説明

半導体光素子、光送信モジュール、光送受信モジュール、及び、光伝送装置

【課題】埋め込みヘテロ構造を有する半導体光素子において、寄生容量が軽減される構造にすることにより、特性がさらに向上される半導体光素子、光送信モジュール、光送受信モジュール、及び、光伝送装置の提供。
【解決手段】出射方向に沿って入力される光を変調して出射する変調器部、を備える半導体光素子であって、前記変調器部は、活性層を含むとともに出射方向に延伸するメサストライプ構造と、前記メサストライプ構造の両側にそれぞれ隣接して配置される埋め込み層と、を備え、前記埋め込み層の下面と前記活性層の下面との距離は、前記埋め込み層の下面と上面との距離の20%以上である、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体光素子、光送信モジュール、光送受信モジュール、及び、光伝送装置に関し、特に、埋め込みヘテロ構造を有する変調器を備える半導体光素子の特性向上に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの普及に伴い、光通信システム用途の半導体光素子や光送受信モジュール、光伝送装置に、より高速化、より大容量化が求められている。例えば、電界吸収型変調器(以下、EA(Electro-Absorption)変調器と記す)は、変調時のチャープ(波動変調)が小さく、光信号のONレベルとOFFレベルの差である消光比が大きく、広帯域である、といった有利な特性を有することに加え、小型で低コストであることにより、広く用いられている。
【0003】
EA変調器とは、量子閉じ込めシュタルク効果(Quantum Confinement Stark Effect:以下、QCSEと記す)を利用して、EA変調器の活性領域に、電界を選択的に印加することにより、光を変調する変調器である。ここで、活性領域は、いわゆる単一量子井戸(Single-Quantum Well:以下、SQWと記す)層、もしくは、多重量子井戸(Multiple-Quantum Well:以下、MQWと記す)層となっている。以下、本明細書において、MQWとは、通常のMQWに加えて、SQWをも含むものとする。なお、QCSEとは、MQW層に電界が印加されると、MQW層における光の吸収端が長波長側へシフトするという効果をいう。
【0004】
EA変調器を備える半導体光素子とは、例えば、EA変調器部と、発振器部とが同一半導体基板上にモノリシックに集積される変調器集積型半導体光素子である。発振器部に駆動電流を注入することにより出射される連続光を、EA変調器部に電気信号を印加することで、光変調を行い、信号光が出力される。
【0005】
図5Aは、従来技術に係る変調器集積型半導体光素子101の上面図である。変調器集積型半導体光素子101は、変調器部102と発振器部103とを備えており、前述の通り、発振器部103より出射される連続光を、変調器部102が光変調をおこなっている。
【0006】
図5Bは、従来技術に係る変調器集積型半導体光素子101の変調器部102の断面図である。図5Bに示す変調器部102の断面は、図5AのVB―VB破線を貫く断面に対応している。
【0007】
半導体光素子の主な構造に、埋め込みヘテロ構造(Buried Heterostructure:以下、BH構造と記す)やリッジ導波路構造があり、当該変調器集積型半導体光素子101は、BH構造を有している。BH構造とは、活性層111を含む多層構造のうち、導波路領域の外側となる領域を除去することにより形成されるメサストライプ構造の両側を、半絶縁性半導体層によって埋め込まれている構造をいう。BH構造を有するEA変調器が集積されたEA変調器集積型半導体光素子について、特許文献1に開示されている。
【0008】
従来技術に係る変調器部102において、n型基板110上に、MQW層を含む活性層111、p型クラッド層112、p型コンタクト層113が、積層されている。ここで、活性層111は、不純物が意図的に添加されていない半導体(真性半導体)からなっている。
【0009】
これら多層構造のうち、導波路領域の外側が、n型基板110の一部まで除去されており、メサストライプ構造が形成されている。前述の通り、メサストライプ構造の両側が、鉄(Fe)などの不純物が添加されている半絶縁性半導体からなる埋め込み層116によって、埋め込まれている。BH構造は、リッジ導波路構造と比較して、横方向に光を閉じ込める効果が強い。それゆえ、BH構造は、リッジ導波路構造と比較して、FFP(Far Field Pattern)がより円形となるので、ファイバーとの結合効率が高いという利点があり、さらに、放熱性に優れており、広く用いられている。
【0010】
メサストライプ構造の上面と、その両側に位置する埋め込み層116の上面を覆って、所定の形状のパッシベーション膜117が形成されている。メサストライプ構造の上面の一部と、埋め込み層116の上面のうち斜面となる領域の一部には、パッシベーション膜117は形成されておらず、スルーホールとなっている。
【0011】
パッシベーション膜117の上側には、所定の形状のp型電極114が形成されており、スルーホールを介して、p型電極114と、メサストライプ構造の最上層であるp型コンタクト層113とは、電気的に接続されている。
【0012】
なお、p型クラッド層112やp型コンタクト層113に添加される不純物が、埋め込み層116に添加される不純物と相互拡散をするので、p型クラッド層112やp型コンタクト層113に添加される不純物が、埋め込み層116へ拡散することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−273993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
EA変調器の主たる特性には、消光比、光出力、チャープ特性、そして、帯域がある。帯域は、どの周波数まで高速変調が可能かを決めるパラメータとしてのみならず、光変調時の光波形の品質にも影響を及ぼすパラメータである。それゆえ、EA変調器の特性向上には、帯域を大きくすることが重要であるが、帯域を大きくするための重要な要因の一つに、EA変調器の寄生容量の低減化が挙げられる。
