半導体基板の分断方法およびその分断方法で作製された半導体チップ
【課題】 アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる半導体基板の分断方法およびその分断方法で作製された半導体チップを実現する。
【解決手段】 分断予定ラインDLに沿って、半導体基板21の外周端部21cよりも外側からレーザヘッド31を走査し、半導体基板21にレーザ光Lを照射する。ここでは、レーザ光Lの集光点Pが半導体基板21の表面21aから深さdの箇所に形成されるように設定されている。このとき、領域1ではレーザ光Lの照射を停止し、領域2においてのみレーザ光Lを照射する。これにより、領域1では面取り部21bでレーザ光Lの集光点P2が合うことがないため、アブレーションを防ぐことができる。領域2では、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路に、改質領域Kが適正に形成される。
【解決手段】 分断予定ラインDLに沿って、半導体基板21の外周端部21cよりも外側からレーザヘッド31を走査し、半導体基板21にレーザ光Lを照射する。ここでは、レーザ光Lの集光点Pが半導体基板21の表面21aから深さdの箇所に形成されるように設定されている。このとき、領域1ではレーザ光Lの照射を停止し、領域2においてのみレーザ光Lを照射する。これにより、領域1では面取り部21bでレーザ光Lの集光点P2が合うことがないため、アブレーションを防ぐことができる。領域2では、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路に、改質領域Kが適正に形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板をその厚さ方向に分断する半導体基板の分断方法およびその分断方法で作製された半導体チップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を形成したシリコンウェハ(以下、ウェハという)を各々の半導体チップに分離するダイシング工程では、ダイヤモンド砥粒を埋め込んだダイシングブレードを用いて半導体チップに分断していた。
【0003】
しかし、このようなブレードによるダイシング工程では、(1) ブレードでカットする際にその切りしろが必要になるため1枚のウェハから取れる半導体チップ数が切りしろの分だけ減少し、歩留まりの低下及びコストの増大を招く、(2) カットする際の摩擦熱による焼付き等を防ぐために用いられる水等が、半導体チップに付着することを防止するために、ウェハ表面を覆うキャッピング等の保護装置を必要とし、その分メンテナンス工数が増大する、といった問題が生じていた。
【0004】
そこで、近年では、レーザ光を用いたダイシング工程(レーザダイシング)の検討や研究が進められており、例えば、下記特許文献1にレーザによるウェハの加工技術が開示されている。図11は、レーザ光を用いたダイシング工程を示す説明図である。図11(A)はレーザ光の照射による改質領域形成工程の説明図であり、図11(B)は分断工程の説明図である。
図11(A)に示すように、レーザ光Lを照射するレーザヘッドHは、レーザ光Lを集光する集光レンズCVを備えており、レーザ光Lを所定の焦点距離で集光させる。改質領域形成工程では、レーザ光Lの集光点PがウェハWの表面から深さdの箇所に形成されるように設定したレーザ光照射条件で、ウェハWを分断する分断予定ラインDL上に沿って(図中手前方向)レーザヘッドHを移動させ、レーザ光LをウェハWの表面から照射する。これにより、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路には、多光子吸収による改質領域Kが形成される。
ここで、多光子吸収とは、物質が複数個の同種もしくは異種の光子を吸収することをいう。その多光子吸収により、半導体基板Wの集光点Pおよびその近傍では、光学的損傷という現象が発生し、これにより熱ひずみが誘起され、その部分にクラックが発生し、そのクラックが集合した層、つまり改質領域Kが形成される。
レーザ光Lがパルス波の場合、レーザ光Lの強度は、集光点Pのピークパワー密度(W/cm2)で決まり、例えばピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上でパルス幅が1μs以下の条件で多光子吸収が発生する。レーザ光Lとしては、例えば、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザによるレーザ光を用いる。そのレーザ光Lの波長は、例えば1064nmの赤外光領域の波長である。
続いて、図11(B)に示すように、半導体基板Wの面内方向(図中矢印F2、F3で示す方向)に応力を負荷することにより、改質領域Kを起点にして、基板厚さ方向にクラックCを進展させて、半導体基板Wを分断予定ラインDLに沿って分断する。
【特許文献1】特開2002−192367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12に示すように、ウェハWに照射されるレーザ光Lは、ウェハWの内部に改質領域Kが形成されるようにその集光点Pが設定されている。しかし、レーザ光Lが、外周縁部Mのチッピングを防止するために面取り加工が施されている部分に照射された場合、ウェハWと空気とは屈折率が異なるため、レーザ光Lの集光点が本来予定されている集光点Pより上方の集光点P1にずれてしまい、面取り加工が施されている部分の表面でレーザ光Lの集光点P1が合ってしまうことがある。すると、レーザ光Lの照射によってウェハW表面が溶融するアブレーションが生じるため、シリコンqが飛散してパーティクル発生の原因となる。このようなパーティクルは、分離前または分離後の半導体チップに付着することにより、半導体集積回路やMEMSの動作不良を招くことから、製品の歩留まり低下や品質低下に直結し得る。上記の現象は、面取り加工が施されている部分以外でも、ウェハWの表面より凹んだ部分や段部などにレーザ光Lが照射された場合には起こりうる。
