発生する処理力は、今述べたようなシール力によって釣り合っている。
【0054】
圧力変換器370は、理圧力を監視し、関連する処理信号を電子制御装置350に送信する。また、圧力変換器375は、低圧チャンバー705内で生じる増圧器の圧力を監視し、関連するシール信号を電子制御装置350に送信する。これら処理信号およびシール信号が処理圧力がシール圧力よりも大きいことを示す場合、電子制御装置350は、圧力調整器352に信号を送信する。このとき、圧力調整器352は、CO2をCO2供給容器360から低圧チャンバー705に送り、従って、増圧器圧力、ひいては、シール圧力を増加させる。
【0055】
また、電子制御装置350は、処理圧力セットポイントが変化したときにシール力が処理力と釣り合うことも保証する。例えば、低い処理圧力が望ましい場合、処理圧力セットポイントを減少させることが可能である。空気作動バルブ342は、処理圧力を減少させるために開くことができる。圧力変換器370は、この処理圧力の低下を検知し、処理信号を電子制御装置350に送信する。そして、電子制御装置350は、圧力調整器352を稼働させ、通風孔362を介して低圧チャンバー705を通気し、それ故、増圧器圧力が減少する。通気は、シール力が処理力と等しくなるまで続けられる。
【0056】
処理空間510内の処理が完了すると、処理組立体300が開位置とされる。このことは、シール付勢空洞410内の低圧水をパイプ916および917と空気作動バルブ324とを介して排出口321から外へ排出することによって達成される。もちろん、空気作動バルブ323、324、325の動作は、(a)処理組立体300を開位置とするためには低圧水が水供給容器320からシール付勢空洞410内へ移動され、(b)処理機構300を閉位置とするためには低圧水がシール付勢空洞410から排出口321を介して外へ移動されるように調整されていなければならない。
【0057】
処理中、CO2は、半導体ウエハー400の表面をクリーニングするために処理空間510内で循環する。その後、空気作動バルブ343が開かれて、処理空間510内で用いられたCO2がCO2供給容器360に戻され、その後に続く処理工程に用いられる。なお、CO2は、一つ又は複数の処理サイクルにおいて、単独で処理空間510内を循環せしめられてもよいし、他の処理物質と組み合わされて処理空間510内を循環せしめられてもよい。
【0058】
圧力比安全バルブ341は、図1および図6のバランスシリンダー170と同様に機能する。圧力比安全バルブ341は、ピストン333を有する。ピストン333は、増圧器908によって増圧された増圧器圧力が処理力に等しい又は略等しいシール力を生成して処理空間510を維持するように、移動して処理圧力と増圧器圧力とをきめ細かく釣り合わせる。低圧チャンバー705内の圧力がこの値(低圧ポイント)を下回ると、処理空間510は、パイプ900A、900B、900Cを介して通風孔362を通って外へ通気される。従って、圧力比安全バルブ341は、処理力をシール力と釣り合わせるためにバルブ組立体を補完して処理空間510を維持する。
【0059】
次に、処理組立体300の安全機構について説明する。圧力リリーフバルブ331は、増圧器圧力が閾値圧力を絶対に超えないことを保証している。増圧器圧力が閾値圧力を超えた場合、圧力リリーフバルブ331が開いてパイプ901A、901C、901D、902を介して低圧チャンバー705を通風孔371から外へ通気する。シールリーク検出器340は、ピストンシール809およびネック315を監視する。いずれかにリークが発生したとき、シールリーク検出器340は、例えば、点滅光を稼働してオペレータに警告したり、処理組立体300を機能停止させて処理を中断したり、あるいは、他の措置を講じたりする予防措置を取ることができる。
【0060】
図9は、本発明の別の実施形態の処理組立体400の側断面図および概略図を示している。処理組立体400は、該処理組立体400が圧力調整器801、802を制御するために電子圧力制御装置800を用いているという点で図8の処理組立体300と異なる。図8と比較すると、同じ参照符号を付した要素は同じ機能を果たす。処理組立体400は、圧力変換器380と、電子圧力制御装置800と、圧力調整器801、802と、セットポイント信号源810とを有する。圧力変換器380は、処理空間510と電子圧力制御装置800と圧力調整器801とに連結されている。電子圧力制御装置800は、セットポイント信号源810と圧力調整器801、802とに連結されている。
【0061】