【0015】
図5Cは、従来技術に係る変調器集積型半導体光素子101の変調器部102の寄生容量を表す図である。図5Cは、図5Bに示す変調器部102の寄生容量を表している。変調器部102において、真性半導体層がp型層とn型層に挟まれる構造をしている場合に、寄生容量が発生している。
【0016】
まず、活性層111は、p型クラッド層112とn型基板110とに挟まれており、この領域に、寄生容量Cが存在する。次に、埋め込み層116は、p型電極114とn型基板110とに挟まれており、この領域にも寄生容量が存在する。
【0017】
p型電極114は、図5Aに示す形状をしている。メサストライプ構造は、図中横方向に延伸しており、p型電極114の一部は、メサストライプ構造の最上層であるp型コンタクト層113を覆うと共に図中横方向に延伸している。p型電極114のこの部分を延伸部とする。p型電極114は、延伸部と、図5Aの図中上側に配置される長方形状のパッド部と、パッド部と延伸部を接続する接続部と、からなっている。
【0018】
埋め込み層116を挟んで存在する寄生容量のうち、p型電極114のパッド部及び接続部と、n型基板110との間に生じる寄生容量を、寄生容量Cpadとする。寄生容量Cpadを低減するために、p型電極114のパッド部とパッシベーション膜117の間には、絶縁膜118が形成されている。絶縁膜118は、例えば、二酸化シリコン(SiO)からなっている。寄生容量Cpadを低減するためには、電極の面積に相当するパッド部の面積を小さくすることが考えられるが、p型電極114のパッド部は、p型電極114に印加する電圧を供給するために、導線を接続するための領域であり、導線との電気的接続を確保するために十分となる面積を確保する必要がある。
【0019】
また、図5Bに示す通り、p型電極114の延伸部は、p型コンタクト層113を覆うとともに、半導体埋め込み層116の斜面と、さらに、上面の一部に、広がっている。
【0020】
さらに、前述の通り、埋め込み層116には、p型クラッド層112やp型コンタクト層113の両側から、不純物が拡散している。この領域を、不純物拡散領域120として、図5Cに示している。p型クラッド層112やp型コンタクト層113から不純物拡散領域120に拡散している不純物は、p型ドーパントであり、埋め込み層116のうち、不純物拡散領域120は、いわばp型半導体となっている。
【0021】
それゆえ、メサストライプ構造の両側にそれぞれ広がる不純物拡散領域120と、n型基板110との間に生じる寄生容量を、寄生容量Cとする。さらに、p型電極114の延伸部のうち半導体埋め込み層116の上面の一部及び斜面に形成されている部分とn型基板110との間に生じる寄生容量から、寄生容量Cを除いた寄生容量を、メサストライプ構造の両側それぞれに対して、寄生容量Cとする。
【0022】
以上より、変調器部102が有する総寄生容量Ctotalは、Ctotal=C+2・C+2・C+Cpadと、近似される。
【0023】
ここで、前述の通り、帯域を大きくするために、変調器部102が有する総寄生容量Ctotalを低減する必要がある。一般に、容量は、電極の面積に比例し、電極間の距離に反比例する。それゆえ、容量を低減化するためには、電極の面積を小さくするか、電極間の距離を長くすればよい。
【0024】
総寄生容量Ctotalのうち、特に大きな割合を占めるのが、寄生容量Cである。寄生容量Cは、真性半導体である活性層111の層厚を大きくすることにより、低減することが可能であるが、活性層111の層厚は、帯域以外の特性(例えば、消光比)に大きく影響するパラメータであり、帯域のみを優先して層厚を小さくすることが出来ない。また、寄生容量C、寄生容量C、及び寄生容量Cの容量に影響するのが、変調器部102の延伸方向(図5Aの横方向)の長さである変調器長である。変調器長も、同様に、帯域以外の特性に大きく影響するので、帯域のみを優先して変調器長を短くすることが出来ない。
【0025】
それゆえ、他の特性に及ぼす影響が小さいパラメータとして、埋め込み層116の層厚Dを大きくすることが考えられる。埋め込み層116の層厚Dを大きくする場合には、次の3つの場合が考えられる。
【0026】
まずは、メサストライプ構造の高さ、すなわち、埋め込み層116の下面とp型コンタクト層113の上面の距離、を大きくする場合である。この場合、埋め込み層116の層厚Dが大きくなることにより、寄生容量Cpad及び寄生容量Cを低減する。しかし、同時に、p型クラッド層112(若しくはp型コンタクト層113)の層厚を大きくすることになり、p型クラッド層112及びp型コンタクト層113から、埋め込み層116に、より不純物が拡散することとなる。すなわち、図5Cに示す不純物拡散領域120の図中縦方向の長さが大きくなることにより、不純物拡散領域120の図中横方向の長さも大きくなることにより、寄生容量Cの増大を招くこととなる。
【0027】
次に、メサストライプ構造の高さは同じにして、メサストライプ構造の上面より、さらに上方へ埋め込み層116を積層する場合である。この場合、メサストライプ構造の高さは同じであるので、埋め込み層116の層厚Dを大きくしても、不純物拡散領域120のさらなる拡張はされず、寄生容量Cの増大は抑制されている。ここで、例えば、n型基板110がn型InPであって、埋め込み層が不純物が添加されるInPである場合を考える。埋め込み層116が、メサストライプ構造の上面より、さらに結晶成長される場合、埋め込み層116は、InPの(111)面の面方位に沿って、すなわち、メサストライプ構造の上面の(100)面方位(図中縦方向)に対して約55度の角度に、結晶成長される。そのために、埋め込み層116の層厚Dが大きくなるに伴って、寄生容量Cpad及び寄生容量Cにおいて、容量の電極間の距離に対応する長さは大きくなり、寄生容量Cpad及び寄生容量Cを低減する要因となる。しかし、それと同時に、埋め込み層116の斜面の面積が増大し、p型電極114の延伸部の幅(以下、p型電極幅と記す)も大きくなる。それによって、寄生容量Cにおいて、容量の電極に対応する面積も大きくなり、寄生容量Cを増大する要因となってしまう。