また、改質領域形成工程において、レーザ光Lの集光点Pの深さdを調整することにより、半導体基板21の厚さの範囲内で任意の深さに任意の層数の改質領域Kを形成することができる。例えば、厚さが比較的厚い場合は、その厚さ方向へ集光点Pを移動させて改質領域Kを厚さ方向に連続状、または複数箇所に形成することにより、半導体基板21の分断を容易にすることができる。
しかし、この場合には、新たな改質領域Kを形成する度に、レーザ光Lが面取り加工が施されている部分を走査するため、アブレーションによるパーティクル発生の影響が大きくなる。
【0006】
そこで、この発明は、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる半導体基板の分断方法およびその分断方法で作製された半導体チップを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体基板をその厚さ方向に分断するための分断予定ラインに沿って、レーザ光を照射するレーザヘッドを前記半導体基板に対して相対移動させながら、前記半導体基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、前記集光点に多光子吸収による改質領域を形成する改質領域形成工程と、この改質領域形成工程を経た前記半導体基板を、前記改質領域を起点にして、前記分断予定ラインに沿って厚さ方向に分断して半導体チップを得る分断工程と、を備えた半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程では、前記分断予定ラインであって、前記半導体基板の外周端部から所定の第1の領域には、前記レーザ光を照射しない、という技術的手段を用いる。
なお、上記集光点とは、レーザ光が集光した箇所のことである。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では前記レーザ光の照射を停止する、という技術的手段を用いる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光を遮断する遮断手段を前記レーザ光の光路中に配置することにより前記レーザ光を遮断する、という技術的手段を用いる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光を遮断するカバーを前記第1の領域に被せる、という技術的手段を用いる。
【0011】
請求項5に記載の発明では、請求項1に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光に対して不透明な保護層を前記第1の領域の表面に形成する、という技術的手段を用いる。
【0012】
請求項6に記載の発明では、半導体基板をその厚さ方向に分断するための分断予定ラインに沿って、レーザ光を照射するレーザヘッドを前記半導体基板に対して相対移動させながら、前記半導体基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、前記集光点に多光子吸収による改質領域を形成する改質領域形成工程と、この改質領域形成工程を経た前記半導体基板を、前記改質領域を起点にして、前記分断予定ラインに沿って厚さ方向に分断して半導体チップを得る分断工程と、を備えた半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程では、前記分断予定ラインであって、前記半導体基板の外周端部から所定の第1の領域の表面には、前記レーザ光の集光点を合わせない、という技術的手段を用いる。
【0013】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光の集光点が前記第1の領域の表面に合わないように、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くする、という技術的手段を用いる。
【0014】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の半導体基板の分断方法において、前記半導体基板を前記レーザヘッドから遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くする、という技術的手段を用いる。
【0015】
請求項9に記載の発明では、請求項7に記載の半導体基板の分断方法において、前記レーザヘッドを前記半導体基板から遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くする、という技術的手段を用いる。
【0016】
請求項10に記載の発明では、請求項6に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光の焦点距離を調節するための焦点距離調節手段により前記レーザ光の焦点距離を短くし、前記レーザ光の集光点を前記半導体基板の外部とする、という技術的手段を用いる。
【0017】
請求項11に記載の発明では、請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程では、前記分断予定ライン上に設定された第2の領域には、前記レーザ光を照射しない、という技術的手段を用いる。
【0018】
請求項12に記載の発明では、請求項11に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第2の領域では前記レーザ光の照射を停止する、という技術的手段を用いる。
【0019】
請求項13に記載の発明では、請求項11に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光を遮断する遮断手段を前記レーザ光の光路中に配置することにより前記レーザ光を遮断する、という技術的手段を用いる。
【0020】
請求項14に記載の発明では、請求項11に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光を遮断するカバーを前記第2の領域に被せる、という技術的手段を用いる。
【0021】
請求項15に記載の発明では、請求項11に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光に対して不透明な保護層を前記第2の領域の表面に形成する、という技術的手段を用いる。
