説明

半導体ウエハ表面保護テープ、樹脂製基材フィルム

【課題】表面の凹凸差が大きい半導体ウエハを裏面研削しても、裏面ディンプルの発生を抑制することができる半導体ウエハ表面保護テープを提供する。
【解決手段】基材フィルムと、アンカー層と、粘着剤層とが順に積層してなる半導体ウエハ表面保護テープであって、前記基材フィルムのアンカー層が形成される側の表面に、直径10μm〜60μmであり、深さと直径のアスペクト比(深さ/直径)が0.4〜0.8である凹部を複数有し、前記アンカー層の厚みが、前記凹部の深さよりも厚く、前記粘着剤層を形成する粘着剤が、放射線硬化型であることを特徴とする半導体ウエハ表面保護テープを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハなどの半導体素子を製造するにあたり、半導体ウエハ加工のために使用される半導体ウエハ表面保護テープであって、特に、半導体ウエハなどの裏面研削(バックグラインド)工程時にパターン面を外的異物による傷や汚染などから保護するために使用される半導体ウエハ表面保護テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、半導体ウエハの片面に回路パターンを形成する前工程が完了した後、半導体ウエハを薄くするため、半導体ウエハのパターン面の反対側にある裏面を研削することが行われている。例えば、厚さ750μm程度のシリコンウエハを、裏面研削工程(バックグラインド工程)により、厚さ200μm以下に薄くすることが行われている。
【0003】
これらの方法では、パターン面が損傷することや、研削くずや研削水などにより汚染されることを防ぐため、パターン面に半導体ウエハ表面保護テープ(バックグラインドテープ、バックグラインディングテープ、裏面研削用粘着フィルムとも呼ばれる)を貼着していた。また、半導体ウエハはそれ自体が薄くてもろいのに加え、パターン面が凹凸状であり、わずかな外力によっても破損しやすいため、半導体ウエハを保持する必要がある。そのため、裏面研削工程においては、半導体ウエハのパターン面の保護と半導体ウエハ自体の固定を行うために、パターン面に表面保護テープを貼り付けた後に、裏面研削工程を行うことが一般的である。
【0004】
しかし、従来の表面保護テープでは、パターン面にバンプ電極を有するような、パターン面の凹凸が大きい半導体ウエハに裏面研削工程を行った場合、バンプ電極部分に研削応力が集中するため、その部分が薄く削れるために、裏面にディンプルが発生することがあった。
【0005】
従来の表面保護テープにおいて、ディンプルが発生する様子を図7〜図11により説明する。なお、以下の説明で後述の第1の実施形態と同一の様態を果たす要素には同一の番号を付し、重複した説明は避ける。
【0006】
図7に示すように、半導体ウエハ表面保護テープ31は、基材フィルム33と粘着剤層9とからなる。基材フィルム33は、バックグラインドテープに使用される一般的な基材フィルムである。
【0007】
次いで、図8に示すように、パターン面にバンプ電極13を有する半導体ウエハ11を、粘着剤層9に接触させ、半導体ウエハ11と表面保護テープ31とを粘着させる。
【0008】
次いで、図9に示すように、表面保護テープ31を貼着した半導体ウエハ11を反転し、表面保護テープ31をチャックテーブル19にて真空チャックし、半導体ウエハ11の裏面をダイヤモンド砥粒を含んだ研削ホイール17により研削する。
【0009】
次いで、図10に示すように、半導体ウエハ11の裏面の研削を進めていくと、研削後の半導体ウエハ12の裏面にはディンプル35が発生する。研削時にバンプ電極13にかかる応力が緩和されないため、バンプ電極13の特定の箇所の半導体ウエハ12の裏面に、応力が集中し、ディンプル35が発生する。
【0010】
次いで、研削ホイール17をはずし、半導体ウエハ12を表面保護テープ31より取り外すと、ディンプル35が発生した半導体ウエハ12が得られる。他にも裏面研削工程での研削方法や、裏面研削工程を行う時間の長さによっては、図11(b)や図11(c)に示すディンプル37、ディンプル39のような、ディンプル35よりも深くて広いディンプルが発生することもある。
【0011】
ディンプルが発生すると、半導体ウエハが割れやすくなる、ダイシング工程時の半導体ウエハの固定が困難になる、半導体素子の信頼性低下などの問題点がある。そのため、粘着剤の動的粘弾性の貯蔵弾性率や厚みを規定した表面保護テープが開発されている(特許文献1〜7を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−241713号公報
【特許文献2】特開2000−212530号公報
【特許文献3】特開2001−203255号公報
【特許文献4】特開2002−201442号公報
【特許文献5】特開2005−303068号公報
【特許文献6】特開2002−053819号公報
【特許文献7】特開2003−173994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、粘着剤の動的粘弾性の貯蔵弾性率や粘着剤層の厚みを規定するだけでは、ディンプルの発生が抑えられないことがあり、さらにはウエハ割れを起こす可能性があるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、表面の凹凸差が大きい半導体ウエハを裏面研削しても、裏面ディンプルの発生を抑制することができる半導体ウエハ表面保護テープを提供することである。
【0015】
すなわち、本発明は、
(1)基材フィルムと、アンカー層と、粘着剤層とが順に積層してなる半導体ウエハ表面保護テープであって、前記基材フィルムのアンカー層が形成される側の表面に、直径10μm〜60μmであり、深さと直径のアスペクト比(深さ/直径)が0.4〜0.8である凹部を複数有し、前記アンカー層の厚みが、前記凹部の深さよりも厚く、前記粘着剤層を形成する粘着剤が、放射線硬化型であることを特徴とする半導体ウエハ表面保護テープ。
