説明

半導体受光装置

【課題】 配線の長さだけに律則されることなく、インダクタンスおよびキャパシタンスを決定し、これによって半導体受光装置の特性を向上する。
【解決手段】 半導体受光装置は、出力側電極と基準電位側電極とを備える半導体受光素子と、前記出力側電極および前記基準電位側電極にそれぞれ接続された引出配線と、を備え、前記出力側電極に接続された前記引出配線の幅が、前記基準電位側電極に接続された引出配線の幅よりも小さいことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体受光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ型のメサ状半導体受光素子を半導体基板上に備える半導体受光装置が開発されている。例えば、半導体基板上にメサ構造の受光部が設けられ、受光部上に形成された電極と電気的に接続する電極パッドが、受光部のメサとは別のダミーメサ部上に形成される構造の半導体受光素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−290477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような半導体受光装置において、受光素子のp側電極とn側電極とに接続される引出配線の幅は、いずれも同じ幅であった。したがって、この引出配線におけるインダクタンスおよびキャパシタンスは、いずれも配線の長さによって実質的に律則されていた。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、配線の長さだけに律則されることなく、インダクタンスおよびキャパシタンスを決定し、これによって半導体受光装置の特性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体受光装置は、出力側電極と基準電位側電極とを備える半導体受光素子と、前記出力側電極および前記基準電位側電極にそれぞれ接続された引出配線と、を備え、前記出力側電極に接続された前記引出配線の幅が、前記基準電位側電極に接続された引出配線の幅よりも小さいことを特徴とするものである。本発明に係る半導体受光装置によれば、配線の長さだけに律則されることなく、インダクタンスおよびキャパシタンスを決定し、これによって特性を向上することができる。
【0007】
前記半導体受光素子を2つ備え、両方の前記半導体受光素子の出力側電極は、共通に接続される電極であってもよい。前記共通に接続される電極は、互いに独立して設けられ、前記半導体受光装置を実装する実装基板上に共通に接続されてもよい。前記半導体受光素子は、半導体基板上に互いに独立して設けられたメサ構造を有していてもよい。
【0008】
前記引出配線は、前記互いに独立して設けられた前記メサ構造の間の前記半導体基板上に設けられていてもよい。前記半導体受光素子は、前記メサの上部に前記出力側電極および前記基準電位側電極の一方が設けられ、前記引出配線は、前記メサの上部および側面から前記半導体基板上に引き出される領域を備え、前記メサの側面における前記引き出し配線の幅は、前記半導体基板上における幅よりも小さくてもよい。
【0009】
前記引出配線の幅は、前記引出配線の長さ方向において、その側壁が平行する部分のうち、もっとも長い部位の幅であってもよい。前記半導体受光素子は、半導体基板上に設けられたメサ構造を有し、前記引出配線のうち、前記もっとも長い部位の長さは、前記メサ構造の上面の直径よりも長くてもよい。
【0010】
本発明に係る他の半導体受光装置は、出力側電極と基準電位側電極とを備える半導体受光素子と、前記出力側電極および前記基準電位側電極にそれぞれ接続された引出配線と、を備え、前記出力側電極に接続された前記引出配線のキャパシタンスは、前記基準電位側電極に接続された引出配線のキャパシタンスよりも小さいことを特徴とするものである。本発明に係る他の半導体受光装置によれば、配線の長さだけに律則されることなく、インダクタンスおよびキャパシタンスを決定し、これによって特性を向上することができる。前記基準電位側電極に接続された引出配線のインダクタンスは、前記出力側電極に接続された前記引出配線のインダクタンスよりも小さくてもよい。
【0011】