【0022】
請求項16に記載の発明では、請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程では、前記分断予定ライン上に設定された第2の領域には、前記レーザ光の集光点を合わせない、という技術的手段を用いる。
【0023】
請求項17に記載の発明では、請求項16に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第2の領域では、前記レーザ光の集光点が前記第2の領域の表面に合わないように、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くする、という技術的手段を用いる。
【0024】
請求項18に記載の発明では、請求項17に記載の半導体基板の分断方法において、前記半導体基板を前記レーザヘッドから遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くする、という技術的手段を用いる。
【0025】
請求項19に記載の発明では、請求項17に記載の半導体基板の分断方法において、前記レーザヘッドを前記半導体基板から遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くする、という技術的手段を用いる。
【0026】
請求項20に記載の発明では、請求項16に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第2の領域では、前記レーザ光の焦点距離を調節するための焦点距離調節手段により前記レーザ光の焦点距離を短くし、前記レーザ光の集光点を前記半導体基板の外部とする、という技術的手段を用いる。
【0027】
請求項21に記載の発明では、請求項1ないし請求項20のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法において、前記第1の領域は、前記半導体基板の面取り部である、という技術的手段を用いる。
【0028】
請求項22に記載の発明では、半導体チップが、請求項1ないし請求項21のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法によって作製された前記半導体チップであって、前記第1の領域には前記改質領域が形成されていない、という技術的手段を用いる。
【0029】
請求項23に記載の発明では、半導体チップが、請求項11ないし請求項21のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法によって作製された前記半導体チップであって、前記第1の領域及び前記第2の領域には前記改質領域が形成されていない、という技術的手段を用いる。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に記載の発明によれば、改質領域形成工程では、分断予定ラインであって、半導体基板の外周端部から所定の第1の領域には、レーザ光を照射しないため、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
したがって、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる半導体基板の分断方法を実現することができる。つまり、半導体チップにパーティクルが付着することがないため、パーティクルの発生による製品の歩留まり低下や品質低下を防止できる。
【0031】
請求項2に記載の発明によれば、改質領域形成工程においてレーザ光を分断予定ラインに沿って照射するときに、第1の領域ではレーザ光の照射を停止するため、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0032】
請求項3に記載の発明によれば、改質領域形成工程においてレーザ光を分断予定ラインに沿って照射するときに、第1の領域では、レーザ光を遮断する遮断手段をレーザ光の光路中に配置する、請求項4に記載の発明によれば、レーザ光を遮断するカバーを第1の領域に被せる、または、請求項5に記載の発明によれば、レーザ光に対して不透明な保護層を第1の領域の表面に形成する、ことによりレーザ光を遮断するため、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
更に、レーザ光の照射を停止することがないため、一旦、レーザ光を停止した後に、再度レーザ光を照射するためのタイムラグもない。
【0033】
請求項6に記載の発明によれば、改質領域形成工程では、分断予定ラインであって、半導体基板の外周端部から所定の第1の領域の表面には、レーザ光の集光点を合わせないため、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0034】
請求項7〜9に記載の発明によれば、改質領域形成工程においてレーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、第1の領域では、レーザ光の集光点が前記第1の領域の表面に合わないように、半導体基板をレーザヘッドから遠ざける、または、レーザヘッドを半導体基板から遠ざける、などの方法により、レーザヘッドと半導体基板との間隔を広くするため、第1の領域の表面でレーザ光の集光点が合うことがないので、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0035】
請求項10に記載の発明によれば、改質領域形成工程においてレーザ光を分断予定ラインに沿って照射するときに、第1の領域では、レーザ光の焦点距離を調節するための焦点距離調節手段によりレーザ光の焦点距離を短くし、レーザ光の集光点を半導体基板の外部とするため、第1の領域の表面でレーザ光の集光点が合うことがないので、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0036】
