説明

半導体冷却装置

【課題】本発明は、簡素な構成でありながら、冷却性能の高い半導体冷却装置を提供することを目的とする。
【解決手段】冷却水90が流れる冷却流路15を有する冷却器10の一部に開口部13が形成され、該開口部をシールするように半導体モジュール20が取り付けられた半導体冷却装置であって、
前記半導体モジュールの下面には放熱板26が設けられ、該放熱板の側面29a、29bが前記冷却器の内壁よりも内側にあり、前記側面のうち少なくとも前記冷却水の流れに対向する面29aは前記冷却流路中に露出していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーデバイス等の半導体装置を冷却する半導体冷却装置に関し、特に、冷却水が流れる冷却流路の一部に開口部が形成され、開口部をシールするように半導体モジュールが取り付けられた半導体冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力変換装置の液冷ヒートシンクが少なくとも1つ以上の開口部を有し、液冷ヒートシンクの開口部に電力変換素子(IGBT、Insulated Gate Bipolar Transistor)が装着され、IGBT取付ネジで固定されるとともに、熱拡散部に設けられたOリング溝内のOリングにより、ヒートシンクと気密構造とされた電気車の電子部品冷却構造が知られている。かかる電子部品冷却構造によれば、電力変換素子が装着された熱拡散板が、冷却水により直接冷却される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−207583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、熱拡散板が単純平板であり、未だ冷却性能が不足するという問題があった。かかる問題を解決するために、熱拡散板にフィン等を設けることで冷却性能を向上させることができるが、フィン追加によりコストが増加するという別の問題を生じる。また、単純平板のままで冷却性能を向上させようとすると、所望の冷却面積よりも大きな面積の熱拡散板が必要となり、省スペースで構成することができなくなるという問題がある。
【0005】
一方、自動車用インバータ等の分野では、ハイブリッド自動車の需要の高まりを受けて、より高出力で、より小型の製品が求められている。しかし、これらのニーズに応えることは、半導体デバイスの電力損失を上昇させ、半導体モジュールの熱抵抗を増大させることに繋がる。結果として、動作時の半導体デバイスの最高温度が上昇し、一般的な素子動作限界温度である150℃を超えるおそれが生じている。従って、インバータを含むパワーモジュール設計において、いかに半導体デバイスを冷却するかが重要な課題となっている。
【0006】
また、半導体冷却装置には、高性能な冷却性能が求められる一方、SiCのような次世代デバイスは、高温動作が可能であり、複雑なフィン構造等を設けず、いかに低コストで次世代デバイスを用いたモジュールを実現するかも重要な課題となっている。
【0007】
そこで、本発明は、簡素な構成でありながら、冷却性能の高い半導体冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る半導体冷却装置は、冷却水が流れる冷却流路を有する冷却器の一部に開口部が形成され、該開口部をシールするように半導体モジュールが取り付けられた半導体冷却装置であって、
前記半導体モジュールの下面には放熱板が設けられ、該放熱板の側面が前記冷却器の内壁よりも内側にあり、前記側面のうち少なくとも前記冷却水の流れに対向する面は前記冷却流路中に露出していることを特徴とする。
【0009】
これにより、フィン等の複雑な構造を設けることなく、伝熱面を下面だけでなく側面に拡大させるとともに、放熱板の側面の入口側で冷却水との衝突効果を発生させ、半導体モジュールを効率良く冷却することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に係る半導体冷却装置において、
前記半導体モジュールは、中央に凸部を有するT字型の断面形状を有してモールド成形され、前記凸部内に半導体デバイスが設置されるとともに、前記凸部が前記冷却流路中に露出していることを特徴とする。
【0011】
これにより、半導体デバイスを冷却流路内で確実に冷却できるとともに、冷却流路の外側に半導体モジュールの凸形状が存在しなくなるので、省スペースで半導体モジュール及び半導体冷却装置を構成することができる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る半導体冷却装置において、
