説明

半導体パッケージ及びその製造方法

【課題】LED素子の電極部と搭載部材の電極部との間を接続する配線を液滴吐出法で形成したLEDパッケージの配線の細線化及び接続信頼性向上を実現する。
【解決手段】搭載部材11の素子搭載凹部12内のうちのLED素子13の周囲に、透明な絶縁性樹脂16を充填し、LED素子13上面の電極部14と搭載部材11上面の電極部15との間をつなぐ配線経路を絶縁性樹脂16で平坦化する。液滴吐出法により撥液性のプライマ樹脂インクを絶縁性樹脂16上に吐出して撥液性のプライマ樹脂層20のパターンを線状又は帯状に形成した後、液滴吐出法により導電性のインクをプライマ樹脂層20上に吐出して、該プライマ樹脂層20上に、配線17のパターンをLED素子13上面の電極部14と搭載部材11上面の電極部15とに跨がって形成して、LED素子13上面の電極部14と搭載部材11上面の電極部15との間を配線17で接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搭載部材に形成した素子搭載凹部内に半導体素子を搭載した半導体パッケージ及びその製造方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体素子の実装工程では、半導体素子を搭載部材(回路基板、リードフレーム等)にダイボンドした後に、該半導体素子側の電極部と搭載部材側の電極部との間をワイヤボンディングで配線するのが一般的である。
【0003】
しかし、特許文献1(特許第3992038号公報)に記載されているように、ワイヤボンディングを行うときの機械的なストレスによって不良が発生する可能性があるため、ワイヤボンディングに代わる接続信頼性の高い実装構造を低コストで実現することを目的として、配線基板上に搭載した半導体素子の周囲に流動性の樹脂材料をディスペンサで吐出して、半導体素子の上面と配線基板の表面との間を傾斜面でつなぐ樹脂スロープを形成した後、半導体素子上面の電極部と配線基板の電極部との間を接続する配線パターンを、インクジェット等の液滴吐出法により樹脂スロープ上に形成する配線技術が提案されている。
【0004】
上記特許文献1の実装構造では、半導体素子上面の電極部と配線基板の電極部との間の配線経路に半導体素子の高さ相当分の段差ができるため、配線パターンを液滴吐出法で形成するには、半導体素子の側面上端から配線基板上面に跨がる樹脂スロープを形成して、半導体素子上面の電極部と配線基板の電極部との間を、段差のない傾斜面で結ぶ必要がある。
【0005】
そこで、搭載部材に形成した素子搭載凹部内に半導体素子を搭載することで、半導体素子上面の電極部と該搭載部材の素子搭載凹部の外側に設けた電極部とを同一高さとしたものがある。このような構造に対しては、特許文献2(特開2005−50911号公報)に記載されているように、搭載部材の素子搭載凹部の内周側面と半導体素子の外周側面との間の隙間(溝)に絶縁体を埋め込むことで、半導体素子上面の電極部と搭載部材の電極部との間の配線経路を平坦化して、該配線経路にインクジェット等の液滴吐出法で導電性のインクを吐出して配線を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3992038号公報
【特許文献2】特開2005−50911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2のように、インクジェット等の液滴吐出法で導電性のインクを吐出して配線を形成する場合、配線を形成する下地表面(樹脂表面)のインク滴の濡れ性が高いため、インク滴の着滴径が大きくなって配線の線幅が広がってしまい、細線化の要求を十分に満たすことができない。また、この配線形成方法を例えばLED等の発光素子パッケージに適用すると、発光素子の側面から透明な充填樹脂(配線の下地材)を通して放出される光が配線で遮られる割合が増加して、外部に放出される光の取り出し効率が低下するという欠点がある。
【0008】