電子圧力制御装置800は、処理圧力と増圧器圧力との両方を制御する。また、電子圧力制御装置800は、圧力調整器801および802を制御するためにセットポイント信号源810によって決定されたセットポイントを用いる。圧力調整器801は、処理圧力を制御し、圧力調整器802は、増圧器圧力を制御する。処理空間510内の圧力が処理セットポイントを超えた場合、処理組立体400は、処理空間510と低圧チャンバー705との両方を通気する。電子圧力制御装置800は、図8に示された構造を以て可能であるよりもさらに持続的かつ正確な処理圧力の制御を可能にする。
【0062】
図10は、本発明の別の実施形態の処理組立体500の側断面図および概略図を示している。処理組立体500は、該処理組立体500が増圧器圧力を制御する圧力調整器902を制御するために電子圧力制御装置900を用いているという点で図8の処理組立体300と異なる。図8と比較すると、同じ参照符号を付した要素は同じ機能を果たす。処理組立体500は、圧力変換器385と、電子圧力制御装置900と、圧力調整器901、902と、セットポイント信号源909とを有する。圧力変換器385は、処理空間510と圧力調整器901と電子圧力制御装置900とに連結されている。また、電子圧力制御装置900は、セットポイント信号源909と圧力調整器902とに連結されている。圧力調整器901は、CO2供給容器360と、処理空間510と、通風孔362と、圧力比安全バルブ341と、低圧チャンバー705と、空気作動バルブ330とに連結されている。圧力調整器902は、CO2供給容器360と空気作動バルブ330と圧力リリーフバルブ331とに連結されている。
【0063】
電子調整器900は、セットポイント信号源909からの外部セットポイントを用いる。また、電子圧力制御装置900は、圧力調整器902に信号を送り、増圧器圧力を制御する。増圧器圧力が上昇して処理圧力から生じる力との釣り合いを取るための力を発生すると、処理圧力をシール圧力に追従させるために、増圧器908から圧力信号が圧力調整器901に送信される。処理圧力は、電子圧力制御装置900に連結された圧力変換器385によって監視される。
【0064】
さらに別の実施形態(図示略)では、外部セットポイントに応答する電子圧力制御装置を備える圧力調整器は、処理圧力を監視し、シール圧力を制御する圧力調整器を調節する。その調節によってシール圧力が処理圧力を追従することが保証される。
【0065】
図11は、本発明の別の実施形態の処理機構600の側断面図および概略図を示している。処理機構600は、上板921および下板922を備える処理チャンバー920と、ピン位置センサー925と、複数のピン(図示略)を備える圧盤982と、ワーク受台位置センサー926と、ピストン965に連結されたワーク受台981と、差圧スイッチ932と、圧力スイッチ933と、シール付勢器950、増圧器975と、入力部9440、9441、9444および出力部9442、9443を備える圧力調整器ユニット944と、空気作動バルブ952と、圧力変換器930、931、934と、圧力リリーフバルブ945、947、968と、フィルター961と、ソレノイドバルブ960と、出力部9510および入力部9511、9512を備えるソレノイドバルブ951と、流方向制御装置966と、通気孔971と、油圧油容器967と、圧縮空気供給器972、999と外部セットポイント946とを有する。
【0066】
上板921および下板922は、圧盤982を入れる処理空間980を形成する。また、上板921は、処理空間980の一部を形成する内面989を有する。圧盤982は、処理空間980内で処理される半導体ウエハー(図示略)のようなワークを支持する。ピストン965は、面9502を備えるヘッド962を有する。ヘッド962は、後述するように内部空洞9501内に収容されている。
【0067】
流方向制御装置966は、チェックバルブ963とニードルバルブ964とを有する。増圧器975は、低圧チャンバー942と、高圧チャンバー941と、低圧チャンバー942を高圧チャンバー941に連結するピストン943とを有する。また、増圧器975は、低圧チャンバー942に連結された入力部9750と高圧チャンバー941に連結された出力部9751とを有する。図8の増圧器908と同様に、入力部9750で生じる低圧は、出力部9751で生じる高圧に変換される。一つの実施形態では、空気圧制御装置944は、ジョージア州30087、ストーンマウンテン、センターパークコート2220にあるTSIソリューションから販売されているMAC PPC93Aを含む。また、一つの実施形態では、フィルター961は、3ミクロンフィルターである。
【0068】