請求項11〜15に記載の発明によれば、改質領域形成工程では、分断予定ライン上に設定された第2の領域には、レーザ光を照射しないため、例えば、第2の領域に位置決めのための段部が形成されているような場合においても、第2の領域の表面でレーザ光の集光点が合うことがないので、請求項1〜5に記載の発明と同様に、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0037】
請求項16〜20に記載の発明によれば、請求項6〜10に記載の発明と同様に、第2の領域の表面でレーザ光の集光点が合うことがないので、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0038】
特に、請求項21に記載するように、半導体基板の外周端部が面取りされている場合に、請求項1ないし請求項20のいずれか1つに記載の発明を適用すれば、半導体基板を分断するときに、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0039】
請求項22に記載するように、半導体チップの第1の領域に改質領域が形成されていない場合には、その半導体チップは請求項1ないし請求項21のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法によって作製された半導体チップであると推定することができる。
【0040】
請求項23に記載するように、半導体チップの第1の領域及び第2の領域に改質領域が形成されていない場合には、その半導体チップは請求項11ないし請求項21のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法によって作製された半導体チップであると推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
[第1実施形態]
この発明の半導体基板の分断方法の第1実施形態について、図を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る分断方法により分断する半導体基板の構成例を示す模式図である。図1(A)は、ウェハの表面の平面説明図であり、図1(B)は、図1(A)の1B−1B矢視断面拡大図である。図2は、改質領域形成工程において、レーザ光の照射を停止する方法の説明図である。
【0042】
図1(A)に示すように、ウェハ20aを用意する。ウェハ20aは、シリコンからなる薄板円盤形状の半導体基板21の表面21aに、拡散工程等を経て形成された複数のチップDevが碁盤の目のように整列配置されて形成されており、外周の一部に結晶方位を示すオリエンテーションフラットが形成されている。これらのチップDevは、ダイシング工程により分断予定ラインDLに沿ってそれぞれ分断された後、マウント工程、ボンディング工程、封入工程等といった各工程を経ることによってパッケージされたICやLSIとして完成する。なお、本実施形態では、ウェハ20aは、チップDevの支持基板となるシリコン層を形成し得るものである。
図1(B)に示すように、ウェハ20aには、外周縁部Mの欠けを防止するために、外周に面取り加工が施された面取り部21bが形成されている。
【0043】
まず、図1(A)に示す分断予定ラインDLの1つを、ウェハ検出用のレーザ光で走査し、外周端部21c(図1(B))を検出する。次に、図2に示すように、分断予定ラインDLに、外周端部21cから径方向に所定の距離(例えば、1mm程度)の範囲であって、面取り部21bを含む領域1と、領域1の内側で平坦な表面21aのみから構成される領域2を設定する。ここで、分断予定ラインDLの外周縁部Mに向かう方向を「外側」、その反対方向を「内側」という。
【0044】
図2に示すように、レーザ光Lを照射するレーザヘッド31は、レーザ光Lを集光する集光レンズCVを備えており、レーザ光Lを所定の焦点距離で集光させることができる。ここでは、レーザ光Lの集光点Pが半導体基板21の表面21aから厚さ方向へ深さdの箇所に形成されるように設定されている。
次に、分断予定ラインDLに沿って、半導体基板21の外周端部21cよりも外側から内側に向かって(図中矢印F4方向)レーザヘッド31を走査する。このとき、領域1ではレーザ光Lの照射を停止し、領域2においてのみレーザ光Lを照射する。さらに、領域2に続いて分断予定ラインDLの他端に設けられている図示しない領域1では、レーザ光Lの照射を停止する。
これにより、領域1では面取り部21bでレーザ光Lの集光点P2が合うことがないため、面取り部21bの表面におけるアブレーションを防ぐことができる。領域2では、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路に、改質領域Kが適正に形成される。
領域1は、外周端部21cから1mm程度と狭い領域であるため、分断工程において、改質領域Kから領域1に容易にクラックが進展する。そのため、領域1に改質領域Kが形成されていなくてもクラックが偏向することがなく、半導体基板を厚さ方向に容易にかつ精度よく分断して、チップDevを作製することができる。
なお、レーザ光Lを、同じ分断予定ラインDLに沿って、深さdを変えて繰り返し照射する場合には、レーザヘッド31を領域2にレーザ光Lを照射できる範囲のみで走査してもよい。
【0045】
[第1実施形態の効果]
(1)改質領域形成工程では、レーザ光Lを分断予定ラインDLに沿って照射するときに、外周端部21cから分断予定ラインDLに設定された領域1には、レーザ光Lの照射を停止することによりレーザ光Lを照射しないため、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
したがって、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる半導体基板21の分断方法を実現することができる。つまり、半導体チップにパーティクルが付着することがないため、パーティクルの発生による製品の歩留まり低下や品質低下を防止できる。
【0046】
[第2実施形態]
この発明の半導体基板分断方法の第2実施形態について、図を参照して説明する。図3は、改質領域形成工程において、シャッターによりレーザ光の照射を停止する方法の説明図である。図4は、改質領域形成工程において、カバーによりレーザ光を遮断する方法の説明図である。図5は、改質領域形成工程において、レーザ光に対して不透明な保護層によりレーザ光を遮断する方法の説明図である。
なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を使用するとともに説明を省略する。
【0047】
図3には、レーザ光Lを遮断するシャッターを使用する方法を示す。レーザヘッド31の内部には、レーザ光Lを遮断するシャッター41が、レーザ光Lの光路に挿脱可能に設けられている。シャッター41は、ステンレス、アルミニウムなどのレーザ光に対して不透明な材料、またはレーザ光を反射する材料で形成されており、レーザ光Lの光路に挿入することにより、半導体基板21に対するレーザ光Lの照射を遮断することができる。
この実施形態では、レーザヘッド31よりレーザ光Lを照射した状態で、半導体基板21の外周端部21cよりも外側から内側に向かって(図中矢印F4方向)レーザヘッド31を走査する。領域1では、レーザ光Lの光路にシャッター41を挿入して、半導体基板21に対してレーザ光Lを遮断する。領域2では、レーザ光Lの光路からシャッター41を取り外して、半導体基板21にレーザ光Lを照射する。さらに、領域2に続いて分断予定ラインDLの他端に設けられている図示しない領域1では、レーザ光Lの光路にシャッター41を挿入して、半導体基板21に対してレーザ光Lを遮断する。
これにより、領域1では面取り部21bで集光点P2が合うことがないため、アブレーションを防ぐことができる。領域2では、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路に、改質領域Kが適正に形成される。更に、レーザ光の照射を停止することがないため、一旦、レーザ光Lを停止した後に、再度レーザ光Lを照射を開始するためのタイムラグもない。
【0048】
シャッター41は、レーザ光を照射するための図示しないレーザ光照射装置の内部のレーザ光Lの光路に設けてもよい。また、レーザヘッド31と半導体基板21の間に設けてもよい。また、レーザ光Lを遮断する手段として、シャッター41を例示したが、レーザ光Lの進路を変更するために光路に配置されている図示しないミラーの角度を変更することにより、レーザ光Lを遮断するなどの方法を使用してもよい。
【0049】
次に、図4及び図5を参照して、第1実施形態に係る半導体基板21の分断方法の変更例を説明する。
図4には、半導体基板21の領域1の上方にレーザ光Lを遮断するカバーを被せる方法を示す。レーザ光Lを遮断するカバー51は、半導体基板21の領域1の上部を、領域1と領域2の境界部まで覆うように形成されている。カバー51は、シャッター41と同様に、レーザ光Lに対して不透明な材料、または、レーザ光Lを反射する材料で形成されている。
この変更例では、レーザヘッド31からレーザ光Lを照射した状態で、半導体基板21の外周端部21cよりも外側から内側に向かって(図中矢印F4方向)レーザヘッド31を走査する。領域1では、レーザ光Lはカバー51により遮断されるため、面取り部21bで集光点P2が合うことがないので、アブレーションを防ぐことができる。領域2では、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路に、改質領域Kが適正に形成される。更に、レーザ光の照射を停止することがないため、一旦、レーザ光Lを停止した後に、再度レーザ光Lを照射を開始するためのタイムラグもない。
なお、カバー51の形状は半導体基板21の外周部の全周を覆うものでもよいし、分断予定ラインDL及びその近傍のみを覆うものでもよい。
【0050】
図5には、領域1の面取り部21bの表面に、レーザ光Lに対して不透明な保護層を形成する方法を示す。外周端部21cから領域1と領域2の境界まで、面取り部21bを覆ってレーザ光Lに対して不透明な保護層61が形成されている。保護層61は、アルミニウム、チタンなどの金属膜のスパッタや粘土、樹脂塗料の塗布などにより形成することができる。
これによる作用および効果は、前述のカバー51と同様である。更に、保護層61は半導体基板21に直接形成されるため、カバー51などを使用した場合のように、半導体基板21とレーザ光Lを遮蔽する部材との位置関係を正確に決める必要がない。
【0051】
[第2実施形態の効果]
(1)改質領域形成工程においてレーザ光Lを分断予定ラインDLに沿って照射するときに、領域1では、レーザ光Lの光路中にシャッター41を配置する、レーザ光Lを遮断するカバーを領域1に被せる、または、レーザ光Lに対して不透明な保護層61を面取り部21bに形成する、ことによりレーザ光Lを遮断するため、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
更に、レーザ光Lの照射を停止することがないため、一旦、レーザ光Lを停止した後に、再度レーザ光Lを照射するためのタイムラグもない。
【0052】
[第3実施形態]
この発明の半導体基板分断方法の第3実施形態について、図を参照して説明する。
図6は、改質領域形成工程において、レーザヘッド31と半導体基板21との間隔を広くする方法の説明図である。図7は、改質領域形成工程において、レーザヘッド31と半導体基板21との間隔を広くする方法の変更例の説明図である。図8には、改質領域形成工程において、レーザ光の焦点距離調節手段によりレーザ光の焦点を調節する方法の説明図である。
なお、第1実施形態、または、第2実施形態と同様の構成については、同じ符号を使用するとともに説明を省略する。
【0053】
図6に示すように、まず、レーザヘッド31と半導体基板21の表面21aとの間隔として、半導体基板21の深さdの位置に改質領域Kを形成するための距離D1と、空気中におけるレーザ光Lの焦点距離よりも大きい距離D2とを設定する。
次に、半導体基板21の外周端部21cよりも外側から内側に向かって(図中矢印F4方向)レーザヘッド31を走査し、半導体基板21にレーザ光Lを照射する。ここで、領域1にレーザ光Lが照射されるときは、レーザヘッド31と半導体基板21の表面21aとの間隔が距離D2となるように、図示しないレーザ光照射装置に設けられた移動手段によってレーザヘッド31を上方に移動させて、レーザヘッド31を半導体基板21から遠ざける。領域2にレーザ光Lが照射されるときは、レーザヘッド31と半導体基板21の表面21aとの間隔が距離D1となるように、前記移動手段によってレーザヘッド31を下方に移動させる。