(2)基材フィルムと、アンカー層と、粘着剤層とが順に積層してなる半導体ウエハ表面保護テープであって、前記基材フィルムのアンカー層が形成される側の表面の十点平均粗さRzが8μm〜40μmであり、前記アンカー層の厚みが、前記十点平均粗さRzよりも厚く、前記粘着剤層を形成する粘着剤が、放射線硬化型であることを特徴とする半導体ウエハ表面保護テープ。
(3)半導体ウエハ表面保護用粘着フィルムが、被着面にバンプや電極などの突起状物を有する半導体ウエハの表面保護用であり、前記粘着剤層の厚みが、前記突起状物の高さよりも大きいことを特徴とする(1)または(2)に記載の半導体ウエハ表面保護テープ。
(4)基材フィルムと、アンカー層と、粘着剤層と、粘着剤外層とが順に積層してなることを特徴とする(1)または(2)に記載の半導体ウエハ表面保護テープ。
(5)少なくとも片面に、直径10μm〜60μmであり、深さと直径のアスペクト比(深さ/直径)が0.4〜0.8である凹部を複数有することを特徴とする半導体ウエハ表面保護テープ用の樹脂製基材フィルム、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、表面の凹凸差が大きい半導体ウエハを裏面研削しても、裏面ディンプルの発生を抑制することができる半導体ウエハ表面保護テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)第1の実施形態に係る半導体ウエハ表面保護テープ1を示す断面図、(b)基材フィルム3の表面の凹部5の配列の一例を示す平面図。
【図2】第1の実施形態に係る半導体ウエハ表面保護テープ1の使用態様を示す断面図。
【図3】図2の続き工程を示す図。
【図4】図3の続き工程を示す図。
【図5】図4の続き工程を示す図。
【図6】第2の実施形態に係る半導体ウエハ表面保護テープ21を示す断面図。
【図7】従来の発明に係る半導体ウエハ表面保護テープの使用態様を示す図。
【図8】図7の続き工程を示す図。
【図9】図8の続き工程を示す図。
【図10】図9の続き工程を示す図。
【図11】(a)〜(c)ディンプルの発生した半導体ウエハ12を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、各図は各構成要素を模式的に示したもので、実際の縮尺を表すものではない。
【0019】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る半導体ウエハ表面保護テープ1について説明する。図1(a)は、半導体ウエハ表面保護テープ1の断面図である。図1(a)に示すように、半導体ウエハ表面保護テープ1は、基材フィルム3と、アンカー層7と、粘着剤層9とが順に積層してなる。基材フィルム3の、アンカー層7と接する面には、凹部5が複数設けられている。
【0020】
(基材フィルム3)
基材フィルム3は、一般的なバックグラインドテープに使用される基材フィルムを用いることができるが、特に、粘着剤層9に放射線硬化性の組成物を使用する場合には、その組成物が硬化する波長の放射線の透過性の良いものを選択するのがよい。なお、ここで、放射線とは、例えば、紫外線のような光、あるいはレーザ光、または電子線のような電離性放射線を総称して言うものであり、以下、これらを総称して放射線と言う。
【0021】
このような基材フィルム3の材料として選択し得るポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体あるいはこれらの混合物、ポリウレタン、スチレン−エチレン−ブテンもしくはペンテン系共重合体、ポリアミド−ポリオール共重合体等の熱可塑性エラストマー、およびこれらの混合物がある。また、これらを複層にしたものを使用してもよい。特にポリオレフィンや、エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いることが好ましい。
さらには、基材フィルム3のアンカー層7が設けられる側の表面には、アンカー層7との接着性を向上させるためにコロナ処理、あるいはプライマー層を設けるなどの処理を適宜施してもよい。
【0022】
基材フィルム3の厚みは、特に制限するものではないが、強伸度特性、放射線透過性、熱による収縮の観点から、好ましくは10μm〜500μmであり、より好ましくは40μm〜500μm、特に好ましくは100μm〜250μmである。なお、基材フィルム3の粘着剤層が塗布されない側の表面をシボ加工または滑剤コーティングすることは、ブロッキング防止の効果が得られるため、好ましい。
【0023】
(凹部5)
凹部5は、基材フィルム5のアンカー層が形成される面に形成されたくぼみである。凹部5は、直径が10μm〜60μmであり、深さと直径のアスペクト比(深さ/直径)が0.4〜0.8である略半球状(半楕円球状も含む)であることが好ましい。また、凹部5は、直径20μm〜50μmであってもよい。また、凹部5の断面が曲線状にくぼんだものが望ましいが、凹部5の形状は略角錐形状、略円錐形状など、何らかの形でくぼんだ形状であればよい。凹部5は、シボとも呼ばれ、凹部5を形成する工程を、シボ加工とも呼ばれる。図1(b)は、凹部5の配列の一例を示す図である。図1(b)では凹部中心の配列パターンが格子状(四角形状)であるが、配列パターンが六角形である配列でもよく、不規則に配列していてもよい。また、各凹部5間の間隔や密度は任意であるが、各凹部5の中心間の距離は、直径の約2倍程度であることが好ましい。
【0024】