前記放熱板の側面の総てが前記冷却流路中に露出していることを特徴とする。
【0013】
これにより、冷却水の対向面だけでなく、冷却水の流れと平行な側面も伝熱面とすることができ、冷却性能を一層向上させることができる。
【0014】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明に係る半導体冷却装置において、
前記放熱板は、凹型の形状を有し、側面の面積が平板形状よりも拡大されて構成されたことを特徴とする。
【0015】
これにより、伝熱面をより拡大し、冷却性能を更に向上させることができる。
【0016】
第5の発明は、第1〜4のいずれかの発明に係る半導体冷却装置において、
前記半導体モジュールは、前記半導体デバイスよりも前記開口部側で、かつ前記冷却器の外壁よりも内側に、前記冷却流路に平行な筒状放熱板を更に有することを特徴とする。
【0017】
これにより、上下の両面から半導体モジュールを冷却することができるとともに、内側よりも冷却性能のバラツキの少ない外側の放熱板を用いて全体の冷却性能のバラツキを低減することができる。
【0018】
第6の発明は、第5の発明に係る半導体冷却装置において、
前記半導体デバイスは、コレクタ面を前記開口部側にして実装されたことを特徴とする。
【0019】
これにより、電極面積の大きいコレクタ面を、バラツキの少ない外側の筒状放熱板を利用して冷却することができ、全体として半導体デバイスの冷却効率を高めることができる。
【0020】
第7の発明は、第5又は第6の発明に係る半導体冷却装置において、
前記半導体モジュールは、側面部にリブを有し、リブを潰して前記開口部に圧入することで、側面部への流水を防いだことを特徴とする。
【0021】
これにより、側面部のシール性能を向上させ、冷却効率を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、構造を複雑化することなく冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体冷却装置の一例を示した側断面構成図である。
【図2】実施例1に係る半導体モジュールの断面構成図である。
【図3】実施例1に係る半導体冷却装置を正面視した断面構成図である。
【図4】比較例として従来の半導体冷却装置の一例を示した図である。
【図5】本発明の実施例2に係る半導体冷却装置の一例を示した正面断面構成図である。
【図6】本発明の実施例3に係る半導体冷却装置の一例を示した側断面構成図である。
【図7】実施例3に係る半導体冷却装置の半導体モジュールの側断面構成図である。
【図8】実施例3に係る半導体冷却装置を正面視した断面構成図である。
【図9】実施例3に係る半導体冷却装置を正面視した断面構成図である。
【図10】本発明の実施例4に係る半導体冷却装置の一例を示した側断面構成図である。
【図11】本発明の実施例5に係る半導体冷却装置の一例を示した正面断面構成図である。
【図12】本発明の実施例6に係る半導体冷却装置の一例を示した正面断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の実施例1に係る半導体冷却装置の一例を示した側断面図である。図1において、実施例1に係る半導体冷却装置は、冷却器10と、半導体モジュール20と、シール部材70と、締結部材80とを有する。
【0026】
冷却器10は、冷却水90が流れる冷却流路15を有し、筒状に構成される。冷却水90が冷却器10を流れることにより、冷却器10は冷却水90に近い温度に冷却される。冷却器10は、下面11と上面12とを有するが、上面12には、開口部13が形成されており、開口部13には、半導体モジュール20が、開口部13を塞いでシールするように取り付けられている。
【0027】
半導体モジュール20は、シール部材70でシールされるとともに、締結部材80で締め付けられ、半導体モジュール20の水平に延びた平板部29bの下面と、冷却器10の上面12とがシール面31で接触し、押圧固定されて開口部13を塞いでいる。シール部材70には、例えば、Oリング等のシール部材が用いられてよく、締結部材80には、例えばボルト等が用いられてよい。半導体モジュール20の下面には、放熱板26が設けられている。放熱板26は、半導体モジュール20で発生した熱を放熱するための板であり、熱伝導性の高い材料で構成される。放熱板26は、側面26a、26b及び下面26cが、冷却器10の内壁14より内側に存在し、冷却水90が流れる冷却流路15中に露出した状態となっている。よって、放熱板26は、下面26cのみならず側面26a、26bが露出し、冷却水90との接触面積が大きく取れる構成となっている。特に、冷却水90の流れと対向する入口側の側面26aは、流れる冷却水90が連続的に衝突し、衝突効果により冷却水90の冷却効果が高い構成となっている。