【0028】
最後に、上記2つの場合を組み合わせる場合である。前述の通り、埋め込み層116の層厚Dを大きくするために、メサストライプ構造を高くすると、寄生容量Cの増大を招き、埋め込み層116のうち、メサストライプ構造の上面より上の部分を高くすると、寄生容量Cの増大を招く要因を含んでいる。
【0029】
図6は、従来技術に係る変調器集積型半導体光素子について、埋め込み層116の層厚Dに対して計算される帯域fの計算結果を示す図である。
【0030】
ここで、n型基板110はn型InP基板とする。活性層111は、n型基板110側(図5Bの図中下側)から順に、InGaAsP下側光ガイド層、MQW層、InGaAsP上側光ガイド層が積層されて形成されているとして、MQW層は、ともに、InGaAsPからなる井戸層と障壁層が交互に積層されているとする。なお、MQW層の井戸層には歪が導入されている。p型クラッド層112はp型InP層からなり、p型コンタクト層113は、p型InGaAsP層及びp型InGaAs層からなるとする。p型クラッド層112となるp型InP層には、9×1017atom/cm程度のZnが、p型コンタクト層113となるp型InGaAsP層及びp型InGaAs層には、それぞれ、2×1018atom/cm程度及び2×1019atom/cm程度のZnが、p型ドーパントとして添加されているとする。なお、p型ドーパントにZnが用いられているのは一般的である。また、埋め込み層116は、Feが不純物として添加されるInP層からなるとする。埋め込み層116に添加される不純物として、Feが用いられているのは一般的である。しかし、ZnとFeには相互拡散が強いので、この場合、不純物拡散領域120に、Znが拡散する傾向は強い。
【0031】
ここで、埋め込み層116の下面と活性層111の下面との距離d(以下、活性層高さdと記す)を0.4μmと、活性層111の層厚を0.35μm、p型クラッド層112の層厚及びp型コンタクト層113の層厚の合計を1.7μmとする。また、変調器長を100μmと、メサストライプ構造の幅を1.3μmとする。p型電極114のパッド部は、45μm×45μmの正方形状とする。
【0032】
以上の値を一定として、埋め込み層116のうち、メサストライプ構造の上面よりさらに上方に積層される高さを増加させることにより、埋め込み層116の層厚Dを増加させる。それに伴い、メサストライプ構造の両側に広がる埋め込み層116の斜面はより広くなり、p型電極幅も大きくなる。
【0033】
例えば、埋め込み層116の層厚DがD=4.0μmのとき、p型電極幅は7.7μmであり、このとき、計算によって得られる帯域fはf=25.4GHzである。また、埋め込み層116の層厚DがD=7.0μmのとき、p型電極幅は11.7μmまで広がり、このとき、計算によって得られる帯域fはf=26.6GHzである。これら帯域fを有する変調器は、40Gbpsといった伝送速度に用いる変調器としては不十分である。
【0034】
図6に示す通り、埋め込み層116の層厚Dに対する帯域fは、単調増加であるが、その増加分は小さく、40GHzを超える帯域fとするには、層厚Dを非常に大きくしなければいけない。しかし、埋め込み層116を、メサストライプ構造の上面よりもさらに結晶成長させるために、成長時間をさらに必要とし、その間に、p型クラッド層112及びp型コンタクト層113に含まれる不純物が、さらに、埋め込み層116へ拡散することになる。これは、寄生容量Cの増大を招くばかりか、変調器部102の駆動時に、活性層111に印加される電界が、不純物拡散領域120にも広がることにより、変調器としての特性を劣化させることとなる。埋め込み層116の層厚Dを大きくすることにより、図5Bに示す埋め込み層116の結晶成長に加えて、メサストライプ構造の上方にも異常成長をする可能性が高まる。メサストライプ構造の上方に埋め込み層116が異常成長すると、その領域の下方には、電界が印加されなくなるため、変調器部102に入力される光が外方へ出射するまでの光路に、異常な電界分布を発生することとなり、例えば消光特性の劣化など、変調器としての特性を劣化させることとなる。従って、埋め込み層116の層厚Dを無制限に大きくすることは出来ない。
【0035】
また、図6に示す計算において、活性層高さdをd=0.4μmとしている。半導体多層を、導波路領域の外側となる領域を除去することにより、メサストライプ構造が形成される。この際に、導波路領域となる活性層111の両側が十分に除去されているよう、活性層111の下面よりもさらに下方まで除去(オーバーエッチング)することにより、メサストライプ構造には、活性層高さdが存在することとなる。活性層高さdは、除去する工程における精度などを鑑みて、決定されるのが一般的であり、その結果、活性層高さdはd=0.4μm近傍の値に設定されているのが通常である。
【0036】
本発明の目的は、上記課題を鑑みて、BH構造を有する半導体光素子において、寄生容量が軽減される構造にすることにより、特性がさらに向上される半導体光素子、光送信モジュール、光送受信モジュール、及び、光伝送装置を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0037】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る半導体光素子は、出射方向に沿って入力される光を変調して出射する変調器部、を備える半導体光素子であって、前記変調器部は、活性層を含むとともに出射方向に延伸するメサストライプ構造と、前記メサストライプ構造の両側にそれぞれ隣接して配置される埋め込み層と、を備え、前記埋め込み層の下面と前記活性層の下面との距離は、前記埋め込み層の下面と上面との距離の20%以上である、ことを特徴とする。
【0038】
(2)上記(1)に記載の半導体光素子であって、前記埋め込み層は、鉄若しくはルテニウムを不純物として添加される半導体であってもよい。
【0039】
(3)上記(1)に記載の半導体光素子であって、前記活性層は、InGaAsP系物質若しくはInGaAlAs系物質を含んでいてもよい。