次に、凹部の形状、配列を考えた場合に、具体的な凹部の配列は下記のようになる。なお、同一形状とは、形状と直径とアスペクト比がほぼ同一であることである。(1)凹部として同一形状の複数の凹部を規則的に配列した場合、(2)凹部として同一形状の複数の凹部を不規則的に配列した場合、または(3)形状、特に直径またはアスペクト比の異なる複数の凹部を不規則的に配置した場合のいずれの場合においても、各凹部の中心間の距離の平均は、凹部の直径((3)の場合は平均の直径)の約1.5倍以上5倍以下が好ましく、1.8倍以上4倍以下がより好ましい。また、各凹部の中心間距離の最大値、最小値ともに、もちろんこの範囲を超えることはない。この理由は、中心間距離の平均が小さ過ぎると、基材フィルムの強度が不足し、中心間距離が大き過ぎると応力集中を緩和する効果が無くなるからであり、例えこのような状態が生じるのが局部的であっても問題になるからである。従って、上記の点を考慮すると、凹部の配列は、所定の配列を有する方が好ましい。ここで、凹部が不規則な配列をしている場合の凹部の中心間距離は画像処理装置により求める。
【0025】
ここで、凹部5のアスペクト比を、0.4〜0.8としたのは、アスペクト比が0.4未満になると、凹部5の直径が最小の場合に、凹部5の深さが浅すぎて効果が認められず、凹部5の直径が最大の場合に、アスペクト比が0.8を超えると、凹部5が深くなりすぎて、逆にシボ加工が困難であると同時に、テープ強度が低下するため、ディンプルが発生する可能性があるからである。特に、テープ強度の点では、アスペクト比は0.4〜0.6であることであることが望ましい。また、図1(a)と図1(b)においては、複数の凹部5の直径と深さが同じであるが、複数の凹部5の直径と深さが同じである必要はなく、凹部5の直径と深さは分布を持ってもよい。
【0026】
凹部5の形成には、一般的な樹脂表面への加工方法が考えられる。例えば、表面に凹部5に対応する複数の凸部を有するロール状の金型を樹脂表面に押し付けることで、凹部5を形成することができる。
【0027】
なお、凹部5を設けた基材フィルム3を用いる代わりに、8μm〜40μmの十点平均粗さRzを有する表面の基材フィルムを用いても良い。この際、十点平均粗さRzは、十点平均粗さRz(JIS B 0601(1994))を意味する。十点平均粗さRzの定義を簡単に説明すると、断面曲線から基準長さだけを抜き取った部分において、最高から5番目までの山頂の標高の平均値と、最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差の値をマイクロメートル(μm)で表わす値である。
【0028】
(アンカー層7)
アンカー層7は、特に制限はなく、粘着剤層9より貯蔵弾性率が大きいものであれば良い。
【0029】
アンカー層7の、粘着剤層9を形成する面の平坦さを担保するため、アンカー層7は、凹部5の深さよりも厚いことが好ましい。アンカー層7の厚さは少なくとも10μm、より好ましくは15μm以上であることが好ましい。なお、アンカー層7は複数の層が積層された構成であってもよい。
【0030】
また、アンカー層7の貯蔵弾性率が小さく、やわらかい場合、アンカー層7の一部が凹部5に入り、アンカー層7の粘着剤層9を形成する面が平坦でなくなってしまうため、アンカー層7の貯蔵弾性率は、粘着剤層9の貯蔵弾性率より大きいことが好ましい。
【0031】
アンカー層7は粘着成分と硬化成分とを含む混合物を基材フィルム上に塗工した後、硬化させることによって設けられる。アンカー層7には、塗工後に室温で1週間程度放置することによって徐々に硬化し、好ましい範囲の弾性率となるような材料を用いることが好ましいが、塗工後に120℃〜180℃、30分〜300分の熱処理によって硬化させてもよい。アンカー層7を硬くする方法としては主成分として使用される粘着成分のガラス転移点(Tg)を高くする、アンカー層7に添加される硬化剤量を多く配合する、無機化合物フィラーを加えるなどの方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、放射線照射によって硬化する材料を使用し、放射線照射によって硬化させてアンカー層7の硬さを調整してもよい。
【0032】
粘着成分は、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、シリコーン系、天然ゴム系などの種々の汎用粘着剤を用いることができるが、本発明においては、特にアクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤としては、たとえば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび(メタ)アクリル酸誘導体から導かれる構成単位とからなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。また、(メタ)アクリル酸誘導体としては、たとえばグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸グリシジル等、また水酸基を有するヒドロキシエチルアクリレートを挙げることができる。本発明においては、例えば、エチルアクリレート、グリシジルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートからなるアクリル系共重合体を用いることができる。粘着成分に用いられる(メタ)アクリル酸エステル共重合体の重量平均分子量は10万〜70万が好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体のガラス転移温度は−40℃〜10℃が好ましい。本発明において、混合物中、粘着成分と硬化成分の合計に占める粘着成分の含有量は、80質量%〜99質量%が好ましく、85質量%〜95質量%がさらに好ましい。
【0033】
硬化成分としてはポリイソシアネート類、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、およびエポキシ樹脂から選ばれる化合物であり、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。この硬化剤は架橋剤として働き、アクリル樹脂等の粘着成分と反応した結果できる架橋構造により、アンカー層7は三次元網状構造を有し、温度上昇時にも軟化しにくいものとなる。
