半導体プロセスシステムにおけるイオンソース(イオン源)のクリーニング
イオンインプランテーションシステムまたはその部材のクリーングおよび、カソードバイアス電力をモニタし、カソードをエッチングまたは再生させるための比較値に依存する修正処置による、イオンインプランテーションシステムのための間接加熱カソードのカソードの成長/エッチングを可能にする反応性クリーニング剤を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体プロセスシステムの部材上の材料の堆積をモニタし、制御し、およびクリーニングすることに関し、特にイオンインプランテーション(イオン埋め込み)に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンインプランテーションは、集積回路製造において、制御された量の不純物ドーパントを、半導体ウエハに正確に導入するために用いられ、マイクロエレクトロニクス/半導体製造において重要なプロセスである。このようなインプランテーションシステムにおいて、イオンソースは目的とするドーパント元素ガスをイオン化する。イオンは、所望のエネルギーのイオンビーム状となって、イオンソースから引き出される。引き出しは、適切に形作られた引き出し電極にわたって高電圧を印加することにより達成される。引き出し電極は、引き出されたビームを通過させるためのアパーチャを組み込む。その後、半導体ウエハ等の加工対象物にドーパント元素をインプラントするために、イオンビームは加工対象物の表面に向けられる。ビームのイオンは、加工対象物の表面を貫通し、所望の導電性を有する領域が形成される。
【0003】
業務用イオンインプランテーションシステムにおいては、熱電極を使用し電気アークで駆動されるフリーマンおよびバーナスタイプ、マグネトロンを使用するマイクロ波タイプ、間接的に加熱されたカソードソース、およびRFプラズマソースを含む、いくつかのタイプのイオンソースが一般的に使用される。これらは、典型的には真空内で処理される。ドーパントガス(一般的に「原料ガス」と言われる)で満たされた真空チャンバ内に電子を導入することで、イオンソースはイオンを生成する。ガス中のドーパント原子および分子と電子との衝突の結果、ドーパント陽イオンとドーパント陰イオンとからなるイオン化されたプラズマが生成する。負または正バイアスを有する引き出し電極は、それぞれ陽または陰イオンに、平行化されたイオンビームとして、イオンソースの外に向けて、アパーチャを通過させる。イオンビームは、加工対象物に向けて加速される。原料ガスには、BF3、B10H14、B18H22、PH3、AsH3、PF5、AsF5、H2Se、N2、Ar、GeF4、SiF4、O2、H2およびGeH4が含まれるが、これらに限定されない。
【0004】
現在の技術水準における、デバイス製造においては、10から15ものインプランテーションの工程が存在する。ウエハサイズの大型化、限界寸法の縮小、および増大する回路の複雑さは、イオンインプラントツールに、より良好なプロセス制御、低エネルギーでの高ビーム電流の放出、および平均故障期間(MTBF)の低減に関してより大きな要求を課している。
【0005】
最もメンテナンスが必要なイオンインプラントツールの部品は、オペレーション状態に応じて100〜300時間前後のオペレーションの後に補修が必要なイオンソースと、通常数百時間のオペレーション後にクリーニングが必要な引き出し電極および高電圧絶縁体と、イオンソースターボポンプおよび関連するフォアラインを含むイオンインプラント真空システムのフォアラインおよび真空ポンプとを含む。さらに、フィラメント、カソード等のイオンソースのさまざまな部材は、オペレーション後に交換することが必要となりうる。
【0006】
理想的な場合には、全ての原料分子がイオン化されて引き出されることになる。しかし、実際には一定量の原料が分解される結果、イオンソース領域における堆積および汚染が生じる。例えば、リン残渣(例えば、ホスフィンのような原料ガスの使用に由来する)は、直ちにイオンソース領域の表面上に堆積する。残渣は、イオンソースの低電圧絶縁体上にも生じることがあり、熱電子の生成に必要なアークを妨害する、電気的短絡回路を引きおこす。この現象は、一般的に「ソースグリッチング」として知られる。これは、イオンビームの不安定性の主な原因となり、最終的にイオンソースの早期障害を引き起こしうる。残渣は、ソース絶縁体または引き出し電極の表面のような、イオンインプランタの高電圧部材にも生成され、高エネルギーの高電圧スパークを生じる。このようなスパークはビームの不安定性の他の原因となる。そして、このようなスパークによって放出されたエネルギーは、敏感な電子部材に損傷を与え、装置障害の増加や不十分なMTBFへとつながる。
【0007】
他の一般的な問題は、固体ドーピング材料としてSb2O3を使用した、アンチモン(Sb+)のインプラントによって生じる。この問題は、Sb+のインプラントのわずか数時間後にホウ素(B)のインプラントを実行することにより悪化する。ホウ素ビーム電流は著しく劣化し、イオンソースの性能と寿命に重大な障害が発生する。この性能劣化の原因は、ソースチャンバとその部材に過剰に堆積したSbにある。より頻繁な予防的メンテナンスまたはより小さなビーム電流に起因するスループットの低下により、イオンソースの不具合は、インプラント装置の生産性を著しく低下させる。Sbインプランテーションは、アナログバイポーラ装置において広く使用され、また、MOS(Metal Oxide Semiconductor)装置の浅い接合形成のためのn型ドーピングとしても使用されている。このため、Sb+をドーパントとして使用するとき、特にSbインプラントの後にBに変更するときに、ソースチャンバおよびその部材上に堆積するSbを除去可能な方法を技術的に開発することが求められている。
【0008】
さらに、B、Ge、Si、PおよびAsのようなドーパント原子は、ソースターボポンプ、その関連する真空フォアラインの下流、およびフォアラインの下流に位置する粗引きポンプに堆積することがある。時間とともに、これらの堆積物は蓄積し、手作業で今まで行われているクリーニングが必要となる。しかし、これらの堆積物のいくつか(例えば、固体リン)は、自然発火性であり、手作業のメンテナンス作業中に発火する可能性がある。これは火災になるだけでなく、毒性化合物の放出にもなりうる。従って、望ましくはガス状のクリーニング剤により、インサイチュ(in−situ)で堆積物をクリーニング可能な改良された方法を開発することが、技術的に必要である。
【0009】
もう一つのイオンソース障害の原因として、さまざまな材料(例えば、タングステン(W))が、延長されたイオンインプラントプロセスの間にカソード上に蓄積するかもしれない。これらが決定的なレベルに一度達してしまうと、カソード電力は、もはやビーム電流設定値を満たすのに十分な温度を維持することができなくなる。これはイオンビーム電流のロスを引き起こし、イオンソースの交換が必要となる。結果的に生じるイオンソースの性能劣化と短い寿命は、イオンインプラント装置システムの生産性を低下する。
【0010】
しかし、イオンソース障害のもう一つの原因は、カソード材料の侵食(またはスパッタリング)である。例えば、カソードからの金属材料(例えば、W、Mo等)は、アークチャンバのプラズマ中のイオンによりスパッタされる。スパッタリングは、プラズマ中の最も重いイオンに支配されるので、イオン質量が増加するにつれてスパッタリング効果が悪化する。実際に、材料の継続的なスパッタリングは、カソードを"薄く"し、最終的にカソードの穴の形成へと導く("カソード突き抜け")。イオンソースの性能と寿命は、結果として、大きく減少する。従って、この技術は、イオンソースの寿命を延長するために、カソード上の蓄積と侵食のバランスを維持することができる方法を求め続ける。
【0011】
さらに、システムの状態に応じて、残渣は、ソース材料とイオンインプランテーションシステムの部材との反応によって生じることがある。このような反応は、システムの追加的な部材上に残渣の堆積を引き起こすことがある。例えば、タングステンウィスカは、アークチャンバ引き出しアパーチャ上に生じ、この結果としてビームが不均一となる問題が生じる。
【0012】
堆積は、フィラメントおよび反射電極のようなイオンソース素子において生じることが一般的である。このような内部堆積は、一般的にアークチャンバ材料からなり、タングステンまたはモリブデンから構成されるアークチャンバと併せて、フッ化物ソース原料に高プラズマパワーを適用したときに最も一般的に見られる。ハロゲン非含有ソース材料を使用したイオンインプランテーションにおけるイオンソースの平均寿命は、一般的に約100〜300時間であるが、GeF4のようないくつかのハロゲン含有材料を用いると、ソースオペレーション上の内部堆積の有害な効果により、イオンソース寿命は10〜50時間まで低くなりうる。
【0013】
イオンインプラント装置内の残渣により引き起こされるオペレーション上の問題に加えて、部材がクリーニングのために取り除かれるときに、毒性または腐食性のガスによって生じる重大な人的安全上の問題もある。安全上の問題は、残渣が存在するあらゆる場所で生じる。しかし、イオンソースはイオンインプラント装置の最も頻繁にメンテナンスされる部材なので、イオンソース領域においては、特に懸念される。停止時間を縮小するために、汚染されたイオンソースは、室温よりも大きく上回る温度で、しばしばイオンインプラント装置から除去される。これは、ガスの放出を増大し、安全上の問題を悪化させる。
【0014】
上記問題を処理する従前の方法は、堆積の形成を予防し、結果的に引き出し電極とイオンソース上(言い換えれば、米国特許出願公開2006/0272776号明細書、米国特許出願公開2006/0272775号明細書、国際公開2005/059942号に記載されているように、引き出し電極上)に生じた堆積をクリーニングする試みを含んできた。しかし、イオンインプランテーションシステムの全ての要素をクリーニングする追加的なプロセスが未だに必要であった。
【0015】
従って、イオンインプランテーションの技術において、それにより、黒鉛電極のような繊細な部材を損傷させかねない如何なる機械的摩擦なしに、インプラント装置から除去された汚染された部材を安全にクリーニングすることができる、分離されたクリーニングステーションを用いたエクスサイチュのクリーニングプロセスを提供することが望まれていた。従って、最小の停止時間で、インプラントシステムからの除去に引き続いて、選択的および非破壊的に部材をクリーニングするために使用できるライン外のクリーニングステーションを提供することも、イオンインプランテーションの技術分野において、重大な進歩をもたらすだろう。
【0016】
従って、インプラントの至るところ、特にイオンソース領域にインプランテーション中に堆積された望まれない残渣を効果的かつ選択的に除去するための、インサイチュのクリーニングプロセスを提供することも、イオンインプランテーションの技術分野において、重大な進歩をもたらすだろう。このようなインサイチュのクリーニングは、人的な安全性を強化し、安定した中断のないインプランテーション設備のオペレーションに寄与するだろう。
【0017】
インサイチュクリーニングプロセスは、プロセスチャンバを分解することなく実行される。インサイチュプロセスにおいて、蓄積した膜を除去するために、連続方式で、パルス方式で、又は連続およびパルスのハイブリッド方式で、ガス状物質がプロセスチャンバを通じて流される。状況に応じて、そのようなクリーニングの間、プラズマが生成されてよく、生成されなくてもよい。
【0018】
プラズマレスまたは三フッ化塩素(ClF3)および他のフッ素ソース材料(例えば、CF4、NF3、C2F6、C3F8、SF6、およびClF3)を使用するドライクリーニングプロセスは、例えば、固体残渣と反応して、真空または他の除去条件によってプロセスチャンバから除去可能な揮発性の反応生成物を生成することにより、固体残渣を半導体プロセスチャンバから除去するのに用いることができる。そして、そのような例において、これらのクリーニング試薬は、上昇したクリーニング温度条件を必要としてもよい。
【0019】
Y.Saito et al.,"Plasmaless Cleaning Process of Silicon Surface using Chlorine Trifluoride,"APPLIED PHYSICS LETTERS, vol.56(8),pp.1119−1121(1990)を参照されたい。D.E.Ibbotson et al.,"Plasmaless Dry Etching of Silicon with Fluorine−Containing Compounds," JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,vol.56(10),pp.2939−2942(1984).も参照されたい。
【0020】
米国特許第4,498,953号は、チャンバ内で予め決定された圧力を維持しながら、BrF5、BrF3、ClF3またはIF5のようなハロゲン間化合物がプロセスチャンバを通して連続的に流入される、インサイチュクリーニング方法を記載している。処理の最後で、ハロゲン間化合物ガスの流入は終了する。このようなプロセスは、Cl、BrまたはIを含む副生成物だけでなく、フッ素を含む副生成物を生じる。これらによって、処理が必要な大量の有害な廃棄物または他の堆積物が発生する。その上、このような連続的な流入によるクリーニングは、クリーニング効率が実質的に減少するような、とても低い圧力条件下で行われる。
【0021】
いくつかのイオンソースの適用においては、より長いイオンソース寿命を達成するために、BF3、PH3および/またはAsH3の戦略的な順番が用いられる。
【0022】
半導体プロセス設備のクリーニングのためのフッ素ラジカルまたはフッ素含有ハロゲン間化合物の使用は、商業的可能性を制限する欠陥に結び付く。フッ素ラジカルおよびClF3を含むフッ素含有ハロゲン間化合物は、チャンバ内においては高腐食性である。さらに、ハロゲン間化合物は、人の気道に対して激しい刺激物である。例えば、ClF3ガスの人に対する許容範囲の閾値は、100ppbと低く、LC50は1時間で約300ppmである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
この技術は、新しいクリーニング試薬、エクスサイチュ(ex−situ)およびインサイチュ(in−situ)システム、プロセスおよび関連するモニタリング、制御装置および方法を求め続ける。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願発明は、概ね、イオンインプランテーションシステムのモニタリング、制御、およびクリーニング装置および方法、またはその部品に関連し、そのようなクリーニングに有益に用いられる組成に関する。
【0025】
この発明の一側面によれば、システムのオペレーション中にイオンインプランテーションシステムのフィラメントの状態をモニタする方法を提供する。その方法は、(a)アークチャンバ内でプラズマを発生させるのに十分な初期電流で、イオンソースのアークチャンバ中でフィラメントを活性化することと、(b)連続的なプラズマ生成の予め定められた時間に、アークチャンバ内でプラズマを維持するためにフィラメントに入力される電流を測定することと、(c)初期電流と、予め定められた時間に測定された入力電流を比較することと、(d)その比較から、材料がフィラメント上に堆積したかどうか、またはフィラメントのエッチングが発生したかを決定することとを備える。ここで、初期電流との比較において、所定時間でのより大きな電流は、材料のフィラメント上の堆積を示し、初期電流との比較において、所定時間でのより小さな電流は、フィラメントのエッチングを示す。
【0026】
この発明の別の側面によれば、システムのオペレーション中にイオンインプランテーションシステムのフィラメントの状態を制御する方法を提供する。その方法は、(a)アークチャンバ内でプラズマを発生させるのに十分な初期電流で、イオンソースのアークチャンバ中でフィラメントを活性化することと、(b)連続的なプラズマ生成の予め定められた時間に、アークチャンバ内でプラズマを維持するためにフィラメントに入力される電流を測定することと、(c)初期電流と、予め定められた時間に測定された入力電流を比較することと、(d)その比較から、材料がフィラメント上に堆積したかどうか、またはフィラメントのエッチングが発生したかを決定することであって、初期電流との比較において、所定時間でのより大きな電流は、材料のフィラメント上の堆積を示し、初期電流との比較において、所定時間でのより小さな電流は、フィラメントのエッチングを示すことと、(e)この決定に対応して、初期入力電流を回復する程度またはこの初期入力電流の予め定められた範囲内の入力電流となる程度まで、フィラメントから堆積した材料を除去すること、またはフィラメント上に追加の材料を堆積することと、を備える。この形態のもう一つの実施形態では、ステップ(a)から(d)は、イオンインプランテーションプロセス中に実行されてよく、ステップ(e)はイオンインプランテーションプロセスの前後または間に行ってもよい。
【0027】
もう一つの側面において、本発明は、システムのオペレーション中に、イオンインプランテーションシステムの間接加熱カソード(IHC)ソースの状態を制御する方法を提供する。この方法は、(a)予め定められた時間におけるカソードバイアス電力供給を測定することで、間接加熱カソードソースの消費電力を決定することと、(b)予め定められた時間における消費電力と初期電力とを比較することと、(c)この比較に応じて、間接加熱カソードの状態を制御するために(i)または(ii)の修正動作を行うこととを備え、(i)はもし予め定められた時間の消費電力が初期電力よりも高ければ、間接加熱カソードをエッチングすることであり、(ii)はもし予め定められた時間の消費電力が初期電力よりも低ければ、間接加熱カソードを再生することである。
【0028】
初期電力は、予め定められた時間の測定に先立つ時間におけるカソードバイアス電力の値を含む。例えば、始動時の電力、または通常オペレーション条件下か、他のいかなる予めセットされたポイントの時間または値における電力でよい。カソードバイアス電力測定および初期電力値は、インプラントプロセスまたは他の状況によって決まる1または複数の範囲の形式であってよいことが、技術者に理解されるだろう。(c)(i)におけるエッチングは、エッチングに十分となるような低〜中温度条件下で、間接加熱カソードを操作することを含んでよい。ここで、低〜中温度は、例えば、概ね室温から約2000℃である。
【0029】
(c)(ii)の再生は、間接加熱カソード上にプラズマ状態でフッ素化ガスを流すことを含む。ここで、フッ素化ガスは、XeF2、XeF4、XeF6、GeF4、SiF4、BF3、AsF5、AsF3、PF5、PF3、F2、TaF3、TaF5、WF6、WF5、WF4、NF3、IF5、IF7、KrF2、SF6、C2F6、CF4、ClF3、N2F4、N2F2、N3F、NFH2、NH2F、BrF3、C3F8、C4F8、C5F8、CHF3、CH2F2、CH3F、COF2、HF、C2HF5、C2H2F4、C2H3F3、C2H4F2、C2H5F、C3F6およびMoF6のうち、1または複数を含む。(c)(ii)の再生は、金属堆積が起こるのに十分な高温条件下で、間接加熱カソードを操作することを含む。ここで、高温とは、例えば、2000℃を超える温度である。修正ステップ(c)は、イオンインプランテーションプロセスの前後または間に実行されてよい。さらに、もし直前に説明したフッ素化ガスのうち一つからインプラント種(Implanted Species)が選択されるならば、修正ステップは、再生のために、インプランテーションプロセスの間に実行されてもよい。
【0030】
上記された、または明細書中の他の箇所に記載された方法のステップは、マイクロ制御装置、制御装置、マイクロプロセッサ等、およびそれと関連する電気的、電子的および/または電気機械的な部材のような、適切な制御装置によって実行される。これらは、フィラメント、反射電極、カソードおよび対カソードなどのイオンソース部材のリペアまたはクリーニングを自動的に実行するように概ね構成および/またはプログラムされる。
【0031】
本発明のさらにもう一つの側面は、イオンソースのアークチャンバ内のフィラメントまたはカソード(またはエッチングされ、または堆積を有する、対カソードと反射電極等のようなイオンソースの他の部品でもよいが、これらに限定されない)を含むイオンインプランテーションシステムを動作させる方法を提供して、イオンソースの動作効率を維持する。この方法は、(a)および(b)からなるグループから選択される条件下で、イオンソースのフィラメント、カソードまたは他の部品と、前記したようにタングステン試薬とを接触させることを含む。(a)は、フィラメント上にタングステンの堆積を生じさせるような条件であり、(b)は、堆積された材料がフィラメントからエッチングされるような条件である。
【0032】
ここで、1つの実施形態においては、他のイオンソース部品、例えば、(カソードおよびフィラメントにそれぞれ対応する)カソード、および反射電極等に、選択的にそこに材料を堆積し、またはそこから材料をエッチングするため、これらの部材の表面温度を調節するのに適した加熱素子が与えられる。さらにもう一つの実施形態では、間接加熱カソード(IHC)イオンソースは(カソードと対カソードの代わりに)2つのカソードを含んでよい。インプランテーションの間、1つのカソードは対カソードとして操作されてよく、修理または修正プロセスの間、材料を堆積し、またはエッチングするために、両方のカソードの温度は必要に応じて制御されてよい。
【0033】
本発明のさらなる側面は、1または複数の部材からイオン化に関連した堆積物を少なくとも部分的に除去するために、イオンインプランテーションシステムの当該1または複数の部材をクリーニングする方法に関連する。この方法は、(a)および(b)からなるグループから選択される条件下でシステムにクリーニングガスを流すことを含む。(a)は、フィラメント、カソード、または上記したような他のイオンソース部品上に材料の堆積を生じさせるような条件であり、(b)は、堆積された材料がフィラメント、カソード、または上記したような他のイオンソース部品からエッチングされるような条件である。
【0034】
本発明のさらなる側面は、アークチャンバ内において、イオンソースのフィラメントの予め定められた電気抵抗を維持する方法に関連する。この方法は、アークチャンバ壁の温度と関連するフィラメントの温度に応じて、フィラメントと、当該フィラメント上に材料を堆積するのに有効な試薬またはフィラメントから材料をエッチングするのに有効な試薬とを接触させることと、フィラメントにおいて材料の堆積またはエッチングを生じさせて、予め定められた電気抵抗を維持するために、フィラメントの温度およびアークチャンバ壁の温度を制御することとを含む。一般的に、フィラメント上での材料の堆積物は、フィラメントの温度が十分に高ければ(例えば、2000℃以上)、アークチャンバ壁が(フィラメントの温度よりも低い)低〜中温度である限り、生じる。フィラメントからの材料のエッチングは、アークチャンバ壁の温度とは関係なく、フィラメントが低〜中温度(例えば、1500〜2000℃よりも低い)であれば生じる。ただし、アークチャンバ壁の温度はフィラメントの温度よりも低いまたは高いことが望ましい。
【0035】
本発明のもう1つの側面は、イオンインプランテーションシステムまたはその1以上の部材をクリーニングし、イオン化に関連する堆積物をそこから取り除く方法に関連する。その方法は、当該BrF3が堆積物と化学的反応性がある条件下で、イオンインプランテーションシステムまたはその1以上の部材と、BrF3とを接触させて、少なくとも部分的に堆積物の除去をすることを含む。
【0036】