増圧器975の出力部9751は、流方向制御装置966に連結され、チェックバルブ963の入力部とニードルバルブ964の入力部とに連結されている。流方向制御装置966の出力部、ひいては、チェックバルブ963の出力部およびニードルバルブ964の出力部は、圧力リリーフバルブ945に連結されている。圧力リリーフバルブ945は、フィルター961およびソレノイドバルブ960に連結されている。ソレノイドバルブ960の出力部は、フィルター961に連結されている。フィルター961は、低圧の油圧油を供給するために用いられる油圧油容器967に連結されている。ソレノイドバルブ960の出力部は、差圧スイッチ932およびシール付勢器950に連結されている。シール付勢器950の内部空洞9501(シール付勢空洞)は、ソレノイドバルブ951の出力部9510に配管されることによって連結されている。また、圧力リリーフバルブ961は、パイプに連結されている。ソレノイドバルブ951の第一出力部9511は、空気作動バルブ952の出力部に連結されている。空気作動バルブ952の入力部は、圧縮空気供給器972に連結されている。ソレノイドバルブ951の第二出力部9521は、通風孔971に連結されている。
【0069】
図11に示すように、処理空間980は、圧力変換器931および差圧スイッチ932に連結されている。圧力調整器ユニット944の第一入力部9440は、圧力変換器931に連結され、圧力調整器ユニット944の第二入力部9441は、外部セットポイント946に連結され、圧力調整器ユニット944の第三入力部9444は、圧縮空気供給器999に連結されている。圧力調整器ユニット944の第一出力部9442は、圧力リリーフバルブ947および通風孔(図示略)を介して外気に連結されている。圧力調整器ユニット944の第二出力部9443は、増圧器975の入力部9750に連結されている。圧力リリーフバルブ947は、パイプによって増圧器975の入力部9750に連結され、同様に圧力変換器934にも連結されている。圧力変換器は、空気作動バルブ947と増圧器975の入力部9750の間の圧力を監視するために用いられる。
【0070】
作動中、ワーク(図示略)は、圧盤982の表面から延びるピン(図示略)に配置される。また、ワークは、ピンを引っ込めることによって圧盤982の表面に配置され、その後、ピンを伸ばすことによって表面から取り除かれる。ピンと圧盤の表面との関係は、ピン位置センサー925によって監視される。ピンの使用は、例えば、「リフト機構を有する半導体ウエハーの高圧互換バキュームチャック」を発明の名称とした2002年11月6日に出願された特許文献4に記載されており、これを引用することによって本明細書の記載に替えることとする。
【0071】
次に、図8の処理組立体300に関して前述したように、処理チャンバー920を閉じるために、低圧油が、油圧油容器967から空気作動バルブ960の入力部を介してシール付勢空洞9501内へ送られる。次に、ワークを処理するために、超臨界CO2のような処理物質が処理空間980内に注入される。処理空間980内の圧力(処理圧力)が圧力変換器931によって電気信号へ変換される。電気信号は、圧力調整器ユニット944に送信され、対応する圧力のような機械的な出力信号を発する。通常作動中、機械的出力信号は、増圧器975の入力部9750に送信される。そして、増圧器975は、その出力部9751に高圧出力を発生させる。図8の処理組立体300に関して前述したように、処理チャンバー920をシールするために、高圧出力は、流方向制御装置966を介してシール付勢空洞9501へ送られる。
【0072】
異常作動中、流方向制御装置966の出力部をフィルター961、ひいては、油圧油容器967に作用上の関係をもって連結するために圧力リリーフバルブ945が用いられる。あるいは、異常処理中、流方向制御装置966の出力部を油圧油容器967に作用上の関係をもって連結するためにソレノイドバルブ960が用いられてもよい。
【0073】
圧力リリーフバルブ947は、入力部9750の圧力が設定値に達すると増圧器975の入力部9750を通気するように、増圧器975の低圧側でのフェイルセーフ機構として機能する。また、圧力リリーフバルブ945は、出力部9751の圧力が設定値に達すると増圧器975の出力部9751を通気するように、増圧器975の高圧側での同様の機能を果たす。
【0074】