【0034】
ポリイソシアネート類としては、特に制限がなく、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4′−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。を挙げることができ、具体的には、市販品として、コロネートL(日本ポリウレタン株式会社製)等を用いることができる。
【0035】
また、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、ニカラックMX−45(三和ケミカル社製)、メラン(日立化成工業株式会社製)等を用いることができる。
さらに、エポキシ樹脂としては、例えば、TETRAD−X(三菱化学株式会社製)等を用いることができる。
本発明においては、硬化成分として特にポリイソシアネート類を用いることが好ましい。
本発明において、混合物中、硬化成分の含有量は、1質量%〜20質量%が好ましく、5質量%〜15質量%がさらに好ましい。
【0036】
さらに、アンカー層7に放射線硬化性を持たせることで、放射線硬化によりアンカー層7を硬化収縮させても良い。
放射線硬化性を持たせるためには例えば光重合性炭素−炭素二重結合を有するアクリレート系オリゴマーを添加することが挙げられる。これらのオリゴマーとしては光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分量化合物が広く用いられ、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートや、オリゴエステルアクリレート等が広く適用可能である。
【0037】
また、上記の様なアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いる事も出来る。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアナート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアナートなど)を反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなど)を反応させて得られる。
【0038】
放射線によりアンカー層7を重合させる場合には、光重合性開始剤、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ベンジルメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を併用する事が出来る。これらのうち少なくとも1種類をアンカー層7に添加する事により、効率よく重合反応を進行させる事が出来る。
【0039】
さらにアンカー層7には必要に応じて粘着付与剤、粘着調整剤、界面活性剤など、あるいはその他の改質剤等を配合することができる。
【0040】
(粘着剤層9)
以上のように基材フィルム3にアンカー層7が形成された後、アンカー層7上にさらに粘着剤層9が形成され、本発明の半導体ウエハ表面保護テープ1が製造される。
【0041】
粘着剤層9の形成は、通常の表面保護テープと同様に基材フィルムに形成されたアンカー層7上に粘着剤を塗工して製造してすることができる。粘着剤の塗工は、アンカー層7が塗工された後であればよいが、アンカー層7が放射線照射によって貯蔵弾性率が調整されるものであれば、アンカー層7が放射線によって硬化された後に塗工する必要がある。
【0042】
基材フィルム3の片表面にアンカー層7や粘着剤層9を形成する際の塗工方法としては、ロールコーター、コンマコーター、ダイコーター、メイヤーバーコーター、リバースロールコーター、グラビアコーターなどの公知の方法を採用することができる。
【0043】
あるいは、剥離ライナーの表面に、上記の公知の方法に従って塗布液を塗工して、アンカー層7と粘着剤層9とを形成した後、ドライラミネート法などの公知の方法を用いてその層を基材フィルム3に転写される方法(転写法)を採用してもよい。転写法により複数の層を積層する際には、1層ずつ剥離フィルムの表面に塗布・乾燥して形成した後、基材フィルム3の表面へ逐次転写する工程を複数回繰り返しても良いし、あらかじめ粘着剤層9とアンカー層7とを剥離フィルムの表面に順次形成した後に、これらの層を一度に基材フィルム3の表面に転写させても良い。
【0044】
本発明を構成する粘着剤層9は特に制限は無く、裏面研削工程時には半導体ウエハと表面保護テープ1との剥離や、半導体ウエハのパターン面への研削くずや研削水などによる汚染などの不良を発生しない程度の保持性や、裏面研削工程終了後には半導体ウエハと表面保護テープ1との剥離が容易とする特性を有するものであれば良い。裏面研削工程終了後の剥離性を向上させるために、粘着剤層9は放射線硬化性のものが好ましい。
例えば、本発明では、分子中にヨウ素価0.5〜20の放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する化合物(A)と、ポリイソシアネート類、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、およびエポキシ樹脂から選ばれる化合物(B)とを含むアクリル系粘着剤を用いることができる。
【0045】
粘着剤層9の主成分の1つである化合物(A)について説明する。化合物(A)の放射線硬化性炭素−炭素二重結合の好ましい導入量はヨウ素価で0.5〜20、より好ましくは0.8〜10である。ヨウ素価が0.5以上であると、放射線照射後の粘着力の低減効果を得ることができ、ヨウ素価が20以下であれば、放射線照射後の粘着剤の流動性が十分で、粘着剤とバンプとの剥離が容易となるため、ウエハから表面保護テープを剥離することが容易となり、ウエハの厚さが例えば100μm以下のように薄い場合でもウエハの損傷なく、剥離可能となる。さらに、化合物(A)そのものに安定性があり、製造が容易となる。