【0028】
図2は、図1に示した実施例1に係る半導体モジュール20の断面構成を示した図である。図2において、半導体モジュール20は、半導体デバイス21と、絶縁基板22と、電極23、24と、はんだ25と、放熱板26と、シール部材28と、モールド樹脂29と、シール面31と、カラー32とを備える。
【0029】
半導体モジュール20は、半導体デバイス21を収容し、樹脂29でモールド成形して封止した半導体パッケージである。半導体モジュール20は、例えば、パワーモジュールとして構成され、車両用のインバータに用いられてもよい。
【0030】
半導体デバイス21は、半導体基板に、半導体素子単体又は用途に応じた所定の機能を有する電子回路が形成されたデバイスである。半導体基板は、従来から用いられているシリコン基板の他、次世代デバイスとして期待されているSiC、GaN等が用いられてもよい。また、半導体デバイス21には、例えば、IGBTやパワーMOSトランジスタ等の半導体素子が、単体で又は電子回路の一部として用いられてよい。このように、半導体モジュール20は、用途に応じて種々の構成とされてよく、また、半導体デバイス21は、半導体モジュール20の用途に応じて種々の半導体素子を用いることができる。
【0031】
絶縁基板22は、半導体デバイス21を搭載するための基板である。絶縁基板22は、半導体デバイス21で発生した熱を伝達するため、熱伝導性の高い材料で構成されることが好ましい。絶縁基板22の下面には電極23が設けられ、絶縁基板22の上面には電極24が設けられる。
【0032】
電極23、24は、半導体デバイス21との電気的接続を図るとともに、半導体デバイス21で発生した熱を伝導するための熱伝導媒体としての役割を果たす板状の金属部材である。上側の電極24は、半導体デバイス21の下面に形成された端子への電気的接続を行っている。なお、電極24と半導体デバイス21は、はんだ25により接続されている。また、電極23は、半導体デバイス21との電気的接続は行われていないが、半導体デバイス21で発生し、絶縁基板22に伝達された熱を、放熱板26に伝達する熱伝導媒体として機能する。一般に、絶縁基板52の両側に電極23、24が形成された状態で部品として市販されているため、本実施例においては、電極として用いられていない下側の金属板も電極23と呼んでいる。しかしながら、電極23は必ずしも必要ではなく、放熱板26の上に直接絶縁基板22が設けられていてもよい。
【0033】
なお、半導体デバイス21で発生した熱は、はんだ25、電極24、絶縁基板22、電極23、放熱板26と順次伝達する。電極23が存在しない場合には、半導体デバイス21で発生した熱は、はんだ25、電極23、絶縁基板22、放熱板26と順次伝達することになる。
【0034】
放熱板26は、半導体デバイス21で発生した熱を放出するための板状部材である。図1で説明したように、放熱板26は、冷却流路15中に露出され、側面26aから直接的に冷却水90の流れを受けるため、ある程度の厚さを有する板形状であることが好ましい。例えば、放熱板26は、3〜5mmの厚さで構成されてもよい。また、放熱板26は、熱伝導率の高い部材であれば、種々の材料から構成されてよいが、例えば、アルムニウム、銅等の金属から構成されてもよい。
【0035】
シール部材28は、放熱板26とモールド樹脂29との間をシールして密閉するための部材である。シール部材28には、例えば、Oリング等のシール材が用いられてよい。
【0036】
モールド樹脂29は、半導体デバイス21を封止し、半導体モジュール20としてパッケージングする成形手段である。モールド樹脂29は、樹脂材料をモールド成形することにより構成され、所定の形状に成形することができる。実施例1に係る半導体冷却装置においては、モールド樹脂29は、中央に、下に凸の凸部29aが形成されたT字型の断面形状を有して構成されている。一般的に、モールド樹脂29は、単に半導体デバイス21を封止するためにのみ用いられ、全体として直方体として形成される場合が多い。しかしながら、本実施例1に係る半導体冷却装置においては、中央に凸部29aが形成され、その周囲に水平の横方向に延びる平板部29bを有する構成となっている。そして、凸部29aに半導体デバイス21が設置され、平板部29bの下面にシール面31が形成されている。かかる構成により、シール面31を、冷却器10の開口部13の周囲の外側側面に接触されるようにしてシールしたときに、パワーデバイス21は冷却器10の内側に組み込まれ、図1で示した配置構成とすることができる。このように、半導体モジュール20を下に凸の形状とすることにより、放熱板26を冷却流路15中に配置することができる。