また、半導体素子上面の電極部と搭載部材の電極部との間をつなぐ配線経路には、素子(チップ)、樹脂、搭載部材(リードフレーム等)が存在するため、濡れ性が異なる複数の下地表面に跨がって導電性のインクを吐出して配線を形成する必要がある。このため、下地表面の濡れ性が変わる毎に、配線の線幅や厚みが不均一になり、配線が通電オン/オフの繰り返しにより発生する熱応力等により断線する可能性があった。しかも、配線とその下地表面との密着性が低いため、配線が下地表面から剥がれることがあり、これも断線を生じさせる原因となっていた。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、半導体素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間を接続する配線を液滴吐出法又は印刷法で形成した半導体パッケージの配線の細線化及び接続信頼性向上を実現できる半導体パッケージ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、搭載部材に形成した素子搭載凹部内に半導体素子を搭載し、該半導体素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間を配線で接続した半導体パッケージにおいて、前記素子搭載凹部内の前記半導体素子の周囲の隙間に絶縁性樹脂を充填して該半導体素子側の電極部と前記搭載部材側の電極部との間の配線経路を該絶縁性樹脂で形成し、該配線経路上に撥液性のプライマ樹脂層を前記半導体素子側の電極部と前記搭載部材側の電極部とに跨がって形成し、導電性のインクを前記プライマ樹脂層上に吐出又は印刷して前記配線を形成して前記半導体素子側の電極部と前記搭載部材側の電極部との間を該配線で接続したものである。
【0011】
この構成では、半導体素子側の電極部と搭載部材側の電極部との間の配線経路を絶縁性樹脂で形成し、該配線経路上に撥液性のプライマ樹脂層を形成し、該プライマ樹脂層上に液滴吐出法又は印刷法で配線を形成するため、配線を形成するインク滴の着滴径が大きくなることを、その下地となる撥液性のプライマ樹脂層によって防止できて、配線の線幅が広がることを防止でき、配線の細線化を実現できる。従って、本発明をLED等の発光素子パッケージに適用する場合でも、発光素子の側面から放出される光が配線で遮られる割合を配線の細線化により低減できて、外部に放出される光の取り出し効率を高めることができる。また、配線の下地となる撥液性のプライマ樹脂層を半導体素子側の電極部と搭載部材側の電極部とに跨がって形成するようにしているため、半導体素子側の電極部と搭載部材側の電極部との間の配線経路に、半導体素子(チップ)、絶縁性樹脂、搭載部材等、濡れ性が異なる複数の部材が存在していても、これらをプライマ樹脂層で覆って配線全体の下地表面の濡れ性を均一化でき、液滴吐出法で形成する配線の線幅や厚みが不均一になることを防止できて、配線の線幅や厚みの均一化できる。しかも、配線とその下地表面(プライマ樹脂層)との密着性を向上できて、配線が下地表面から剥がれることを防止でき、上述した配線の線幅や厚みの均一化と相俟って配線の断線を効果的に防止でき、半導体パッケージの配線を細線化しながら接続信頼性も向上できる。
【0012】
本発明は、液滴吐出法又は印刷法で配線を形成可能な構造であれば、様々な構造の半導体パッケージに適用可能であり、例えば、LED等の発光素子パッケージに適用しても良い。
【0013】
本発明をLED等の発光素子パッケージに適用する場合は、請求項2のように、素子搭載凹部内に絶縁性樹脂として透明な絶縁性樹脂を充填し、液滴吐出法でプライマ樹脂インクを前記絶縁性樹脂上に吐出してプライマ樹脂層を線状又は帯状に形成すると良い。液滴吐出法で形成する配線の下地となるプライマ樹脂層は、光の透過を減少させるため、線状又は帯状に形成することで、発光素子の側面から透明な絶縁性樹脂を通して放出される光がプライマ樹脂層で減少される割合を少なくできて、外部に放出される光の取り出し効率を高めることができる。
【0014】
具体的には、請求項3のように、プライマ樹脂層を配線が該プライマ樹脂層からはみ出さないように該配線の線幅よりも製造ばらつき相当値以上太い線幅に形成すれば良い。プライマ樹脂層の線幅を配線の線幅よりも製造ばらつき相当値以上太い線幅に形成すれば、配線の下面全体をプライマ樹脂層に密着させることができ、配線とプライマ樹脂層との密着性を確実に高めることができる。
【0015】