【0046】
上記化合物(A)は、ガラス転移点が−70℃〜0℃であることが好ましく、−66℃〜−28℃であることがより好ましい。ガラス転移点(以下、Tgとも言う。)が−70℃以上であれば、放射線照射に伴う熱に対する耐熱性が十分であり、0℃以下であれば、表面状態が粗い半導体ウエハにおける裏面研削工程後の半導体ウエハと表面保護テープとの剥離防止効果が十分得られる。
【0047】
上記化合物(A)はどのようにして製造されたものでもよいが、例えば、アクリル系共重合体またはメタクリル系共重合体などの放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有し、かつ、官能基をもつ化合物((1))と、その官能基と反応し得る官能基をもつ化合物((2))とを反応させて得たものが用いられる。
【0048】
このうち、前記の放射線硬化性炭素−炭素二重結合および官能基を有する化合物((1))は、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルなどの放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する単量体((1)−1)と、官能基を有する単量体((1)−2)とを共重合させて得ることができる。
【0049】
単量体((1)−1)としては、炭素数6〜12のヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルアクリレート、または炭素数5以下の単量体である、ペンチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、またはこれらと同様のメタクリレートなどを列挙することができる。
【0050】
単量体((1)−1)として、炭素数の大きな単量体を使用するほどガラス転移点は低くなるので、所望のガラス転移点のものを作製することができる。また、ガラス転移点の他、相溶性と各種性能を上げる目的で酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどの炭素−炭素二重結合をもつ低分子化合物を配合することも単量体((1)−1)の総質量の5質量%以下の範囲内で可能である。
【0051】
単量体((1)−2)が有する官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、環状酸無水基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができ、単量体((1)−2)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸、2−ヒドロキシアルキルアクリレート類、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリコールモノアクリレート類、グリコールモノメタクリレート類、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アリルアルコール、N−アルキルアミノエチルアクリレート類、N−アルキルアミノエチルメタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基またはカルボキシル基および放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有する単量体でウレタン化したものなどを列挙することができる。
【0052】
化合物((2))において、用いられる官能基としては、化合物((1))、つまり単量体((1)−2)の有する官能基が、カルボキシル基または環状酸無水基である場合には、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができ、水酸基である場合には、環状酸無水基、イソシアネート基などを挙げることができ、アミノ基である場合には、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができ、エポキシ基である場合には、カルボキシル基、環状酸無水基、アミノ基などを挙げることができ、具体例としては、単量体((1)−2)の具体例で列挙したものと同様のものを列挙することができる。
【0053】
化合物((1))と化合物((2))の反応において、未反応の官能基を残すことにより、酸価または水酸基価などの特性に関して、所望のものを製造することができる。
【0054】
上記の化合物(A)の合成において、反応を溶液重合で行う場合の有機溶剤としては、ケトン系、エステル系、アルコール系、芳香族系のものを使用することができるが、中でもトルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ベンゼンメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトンなどの、一般にアクリル系ポリマーの良溶媒で、沸点60℃〜120℃の溶剤が好ましく、重合開始剤としては、α,α′−アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾビス系、ベンゾイルペルオキシドなどの有機過酸化物系などのラジカル発生剤を通常用いる。この際、必要に応じて触媒、重合禁止剤を併用することができ、重合温度および重合時間を調節することにより、所望の分子量の化合物(A)を得ることができる。また、分子量を調節することに関しては、メルカプタン、四塩化炭素系の溶剤を用いることが好ましい。なお、この反応は溶液重合に限定されるものではなく、塊状重合、懸濁重合など別の方法でもさしつかえない。