【0037】
なお、シール面31は、冷却器10の上面12に設けられたシール部材70に押し付けられるように接触し、モールド樹脂29で冷却器10の開口部13をシールする構成となる。
【0038】
カラー32は、半導体モジュール20を開口部13に取り付ける際に、締結部材80が嵌合する穴を構成している。締結部材80がネジで構成されている場合には、カラー32の内壁にはネジ穴が形成されることになる。
【0039】
図1に戻る。図2で説明した半導体モジュール20を、凸部29aを冷却器10の内側にして、冷却器10の一部に形成された開口部13を塞ぐように取り付け、カラー32にネジを挿入して締め付けることにより、シール面31及びシール部材70で開口部13をシールすることができる。そして、放熱板26の下面26c及び側面26a、26bが冷却流路15中に露出した構成とすることができ、放熱板26の下面26c及び側面26a、26bで熱交換を行い、冷却性能を向上させることができる。
【0040】
図3は、図1及び図2に示した実施例1に係る半導体冷却装置を正面視した断面構成図である。図3において、図1及び図2と同様の構成要素については、図1及び図2と同一の参照符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0041】
図3において、冷却器10は、正面視すると、長方形の形状を有している。そして、冷却器10の上面12の上に半導体モジュール20の平板部29bが締結され、凸部29aが冷却流路15の中に配置されている。これにより、放熱板26の側面26a、26bは、総て冷却流路15中に露出され、放熱板26の冷却水90との接触面に、下面26cのみならず側面26a、26bも用いることができる。なお、図3に示すように、放熱板26の側面26a、26bは、冷却水90と対向する側面26aのみならず、冷却水90の流れに沿い、冷却器10と平行な側面29bも冷却流路15中に露出している。かかる構成により、冷却水90との接触面積を、放熱板26の側面全体26a、26bとすることができ、冷却能力を向上させることができる。
【0042】
図4は、比較例として、従来の半導体冷却装置の一例を示した図である。従来の半導体冷却装置は、冷却器110の開口部113を、放熱板126がシール部170及び締結部材180でシールする構成となっている。そして、放熱板126の上に半導体デバイス120が搭載されており、半導体デバイス120は冷却器110内の冷却流路115中ではなく、冷却器110の外部に設けられる構成となっている。よって、放熱板126は、下面の一部しか冷却水190と接触せず、しかも、放熱板126に冷却水190が衝突するのではなく、放熱板126に沿って流れるような接触となっている。よって、放熱板126の冷却水190との接触面積が本実施例に係る半導体冷却装置と比較して非常に小さく、更に、冷却水190と対向する部分が無いため、冷却水190による冷却効果の低い構成となっている。なお、図4においては、冷却流路115を上昇させる流れを作るための部材116が設けられているが、放熱板126に沿う流れしか形成できないので、上述のように、冷却効果は低くなる。
【0043】
この点、実施例1に係る半導体冷却装置は、放熱板26の側面26a、26b及び下面26cが冷却流路15中に露出し、しかも、側面26aは、冷却水90と対向して冷却水90を正面から受ける構成となっているので、冷却水90との接触面積及び流体圧の増加により、冷却性能を大幅に向上できることが分かる。
【実施例2】
【0044】
図5は、本発明の実施例2に係る半導体冷却装置の一例を示した正面断面構成図である。なお、図5において、実施例1に係る半導体冷却装置と同様の構成要素については、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
図5において、実施例2に係る半導体冷却装置は、冷却器10と、半導体モジュール20aと、シール部材70と、締結部材80とを備える。実施例2に係る半導体冷却装置は、冷却器10と、シール部材70と、締結部材80によるシール構成は、実施例1に係る半導体冷却装置と同様であるので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0046】