ワークが処理空間980内で処理されているときに、処理圧力が圧力変換器931によって圧力調整器ユニット944に送信される電気信号に変換される。すると、圧力調整器ユニット944は、増圧器975の入力部9750に送られる低圧を発生させる。低圧は、増圧器975の入力部9750に送られたときに出力部9751に発生する高圧に変換されて処理力に略等しいシール力を発生させる圧力である。作動中、圧力調整器ユニット944は、外部セットポイント946を圧力変換器931からの電気(フィードバック)信号と比較する。外部セットポイント946がフィードバック信号よりも小さい場合、圧力調整器ユニット944は、圧力リリーフバルブ947を介して増圧器975を外気に通気する。外部セットポイント946がフィードバック信号よりも大きい場合、圧力調整器ユニット944は、圧縮空気を圧縮空気供給器999から圧力調整器ユニット944の入力部9444に送り、出力部9443を介して増圧器975の入力部9750内へ送る。このようにして、シール力は処理力に追従して調整される。
【0075】
もちろん、圧力リリーフバルブ945、947、968は、構成要素間に伝達される圧力が決して既定値を超えないことを保証している。また、圧力変換器930、934は、処理機構600内で用いられるパイプに沿って圧力を表示し、監視するために用いられている。
【0076】
また、本発明の他の構成は、処理圧力とシール力との間の関係を有効に使うことによって、図11の処理空間980のような処理空間を効率的に維持するためにも使用可能である。本発明の一つの実施形態は、処理圧力を処理力に関連づける式を用い、最低限のシール力を算出するためにその式を用いる。この最小値にシール力を制限することによって、処理空間は、最低限必要とされるエネルギーを有効に用いることで維持される。
【0077】
(1)プレートの第一面の断面積とプレートの第二面の断面積とが異なり、(2)第一面に働く圧力と第二面に働く圧力との間の圧力差が一定である場合、(3)プレート上の最終的な力は一定でなく可変であると考えられる。従って、例えば、圧力P1が断面積A1の第一面に生じ、圧力P2が断面積A2の第二面に生じる場合、プレート上の最終的な力(ΔF)は、式1によって与えられる。
ΔF=P1*A1−P2*A2 …(1)
ここで、ΔFは、プレートの片側の、プレートの反対側よりも大きい割増力に相当する。プレートが完全に釣り合っている場合、ΔFは、0に等しい。もちろん、プレートが処理空間を形成するために用いられる場合には、プレートを釣り合わせることによって(すなわち、ΔF>0を保つことによって)処理空間が維持される。ΔFが0よりも大きい場合、処理空間は、必要以上の余分で不必要なエネルギーを必要とする大きい力を用いて維持されている。
【0078】
式1を再び参照すると、A1がA2に等しい場合、ΔFは、A1*(P1−P2)に等しく、したがって、圧力差P1−P2(=ΔP)が一定である場合、ΔFは、一定である。ΔPが一定でない場合、ΔFは、ΔPに関して直線的に変化する。A1がA2に等しくない場合には、ΔFとΔPとの間の関係は異なり、本発明によって有効に用いられる関係である。実際には、最終的な力ΔFは、必ずしも圧力差P1−P2に比例するとは限らないと考えられる。従って、例えば、A1=100in2、A2=200in2、P1=3,000lbf/in2、P2=1,600lbf/in2の場合に、圧力差(P1−P2)またはΔP=3,000lbf/in2−1,600lbf/in2=1,400psid(「psid」はポンド/平方インチ差圧力を意味する)となる。そのとき、最終的な力ΔFは、P2*A2−P1*A1=1,600lbf/in2*200in2−3,000lbf/in2*100in2=20,000lbfd(「lbfd」は重量ポンド差圧力を意味する)となる。しかし、ΔPが変化しないように(すなわち、1,400psidの状態であるように)P1=2,500lbf/in2とP2=1,100lbf/in2である場合に、ΔFはP2*A2−P1*A1=1,100lbf/in2*200in2−2,500lbf/in2*100in2=−30,000lbfdとなる。従って、圧力が変化するときに、たとえ、ΔPが一定の状態でも、ΔFは、大きさと方向を変更することができる。図11の処理機構600のような処理機構において、ΔFは、処理空間980のような処理空間内の圧力(Pvol)と共に変化する。
【0079】
後述するように、本発明の実施形態は、処理空間を効率的に維持するために、この関係を有効に使用する。上述した例を用いると、P1が増加すれば、ΔFも増加する。図11を参照すると、P1は、処理空間980内の圧力(Pvol)に相当し、P2は、シール圧力(Pseal)に相当する。従って、Pvolが増加し且つΔPが一定に維持されるときには、ΔFが不必要に増加する。ΔF(ひいては、Pseal)は、処理空間を維持する間、エネルギーを節約するために減少する。(PsealがPvolに追従しなくてもよい)この非線形関係が、処理空間を維持するのに用いられる処理機構内へのエネルギー入力を減らすために用いられる。エネルギーは、例えば、図11のMACバルブ944の入力部9444で処理機構内へ注入される。