本発明に係るさらに他の半導体受光装置は、第1導電型電極および第2導電型電極を有する第1半導体受光素子と、第1導電型電極および第2導電型電極を有する第2半導体受光素子と、前記第1半導体受光素子の前記第1導電型電極に接続された第1引出配線と、前記第1半導体受光素子の前記第2導電型電極に接続された第2引出配線と、前記第2半導体受光素子の前記第1導電型電極に接続された第3引出配線と、前記第2半導体受光素子の前記第2導電型電極に接続された第4引出配線と、を備え、前記第2引出配線および前記第3引出配線の幅は、前記第1引出配線および前記第4引出配線の幅より小さいことを特徴とするものである。本発明に係るさらに他の半導体受光装置によれば、配線の長さだけに律則されることなく、インダクタンスおよびキャパシタンスを決定し、これによって特性を向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配線の長さだけに律則されることなく、インダクタンスおよびキャパシタンスを決定し、これによって半導体受光装置の特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は比較例1に係る半導体受光装置の平面図であり、(b)は比較例2に係る半導体受光装置の平面図である。
【図2】実施例1に係る半導体受光装置の平面図である。
【図3】(a)はキャリアと半導体受光装置とが接続されることによって構成されるモジュールを表した図であり、(b)はモジュールの回路図である。
【図4】図2のA−A´線断面図である。
【図5】受光素子の拡大断面図である。
【図6】実施例2に係る半導体受光装置の平面図である。
【図7】(a)はキャリアと半導体受光装置とが接続されることによって構成されるモジュールを表した図であり、(b)はモジュールの回路図である。
【図8】実施例3に係る半導体受光装置の平面図である。
【図9】(a)はキャリアと半導体受光装置とが接続されることによって構成されるモジュールを表した図であり、(b)はモジュールの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施例の説明の前に、図1(a)および図1(b)を参照しつつ、比較例について説明する。
【比較例】
【0015】
図1(a)は、比較例1に係る半導体受光装置201の平面図である。図1(b)は、比較例2に係る半導体受光装置202の平面図である。図1(a)および図1(b)に示すように、半導体受光装置201,202は、半導体基板10上に、受光素子20a,20bおよびダミーメサ30a〜30cが設けられた構成を有する。受光素子20a,20bおよびおよびダミーメサ30a〜30cは、互いに独立してメサ状に形成されている。なお、半導体受光装置201、202には、チップ領域とその周辺部にスクライブ領域が形成されており、チップ領域の角には、アライメントマーク80が形成されている。
【0016】
受光素子20a,20bは、下部メサ21上に上部メサ22および上部電極23がこの順に配置された構造を有する。例えば、下部メサ21は、略円柱形状を有している。上部メサ22は、下部メサ21よりも小さい径を有する略円柱形状を有し、下部メサ21の略中央に配置されている。上部メサ22は、受光領域として機能する。上部電極23は、上部メサ22よりも小さい径を有する略円柱形状を有し、上部メサ22の略中央に配置されている。すなわち、受光素子20a,20bは、下部ほど径が大きく上部ほど径が小さいメサ形状を有する。さらに、受光素子20a,20bは、下部メサ21の上部メサ22以外の領域に下部電極24を備える。比較例1,2においては、上部電極23がp側電極として機能し、下部電極24がn側電極として機能する。
【0017】
ダミーメサ30a〜30cは、下部メサ31上に、上部メサ32および上部電極33がこの順に配置された構造を有する。例えば、下部メサ31は、略円柱形状を有している。上部メサ32は、下部メサ31よりも小さい径を有する略円柱形状を有し、下部メサ31の略中央に配置されている。上部電極33は、上部メサ32よりも小さい径を有する略円柱形状を有し、上部メサ32の略中央に配置されている。すなわち、ダミーメサ30a〜30cは、下部ほど径が大きく上部ほど径が小さいメサ形状を有する。また、ダミーメサ30a〜30cは、受光素子としての機能は有していない。
【0018】
ダミーメサ30aの上部電極33と受光素子20aの下部電極24とは、ダミーメサ30aの表面、半導体基板10上、および受光素子20aの表面を通る引出配線40aによって接続されている。受光素子20aの上部電極23とダミーメサ30bの上部電極33とは、受光素子20aの表面、半導体基板10上、およびダミーメサ30bの表面を通る引出配線40bによって接続されている。
【0019】