【0040】
(4)上記(1)に記載の半導体光素子であって、前記変調器部は、電界吸収型変調器、若しくは、マッハツェンダー型変調器であってもよい。
【0041】
(5)上記(1)に記載の半導体光素子であって、前記変調器部へ光を出力する、発振器部を、モノリシックにさらに備えていてもよい。
【0042】
(6)上記(5)に記載の半導体光素子であって、前記発振器部は、分布帰還型半導体レーザであってもよい。
【0043】
(7)本発明に係る半導体光素子モジュールは、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の半導体光素子を搭載する、半導体光素子モジュールであってもよい。
【0044】
(8)本発明に係る光送信用モジュール若しくは光送受信用モジュールは、上記(7)に記載の半導体光素子モジュールを搭載する、光送信用モジュール若しくは光送受信用モジュールであってもよい。
【0045】
(9)本発明に係る光伝送装置は、上記(8)に記載の光送信用モジュール若しくは光送受信用モジュールを搭載する、光伝送装置であってもよい。
【発明の効果】
【0046】
本発明により、BH構造を有する半導体光素子において、寄生容量が軽減される構造にすることにより、特性がさらに向上される半導体光素子、光送信モジュール、光送受信モジュール、及び、光伝送装置が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1A】本発明の第1の実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子の上面図である。
【図1B】本発明の第1の実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子の変調器部の断面図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子について、活性層高さdに対して計算される変調器部の帯域fの計算結果を示す図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子について、活性層高さdの埋め込み層の層厚Dに対する比rに対して計算される変調器部の帯域fの計算結果を示す図である。
【図3A】本発明の第2の実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子の上面図である。
【図3B】本発明の第2の実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子の変調器部の断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る光送信モジュールの構成を表す図である。
【図5A】従来技術に係る変調器集積型半導体光素子の上面図である。
【図5B】従来技術に係る変調器集積型半導体光素子の変調器部の断面図である。
【図5C】従来技術に係る変調器集積型半導体光素子の変調器部の寄生容量を表す図である。
【図6】従来技術に係る変調器集積型半導体光素子について、埋め込み層の層厚Dに対して計算される変調器部の帯域fの計算結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明に係る実施形態について、以下に、詳細な説明をする。ただし、以下に示す図は、あくまで、各実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0049】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る半導体光素子は、変調器部と、発振器部が同一半導体基板上にモノリシックに集積される変調器集積型半導体光素子である。ここで、変調器部はEA変調器であり、発振器部は分布帰還型半導体レーザ(Distributed Feedback Laser:以下、DFBレーザと記す)であり、EA変調器集積型DFBレーザ素子1である。当該EA変調器集積型DFBレーザ素子1は、BH構造を有しており、1.55μm帯で伝送速度40Gbps光伝送用に用いられる。
【0050】
図1Aは、当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1の上面図である。前述の通り、EA変調器集積型DFBレーザ素子1は、EA変調器からなる変調器部2と、DFBレーザからなる発振器部3が、同じn型InP基板10上に集積されている。EA変調器集積型DFBレーザ素子1の多層構造には、中央付近に、図中横方向に延伸する導波路領域がある。発振器部3の導波路領域より、変調器部2の導波路領域へ、光が発振される。変調器部2によって、光が変調され、それに応じて、図中左端より、光が出射される。
【0051】
図1Aに示す通り、EA変調器集積型DFBレーザ素子1の上面には、パッシベーション膜17が形成されている。前述の通り、その一部には、パッシベーション膜17が形成されていない領域であるスルーホール(図示せず)がある。スルーホールを覆うように、変調器部2及び発振器部3それぞれにp型電極14,24が形成されている。また、光が出射する図中左側の端面は、反射防止膜(図示せず)で覆われ、反対側にある図中右側の端面は、高反射膜(図示せず)で覆われている。なお、変調器部2の図中横方向の長さである変調器長は100μmである。
【0052】
図1Bは、当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1の変調器部2の断面図である。図1Bは、図1Aに示すEA変調器集積型DFBレーザ素子1のIB−IB破線を貫く断面を表している。図5Bに示す従来技術に係るEA変調器と同様に、図1Bに示す通り、当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1の変調器部2は、活性層11を含む多層構造がメサストライプ構造となっており、メサストライプ構造の両側が埋め込み層16で埋め込まれたBH構造を有している。なお、当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1の発振器部3も、同様に、BH構造を有している。