本発明のもう1つの側面は、イオンインプラントシステムのフォアラインをクリーニングして、イオン化に関連した堆積物をそこから除去する方法に関連する。その方法は、クリーニングガスが堆積物と化学的反応性を有する条件下で、イオンインプランテーションシステムのフォアラインと、クリーニングガスとを接触させて、少なくとも部分的に堆積物の除去をすることを含む。そのような方法により、イオンインプラントシステムの性能を向上させ、寿命を延長することができる。
【0037】
もう1つの側面として、本発明は、イオンインプラントシステムの性能を向上させ、寿命を延長する方法に関連する。この方法は、カソードと、少なくとも1つのクリーニングガスと少なくとも1つの堆積ガスを含む混合ガスとを接触させることを含む。ここで、この混合ガスは、カソード上の材料の堆積と、カソードからの同一のまたは他の材料の侵食とのバランスを均衡させる。
【0038】
本発明の他の側面、特徴、および実施形態は、この後の開示と添付されたクレイムによって、さらに完全に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】インサイチュクリーニングプロセスによって寿命が増加したことが示される、当該プロセスの導入の前後におけるソース寿命データのグラフである。
【図2】実施例1で説明される、抑制漏れ電流におけるXeF2の効果を示すグラフである。
【図3A】実施例1で説明される、インサイチュクリーニング効果の証拠を示す写真である。
【図3B】実施例1で説明される、インサイチュクリーニング効果の証拠を示す写真である。
【図4A】実施例5で説明される、インサイチュクリーニング効果を示す。
【図4B】実施例5で説明される、インサイチュクリーニング効果を示す。
【図5A】フィラメント重量の増加を示すグラフである。
【図5B】XeF2を流す経過時間とフィラメント電流のグラフである。
【図6】XeF2を流したシステム内における、タングステン移動に関連したフィラメント電流の関数としてのフィラメント重量の変化のグラフである。
【図7】時間とガスの種類の関数としてのカソードバイアス電力の変化を示すグラフである。
【図8】バイアス電力の関数としてのカソードWの重量変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、半導体プロセスシステムおよび/またはその部材をモニタし、制御し、クリーニングする装置および方法に関連し、そのようなクリーニングのための組成物に関連する。
【0041】
1つの側面において、本発明は、半導体プロセスシステムまたは半導体プロセスシステムの部材から堆積物を除去することに関連する。ここで、システムおよびシステムの部材は、気相反応材料を含むクリーニング組成物と接触させられる。
【0042】
ここで用いられるように、「気相反応材料」という用語は、ガス状(gaseous)または霧状(vapor)のハロゲン化合物および/または複合体、またはそうような化合物および/または複合体のイオンおよびプラズマ、およびイオンとプラズマを含む材料を意味すると広く解釈させることが意図される。本発明の広範な実施において利用される気相反応材料は、「気相反応組成物」、「クリーニング剤」、「クリーニングガス」、「エッチャントガス」、「ガス状ハロゲン」、「ガス状クリーニング剤」、「反応性ハロゲン」、「クリーニング化合物」、「クリーニング組成物」、「クリーニング気体」、「エッチャント気体」またはそのような用語のいかなる組み合わせとして、限定することなく、さまざまに言及される。
【0043】
ここで使用されるように、イオンインプランタへの言及で「イオンソース領域」とは、限定することなく、真空チャンバ、ソースアークチャンバ、ソース絶縁体、引き出し電極、抑制電極、高電圧絶縁体、ソースブッシング、フィラメント、カソードおよび反射電極を含む。「イオンソース領域」という用語は、その最も広い意味で用いられることが、当業者に理解されるであろう。例えば、バーナスまたはフリーマンイオンソースアセンブリは、フィラメントおよび反射電極を含み、IHCソースアセンブリはカソードと対カソードを含む。
【0044】
本発明は、半導体プロセスシステムおよびその部材、さらにそれらの通常のプロセスオペレーション中に堆積物が生じやすい他の基板や装置のクリーニングを目的とする。限定することなく、そのような実施は、粗引きポンプおよび真空フォアラインのクリーニングを含む。ここの記載から当業者にとって明らかであるが、クリーニングガスは、インプランタのあるエリアおよび/または特定のエリアをバイパスするために、複数のポートのうち選択されたポートを通じて流されてよい。例えば、XeF2または他のクリーニングガスは、クリーニングガスを必要とするエリアに近いポートを通して供給されてよい。大部分のクリーニングガスが、ターゲットエリアに導かれ、(例えば、クリーニングガスがイオンソースチャンバのみを通じて導入された場合に生じ得るように)流路に沿って残渣と反応して消費されない限り、クリーニング性能は、同様に強化され得る。選択されたポートは、予め存在し、またはそのような目的のため形成/作成されてよい。
【0045】
この技術は、これらに限定されないが、インプランタのイオンソース領域、磁気的/解析器領域、真空システム、プロセスチャンバ等のクリーニングのために用いられてよい。クリーニングは、予め定められた時間、インプランタの所望のエリアまたは領域を通じておよび/またはに渡って、クリーニングガスを連続的に流すことで実現されてよい。これに代えて、またはこれと共に、クリーニングガスを拡散し、および不要な残渣および/または堆積物と反応させるために、予め定められた時間、クリーニングガスをシステム内で閉じ込めてもよい。
【0046】
本発明は、さまざまな側面で、所望のフィラメント成長、またはその代わりのフィラメントエッチングを生じさせるために、アークチャンバ内の温度を適切に制御することで、イオンインプランテーションシステムに、アークチャンバのイオンソース内のフィラメントを成長させ/エッチングする能力を与える。
【0047】
本発明の追加的な側面は、WFx、AsFx、PFxおよびTaFxのような反応性ガスの使用に関連する。ここで、xは、プラズマまたは昇温条件下での、インサイチュまたはエクスサイチュクリーニング配置において、イオンインプランタの領域またはイオンインプランタの部材のクリーニングのために化学量論的に適切な値または値の範囲を有する。
【0048】
本発明のさらなる側面によれば、室温、昇温、またはプラズマ条件下におけるインサイチュまたはエクスサイチュクリーニング配置において、イオンインプラントシステムまたはその部材のクリーニングのための、BrF3の使用に関連する。
【0049】
イオンインプランテーションシステムのオペレーションは、システムおよびその部材におけるイオン化関連材料の堆積を結果として生じる。本発明の目的は、システムおよび/またはその部材から、そのようなイオン化関連堆積物を少なくとも部分的に除去するために、イオンインプランテーションシステムまたはその1以上の部材のモニタリング、制御、クリーニングをすることである。クリーニング方法は、システムおよび/またはその部材と、気相反応材料を含むクリーニング組成物とを、気相反応材料と堆積物との反応を可能にする条件下で、接触させて、それらを少なくとも部分的に除去することを含む。
【0050】
原料ガスそれ自体から生じるイオン化関連堆積物に加えて、イオンインプランテーションシステム内に形成される堆積物または残渣は、システム部材が製造される材料との原料ガスの反応性から生じ得ることが判明した。例えば、イオンインプランテーションシステムの真空チャンバは、ステンレス鋼またはアルミニウムを使用して製造され得る。真空チャンバ内のシステム部材は、(例えば、通常のまたはガラス状の)グラファイト、絶縁材料(例えば、窒化ホウ素)、および/またはテフロン(登録商標)、Kel−F(TM)、PEEK(TM)、Delrin(TM)、Vespel(TM)、Viton(TM)、Buna−N、シリコン等の封止材料を利用して製造されてよい。イオンインプランテーションシステム内に存在でき、その中で堆積を生成する化学反応が生じやすい他の材料は、セラミックス、酸化鉛を含むエポキシ組成物、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化シリコン、窒化ホウ素を含むがこれらに限定されない。
【0051】
イオンソース自体は、時々少量の銅および銀を含む、タングステン、グラファイト、モリブデン、またはタンタルから製造されてよい。イオンソースアークチャンバは、通常タングステンまたはモリブデンから、または、タングステンまたはモリブデンで裏打ちされたグラファイトボディとともに製造される。そのような環境下で、フッ化物ソース供給原料(例えば、BF3、GeF4、SiF4、AsF5、AsF3、PF5および/またはPF3)は、使用温度において、アークチャンバ材料(例えば、チャンバまたはその裏張りからのタングステンまたはモリブデン)と反応して、中間副生物を生成する。中間生成物は、次々にシステム内にマイグレートして分解し、タングステンまたはモリブデンを堆積し、フッ素を放出する。
【0052】
例えば、GeF4のような原料ガスは、イオンソースチャンバ内で分解し、その結果生じたフリーなフッ化物は、タングステンのようなアークチャンバの材料にアタックする。この反応は、プラズマが衝突し、従ってフィラメントが熱ければ、タングステンのより冷たい表面上で生じる。フッ化物はアークチャンバの壁上のタングステンと反応し、壁をエッチングしてWF6ガスを生じる。WF6は、その後、熱いフィラメント上にタングステンを堆積させ、そのサイズを成長させる。
【0053】
GeF4が大量のフリーなフッ素を生じる一方、BF3またはSiF4のような原料ガスは、より少量のフリーなフッ素と、対応して低レベルの(といっても依然かなりの)タングステン堆積をフィラメント上に生じる。
【0054】
PH3およびAsH3のようなフッ素を含有しない原料ガスは、フィラメントからの金属をアークチャンバ壁に堆積し、結果としてフィラメントを薄くするという点で問題になり得る。
【0055】
従って、本発明は、アークチャンバ材料と同一のイオン化関連堆積物の少なくとも部分的な除去のために、イオンインプランテーションシステムまたはその部材をクリーニングすることを目的とする。
【0056】
本発明によれば、クリーニングは、複数の原料ガスが共にシステムに導入される、イオンインプランテーションシステム内で実行されうる。原料ガスは、1以上の気相反応材料と共に使用され、または代わりに1以上の気相反応材料と共にシステム内に律動的に送り込まれてもよい。
【0057】
本発明のクリーニング方法が示すイオン化関連堆積物は、イオンソースまたは他のイオン化プロセス装置内で形成し、および蓄積するようなことによってイオンインプランテーションシステムの通常のオペレーションを妨げうる様々な材料を含む。堆積された材料は、シリコン、ホウ素、リン、ゲルマニウム、砒素、タングステン、モリブデン、セレニウム、アンチモン、インジウム、炭素、アルミニウムおよび/またはタンタルを様々に含み、またはこれらから原則的に構成されうる。
【0058】
イオンソースアークチャンバ内および引き出し電極上のイオン化関連堆積物は、剥がれ落ち、微粒子を形成しうる。これらの粒子は、一度形成されると、イオンビーム(例えば、ウエハ内にインプラントされるドーパントイオンのビーム)内に移動しうる。もし、そのように移動した粒子がウエハに到達すると、ウエハ上に結果的に生じる粒子汚染は、当該ウエハ上に製造される使用可能な装置の収量を著しく低下させかねない。本発明のクリーニングプロセスは、剥がれおよび粒子が形成される前に、そのようなイオン化関連堆積物を除去し、それによって製品ウエハ上の粒子の低減を達成し、半導体装置の収量を増加させる。
【0059】
本発明によれば、クリーニングに使用される気相反応材料またはクリーニングガスは、イオンインプランテーションシステム内のイオン化関連堆積物を少なくとも部分的に除去するのに効果的なあらゆる材料を含んでよい。
【0060】
本発明の目的は、反応を適切に制御することで、イオン化関連堆積物を望ましくない場所から除去し、および/または、好適な場所に材料を堆積させるために気相反応材料を使用することである。本発明の特定の実施形態においては、タングステンは、不要な堆積物として除去される材料である。そして、他の実施形態においては、望ましいものとして表面に堆積され、その存在が有益なものとなる。従って、XeF2、GeF4、SiF4、BF3、AsF5、AsF3、PF5および/またはPF3のような、フッ化タングステン中間生成物を生成する反応性のガスは、本発明の制御およびクリーニング方法に用いられる。さらに、WF6、WF5および/またはWF4のようなフッ化タングステンガスは、本発明の制御およびクリーニング方法において直接利用されてよい。そのため、本発明の気相反応材料は、XeF2、GeF4、SiF4、BF3、AsF5、AsF3、PF5、PF3、F2、TaF3、TaF5、WF6、WF5および/またはWF4を含むが、これらに限定されない。
【0061】
さまざまな特定の実施形態において、気相反応材料は、クリーニング強化剤または気相反応材料の揮発性を向上する共同反応剤と共に投与されてもよい。その結果、クリーニング強化剤または共同反応剤を用いずに気相反応材料を用いる場合よりも、より多くの堆積物が除去される。例えば、XeF2によるイリジウム堆積物の除去は、ルイス塩基および電子逆供与種を共に投与することにより強化されうる。特定の応用において、一酸化炭素、三フッ化ホスフィン、およびトリアルキルホスフィンが用いられうる。
【0062】
さらに別の例として、イオンインプランテーションシステムにおいては、アークチャンバは、片面上にフィラメントが、他面上に反射電極が、セラミック絶縁体により壁から離されて、取り付けられたタングステン壁を有し、アークチャンバ内で維持されるプラズマ内で供給ガスがイオン化される。ここで、アークチャンバの部材は、供給ガス、アークチャンバの要素およびカーボンの分解生成物で汚染されうる。
【0063】
このような環境において、XeF2のような揮発性フッ化物を生じるタングステンのような金属の、汚染の除去に有用なクリーニング剤は、炭素をCO、CO2および/またはCOF2に変換することにより、汚染炭素の除去に有効な酸素含有添加剤と組み合わされてよい。そのような目的に有用な酸素含有添加物成分は、本発明の特定の実施形態において、NO、N2O、NO2、CO2および/またはO2を含むが、これに限定されない。
【0064】
従って、本発明の目的は、金属の揮発性(ガス状)フッ化物化合物を生成する反応により、そのような金属の汚染を除去するのに有用なクリーニング剤と、揮発性酸化物またはその酸化フッ化物を生成することにより、炭素汚染を除去するのに有効なクリーニング剤の両方を含むクリーニング組成物である。これらのクリーニング試薬は、アークチャンバ内に同時にまたは連続して流されてよい。
【0065】
1つの実施形態においては、金属および炭素汚染を、チャンバの機械的ポンプ作業により容易にチャンバから除去される揮発性化合物に変換するために、両方のクリーニング剤をイオン化する。このため、これらの試薬は、イオン化条件下で、アークチャンバ内に同時に流される。
【0066】
気相反応材料および堆積物の反応を可能にする条件は、温度、気圧、流量、組成物等のいかなる適切な条件をも含む。そのような条件下では、気相反応材料は、基板(例えば、堆積された物質で汚染されたインプランタ装置の表面)からそのような材料を除去するために、汚染と接触し、化学的に相互作用する。
【0067】
採用されうるさまざまな状態の例は、室温、室温を超える温度、プラズマの存在、プラズマの不存在、大気圧未満の気圧、大気圧、大気圧超の気圧を含むが、これに限定されない。
【0068】
さまざまな実施形態における、接触して堆積物を除去する気相反応材料のための特定の温度は、約0℃〜約2000℃の範囲であってよい。接触は、気相反応材料の移動を含んでよく、それは、キャリアガスによって、またはそれ自体で、またはさらなるクリーニング剤またはドーパント等との混合物内で行われてよい。反応速度を向上させる目的で、室温中での堆積物との化学反応のために、気相反応材料を加熱してもよい。
【0069】
クリーニング剤と汚染物質との反応のさまざまな特性に基づいて、気相反応材料と汚染堆積物との反応は、モニタされ、および/または、管理されてよい。そのような反応特性は、気圧、時間、温度、濃度、特定種の存在、圧力変化率、(特定種の)濃度変化率、電流変化等を含んでよい。従って、気相反応材料のシステムへの導入は、反応の所定の特性の達成に基づいて、終了されうる。この反応の所定の特性として、真空チャンバ内の所定の圧力、所定時間の経過、または所定温度、システム内の特定要素の濃度、システム内の特定の副生成物、反応生成物または他の種の存在、またはモニタリングオペレーション中における所定電流条件の実現のようなことがあげられる。
【0070】
タングステン堆積物は、供給ガスとインプランタシステムのアークチャンバとの反応の結果生じる。そのような堆積物のクリーニングで使用される方法は、システムの温度勾配および/またはフィラメントに対するおよびフィラメントを通過する電流、および/または有用に決定され、モニタされうる他の如何なる特性に依存してよい。
【0071】
例えば、供給材料からのフッ素は、反応(1)または(2)により、第1温度においてアークチャンバと反応して、WF6を生成してよい。
3F2(g)+W(s)→WF6(g) (1)
6F(g)+W(s)→WF6(g) (2)
同様に、(3)のようなクリーニングガスとアークチャンバのタングステン材料との間の反応があってもよい。
3XeF2+W→3Xe+WF6 (3)
これに代えて、WF6(またはWF5またはWF4)は、システムに直接供給されてもよい。
【0072】
フッ化タングステンは一度形成されると、またはシステムに存在すると、システム内の他の場所にマイグレートする。その「他の場所」の温度によって、フッ化タングステンは、その場所においてタングステンをエッチングし、または堆積する。フィラメント上では、主として実際の通過する電流量によって、その温度が決まる。アークチャンバ内の他の場所の温度は、アークチャンバの特定の場所およびデザイン、フィラメント電流、および他のフィラメント外の電流に応じて変化してよい。
【0073】
もし、第2の場所が高温であれば、フッ化タングステンは分解され、タングステンが堆積されて、フッ素が放出される。フッ化タングステンが存在し続ける限り、タングステン堆積物の大きさは成長する。堆積反応は、以下の反応(4)、(5)および/または(6)を含んでよい。
WF6→W+3F2 (4)
2WF5→2W+5F2 (5)
WF4→W+2F2 (6)
【0074】
これに対して、もし第2の場所が室温であれば、フッ化タングステンは、タングステンを除去し、反応生成物中にフッ素を保持して、その場所をエッチングする。そのため、エッチングされた場所は、エッチングが続く限り縮小する。そのようなエッチング反応は、以下の反応(7)、(8)および/または(9)を含んでよい。
WF6(g)+2W(s)→3WF2(g) (7)
2WF6(g)+W(s)→3WF4(g) (8)
5WF6(g)+W(s)→6WF5(g) (9)
【0075】
従って、タングステン堆積物の除去のために、堆積物が形成された部材の温度は、除去の速度と除去の程度を最大化するように選択されてよい。
【0076】
本発明の他の実施形態においては、アークチャンバ内のホウ素および/またはモリブデン堆積物が、同様に除去されてよい。
【0077】
本発明のプロセス中における、プロセス装置とクリーニング剤との接触は、接触の間の圧力変化のモニタリングとともに実行され、圧力変化が零になったときに接触は終了される。
【0078】
あるいは、接触は、気相反応材料、またはそこから生じる、または反応から生じる反応物、または接触により生じる反応生成物の分圧のモニタリングを行いながら行われ、その分圧が予め定められた値(言い換えれば、エンドポイント)に達したときに、接触が終了されてもよい。そのようなエンドポイントモニタリングは、例えば、好適なエンドポイントモニタと共に実行されてよい。例えば、米国特許第6534007号明細書、米国特許出願公開第10/273036号明細書、第10/784606号明細書、第10/784750号明細書および第10/758825号明細書により詳細に記載されるようなあるタイプのエンドポイントモニタ、または赤外線サーモパイル、または他の赤外線検出器でよい。
【0079】
もう一つの実施形態においては、プロセス装置システムの部材を使用して、気相反応材料の流れを制御することにより、接触が実行される。プロセス装置システムは、気相反応材料の分圧の管理を許可し、従って、反応速度の制御を許可する。
【0080】
さらに、もう一つの実施形態において、クリーニングオペレーションを実行するために、予め定められた流量で、気相反応材料の連続的な流れが用いられる。
【0081】
ここで反応(1)−(9)に言及して述べられているように、タングステンのイオン化関連堆積物は、かなり高温で堆積され、低〜中温度でエッチングされる。ここで、イオン化関連堆積物とは、プラズマオペレーションに起因して形成された堆積物を意味するが、必ずしもイオンに起因する必要はない。従って、タングステンの堆積物は、十分に熱い表面がある限り、プラズマが欠如した(例えば、イオンがない)中で生じてもよい。堆積またはエッチングの場所がインプランタシステムのフィラメントであると、温度と電流量は、お互い直接に関連する。フィラメントがエッチングされるとき、フィラメントは薄くなり、フィラメントの断面が減少するのに従って、電気抵抗は増加する。そのため、フィラメントを通過する電流は減少する。もし、フィラメントの状態が、フィラメント上の堆積を促進するならば、フィラメント断面が増加し、フィラメントが厚くなるので、連続する堆積に伴って、対応してそこを通過する電流の増加と共に電気抵抗は減少するだろう。
【0082】
他の側面において、本発明は、フィラメントを通過する電流のモニタリングを含む、ソースフィラメント上の堆積および結果として生じるフィラメントの成長をモニタリングする方法に関連する。堆積に起因してフィラメント断面が増加するのにつれて、アークチャンバ内のプラズマをサポートするのに必要な温度にフィラメントを維持するために、電気抵抗は減少し、電流は増加する。モニタされた電流の増加は、従って、フィラメントクリーニングの必要性を示すために用いられる。
【0083】
さらなる側面において、本発明は、フィラメントを通過する電流をモニタすることで、フィラメントのエッチングまたはクリーニングをモニタリングする方法に関連する。エッチング、スパッタリングまたは蒸発に起因してフィラメント断面が減少するのにつれて、アークチャンバ内のプラズマをサポートするのに必要な温度にフィラメントを維持するために、電気抵抗は増加し、電流は減少する。モニタされたそのような電流の減少は、従って、エッチングされたフィラメントへの追加材料の堆積の必要性、またはクリーニングまたはイオン化プロセスの終了の必要性を示すために用いられる。
【0084】
本発明のもう一つのイオンインプランテーションは、上記されるようにフィラメントを流れる電流のモニタリングに基づいて、フィラメントの状態を制御する方法を含む。
【0085】
一つの実施形態において、モニタされるフィラメント電流の減少は、例えば、プラズマが衝突する間、または代わりにフィラメントが依然熱いが(例えば、〜2000℃)、プラズマがオフの間に、どの気相反応材料がシステムに流入するかに応じて、フィラメントが破壊される間際であることを示唆し、アークチャンバ壁からフィラメント上の金属(例えば、タングステン)を堆積する反応が引き起こされる。イオンインプランテーションシステムの有効なオペレーションのために予め定められた範囲内に電流が収まり、フィラメントが十分な程度再生されたことが示されるまで、そのような反応の進行が許可されてよい。
【0086】