尚、請求項4に係る発明は、請求項1に係る「半導体パッケージ」の発明と実質的に同一の技術思想を、カテゴリーの異なる「半導体パッケージの製造方法」の発明として記載したものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の一実施例のLEDパッケージの構造を図3のA−A線に沿って示す断面図である。
【図2】図2は図3のB−B線に沿って示す断面図である。
【図3】図3はLEDパッケージの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態をLEDパッケージに適用して具体化した一実施例を説明する。
搭載部材11は、リードフレーム、回路基板等により形成され、その所定位置に素子搭載凹部12が形成されている。この搭載部材11の素子搭載凹部12の底面中央部には、半導体素子であるLED素子13(発光素子)がダイボンディング(接合)されている。素子搭載凹部12の深さ寸法(高さ寸法)は、LED素子13の高さ寸法とほぼ同一に設定され、素子搭載凹部12内に搭載したLED素子13上面の電極部14が搭載部材11上面の電極部15とほぼ同じ高さとなっている。
【0018】
搭載部材11の素子搭載凹部12内のうちのLED素子13の周囲に、透明な絶縁性樹脂16がインクジェット、ディスペンサ等の液滴吐出法により充填されている。LED素子13上面の電極部14と搭載部材11上面の電極部15との間をつなぐ配線経路は、絶縁性樹脂16で平坦化され、該絶縁性樹脂16の上面に、後述する配線17の下地となる撥液性のプライマ樹脂層20がLED素子13上面の電極部14と搭載部材11上面の電極部15とに跨がって線状又は帯状に形成されている。具体的には、インクジェット、ディスペンサ等の液滴吐出法により撥液性のプライマ樹脂インクを絶縁性樹脂16上に吐出してプライマ樹脂層20のパターンを線状又は帯状に描画する。
【0019】
そして、液滴吐出法で描画したプライマ樹脂層20を乾燥・硬化させた後に、インクジェット、ディスペンサ等の液滴吐出法により導電性のインク(Ag等の導体粒子を含むインク)をプライマ樹脂層20上に吐出して、該プライマ樹脂層20上に、配線17のパターンをLED素子13上面の電極部14と搭載部材11上面の電極部15とに跨がって描画し、これを乾燥・焼成して、LED素子13上面の電極部14と搭載部材11上面の電極部15との間を該配線17で接続する。
【0020】
この場合、プライマ樹脂層20は、配線17が該プライマ樹脂層20からはみ出さないように該配線17の線幅よりも製造ばらつき相当値以上太い線幅に形成されている。具体的には、プライマ樹脂層20の線幅は、例えば、配線17の線幅の1.2〜2.5倍、より好ましくは、1.5〜2.0倍の範囲で設定すると良い。尚、搭載部材11の素子搭載凹部12内に搭載したLED素子13及び配線17等は、透明な封止材料18によって封止されている。
【0021】
以上説明した本実施例によれば、LED素子13の電極部14と搭載部材11の電極部15との間の配線経路を絶縁性樹脂16で平坦化し、該配線経路上に撥液性のプライマ樹脂層20を形成し、該プライマ樹脂層20上に液滴吐出法で配線17を形成するため、配線17を形成するインク滴の着滴径が大きくなることを、その下地となる撥液性のプライマ樹脂層20によって防止できて、配線17の線幅が広がることを防止でき、配線17の細線化を実現できる。従って、本発明をLEDパッケージに適用する場合でも、LED素子13の側面から放出される光が配線17で遮られる割合を配線17の細線化により低減できて、外部に放出される光の取り出し効率を高めることができる。
【0022】
また、配線17の下地となる撥液性のプライマ樹脂層20をLED素子13の電極部14と搭載部材11の電極部15とに跨がって形成するようにしているため、LED素子13の電極部14と搭載部材11の電極部15との間の配線経路に、LED素子13のチップ、絶縁性樹脂16、搭載部材11等、濡れ性が異なる複数の部材が存在していても、これらをプライマ樹脂層20で覆って配線17全体の下地表面の濡れ性を均一化でき、液滴吐出法で形成する配線17の線幅や厚みが不均一になることを防止できて、配線17の線幅や厚みの均一化できる。しかも、配線17とその下地表面(プライマ樹脂層20)との密着性を向上できて、配線17が下地表面から剥がれることを防止でき、上述した配線17の線幅や厚みの均一化と相俟って配線17の断線を効果的に防止でき、LEDパッケージの配線17を細線化しながら接続信頼性も向上できる。