【0080】
先の検討および以下のグラフが、圧力差ΔPが略一定である処理機構を表している。この限定は、主に、議論を単純化するために用いられる。また、MACバルブ944を制御するアルゴリズムを単純化するためにも用いられる。もちろん、ΔPは、本発明の実施形態に従って変更することができる。
【0081】
図12を本発明の背後にある原理を説明するために用いる。図12は、時間t1をt8に増加させる一つまたは複数の処理サイクルに関する、図11の処理機構11の圧力または力対時間のグラフ1200である。グラフ1200は、左側の縦軸と右側の縦軸との二つの縦軸を有する。「圧力」とラベル表示しているpsigまたはpsidの単位の左側の縦軸は、以下に詳述するように、線210、215、220によって表される値を測るために用いられる。「力」とラベル表示しているlbfまたはlbfdの単位の右側の縦軸は、同様に以下により詳述するように、線225、230、235で表された値を測るために用いられる。なお、グラフ1200は、横軸に時間を示しているが、グラフ1200は、圧力差と力差との間の関係を説明するために用いられ、同様に、力対圧力のグラフとして参照することができる。
【0082】
図11を参照すると、処理機構600は、処理空間980を有する。処理空間980は、(1)処理空間980の面989に働く処理力と、(2)油圧ピストン965の面9502に働くシール力とを釣り合わせることによって維持される。ΔFが処理空間980を維持するために必要とされる先の割増力に相当する。一つの実施形態において、面9502の断面積は、面989の断面積よりも大きい。好ましくは、処理機構600は、高圧処理を行うように構成されている。例えば、処理機構600は、超臨界CO2を処理空間980内に注入し、あるいは、超臨界CO2を処理空間980内で発生させるように構成される。好ましくは、処理空間980は、超臨界温度と超臨界圧力とに耐えるように構成され、CO2供給容器のような超臨界物質を供給するための容器に連結されている。
【0083】
グラフ1200は、測定に左側の縦軸を用いて、時間に対する圧力のプロットを三本の線で示している。すなわち、Pvolがpsigで測定されるPvol対時間の線210と、Psealがpsigで測定されるPseal対時間の線215と、そして、psidで測定され、ΔPがPseal−Pvolと等しいΔP対時間の線220である。同様に、グラフ1200は、時間に対する力のプロットを三本の線で示している。すなわち、lbfで測定され、面989に働く力対時間の線225と、lbfで測定され、面9502に働く計算された油圧力対時間の線230と、lbfdで測定され、線225と線230の間の差分であって計算されたシール力であるΔF対時間の線235である。線220は、ΔPが略一定の状態である場合に、ΔFが圧力の減少に応じて減少することを示している。
【0084】
表1は、図12のグラフ1200をプロットするために用いられる値を一覧表にしている。表1を参照すると、「処理圧力」と表示された第二列には、Pvolの値が入っている。「シール圧力」と表示された第三列には、処理空間980を維持するために十分なPsealの値が入っている。「MAC圧力」と表示された第一列には、処理空間980を維持するのに十分な力を発生させるために十分なシール圧力(Pseal)に変換されるMACバルブ944によって発生される圧力の値が入っている。「ΔP」と表示された第四列には、第二列および第三列の対応する値の間の差分(ΔP=Pseal−Pvol)の値が入っている。「処理力」と表示された第五列には、面989に生じる力の値が入っている。「シール力」と表示された第六列には、面9502に生じる力の値が入っている。「ΔF」と表示された第七列には、第五列および第六列の対応する値の間の差分の各値が入っている。
【0085】
図13は、表1におけるいくつかの点において、1000lbfd単位系の力の差分ΔF対psig単位系のPvolをプロットしたグラフ1300を示している。グラフ1300は、ΔPが略一定である場合には、ΔFは、Pvolと共に直接的に変化することを示している。もちろん、この関係は、ΔPが略一定でなく変化する場合であっても、同様に保たれる。例として、グラフ1300は、ΔPが196psidと226psidとの間で変化するが略一定であるときに処理圧力が28psigと1218psigとの間にあることを示している。
【0086】