もう一つの実施形態においては、モニタされたフィラメント電流の増加は、材料堆積によりフィラメントが成長していることを示唆する。それに応じて、所定の時間、または所定の温度(例えば、室温から約2000℃の範囲でよい)になるまでフィラメントを冷却することが許可された後、気相反応材料がシステム内に流入されるので、フィラメントのエッチングされるほど十分にフィラメントが冷却される。この後、電流がイオンインプランテーションシステムの有効なオペレーションにために予め定められた範囲内となり、フィラメントが適切なレベルまで薄くなったことが示されるまで、後続する気相反応材料により媒介されるエッチング反応の進行が許可される。
【0087】
従って、本発明の方法は、基板から少なくとも部分的に堆積物を除去するのに十分な時間、基板と気相反応材料を接触されることにより、ホウ素、シリコン、砒素、リン、ゲルマニウム、タングステン、モリブデン、セレニウム、アンチモン、インジウム、タンタルおよび炭素のうち少なくとも1つを含む堆積物を、基板から除去するのに用いられうる。そのような目的のための気相反応材料は、XeF2、XeF4、XeF6、GeF4、SiF4、BF3、AsF5、AsF3、PF5、PF3、F2、TaF3、TaF5、WF6、WF5、WF4、NF3、IF5、IF7、KrF2、SF6、C2F6、CF4、Cl2、HCl、ClF3、ClO2、N2F4、N2F2、N3F、NFH2、NH2F、HOBr、Br2、BrF3、C3F8、C4F8、C5F8、CHF3、CH2F2、CH3F、COF2、HF、C2HF5、C2H2F4、C2H3F3、C2H4F2、C2H5F、C3F6、COCl2、CCl4、CHCl3、CH2Cl2、およびCH3Clの1つ以上を含んでよい。
【0088】
フッ素化されたキセノン化合物は、本発明の実施において、クリーニング剤およびプラズマソース試薬として用いられ、いかなる好適なフッ素原子数をも含むことができる。Xeに対するFの高い比率は、低F/Xe比率化合物に対して、比較的速く、そしてより高効率のクリーニングを可能にする。高い蒸気圧は、クリーニング剤の伝達比率を増加し、より多くの材料の伝達を可能にする。
【0089】
本発明の一実施形態において、六フッ化キセノンは、クリーニング剤またはプラズマソース試薬として用いられる。XeF6の室温における蒸気圧は、XeF2、XeF6およびXeF4よりも概ね7倍以上高いにもかかわらず、水との反応性が非常に高い。XeF6は、水、炭化水素、水素または還元剤の存在または生成を伴わない、クリーニング環境下で最も有利に用いられる。しかし、低蒸気圧のクリーニング化合物が用いられると、流路内の不当な圧力降下を避け、クリーニング剤の高い伝達レートを適切に維持するために、フロー回路に対する調整が必要になるかもしれない。
【0090】
本発明の方法を行うための装置は、気相反応材料を用いるクリーニングに対応できるように、いかなる適切な方式で製造され、配置されてもよい。
【0091】
ある一つの実施形態において、本発明は、イオンインプランテーションおよびクリーニングアセンブリを提供する。これは、(i)システム内のイオンインプランテーションプロセスの間、その上にイオン化関連堆積物を蓄積する1以上の部材を有するイオンインプランテーションシステムと、(ii)堆積物と反応する、例えばハロゲン化合物のような気相反応材料を含む、クリーニング組成物を含有するクリーニング組成物ソースを有し、クリーニング組成物と堆積物との接触を含むクリーニング状態で、1以上の部材からそこを少なくとも部分的に除去するクリーニングアセンブリと、(iii)クリーニング状態で部材と接触させるために、クリーニング組成物ソースから1以上の部材へクリーニング組成物を移動するように構成されたフロー回路と、(iv)クリーニング状態の間、フロー回路を通して、クリーニング組成物の流れを制御するように構成され、堆積物を1以上の部材からの少なくとも部分的に除去するフロー構成部品とを備える。
【0092】
上記したアセンブリのフロー構成部品は、いなかる適切な型であってもよい。これは、例えば、バルブ、バルブアクチュエータ、フロー制御器、レギュレータ、ポンプ、大規模フロー制御器、気圧計器、残渣ガス分析器、中央演算装置、膜等を含む。好適には、そのようなフロー構成部品は、採用された特定のクリーニング状態において、作動させられるように構成される。
【0093】
システム内におけるイオンインプランテーションプロセスの間、その上に形成されたイオン化関連堆積物を蓄積するインプランタ装置内の1以上の部材は、如何なる好適な型であってもよい。例えば、真空チャンバ、アークチャンバ、電極、フィラメント、高電圧ブッシング、磁気導波路、ウエハ処理部材、締め付けリング、回転輪(wheel)、ディスク等を含む。ある実施形態において、部材は、真空チャンバまたはその中に含まれる部材である。
【0094】
クリーニング組成物ソースは、材料格納部および、クリーニング組成物を含有するディスペンシングパッケージを含む。材料格納部およびディスペンシングパッケージは、例えば、概ね管形状であってよい導管を含み、その内部の体積を定義する。特定の実施形態において、クリーニング組成物は室温下で固体であってよく、そのようなクリーニング組成物は、導管内で増強された表面エリア上で支持されてよい。クリーニング材料の着実な速度で蒸発させる目的、さらには関連するクリーニングプロセスにおけるディスペンシングとイオン化工程のために十分な蒸気圧を供給する目的で、そのような増強された表面エリアは、その中に、米国特許第6921062号明細書に記載されるようなトレイのような構造、または(例えば、陽極酸化処理されたアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、銅等の)多孔質の不活性泡形状のような構造を含んでよい。トレイを利用する場合には、ディスペンシングオペレーションにおいて、ディスペンシングポートへと向かう導管内を上向きに蒸気を流すべく、クリーニング組成物は、流路コンジットが関連付けられているトレイの表面に支持されてよい。
【0095】
上記した装置配置内のフロー回路は、クリーニング状態で、クリーニング組成物を、クリーニング組成物ソースからアークチャンバに移動するように構成される。そのような構成は、クリーニング組成物のさまざまな性質に基づく。例えば、高コンダクタンスは、クリーニング組成物が低い蒸気圧を有するときに、流路内の不要な圧力降下を避けるために用いられてよい。流れのコンダクタンスを最大化する方法および流れの制限を最小化する方法は、この技術分野において周知である。
【0096】
本発明の全てのクリーニング方法において、クリーニングは、特定のイオンソース内で、イオンインプランテーションシステムの寿命を延長するための追加の方法および装置とともに任意に利用されてよい。そのような寿命延長手段は、特定の基板、堆積された材料、および/または気相反応材料に対応可能とするためのイオンインプランテーションシステムの改良を含んでよい。システム装置の改良は、能動的熱制御システムを備える引き出し電極、放電の頻度/発生を低減した能動的に加熱される引き出し電極、金属(望ましくは、アルミニウム、モリブデン、アルミナ(Al2O3))を含む引き出し電極、遠隔プラズマソース、引き出し電極とヒータの結合、引き出し電極と冷却装置との結合、滑らかで平坦な引き出し電極、反応ガスをイオン化チャンバへ移送するためのチャンバ出口およびコンジットを通る反応ガスの流れを作り、プラズマにより分離されうるソースガスを受け取るように配置されたプラズマチャンバ、プロセスシステムの表面上の汚染と反応性ガスの発熱反応の実質的な終了を検出する温度検出器、気相反応材料による害の影響を受けやすいプロセス装置内の保護部材(例えば、気相反応材料に対して、そのような材料に敏感な部材周りのシールドの提供)の提供、および/またはアルミニウムまたはアルミナを含有するシステム部材の使用を含んでよいが、これらに限定されない。
【0097】
プロセス設備の寿命を延長する方法は、放電の発生と頻度を低減するために、能動的に引き出し電極を加熱すること、イオンソースへ供給されるソース材料の凝縮温度超で引き出し電極を加熱すること、用いられるイオンソースの特定のタイプに適合するように引き出し電極の温度を能動的に制御すること(例えば、加熱されたまたは冷却されたイオンソースと組み合わせて、電極を加熱または冷却すること)、および/または引き出しの間、昇温状態で引き出し電極のメンテナンスを行うことを含んでよいがこれらに限定されない。そのような追加の装置、修正および方法は、米国特許出願公開第2006/0272776号明細書および第2006/0272775号明細書および国際公開05/059942号により詳細に記載され、それらのへ参照により、完全に組み込まれる。
【0098】
特定の実施形態のイオンインプランテーションシステムは、アークチャンバおよびドーパンソースを含み、ドーパントソースは、例えば、BF3、XeF2、AsH3、PH3、GeF4、SiF4、H2Se、AsF5、AsF3、PF5、PF3または他のホウ素、シリコン、砒素、リンまたはゲルマニウム含有ドーパントソースを含んでよい。
【0099】
もう一つのインプランテーションにおいては、本発明は、イオンインプランテーションシステムのアークチャンバ内で、インプランテーションのためにアークチャンバを通って流れ、ドーパントソースイオンを形成するドーパントソースガスからのプラズマ発生を含むイオンインプランテーション方法に関連する。ここで、ドーパントソースガスがアークチャンバを通って流れる時間の少なくとも一部の時間、気相反応材料はアークチャンバを通って、ドーパントソースガスと共に流れ、イオンインプランテーションシステムのクリーニングを生じさせる。
【0100】
一般的に、インサイチュクリーニングを達成するためにドーパントソースガスと気相反応材料が共に流れてもよいが、典型的には、クリーニングオペレーションが逐次的な方法で行われることが好ましい。例えば、イオンソースが第1ドーパントソースから第1プラズマを生じ、その後イオンソースが第2ドーパントソースから第2プラズマを生じるとき、プラズマが発生してもしなくても、気相反応材料がイオンソースを通して流れる、介在的クリーニングステップが用いられる。
【0101】
ある実施形態では、本発明は、Xe+イオンをシリコン基板にインプラントし、その後ドーパントイオンをシリコン基板にインプラントすることを含む、ドープされたシリコン基板を形成する方法を提供する。そのようなプロセスでは、Xe+イオンのインプラントは、基板の結晶構造をアモルファス化するのに役立つ。
【0102】
フッ素化キセノンプラズマ(例えば、XeF2プラズマ)の生成においては、クリーニングのために、Xe+イオンは、ソース自身の低エネルギースパッタクリーニングを行う。引き出しの後、Xe+イオンは、真空壁、イオン光学部材、ウエハディスクおよびウエハホルダのようなイオンソースの下流の部材の高エネルギースパッタリングをしてよい。
【0103】
同様に、WF6、WF5および/またはWF4のようなフッ化タングステン種が利用される所で、フリーフッ化物が、イオンソースの様々なクリーンな部材をスパッタしてもよく、および/またはタングステンがイオンソースの様々な部材上に堆積されてよい。クリーニングと堆積の間に生じるアクションは、システム内の個別の部材の温度に依存して決まる。
【0104】
様々な側面において、本発明は、マイクロエレクトロニクス装置の製造に使用されるイオンインプランテーションシステムのイオンソース領域のクリーニングのための方法および装置に関連する。イオンソース領域は、例えば、間接加熱カソードソース、フリーマンソース、またはバーナスソースを含んでよい。
【0105】
1つの実施形態において、本発明は、真空チャンバおよび/または部材と気相反応ハロゲン組成物とを、真空チャンバおよび/またはその部材から残渣を少なくとも部分的に除去するのに十分な時間、十分な条件で接触させることにより、イオンインプランタおよびその中に含まれる部材からの残渣をインサイチュ除去することに関連する。また、本発明は、残渣と真空チャンバおよび/または部材が製造された材料とが異なるとき、気相反応材料は残渣に選択的に反応性であり、イオンインプランタの真空チャンバおよび/または部材が製造された材料とは最小の反応性(実質的に非反応性および望ましくは完全に非反応性)であるように、そうすることに関連する。また、本発明は、残渣と真空チャンバおよび/または部材が製造された材料とが同じとき、気相反応材料は、残渣と真空チャンバおよび/または部材との両方と反応性であるように、そうすることに関連する。
【0106】
ここで使用されるように、気相反応ハロゲンと残渣との反応性について適用される「選択的に」という用語は、気相反応ハロゲンと残渣との間の優先的反応を記述するために用いられる。イオンインプランタの真空チャンバおよび/または部材が製造された材料と本質的に非反応性であり続ける間に、もし、真空チャンバおよび/または部材が残渣自体の物質と同一または類似した要素を有していると、気相反応ハロゲンは、イオンインプランタの真空チャンバおよび/または部材が製造された材料のいくらかと反応してもよい。例えば、選択的に反応性であり、タングステン堆積物を部材から除去する間、気相反応材料は、部材自体にあるタングステンとも反応してよい。残渣および部材は、そのような共反応が生じるために、正確に同じ材料でなくてよいが、いくつかの共通の材料を含むだろう。
【0107】
もう1つの実施形態においては、部材がイオンインプランタから移転される専用の分離されたチャンバ内で、イオンインプランタ部材はエクスサイチュでクリーニングされる。
【0108】
インサイチュクリーニングをさらに詳細に検討すると、そのようなクリーニングは主に3因子に依存する。クリーニング前駆体の反応特性、クリーニング反応副生物の揮発性、および化学的クリーニング内で採用される反応条件である。クリーニング組成物は、インプランタの製造材料の損耗を最小限にしつつ、不要な残渣を除去しなければならない。クリーニング反応で生じる副生物は、イオンインプランタまたは他のポンプ装置の真空システムによりそれらが容易に除去されるのに十分なほど揮発性でなければならない。
【0109】
インプランタの部材と同じ材料から形成された残渣のクリーニングの結果、コンポーネント自身の多少の損耗が生じた。特に、タングステンアークチャンバを利用するシステムからのタングステン残渣を除去するクリーニング剤として、XeF2を使用する結果、アークチャンバの内側から多少のタングステンが除去されるだろう。しかし、システムがクリーンニングされず、タングステン堆積物がシステム内に堆積することが許可されている場合の低下したシステム性能に照らせば、システム効率を最大化する利益のために、アークチャンバの内側材料の多少のロスは重要ではない。
【0110】
例えば、気相反応材料は、XeF2ガスのような、フッ素化キセノン化合物ガスを含んでよい。XeF2は、好ましい反応性ハロゲンであり、室温で昇華するが、昇華レートを増加させるためにヒータを用いて加熱されてよい。XeF2は、効率的シリコンエッチャントとして知られ、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)デバイスプロセスにおいて、選択的シリコンエッチャントとして用いられている。特に、XeF2は、下記の反応によって、シリコンと反応する。
2XeF2(g)+Si(s)→2Xe(g)+SiF4(g) (10)
シリコン/XeF2反応は、活性化(換言すればプラズマまたは加熱)無しで起こる。XeF2とSiの反応速度は、XeF2とSiO2の反応速度より大変大きく、XeF2はSiとの反応に対して選択的である。
【0111】
XeF2または他のフッ素化キセノン化合物は、金属ホウ素のためのエッチャントとして、本発明の実施に有効に用いられる。化学理論に縛られることを意図していないが、ホウ素は下記反応によってエッチングされると考えられる。
3XeF2(g)+2B(s)→3Xe(g)+2BF3(g) (11)
XeF2の砒素、リンおよびゲルマニウムへのエッチャントとしての使用は本発明により予期され、下記の反応を含んでよい。
5XeF2(g)+2As(s)→5Xe(g)+2AsF5(g) (12)
5XeF2(g)+2P(s)→5Xe(g)+2PF5(g) (13)
2XeF2(g)+Ge(s)→2Xe(g)+GeF4(g) (14)
このような反応はエネルギー活性化を含んでまたは含まずに実行されてよい。
【0112】
本発明の方法および装置は、イオンインプランタの部材から少なくとも部分的な残渣の除去(例えば、少なくとも25%の除去、より好ましくは少なくとも50%、そして最も好ましくは75%のそのような残渣の除去)にとって有用である。また、残渣がイオンインプランタの部材の構成材料(例えば、アルミニウム、タングステン、モリブデン、グラファイト、絶縁材料、封止材料等)と異なるときに、それらの材料に関連して選択的に残渣が除去されるように、残渣を除去するのに有用である。
【0113】
残渣および部材の構成材料が同じ材料のとき、部材の性能に重大な影響を与えないように、部材からの材料の除去を数ミクロン、または数十ミクロンの範囲のような低レベルに維持しつつ、残渣除去を近いレベルにすることが望まれる。さらに、気相反応材料組成物は、部材パーツとの反応よりも残渣との反応に対してより選択的であるように、堆積物は一般的に均一な厚さまたは堆積を有さず、クリーニングプロセスにおいて、部材自体の材料よりも反応性が高くてもよい。
【0114】
インサイチュクリーニングのため、いくつかの気相反応材料組成物のイオンソース領域への移動モードが採用されてよい。これらは、停滞モード、連続モード、直接導入モードを含む。そのようなクリーニングのモードは、国際公開第07/127865号に、本発明の実施に有効に用いられる装置および方法とともに記載される。国際公開第07/127865号は、言及により、その全体がこの中に組み込まれる。XeF2のクリーニング組成物としての使用は、この中で、本発明の様々な実施形態と関連して記載されているが、XeF2に代えてまたはXeF2と共に、WF6、WF5および/またはWF4のような他のフッ素化化合物も使用されてよく、または他のおよび追加のフッ素化化合物も用いられることが理解されるだろう。例えば、BrF3は、プラズマ無しでタングステンをエッチングするのに用いられる。
【0115】
他の側面では、本発明は、固体ドーピング材料のために、キャリアガスとしてのXeF2またはN2F4の使用を含む固体ドーピング材料を用いるイオンインプラントシステムの性能を向上し、寿命を延長する方法に関連する。固体ドーピング材料は、砒素、リン、セレニウム、アンチモン、SbF3、InCl、SeO2、Sb2O3およびInCl3成分を含むが、しかしこれらに限定されない。
【0116】
本発明が予期するように、Sb2O3、InCl3または他の固体ドーピング材料のためのXeF2またはN2F4のキャリアガスとしての使用により、ソースチャンバおよびその部材上に堆積するSb、Inおよび他のドーパントを除去する。この即時的方法は、Sbインプラントの後にホウ素への切換えがされても有用性がある。本発明のこの方法により得られる効果は、少なくとも2つある。第一に、この方法は、イオンソースチャンバおよびその部材上のドーパント蓄積を防ぎまたは低減する、リアルタイムソースクリーニングを提供する。従って、イオンソース寿命を延長するとともに、イオンソース性能を向上する。第2に、この方法は、プラズマおよび/またはビーム電流を強化および/または安定化する。
【0117】
他の側面では、本発明は、ガス状ドーピング材料と共に、並行流(co−flow)ガスとしてXeF2またはN2F4を使用することを含むガス状ドーピング材料を用いるイオンインプラントシステムの性能を向上し、寿命を延長する方法に関連する。ガス状ドーピング材料は、GeH4およびBF3を含むが、これらに限定されない。
【0118】
本発明が予期するように、GeH4または他のガス状ドーピング材料と共に、XeF2またはN2F4を共流ガスとして使用すると、ソースチャンバおよびその部材上に堆積するGe、または他のドーパントを除去する。本発明のこの方法により得られる効果は、少なくとも2つある。第一に、この方法は、イオンソースチャンバおよびその部材上のドーパント蓄積を防ぎまたは低減する、リアルタイムソースクリーニングを提供する。従って、イオンソース寿命を延長するとともに、イオンソース性能を向上する。第2に、この方法は、プラズマおよび/またはビーム電流を強化および/または安定化する。
【0119】
本発明のもう1つの側面は、イオンインプラントシステムのフォアラインをクリーニングして、イオン化に関連した堆積物をそこから除去する方法に関連する。その方法は、クリーニングガスが堆積物と化学的反応性を有する条件下で、イオンインプランテーションシステムのフォアラインと、クリーニングガスとを接触させて、少なくとも部分的に堆積物の除去をすることを含む。堆積物は、B、Ge、Si、PおよびAsまたはこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。クリーニングガスは、XeF2、N2F4、F2および上記のように構成された堆積物と反応する他のフッ化物種を含むが、これに限定されない。当業者に理解されるように、必要なクリーニングガスの量は、存在する堆積物の量によって決まる。同様に、クリーニングガスと堆積物の反応の間に与えられる熱量は、クリーニングガスの流量によって決まる。クリーニングプロセスの結果生ずる副生成物種の成分と濃度は、クリーニングガス流量、堆積物の組成およびポンプパージ流レートによって決まる。限定せず、説明することのみを目的として、フォアラインからのリンをクリーニングするためのXeF2の使用例を下記に示す。
【0120】
クリーニングプロセス中に必要とされるXeF2の量を決定するために用いられる化学反応は下記の通りである。
5XeF2(g)+2P(s)→5Xe(g)+2PF5(g)
合成エンタルピー(kJ/mol)は、Lange's Handbook of Chemistry(第14版)から取られ、反応時の放熱を決定するためにここにリストされる。XeF2(−164)、Xe(0)、P(0)およびPF5(−1594.4)
【0121】
XeF2の流量は、クリーニングプロセスに必要な時間だけでなく、放熱も決定する。XeF2シリンダを加熱する手段を設けないと、適切なデリバリーチューブコンダクタンスを前提とすれば、最大の持続される流量は近似的に500seemである。もしシリンダが加熱ジャケットを使用して室温に維持されるならば、この流量は100seemまたはそれ以上に増加されうる。リン堆積物をクリーニングするのに必要なXeF2の量は表1に示される。そして、クリーニング反応中に放出される熱量は表2に示される。
【表1】
【表2】
【0122】
上記クリーニング反応からの様々な副生成物の最大生成率は、表3に示される。
【表3】
【0123】
当業者に理解されるように、残渣の組成物は多様なものとなるかもしれないので、表3に示されるデータは、副生成物量が、各要素に対して、その要素の100%の組成を前提にして決定されるという仮定に基づいている。さらに、それらの種の最大濃度は、排気システム内の希釈流量によって決まる。例えば、もしポンプが10slpmの窒素パージを有していると、粗引きポンプのちょうど下流において、PF3の最大安定状態濃度は3330ppmである。XeF2の流量が50seemより高ければ、この値は増加し得る。
【0124】
上記された方法の1つの実施形態において、ターボポンプがオフとなり、粗引きポンプがオンとなりつつ、クリーニングガスがインプラントソースチャンバ内に流入する。この実施は、フォアライン堆積物上のクリーニングガス流量を改善し、より速いクリーニングプロセスを提供する。クリーニングガス流量は、ガスシリンダの加熱によりさらに改善され、ここで、クリーニングガスは室温以上となるまで格納される。この実施において好ましくは、ガスシリンダからイオンインプランタまでのデリバリーラインも同様に加熱する。
【0125】
上記の方法のもう一つの実施形態において、クリーニングガスは、インプラントソースチャンバ、ポンプおよびフォアラインが特定の圧力まで満たされ、その後、低い圧力までポンプされるパルス化されたフローによって、インプラントソースチャンバへ流れる。このプロセスは、イオンインプラントシステムのフォアライン上の堆積物が除去されるまで繰り返される。この実施は、好ましくは、粗引きポンプの注入口上の遮断弁を用いる。
