説明

半導体チップの梱包構造及び梱包方法

【課題】保護シートを設けなくても半導体チップへの剥離処理剤の移行を防止することができる半導体チップの梱包構造及び梱包方法を提供する。
【解決手段】上面にワイヤボンドのための上面側電極41と底面に底面側電極42を備える半導体チップ4と、粘着シート1と、剥離処理剤2を塗布した離型紙3とを準備し、前記半導体チップ4の底面を粘着シート1に貼り付け、前記離型紙3の剥離処理剤2を塗布した側を前記半導体チップ4の上面に接するように離型紙3を配置し、半導体チップ4を貼り付けない領域では粘着シート1と離型紙3を直接接合させる半導体チップ4の梱包構造であり、前記剥離処理剤2として非シリコーン系の剥離処理剤を塗布した離型紙3を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの保存方法に係り、主として発光ダイオードチップ等の半導体チップの梱包構造及び梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードチップ等の半導体チップの梱包構造として、図2に示すように、粘着シート1と剥離処理剤52を塗布したチップ保護のための離型紙3の間に、複数の半導体チップ4を挟み込む構造があった。
【0003】
上記の如く梱包された半導体チップ組品55は、半導体チップ製品として顧客に販売される場合には、更に緩衝材等とともに梱包され、顧客へ輸送される。顧客の工程においては、後工程となるダイスボンド工程にて離型紙3が剥がされ、半導体チップ4がピックアップされ配線基板やリードフレームへマウントされた後、ワイヤボンド工程にて半導体チップ4の上部に形成された上面側電極41にワイヤボンドが行われる。
【0004】
後工程において、離型紙3を剥がして使用するため、離型紙3の剥離作業を容易に行なえるように、離型紙3にはシリコーン系の剥離処理剤52の塗布がなされているのが一般的である。
【0005】
しかし、半導体チップ組品55の状態で顧客または自社の工程中で長期保存すると、保存雰囲気の温度や湿度等により、上記シリコーン系の剥離処理剤52が、挟み込まれた半導体チップ4の表面に直接触れて移行する場合があり、これが半導体チップ4の表面および電極の汚染の原因となり、後工程でのワイヤボンド工程でボンディング性に悪い影響を与え、特に、発光ダイオードのように発光面を有する半導体チップにあっては、発光面上の異物となり発光品質に悪影響を及ぼす問題があった。
【0006】
このような問題を解決する方法として、例えば特許文献1に開示されているように、粘着シートと剥離処理剤を塗布した離型紙との間に半導体チップを挟み込む場合に、半導体チップと剥離処理剤との間にポリエチレン等からなる保護用シートを設ける方法が提案されている。
【0007】
この方法によれば、半導体チップが剥離処理剤に接触しないで梱包されているので、剥離処理剤が半導体チップの表面および電極に付着することがないので、半導体チップが汚染されることがなく、ワイヤボンド工程でのボンディング性が向上するとともに品質の向上が図れるとされている。
【特許文献1】特開平6−522452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
保護シートを設けると、粘着シート1と半導体チップ4と離型紙3の厚さに保護シートの厚みが加わるため、保護シートを設けない場合に比べて半導体チップ組品55としての総厚みが増え、輸送のための梱包の効率が低下するという問題がある。
【0009】
また、後工程においては、離型紙3を剥がす作業に加え、保護シートを剥がす作業が付加されるので、工程が煩雑になるという問題もある。
【0010】
これらの問題を軽減するために厚みの薄い保護シートを用いると、粘着シート1からの剥離が非常に困難となる上、粘着シート1を傷つけた場合に半導体チップ4のピックアップができなくなる場合がある。
【0011】
したがって本発明は、保護シートを設けなくても半導体チップへの剥離処理剤の移行を防止することができる半導体チップの梱包方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、非シリコーン系の剥離処理剤を塗布した離型紙を半導体チップの保護のための離型紙として用いると、保護シートを用いる場合に比べ離型紙の剥離作業がはるかに容易で、かつ、半導体チップの表面への剥離処理剤の移行がない半導体チップの梱包構造及び梱包方法を提供することができることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、非シリコーン系の剥離処理剤と離型紙との接着強度が、剥離処理剤と半導体チップの上面及び電極との接着強度よりも大きくなる剥離処理剤を用いるため、剥離処理剤の半導体チップへの移行がない。したがって、半導体チップの表面及び電極が汚染されることがなく、電気的接続工程の接続強度性能が向上する。また、半導体チップの上面を発光面とする発光ダイオード等の半導体チップにおいては、発光特性が向上する。