ダミーメサ30bの上部電極33と受光素子20bの下部電極24とは、ダミーメサ30bの表面、半導体基板10上、および受光素子20bの表面を通る引出配線40cによって接続されている。受光素子20bの上部電極23とダミーメサ30cの上部電極33とは、受光素子20bの表面、半導体基板10上、およびダミーメサ30cの表面を通る引出配線40dによって接続されている。
【0020】
受光素子20a,20bの表面、ダミーメサ30a〜30cの表面、および半導体基板10の表面は、たとえば窒化シリコン(SiN)などからなる絶縁膜によって覆われている。引出配線40a〜40dは、絶縁膜上に配置されている。それにより、各引出配線と受光素子20a,20b、ダミーメサ30a〜30cおよび半導体基板10との間が絶縁されている。
【0021】
ここで、半導体受光装置201,202においては、引出配線40a〜40dはインダクタンスおよびキャパシタンスを持っている。キャパシタンスを小さくするためには、絶縁膜を厚くする方法、比誘電率の大きい絶縁膜を採用する方法、などが考えられる。しかしながら、これらの方法では、プロセス条件の変更を伴うとともに、特性劣化を引き起こすおそれがある。
【0022】
図1の半導体受光装置201のように引出配線40a〜40dを小さい幅にすると、引出配線40a〜40dのキャパシタンスは低下するが、引出配線40a〜40dのインダクタンスが大きくなってしまう。また、図1の半導体受光装置202のように引出配線40a〜40dを大きい幅にすると、引出配線40a〜40dのインダクタンスは低下するが、引出配線40a〜40dのキャパシタンスが大きくなってしまう。このように、半導体受光装置においては、キャパシタンスとインダクタンスとがトレードオフの関係を有している。なお、ここで引出配線40a〜40dの幅とは、引出配線40a〜40dの長さ方向において、その側壁が平行する部分のうち、もっとも長い部位の幅を指す。以下の説明においても同様である。
【実施例1】
【0023】
図2は、実施例1に係る半導体受光装置100の平面図である。図3(a)は、キャリア50と半導体受光装置100とが接続されることによって構成されるモジュール101を表した図である。キャリア50は、半導体受光装置100を実装する実装基板として機能する。図3(b)は、モジュール101の回路図である。図2、図3(a)および図3(b)に示すように、半導体受光装置100が図1の半導体受光装置201,202と異なる点は、引出配線40a〜40dの幅の関係である。本実施例においては、半導体基板10上において、引出配線40a,40dの平行に形成されてなる幅は、引出配線40b,40cの平行に形成されてなる幅よりも大きくなっている。また、引出配線40a〜40dは、メサの上面の直径(上部メサ22の直径)よりも長い。一例として、受光素子20a,20bの下部メサ21の直径は100μm、上部メサ22の直径は50μmである。引出配線40a,40cの平行に形成されてなる長さは120μm、引出配線40b,40dの平行に形成されてなる長さは170μmである。半導体基板10上において、引出配線40a,40dの幅は20μmであり、引出配線40b,40cの幅は10μmである。なお、引出配線40a〜40dの平行に形成されてなる長さは、50μm〜200μmが好ましい。
【0024】
次に、図3(a)に示すように、ダミーメサ30aの上部電極33に、キャリア配線50aが接続されている。また、ダミーメサ30bの上部電極33に、キャリア配線50bが接続されている。さらに、ダミーメサ30cの上部電極33に、キャリア配線50cが接続されている。
【0025】
以上のことから、図3(b)に示すように、モジュール101においては、受光素子20aと受光素子20bとが同じ方向に縦続接続されているバランスタイプの受光素子が構成される。実施例1においては、受光素子20aのp側電極と受光素子20bのn側電極とが接続されている。また、キャリア配線50aは、受光素子20aのn側電極に接続されたn端子として機能する。キャリア配線50bは、受光素子20aと受光素子20bとの間に接続された共通端子として機能する。キャリア配線50cは、受光素子20bのp側電極に接続されたp端子として機能する。共通端子は出力側の端子であり、出力信号が取り出される。また、高周波的に、n端子およびp端子は、グランド端子として機能する。図3(b)の例では、p端子およびn端子には、それぞれ逆バイアスが印加される。これにより、バランスタイプのモジュール101は、信号振幅を拡大して出力することができる。
【0026】