【0126】
好ましい実施において、上記の実施形態は、さらにガスシリンダを加熱することを含む。ここで、クリーニングガスは室温以上となるまで格納される。
【0127】
全ての実施形態において、好ましくは、この方法は、さらに粗引きポンプ出口に、クリーニングプロセスで生成された揮発性の副生成物を除去するためのスクラバを含む。
【0128】
好ましくは、各実施形態は、さらに、Air Products and Chemicals, Inc.(PA, USA)から商業的に入手可能であり、http://www.fabtech.org/product_briefings/_a/new_product_air_products_offers_on_site_xenon_recoveryに記載されここに組み込まれるようなXeリカバリシステムを含む。
【0129】
イオンインプラントシステムのフォアラインをクリーニングする方法のもう1つの実施形態は、クリーニングガスをターボポンプの下流に供給し、このクリーニングガスをイオンインプラントシステムのフォアラインに連続的に流すことを含む。上記クリーニングガスの連続的な流れは、ソースハウジング内、ソースハウジングとソースターボポンプの間の領域、またはソースターボポンプの下流に直接向かうものでよい。好ましくは、インプラントプロセスの実行中でも、この実施はフォアライン上の堆積物をクリーニングし、これにより、イオンインプランティングのオペレーションの中断を低減する。
【0130】
上記の実施形態において、クリーニングガスは、好ましくはガスシリンダ内に格納される。この方法は、好ましくは、さらにガスシリンダを加熱することを含み、ここでクリーニングガスは室温以上で格納される。
【0131】
上記の実施形態は、好ましくはさらに、クリーニングプロセスから生成された揮発性の副生成物を除去するスクラバを粗引きポンプ出口に提供することを含む。
【0132】
上記された実施形態は、さらにAir Products and Chemicals, Inc.(PA, USA)から商業的に入手可能であり、http://www.fabtech.org/product_briefings/_a/new_product_air_products_offers_on_site_xenon_recoveryに記載され、ここに組み込まれるようなXeリカバリシステムを提供することを含む。
【0133】
もう一つの側面において、本発明は、イオンインプラントシステムの性能を向上させ、寿命を延長する方法に関連する。この方法は、カソードと少なくとも1のクリーニングガスと少なくとも1の堆積ガスからなる混合ガスとを接触させる、カソードを有する。ここで、この混合ガスは、カソードへの材料の堆積と、カソードからのその材料または他の材料の除去とのバランスを取る。混合ガス中のクリーニングガスは、カソード上に堆積されたドーパント材料およびカソード材料を除去する。
【0134】
一方で、混合ガスの堆積ガスは、直接的または間接的に、カソード上にドーパント材料の堆積を引き起こす。そのような混合ガスは、ドーパント材料の蓄積とドーパント材料またはカソード上の他の材料の除去とのバランスを維持し、従って、イオンソース寿命を延長する。ドーパント材料が堆積またはエッチングされ得るだけでなく、アークチャンバ壁の材料(例えば、WまたはMO)が同様に堆積またはエッチングされ得ることが理解される。クリーニングガスは、直接的に(スパッタリングまたは化学的エッチングを介して)または間接的に(フッ化タングステン/モリブデンの化学的ゲッタリングを介して)堆積を防ぎ、または堆積レートを減少させる。
【0135】
堆積ガスは、ハロゲンサイクル(ガス由来のフッ素が冷却壁由来のWまたはMoをエッチングし、非常に熱いカソード上でWまたはMoを分解する)を介して、または実際にドーパント分子/原子をカソード上に堆積することで(例えば、BF3からのB)、カソード上の堆積を引き起こす。そして、同様のメカニズムがバーナスイオンソースのフィラメントにも適用される。絶縁体またはアークチャンバの他の繊細な部材上のドーパント堆積のケースでは、クリーニングガスは、形成されたドーパント堆積物を化学的にエッチングする傾向があり、またはクリーニングガスは、堆積を防ぎまたは最小化するために、ドーパントの堆積に先立って最初の段階で堆積ガスと反応してよい。
【0136】
どのようにクリーニングガスが最初に堆積を防ぐかの例の手段として、GeH4の堆積ガスは、カソード、絶縁体、または他の部材上にGe堆積を形成させうる。もし、クリーニングガスがXeF2なら、それはGeH4と反応し、Geよりも遥かに揮発性で、従ってポンピングによりソース領域から除去できるGeF2および/またはGeF4を、少なくとも多少量生じる。さらに、堆積ガスおよびクリーニングガスの一方または両方もドーパントガスでよい。
【0137】
イオンソースインプランタ内への混合ガスの格納およびディスペンシングは、その内容が言及によりここに組み込まれる米国特許第5518528号明細書に記載される吸脱着装置(SDS−Safe Delivery Sourceと言及される)、その内容が言及によりここに組み込まれる米国特許第6101816号明細書に記載される、所望の圧力で流体を保持する導管(VAC−Vacuum Actuated Cylinderと言及される)を含むディスペンシングシステムと流体格納部、または、その内容が言及によりここに組み込まれる米国特許第6089027号明細書に記載される、ハイブリッド流体格納部とSDSおよびVAC(VAC−Sorbと言及される)のディスペンシングシステムを用いて実行されてよい。これらの流体格納部およびディスペンシングシステムは、大気圧未満のガスの供給を提供し、従って、高圧の流体格納部およびディスペンシングシステムよりも、安全で効率的である。その上、高圧の流体格納部およびディスペンシングシステム下で、共存して混合可能でない混合ガス中の一部のガスは、SDS、VACまたはVAC−Sorbシステム下で共に格納され、およびディスペンスされうる。
【0138】
上記方法の1つの実施形態では、混合ガスの複数のガスは、カソードまたは堆積を生じやすい繊細な他の部材と接触するように、同時に流れる。
【0139】
上記方法のもう1つの実施形態では、混合ガスの複数のガスは、カソードまたは堆積を生じやすい繊細な他の部材と接触するように、連続的に流れる。
【0140】
上記方法のもう1つの実施形態では、混合ガスは、少なくとも1の水素含有ガスおよび少なくとも1のフッ素含有ガスのコンビネーションを含み、水素含有ガスはクリーニングガスとして機能し、そして、フッ素含有ガスは堆積ガスとして機能する。
【0141】
上記方法のもう1つの実施形態では、混合ガスは、少なくとも1の非ドーパントガス(換言すれば、ガスはAs、P、Ge、B、SiまたはCを含まない)および少なくとも1のドーパントガスのコンビネーションを含み、非ドーパントガスはクリーニングガスとして機能し、ドーパントガスは堆積ガスとして機能する。
【0142】
クリーニングガスの例として、Xe/H2、Al/H2、Ne/H2、Xe/NH3、Ar/NH3、Ne/NH3、Ar/XeおよびAr/Xe/H2があるが、これらに限定されない。
【0143】
堆積ガスの例として、F2、N2F4、Cl3、WF6、MoF6、GeF4およびNF3があるが、これらに限定されない。
【0144】
混合ガスの例として、AsH3/AsF3、AsH3/AsF5、PH3/PF3、PH3/PF5、SiH4/SiF4、H2/Xe/SiF4、GeH4/GeF4、H2/Xe/GeF4、H2/GeF4、B2H6/BF3、H2/BF3、F2/BF3、CO2/F2、CO2/CF4、CO/F2、CO/CF4、COF2/F2、COF2/CH4、COF2/H2があるが、これらに限定されない。
【0145】
本発明の特徴および効果は、下記の非限定的な実施例によってより詳細に示される。
【実施例1】
【0146】
本実施例は、堆積物を除去するための化学クリーニング剤の使用により達成された、イオンソースの寿命とインプランタの利用の改善を示す。好ましくは、インプランタ内の汚染薄片および導電性薄膜の蓄積を防止するため、堆積物は通常のインターバルにおいて除去される。
【0147】
インサイチュクリーニングは、通常のインターバルにおいて、イオンインプランタのガスボックスに位置する、その供給管からXeF2を導入することにより実行され、XeF2クリーニングガスが一日2回10〜15分間イオンソース内に導入される。高電流インプランタは、クリーニング試薬の流動力学を評価するテストに利用された。XeF2クリーニング特性が決定され、クリーニング試薬は、インプランタのビームライン部材上に悪影響がないことが確認された。XeF2試薬を用いるクリーニングプロセスは、その後、中電流インプランタ装置の使用のための要件を満たした。
【0148】
図1は、インサイチュクリーニングプロセスの実行に先立つ、およびに後続する、そのような中電流インプランタから蓄積されたソース寿命データのグラフである。データは、アルシンおよびホスフィンを含むドーパント組成物用に展開された。クリーニング前、イオンソースは、2つの共通故障モードに限定され、約250±90時間の平均オペレーション寿命を有していた。
【0149】
主たる故障モードは、抑制電圧供給からの過剰な漏れであった。安定なイオンビームの引き出しを成功させるために、抑制電圧がアークチャンバの外側に位置する電極に適用される。この電極は、多数の小絶縁体から電気的に絶縁されており、1以上のそれらの絶縁体上における導電性薄膜の蓄積は、過剰な抑制漏れを引き起こす。
【0150】
第2の故障モードは、堆積材料の薄片に起因する、アークチャンバ内の部材外におけるショートであった。
【0151】
これらの故障モードは、インサイチュ化学クリーニングプロセスにより最小化されることが見出された。通常の1日2回のクリーニングは、生産におけるソース寿命を延長した。
【0152】
抑制漏れ電流におけるXeF2の効果は、インサイチュクリーニングの導入前後における中電流ツールに対する漏れ電流のグラフである、図2にさらに示される。各々のデータポイントは、ウエハロットをインプラントするのに必要な時間の間の平均抑制電流を表わし、ポイントは複数のイオンソースの寿命上にプロットされた。漏れの大きさは、最後の予防的メンテナンス時の絶縁体の交換後の経過時間によって決まる。このデータは、通常のインサイチュクリーニングが、漏れ電流が予定外のソースメンテナンスが必要な制御上限の1.5mAに決して達しないように、漏れ電流を大きく減少させることを示す。
【0153】
インサイチュクリーニング効果は、同様に、BF3およびPH3を含むインプラントドーパント混合物を用いて評価された。ソースは、このような状態で497時間動作し、BF3の性質に起因した、フィラメント上のタングステンまたはホウ素堆積物を含む限定的なアーク状態のために故障した。テストシステム上の497時間の単独のソース寿命は、同一システム上で今まで長期間用いられた平均299時間に対して有利に比較される。これは単一のデータポイントであるが、これは確立されたパターンと一致する。この場合のソース寿命の改善は、ソースアークチャンバ内のタングステン堆積物のXeF2によるエッチングに起因するように思われる。
【0154】
図3Aおよび3Bの写真は、クリーニング剤の効果の追加的な証拠を提供する。両方の写真には、それぞれの場合において生産の約98日後の、定期的な予防的メンテナンスためのイオンソースアセンブリの撤去後のイオンソースハウジングの外観が示されている。図3Aの写真に関してインサイチュクリーニングが1日2回行われた一方、図3Bの写真に関してクリーニングは行われなかった。
【0155】
クリーニングの欠如によって、堆積材料の相当量が存在し、そのうちいくらかは薄い層に分離し、剥離し始めた。通常のメンテナンス活動の間、手作業のスクラビングが、ハウジングの内側表面から堆積材料を除去するために用いられた。このハウジングは、インサイチュクリーニングによって、よりクリーンな外観となり、手作業のクリーニングには少しの時間しか消費されず、または全く時間が消費されなかった。アークチャンバの外を流れ、真空チャンバ壁へ移動する未反応のXeF2によって、堆積物は除去され、ドーパントおよび他の堆積物は化学反応によって除去された。
【0156】
イオンソース内および周辺の堆積物は、所謂「インプランタメモリ効果」を引き起こす。1つのドーパントソースガスからもう1つへ変化するとき、第1ドーパントの要素からのイオンは、第1ドーパントガスの流れが止められたずっと後にイオンソースプラズマから引き出され続ける。ある例におけるこの効果は、望まれるイオンビームの深刻な汚染を引き起こし、インプラントプロセスの劣化を結果的に生じる。
【0157】
インプランタメモリ効果の一例は、BF2プラントにおけるP汚染である。この汚染のプロセスの収率に対する結果は、多くの半導体製造施設が、同一ツール上のリンおよびホウ素インプラントを予定することを避けるほど深刻である。これは、インプラントオペレーションを予定する上で実質的な障害となる。
【0158】
P/BF2汚染は、PH3を用いたインプランテーションからのソース内のリン堆積物から生じるBF2+インプランテーションのためのBF3ガスへの変更において、フッ素の一部は反応して、31P19F+を形成する。31P19Fの質量は50である。これは、11B19F2の望まれる質量49に十分近いので、PF+はBF2+イオンと共にインプラントされる。結果として、BF2+インプランテーションは、特定の質量エネルギーにおけるマージン質量分解能と共に、いくつかの高電流システム上に制限される。
【0159】
PH3ドーパントガスからのP+イオンビームを用いるシミュレート生産において、約200時間運転される高電流インプランタを用い、インプランタメモリ効果上の影響を決定するために、XeF2クリーニングが評価される。システムがBF3ガスに切り替わり、高用量(5×1015イオン/cm2)のBF2+を用い、露出したシリコンモニタウエハの即時のインプランテーションが実行された。BF2+インプランテーション中、二次イオン質量分析(SIMS)を使用した簡便な測定のため、汚染効果を確実に十分大きくするように、システムの分析磁石の分解アパーチャが通常以上に開かれた。
【0160】
BF3、アルゴン、XeF2のクリーニング効果は、3つのガスのそれぞれを実行し、その後、モニタウエハにBF2+をインプラントすることによる汚染の残存量を定期的にモニタすることにより比較された。BF2と共にインプラントされるPの量は、SIMSによって測定される。インプラントされたリンの典型的なSIMSスペクトルを図4Aに示す。ここで、リンスペクトルのピークは、イオンソースから引き出されたPF+イオンのインプラント深さに対応し、その量はBF2内の約3%のPFの汚染レベルに相当する。
【0161】
図4Bは、BF3またはXeF2を用いたクリーニング時間の関数としての汚染レベルのプロットである。ここで、プロットは、PH3からBF3へ変換された直後の汚染レベルに通常化される。BF3プラズマを実行したとき、2時間後もPF汚染における小さな効果が認められた。(図示されない)類似の結果が、アルゴンプラズマの使用時に得られた。対照的に、XeF2を用いたインサイチュクリーニングが行われたたった15分後に、PF汚染は1/2に低減された。そして、XeF2を用いた装置内クリーニングの30分後にほとんど1/5になった。
【0162】
インサイチュクリーニングの使用に先立って、中電流インプランタユニットは、平均的なソース交換および後続する約5時間を要する性能テストを伴って、単位月単位ツールあたり平均3.3ソースの交換がされた。これは、単位ツールあたり、年間200時間近くの生産時間ロスに等しい。インサイチュクリーニングによって、ソース寿命は効果的に倍増され、各中電流ツールに対して約100時間の追加の生産時間を生じる。結果として生じるテストウエハの節約だけでなく、生産時間および性能テストウエハの後プロセスに必要な計量ツール(年間40にも上る性能テストが各中電流インプランタに実施される)の節約は、インサイチュクリーニングの有効性を明らかにした。
【実施例2】
【0163】
本実施例は、説明のためのイオンインプランタシステムのイオンソースにおいて、フィラメント成長の制御を実証する。
【0164】
図5Aは、増加したフィラメント電流及び重量に関するXeF2フローおよびアーク電力バリエーションの効果を示すグラフである。グラフは、インプランタシステムのオペレーションの経過時間(hours)の関数として、フィラメント重量をグラムで示す。
【0165】
グラフの上方のラインは、2.2立方センチメータ毎分(seem)のXeF2フローおよび100ボルト/0.05アンペアのアーク電力で、319ミリグラム/毎時のフィラメント重量ゲインが3時間のオペレーション後に決定されたオペレーションを表わす。グラフの下方のラインは、3時間のオペレーション期間に63ミリグラム/毎時のフィラメント重量ゲインを生じた、0.5seemのXeF2フローおよび40ボルト/0.05アンペアのアーク電力を表わす。
【0166】
図5Bは、フィラメント電流に関するXeF2フローおよびアーク電力バリエーションの効果を示すグラフである。グラフは、インプランタシステムのオペレーションの時間の関数として、フィラメント重量をアンペアで示す。グラフの上方のラインは、2.2立方センチメータ毎分(seem)のXeF2フローおよび100ボルト/0.05アンペアのアーク電力で、16アンペア/時のフィラメント電流上昇が決定されたオペレーションを表わす。グラフの下方のラインは、3時間のオペレーション期間に2.3アンペア/毎時のフィラメント電流増加を生じた、0.5seemのXeF2フローおよび40ボルト/0.05アンペアのアーク電力を表わす。
【0167】
図6は、アンペアによる平均フィラメント電流の関数としての、ミリグラム/時間によるフィラメント重量変化のグラフである。このグラフは、小流量および大流量の熱フィラメント状態のデータおよび小流量および大流量のプラズマ状態のデータと共に、タングステン移送に対する熱流(プラズマ無し)およびプラズマ状態の効果を示す。これらのデータは、タングステンのシステム内の移送は、フィラメントにおける材料の堆積または代替的なエッチングを生じる適切なプロセス条件の選択により調整されうることを示す。
【実施例3】
【0168】
本実施例は、カソードバイアス電力供給をモニタすることで達成される、イオンソース寿命およびインプランタ利用の改善を示す。図7は、時間とガスの種類の関数としてのカソードバイアス電力の変化を示すグラフである。特に、GeF4が流れるとき、ハロゲンサイクルはWをカソード上に堆積させ、これは(規定のイオンビーム電流を維持するために)バイアス電力を増加させる。PH3が流れるとき、リンイオンはカソードをスパッタリングし、その結果、カソードバイアス電力が減少する。本実施例においては、PH3のGeF4に対する比率は、最終的に約16時間後のバイアス電力がその最大出力に達するようにされた。このようにバイアス電力をモニタし、および適切な処置を行うことで、イオンソース寿命の改善が可能となる。
【0169】
図8は、バイアス電力の関数としてのカソードWの重量変化を示すグラフである。特に、単純にカソードバイアス電力を変化させることにより、ソースガスとしてXeF2を用い、タングステン(W)は、カソードからエッチングされ、またはカソード上に堆積される。低〜中バイアス電力は、Wエッチング反応が優勢な状態に温度を下げる一方、高バイアス電力は、W堆積反応が優勢なレベルまでカソード温度を増加させる。カソードの状態によって、バイアス電力は、カソードから不要な堆積物をエッチングし、または必要なWをカソード上に堆積し戻すように選択されて、従って、イオンソース寿命の改善が可能となる。
【0170】
本発明は、様々な特定の実施形態への言及とともにここに記載されており、従って、当業者によって理解されるように、本発明は限定されず、様々な他の修正や実施形態に拡張され、これらを包含することが理解されるだろう。従って、本発明は、次の特許請求の範囲に従って、広く解釈されることが意図されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体プロセスシステムの部材上の材料の堆積をモニタし、制御し、およびクリーニングすることに関し、特にイオンインプランテーション(イオン埋め込み)に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンインプランテーションは、集積回路製造において、制御された量の不純物ドーパントを、半導体ウエハに正確に導入するために用いられ、マイクロエレクトロニクス/半導体製造において重要なプロセスである。このようなインプランテーションシステムにおいて、イオンソースは目的とするドーパント元素ガスをイオン化する。イオンは、所望のエネルギーのイオンビーム状となって、イオンソースから引き出される。引き出しは、適切に形作られた引き出し電極にわたって高電圧を印加することにより達成される。引き出し電極は、引き出されたビームを通過させるためのアパーチャを組み込む。その後、半導体ウエハ等の加工対象物にドーパント元素をインプラントするために、イオンビームは加工対象物の表面に向けられる。ビームのイオンは、加工対象物の表面を貫通し、所望の導電性を有する領域が形成される。
【0003】
業務用イオンインプランテーションシステムにおいては、熱電極を使用し電気アークで駆動されるフリーマンおよびバーナスタイプ、マグネトロンを使用するマイクロ波タイプ、間接的に加熱されたカソードソース、およびRFプラズマソースを含む、いくつかのタイプのイオンソースが一般的に使用される。これらは、典型的には真空内で処理される。ドーパントガス(一般的に「原料ガス」と言われる)で満たされた真空チャンバ内に電子を導入することで、イオンソースはイオンを生成する。ガス中のドーパント原子および分子と電子との衝突の結果、ドーパント陽イオンとドーパント陰イオンとからなるイオン化されたプラズマが生成する。負または正バイアスを有する引き出し電極は、それぞれ陽または陰イオンに、平行化されたイオンビームとして、イオンソースの外に向けて、アパーチャを通過させる。イオンビームは、加工対象物に向けて加速される。原料ガスには、BF3、B10H14、B18H22、PH3、AsH3、PF5、AsF5、H2Se、N2、Ar、GeF4、SiF4、O2、H2およびGeH4が含まれるが、これらに限定されない。
【0004】
現在の技術水準における、デバイス製造においては、10から15ものインプランテーションの工程が存在する。ウエハサイズの大型化、限界寸法の縮小、および増大する回路の複雑さは、イオンインプラントツールに、より良好なプロセス制御、低エネルギーでの高ビーム電流の放出、および平均故障期間(MTBF)の低減に関してより大きな要求を課している。
【0005】
最もメンテナンスが必要なイオンインプラントツールの部品は、オペレーション状態に応じて100〜300時間前後のオペレーションの後に補修が必要なイオンソースと、通常数百時間のオペレーション後にクリーニングが必要な引き出し電極および高電圧絶縁体と、イオンソースターボポンプおよび関連するフォアラインを含むイオンインプラント真空システムのフォアラインおよび真空ポンプとを含む。さらに、フィラメント、カソード等のイオンソースのさまざまな部材は、オペレーション後に交換することが必要となりうる。
【0006】
理想的な場合には、全ての原料分子がイオン化されて引き出されることになる。しかし、実際には一定量の原料が分解される結果、イオンソース領域における堆積および汚染が生じる。例えば、リン残渣(例えば、ホスフィンのような原料ガスの使用に由来する)は、直ちにイオンソース領域の表面上に堆積する。残渣は、イオンソースの低電圧絶縁体上にも生じることがあり、熱電子の生成に必要なアークを妨害する、電気的短絡回路を引きおこす。この現象は、一般的に「ソースグリッチング」として知られる。これは、イオンビームの不安定性の主な原因となり、最終的にイオンソースの早期障害を引き起こしうる。残渣は、ソース絶縁体または引き出し電極の表面のような、イオンインプランタの高電圧部材にも生成され、高エネルギーの高電圧スパークを生じる。このようなスパークはビームの不安定性の他の原因となる。そして、このようなスパークによって放出されたエネルギーは、敏感な電子部材に損傷を与え、装置障害の増加や不十分なMTBFへとつながる。