これによると、領域1にレーザ光Lが照射されるときは、レーザヘッド31と半導体基板21の表面21aとの間隔が、空気中におけるレーザ光Lの焦点距離よりも大きいため、レーザ光Lの集光点P2は、半導体基板21の上方の大気中となる。領域1は集光点P2の下方にあるため、レーザ光Lは広がった状態で領域1に照射される。広がった状態のレーザ光Lはエネルギー密度が小さいため、面取り部21bでアブレーションが起きることはない。
領域2では、レーザヘッド31と半導体基板21の表面21aとの間隔が距離D1となるようにレーザヘッド31を移動させるため、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路に、改質領域Kを適正に形成することができる。
【0054】
また、図7に示すように、レーザヘッド31と半導体基板21の表面21aとの間隔として、空気中におけるレーザ光Lの焦点距離よりも大きい距離D3を設定し、領域1にレーザ光が照射されるときは、半導体基板21が載置されている図示しないステージにより、レーザヘッド31と半導体基板との間隔が距離D3となるように半導体基板21を下方に移動させてもよい。これによる作用および効果は、上記図6に示す方法と同様である。
【0055】
次に、図8を参照して、第3実施形態に係る半導体基板21の分断方法の変更例を説明する。
レーザヘッド31は、レーザ光Lの光路にレーザ光の焦点距離を調節するためのレンズユニット71を備えている。領域1にレーザ光が照射されるときは、レンズユニット71によりレーザ光Lの焦点距離を短くして、レーザ光Lの集光点P3が半導体基板21の上部の大気中となるように調節する。このとき、領域1は集光点P3よりも下方にあるため、レーザ光Lは広がった状態で領域1に照射されるので、面取り部21bでアブレーションが起きることはない。
領域2にレーザ光が照射されるときには、レンズユニット71により、半導体基板の深さdの部分に集光点が合うように調節するため、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路に、改質領域Kを適正に形成することができる。
【0056】
[第3実施形態の効果]
(1)改質領域形成工程においてレーザ光Lを分断予定ラインDLに沿って照射するときに、領域1の表面には、レーザ光Lの集光点P2を合わせないため、面取り部21bにおけるアブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0057】
(2)改質領域形成工程においてレーザ光Lを分断予定ラインDLに沿って照射するときに、領域1では、レーザ光Lの集光点P2が領域1の表面に合わないように、半導体基板21をレーザヘッド31から遠ざける、または、レーザヘッド31を半導体基板21から遠ざける、などの方法により、レーザヘッド31と半導体基板21との間隔を広くするため、領域1の表面でレーザ光Lの集光点P2が合うことがないので、面取り部21bにおけるアブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0058】
(3)改質領域形成工程においてレーザ光Lを分断予定ラインDLに沿って照射するときに、領域1では、レーザ光Lの焦点距離を調節するためのレンズユニット32によりレーザ光Lの焦点距離を短くし、レーザ光Lの集光点P3を半導体基板21の外部とするため、領域1の表面でレーザ光Lの集光点P3が合うことがないので、面取り部21bにおけるアブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0059】
[その他の実施形態]
(1)図9は、分断予定ラインDL上に、位置決め部などの断部を有する領域が形成されている場合に起こりうるアブレーションの説明図である。
図9(A)に示すように、分断予定ラインDL上に、半導体基板1の位置決めの基準となる位置決め部81などの凹部を有する領域が形成されている場合には、図9(B)に示すように、半導体基板21の表面21aよりも下方に段部81aが形成され、この段部81aにレーザ光Lの集光点P2が合ってしまい、アブレーションによりパーティクルが発生することがある。
ここで、図10に示すように、分断予定ラインDL上に、位置決め部71の前後の所定の範囲を含めた領域として領域3(請求項11に記載の第2の領域に対応)を設定し、第1実施形態、第2実施形態、または、第3実施形態で使用した方法により、領域3にレーザ光Lを照射しない、または、集光点P2を合わせないようにすることができる。図中にはシャッター41を用いた場合を例示する。
これにより、分断予定ラインDL上に、位置決め部71など凹部を有する領域が形成されている場合においても、段部81aにおけるアブレーションによるパーティクルの発生を防止でき、その他の領域では、改質領域を適切に形成することができる。
【0060】
(2)半導体基板21には、シリコンのみで構成された半導体基板を用いたが、本発明の適用はこれに限られることはなく、例えば、酸化シリコンからなる酸化膜を半導体基板21の表面21aに形成したものやSOI(Silicon On Insulator)のウェハについて適用することも可能である。
【0061】
(3)改質領域形成工程において、半導体基板21の裏面からレーザ光Lを照射することもできる。半導体基板21の裏面には、表面21aに形成されている位置決め部などの断部がないため、外周縁部Mにのみ第1実施形態、第2実施形態、または、第3実施形態で使用した方法を適用することで、アブレーションによるパーティクル発生を防止できる。
【0062】
[各請求項と実施形態との対応関係]
改質領域Kが請求項1に記載の改質領域に、チップDevが半導体チップに、領域1が第1の領域にそれぞれ対応する。シャッタ―41が請求項3に記載の遮断手段に対応する。レンズユニット71が請求項10に記載の焦点距離調節手段に対応する。領域3が請求項11に記載の第2の領域に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1(A)は、ウェハの表面の平面説明図であり、図1(B)は、図1(A)の1B−1B矢視断面拡大図である。