【0014】
また、離型紙とは別に保護シートを用いる必要がないので、梱包作業が容易になるとともに、保護シートを剥がす作業を省くことができ、半導体チップのピックアップを確実なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の請求項1に記載の発明は、粘着シートと剥離処理剤を塗布した離型紙との間に半導体チップを挟み込み、前記剥離処理剤が前記半導体チップと接するように梱包される半導体チップの梱包構造において、前記剥離処理剤が非シリコーン系であることを特徴とするものである。
【0016】
これにより、剥離処理剤の半導体チップへの移行が無くなり、半導体チップの表面及び電極が汚染されることがなく、電気的接続工程の接続強度性能が向上する。
【0017】
本発明の請求項2に記載の発明は、前記非シリコーン系の剥離処理剤が、ポリシロキサン系剥離剤、フッ素系剥離剤、ポリブタジエン系剥離剤、ビニルカルバゾール系化合物剥離剤またはアミノアルキッド樹脂剥離剤からなることを特徴とするものである。
【0018】
これにより、非シリコーン系の剥離処理剤を使用するので、剥離処理剤が半導体チップへ移行することが無くなり、半導体チップの表面及び電極が汚染されることがなく、電気的接続工程の接続強度性能が向上する。
【0019】
本発明の請求項3に記載の発明は、半導体チップの底面を粘着シートに貼り付け、剥離処理剤を塗布した離型紙の前記剥離処理剤を塗布した側を前記半導体チップの上面に接するように前記離型紙を配置し、前記粘着シートに前記半導体チップを貼り付けない領域では、前記粘着シートと前記離型紙を直接接合させる半導体チップの梱包方法であって、前記剥離処理剤として非シリコーン系の剥離処理剤を塗布した離型紙を用いることを特徴とするものである。
【0020】
これにより、剥離処理剤の半導体チップへの移行が無くなり、半導体チップの表面及び電極が汚染されることがなく、電気的接続工程の接続強度性能が向上する。
【0021】
本発明の請求項4に記載の発明は、前記非シリコーン系の剥離処理剤が、ポリシロキサン系剥離剤、フッ素系剥離剤、ポリブタジエン系剥離剤、ビニルカルバゾール系化合物剥離剤またはアミノアルキッド樹脂剥離剤からなることを特徴とするものである。
【0022】
これにより、非シリコーン系の剥離処理剤を使用するので、剥離処理剤が半導体チップへ移行することが無くなり、半導体チップの表面及び電極が汚染されることがなく、電気的接続工程の接続強度性能が向上する。
【0023】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態を、必要に応じて図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、従来の技術の図2と同一の部材や部分などには同一の符号を付している場合がある。
【0024】
図1は本発明の半導体チップの梱包構造を示す概略断面図である。
【0025】
図1において、半導体チップ4は上面側電極41と底面側電極42を備えており、底面側電極42を粘着シート1に貼り付けている。
【0026】
離型紙3の表面には非シリコーン系の剥離処理剤2が塗布されており、この剥離処理剤2の側が半導体チップ4の上面側電極41と接するように離型紙3が配置されている。
【0027】
粘着シート1において、半導体チップ4が貼り付けられていない領域では、粘着シート1が剥離処理剤2に直接貼り付けられている。
【0028】
このような形態により半導体チップ組品5が構成される。
【0029】
非シリコーン系の剥離処理剤としては、ポリシロキサン系剥離剤、フッ素系剥離剤、ポリブタジエン系剥離剤、ビニルカルバゾール系化合物剥離剤またはアミノアルキッド樹脂剥離剤からなる剥離処理剤を用いることが好ましい。
【0030】
(実施例1)
InGaAlPからなる発光層を備えたウエハをダイシングによりチップ化し、1000個を粘着シート1に転写し、剥離処理剤2としてポリシロキサン系剥離剤を用いた離型紙3を用いて半導体チップ組品5を作製した。