実施例2に係る半導体冷却装置は、半導体モジュール20aの構成が、実施例1に係る半導体冷却装置と異なっている。実施例2に係る半導体冷却装置の半導体モジュール20aは、放熱板27が、凹型の形状を有する点で、実施例1に係る半導体冷却装置の半導体モジュール20と異なっている。放熱板27は、側面部27a、27bを上方に拡大し、側面積を拡大した形状に構成されている。これにより、放熱板27の側面27a、27bの冷却水90との接触面積を拡大し、冷却効果を高めることができる。なお、図5においては、半導体冷却装置を正面視した図が示されており、冷却水90の流れと平行な側面27bのみが折れ曲がった形状となっているが、正面の側面27aも折れ曲がった全体で凹型の形状とすることにより、冷却水90との接触面積を拡大するとともに、冷却水90と衝突する面積も拡大することができる。
【0047】
このように、放熱板27を凹型、又はコの字型に形成することで、側面の面積を拡大し、冷却性能を更に高めることができる。
【0048】
なお、図5に示す構成とする場合、モールド樹脂30の形状は、実施例1とは異なる形状となる。図5においては、外側を折り曲げて立てた凹型形状の側面27a、27bを露出させるため、凹型の窪みにモールド樹脂30が入り込み、外側の側面27a、27bを覆わないような階段状の内側に削れた形状となっている。このように、モールド樹脂30は、放熱板27の形状に合わせてモールド成形することができる。
【0049】
また、図5において、絶縁基板22は、放熱板27の上に直接設置された構成となっている。このように、放熱板27の表面上に絶縁基板22が直接設けられるような構成としてもよい。なお、絶縁基板22の上に電極24が設けられ、電極24上に、はんだ25で半導体デバイス21が接合及び設置されている点は、実施例1に係る半導体冷却装置と同様である。
【0050】
また、図5において、電極24の上に電気接続部材33、半導体デバイス21の上に電気接続部材34が設けられている。電気接続部材33、34は、半導体デバイス21の表面及び裏面に形成された端子(図示せず)又は電極24と外部との電気的接続を行うための配線手段である。実施例1においては、説明の容易のために電気接続部材33、34の存在は示さなかったが、実際には、半導体デバイス21の表面及び裏面との電気的接続を行うため、このような電気接続部材33、34が設けられる。
【0051】
実施例2に係る半導体冷却装置によれば、放熱板27の側面27a、27bの面積を増加させ、冷却性能を一層高めることができる。
【実施例3】
【0052】
図6は、本発明の実施例3に係る半導体冷却装置の一例を示した側断面構成図である。図6において、実施例3に係る半導体冷却装置は、冷却器10と、半導体モジュール40と、シール部材70と、締結部材80とを有する。
【0053】
実施例3に係る半導体冷却装置において、冷却器10と、シール部材70と、締結部材80からなるシール構成は、実施例1及び実施例2に係る半導体冷却装置と同様であるので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0054】
実施例3に係る半導体冷却装置においては、半導体モジュール40が、下面に下部放熱板50を備えるだけではなく、半導体デバイス41よりも開口部側で、かつ冷却器10の外壁よりも内側に上部筒状放熱板51を更に備える点で、実施例1、2に係る半導体冷却装置と異なっている。かかる構成により、冷却水90は、上部筒状放熱板51も通過し、半導体モジュール40を上下から挟む形で冷却することができる。
【0055】
図7は、実施例3に係る半導体冷却装置の半導体モジュール40の側面の断面構成を示した図である。図7において、実施例3に係る半導体冷却装置の半導体モジュール40は、半導体デバイス41と、絶縁基板42、43と、電極44、45、46、47と、はんだ47、48と、下部放熱板50と、上部筒状放熱板51と、モールド樹脂54と、シール面55と、カラー56とを備える。
【0056】
半導体デバイス41は、実施例1及び実施例2における半導体デバイス21と同様であるので、その説明を省略する。絶縁基板42、43は、その構成及び機能は、実施例1、2における絶縁基板22と同様であるが、半導体デバイス41の下方に絶縁基板42を有するだけでなく、半導体デバイス41の上方にも絶縁基板43を有する点で、実施例1、2とは異なっている。実施例3に係る半導体冷却装置においては、上部筒状放熱板51とも熱交換を行うため、半導体デバイス41の上方にも絶縁基板43を設ける必要があり、半導体デバイス41より開口部13側にも絶縁基板43が設けられている。また、絶縁基板42は、実施例1、2における半導体基板22と同様の大きさ及び構成であるが、絶縁基板43は、絶縁基板22よりも面積が小さな基板となっている。これは、半導体デバイス41が、例えば縦型のIGBTで構成された場合には、コレクタの端子は半導体デバイス41の全面となるため、広い面積を必要とするが、エミッタの端子は半導体デバイス41の一部でよいため、それに対応して絶縁基板43の面積も小さくすることができるからである。なお、図7においては、半導体デバイス41のコレクタが下面、エミッタが上面で構成された場合が示されている。