【0007】
他の一般的な問題は、固体ドーピング材料としてSb2O3を使用した、アンチモン(Sb+)のインプラントによって生じる。この問題は、Sb+のインプラントのわずか数時間後にホウ素(B)のインプラントを実行することにより悪化する。ホウ素ビーム電流は著しく劣化し、イオンソースの性能と寿命に重大な障害が発生する。この性能劣化の原因は、ソースチャンバとその部材に過剰に堆積したSbにある。より頻繁な予防的メンテナンスまたはより小さなビーム電流に起因するスループットの低下により、イオンソースの不具合は、インプラント装置の生産性を著しく低下させる。Sbインプランテーションは、アナログバイポーラ装置において広く使用され、また、MOS(Metal Oxide Semiconductor)装置の浅い接合形成のためのn型ドーピングとしても使用されている。このため、Sb+をドーパントとして使用するとき、特にSbインプラントの後にBに変更するときに、ソースチャンバおよびその部材上に堆積するSbを除去可能な方法を技術的に開発することが求められている。
【0008】
さらに、B、Ge、Si、PおよびAsのようなドーパント原子は、ソースターボポンプ、その関連する真空フォアラインの下流、およびフォアラインの下流に位置する粗引きポンプに堆積することがある。時間とともに、これらの堆積物は蓄積し、手作業で今まで行われているクリーニングが必要となる。しかし、これらの堆積物のいくつか(例えば、固体リン)は、自然発火性であり、手作業のメンテナンス作業中に発火する可能性がある。これは火災になるだけでなく、毒性化合物の放出にもなりうる。従って、望ましくはガス状のクリーニング剤により、インサイチュ(in−situ)で堆積物をクリーニング可能な改良された方法を開発することが、技術的に必要である。
【0009】
もう一つのイオンソース障害の原因として、さまざまな材料(例えば、タングステン(W))が、延長されたイオンインプラントプロセスの間にカソード上に蓄積するかもしれない。これらが決定的なレベルに一度達してしまうと、カソード電力は、もはやビーム電流設定値を満たすのに十分な温度を維持することができなくなる。これはイオンビーム電流のロスを引き起こし、イオンソースの交換が必要となる。結果的に生じるイオンソースの性能劣化と短い寿命は、イオンインプラント装置システムの生産性を低下する。
【0010】
しかし、イオンソース障害のもう一つの原因は、カソード材料の侵食(またはスパッタリング)である。例えば、カソードからの金属材料(例えば、W、Mo等)は、アークチャンバのプラズマ中のイオンによりスパッタされる。スパッタリングは、プラズマ中の最も重いイオンに支配されるので、イオン質量が増加するにつれてスパッタリング効果が悪化する。実際に、材料の継続的なスパッタリングは、カソードを"薄く"し、最終的にカソードの穴の形成へと導く("カソード突き抜け")。イオンソースの性能と寿命は、結果として、大きく減少する。従って、この技術は、イオンソースの寿命を延長するために、カソード上の蓄積と侵食のバランスを維持することができる方法を求め続ける。
【0011】
さらに、システムの状態に応じて、残渣は、ソース材料とイオンインプランテーションシステムの部材との反応によって生じることがある。このような反応は、システムの追加的な部材上に残渣の堆積を引き起こすことがある。例えば、タングステンウィスカは、アークチャンバ引き出しアパーチャ上に生じ、この結果としてビームが不均一となる問題が生じる。
【0012】
堆積は、フィラメントおよび反射電極のようなイオンソース素子において生じることが一般的である。このような内部堆積は、一般的にアークチャンバ材料からなり、タングステンまたはモリブデンから構成されるアークチャンバと併せて、フッ化物ソース原料に高プラズマパワーを適用したときに最も一般的に見られる。ハロゲン非含有ソース材料を使用したイオンインプランテーションにおけるイオンソースの平均寿命は、一般的に約100〜300時間であるが、GeF4のようないくつかのハロゲン含有材料を用いると、ソースオペレーション上の内部堆積の有害な効果により、イオンソース寿命は10〜50時間まで低くなりうる。
【0013】
イオンインプラント装置内の残渣により引き起こされるオペレーション上の問題に加えて、部材がクリーニングのために取り除かれるときに、毒性または腐食性のガスによって生じる重大な人的安全上の問題もある。安全上の問題は、残渣が存在するあらゆる場所で生じる。しかし、イオンソースはイオンインプラント装置の最も頻繁にメンテナンスされる部材なので、イオンソース領域においては、特に懸念される。停止時間を縮小するために、汚染されたイオンソースは、室温よりも大きく上回る温度で、しばしばイオンインプラント装置から除去される。これは、ガスの放出を増大し、安全上の問題を悪化させる。
【0014】
上記問題を処理する従前の方法は、堆積の形成を予防し、結果的に引き出し電極とイオンソース上(言い換えれば、米国特許出願公開2006/0272776号明細書、米国特許出願公開2006/0272775号明細書、国際公開2005/059942号に記載されているように、引き出し電極上)に生じた堆積をクリーニングする試みを含んできた。しかし、イオンインプランテーションシステムの全ての要素をクリーニングする追加的なプロセスが未だに必要であった。
【0015】
従って、イオンインプランテーションの技術において、それにより、黒鉛電極のような繊細な部材を損傷させかねない如何なる機械的摩擦なしに、インプラント装置から除去された汚染された部材を安全にクリーニングすることができる、分離されたクリーニングステーションを用いたエクスサイチュのクリーニングプロセスを提供することが望まれていた。従って、最小の停止時間で、インプラントシステムからの除去に引き続いて、選択的および非破壊的に部材をクリーニングするために使用できるライン外のクリーニングステーションを提供することも、イオンインプランテーションの技術分野において、重大な進歩をもたらすだろう。
【0016】
従って、インプラントの至るところ、特にイオンソース領域にインプランテーション中に堆積された望まれない残渣を効果的かつ選択的に除去するための、インサイチュのクリーニングプロセスを提供することも、イオンインプランテーションの技術分野において、重大な進歩をもたらすだろう。このようなインサイチュのクリーニングは、人的な安全性を強化し、安定した中断のないインプランテーション設備のオペレーションに寄与するだろう。
【0017】
インサイチュクリーニングプロセスは、プロセスチャンバを分解することなく実行される。インサイチュプロセスにおいて、蓄積した膜を除去するために、連続方式で、パルス方式で、又は連続およびパルスのハイブリッド方式で、ガス状物質がプロセスチャンバを通じて流される。状況に応じて、そのようなクリーニングの間、プラズマが生成されてよく、生成されなくてもよい。
【0018】
プラズマレスまたは三フッ化塩素(ClF3)および他のフッ素ソース材料(例えば、CF4、NF3、C2F6、C3F8、SF6、およびClF3)を使用するドライクリーニングプロセスは、例えば、固体残渣と反応して、真空または他の除去条件によってプロセスチャンバから除去可能な揮発性の反応生成物を生成することにより、固体残渣を半導体プロセスチャンバから除去するのに用いることができる。そして、そのような例において、これらのクリーニング試薬は、上昇したクリーニング温度条件を必要としてもよい。
【0019】
Y.Saito et al.,"Plasmaless Cleaning Process of Silicon Surface using Chlorine Trifluoride,"APPLIED PHYSICS LETTERS, vol.56(8),pp.1119−1121(1990)を参照されたい。D.E.Ibbotson et al.,"Plasmaless Dry Etching of Silicon with Fluorine−Containing Compounds," JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,vol.56(10),pp.2939−2942(1984).も参照されたい。
【0020】
米国特許第4,498,953号は、チャンバ内で予め決定された圧力を維持しながら、BrF5、BrF3、ClF3またはIF5のようなハロゲン間化合物がプロセスチャンバを通して連続的に流入される、インサイチュクリーニング方法を記載している。処理の最後で、ハロゲン間化合物ガスの流入は終了する。このようなプロセスは、Cl、BrまたはIを含む副生成物だけでなく、フッ素を含む副生成物を生じる。これらによって、処理が必要な大量の有害な廃棄物または他の堆積物が発生する。その上、このような連続的な流入によるクリーニングは、クリーニング効率が実質的に減少するような、とても低い圧力条件下で行われる。
【0021】
いくつかのイオンソースの適用においては、より長いイオンソース寿命を達成するために、BF3、PH3および/またはAsH3の戦略的な順番が用いられる。
【0022】
半導体プロセス設備のクリーニングのためのフッ素ラジカルまたはフッ素含有ハロゲン間化合物の使用は、商業的可能性を制限する欠陥に結び付く。フッ素ラジカルおよびClF3を含むフッ素含有ハロゲン間化合物は、チャンバ内においては高腐食性である。さらに、ハロゲン間化合物は、人の気道に対して激しい刺激物である。例えば、ClF3ガスの人に対する許容範囲の閾値は、100ppbと低く、LC50は1時間で約300ppmである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
この技術は、新しいクリーニング試薬、エクスサイチュ(ex−situ)およびインサイチュ(in−situ)システム、プロセスおよび関連するモニタリング、制御装置および方法を求め続ける。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願発明は、概ね、イオンインプランテーションシステムのモニタリング、制御、およびクリーニング装置および方法、またはその部品に関連し、そのようなクリーニングに有益に用いられる組成に関する。
【0025】
この発明の一側面によれば、システムのオペレーション中にイオンインプランテーションシステムのフィラメントの状態をモニタする方法を提供する。その方法は、(a)アークチャンバ内でプラズマを発生させるのに十分な初期電流で、イオンソースのアークチャンバ中でフィラメントを活性化することと、(b)連続的なプラズマ生成の予め定められた時間に、アークチャンバ内でプラズマを維持するためにフィラメントに入力される電流を測定することと、(c)初期電流と、予め定められた時間に測定された入力電流を比較することと、(d)その比較から、材料がフィラメント上に堆積したかどうか、またはフィラメントのエッチングが発生したかを決定することとを備える。ここで、初期電流との比較において、所定時間でのより大きな電流は、材料のフィラメント上の堆積を示し、初期電流との比較において、所定時間でのより小さな電流は、フィラメントのエッチングを示す。
【0026】
この発明の別の側面によれば、システムのオペレーション中にイオンインプランテーションシステムのフィラメントの状態を制御する方法を提供する。その方法は、(a)アークチャンバ内でプラズマを発生させるのに十分な初期電流で、イオンソースのアークチャンバ中でフィラメントを活性化することと、(b)連続的なプラズマ生成の予め定められた時間に、アークチャンバ内でプラズマを維持するためにフィラメントに入力される電流を測定することと、(c)初期電流と、予め定められた時間に測定された入力電流を比較することと、(d)その比較から、材料がフィラメント上に堆積したかどうか、またはフィラメントのエッチングが発生したかを決定することであって、初期電流との比較において、所定時間でのより大きな電流は、材料のフィラメント上の堆積を示し、初期電流との比較において、所定時間でのより小さな電流は、フィラメントのエッチングを示すことと、(e)この決定に対応して、初期入力電流を回復する程度またはこの初期入力電流の予め定められた範囲内の入力電流となる程度まで、フィラメントから堆積した材料を除去すること、またはフィラメント上に追加の材料を堆積することと、を備える。この形態のもう一つの実施形態では、ステップ(a)から(d)は、イオンインプランテーションプロセス中に実行されてよく、ステップ(e)はイオンインプランテーションプロセスの前後または間に行ってもよい。
【0027】
もう一つの側面において、本発明は、システムのオペレーション中に、イオンインプランテーションシステムの間接加熱カソード(IHC)ソースの状態を制御する方法を提供する。この方法は、(a)予め定められた時間におけるカソードバイアス電力供給を測定することで、間接加熱カソードソースの消費電力を決定することと、(b)予め定められた時間における消費電力と初期電力とを比較することと、(c)この比較に応じて、間接加熱カソードの状態を制御するために(i)または(ii)の修正動作を行うこととを備え、(i)はもし予め定められた時間の消費電力が初期電力よりも高ければ、間接加熱カソードをエッチングすることであり、(ii)はもし予め定められた時間の消費電力が初期電力よりも低ければ、間接加熱カソードを再生することである。
【0028】
初期電力は、予め定められた時間の測定に先立つ時間におけるカソードバイアス電力の値を含む。例えば、始動時の電力、または通常オペレーション条件下か、他のいかなる予めセットされたポイントの時間または値における電力でよい。カソードバイアス電力測定および初期電力値は、インプラントプロセスまたは他の状況によって決まる1または複数の範囲の形式であってよいことが、技術者に理解されるだろう。(c)(i)におけるエッチングは、エッチングに十分となるような低〜中温度条件下で、間接加熱カソードを操作することを含んでよい。ここで、低〜中温度は、例えば、概ね室温から約2000℃である。
【0029】
(c)(ii)の再生は、間接加熱カソード上にプラズマ状態でフッ素化ガスを流すことを含む。ここで、フッ素化ガスは、XeF2、XeF4、XeF6、GeF4、SiF4、BF3、AsF5、AsF3、PF5、PF3、F2、TaF3、TaF5、WF6、WF5、WF4、NF3、IF5、IF7、KrF2、SF6、C2F6、CF4、ClF3、N2F4、N2F2、N3F、NFH2、NH2F、BrF3、C3F8、C4F8、C5F8、CHF3、CH2F2、CH3F、COF2、HF、C2HF5、C2H2F4、C2H3F3、C2H4F2、C2H5F、C3F6およびMoF6のうち、1または複数を含む。(c)(ii)の再生は、金属堆積が起こるのに十分な高温条件下で、間接加熱カソードを操作することを含む。ここで、高温とは、例えば、2000℃を超える温度である。修正ステップ(c)は、イオンインプランテーションプロセスの前後または間に実行されてよい。さらに、もし直前に説明したフッ素化ガスのうち一つからインプラント種(Implanted Species)が選択されるならば、修正ステップは、再生のために、インプランテーションプロセスの間に実行されてもよい。
【0030】
上記された、または明細書中の他の箇所に記載された方法のステップは、マイクロ制御装置、制御装置、マイクロプロセッサ等、およびそれと関連する電気的、電子的および/または電気機械的な部材のような、適切な制御装置によって実行される。これらは、フィラメント、反射電極、カソードおよび対カソードなどのイオンソース部材のリペアまたはクリーニングを自動的に実行するように概ね構成および/またはプログラムされる。
【0031】
本発明のさらにもう一つの側面は、イオンソースのアークチャンバ内のフィラメントまたはカソード(またはエッチングされ、または堆積を有する、対カソードと反射電極等のようなイオンソースの他の部品でもよいが、これらに限定されない)を含むイオンインプランテーションシステムを動作させる方法を提供して、イオンソースの動作効率を維持する。この方法は、(a)および(b)からなるグループから選択される条件下で、イオンソースのフィラメント、カソードまたは他の部品と、前記したようにタングステン試薬とを接触させることを含む。(a)は、フィラメント上にタングステンの堆積を生じさせるような条件であり、(b)は、堆積された材料がフィラメントからエッチングされるような条件である。
【0032】
ここで、1つの実施形態においては、他のイオンソース部品、例えば、(カソードおよびフィラメントにそれぞれ対応する)カソード、および反射電極等に、選択的にそこに材料を堆積し、またはそこから材料をエッチングするため、これらの部材の表面温度を調節するのに適した加熱素子が与えられる。さらにもう一つの実施形態では、間接加熱カソード(IHC)イオンソースは(カソードと対カソードの代わりに)2つのカソードを含んでよい。インプランテーションの間、1つのカソードは対カソードとして操作されてよく、修理または修正プロセスの間、材料を堆積し、またはエッチングするために、両方のカソードの温度は必要に応じて制御されてよい。
【0033】
本発明のさらなる側面は、1または複数の部材からイオン化に関連した堆積物を少なくとも部分的に除去するために、イオンインプランテーションシステムの当該1または複数の部材をクリーニングする方法に関連する。この方法は、(a)および(b)からなるグループから選択される条件下でシステムにクリーニングガスを流すことを含む。(a)は、フィラメント、カソード、または上記したような他のイオンソース部品上に材料の堆積を生じさせるような条件であり、(b)は、堆積された材料がフィラメント、カソード、または上記したような他のイオンソース部品からエッチングされるような条件である。
【0034】
本発明のさらなる側面は、アークチャンバ内において、イオンソースのフィラメントの予め定められた電気抵抗を維持する方法に関連する。この方法は、アークチャンバ壁の温度と関連するフィラメントの温度に応じて、フィラメントと、当該フィラメント上に材料を堆積するのに有効な試薬またはフィラメントから材料をエッチングするのに有効な試薬とを接触させることと、フィラメントにおいて材料の堆積またはエッチングを生じさせて、予め定められた電気抵抗を維持するために、フィラメントの温度およびアークチャンバ壁の温度を制御することとを含む。一般的に、フィラメント上での材料の堆積物は、フィラメントの温度が十分に高ければ(例えば、2000℃以上)、アークチャンバ壁が(フィラメントの温度よりも低い)低〜中温度である限り、生じる。フィラメントからの材料のエッチングは、アークチャンバ壁の温度とは関係なく、フィラメントが低〜中温度(例えば、1500〜2000℃よりも低い)であれば生じる。ただし、アークチャンバ壁の温度はフィラメントの温度よりも低いまたは高いことが望ましい。
【0035】
本発明のもう1つの側面は、イオンインプランテーションシステムまたはその1以上の部材をクリーニングし、イオン化に関連する堆積物をそこから取り除く方法に関連する。その方法は、当該BrF3が堆積物と化学的反応性がある条件下で、イオンインプランテーションシステムまたはその1以上の部材と、BrF3とを接触させて、少なくとも部分的に堆積物の除去をすることを含む。
【0036】
本発明のもう1つの側面は、イオンインプラントシステムのフォアラインをクリーニングして、イオン化に関連した堆積物をそこから除去する方法に関連する。その方法は、クリーニングガスが堆積物と化学的反応性を有する条件下で、イオンインプランテーションシステムのフォアラインと、クリーニングガスとを接触させて、少なくとも部分的に堆積物の除去をすることを含む。そのような方法により、イオンインプラントシステムの性能を向上させ、寿命を延長することができる。
【0037】
もう1つの側面として、本発明は、イオンインプラントシステムの性能を向上させ、寿命を延長する方法に関連する。この方法は、カソードと、少なくとも1つのクリーニングガスと少なくとも1つの堆積ガスを含む混合ガスとを接触させることを含む。ここで、この混合ガスは、カソード上の材料の堆積と、カソードからの同一のまたは他の材料の侵食とのバランスを均衡させる。
【0038】
本発明の他の側面、特徴、および実施形態は、この後の開示と添付されたクレイムによって、さらに完全に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】インサイチュクリーニングプロセスによって寿命が増加したことが示される、当該プロセスの導入の前後におけるソース寿命データのグラフである。
【図2】実施例1で説明される、抑制漏れ電流におけるXeF2の効果を示すグラフである。
【図3A】実施例1で説明される、インサイチュクリーニング効果の証拠を示す写真である。
【図3B】実施例1で説明される、インサイチュクリーニング効果の証拠を示す写真である。
【図4A】実施例5で説明される、インサイチュクリーニング効果を示す。
【図4B】実施例5で説明される、インサイチュクリーニング効果を示す。
【図5A】フィラメント重量の増加を示すグラフである。
【図5B】XeF2を流す経過時間とフィラメント電流のグラフである。
【図6】XeF2を流したシステム内における、タングステン移動に関連したフィラメント電流の関数としてのフィラメント重量の変化のグラフである。
【図7】時間とガスの種類の関数としてのカソードバイアス電力の変化を示すグラフである。
【図8】バイアス電力の関数としてのカソードWの重量変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、半導体プロセスシステムおよび/またはその部材をモニタし、制御し、クリーニングする装置および方法に関連し、そのようなクリーニングのための組成物に関連する。
【0041】
1つの側面において、本発明は、半導体プロセスシステムまたは半導体プロセスシステムの部材から堆積物を除去することに関連する。ここで、システムおよびシステムの部材は、気相反応材料を含むクリーニング組成物と接触させられる。
【0042】
ここで用いられるように、「気相反応材料」という用語は、ガス状(gaseous)または霧状(vapor)のハロゲン化合物および/または複合体、またはそうような化合物および/または複合体のイオンおよびプラズマ、およびイオンとプラズマを含む材料を意味すると広く解釈させることが意図される。本発明の広範な実施において利用される気相反応材料は、「気相反応組成物」、「クリーニング剤」、「クリーニングガス」、「エッチャントガス」、「ガス状ハロゲン」、「ガス状クリーニング剤」、「反応性ハロゲン」、「クリーニング化合物」、「クリーニング組成物」、「クリーニング気体」、「エッチャント気体」またはそのような用語のいかなる組み合わせとして、限定することなく、さまざまに言及される。
【0043】
ここで使用されるように、イオンインプランタへの言及で「イオンソース領域」とは、限定することなく、真空チャンバ、ソースアークチャンバ、ソース絶縁体、引き出し電極、抑制電極、高電圧絶縁体、ソースブッシング、フィラメント、カソードおよび反射電極を含む。「イオンソース領域」という用語は、その最も広い意味で用いられることが、当業者に理解されるであろう。例えば、バーナスまたはフリーマンイオンソースアセンブリは、フィラメントおよび反射電極を含み、IHCソースアセンブリはカソードと対カソードを含む。
【0044】