この関係は、二つの結論を有している。第一に、処理空間を維持するため(すなわち、処理シールを維持するため)に最低限必要な力が存在する場合、最小の圧力であっても処理空間を維持するために十分な力があるようにΔPを選択しなければならない。この場合、圧力が上昇するにつれ、最終的な力ΔFが、先のこの最低限のレベル(ΔFthresh)を超えて非効率の処理を増加させる。その代わりに、MACバルブ944は、ΔFがΔFthreshを決して超えないように、処理空間を維持するのに最低限のエネルギーを用いて制御されるように最適化される。第二の結論は、所要のシール力(すなわち、Pseal)が処理力(すなわち、Pvol)よりも緩やかな割合で増加する場合、Psealは、Pvolに後れを取り、まだ処理空間を維持することが可能である。従って、シール力を発生させるために用いられるMACバルブ944の応答時間は、処理圧力における変化と同じくらい早い必要はない。
【表1】
再び図11を参照すると、MACバルブ944は、上式1の関係に従うように制御される。例えば、MACバルブ944は、本発明に従ってPseal(すなわち、シール力)を効率的に変更するようにプログラムされ或いはMACバルブ944を制御する制御装置に連結されている。MACバルブ944は、上述したように、最終的に必要なPseal、すなわち、シール力に変換される圧力を発生させるようにプログラムされる。
【0087】
また、MACバルブ944は、ΔFが閾値ΔFthreshを下回らないように制御される。ΔFthreshは、例えば、わずかな圧力の揺れを許容し、たとえ、MACバルブ944がPvolの変化に応じてPsealをゆっくりと増加させても、処理空間が維持されることを保証する力の差分に相当する。もちろん、MACバルブ944は、処理空間980を一定に維持するのに十分素早く圧力間を切り替わるように構成されていなければならない。
【0088】
図14は、本発明の一つの実施形態のシール工程1400を示している。第一工程1401、すなわち、スタート工程では、初期化工程が実行される。図11を参照すると、第一工程1401では、ウエハーが圧盤982に配置され、処理空間980が形成される。他の初期化工程は、処理空間980内で達成される最大処理圧力を決定したり、他の処理パラメーターを算出したりすること等を含む。次に、工程1402において、処理空間980を維持するために最小力差分(ΔFthresh)が必要とされているか否かが判断される。最小力差分が必要であるときには、工程1410が実行され、さもなければ、工程1405が実行される。
【0089】
工程1410では、最小力差分が算出される。工程1405では、ΔFthreshが0lbfに設定される。なお、工程1405において、ΔFthreshが環境に適した別の値に設定されてもよい。工程1410または工程1405の後に、工程1415が実行される。
【0090】
工程1415では、ウエハーが処理空間980内で処理される。次に、工程1420において、PvolおよびPsealが読み込まれ、Psealが処理空間980を維持するように変更される。本発明の一つの実施形態では、Psealが処理空間980を効率的に維持するように上式1に従って変更される。つまり、Psealは、Pvolに遅れを取り、確実にΔF>ΔFthreshとなるようにすることによって処理空間980をまだ維持するように設定される。なお、単純化のため、図14は、工程1420が工程1415の後に実行されるように示しているが、当然のことながら、工程1420は、工程1415中、つまり、ウエハーが処理されている間に実行される。
【0091】
次に、工程1430において、ウエハーの処理が完了したか否かが判断される。処理が完了していないときには、工程1420が再び実行される。処理が完了しているときには、工程1435が実行される。工程1435では、処理空間980が非処理状態に戻り、処理空間980が開放され、ウエハーが圧盤982から取り除かれる。次に、工程1440において、処理工程が完了する。
【0092】
前述のように、Psealは、本発明に従って、工程1420を実行するようにプログラムされたMACバルブ944によって制御される。前述のように、MACバルブ944は、上式1に記載の通り、シール力に変換される圧力を発生させるようにプログラムされるか、さもなければ、制御される。
【0093】
特許請求の範囲によって定めされる本発明の意図と範囲から逸脱することなく他の様々な改良が実施形態にできることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0094】
101 処理チャンバー
110 上部要素
140 処理空間