【0057】
下方にある電極44、46は、実施例1における電極23、24と同様である。上方にある電極45、47は、絶縁基板43と同様に、電極44、46よりも小さい面積を有する点で異なっているが、アルムニウムや銅の金属板で構成されている点は、実施例1、2と同様である。
【0058】
はんだ48は、半導体デバイス41を下方の電極46と接合し、はんだ49は、半導体デバイス41を上方の電極49と接合している。はんだ49の面積がはんだ48の面積よりも小さいことを除けば、実施例1のはんだ25と同様である。
【0059】
このように、半導体デバイス21の上方にも、はんだ49、電極46、絶縁基板43、電極43、上部筒状放熱板51の伝熱ルートを設けることにより、半導体デバイス41で発生する熱を上部筒状放熱板51から放出することが可能となる。
【0060】
下部放熱板50は、実施例1と同様に、板状の金属板で構成される。側面50a、50b及び下面50cが露出した構成となっている。また、厚さは、実施例1と同様に、例えば、3〜5mmで構成されてもよい。なお、下部放熱板50とモールド樹脂54の下面は、シール部材52でシールされている点も、実施例1のシール部材28と同様である。
【0061】
上部筒状放熱板51は、上部から半導体デバイス41で発生した熱を放出し、熱交換により半導体デバイス41を上部から冷却するための手段である。半導体デバイス41は、上方からモールド樹脂54により吊り下げられるように支持されているため、モールド樹脂54を残しつつ放熱板を配置する必要があり、中空の筒状の放熱板を設けている。
【0062】
上部筒状放熱板51においても、筒の内面51bだけではなく、冷却水90と対向する側面51aが露出しており、冷却水90との接触面積が拡大される構成となっている。これにより、半導体デバイス41の上方からも効率的に冷却を行うことができる。
【0063】
なお、上部筒状放熱板51の上下にそれぞれシール部材53が設けられ、モールド樹脂54接合してシールする構成となっている。
【0064】
モールド樹脂54は、上部筒状放熱板51も一体的に取り込むようにモールド成形されているが、凸部54aと平板部54bを有し、凸部54aに半導体デバイス41を収容して封止している点は、実施例1と同様である。また、モールド樹脂54の平板部54bの下面にシール面55が形成され、締結のためのカラー56を備えている点も、実施例1と同様である。
【0065】
図6に戻る。図6に示すように、図7で説明した半導体モジュール40を、冷却器10の開口部13を塞いでシールするように取り付けて実装することにより、半導体デバイス41を上下(外側と内側)の両側から冷却することができ、冷却能力を向上させることができる。
【0066】
図8は、実施例3に係る半導体冷却装置を正面視した断面構成を示した図である。冷却器10、シール部材70及び締結部材80によるシール構成は、実施例1の図3と同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
図8において、下部放熱板50は、冷却水90の流れに対向する側面50a、流れに沿った50bの双方が冷却流路15中に露出しているとともに、下面50cも露出し、側面50a、50b及び下面50cから冷却が可能な構成となっている。
【0068】
上部放熱板51は、側面51a及び内面51bが冷却流路15中に露出し、半導体デバイス41を開口部13側から冷却可能に構成されており、半導体デバイス41を上下から効率よく冷却できる構成となっている。
【0069】
なお、電気接続部材57、58は、各々電極46、47に接続されており、外部から半導体デバイス41の下面(コレクタ側)及び上面(エミッタ側)に電力の供給が可能なように構成されている。
【0070】
図9は、実施例3に係る半導体冷却装置の半導体モジュール40の圧入構造の一例を示した図である。図9(A)は、半導体モジュール40を正面図であり、図9(B)は、半導体モジュール40の側面図である。
【0071】
図9(A)において、半導体モジュール40が簡略化して示されているが、半導体モジュール40の側面には、横に隆起したリブ59が示されている。リブ59は、冷却水90に対向する形で横に隆起して設けられている。
【0072】
図9(B)に示すように、リブ50は、側面に複数設けられている。半導体モジュール40を、冷却器10に実装する際、リブ59を潰し、半導体モジュール40を冷却器10に圧入する。そうすると、リブ50は、半導体モジュール40の側面への流水を防ぐように機能し、下部放熱板50及び上部筒状放熱板51への流量低減を防ぐことができ、冷却性能を更に向上させることができる。