【図2】改質領域形成工程において、レーザ光の照射を停止する方法の説明図である。
【図3】改質領域形成工程において、シャッターによりレーザ光の照射を停止する方法の説明図である。
【図4】改質領域形成工程において、カバーによりレーザ光を遮断する方法の説明図である。
【図5】改質領域形成工程において、レーザ光に対して不透明な保護層によりレーザ光を遮断する方法の説明図である。
【図6】改質領域形成工程において、レーザヘッド31と半導体基板21との間隔を広くする方法の説明図である。
【図7】改質領域形成工程において、レーザヘッド31と半導体基板21との間隔を広くする方法の変更例の説明図である。
【図8】改質領域形成工程において、レーザ光の焦点距離調節手段によりレーザ光の焦点を調節する方法の説明図である。
【図9】図9(A)は、分断予定ラインDL上に形成されている位置決め部の説明図であり、図9(B)は、位置決め部においてアブレーションによりパーティクルが発生する状況の説明図である。
【図10】位置決め部の前後の所定の範囲を含めた領域に、レーザ光Lを照射しない、または、集光点P2を合わせない方法の説明図である。
【図11】図11(A)はレーザ光の照射による改質領域形成工程の説明図であり、図11(B)は分断工程の説明図である。
【図12】従来のレーザダイシングにおいて、アブレーションによりパーティクルが発生する状況の説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 領域(第1の領域)
2 領域
3 領域(第2の領域)
20a ウェハ
21 半導体基板
21a 表面
21b 面取り部
21c 外周端部
31 レーザヘッド
41 シャッタ―
51 カバー
61 保護層
71 レンズユニット
81 位置決め部
CV 集光レンズ
Dev チップ(半導体チップ)
DL 分断予定ライン
K 改質領域
L レーザ光
M 外周縁部
P、P2、P3 集光点
W ウェハ
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板をその厚さ方向に分断する半導体基板の分断方法およびその分断方法で作製された半導体チップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を形成したシリコンウェハ(以下、ウェハという)を各々の半導体チップに分離するダイシング工程では、ダイヤモンド砥粒を埋め込んだダイシングブレードを用いて半導体チップに分断していた。
【0003】
しかし、このようなブレードによるダイシング工程では、(1) ブレードでカットする際にその切りしろが必要になるため1枚のウェハから取れる半導体チップ数が切りしろの分だけ減少し、歩留まりの低下及びコストの増大を招く、(2) カットする際の摩擦熱による焼付き等を防ぐために用いられる水等が、半導体チップに付着することを防止するために、ウェハ表面を覆うキャッピング等の保護装置を必要とし、その分メンテナンス工数が増大する、といった問題が生じていた。
【0004】
そこで、近年では、レーザ光を用いたダイシング工程(レーザダイシング)の検討や研究が進められており、例えば、下記特許文献1にレーザによるウェハの加工技術が開示されている。図11は、レーザ光を用いたダイシング工程を示す説明図である。図11(A)はレーザ光の照射による改質領域形成工程の説明図であり、図11(B)は分断工程の説明図である。
図11(A)に示すように、レーザ光Lを照射するレーザヘッドHは、レーザ光Lを集光する集光レンズCVを備えており、レーザ光Lを所定の焦点距離で集光させる。改質領域形成工程では、レーザ光Lの集光点PがウェハWの表面から深さdの箇所に形成されるように設定したレーザ光照射条件で、ウェハWを分断する分断予定ラインDL上に沿って(図中手前方向)レーザヘッドHを移動させ、レーザ光LをウェハWの表面から照射する。これにより、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路には、多光子吸収による改質領域Kが形成される。
ここで、多光子吸収とは、物質が複数個の同種もしくは異種の光子を吸収することをいう。その多光子吸収により、半導体基板Wの集光点Pおよびその近傍では、光学的損傷という現象が発生し、これにより熱ひずみが誘起され、その部分にクラックが発生し、そのクラックが集合した層、つまり改質領域Kが形成される。
レーザ光Lがパルス波の場合、レーザ光Lの強度は、集光点Pのピークパワー密度(W/cm2)で決まり、例えばピークパワー密度が1×108(W/cm2)以上でパルス幅が1μs以下の条件で多光子吸収が発生する。レーザ光Lとしては、例えば、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザによるレーザ光を用いる。そのレーザ光Lの波長は、例えば1064nmの赤外光領域の波長である。
続いて、図11(B)に示すように、半導体基板Wの面内方向(図中矢印F2、F3で示す方向)に応力を負荷することにより、改質領域Kを起点にして、基板厚さ方向にクラックCを進展させて、半導体基板Wを分断予定ラインDLに沿って分断する。
【特許文献1】特開2002−192367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12に示すように、ウェハWに照射されるレーザ光Lは、ウェハWの内部に改質領域Kが形成されるようにその集光点Pが設定されている。しかし、レーザ光Lが、外周縁部Mのチッピングを防止するために面取り加工が施されている部分に照射された場合、ウェハWと空気とは屈折率が異なるため、レーザ光Lの集光点が本来予定されている集光点Pより上方の集光点P1にずれてしまい、面取り加工が施されている部分の表面でレーザ光Lの集光点P1が合ってしまうことがある。すると、レーザ光Lの照射によってウェハW表面が溶融するアブレーションが生じるため、シリコンqが飛散してパーティクル発生の原因となる。このようなパーティクルは、分離前または分離後の半導体チップに付着することにより、半導体集積回路やMEMSの動作不良を招くことから、製品の歩留まり低下や品質低下に直結し得る。上記の現象は、面取り加工が施されている部分以外でも、ウェハWの表面より凹んだ部分や段部などにレーザ光Lが照射された場合には起こりうる。