【0053】
当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1の変調器部2は、メサストライプ構造を形成する工程において、多層構造のうち、導波路領域の外側が、活性層11の下面より、ドライエッチングにより、さらに深く除去されている。すなわち、埋め込み層16の下面と活性層11の下面との距離である、活性層高さdがd=1.8μmとなっているメサストライプ構造であることが、本発明の特徴である。
【0054】
当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1の変調器部2は、n型InP基板10上に、MQW層を含む活性層11、p型InPクラッド層12、p型コンタクト層13が、積層されている。活性層11とは、MQW層を少なくとも含んでおり、上下に配置されるそれぞれ配置されるp型層、n型層と異なり、p型ドーパントやn型ドーパントとなる不純物が意図的に添加されていない半導体層、すなわち、真性半導体層を指している。ここで、活性層11は、n型InP基板10側(図中下側)から順に、InGaAsP下側光ガイド層、MQW層、InGaAsP上側光ガイド層が積層されて形成されており、MQW層は、ともにInGaAsPからなる井戸層と障壁層が交互に積層されているとする。なお、MQW層の井戸層には歪が導入されている。活性層11の層厚は、0.35μmである。p型InPクラッド層12には、9×1017atom/cm程度のZnが不純物として添加されている。p型コンタクト層13は、p型InGaAsP層及びp型InGaAs層からなっており、それぞれ、2×1018atom/cm程度及び2×1019atom/cm程度のZnが、p型ドーパントとして添加されている。
【0055】
メサストライプ構造の両側が、Feが不純物として添加されているInPからなる埋め込み層16によって埋め込まれている。Feが添加されるInPは、半絶縁性半導体である。前述の通り、埋め込み層16が、メサストライプ構造の上面より、さらに結晶成長される際に、(111)面の面方位に沿って、斜面状に広がって積層される。埋め込み層16の上面は、メサストライプ構造の上面の両側にそれぞれ広がる上面斜面部と、さらにその両側に、n型InP基板10と平行に広がる上面平坦部からなっている。埋め込み層16の層厚Dとは、図1Bに示す通り、埋め込み層16の上面平坦部から埋め込み層16の下面の距離であり、埋め込み層16の層厚Dは、D=7.0μmである。それゆえ、埋め込み層16の層厚Dに対する活性層高さdの比r(=d/D)は、r=26%となっている。
【0056】
前述の通り、メサストライプ構造の上表面と、埋め込み層16の上面を覆って、所定の形状のパッシベーション膜17が形成され、パッシベーション膜17の上側に図1Aに示す形状のp型電極14が形成されている。前述のスルーホールを介して、p型電極14と、メサストライプ構造の最上層であるp型コンタクト層13とは、電気的に接続されている。p型電極14は、前述の通り、延伸部と、パッド部と、接続部と、からなっている。p型電極114のp型電極幅は、9.7μmである。なお、p型電極14のパッド部は、45μm×45μmの正方形状であり、p型電極14のパッド部とパッシベーション膜17の間には、寄生容量Cpadを軽減するために、SiOからなる絶縁膜18が形成されている。
【0057】
上記値をもとに、当該EA変調器集積型DFBレーザ素子1の変調器部2の帯域fについて計算を行ったところ、f=40.8GHzという値が得られ、伝送速度40Gbps光伝送用に用いることが出来る値である。また、実際に作製される当該EA変調器集積型DFBレーザ素子1を、50Ωの終端抵抗を備える窒化アルミニウム(AlN)製のサブマウントに、AuSnはんだを用いて搭載し、このサブマウントを温度調整機能を備える家具を用いて、特性評価を行った。その結果、帯域fはf=42GHzであり、計算結果と同等の特性が得られた。さらに、伝送速度40Gbpsでの駆動において、光伝送前アイ開口の品質を表すSONET OC−192/SDH STM−64にて規定されるマスクに対するマスクマージンは25%であり、基準値である10%を大きく上回り、伝送速度40Gbpsでの駆動において、良好なアイ開口が得られている。
【0058】
当該EA変調器集積型DFBレーザ素子1において、比rは、r=26%であるが、異なるrの値に対する帯域fの計算を行った。
【0059】
図2Aは及び図2Bは、当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1について、それぞれ、活性層高さd、及び、埋め込み層16の層厚Dに対する活性層高さdの比rに対して計算される帯域fの計算結果を示す図である。ここで、埋め込み層16の層厚DをD=7.0μmに固定し、活性層高さdを変化させている。それゆえ、比rは、活性層高さdが変化するのに伴い、変化する。なお、活性層高さdが増加する際、埋め込み層16のうち、メサストライプ構造より上の厚みを減少させることにより、埋め込み層16の層厚Dを一定としている。
【0060】
図2A及び図2Bに示す通り、活性層高さd(比r)が増加するのに伴って、帯域fが向上している。特に、比rが小さい値から20%に増加するまで、帯域fは急激に向上している。特に、比rが20%以上となるEA変調器集積型DFBレーザ素子1において、帯域fは40GHzより大きい値をとる。
【0061】
このように、活性層高さdの埋め込み層16の層厚Dに対する比rが20%以上となるEA変調器集積型DFBレーザ素子1の変調器部2は、特性がさらに向上されている。
【0062】
以上説明したように、本発明の特徴は、BH構造を有する変調器部を備える半導体光素子において、活性層高さdが、埋め込み層16の層厚Dの20%以上であることにある。これにより、メサストライプ構造の多層構造にあるp型層の増加を抑制し、寄生容量Cの増加を抑制するとともに、埋め込み層16の上面斜面部の面積増加を抑制し、寄生容量Cpad,Cの軽減を可能とし、半導体光素子の変調器部が有する総寄生容量Ctotalの低減を可能とすることが出来る。これにより、特性がさらに向上される半導体素子が実現される。たとえば、40Gbpsといった高い伝送速度での長距離光伝送を実現することが出来る。