【0073】
このように、必要に応じて、半導体パッケージ40の側面に複数のリブ59を設け、これを潰して冷却器10に圧入し、実装を行う構成としてもよい。なお、図8においては、半導体モジュール40と冷却器10の内側面に隙間が設けられているが、リブ59を設けた場合には、半導体モジュール40と冷却器10の間に隙間が無い構成となる。
【実施例4】
【0074】
図10は、本発明の実施例4に係る半導体冷却装置の一例を示した側断面構成図である。実施例4に係る半導体冷却装置は、半導体モジュール40aの内部構成が実施例3に係る半導体冷却装置と異なっている。その他の構成要素については、実施例3に係る半導体冷却装置と同様であるので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0075】
図10において、実施例4に係る半導体冷却装置の半導体モジュール40aは、半導体デバイス41のコレクタ側が上面(開口部13側)に配置され、エミッタ側が下面側に配置されている点で、実施例3に係る半導体冷却装置と異なっている。それに伴い、半導体デバイス41の上方には面積の大きい絶縁基板42、電極44、46及びはんだ48が配置され、半導体デバイス41の下方には、それらよりも面積の小さい絶縁基板43、電極45、47及びはんだ49が配置されている。つまり、実施例3に係る半導体冷却装置の上部筒状放熱板51と下部放熱板50との間の構成を、上下で反転させた構成となっている。
【0076】
このように、半導体デバイス41の裏面を上側、表面を下側に配置して半導体モジュール40を構成してもよい。実施例3及び実施例4に係る半導体冷却装置の構成において、下部放熱板50の冷却性能は、半導体モジュール40、40aの厚さのバラツキにより、流量高さにバラツキが生じ、冷却性能がばらつくおそれがある。一方、上部筒状放熱板51は、放熱板単品のバラツキにのみ流量高さが影響を受けるため、冷却性能のバラツキが下部放熱板50よりも小さい。
【0077】
ここで、通常の縦型半導体デバイス41は、IGBTの場合、コレクタ面の接合面積がエミッタ面に比べて大きく、コレクタ側が主に放熱を担うため、バラツキの少ない上部筒状放熱板51側にコレクタ面を配置することで、全体の冷却性能のバラツキを低減することができる。なお、縦型の半導体デバイス41がnチャネル型パワーMOSトランジスタの場合には、ドレインを上面側、ソースを下面側に配置すればよい。
【0078】
このように、実施例4に係る半導体冷却装置によれば、半導体デバイス41のコレクタ又はドレインを上部筒状放熱板51側に配置することにより、全体として冷却性能のバラツキを低減させることができる。
【実施例5】
【0079】
図11は、本発明の実施例5に係る半導体冷却装置の一例を示した正面断面構成図である。実施例5に係る半導体冷却装置は、半導体モジュール40bの構成のみが実施例3に係る半導体冷却装置と異なっている。他の構成要素は、実施例3に係る半導体冷却装置と同様であるので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図11において、実施例5に係る半導体冷却装置の半導体モジュール40bは、下部放熱板50の冷却流路15に平行な側面50bが、モールド樹脂54aで覆われている点で、実施例3に係る半導体冷却装置と異なっている。この場合であっても、下部放熱板50の冷却水90と対向する側面50aは、冷却流路15内に露出しており、冷却水90との衝突効果は得られる構成となっている。
【0081】
図9において、リブ59を設けた構成の半導体冷却装置を説明したが、例えば、リブ59を設ける場合には、図11のような構成としてもよい。幅の広い下部放熱板50を設けた場合であっても、モールド樹脂54aの側面のリブ59による冷却器10との密着により、下部放熱板50の側面50bの放熱効果は薄くなると考えられるので、実施例5のような構成としても、放熱効果はあまり変化しないと考えられる。また、半導体モジュール40bと、冷却器10とのリブ59の接触点を上下に長くとることが可能となるので、半導体モジュール40bの側面への冷却水90の流出を防止する効果は高くなり、下部放熱板50への流量低減を防止することができる。
【0082】
このように、実施例5に係る半導体冷却装置によれば、半導体モジュール40bと冷却器10との密着力を高めることにより、半導体モジュール40bの側面への流量の流出を低減できることができ、上部筒状放熱板51及び下部放熱板50への流量低減を防止して冷却能力を高めることができる。
【実施例6】