本発明は、半導体プロセスシステムおよびその部材、さらにそれらの通常のプロセスオペレーション中に堆積物が生じやすい他の基板や装置のクリーニングを目的とする。限定することなく、そのような実施は、粗引きポンプおよび真空フォアラインのクリーニングを含む。ここの記載から当業者にとって明らかであるが、クリーニングガスは、インプランタのあるエリアおよび/または特定のエリアをバイパスするために、複数のポートのうち選択されたポートを通じて流されてよい。例えば、XeF2または他のクリーニングガスは、クリーニングガスを必要とするエリアに近いポートを通して供給されてよい。大部分のクリーニングガスが、ターゲットエリアに導かれ、(例えば、クリーニングガスがイオンソースチャンバのみを通じて導入された場合に生じ得るように)流路に沿って残渣と反応して消費されない限り、クリーニング性能は、同様に強化され得る。選択されたポートは、予め存在し、またはそのような目的のため形成/作成されてよい。
【0045】
この技術は、これらに限定されないが、インプランタのイオンソース領域、磁気的/解析器領域、真空システム、プロセスチャンバ等のクリーニングのために用いられてよい。クリーニングは、予め定められた時間、インプランタの所望のエリアまたは領域を通じておよび/またはに渡って、クリーニングガスを連続的に流すことで実現されてよい。これに代えて、またはこれと共に、クリーニングガスを拡散し、および不要な残渣および/または堆積物と反応させるために、予め定められた時間、クリーニングガスをシステム内で閉じ込めてもよい。
【0046】
本発明は、さまざまな側面で、所望のフィラメント成長、またはその代わりのフィラメントエッチングを生じさせるために、アークチャンバ内の温度を適切に制御することで、イオンインプランテーションシステムに、アークチャンバのイオンソース内のフィラメントを成長させ/エッチングする能力を与える。
【0047】
本発明の追加的な側面は、WFx、AsFx、PFxおよびTaFxのような反応性ガスの使用に関連する。ここで、xは、プラズマまたは昇温条件下での、インサイチュまたはエクスサイチュクリーニング配置において、イオンインプランタの領域またはイオンインプランタの部材のクリーニングのために化学量論的に適切な値または値の範囲を有する。
【0048】
本発明のさらなる側面によれば、室温、昇温、またはプラズマ条件下におけるインサイチュまたはエクスサイチュクリーニング配置において、イオンインプラントシステムまたはその部材のクリーニングのための、BrF3の使用に関連する。
【0049】
イオンインプランテーションシステムのオペレーションは、システムおよびその部材におけるイオン化関連材料の堆積を結果として生じる。本発明の目的は、システムおよび/またはその部材から、そのようなイオン化関連堆積物を少なくとも部分的に除去するために、イオンインプランテーションシステムまたはその1以上の部材のモニタリング、制御、クリーニングをすることである。クリーニング方法は、システムおよび/またはその部材と、気相反応材料を含むクリーニング組成物とを、気相反応材料と堆積物との反応を可能にする条件下で、接触させて、それらを少なくとも部分的に除去することを含む。
【0050】
原料ガスそれ自体から生じるイオン化関連堆積物に加えて、イオンインプランテーションシステム内に形成される堆積物または残渣は、システム部材が製造される材料との原料ガスの反応性から生じ得ることが判明した。例えば、イオンインプランテーションシステムの真空チャンバは、ステンレス鋼またはアルミニウムを使用して製造され得る。真空チャンバ内のシステム部材は、(例えば、通常のまたはガラス状の)グラファイト、絶縁材料(例えば、窒化ホウ素)、および/またはテフロン(登録商標)、Kel−F(TM)、PEEK(TM)、Delrin(TM)、Vespel(TM)、Viton(TM)、Buna−N、シリコン等の封止材料を利用して製造されてよい。イオンインプランテーションシステム内に存在でき、その中で堆積を生成する化学反応が生じやすい他の材料は、セラミックス、酸化鉛を含むエポキシ組成物、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、二酸化シリコン、窒化ホウ素を含むがこれらに限定されない。
【0051】
イオンソース自体は、時々少量の銅および銀を含む、タングステン、グラファイト、モリブデン、またはタンタルから製造されてよい。イオンソースアークチャンバは、通常タングステンまたはモリブデンから、または、タングステンまたはモリブデンで裏打ちされたグラファイトボディとともに製造される。そのような環境下で、フッ化物ソース供給原料(例えば、BF3、GeF4、SiF4、AsF5、AsF3、PF5および/またはPF3)は、使用温度において、アークチャンバ材料(例えば、チャンバまたはその裏張りからのタングステンまたはモリブデン)と反応して、中間副生物を生成する。中間生成物は、次々にシステム内にマイグレートして分解し、タングステンまたはモリブデンを堆積し、フッ素を放出する。
【0052】
例えば、GeF4のような原料ガスは、イオンソースチャンバ内で分解し、その結果生じたフリーなフッ化物は、タングステンのようなアークチャンバの材料にアタックする。この反応は、プラズマが衝突し、従ってフィラメントが熱ければ、タングステンのより冷たい表面上で生じる。フッ化物はアークチャンバの壁上のタングステンと反応し、壁をエッチングしてWF6ガスを生じる。WF6は、その後、熱いフィラメント上にタングステンを堆積させ、そのサイズを成長させる。
【0053】
GeF4が大量のフリーなフッ素を生じる一方、BF3またはSiF4のような原料ガスは、より少量のフリーなフッ素と、対応して低レベルの(といっても依然かなりの)タングステン堆積をフィラメント上に生じる。
【0054】
PH3およびAsH3のようなフッ素を含有しない原料ガスは、フィラメントからの金属をアークチャンバ壁に堆積し、結果としてフィラメントを薄くするという点で問題になり得る。
【0055】
従って、本発明は、アークチャンバ材料と同一のイオン化関連堆積物の少なくとも部分的な除去のために、イオンインプランテーションシステムまたはその部材をクリーニングすることを目的とする。
【0056】
本発明によれば、クリーニングは、複数の原料ガスが共にシステムに導入される、イオンインプランテーションシステム内で実行されうる。原料ガスは、1以上の気相反応材料と共に使用され、または代わりに1以上の気相反応材料と共にシステム内に律動的に送り込まれてもよい。
【0057】
本発明のクリーニング方法が示すイオン化関連堆積物は、イオンソースまたは他のイオン化プロセス装置内で形成し、および蓄積するようなことによってイオンインプランテーションシステムの通常のオペレーションを妨げうる様々な材料を含む。堆積された材料は、シリコン、ホウ素、リン、ゲルマニウム、砒素、タングステン、モリブデン、セレニウム、アンチモン、インジウム、炭素、アルミニウムおよび/またはタンタルを様々に含み、またはこれらから原則的に構成されうる。
【0058】
イオンソースアークチャンバ内および引き出し電極上のイオン化関連堆積物は、剥がれ落ち、微粒子を形成しうる。これらの粒子は、一度形成されると、イオンビーム(例えば、ウエハ内にインプラントされるドーパントイオンのビーム)内に移動しうる。もし、そのように移動した粒子がウエハに到達すると、ウエハ上に結果的に生じる粒子汚染は、当該ウエハ上に製造される使用可能な装置の収量を著しく低下させかねない。本発明のクリーニングプロセスは、剥がれおよび粒子が形成される前に、そのようなイオン化関連堆積物を除去し、それによって製品ウエハ上の粒子の低減を達成し、半導体装置の収量を増加させる。
【0059】
本発明によれば、クリーニングに使用される気相反応材料またはクリーニングガスは、イオンインプランテーションシステム内のイオン化関連堆積物を少なくとも部分的に除去するのに効果的なあらゆる材料を含んでよい。
【0060】
本発明の目的は、反応を適切に制御することで、イオン化関連堆積物を望ましくない場所から除去し、および/または、好適な場所に材料を堆積させるために気相反応材料を使用することである。本発明の特定の実施形態においては、タングステンは、不要な堆積物として除去される材料である。そして、他の実施形態においては、望ましいものとして表面に堆積され、その存在が有益なものとなる。従って、XeF2、GeF4、SiF4、BF3、AsF5、AsF3、PF5および/またはPF3のような、フッ化タングステン中間生成物を生成する反応性のガスは、本発明の制御およびクリーニング方法に用いられる。さらに、WF6、WF5および/またはWF4のようなフッ化タングステンガスは、本発明の制御およびクリーニング方法において直接利用されてよい。そのため、本発明の気相反応材料は、XeF2、GeF4、SiF4、BF3、AsF5、AsF3、PF5、PF3、F2、TaF3、TaF5、WF6、WF5および/またはWF4を含むが、これらに限定されない。
【0061】
さまざまな特定の実施形態において、気相反応材料は、クリーニング強化剤または気相反応材料の揮発性を向上する共同反応剤と共に投与されてもよい。その結果、クリーニング強化剤または共同反応剤を用いずに気相反応材料を用いる場合よりも、より多くの堆積物が除去される。例えば、XeF2によるイリジウム堆積物の除去は、ルイス塩基および電子逆供与種を共に投与することにより強化されうる。特定の応用において、一酸化炭素、三フッ化ホスフィン、およびトリアルキルホスフィンが用いられうる。
【0062】
さらに別の例として、イオンインプランテーションシステムにおいては、アークチャンバは、片面上にフィラメントが、他面上に反射電極が、セラミック絶縁体により壁から離されて、取り付けられたタングステン壁を有し、アークチャンバ内で維持されるプラズマ内で供給ガスがイオン化される。ここで、アークチャンバの部材は、供給ガス、アークチャンバの要素およびカーボンの分解生成物で汚染されうる。
【0063】
このような環境において、XeF2のような揮発性フッ化物を生じるタングステンのような金属の、汚染の除去に有用なクリーニング剤は、炭素をCO、CO2および/またはCOF2に変換することにより、汚染炭素の除去に有効な酸素含有添加剤と組み合わされてよい。そのような目的に有用な酸素含有添加物成分は、本発明の特定の実施形態において、NO、N2O、NO2、CO2および/またはO2を含むが、これに限定されない。
【0064】
従って、本発明の目的は、金属の揮発性(ガス状)フッ化物化合物を生成する反応により、そのような金属の汚染を除去するのに有用なクリーニング剤と、揮発性酸化物またはその酸化フッ化物を生成することにより、炭素汚染を除去するのに有効なクリーニング剤の両方を含むクリーニング組成物である。これらのクリーニング試薬は、アークチャンバ内に同時にまたは連続して流されてよい。
【0065】
1つの実施形態においては、金属および炭素汚染を、チャンバの機械的ポンプ作業により容易にチャンバから除去される揮発性化合物に変換するために、両方のクリーニング剤をイオン化する。このため、これらの試薬は、イオン化条件下で、アークチャンバ内に同時に流される。
【0066】
気相反応材料および堆積物の反応を可能にする条件は、温度、気圧、流量、組成物等のいかなる適切な条件をも含む。そのような条件下では、気相反応材料は、基板(例えば、堆積された物質で汚染されたインプランタ装置の表面)からそのような材料を除去するために、汚染と接触し、化学的に相互作用する。
【0067】
採用されうるさまざまな状態の例は、室温、室温を超える温度、プラズマの存在、プラズマの不存在、大気圧未満の気圧、大気圧、大気圧超の気圧を含むが、これに限定されない。
【0068】
さまざまな実施形態における、接触して堆積物を除去する気相反応材料のための特定の温度は、約0℃〜約2000℃の範囲であってよい。接触は、気相反応材料の移動を含んでよく、それは、キャリアガスによって、またはそれ自体で、またはさらなるクリーニング剤またはドーパント等との混合物内で行われてよい。反応速度を向上させる目的で、室温中での堆積物との化学反応のために、気相反応材料を加熱してもよい。
【0069】
クリーニング剤と汚染物質との反応のさまざまな特性に基づいて、気相反応材料と汚染堆積物との反応は、モニタされ、および/または、管理されてよい。そのような反応特性は、気圧、時間、温度、濃度、特定種の存在、圧力変化率、(特定種の)濃度変化率、電流変化等を含んでよい。従って、気相反応材料のシステムへの導入は、反応の所定の特性の達成に基づいて、終了されうる。この反応の所定の特性として、真空チャンバ内の所定の圧力、所定時間の経過、または所定温度、システム内の特定要素の濃度、システム内の特定の副生成物、反応生成物または他の種の存在、またはモニタリングオペレーション中における所定電流条件の実現のようなことがあげられる。
【0070】
タングステン堆積物は、供給ガスとインプランタシステムのアークチャンバとの反応の結果生じる。そのような堆積物のクリーニングで使用される方法は、システムの温度勾配および/またはフィラメントに対するおよびフィラメントを通過する電流、および/または有用に決定され、モニタされうる他の如何なる特性に依存してよい。
【0071】
例えば、供給材料からのフッ素は、反応(1)または(2)により、第1温度においてアークチャンバと反応して、WF6を生成してよい。
3F2(g)+W(s)→WF6(g) (1)
6F(g)+W(s)→WF6(g) (2)
同様に、(3)のようなクリーニングガスとアークチャンバのタングステン材料との間の反応があってもよい。
3XeF2+W→3Xe+WF6 (3)
これに代えて、WF6(またはWF5またはWF4)は、システムに直接供給されてもよい。
【0072】
フッ化タングステンは一度形成されると、またはシステムに存在すると、システム内の他の場所にマイグレートする。その「他の場所」の温度によって、フッ化タングステンは、その場所においてタングステンをエッチングし、または堆積する。フィラメント上では、主として実際の通過する電流量によって、その温度が決まる。アークチャンバ内の他の場所の温度は、アークチャンバの特定の場所およびデザイン、フィラメント電流、および他のフィラメント外の電流に応じて変化してよい。
【0073】
もし、第2の場所が高温であれば、フッ化タングステンは分解され、タングステンが堆積されて、フッ素が放出される。フッ化タングステンが存在し続ける限り、タングステン堆積物の大きさは成長する。堆積反応は、以下の反応(4)、(5)および/または(6)を含んでよい。
WF6→W+3F2 (4)
2WF5→2W+5F2 (5)
WF4→W+2F2 (6)
【0074】
これに対して、もし第2の場所が室温であれば、フッ化タングステンは、タングステンを除去し、反応生成物中にフッ素を保持して、その場所をエッチングする。そのため、エッチングされた場所は、エッチングが続く限り縮小する。そのようなエッチング反応は、以下の反応(7)、(8)および/または(9)を含んでよい。
WF6(g)+2W(s)→3WF2(g) (7)
2WF6(g)+W(s)→3WF4(g) (8)
5WF6(g)+W(s)→6WF5(g) (9)
【0075】
従って、タングステン堆積物の除去のために、堆積物が形成された部材の温度は、除去の速度と除去の程度を最大化するように選択されてよい。
【0076】
本発明の他の実施形態においては、アークチャンバ内のホウ素および/またはモリブデン堆積物が、同様に除去されてよい。
【0077】
本発明のプロセス中における、プロセス装置とクリーニング剤との接触は、接触の間の圧力変化のモニタリングとともに実行され、圧力変化が零になったときに接触は終了される。
【0078】
あるいは、接触は、気相反応材料、またはそこから生じる、または反応から生じる反応物、または接触により生じる反応生成物の分圧のモニタリングを行いながら行われ、その分圧が予め定められた値(言い換えれば、エンドポイント)に達したときに、接触が終了されてもよい。そのようなエンドポイントモニタリングは、例えば、好適なエンドポイントモニタと共に実行されてよい。例えば、米国特許第6534007号明細書、米国特許出願公開第10/273036号明細書、第10/784606号明細書、第10/784750号明細書および第10/758825号明細書により詳細に記載されるようなあるタイプのエンドポイントモニタ、または赤外線サーモパイル、または他の赤外線検出器でよい。
【0079】
もう一つの実施形態においては、プロセス装置システムの部材を使用して、気相反応材料の流れを制御することにより、接触が実行される。プロセス装置システムは、気相反応材料の分圧の管理を許可し、従って、反応速度の制御を許可する。
【0080】
さらに、もう一つの実施形態において、クリーニングオペレーションを実行するために、予め定められた流量で、気相反応材料の連続的な流れが用いられる。
【0081】
ここで反応(1)−(9)に言及して述べられているように、タングステンのイオン化関連堆積物は、かなり高温で堆積され、低〜中温度でエッチングされる。ここで、イオン化関連堆積物とは、プラズマオペレーションに起因して形成された堆積物を意味するが、必ずしもイオンに起因する必要はない。従って、タングステンの堆積物は、十分に熱い表面がある限り、プラズマが欠如した(例えば、イオンがない)中で生じてもよい。堆積またはエッチングの場所がインプランタシステムのフィラメントであると、温度と電流量は、お互い直接に関連する。フィラメントがエッチングされるとき、フィラメントは薄くなり、フィラメントの断面が減少するのに従って、電気抵抗は増加する。そのため、フィラメントを通過する電流は減少する。もし、フィラメントの状態が、フィラメント上の堆積を促進するならば、フィラメント断面が増加し、フィラメントが厚くなるので、連続する堆積に伴って、対応してそこを通過する電流の増加と共に電気抵抗は減少するだろう。
【0082】
他の側面において、本発明は、フィラメントを通過する電流のモニタリングを含む、ソースフィラメント上の堆積および結果として生じるフィラメントの成長をモニタリングする方法に関連する。堆積に起因してフィラメント断面が増加するのにつれて、アークチャンバ内のプラズマをサポートするのに必要な温度にフィラメントを維持するために、電気抵抗は減少し、電流は増加する。モニタされた電流の増加は、従って、フィラメントクリーニングの必要性を示すために用いられる。
【0083】
さらなる側面において、本発明は、フィラメントを通過する電流をモニタすることで、フィラメントのエッチングまたはクリーニングをモニタリングする方法に関連する。エッチング、スパッタリングまたは蒸発に起因してフィラメント断面が減少するのにつれて、アークチャンバ内のプラズマをサポートするのに必要な温度にフィラメントを維持するために、電気抵抗は増加し、電流は減少する。モニタされたそのような電流の減少は、従って、エッチングされたフィラメントへの追加材料の堆積の必要性、またはクリーニングまたはイオン化プロセスの終了の必要性を示すために用いられる。
【0084】
本発明のもう一つのイオンインプランテーションは、上記されるようにフィラメントを流れる電流のモニタリングに基づいて、フィラメントの状態を制御する方法を含む。
【0085】
一つの実施形態において、モニタされるフィラメント電流の減少は、例えば、プラズマが衝突する間、または代わりにフィラメントが依然熱いが(例えば、〜2000℃)、プラズマがオフの間に、どの気相反応材料がシステムに流入するかに応じて、フィラメントが破壊される間際であることを示唆し、アークチャンバ壁からフィラメント上の金属(例えば、タングステン)を堆積する反応が引き起こされる。イオンインプランテーションシステムの有効なオペレーションのために予め定められた範囲内に電流が収まり、フィラメントが十分な程度再生されたことが示されるまで、そのような反応の進行が許可されてよい。
【0086】
もう一つの実施形態においては、モニタされたフィラメント電流の増加は、材料堆積によりフィラメントが成長していることを示唆する。それに応じて、所定の時間、または所定の温度(例えば、室温から約2000℃の範囲でよい)になるまでフィラメントを冷却することが許可された後、気相反応材料がシステム内に流入されるので、フィラメントのエッチングされるほど十分にフィラメントが冷却される。この後、電流がイオンインプランテーションシステムの有効なオペレーションにために予め定められた範囲内となり、フィラメントが適切なレベルまで薄くなったことが示されるまで、後続する気相反応材料により媒介されるエッチング反応の進行が許可される。
【0087】
従って、本発明の方法は、基板から少なくとも部分的に堆積物を除去するのに十分な時間、基板と気相反応材料を接触されることにより、ホウ素、シリコン、砒素、リン、ゲルマニウム、タングステン、モリブデン、セレニウム、アンチモン、インジウム、タンタルおよび炭素のうち少なくとも1つを含む堆積物を、基板から除去するのに用いられうる。そのような目的のための気相反応材料は、XeF2、XeF4、XeF6、GeF4、SiF4、BF3、AsF5、AsF3、PF5、PF3、F2、TaF3、TaF5、WF6、WF5、WF4、NF3、IF5、IF7、KrF2、SF6、C2F6、CF4、Cl2、HCl、ClF3、ClO2、N2F4、N2F2、N3F、NFH2、NH2F、HOBr、Br2、BrF3、C3F8、C4F8、C5F8、CHF3、CH2F2、CH3F、COF2、HF、C2HF5、C2H2F4、C2H3F3、C2H4F2、C2H5F、C3F6、COCl2、CCl4、CHCl3、CH2Cl2、およびCH3Clの1つ以上を含んでよい。
【0088】
フッ素化されたキセノン化合物は、本発明の実施において、クリーニング剤およびプラズマソース試薬として用いられ、いかなる好適なフッ素原子数をも含むことができる。Xeに対するFの高い比率は、低F/Xe比率化合物に対して、比較的速く、そしてより高効率のクリーニングを可能にする。高い蒸気圧は、クリーニング剤の伝達比率を増加し、より多くの材料の伝達を可能にする。
【0089】
本発明の一実施形態において、六フッ化キセノンは、クリーニング剤またはプラズマソース試薬として用いられる。XeF6の室温における蒸気圧は、XeF2、XeF6およびXeF4よりも概ね7倍以上高いにもかかわらず、水との反応性が非常に高い。XeF6は、水、炭化水素、水素または還元剤の存在または生成を伴わない、クリーニング環境下で最も有利に用いられる。しかし、低蒸気圧のクリーニング化合物が用いられると、流路内の不当な圧力降下を避け、クリーニング剤の高い伝達レートを適切に維持するために、フロー回路に対する調整が必要になるかもしれない。
【0090】
本発明の方法を行うための装置は、気相反応材料を用いるクリーニングに対応できるように、いかなる適切な方式で製造され、配置されてもよい。
【0091】
ある一つの実施形態において、本発明は、イオンインプランテーションおよびクリーニングアセンブリを提供する。これは、(i)システム内のイオンインプランテーションプロセスの間、その上にイオン化関連堆積物を蓄積する1以上の部材を有するイオンインプランテーションシステムと、(ii)堆積物と反応する、例えばハロゲン化合物のような気相反応材料を含む、クリーニング組成物を含有するクリーニング組成物ソースを有し、クリーニング組成物と堆積物との接触を含むクリーニング状態で、1以上の部材からそこを少なくとも部分的に除去するクリーニングアセンブリと、(iii)クリーニング状態で部材と接触させるために、クリーニング組成物ソースから1以上の部材へクリーニング組成物を移動するように構成されたフロー回路と、(iv)クリーニング状態の間、フロー回路を通して、クリーニング組成物の流れを制御するように構成され、堆積物を1以上の部材からの少なくとも部分的に除去するフロー構成部品とを備える。
【0092】
上記したアセンブリのフロー構成部品は、いなかる適切な型であってもよい。これは、例えば、バルブ、バルブアクチュエータ、フロー制御器、レギュレータ、ポンプ、大規模フロー制御器、気圧計器、残渣ガス分析器、中央演算装置、膜等を含む。好適には、そのようなフロー構成部品は、採用された特定のクリーニング状態において、作動させられるように構成される。
【0093】