【0063】
なお、活性層高さdを大きくしていくと、埋め込み層16を形成する際に、埋め込み層16の下面近傍において、メサストライプ構造の両脇に、埋め込み層16が密着して結晶成長されない可能性がある。その場合には、メサストライプ構造の両脇に空洞が形成されることとなり、EA変調器集積型DFBレーザ素子1の特性や信頼性が劣化する。それゆえ、活性層高さdは、2.5μm以下にするのが、さらに望ましい。
【0064】
当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1の変調器部2の活性層11は、InGaAsP系材料を用いているが、InGaAlAs系材料を用いて形成されていてもよい。
【0065】
次に、当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1の製造方法を説明する。
【0066】
まず、発振器部3の多層構造の一部となる多層を形成する(第1結晶成長)。すなわち、n型InP基板10上に、順に、活性層、p型InPキャップ層、及び、回折格子層を、有機金属気相成長法(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition:以下、MO−CVDと記す)によって形成する。ここで、活性層は、順に、InGaAsP下側光ガイド層、MQW層、InGaAsP上側光ガイド層を積層することによって形成される。MQW層は、ともに、InGaAsPからなる井戸層と障壁層を交互に積層することによって形成される。なお、MQW層の井戸層には歪を導入する。このとき、発振器部3の活性層のフォトルミネッセンス波長が1555nm付近になるように、MQW層のInGaAsPの組成を調整する。
【0067】
そして、プラズマ気相成長法(Plazma Chemical Vapor Deposition:以下、プラズマCVDと記す)によって窒化シリコン(SiN)膜を形成し、その後、発振器部3のメサストライプ構造となる領域のSiN膜をパターニングし、このSiN膜をマスクとして、ドライエッチング及びウェットエッチングによって、発振器部3のメサストライプ構造となる領域を含む所定の領域以外の領域を除去する。
【0068】
次に、変調器部2の多層構造の一部となる多層を形成する(第2結晶成長)。発振器部3と同様に、n型InP基板10上に活性層11及びp型InPキャップ層を、MO−CVDによって形成する。このとき、このとき、変調器部2の活性層11のフォトルミネッセンス波長が1495nm付近になるように、MQW層のInGaAsPの組成を調整する。
【0069】
そして、プラズマCVDによってSiN膜を形成し、その後、変調器部2のメサストライプ構造となる領域のSiN膜をパターニングし、このSiN膜をマスクとして、ドライエッチング及びウェットエッチングによって、変調器部2及び発振器部3それぞれのメサストライプ構造となる領域を含む所定の領域以外の領域を除去する。
【0070】
さらに、導波路部4の多層構造の一部を形成する(第3結晶成長)。第1及び第2結晶成長と同様に、変調器部2と発振器部3の間に、パッシブな光導波路となるInGaAsP層を結晶成長する。この際に、変調器部2と導波路部4の間、及び、導波路部4と発振器部3の間を、公知のパットジョイント技術により光学的に接続する。
【0071】
その後、発振器部3の回折格子層に、干渉露光法によって回折格子(grating)を形成することにより、回折格子が形成される。回折格子を形成後、さらに、変調器部2、導波路部、及び発振器部3の多層上面に、p型InPクラッド層12、p型コンタクト層13、及び、p型InPキャップ層を形成する。ここで、p型InPクラッド層12の層厚とp型コンタクト層13の層厚の合計が、1.7μmとなるようにし、前述の通り、p型ドーパントとして、不純物にZnを用いる。なお、p型InPキャップ層はその後の工程において除去されるので、最終構造には残らない。
【0072】
多層形成後、変調器部2、導波路部4、及び発振器部3の多層上面のうち、導波路領域の上方となる領域に、SiO膜を形成する。その後、ドライエッチング若しくはウェットエッチングによって、多層のうち、SiO膜が形成される領域以外の領域を、n型InP基板10の途中まで除去することにより、幅が1.3μmであるメサストライプ構造を形成する。ここで、活性層11の下面から1.8μmさらに下方まで、n型InP基板10を除去することにより、活性層高さdが1.8μmとなるメサストライプ構造が形成される。
【0073】
メサストライプ構造を形成後、メサストライプ構造の両側に対して、Feが不純物として添加されるInPからなる埋め込み層16を、MO−CVDを用いて形成する。この際、埋め込み層厚Dが7.0μmとなるまで、埋め込み層16を結晶成長させる。
【0074】
さらに、メサストライプ構造の最上層であるp型コンタクト層13のうち、導波路部4の領域を、除去する。これにより、変調器部2のp型コンタクト層13と、発振器部3のp型コンタクト層とが、電気的に絶縁される。それゆえ、除去されることにより生じる溝は、アイソレーション溝と呼ばれている。
【0075】
アイソレーション溝を形成後、ウェハ表面全体に、パッシベーション膜17を形成し、さらに、変調器部のp型電極14のパッド部となる領域を含んで、SiOからなる絶縁膜18を形成する。前述の通り、絶縁膜18によって、寄生容量Cpadが低減される。その後、形成されるパッシベーション膜17のうち、変調器部2及び発振器部3となる領域それぞれの一部の領域をウェットエッチングにより除去し、スルーホールとする。変調器部2及び発振器部3それぞれのスルーホールを覆うように、EB(Electron Beam)蒸着法及びイオンミリングにより、変調器部2及び発振器部3のp型電極14,24を、それぞれ形成する。変調器部2及び発振器部3それぞれに設けられるp型電極14,24の形状が、図1Aに示されている。前述の通り、変調器部2のp型電極14のp型電極幅は9.7μmとし、p型電極14のパッド部は、45μm角の正方形状とする。これに対して、発振器部3のDFBレーザは、寄生容量の影響をあまり受けないので、p型電極24は、メサストライプ構造の両側に広がる形状をしている。