図4は、図2のA−A´線断面図である。図4では、キャリア50の断面も併せて描かれている。図5は、受光素子20aの拡大断面図である。図4および図5に示すように、受光素子20aは、半導体基板10上において、n型半導体層25、i型半導体層26、p型半導体層27、およびコンタクト層28がこの順に積層された構造を有する。n型半導体層25は、例えば、n型InPからなる。i型半導体層26は、例えば、i型InGaAsからなる。p型半導体層27は、例えば、p型InPからなる。n型半導体層25の厚さは、例えば、1.0μmである。i型半導体層26の厚さは、例えば、1.0μmである。p型半導体層27の厚さは、例えば、1.0μmである。
【0027】
p型半導体層27は、i型半導体層26よりも小さい径を有する。i型半導体層26上かつp型半導体層27の側面には、n型半導体層29が配置されている。n型半導体層29は、例えば、n型InPからなる。半導体基板10は、半絶縁性半導体からなり、例えば、2.2〜6.6×10Ωcmの抵抗率を有する。一例として、半導体基板10は、半絶縁性のInPからなる。コンタクト層28は、例えば、p型InGaAsからなる。図2の下部メサ21は、n型半導体層25を含む。図2の上部メサ22は、n型半導体層25の一部、i型半導体層26、p型半導体層27、コンタクト層28、およびn型半導体層29を含む。受光素子20bは、受光素子20aと同様の構造を有する。また、半導体基板10の裏面において受光素子20a,20bに対応する位置に、レンズ11が設けられている。それにより、半導体基板10の裏面から入射した光を受光素子20a,20bに対して集光することができる。
【0028】
また、ダミーメサ30a,30bは、半導体基板10上において、n型半導体層34、i型半導体層35、およびn型半導体層36がこの順に積層された構造を有する。n型半導体層34は、例えば、n型InPからなる。i型半導体層35は、例えば、i型InGaAsからなる。n型半導体層36は、例えば、n型InPからなる。図2の下部メサ31は、n型半導体層34を含む。図2の上部メサ32は、n型半導体層34の一部、i型半導体層35、およびn型半導体層36を含む。ダミーメサ30cは、ダミーメサ30aと同様の構造を有する。
【0029】
絶縁膜60は、SiNの窒化膜物からなり、受光素子20a,20bの表面、ダミーメサ30a〜30cの表面、および半導体基板10の表面を覆っている。なお、n型半導体層29の上面と絶縁膜60との間には、拡散マスク62が介在している。拡散マスク62は、SiNの窒化物からなり、例えば0.2μm程度の厚みを有する。引出配線40a,40bは、半導体基板10側から、Ti/Pt層41、Auスパッタ層42、およびAuめっき層43が積層された構成を有し、絶縁膜60上に配置されている。それにより、引出配線40a,40bと受光素子20a、ダミーメサ30a,30bおよび半導体基板10との間が絶縁されている。絶縁膜60の厚さは、例えば、0.2μmである。引出配線40a,40bの厚さは、例えば、2.0μmである。引出配線40c,40dは、引出配線40a,40bと同様の構造を有する。
【0030】
ただし、絶縁膜60は、コンタクト層28上において開口を有する。それにより、受光素子20aのコンタクト層28は、引出配線40bと接触する。同様に、受光素子20bのコンタクト層28は、引出配線40dと接触する。また、絶縁膜60は、下部メサ21の上部メサ22が設けられていない領域において開口を有する。下部メサ21の開口には、コンタクト層61が形成されている。それにより、受光素子20aのn型半導体層25は、コンタクト層61を介して引出配線40aと接触する。同様に、受光素子20bのn型半導体層25は、コンタクト層61を介して引出配線40cと接触する。コンタクト層61は、例えば、AuGe/Auからなる。また、絶縁膜60は、ダミーメサ30a〜30cの表面を覆うとともに、受光素子とダミーメサとの間の半導体基板10上を覆っている。
【0031】
なお、受光素子20aの下部メサ21上の引出配線40aが、受光素子20aの下部電極24として機能する。受光素子20aのコンタクト層28上の引出配線40bが、受光素子20aの上部電極23として機能する。受光素子20bの下部メサ21上の引出配線40cが、受光素子20bの下部電極24として機能する。受光素子20bのコンタクト層28上の引出配線40dが、受光素子20bの上部電極23として機能する。
【0032】