【0055】
以上のようにして、化合物(A)を得ることができるが、本発明において、化合物(A)の分子量は、10万〜100万程度が好ましい。10万未満では、放射線照射による凝集力が小さくなって、裏面研削工程時に、半導体ウエハのずれが生じやすくなる。この素子のずれを、極力防止するためには、分子量が20万以上である方が好ましい。また、分子量が100万を越えると、合成時および塗工時にゲル化する可能性がある。
【0056】
なお、化合物(A)が、水酸基価5〜100となるOH基を有すると、放射線照射後の粘着力を減少することにより表面保護テープ1の剥離の際の半導体ウエハの損傷の危険性をさらに低減することができるので好ましい。また、化合物(A)が、酸価0.5〜30となるCOOH基を有することが好ましい。
【0057】
ここで、化合物(A)の水酸基価が低すぎると、放射線照射後の粘着力の低減効果が十分でなく、高すぎると、放射線照射後の粘着剤の流動性を損なう傾向がある。また酸価が低すぎると、テープ復元性の改善効果が十分でなく、高すぎると粘着剤の流動性を損なう傾向がある。
【0058】
なお、ヨウ素価は、Das法に基づき反応条件を40℃、24時間にして算出したものであり、分子量は、テトラヒドロフランに溶解して得た1%溶液を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ウオータース社製、商品名:150−CALC/GPC)により測定した値をポリスチレン換算の質量平均分子量と算出したものである。また、水酸基価は、FT−IR法にて算出したものであり、酸価は、JIS K 5407の11.1に準じて算出したものである。
【0059】
つぎに、粘着剤層9のもう1つの主成分である化合物(B)について説明する。化合物(B)は、ポリイソシアネート類、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、およびエポキシ樹脂から選ばれる化合物であり、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。この化合物(B)は架橋剤として働き、化合物(A)または基材フィルムと反応した結果できる架橋構造により、化合物(A)および(B)を主成分とした粘着剤の凝集力を、粘着剤塗布後に向上することができる。
【0060】
ポリイソシアネート類としては、特に制限がなく、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4′−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等が挙げられる。具体的には、市販品として、コロネートL等を用いることができる。
また、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂としては、具体的には、市販品として、ニカラックMX−45(三和ケミカル社製)、メラン(日立化成工業株式会社製)等を用いることができる。
さらに、エポキシ樹脂としては、TETRAD−X(三菱化学株式会社製)等を用いることができる。
本発明においては、特にポリイソシアネート類を用いることが好ましい。
(B)の添加量としては、化合物(A)100質量部に対して0.1質量部〜10質量部とすることが好ましく、0.4質量部〜3質量部とすることがより好ましい。その量が0.1質量部未満では凝集力向上効果が十分でない傾向があり、10質量部を越えると粘着剤の配合および塗布作業中に硬化反応が急速に進行し、架橋構造が形成されるため、作業性が損なわれる傾向がある。
【0061】
また、本発明において、粘着剤層9には、光重合開始剤(C)が含まれていることが好ましい。粘着剤層9の含まれる光重合開始剤(C)に特に制限はなく、従来知られているものを用いることができる。例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン等のアントラキノン類、2−クロロチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジル、2,4,5−トリアリ−ルイミダゾール二量体(ロフィン二量体)、アクリジン系化合物等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(C)の添加量としては、化合物(A)100質量部に対して0.1質量部〜10質量部とすることが好ましく、0.5質量部〜5質量部とすることがより好ましい。
【0062】
さらに本発明に用いられる放射線硬化性の粘着剤には必要に応じて粘着付与剤、粘着調整剤、界面活性剤など、あるいはその他の改質剤等を配合することができる。また、無機化合物フィラーを適宜加えてもよい。
【0063】
粘着剤層9の厚さは少なくとも5μm、より好ましくは10μm以上であることが好ましい。さらには、半導体ウエハなどのパターン面の凹凸差よりも厚いことが好ましい。例えば、半導体ウエハのバンプ電極の高さが100μmの場合、粘着剤層9の厚さは、100μmを超えることが好ましい。
なお、粘着剤層9は複数の層が積層された構成であってもよい。
【0064】
(表面保護テープ1の使用方法)
次に、図2〜図5を用いて、半導体ウエハ表面保護テープ1の使用方法について説明する。
【0065】
まず、図2に示すように表面保護テープ1の粘着層9側に、バンプ電極13を有する半導体ウエハ11を固定する。半導体ウエハ11は、バンプ電極13が形成された面に回路パターンが形成された半導体ウエハであり、シリコンウエハでも、その他のガリウム−ヒ素、ガリウム−窒素などの半導体ウエハであっても良い。
【0066】