150 下部要素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部要素と下部要素とを具備し、これら上部要素および下部要素が接合されて処理空間を形成するように構成されており、下部要素に対して上部要素を維持して処理空間を維持するように構成されたシール付勢器をさらに具備し、該シール付勢器が処理空間内で発生する処理圧力に対して非線形に変化するシール付勢空洞内のシール圧力を制御するように構成されている装置。
【請求項2】
前記シール付勢器が前記上部要素および下部要素の一方に対する負ではない最終的な力を閾値以上において最小化するように構成されており、P1がシール圧力であり、P2が処理圧力であり、A1がシール付勢空洞の断面積であり、A2が処理空間の断面積であるとした場合に前記最終的な力が式P1*A1−P2*A2に従う請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記シール付勢器が処理サイクル中に圧力差P1−P2を略一定に維持するように構成されている請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記シール付勢器が第一空洞と前記シール付勢空洞とを有し、該第一空洞が前記シール付勢空洞に連結され、前記シール付勢器が前記第一空洞内で発生する第一圧力が該第一圧力よりも大きい前記シール付勢空洞内の第二圧力を発生させるように構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記断面積A1が前記断面積A2よりも大きい請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記処理空間に連結された超臨界状態を発生させる手段をさらに具備する請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記処理空間に連結されたCO2供給容器をさらに具備する請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記上部要素と下部要素とが超臨界処理チャンバーを形成する請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記シール付勢器が前記下部要素に連結され且つ前記処理空間を維持するように構成された油圧ピストンを有する請求項1に記載の装置。
【請求項10】
上部要素と下部要素とを具備し、これら上部要素および下部要素が接合されて処理空間を形成するように構成されており、処理空間を維持するために上部要素および下部要素間のシールを維持する手段をさらに具備し、該シールを維持する手段が処理空間内で発生する処理圧力に対して非線形に変化するシール付勢空洞内のシール圧力を制御するように構成されている装置。
【請求項11】
処理空間を維持する方法であって、処理空間内で処理圧力を発生させる工程と、処理空間を形成すると共に該処理空間を維持するようにシール圧力を制御する工程とを具備し、前記シール圧力が処理サイクル中に前記処理圧力に対して非線形に変更される方法。
【請求項12】
P1がシール圧力であり、P2が処理圧力であり、A1がシール付勢空洞の断面積であり、A2が処理空間の断面積であるとした場合に前記シール圧力が式ΔF=P1*A1−P2*A2によって前記処理圧力に関連づけられ、ΔFを閾値よりも大きく維持するように前記シール圧力が変更される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記処理空間の断面積が前記シール付勢空間の断面積よりも小さい請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記処理圧力を発生させる工程が前記処理空間内の高圧処理流体を収容することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記高圧処理流体が超臨界二酸化炭素を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記シール圧力を制御する工程が前記シール付勢空間内の油圧を発生させることを含む請求項12に記載の方法。
【請求項1】
上部要素と下部要素とを具備し、これら上部要素および下部要素が接合されて処理空間を形成するように構成されており、下部要素に対して上部要素を維持して処理空間を維持するように構成されたシール付勢器をさらに具備し、該シール付勢器が処理空間内で発生する処理圧力に対して非線形に変化するシール付勢空洞内のシール圧力を制御するように構成されている装置。
【請求項2】