本実施例によれば、半導体基板10上に絶縁膜60を介して形成された引出配線40b,40cの幅が引出配線40a,40dの幅よりも小さいため、キャパシタンスを抑制することができる。引出配線40b,40cは、半導体受光装置の出力側となるダミーメサ30bの上部電極33と接続される。半導体受光装置の出力側にかかる寄生容量が低減できるため、その特性が向上する。一方、引出配線40a,40dの幅は引出配線40b,40cの幅よりも大きい。このことから、引出配線40a,40dのインダクタンスを抑制することができる。図3(b)に示すように、引出配線40a,40dは、ダミーメサ30a,30cの上部電極33と接続される。これら上部電極33は、それぞれ基準電位と接続される。たとえば上部電極33の一方がグランド、他方が高電位電源に接続される。あるいは上部電極33の一方が低電位電源、他方が高電位電源に接続される。すなわち、引出配線40a,40dはいずれも基準電位に接続される配線であるため、基準電位との間に介在するインダクタンスを低減することは、特性向上に寄与する。
【0033】
以上のことから、本実施例に係る半導体受光装置100の構成によれば、引出配線に起因するキャパシタンスの影響を抑制できるとともに、引出配線のインダクタンスを抑制することができる。また、従来の半導体受光装置と比較して引出配線の幅を変更するだけで済むため、従来の半導体受光装置と同じ製造方法を利用することができる。
【0034】
なお、本実施例においては、受光素子20a,20bが、第1導電型電極および第2導電型電極を備える第1半導体受光素子または第2半導体受光素子として機能する。受光素子20aの上部電極23および受光素子20bの下部電極24が、出力側電極として機能する。受光素子20aの下部電極24および受光素子20bの上部電極23が基準電位側電極として機能する。引出配線40aが第1半導体受光素子の第1導電型電極に接続された第1引出配線として機能する。引出配線40bが第1半導体受光素子の第2導電型電極に接続された第2引出配線として機能する。引出配線40cが第2半導体受光素子の第1導電型電極に接続された第3引出配線として機能する。引出配線40dが第2半導体受光素子の第2導電型電極に接続された第4引出配線として機能する。
【実施例2】
【0035】
図6は、実施例2に係る半導体受光装置100aの平面図である。図7(a)は、キャリア50と半導体受光装置100aとが接続されることによって構成されるモジュール101aを表した図である。図7(b)は、モジュール101aの回路図である。図6、図7(a)および図7(b)に示すように、半導体受光装置100aが図2の半導体受光装置100と異なる点は、ダミーメサ30bの代わりにダミーメサ30dが設けられている点である。
【0036】
ダミーメサ30dにおいては、下部メサ31上に上部メサ32が配置され、上部メサ32上に上部電極33aと上部電極33bとが設けられている。上部電極33aは、引出配線40bに接続されている。上部電極33bは、引出配線40cに接続されている。上部電極33aおよび上部電極33bは、絶縁膜60上に配置され、互いに離間している。したがって、上部電極33aと上部電極33bとは、電気的に絶縁されている。ダミーメサ30dは、受光素子としての機能は有していない。
【0037】
受光素子20aの上部電極23とダミーメサ30dの上部電極33aとは、受光素子20aの表面、半導体基板10上、およびダミーメサ30dの表面を通る引出配線40bによって接続されている。ダミーメサ30dの上部電極33bと受光素子20bの下部電極24とは、ダミーメサ30dの表面、半導体基板10上、および受光素子20bの表面を通る引出配線40cによって接続されている。
【0038】
次に、図7(a)に示すように、ダミーメサ30aの上部電極33に、キャリア配線50aが接続されている。また、ダミーメサ30bの上部電極33aおよび上部電極33bの両方にまたがって、キャリア配線50bが接続されている。さらに、ダミーメサ30cの上部電極33に、キャリア配線50cが接続されている。以上のことから、図7(b)に示すように、モジュール101aにおいては、受光素子20aと受光素子20bとが同じ方向に縦続接続されているバランスタイプの受光素子が構成される。
【0039】
本実施例においても、半導体基板10上において、引出配線40b,40cの幅が引出配線40a,40dの幅よりも小さいため、引出配線に起因するキャパシタンスの影響を抑制できるとともに、引出配線のインダクタンスを抑制することができる。また、受光素子20aの上部電極23と受光素子20bの下部電極とを接続する引出配線は、必ずしも途切れ目が無い必要はなく、キャリア配線などを間に介在させていてもよい。