システム内におけるイオンインプランテーションプロセスの間、その上に形成されたイオン化関連堆積物を蓄積するインプランタ装置内の1以上の部材は、如何なる好適な型であってもよい。例えば、真空チャンバ、アークチャンバ、電極、フィラメント、高電圧ブッシング、磁気導波路、ウエハ処理部材、締め付けリング、回転輪(wheel)、ディスク等を含む。ある実施形態において、部材は、真空チャンバまたはその中に含まれる部材である。
【0094】
クリーニング組成物ソースは、材料格納部および、クリーニング組成物を含有するディスペンシングパッケージを含む。材料格納部およびディスペンシングパッケージは、例えば、概ね管形状であってよい導管を含み、その内部の体積を定義する。特定の実施形態において、クリーニング組成物は室温下で固体であってよく、そのようなクリーニング組成物は、導管内で増強された表面エリア上で支持されてよい。クリーニング材料の着実な速度で蒸発させる目的、さらには関連するクリーニングプロセスにおけるディスペンシングとイオン化工程のために十分な蒸気圧を供給する目的で、そのような増強された表面エリアは、その中に、米国特許第6921062号明細書に記載されるようなトレイのような構造、または(例えば、陽極酸化処理されたアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、銅等の)多孔質の不活性泡形状のような構造を含んでよい。トレイを利用する場合には、ディスペンシングオペレーションにおいて、ディスペンシングポートへと向かう導管内を上向きに蒸気を流すべく、クリーニング組成物は、流路コンジットが関連付けられているトレイの表面に支持されてよい。
【0095】
上記した装置配置内のフロー回路は、クリーニング状態で、クリーニング組成物を、クリーニング組成物ソースからアークチャンバに移動するように構成される。そのような構成は、クリーニング組成物のさまざまな性質に基づく。例えば、高コンダクタンスは、クリーニング組成物が低い蒸気圧を有するときに、流路内の不要な圧力降下を避けるために用いられてよい。流れのコンダクタンスを最大化する方法および流れの制限を最小化する方法は、この技術分野において周知である。
【0096】
本発明の全てのクリーニング方法において、クリーニングは、特定のイオンソース内で、イオンインプランテーションシステムの寿命を延長するための追加の方法および装置とともに任意に利用されてよい。そのような寿命延長手段は、特定の基板、堆積された材料、および/または気相反応材料に対応可能とするためのイオンインプランテーションシステムの改良を含んでよい。システム装置の改良は、能動的熱制御システムを備える引き出し電極、放電の頻度/発生を低減した能動的に加熱される引き出し電極、金属(望ましくは、アルミニウム、モリブデン、アルミナ(Al2O3))を含む引き出し電極、遠隔プラズマソース、引き出し電極とヒータの結合、引き出し電極と冷却装置との結合、滑らかで平坦な引き出し電極、反応ガスをイオン化チャンバへ移送するためのチャンバ出口およびコンジットを通る反応ガスの流れを作り、プラズマにより分離されうるソースガスを受け取るように配置されたプラズマチャンバ、プロセスシステムの表面上の汚染と反応性ガスの発熱反応の実質的な終了を検出する温度検出器、気相反応材料による害の影響を受けやすいプロセス装置内の保護部材(例えば、気相反応材料に対して、そのような材料に敏感な部材周りのシールドの提供)の提供、および/またはアルミニウムまたはアルミナを含有するシステム部材の使用を含んでよいが、これらに限定されない。
【0097】
プロセス設備の寿命を延長する方法は、放電の発生と頻度を低減するために、能動的に引き出し電極を加熱すること、イオンソースへ供給されるソース材料の凝縮温度超で引き出し電極を加熱すること、用いられるイオンソースの特定のタイプに適合するように引き出し電極の温度を能動的に制御すること(例えば、加熱されたまたは冷却されたイオンソースと組み合わせて、電極を加熱または冷却すること)、および/または引き出しの間、昇温状態で引き出し電極のメンテナンスを行うことを含んでよいがこれらに限定されない。そのような追加の装置、修正および方法は、米国特許出願公開第2006/0272776号明細書および第2006/0272775号明細書および国際公開05/059942号により詳細に記載され、それらのへ参照により、完全に組み込まれる。
【0098】
特定の実施形態のイオンインプランテーションシステムは、アークチャンバおよびドーパンソースを含み、ドーパントソースは、例えば、BF3、XeF2、AsH3、PH3、GeF4、SiF4、H2Se、AsF5、AsF3、PF5、PF3または他のホウ素、シリコン、砒素、リンまたはゲルマニウム含有ドーパントソースを含んでよい。
【0099】
もう一つのインプランテーションにおいては、本発明は、イオンインプランテーションシステムのアークチャンバ内で、インプランテーションのためにアークチャンバを通って流れ、ドーパントソースイオンを形成するドーパントソースガスからのプラズマ発生を含むイオンインプランテーション方法に関連する。ここで、ドーパントソースガスがアークチャンバを通って流れる時間の少なくとも一部の時間、気相反応材料はアークチャンバを通って、ドーパントソースガスと共に流れ、イオンインプランテーションシステムのクリーニングを生じさせる。
【0100】
一般的に、インサイチュクリーニングを達成するためにドーパントソースガスと気相反応材料が共に流れてもよいが、典型的には、クリーニングオペレーションが逐次的な方法で行われることが好ましい。例えば、イオンソースが第1ドーパントソースから第1プラズマを生じ、その後イオンソースが第2ドーパントソースから第2プラズマを生じるとき、プラズマが発生してもしなくても、気相反応材料がイオンソースを通して流れる、介在的クリーニングステップが用いられる。
【0101】
ある実施形態では、本発明は、Xe+イオンをシリコン基板にインプラントし、その後ドーパントイオンをシリコン基板にインプラントすることを含む、ドープされたシリコン基板を形成する方法を提供する。そのようなプロセスでは、Xe+イオンのインプラントは、基板の結晶構造をアモルファス化するのに役立つ。
【0102】
フッ素化キセノンプラズマ(例えば、XeF2プラズマ)の生成においては、クリーニングのために、Xe+イオンは、ソース自身の低エネルギースパッタクリーニングを行う。引き出しの後、Xe+イオンは、真空壁、イオン光学部材、ウエハディスクおよびウエハホルダのようなイオンソースの下流の部材の高エネルギースパッタリングをしてよい。
【0103】
同様に、WF6、WF5および/またはWF4のようなフッ化タングステン種が利用される所で、フリーフッ化物が、イオンソースの様々なクリーンな部材をスパッタしてもよく、および/またはタングステンがイオンソースの様々な部材上に堆積されてよい。クリーニングと堆積の間に生じるアクションは、システム内の個別の部材の温度に依存して決まる。
【0104】
様々な側面において、本発明は、マイクロエレクトロニクス装置の製造に使用されるイオンインプランテーションシステムのイオンソース領域のクリーニングのための方法および装置に関連する。イオンソース領域は、例えば、間接加熱カソードソース、フリーマンソース、またはバーナスソースを含んでよい。
【0105】
1つの実施形態において、本発明は、真空チャンバおよび/または部材と気相反応ハロゲン組成物とを、真空チャンバおよび/またはその部材から残渣を少なくとも部分的に除去するのに十分な時間、十分な条件で接触させることにより、イオンインプランタおよびその中に含まれる部材からの残渣をインサイチュ除去することに関連する。また、本発明は、残渣と真空チャンバおよび/または部材が製造された材料とが異なるとき、気相反応材料は残渣に選択的に反応性であり、イオンインプランタの真空チャンバおよび/または部材が製造された材料とは最小の反応性(実質的に非反応性および望ましくは完全に非反応性)であるように、そうすることに関連する。また、本発明は、残渣と真空チャンバおよび/または部材が製造された材料とが同じとき、気相反応材料は、残渣と真空チャンバおよび/または部材との両方と反応性であるように、そうすることに関連する。
【0106】
ここで使用されるように、気相反応ハロゲンと残渣との反応性について適用される「選択的に」という用語は、気相反応ハロゲンと残渣との間の優先的反応を記述するために用いられる。イオンインプランタの真空チャンバおよび/または部材が製造された材料と本質的に非反応性であり続ける間に、もし、真空チャンバおよび/または部材が残渣自体の物質と同一または類似した要素を有していると、気相反応ハロゲンは、イオンインプランタの真空チャンバおよび/または部材が製造された材料のいくらかと反応してもよい。例えば、選択的に反応性であり、タングステン堆積物を部材から除去する間、気相反応材料は、部材自体にあるタングステンとも反応してよい。残渣および部材は、そのような共反応が生じるために、正確に同じ材料でなくてよいが、いくつかの共通の材料を含むだろう。
【0107】
もう1つの実施形態においては、部材がイオンインプランタから移転される専用の分離されたチャンバ内で、イオンインプランタ部材はエクスサイチュでクリーニングされる。
【0108】
インサイチュクリーニングをさらに詳細に検討すると、そのようなクリーニングは主に3因子に依存する。クリーニング前駆体の反応特性、クリーニング反応副生物の揮発性、および化学的クリーニング内で採用される反応条件である。クリーニング組成物は、インプランタの製造材料の損耗を最小限にしつつ、不要な残渣を除去しなければならない。クリーニング反応で生じる副生物は、イオンインプランタまたは他のポンプ装置の真空システムによりそれらが容易に除去されるのに十分なほど揮発性でなければならない。
【0109】
インプランタの部材と同じ材料から形成された残渣のクリーニングの結果、コンポーネント自身の多少の損耗が生じた。特に、タングステンアークチャンバを利用するシステムからのタングステン残渣を除去するクリーニング剤として、XeF2を使用する結果、アークチャンバの内側から多少のタングステンが除去されるだろう。しかし、システムがクリーンニングされず、タングステン堆積物がシステム内に堆積することが許可されている場合の低下したシステム性能に照らせば、システム効率を最大化する利益のために、アークチャンバの内側材料の多少のロスは重要ではない。
【0110】
例えば、気相反応材料は、XeF2ガスのような、フッ素化キセノン化合物ガスを含んでよい。XeF2は、好ましい反応性ハロゲンであり、室温で昇華するが、昇華レートを増加させるためにヒータを用いて加熱されてよい。XeF2は、効率的シリコンエッチャントとして知られ、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)デバイスプロセスにおいて、選択的シリコンエッチャントとして用いられている。特に、XeF2は、下記の反応によって、シリコンと反応する。
2XeF2(g)+Si(s)→2Xe(g)+SiF4(g) (10)
シリコン/XeF2反応は、活性化(換言すればプラズマまたは加熱)無しで起こる。XeF2とSiの反応速度は、XeF2とSiO2の反応速度より大変大きく、XeF2はSiとの反応に対して選択的である。
【0111】
XeF2または他のフッ素化キセノン化合物は、金属ホウ素のためのエッチャントとして、本発明の実施に有効に用いられる。化学理論に縛られることを意図していないが、ホウ素は下記反応によってエッチングされると考えられる。
3XeF2(g)+2B(s)→3Xe(g)+2BF3(g) (11)
XeF2の砒素、リンおよびゲルマニウムへのエッチャントとしての使用は本発明により予期され、下記の反応を含んでよい。
5XeF2(g)+2As(s)→5Xe(g)+2AsF5(g) (12)
5XeF2(g)+2P(s)→5Xe(g)+2PF5(g) (13)
2XeF2(g)+Ge(s)→2Xe(g)+GeF4(g) (14)
このような反応はエネルギー活性化を含んでまたは含まずに実行されてよい。
【0112】
本発明の方法および装置は、イオンインプランタの部材から少なくとも部分的な残渣の除去(例えば、少なくとも25%の除去、より好ましくは少なくとも50%、そして最も好ましくは75%のそのような残渣の除去)にとって有用である。また、残渣がイオンインプランタの部材の構成材料(例えば、アルミニウム、タングステン、モリブデン、グラファイト、絶縁材料、封止材料等)と異なるときに、それらの材料に関連して選択的に残渣が除去されるように、残渣を除去するのに有用である。
【0113】
残渣および部材の構成材料が同じ材料のとき、部材の性能に重大な影響を与えないように、部材からの材料の除去を数ミクロン、または数十ミクロンの範囲のような低レベルに維持しつつ、残渣除去を近いレベルにすることが望まれる。さらに、気相反応材料組成物は、部材パーツとの反応よりも残渣との反応に対してより選択的であるように、堆積物は一般的に均一な厚さまたは堆積を有さず、クリーニングプロセスにおいて、部材自体の材料よりも反応性が高くてもよい。
【0114】
インサイチュクリーニングのため、いくつかの気相反応材料組成物のイオンソース領域への移動モードが採用されてよい。これらは、停滞モード、連続モード、直接導入モードを含む。そのようなクリーニングのモードは、国際公開第07/127865号に、本発明の実施に有効に用いられる装置および方法とともに記載される。国際公開第07/127865号は、言及により、その全体がこの中に組み込まれる。XeF2のクリーニング組成物としての使用は、この中で、本発明の様々な実施形態と関連して記載されているが、XeF2に代えてまたはXeF2と共に、WF6、WF5および/またはWF4のような他のフッ素化化合物も使用されてよく、または他のおよび追加のフッ素化化合物も用いられることが理解されるだろう。例えば、BrF3は、プラズマ無しでタングステンをエッチングするのに用いられる。
【0115】
他の側面では、本発明は、固体ドーピング材料のために、キャリアガスとしてのXeF2またはN2F4の使用を含む固体ドーピング材料を用いるイオンインプラントシステムの性能を向上し、寿命を延長する方法に関連する。固体ドーピング材料は、砒素、リン、セレニウム、アンチモン、SbF3、InCl、SeO2、Sb2O3およびInCl3成分を含むが、しかしこれらに限定されない。
【0116】
本発明が予期するように、Sb2O3、InCl3または他の固体ドーピング材料のためのXeF2またはN2F4のキャリアガスとしての使用により、ソースチャンバおよびその部材上に堆積するSb、Inおよび他のドーパントを除去する。この即時的方法は、Sbインプラントの後にホウ素への切換えがされても有用性がある。本発明のこの方法により得られる効果は、少なくとも2つある。第一に、この方法は、イオンソースチャンバおよびその部材上のドーパント蓄積を防ぎまたは低減する、リアルタイムソースクリーニングを提供する。従って、イオンソース寿命を延長するとともに、イオンソース性能を向上する。第2に、この方法は、プラズマおよび/またはビーム電流を強化および/または安定化する。
【0117】
他の側面では、本発明は、ガス状ドーピング材料と共に、並行流(co−flow)ガスとしてXeF2またはN2F4を使用することを含むガス状ドーピング材料を用いるイオンインプラントシステムの性能を向上し、寿命を延長する方法に関連する。ガス状ドーピング材料は、GeH4およびBF3を含むが、これらに限定されない。
【0118】
本発明が予期するように、GeH4または他のガス状ドーピング材料と共に、XeF2またはN2F4を共流ガスとして使用すると、ソースチャンバおよびその部材上に堆積するGe、または他のドーパントを除去する。本発明のこの方法により得られる効果は、少なくとも2つある。第一に、この方法は、イオンソースチャンバおよびその部材上のドーパント蓄積を防ぎまたは低減する、リアルタイムソースクリーニングを提供する。従って、イオンソース寿命を延長するとともに、イオンソース性能を向上する。第2に、この方法は、プラズマおよび/またはビーム電流を強化および/または安定化する。
【0119】
本発明のもう1つの側面は、イオンインプラントシステムのフォアラインをクリーニングして、イオン化に関連した堆積物をそこから除去する方法に関連する。その方法は、クリーニングガスが堆積物と化学的反応性を有する条件下で、イオンインプランテーションシステムのフォアラインと、クリーニングガスとを接触させて、少なくとも部分的に堆積物の除去をすることを含む。堆積物は、B、Ge、Si、PおよびAsまたはこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。クリーニングガスは、XeF2、N2F4、F2および上記のように構成された堆積物と反応する他のフッ化物種を含むが、これに限定されない。当業者に理解されるように、必要なクリーニングガスの量は、存在する堆積物の量によって決まる。同様に、クリーニングガスと堆積物の反応の間に与えられる熱量は、クリーニングガスの流量によって決まる。クリーニングプロセスの結果生ずる副生成物種の成分と濃度は、クリーニングガス流量、堆積物の組成およびポンプパージ流レートによって決まる。限定せず、説明することのみを目的として、フォアラインからのリンをクリーニングするためのXeF2の使用例を下記に示す。
【0120】
クリーニングプロセス中に必要とされるXeF2の量を決定するために用いられる化学反応は下記の通りである。
5XeF2(g)+2P(s)→5Xe(g)+2PF5(g)
合成エンタルピー(kJ/mol)は、Lange's Handbook of Chemistry(第14版)から取られ、反応時の放熱を決定するためにここにリストされる。XeF2(−164)、Xe(0)、P(0)およびPF5(−1594.4)
【0121】
XeF2の流量は、クリーニングプロセスに必要な時間だけでなく、放熱も決定する。XeF2シリンダを加熱する手段を設けないと、適切なデリバリーチューブコンダクタンスを前提とすれば、最大の持続される流量は近似的に500seemである。もしシリンダが加熱ジャケットを使用して室温に維持されるならば、この流量は100seemまたはそれ以上に増加されうる。リン堆積物をクリーニングするのに必要なXeF2の量は表1に示される。そして、クリーニング反応中に放出される熱量は表2に示される。
【表1】
【表2】
【0122】
上記クリーニング反応からの様々な副生成物の最大生成率は、表3に示される。
【表3】
【0123】
当業者に理解されるように、残渣の組成物は多様なものとなるかもしれないので、表3に示されるデータは、副生成物量が、各要素に対して、その要素の100%の組成を前提にして決定されるという仮定に基づいている。さらに、それらの種の最大濃度は、排気システム内の希釈流量によって決まる。例えば、もしポンプが10slpmの窒素パージを有していると、粗引きポンプのちょうど下流において、PF3の最大安定状態濃度は3330ppmである。XeF2の流量が50seemより高ければ、この値は増加し得る。
【0124】
上記された方法の1つの実施形態において、ターボポンプがオフとなり、粗引きポンプがオンとなりつつ、クリーニングガスがインプラントソースチャンバ内に流入する。この実施は、フォアライン堆積物上のクリーニングガス流量を改善し、より速いクリーニングプロセスを提供する。クリーニングガス流量は、ガスシリンダの加熱によりさらに改善され、ここで、クリーニングガスは室温以上となるまで格納される。この実施において好ましくは、ガスシリンダからイオンインプランタまでのデリバリーラインも同様に加熱する。
【0125】
上記の方法のもう一つの実施形態において、クリーニングガスは、インプラントソースチャンバ、ポンプおよびフォアラインが特定の圧力まで満たされ、その後、低い圧力までポンプされるパルス化されたフローによって、インプラントソースチャンバへ流れる。このプロセスは、イオンインプラントシステムのフォアライン上の堆積物が除去されるまで繰り返される。この実施は、好ましくは、粗引きポンプの注入口上の遮断弁を用いる。
【0126】
好ましい実施において、上記の実施形態は、さらにガスシリンダを加熱することを含む。ここで、クリーニングガスは室温以上となるまで格納される。
【0127】
全ての実施形態において、好ましくは、この方法は、さらに粗引きポンプ出口に、クリーニングプロセスで生成された揮発性の副生成物を除去するためのスクラバを含む。
【0128】
好ましくは、各実施形態は、さらに、Air Products and Chemicals, Inc.(PA, USA)から商業的に入手可能であり、http://www.fabtech.org/product_briefings/_a/new_product_air_products_offers_on_site_xenon_recoveryに記載されここに組み込まれるようなXeリカバリシステムを含む。
【0129】
イオンインプラントシステムのフォアラインをクリーニングする方法のもう1つの実施形態は、クリーニングガスをターボポンプの下流に供給し、このクリーニングガスをイオンインプラントシステムのフォアラインに連続的に流すことを含む。上記クリーニングガスの連続的な流れは、ソースハウジング内、ソースハウジングとソースターボポンプの間の領域、またはソースターボポンプの下流に直接向かうものでよい。好ましくは、インプラントプロセスの実行中でも、この実施はフォアライン上の堆積物をクリーニングし、これにより、イオンインプランティングのオペレーションの中断を低減する。
【0130】
上記の実施形態において、クリーニングガスは、好ましくはガスシリンダ内に格納される。この方法は、好ましくは、さらにガスシリンダを加熱することを含み、ここでクリーニングガスは室温以上で格納される。
【0131】
上記の実施形態は、好ましくはさらに、クリーニングプロセスから生成された揮発性の副生成物を除去するスクラバを粗引きポンプ出口に提供することを含む。
【0132】
上記された実施形態は、さらにAir Products and Chemicals, Inc.(PA, USA)から商業的に入手可能であり、http://www.fabtech.org/product_briefings/_a/new_product_air_products_offers_on_site_xenon_recoveryに記載され、ここに組み込まれるようなXeリカバリシステムを提供することを含む。
【0133】
もう一つの側面において、本発明は、イオンインプラントシステムの性能を向上させ、寿命を延長する方法に関連する。この方法は、カソードと少なくとも1のクリーニングガスと少なくとも1の堆積ガスからなる混合ガスとを接触させる、カソードを有する。ここで、この混合ガスは、カソードへの材料の堆積と、カソードからのその材料または他の材料の除去とのバランスを取る。混合ガス中のクリーニングガスは、カソード上に堆積されたドーパント材料およびカソード材料を除去する。
【0134】
一方で、混合ガスの堆積ガスは、直接的または間接的に、カソード上にドーパント材料の堆積を引き起こす。そのような混合ガスは、ドーパント材料の蓄積とドーパント材料またはカソード上の他の材料の除去とのバランスを維持し、従って、イオンソース寿命を延長する。ドーパント材料が堆積またはエッチングされ得るだけでなく、アークチャンバ壁の材料(例えば、WまたはMO)が同様に堆積またはエッチングされ得ることが理解される。クリーニングガスは、直接的に(スパッタリングまたは化学的エッチングを介して)または間接的に(フッ化タングステン/モリブデンの化学的ゲッタリングを介して)堆積を防ぎ、または堆積レートを減少させる。
【0135】
堆積ガスは、ハロゲンサイクル(ガス由来のフッ素が冷却壁由来のWまたはMoをエッチングし、非常に熱いカソード上でWまたはMoを分解する)を介して、または実際にドーパント分子/原子をカソード上に堆積することで(例えば、BF3からのB)、カソード上の堆積を引き起こす。そして、同様のメカニズムがバーナスイオンソースのフィラメントにも適用される。絶縁体またはアークチャンバの他の繊細な部材上のドーパント堆積のケースでは、クリーニングガスは、形成されたドーパント堆積物を化学的にエッチングする傾向があり、またはクリーニングガスは、堆積を防ぎまたは最小化するために、ドーパントの堆積に先立って最初の段階で堆積ガスと反応してよい。