前記シール付勢器が前記上部要素および下部要素の一方に対する負ではない最終的な力を閾値以上において最小化するように構成されており、P1がシール圧力であり、P2が処理圧力であり、A1がシール付勢空洞の断面積であり、A2が処理空間の断面積であるとした場合に前記最終的な力が式P1*A1−P2*A2に従う請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記シール付勢器が処理サイクル中に圧力差P1−P2を略一定に維持するように構成されている請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記シール付勢器が第一空洞と前記シール付勢空洞とを有し、該第一空洞が前記シール付勢空洞に連結され、前記シール付勢器が前記第一空洞内で発生する第一圧力が該第一圧力よりも大きい前記シール付勢空洞内の第二圧力を発生させるように構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記断面積A1が前記断面積A2よりも大きい請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記処理空間に連結された超臨界状態を発生させる手段をさらに具備する請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記処理空間に連結されたCO2供給容器をさらに具備する請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記上部要素と下部要素とが超臨界処理チャンバーを形成する請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記シール付勢器が前記下部要素に連結され且つ前記処理空間を維持するように構成された油圧ピストンを有する請求項1に記載の装置。
【請求項10】
上部要素と下部要素とを具備し、これら上部要素および下部要素が接合されて処理空間を形成するように構成されており、処理空間を維持するために上部要素および下部要素間のシールを維持する手段をさらに具備し、該シールを維持する手段が処理空間内で発生する処理圧力に対して非線形に変化するシール付勢空洞内のシール圧力を制御するように構成されている装置。
【請求項11】
処理空間を維持する方法であって、処理空間内で処理圧力を発生させる工程と、処理空間を形成すると共に該処理空間を維持するようにシール圧力を制御する工程とを具備し、前記シール圧力が処理サイクル中に前記処理圧力に対して非線形に変更される方法。
【請求項12】
P1がシール圧力であり、P2が処理圧力であり、A1がシール付勢空洞の断面積であり、A2が処理空間の断面積であるとした場合に前記シール圧力が式ΔF=P1*A1−P2*A2によって前記処理圧力に関連づけられ、ΔFを閾値よりも大きく維持するように前記シール圧力が変更される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記処理空間の断面積が前記シール付勢空間の断面積よりも小さい請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記処理圧力を発生させる工程が前記処理空間内の高圧処理流体を収容することを含む請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記高圧処理流体が超臨界二酸化炭素を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記シール圧力を制御する工程が前記シール付勢空間内の油圧を発生させることを含む請求項12に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−97101(P2011−97101A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−14290(P2011−14290)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【分割の表示】特願2006−534210(P2006−534210)の分割
【原出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14290(P2011−14290)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【分割の表示】特願2006−534210(P2006−534210)の分割
【原出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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