【実施例3】
【0040】
図8は、実施例3に係る半導体受光装置100bの平面図である。半導体受光装置100bが図6の半導体受光装置100aと異なる点は、受光素子20a,20bの形状および引出配線40a〜40dの形状である。図6に示すように、下部メサ21(n型半導体層25)は、略円柱形状を有し、外周の一部に切り欠きを有する。図9(a)は、キャリア50と半導体受光装置100bとが接続されることによって構成されるモジュール101bを表した図である。図9(b)は、モジュール101bの回路図である。図9(b)に示すように、モジュール101bは、モジュール101aと同様に受光素子20aと受光素子20bとが同じ方向に縦続接続されているバランスタイプの受光素子を構成する。
【0041】
本実施例においては、引出配線40bは、一部の箇所で、他の箇所と比較して小さい幅を有している。このように、引出配線は、半導体基板10上において同じ幅を有していなくてもよい。ただし、半導体基板10上における引出配線40a,40dの少なくとも一部は、半導体基板10上における引出配線40b,40cの最大幅よりも大きい幅を有する。それにより、引出配線に起因するキャパシタンスの影響を抑制できるとともに、引出配線のインダクタンスを抑制することができる。
【0042】
図8の例では、引出配線40bは、受光素子20aの上面および側面において、半導体基板10上における幅よりも小さい幅を有している。この場合、引出配線40bと受光素子20aとの間に発生するキャパシタンスを抑制することができる。なお、引出配線40dも、受光素子20bの上面および側面において、半導体基板10上における幅よりも小さい幅を有していてもよい。この場合、引出配線40dと受光素子20bとの間に発生するキャパシタンスを抑制することができる。一例として、受光素子20a,20bの下部メサ21の直径は100μm、上部メサ22の直径は50μmである。半導体基板10上において、引出配線40a,40dの平行に形成されてなる幅は20μmであり、引出配線40b,40cの平行に形成されてなる幅は10μmである。引出配線40bにおいて、受光素子20a側の受光素子20aの上面、側面および半導体基板10上の狭い部分の幅は、5μmである。また、引出配線40dにおいて、受光素子20b側の受光素子20bの上面、側面および半導体基板10上の狭い部分の幅は、5μmである。引出配線40a〜40dの平行に形成されてなる長さは120μmである。引出配線40bにおいて、受光素子20a側の受光素子20aの上面、側面および半導体基板10上の幅の狭い部分の長さは、50μmである。引出配線40dにおいて、受光素子20b側の受光素子20bの上面、側面および半導体基板10上の平行に形成されてなる幅の狭い部分の長さは、50μmである。なお、引出配線40a〜40dの平行に形成されてなる長さは、50μm〜200μmが好ましい。
【0043】
なお、上記各実施例においては、半導体基板10上において、引出配線40a,40dの両方とも引出配線40b,40cよりも大きい幅を有しているが、いずれか一方が引出配線40b,40cよりも大きい幅を有していてもよい。この場合においても、引出配線に起因するキャパシタンスの影響を抑制できるとともに、引出配線のインダクタンスを抑制することができる。また、上記各実施例においては、裏面入射型の受光素子に本発明が適用されているが、表面入射型の受光素子についても本発明を適用することができる。
【0044】
また、本発明を適用した結果、引出配線40b,40cそれぞれのキャパシタンスが、引出配線40a,40dよりも小さくなるとは限らない。キャパシタンスは、引出配線の長さにも影響されるためである。引出配線の長さは、半導体受光素子やパッドのレイアウトによって任意に変更され得る。しかし、本発明によれば、引出配線40b,40cの幅を引出配線40a,40dの幅よりも小さくしたことによるキャパシタンスの低減効果は発揮されるため、そのような場合であっても、本発明は半導体受光装置の特性向上に寄与する。
【0045】
また、本発明は以上説明したようなバランスタイプの半導体受光素子以外にも適用することができる。たとえば、半導体受光素子が1つの場合であっても、本発明にしたがって、出力側に接続される引出配線の幅を基準電位側に接続される引出配線の幅よりも小さくすることができる。これにより、出力側の寄生容量が低減されるとともに、基準電位側の寄生インダクタンスが低減できて、半導体受光装置の特性を向上することができる。
【0046】