【0083】
図12は、本発明の実施例6に係る半導体冷却装置の一例を示した正面断面構成図である。図12において、実施例6に係る半導体冷却装置は、半導体モジュール40cのモールド樹脂54bの形状が、実施例5に係る半導体冷却装置と異なっている。その他の構成要素の構成については、実施例5に係る半導体冷却装置と同様であるので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0084】
図12において、実施例6に係る半導体冷却装置は、モールド樹脂54bの下部放熱板50の側面が除去されており、下部放熱板50の側面50a、50bの総てが冷却流路15中に露出している点で、実施例5に係る半導体冷却装置と異なっている。かかる構成により、上部筒状放熱板51に対しては、モールド樹脂54bの側面と冷却器10との圧入密着により冷却水90の流出を防止する効果が働き、下部放熱板50に対しては、実施例1の図3において説明したような、下部放熱板50の冷却水90との接触面積を増加させる効果を働かせることができる。
【0085】
実施例3、5、6において説明したように、用途に応じて、下部放熱板50付近のモールド樹脂54bの形状を変化させ、所望の冷却効果を得ることが可能となる。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、半導体デバイスを冷却する半導体冷却装置に利用することができ、例えば、車両用のインバータ等に利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
10 冷却器
11 下面
12 上面
13 開口部
14 内壁
15 冷却流路
20、20a、40、40a、40b、40c 半導体モジュール
21、41 半導体デバイス
22、42、43 絶縁基板
23、24、44、45、46、47 電極
25、48、49 はんだ
26、27 放熱板
26a、26b、27a、27b、51a 側面
26c、50c 下面
28、52、53、70 シール部材
29、30、54、54a、54b モールド樹脂
29a、54a 凸部
29b、54b 平板部
31、55 シール面
32、56 カラー
33、34、57、58 電気接続部材
50 下部放熱板
51 上部筒状放熱板
51b 内面
59 リブ
80 締結部材
90 冷却水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水が流れる冷却流路を有する冷却器の一部に開口部が形成され、該開口部をシールするように半導体モジュールが取り付けられた半導体冷却装置であって、
前記半導体モジュールの下面には放熱板が設けられ、該放熱板の側面が前記冷却器の内壁よりも内側にあり、前記側面のうち少なくとも前記冷却水の流れに対向する面は前記冷却流路中に露出していることを特徴とする半導体冷却装置。
【請求項2】
前記半導体モジュールは、中央に凸部を有するT字型の断面形状を有してモールド成形され、前記凸部内に半導体デバイスが設置されるとともに、前記凸部が前記冷却流路中に露出していることを特徴とする請求項1に記載の半導体冷却装置。
【請求項3】
前記放熱板の側面の総てが前記冷却流路中に露出していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体冷却装置。
【請求項4】
前記放熱板は、凹型の形状を有し、側面の面積が平板形状よりも拡大されて構成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体冷却装置。
【請求項5】
前記半導体モジュールは、前記半導体デバイスよりも前記開口部側で、かつ前記冷却器の外壁よりも内側に、前記冷却流路に平行な筒状放熱板を更に有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体冷却装置。
【請求項6】
前記半導体デバイスは、コレクタ面を前記開口部側にして実装されたことを特徴とする請求項5に記載の半導体冷却装置。
【請求項7】
前記半導体モジュールは、側面部にリブを有し、リブを潰して前記開口部に圧入することで、側面部への流水を防いだことを特徴とする請求項5又は6に記載の半導体冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−79950(P2012−79950A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224495(P2010−224495)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】