【0076】
その後、ウェハの下面を、ウェハが100μm程度になるまで研磨加工し、n型電極15を形成し、ウェハ工程が完了する。さらに、ウェハをバー状に劈開し、変調器部2側の端面に反射防止膜を、発振器部3側の端面に高反射膜をそれぞれ形成し、さらに、チップ状態に劈開することにより、EA変調器集積型DFBレーザ素子1は完成する。
【0077】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る半導体光素子は、第1の実施形態と同様に、BH構造を有するEA変調器集積型DFBレーザ素子1である。当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1は、第1の実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1と、基本的な構成及び製造方法は同じであるが、当該EA変調器集積型DFBレーザ素子1は、1.3μm帯で伝送速度25Gbps光伝送用に用いられる。
【0078】
図3Aは、当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1の上面図であり、図3Bは、当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1の変調器部2の断面図である。図3Bは、図3Aに示すEA変調器集積型DFBレーザ素子1のIIIB−IIIB破線を貫く断面を表している。図3Bに示す通り、当該EA変調器集積型DFBレーザ素子1は、同様に、BH構造を有している。
【0079】
当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1において、変調器部2の活性層11は、InGaAlAsによって形成されており、活性層11の層厚を0.25μm、活性層高さdをd=1.0μmである。埋め込み層16の層厚Dは、5.0μmであり、このとき、埋め込み層16の層厚Dに対する活性層高さdの比rは、r=20%となっている。また、p型電極14のp型電極幅は8.2μmである。変調器部2の変調器長は150μmである。
【0080】
当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1は、伝送速度が25Gbpsであり、低バイアス電圧によって駆動を可能とするために、活性層11の層厚は、第1の実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1と比べて小さく設定している。また、伝送速度が25Gbpsと、第1の実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1の伝送速度40Gbpsと比較して低いので、所望の特性を得るためには、埋め込み層16の層厚Dは5.0μmとすることが出来る。
【0081】
上記値をもとに、当該EA変調器集積型DFBレーザ素子1の変調器部2の帯域fについて計算を行ったところ、f=25.3GHzという値が得られ、また、実際に作製される当該EA変調器集積型DFBレーザ素子1を第1の実施形態と同様に、特性評価を行ったところ、変調器部2の帯域fはf=26.5GHzであり、計算結果と同等の特性が得られた。
【0082】
なお、当該実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1の活性層11は、InGaAlAs系材料を用いているが、InGaAsP系材料を用いて形成されていてもよい。
【0083】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る光送信モジュールは、第1の実施形態若しくは第2の実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1が搭載される光送信モジュール40である。
【0084】
図4は、当該実施形態に係る光送信モジュール40の構成を表す図である。第1の実施形態若しくは第2の実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1が、50Ω終端抵抗が付いた窒化アルミ二ウム(AlN)製のチップキャリア50に、AuSnはんだを用いて、搭載されている。チップキャリア50は、温度調整手段であるペルチェ51の上側に搭載されており、それらが、パッケージ52に搭載されている。サーミスタ53、モニタフォトダイオード54、光アイソレータ55、及び、集光レンズ56が、さらに、パッケージ52に搭載されている。ここで、集光レンズ56は、光の出射先に接続されるファイバー57へ、光を集光するためのレンズである。
【0085】
当該実施形態に係る光送信モジュール40の外部には、制御手段(図示せず)が設けられ、制御手段によって、光送信モジュール40に対して、APC(Auto Power Control)制御が行われる。すなわち、EA変調器集積型DFBレーザ素子1の後方端面より出力する後方出力光を、モニタフォトダイオード54は受光し、モニタ電流61として、制御手段へ出力する。モニタ電流61に対応して、EA変調器集積型DFBレーザ素子1の発振器部3に対して、レーザ駆動電流62が供給される。APC制御により、光送信モジュール40の出力光64の出力パワーを一定に保つことが可能となる。なお、EA変調器集積型DFBレーザ素子1の変調器部2に対しては、変調器駆動信号63が供給される。
【0086】
また、制御手段によって、光送信モジュール40に対して、ATC(Auto Temperature Control)制御が行われる。すなわち、サーミスタ53は、EA変調器集積型DFBレーザ素子1の温度を検知し、その温度をモニタ温度65として、制御手段へ出力する。モニタ温度65に対応して、ペルチェ51に対して、ペルチェ駆動電流66が供給される。ATC制御により、EA変調器集積型DFBレーザ素子1の温度を一定に保つことが可能となる。