バンプ電極13とは、フリップチップ実装等のワイヤレスボンディング法により半導体チップを実装する際に適した電極として、半導体ウエハ11の表面に回路と共に形成されたものである。通常、バンプ電極13を有する半導体チップは、リフロー、熱圧着等の工程により、この電極を介して実装基盤上に直接接続されるため、バンプ電極13は50μm〜300μm程度の高さを有し、特に80μm〜200μm程度の高さを有することが多く、さらに、100μm程度の高さを有することが多い。この様なバンプ電極13を有する半導体ウエハ11は、回路の電極部分のみが突出した状態(突起状物)を呈している。この形状は、ボール状、円柱状、方形状、キノコ状等、バンプの形成方法や、チップに要求される性能等により様々な形状がある。材質も、半田、金、銀、銅などの各種金属及びそれらの合金が、そのチップの実装方法等に応じて適宜選択されて用いられる。
【0067】
図2に示すように、半導体ウエハ11のバンプ電極13を有する面を、粘着剤層9に接触させ、粘着するようにする。粘着剤9は、やわらかいため、バンプ電極13がめり込むことで、空隙15ができる。
【0068】
その後、図3に示すように、チャックテーブル19で表面保護テープ1を真空チャックし、半導体ウエハ11の裏面に、研削ホイール17を接触させ、研削ホイール17を回転し、半導体ウエハ11の裏面を研削する。
【0069】
その後、図4に示すように、半導体ウエハ11を所定の厚さまで削り、半導体ウエハ12とする。
【0070】
この際、バンプ電極がある箇所に生じる応力が、凹部5が存在することで基材フィルム3の全体に広がるため、半導体ウエハ12の裏面には、ディンプルが発生しない。
【0071】
その後、図5に示すように、研削ホイール17をはずし、半導体ウエハ12とバンプ電極13とを表面保護テープ1より剥がすと、バンプ電極13を有するが、ディンプルのない半導体ウエハ12が得られる。
【0072】
(表面保護テープ1の効果)
第1の実施形態によれば、本発明に係る表面保護テープ1を用いることで、バンプ電極を有してパターン面の凹凸が大きい半導体ウエハであっても、ディンプルを発生させずに裏面研削を行うことができる。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態にかかる、半導体ウエハ表面保護テープ21の断面図である。以下の実施形態で第1の実施形態と同一の様態を果たす要素には同一の番号を付し、重複した説明は避ける。
【0074】
半導体ウエハ表面保護テープ21は、半導体ウエハ表面保護テープ1の粘着剤層9の上に、さらに粘着剤外層23を形成することにより得られる。
【0075】
粘着剤外層23は、アンカー層7と同様の組成、同様の方法で形成される。粘着剤外層23は、粘着剤層9より貯蔵弾性率が大きい。例えば、粘着剤外層23の25℃における貯蔵弾性率をaとし、粘着剤層9の25℃における貯蔵弾性率をbとすると、a=5bとした。もちろん、粘着剤外層の貯蔵弾性率が粘着剤層の貯蔵弾性率より大きければよいため、両者の比率を2倍としてa=2bとすることもできる。一方、粘着剤外層が硬すぎることは、ウエハへの密着性が低下する点で望ましくないことから、粘着剤外層の貯蔵弾性率と粘着剤層の貯蔵弾性率の比率は、最大でも6倍程度が望ましい。つまり、a=2b〜6b程度であることが望ましく、a=5bがより望ましい。
【0076】
ここで、粘着剤外層と粘着剤層の貯蔵弾性率は、次の方法で測定することができる。粘弾性計(レオメトリックサイエンス社製、商品名:ARES)を用いて、0℃から測定を開始し昇温速度5℃/min、周波数1Hzで、動的粘弾性を測定し、25℃に達した時点での貯蔵弾性率G´を測定した。なお、測定される粘着剤外層及び粘着剤層には作製後14日経過したものを使用した。
【0077】
粘着剤外層23の厚さは少なくとも10μm、より好ましくは15μm以上であることが好ましい。なお、粘着剤外層23は複数の層が積層された構成であってもよい。
【0078】
第2の実施形態によれば、粘着剤外層23を設けることによって、半導体ウエハなどの被着体への汚染を防ぐことができ、さらに被着体からの剥離性能を向上させることができる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
下記のように、基材フィルム、アンカー層組成物、粘着剤層組成物を調製し、基材フィルムの表面に、アンカー層組成物1Aを乾燥膜厚が表1〜表2に示す厚さとなるように塗工し、110℃で3分間乾燥し、さらに粘着剤層組成物2Aを乾燥膜厚が表1〜表2に示す厚さとなるように塗工し、110℃で3分間乾燥し、半導体ウエハ表面保護テープを作製した。
【0080】
(基材フィルムの作製)
低密度ポリエチレン(LDPE)単層の基材フィルム(厚さ150μm)の片面に、表1に示す直径とアスペクト比の凹部を形成可能な型が表面に形成された金属ロールを押し付け、表1に示す直径とアスペクト比の略半球状の凹部を形成した。各凹部の直径とアスペクト比はほぼ同一で、各凹部の中心間の距離は直径のほぼ2倍とし、各凹部の配列は、図1(b)に示すような、正方形を単位とする配列を採用した。
また、低密度ポリエチレン(LDPE)単層の基材フィルム(厚さ150μm)の片面に、表2に示す十点平均粗さRzを形成可能な型が表面に形成された金属ロールを押し付け、表2に示す十点平均粗さRzを有する基材フィルムを形成した。
【0081】
(アンカー層組成物1Aの調製)
放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有するアクリル樹脂A(重量平均分子量:80万、ガラス転移温度−64℃)100質量部に対して、硬化剤として日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートLを5質量部、光重合開始剤として日本チバガイギー(株)製:イルガキュアー184を5質量部混合してアンカー層組成物1Aを得た。
【0082】
(粘着剤組成物2Aの調製)