【0031】
(実施例2)
実施例1と同様にして、剥離処理剤2としてフッ素系剥離剤を用いた離型紙3を用いて半導体チップ組品5を作製した。
【0032】
(実施例3)
実施例1と同様にして、剥離処理剤2としてポリブタジエン系剥離剤を用いた離型紙3を用いて半導体チップ組品5を作製した。
【0033】
(実施例4)
実施例1と同様にして、剥離処理剤2としてビニルカルバゾール系化合物剥離剤を用いた離型紙3を用いて半導体チップ組品5を作製した。
【0034】
(実施例5)
実施例1と同様にして、剥離処理剤2としてアミノアルキッド樹脂剥離剤を用いた離型紙3を用いて半導体チップ組品5を作製した。
【0035】
(比較例)
比較例として、従来品であるシリコーン系剥離剤を剥離処理剤52とした離型紙3を用いた半導体チップ組品55を作製した。
【0036】
実施例1〜5及び比較例の半導体チップ組品を各1000個ずつ作製し、それらを温度50℃、湿度80%の雰囲気中で60日間保存した後、ダイスボンド工程で半導体チップ4をピックアップし、リードフレームにマウントした。引き続いて、ワイヤボンド工程で半導体チップ4の上面側電極41へワイヤボンディングを行った。
【0037】
その結果、比較例である従来品のシリコーン系剥離剤を使用した半導体チップ4は、上面側電極41からのワイヤ外れが1000個中465個確認されたのに対し、実施例1〜5により作製された半導体チップ4においては、ワイヤ外れはいずれも1000個中で0個であった。
【0038】
なお、ワイヤ外れが確認された従来品の半導体チップ4の表面を顕微鏡観察すると、上面側電極41の表面にジェル状の異物が付着しており、成分分析を行ったところ、剥離処理剤52と同じ成分のシリコーンが検出された。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、剥離剤により半導体チップ表面と電極が汚染されることがなく、剥離剤と半導体チップの間に保護シートを設ける必要がないので、半導体チップ組品の総厚みを抑えることができるので、半導体チップの梱包に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の半導体チップの梱包方法を示す概略断面図
【図2】従来の半導体チップの梱包方法を示す概略断面図
【符号の説明】
【0041】
1 粘着シート
2 剥離処理剤
3 離型紙
4 半導体チップ
5 半導体チップ組品
41 上面側電極
42 底面側電極
52 剥離処理剤
55 半導体チップ組品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着シートと剥離処理剤を塗布した離型紙との間に半導体チップを挟み込み、前記剥離処理剤が前記半導体チップと接するように梱包される半導体チップの梱包構造において、前記剥離処理剤が非シリコーン系であることを特徴とする半導体チップの梱包構造。
【請求項2】
前記非シリコーン系の剥離処理剤が、ポリシロキサン系剥離剤、フッ素系剥離剤、ポリブタジエン系剥離剤、ビニルカルバゾール系化合物剥離剤またはアミノアルキッド樹脂剥離剤からなることを特徴とする請求項1に記載の半導体チップの梱包構造。
【請求項3】
半導体チップの底面を粘着シートに貼り付け、
剥離処理剤を塗布した離型紙の前記剥離処理剤を塗布した側を前記半導体チップの上面に接するように前記離型紙を配置し、
前記粘着シートに前記半導体チップを貼り付けない領域では、前記粘着シートと前記離型紙を直接接合させる半導体チップの梱包方法であって、
前記剥離処理剤として非シリコーン系の剥離処理剤を塗布した離型紙を用いることを特徴とする半導体チップの梱包方法。
【請求項4】
前記非シリコーン系の剥離処理剤が、ポリシロキサン系剥離剤、フッ素系剥離剤、ポリブタジエン系剥離剤、ビニルカルバゾール系化合物剥離剤またはアミノアルキッド樹脂剥離剤からなることを特徴とする請求項3に記載の半導体チップの梱包方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−196657(P2009−196657A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38270(P2008−38270)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】