【0087】
同様に、当該実施形態に係る光送受信モジュールは、第1の実施形態若しくは第2の実施形態に係るEA変調器集積型DFBレーザ素子1が搭載される光送信部と、公知の光受信部を備える光送受信モジュールである。光送受信モジュールの光送信部の構成は、光送信モジュール40の構成と同様のものとする。
【0088】
さらに、当該実施形態に係る光伝送装置は、上記の光送信モジュール40若しくは光送受信モジュールが搭載される光伝送装置である。光伝送装置の他の構成については、公知のものと同じである。
【0089】
なお、パッケージ52は、金属素材をボックス型に加工したものである。パッケージ52は、熱伝導率が高いCuW合金の底板、FeNi合金からなるフレーム、電気信号をパッケージ52内部に伝達するために配線パターンを形成したセラミックフィードスルー、リード端子、キャップをシーム溶接するためのシームリング、光を取り出す窓を気密封止するためのサファイヤガラス、レンズホルダや光ファイバを溶接固定するためのパイプ部材などの部品より構成されており、ロー材やAuSnはんだなどの接合材を用いて組み立てられている。
【0090】
以上、本発明に係る半導体光素子、光送信モジュール、光送受信モジュール、及び、光伝送装置について説明した。本発明は、半導体光素子に存在する寄生容量の軽減を実現するものである。実施形態に係る半導体光素子として、EA変調器集積型DFBレーザ素子1を例として示した。埋め込み層16のドーパントに、Feを用いる場合について説明したが、ルテニウム(Ru)をドーパントとしてもよい。また、変調器部2の構造は、EA変調器に限定されることはない。例えば、マッハツェンダー型変調器など、他の変調器であってもよい。発振器部3の構造も、DFBレーザに限定されることはない。さらに、EA変調器集積型DFBレーザ素子1のように、変調器部2が発振器部3と同一半導体基板上に集積した変調器集積型半導体光素子に限定されることはない。本発明に係る半導体光素子は、レーザ素子の出力側の外部に設けられる外部変調器であってもよい。ここで、外部変調器とは、例えば、EA変調器やマッハツェンダー型変調器である。また、本発明に係る半導体光素子は、変調器に限定されることはなく、BH構造を有する他の半導体光素子の寄生容量低減する構造として、本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 EA変調器集積型DFBレーザ素子、2 変調器部、3 発振器部、4 導波路部、10 n型InP基板、11 活性層、12 p型InPクラッド層、13 p型コンタクト層、14 p型電極、15 n型電極、16 埋め込み層、17 パッシベーション膜、24 p型電極、40 光送信モジュール、50 チップキャリア、51 ペルチェ、52 パッケージ、53 サーミスタ、54 モニタフォトダイオード、55 光アイソレータ、56 集光レンズ、57 ファイバー、61 モニタ電流、62 レーザ駆動電流、63 変調器駆動信号、64 出力光、65 モニタ温度、66 ペルチェ駆動電流、101 変調器集積型半導体光素子、102 変調器部、 103 発振器部、104 導波路部、110 n型基板、111 活性層、112 p型クラッド層、113 p型コンタクト層、114 p型電極、115 n型電極、116 埋め込み層、117 パッシベーション膜、118 絶縁膜、120 不純物拡散領域、124 p型電極、C,C,Cpad,C 寄生容量、Ctotal 総寄生容量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出射方向に沿って入力される光を変調して出射する変調器部、を備える半導体光素子であって、
前記変調器部は、
活性層を含むとともに出射方向に延伸するメサストライプ構造と、
前記メサストライプ構造の両側にそれぞれ隣接して配置される埋め込み層と、を備え、
前記埋め込み層の下面と前記活性層の下面との距離は、前記埋め込み層の下面と上面との距離の20%以上である、
ことを特徴とする、半導体光素子。
【請求項2】
前記埋め込み層は、鉄若しくはルテニウムを不純物として添加される半導体である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の半導体光素子。
【請求項3】
前記活性層は、InGaAsP系物質若しくはInGaAlAs系物質を含んでいる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の半導体光素子。
【請求項4】
前記変調器部は、電界吸収型変調器、若しくは、マッハツェンダー型変調器である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の半導体光素子。
【請求項5】
前記変調器部へ光を出力する、発振器部を、モノリシックにさらに備える、請求項1に記載の半導体光素子。
【請求項6】
前記発振器部は、分布帰還型半導体レーザである、
ことを特徴とする、請求項5に記載の半導体光素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の半導体光素子を搭載する、半導体光素子モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体光素子モジュールを搭載する、光送信用モジュール若しくは光送受信用モジュール。
【請求項9】
請求項8に記載の光送信用モジュール若しくは光送受信用モジュールを搭載する、光伝送装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−19053(P2012−19053A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155186(P2010−155186)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】