放射線硬化性炭素−炭素二重結合を有するアクリル樹脂A(重量平均分子量:80万、ガラス転移温度−64℃)100質量部に対して、硬化剤として日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートLを0.5質量部、光重合開始剤として日本チバガイギー(株)製:イルガキュアー184を5質量部混合して、放射線硬化性の粘着剤組成物2Aを調製した。
【0083】
(特性評価)
表1〜表2に示す実施例と比較例の半導体ウエハ表面保護テープを作製し、アンカー層と粘着剤層の25℃における裏面研削でのディンプルの有無の評価を下記のように行った。
【0084】
(裏面研削でのディンプルの有無)
各種の半導体ウエハ表面保護テープを、高さ100μmのバンプ電極が形成された8インチのシリコンウエハの表面に貼り付け、シリコンウエハの裏面をウエハ厚150μmにまで研削した。その結果、シリコンウエハの裏面にディンプルの有無があるかを目視や光学顕微鏡で確認した。
【0085】
それぞれの実施例、比較例における作製条件と特性評価結果を表1〜表2にまとめた。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
(実施例、比較例の考察)
比較例1、実施例1〜4、比較例2の結果より、凹部の直径が10μm〜60μmであることが好ましいことが分かる。
比較例3、実施例2、比較例4、実施例3の結果より、アンカー層厚みが凹部の深さよりも厚いことが好ましいことが分かる。
比較例5、実施例5、実施例2より、粘着剤層厚みがバンプ高さ(100μm)よりも厚いことが好ましいことが分かる。
比較例6、実施例6、実施例1、実施例7、比較例7の結果と、比較例8、実施例8、実施例4、実施例9、比較例9の結果より、凹部のアスペクト比が0.4〜0.8であることが好ましいことがわかる。
【0089】
比較例10、実施例10〜13、比較例11の結果より、基材フィルムの十点平均粗さRzが8μm〜40μmであることが好ましいことが分かる。
比較例12と実施例11、比較例13と実施例12の結果より、アンカー層厚みが基材フィルムの十点平均粗さRzよりも厚いことが好ましいことが分かる。
【0090】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0091】
なお、(2)凹部として同一形状の凹部を不規則的に配列した場合でも、凹部中心間の平均距離を凹部直径の1.5倍以上5倍以下とし、さらに凹部中心間の個々の距離の最大値と最小値が前記凹部直径の1.5倍以上5倍以下とした場合は、凹部を規則配列した場合と同様にディンプルは発生しないが、凹部中心間の平均距離が上記範囲外である場合や凹部中心間の距離の最大値と最小値が上記範囲を超える場合はテープの一部または全部にディンプルが発生するか、テープ強度が低下するかして問題がある。(3)形状の異なる凹部を不規則的に配置した場合においても形状の異なる凹部の平均直径が10μm〜60μm、平均アスペクト比を0.4〜0.8として、さらに、個々の凹部の直径とアスペクト比の最大値と最小値が上記の10μm〜60μm、0.4〜0.8の範囲に含まれていれば、ディンプルは発生しない。上記の範囲外に設定した場合には、ディンプルが発生するか、テープ強度が低下するかして問題がある。
【符号の説明】
【0092】
1………半導体ウエハ表面保護テープ
3………基材フィルム
5………凹部
7………アンカー層
9………粘着剤層
11………半導体ウエハ
12………半導体ウエハ
13………バンプ電極
15………空隙
17………研削ホイール
19………チャックテーブル
21………半導体ウエハ表面保護テープ
23………粘着剤外層
31………半導体ウエハ表面保護テープ
33………基材フィルム
35………ディンプル
37………ディンプル
39………ディンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、アンカー層と、粘着剤層とが順に積層してなる半導体ウエハ表面保護テープであって、
前記基材フィルムのアンカー層が形成される側の表面に、直径10μm〜60μmであり、深さと直径のアスペクト比(深さ/直径)が0.4〜0.8である凹部を複数有し、
前記アンカー層の厚みが、前記凹部の深さよりも厚く、
前記粘着剤層を形成する粘着剤が、放射線硬化型である
ことを特徴とする半導体ウエハ表面保護テープ。
【請求項2】
基材フィルムと、アンカー層と、粘着剤層とが順に積層してなる半導体ウエハ表面保護テープであって、
前記基材フィルムのアンカー層が形成される側の表面の十点平均粗さRzが8μm〜40μmであり、
前記アンカー層の厚みが、前記十点平均粗さRzよりも厚く、
前記粘着剤層を形成する粘着剤が、放射線硬化型である
ことを特徴とする半導体ウエハ表面保護テープ。
【請求項3】
半導体ウエハ表面保護用粘着フィルムが、被着面にバンプや電極などの突起状物を有する半導体ウエハの表面保護用であり、前記粘着剤層の厚みが、前記突起状物の高さよりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体ウエハ表面保護テープ。
【請求項4】
基材フィルムと、アンカー層と、粘着剤層と、粘着剤外層とが順に積層してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体ウエハ表面保護テープ。
【請求項5】
少なくとも片面に、直径10μm〜60μmであり、深さと直径のアスペクト比(深さ/直径)が0.4〜0.8である凹部を複数有することを特徴とする半導体ウエハ表面保護テープ用の樹脂製基材フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−151163(P2011−151163A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10613(P2010−10613)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】