【0136】
どのようにクリーニングガスが最初に堆積を防ぐかの例の手段として、GeH4の堆積ガスは、カソード、絶縁体、または他の部材上にGe堆積を形成させうる。もし、クリーニングガスがXeF2なら、それはGeH4と反応し、Geよりも遥かに揮発性で、従ってポンピングによりソース領域から除去できるGeF2および/またはGeF4を、少なくとも多少量生じる。さらに、堆積ガスおよびクリーニングガスの一方または両方もドーパントガスでよい。
【0137】
イオンソースインプランタ内への混合ガスの格納およびディスペンシングは、その内容が言及によりここに組み込まれる米国特許第5518528号明細書に記載される吸脱着装置(SDS−Safe Delivery Sourceと言及される)、その内容が言及によりここに組み込まれる米国特許第6101816号明細書に記載される、所望の圧力で流体を保持する導管(VAC−Vacuum Actuated Cylinderと言及される)を含むディスペンシングシステムと流体格納部、または、その内容が言及によりここに組み込まれる米国特許第6089027号明細書に記載される、ハイブリッド流体格納部とSDSおよびVAC(VAC−Sorbと言及される)のディスペンシングシステムを用いて実行されてよい。これらの流体格納部およびディスペンシングシステムは、大気圧未満のガスの供給を提供し、従って、高圧の流体格納部およびディスペンシングシステムよりも、安全で効率的である。その上、高圧の流体格納部およびディスペンシングシステム下で、共存して混合可能でない混合ガス中の一部のガスは、SDS、VACまたはVAC−Sorbシステム下で共に格納され、およびディスペンスされうる。
【0138】
上記方法の1つの実施形態では、混合ガスの複数のガスは、カソードまたは堆積を生じやすい繊細な他の部材と接触するように、同時に流れる。
【0139】
上記方法のもう1つの実施形態では、混合ガスの複数のガスは、カソードまたは堆積を生じやすい繊細な他の部材と接触するように、連続的に流れる。
【0140】
上記方法のもう1つの実施形態では、混合ガスは、少なくとも1の水素含有ガスおよび少なくとも1のフッ素含有ガスのコンビネーションを含み、水素含有ガスはクリーニングガスとして機能し、そして、フッ素含有ガスは堆積ガスとして機能する。
【0141】
上記方法のもう1つの実施形態では、混合ガスは、少なくとも1の非ドーパントガス(換言すれば、ガスはAs、P、Ge、B、SiまたはCを含まない)および少なくとも1のドーパントガスのコンビネーションを含み、非ドーパントガスはクリーニングガスとして機能し、ドーパントガスは堆積ガスとして機能する。
【0142】
クリーニングガスの例として、Xe/H2、Al/H2、Ne/H2、Xe/NH3、Ar/NH3、Ne/NH3、Ar/XeおよびAr/Xe/H2があるが、これらに限定されない。
【0143】
堆積ガスの例として、F2、N2F4、Cl3、WF6、MoF6、GeF4およびNF3があるが、これらに限定されない。
【0144】
混合ガスの例として、AsH3/AsF3、AsH3/AsF5、PH3/PF3、PH3/PF5、SiH4/SiF4、H2/Xe/SiF4、GeH4/GeF4、H2/Xe/GeF4、H2/GeF4、B2H6/BF3、H2/BF3、F2/BF3、CO2/F2、CO2/CF4、CO/F2、CO/CF4、COF2/F2、COF2/CH4、COF2/H2があるが、これらに限定されない。
【0145】
本発明の特徴および効果は、下記の非限定的な実施例によってより詳細に示される。
【実施例1】
【0146】
本実施例は、堆積物を除去するための化学クリーニング剤の使用により達成された、イオンソースの寿命とインプランタの利用の改善を示す。好ましくは、インプランタ内の汚染薄片および導電性薄膜の蓄積を防止するため、堆積物は通常のインターバルにおいて除去される。
【0147】
インサイチュクリーニングは、通常のインターバルにおいて、イオンインプランタのガスボックスに位置する、その供給管からXeF2を導入することにより実行され、XeF2クリーニングガスが一日2回10〜15分間イオンソース内に導入される。高電流インプランタは、クリーニング試薬の流動力学を評価するテストに利用された。XeF2クリーニング特性が決定され、クリーニング試薬は、インプランタのビームライン部材上に悪影響がないことが確認された。XeF2試薬を用いるクリーニングプロセスは、その後、中電流インプランタ装置の使用のための要件を満たした。
【0148】
図1は、インサイチュクリーニングプロセスの実行に先立つ、およびに後続する、そのような中電流インプランタから蓄積されたソース寿命データのグラフである。データは、アルシンおよびホスフィンを含むドーパント組成物用に展開された。クリーニング前、イオンソースは、2つの共通故障モードに限定され、約250±90時間の平均オペレーション寿命を有していた。
【0149】
主たる故障モードは、抑制電圧供給からの過剰な漏れであった。安定なイオンビームの引き出しを成功させるために、抑制電圧がアークチャンバの外側に位置する電極に適用される。この電極は、多数の小絶縁体から電気的に絶縁されており、1以上のそれらの絶縁体上における導電性薄膜の蓄積は、過剰な抑制漏れを引き起こす。
【0150】
第2の故障モードは、堆積材料の薄片に起因する、アークチャンバ内の部材外におけるショートであった。
【0151】
これらの故障モードは、インサイチュ化学クリーニングプロセスにより最小化されることが見出された。通常の1日2回のクリーニングは、生産におけるソース寿命を延長した。
【0152】
抑制漏れ電流におけるXeF2の効果は、インサイチュクリーニングの導入前後における中電流ツールに対する漏れ電流のグラフである、図2にさらに示される。各々のデータポイントは、ウエハロットをインプラントするのに必要な時間の間の平均抑制電流を表わし、ポイントは複数のイオンソースの寿命上にプロットされた。漏れの大きさは、最後の予防的メンテナンス時の絶縁体の交換後の経過時間によって決まる。このデータは、通常のインサイチュクリーニングが、漏れ電流が予定外のソースメンテナンスが必要な制御上限の1.5mAに決して達しないように、漏れ電流を大きく減少させることを示す。
【0153】
インサイチュクリーニング効果は、同様に、BF3およびPH3を含むインプラントドーパント混合物を用いて評価された。ソースは、このような状態で497時間動作し、BF3の性質に起因した、フィラメント上のタングステンまたはホウ素堆積物を含む限定的なアーク状態のために故障した。テストシステム上の497時間の単独のソース寿命は、同一システム上で今まで長期間用いられた平均299時間に対して有利に比較される。これは単一のデータポイントであるが、これは確立されたパターンと一致する。この場合のソース寿命の改善は、ソースアークチャンバ内のタングステン堆積物のXeF2によるエッチングに起因するように思われる。
【0154】
図3Aおよび3Bの写真は、クリーニング剤の効果の追加的な証拠を提供する。両方の写真には、それぞれの場合において生産の約98日後の、定期的な予防的メンテナンスためのイオンソースアセンブリの撤去後のイオンソースハウジングの外観が示されている。図3Aの写真に関してインサイチュクリーニングが1日2回行われた一方、図3Bの写真に関してクリーニングは行われなかった。
【0155】
クリーニングの欠如によって、堆積材料の相当量が存在し、そのうちいくらかは薄い層に分離し、剥離し始めた。通常のメンテナンス活動の間、手作業のスクラビングが、ハウジングの内側表面から堆積材料を除去するために用いられた。このハウジングは、インサイチュクリーニングによって、よりクリーンな外観となり、手作業のクリーニングには少しの時間しか消費されず、または全く時間が消費されなかった。アークチャンバの外を流れ、真空チャンバ壁へ移動する未反応のXeF2によって、堆積物は除去され、ドーパントおよび他の堆積物は化学反応によって除去された。
【0156】
イオンソース内および周辺の堆積物は、所謂「インプランタメモリ効果」を引き起こす。1つのドーパントソースガスからもう1つへ変化するとき、第1ドーパントの要素からのイオンは、第1ドーパントガスの流れが止められたずっと後にイオンソースプラズマから引き出され続ける。ある例におけるこの効果は、望まれるイオンビームの深刻な汚染を引き起こし、インプラントプロセスの劣化を結果的に生じる。
【0157】
インプランタメモリ効果の一例は、BF2プラントにおけるP汚染である。この汚染のプロセスの収率に対する結果は、多くの半導体製造施設が、同一ツール上のリンおよびホウ素インプラントを予定することを避けるほど深刻である。これは、インプラントオペレーションを予定する上で実質的な障害となる。
【0158】
P/BF2汚染は、PH3を用いたインプランテーションからのソース内のリン堆積物から生じるBF2+インプランテーションのためのBF3ガスへの変更において、フッ素の一部は反応して、31P19F+を形成する。31P19Fの質量は50である。これは、11B19F2の望まれる質量49に十分近いので、PF+はBF2+イオンと共にインプラントされる。結果として、BF2+インプランテーションは、特定の質量エネルギーにおけるマージン質量分解能と共に、いくつかの高電流システム上に制限される。
【0159】
PH3ドーパントガスからのP+イオンビームを用いるシミュレート生産において、約200時間運転される高電流インプランタを用い、インプランタメモリ効果上の影響を決定するために、XeF2クリーニングが評価される。システムがBF3ガスに切り替わり、高用量(5×1015イオン/cm2)のBF2+を用い、露出したシリコンモニタウエハの即時のインプランテーションが実行された。BF2+インプランテーション中、二次イオン質量分析(SIMS)を使用した簡便な測定のため、汚染効果を確実に十分大きくするように、システムの分析磁石の分解アパーチャが通常以上に開かれた。
【0160】
BF3、アルゴン、XeF2のクリーニング効果は、3つのガスのそれぞれを実行し、その後、モニタウエハにBF2+をインプラントすることによる汚染の残存量を定期的にモニタすることにより比較された。BF2と共にインプラントされるPの量は、SIMSによって測定される。インプラントされたリンの典型的なSIMSスペクトルを図4Aに示す。ここで、リンスペクトルのピークは、イオンソースから引き出されたPF+イオンのインプラント深さに対応し、その量はBF2内の約3%のPFの汚染レベルに相当する。
【0161】
図4Bは、BF3またはXeF2を用いたクリーニング時間の関数としての汚染レベルのプロットである。ここで、プロットは、PH3からBF3へ変換された直後の汚染レベルに通常化される。BF3プラズマを実行したとき、2時間後もPF汚染における小さな効果が認められた。(図示されない)類似の結果が、アルゴンプラズマの使用時に得られた。対照的に、XeF2を用いたインサイチュクリーニングが行われたたった15分後に、PF汚染は1/2に低減された。そして、XeF2を用いた装置内クリーニングの30分後にほとんど1/5になった。
【0162】
インサイチュクリーニングの使用に先立って、中電流インプランタユニットは、平均的なソース交換および後続する約5時間を要する性能テストを伴って、単位月単位ツールあたり平均3.3ソースの交換がされた。これは、単位ツールあたり、年間200時間近くの生産時間ロスに等しい。インサイチュクリーニングによって、ソース寿命は効果的に倍増され、各中電流ツールに対して約100時間の追加の生産時間を生じる。結果として生じるテストウエハの節約だけでなく、生産時間および性能テストウエハの後プロセスに必要な計量ツール(年間40にも上る性能テストが各中電流インプランタに実施される)の節約は、インサイチュクリーニングの有効性を明らかにした。
【実施例2】
【0163】
本実施例は、説明のためのイオンインプランタシステムのイオンソースにおいて、フィラメント成長の制御を実証する。
【0164】
図5Aは、増加したフィラメント電流及び重量に関するXeF2フローおよびアーク電力バリエーションの効果を示すグラフである。グラフは、インプランタシステムのオペレーションの経過時間(hours)の関数として、フィラメント重量をグラムで示す。
【0165】
グラフの上方のラインは、2.2立方センチメータ毎分(seem)のXeF2フローおよび100ボルト/0.05アンペアのアーク電力で、319ミリグラム/毎時のフィラメント重量ゲインが3時間のオペレーション後に決定されたオペレーションを表わす。グラフの下方のラインは、3時間のオペレーション期間に63ミリグラム/毎時のフィラメント重量ゲインを生じた、0.5seemのXeF2フローおよび40ボルト/0.05アンペアのアーク電力を表わす。
【0166】
図5Bは、フィラメント電流に関するXeF2フローおよびアーク電力バリエーションの効果を示すグラフである。グラフは、インプランタシステムのオペレーションの時間の関数として、フィラメント重量をアンペアで示す。グラフの上方のラインは、2.2立方センチメータ毎分(seem)のXeF2フローおよび100ボルト/0.05アンペアのアーク電力で、16アンペア/時のフィラメント電流上昇が決定されたオペレーションを表わす。グラフの下方のラインは、3時間のオペレーション期間に2.3アンペア/毎時のフィラメント電流増加を生じた、0.5seemのXeF2フローおよび40ボルト/0.05アンペアのアーク電力を表わす。
【0167】
図6は、アンペアによる平均フィラメント電流の関数としての、ミリグラム/時間によるフィラメント重量変化のグラフである。このグラフは、小流量および大流量の熱フィラメント状態のデータおよび小流量および大流量のプラズマ状態のデータと共に、タングステン移送に対する熱流(プラズマ無し)およびプラズマ状態の効果を示す。これらのデータは、タングステンのシステム内の移送は、フィラメントにおける材料の堆積または代替的なエッチングを生じる適切なプロセス条件の選択により調整されうることを示す。
【実施例3】
【0168】
本実施例は、カソードバイアス電力供給をモニタすることで達成される、イオンソース寿命およびインプランタ利用の改善を示す。図7は、時間とガスの種類の関数としてのカソードバイアス電力の変化を示すグラフである。特に、GeF4が流れるとき、ハロゲンサイクルはWをカソード上に堆積させ、これは(規定のイオンビーム電流を維持するために)バイアス電力を増加させる。PH3が流れるとき、リンイオンはカソードをスパッタリングし、その結果、カソードバイアス電力が減少する。本実施例においては、PH3のGeF4に対する比率は、最終的に約16時間後のバイアス電力がその最大出力に達するようにされた。このようにバイアス電力をモニタし、および適切な処置を行うことで、イオンソース寿命の改善が可能となる。
【0169】
図8は、バイアス電力の関数としてのカソードWの重量変化を示すグラフである。特に、単純にカソードバイアス電力を変化させることにより、ソースガスとしてXeF2を用い、タングステン(W)は、カソードからエッチングされ、またはカソード上に堆積される。低〜中バイアス電力は、Wエッチング反応が優勢な状態に温度を下げる一方、高バイアス電力は、W堆積反応が優勢なレベルまでカソード温度を増加させる。カソードの状態によって、バイアス電力は、カソードから不要な堆積物をエッチングし、または必要なWをカソード上に堆積し戻すように選択されて、従って、イオンソース寿命の改善が可能となる。
【0170】
本発明は、様々な特定の実施形態への言及とともにここに記載されており、従って、当業者によって理解されるように、本発明は限定されず、様々な他の修正や実施形態に拡張され、これらを包含することが理解されるだろう。従って、本発明は、次の特許請求の範囲に従って、広く解釈されることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンインプランテーションシステム内の間接加熱カソードソースの状態を制御する方法であって、
(a)予め定められた時間におけるカソードバイアス電力を測定することで、前記間接加熱カソードソースの消費電力を決定することと、
(b)前記予め定められた時間における前記消費電力と初期電力とを比較することと、(c)この比較に応じて、前記間接加熱カソードの状態を制御するために(i)または(ii)の修正動作を行うこととを備え、
(i)の修正動作は、もし前記予め定められた時間の前記消費電力が前記初期電力よりも高ければ、前記間接加熱カソードをエッチングすることであり、
(ii)の修正動作は、もし前記予め定められた時間の前記消費電力が前記初期電力よりも低ければ、前記間接加熱カソードを再生することである、方法。
【請求項2】
(c)(i)の修正動作におけるエッチングは、エッチングに十分となるような低から中温度条件下で、前記間接加熱カソードを操作することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(c)(ii)の修正動作における再生は、前記間接加熱カソード上にプラズマ状態でフッ素化ガスを流すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素化ガスは、XeF2、XeF4、XeF6、GeF4、SiF4、BF3、AsF5、AsF3、PF5、PF3、F2、TaF3、TaF5、WF6、WF5、WF4、NF3、IF5、IF7、KrF2、SF6、C2F6、CF4、ClF3、N2F4、N2F2、N3F、NFH2、NH2F、BrF3、C3F8、C4F8、C5F8、CHF3、CH2F2、CH3F、COF2、HF、C2HF5、C2H2F4、C2H3F3、C2H4F2、C2H5F、C3F6およびMoF6のうち、1または複数を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(c)(ii)の修正動作の再生は、金属堆積が起こるのに十分な高温条件下で、前記間接加熱カソードを操作することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素化ガスは、XeF2およびN2F4のうち1または複数を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
イオンソースのアークチャンバ内にカソードを備えるイオンインプランテーションシステムを動作させて、前記イオンソースの動作効率を維持する方法であって、
(a)および(b)からなるグループから選択される条件下で、前記カソードとタングステン試薬とを接触させることを含み、
(a)の条件は、前記カソード上にタングステンの堆積を生じさせるような条件であり、
(b)の条件は、堆積された材料が前記カソードからエッチングされるような条件である方法。
【請求項8】
1または複数の部材からイオン化に関連した堆積物を少なくとも部分的に除去するために、イオンインプランテーションシステムの当該1または複数の部材をクリーニングする方法であって、
(a)および(b)からなるグループから選択される条件下でシステムを通してクリーニングガスを流すことを含み、
(a)の条件は、カソード上に材料の堆積が生じるような条件であり、
(b)の条件は、前記カソードから堆積された材料のエッチングが生じるような条件である、方法。
【請求項1】
イオンインプランテーションシステム内の間接加熱カソードソースの状態を制御する方法であって、
(a)予め定められた時間におけるカソードバイアス電力を測定することで、前記間接加熱カソードソースの消費電力を決定することと、
(b)前記予め定められた時間における前記消費電力と初期電力とを比較することと、(c)この比較に応じて、前記間接加熱カソードの状態を制御するために(i)または(ii)の修正動作を行うこととを備え、
(i)の修正動作は、もし前記予め定められた時間の前記消費電力が前記初期電力よりも高ければ、前記間接加熱カソードをエッチングすることであり、
(ii)の修正動作は、もし前記予め定められた時間の前記消費電力が前記初期電力よりも低ければ、前記間接加熱カソードを再生することである、方法。
【請求項2】
(c)(i)の修正動作におけるエッチングは、エッチングに十分となるような低から中温度条件下で、前記間接加熱カソードを操作することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(c)(ii)の修正動作における再生は、前記間接加熱カソード上にプラズマ状態でフッ素化ガスを流すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素化ガスは、XeF2、XeF4、XeF6、GeF4、SiF4、BF3、AsF5、AsF3、PF5、PF3、F2、TaF3、TaF5、WF6、WF5、WF4、NF3、IF5、IF7、KrF2、SF6、C2F6、CF4、ClF3、N2F4、N2F2、N3F、NFH2、NH2F、BrF3、C3F8、C4F8、C5F8、CHF3、CH2F2、CH3F、COF2、HF、C2HF5、C2H2F4、C2H3F3、C2H4F2、C2H5F、C3F6およびMoF6のうち、1または複数を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(c)(ii)の修正動作の再生は、金属堆積が起こるのに十分な高温条件下で、前記間接加熱カソードを操作することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素化ガスは、XeF2およびN2F4のうち1または複数を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
イオンソースのアークチャンバ内にカソードを備えるイオンインプランテーションシステムを動作させて、前記イオンソースの動作効率を維持する方法であって、
(a)および(b)からなるグループから選択される条件下で、前記カソードとタングステン試薬とを接触させることを含み、
(a)の条件は、前記カソード上にタングステンの堆積を生じさせるような条件であり、
(b)の条件は、堆積された材料が前記カソードからエッチングされるような条件である方法。
【請求項8】
1または複数の部材からイオン化に関連した堆積物を少なくとも部分的に除去するために、イオンインプランテーションシステムの当該1または複数の部材をクリーニングする方法であって、
(a)および(b)からなるグループから選択される条件下でシステムを通してクリーニングガスを流すことを含み、
(a)の条件は、カソード上に材料の堆積が生じるような条件であり、
(b)の条件は、前記カソードから堆積された材料のエッチングが生じるような条件である、方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2012−517684(P2012−517684A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550109(P2011−550109)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/053520
【国際公開番号】WO2010/093380
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(599006351)アドバンスド テクノロジー マテリアルズ,インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/053520
【国際公開番号】WO2010/093380
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(599006351)アドバンスド テクノロジー マテリアルズ,インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】
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