なお、半導体受光装置はp側電極およびn側電極を備えているが、出力側に接続される電極は、そのいずれであってもよい。また同様に基準電位側に接続される電極もp側電極あるいはn側電極のいずれであってもよい。
【0047】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 半導体基板
20a,20b 受光素子
21 下部メサ
22 上部メサ
23 上部電極
24 下部電極
25 n型半導体層
26 i型半導体層
27 p型半導体層
28 コンタクト層
29 n型半導体層
30a〜30d ダミーメサ
31 下部メサ
32 上部メサ
33 上部電極
34 n型半導体層
35 i型半導体層
36 n型半導体層
40a〜40d 引出配線
60 絶縁膜
100 半導体受光装置
101 モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力側電極と基準電位側電極とを備える半導体受光素子と、
前記出力側電極および前記基準電位側電極にそれぞれ接続された引出配線と、を備え、
前記出力側電極に接続された前記引出配線の幅が、前記基準電位側電極に接続された引出配線の幅よりも小さいことを特徴とする半導体受光装置。
【請求項2】
前記半導体受光素子を2つ備え、両方の前記半導体受光素子の出力側電極は、共通に接続される電極であることを特徴とする請求項1記載の半導体受光装置。
【請求項3】
前記共通に接続される電極は、互いに独立して設けられ、前記半導体受光装置を実装する実装基板上に共通に接続されることを特徴とする請求項2記載の半導体受光装置。
【請求項4】
前記半導体受光素子は、半導体基板上に互いに独立して設けられたメサ構造を有することを特徴とする請求項1〜3記載の半導体受光装置。
【請求項5】
前記引出配線は、前記互いに独立して設けられた前記メサ構造の間の前記半導体基板上に設けられてなることを特徴とする請求項4記載の半導体受光装置。
【請求項6】
前記半導体受光素子は、前記メサの上部に前記出力側電極および前記基準電位側電極の一方が設けられ、
前記引出配線は、前記メサの上部および側面から前記半導体基板上に引き出される領域を備え、
前記メサの側面における前記引き出し配線の幅は、前記半導体基板上における幅よりも小さいことを特徴とする請求項4記載の半導体受光装置。
【請求項7】
前記引出配線の幅は、前記引出配線の長さ方向において、その側壁が平行する部分のうち、もっとも長い部位の幅である事を特徴とする請求項1記載の半導体受光装置。
【請求項8】
前記半導体受光素子は、半導体基板上に設けられたメサ構造を有し、前記引出配線のうち、前記もっとも長い部位の長さは、前記メサ構造の上面の直径よりも長いことを特徴とする請求項7記載の半導体受光装置。
【請求項9】
出力側電極と基準電位側電極とを備える半導体受光素子と、
前記出力側電極および前記基準電位側電極にそれぞれ接続された引出配線と、を備え、
前記出力側電極に接続された前記引出配線のキャパシタンスは、前記基準電位側電極に接続された引出配線のキャパシタンスよりも小さいことを特徴とする半導体受光装置。
【請求項10】
前記基準電位側電極に接続された引出配線のインダクタンスは、前記出力側電極に接続された前記引出配線のインダクタンスよりも小さいことを特徴とする請求項8記載の半導体受光装置。
【請求項11】
第1導電型電極および第2導電型電極を有する第1半導体受光素子と、
第1導電型電極および第2導電型電極を有する第2半導体受光素子と、
前記第1半導体受光素子の前記第1導電型電極に接続された第1引出配線と、
前記第1半導体受光素子の前記第2導電型電極に接続された第2引出配線と、
前記第2半導体受光素子の前記第1導電型電極に接続された第3引出配線と、
前記第2半導体受光素子の前記第2導電型電極に接続された第4引出配線と、を備え、
前記第2引出配線および前記第3引出配線の幅は、前記第1引出配線および前記第4引出配線の幅より小さいことを特徴とする半導体受光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−30689(P2013−30689A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167228(P2011−167228)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000154325)住友電工デバイス・イノベーション株式会社 (291)
【Fターム(参考)】