【0023】
しかも、本実施例では、液滴吐出法でプライマ樹脂インクを絶縁性樹脂16上に吐出してプライマ樹脂層20を線状又は帯状に形成するようにしているため、LED素子13の側面から透明な絶縁性樹脂16を通して放出される光がプライマ樹脂層20で減少される割合を少なくできて、外部に放出される光の取り出し効率を高めることができる。
【0024】
また、本実施例では、プライマ樹脂層20を配線17が該プライマ樹脂層20からはみ出さないように該配線17の線幅よりも製造ばらつき相当値以上太い線幅に形成するようにしたので、配線17の下面全体をプライマ樹脂層20に密着させることができ、配線17とプライマ樹脂層20との密着性を確実に高めることができる。
【0025】
尚、配線17を形成する方法は、液滴吐出法に限定されず、スクリーン印刷等の印刷法で形成しても良い。
その他、本発明は、LED素子以外の半導体素子を搭載部材に搭載した半導体パッケージにも適用して実施できる等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0026】
11…搭載部材、12…素子搭載凹部、13…LED素子(半導体素子)、14…電極部、15…電極部、16…絶縁性樹脂、17…配線、18…封止材料、20…プライマ樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載部材に形成した素子搭載凹部内に半導体素子を搭載し、該半導体素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間を配線で接続した半導体パッケージにおいて、
前記素子搭載凹部内の前記半導体素子の周囲の隙間に絶縁性樹脂を充填して該半導体素子側の電極部と前記搭載部材側の電極部との間の配線経路を該絶縁性樹脂で形成し、
前記配線経路上に撥液性のプライマ樹脂層を前記半導体素子側の電極部と前記搭載部材側の電極部とに跨がって形成し、
導電性のインクを前記プライマ樹脂層上に吐出又は印刷して前記配線を形成して前記半導体素子側の電極部と前記搭載部材側の電極部との間を該配線で接続したことを特徴とする半導体パッケージ。
【請求項2】
前記半導体素子は、発光素子であり、
前記絶縁性樹脂は、透明な絶縁性樹脂であり、
前記プライマ樹脂層は、液滴吐出法でプライマ樹脂インクを前記絶縁性樹脂上に吐出して線状又は帯状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体パッケージ。
【請求項3】
前記プライマ樹脂層は、前記配線が該プライマ樹脂層からはみ出さないように該配線の線幅よりも製造ばらつき相当値以上太い線幅に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体パッケージ。
【請求項4】
搭載部材に形成した素子搭載凹部内に半導体素子を搭載し、該半導体素子側の電極部と該搭載部材側の電極部との間を配線で接続した半導体パッケージの製造方法において、
前記素子搭載凹部内に前記半導体素子を搭載する工程と、
前記素子搭載凹部内の前記半導体素子の周囲の隙間に絶縁性樹脂を充填して該半導体素子側の電極部と前記搭載部材側の電極部との間の配線経路を該絶縁性樹脂で形成する工程と、
前記配線経路上に撥液性のプライマ樹脂層を前記半導体素子側の電極部と前記搭載部材側の電極部とに跨がって形成する工程と、
導電性のインクを前記プライマ樹脂層上に吐出又は印刷して前記配線を形成して前記半導体素子側の電極部と前記搭載部材側の電極部との間を該配線で接続することを特徴とする半導体パッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115070(P2013−115070A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256926(P2011−256926)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】