また、改質領域形成工程において、レーザ光Lの集光点Pの深さdを調整することにより、半導体基板21の厚さの範囲内で任意の深さに任意の層数の改質領域Kを形成することができる。例えば、厚さが比較的厚い場合は、その厚さ方向へ集光点Pを移動させて改質領域Kを厚さ方向に連続状、または複数箇所に形成することにより、半導体基板21の分断を容易にすることができる。
しかし、この場合には、新たな改質領域Kを形成する度に、レーザ光Lが面取り加工が施されている部分を走査するため、アブレーションによるパーティクル発生の影響が大きくなる。
【0006】
そこで、この発明は、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる半導体基板の分断方法およびその分断方法で作製された半導体チップを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体基板をその厚さ方向に分断するための分断予定ラインに沿って、レーザ光を照射するレーザヘッドを前記半導体基板に対して相対移動させながら、前記半導体基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、前記集光点に多光子吸収による改質領域を形成する改質領域形成工程と、この改質領域形成工程を経た前記半導体基板を、前記改質領域を起点にして、前記分断予定ラインに沿って厚さ方向に分断して半導体チップを得る分断工程と、を備えた半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程では、前記分断予定ラインであって、前記半導体基板の外周端部から所定の第1の領域には、前記レーザ光を照射しない、という技術的手段を用いる。
なお、上記集光点とは、レーザ光が集光した箇所のことである。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では前記レーザ光の照射を停止する、という技術的手段を用いる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光を遮断する遮断手段を前記レーザ光の光路中に配置することにより前記レーザ光を遮断する、という技術的手段を用いる。
【0010】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光を遮断するカバーを前記第1の領域に被せる、という技術的手段を用いる。
【0011】
請求項5に記載の発明では、請求項1に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光に対して不透明な保護層を前記第1の領域の表面に形成する、という技術的手段を用いる。
【0012】
請求項6に記載の発明では、半導体基板をその厚さ方向に分断するための分断予定ラインに沿って、レーザ光を照射するレーザヘッドを前記半導体基板に対して相対移動させながら、前記半導体基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、前記集光点に多光子吸収による改質領域を形成する改質領域形成工程と、この改質領域形成工程を経た前記半導体基板を、前記改質領域を起点にして、前記分断予定ラインに沿って厚さ方向に分断して半導体チップを得る分断工程と、を備えた半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程では、前記分断予定ラインであって、前記半導体基板の外周端部から所定の第1の領域の表面には、前記レーザ光の集光点を合わせない、という技術的手段を用いる。
【0013】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光の集光点が前記第1の領域の表面に合わないように、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くする、という技術的手段を用いる。
【0014】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の半導体基板の分断方法において、前記半導体基板を前記レーザヘッドから遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くする、という技術的手段を用いる。
【0015】
請求項9に記載の発明では、請求項7に記載の半導体基板の分断方法において、前記レーザヘッドを前記半導体基板から遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くする、という技術的手段を用いる。
【0016】
請求項10に記載の発明では、請求項6に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光の焦点距離を調節するための焦点距離調節手段により前記レーザ光の焦点距離を短くし、前記レーザ光の集光点を前記半導体基板の外部とする、という技術的手段を用いる。
【0017】
請求項11に記載の発明では、請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程では、前記分断予定ライン上に設定された第2の領域には、前記レーザ光を照射しない、という技術的手段を用いる。
【0018】
請求項12に記載の発明では、請求項11に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第2の領域では前記レーザ光の照射を停止する、という技術的手段を用いる。
【0019】
請求項13に記載の発明では、請求項11に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光を遮断する遮断手段を前記レーザ光の光路中に配置することにより前記レーザ光を遮断する、という技術的手段を用いる。
【0020】
請求項14に記載の発明では、請求項11に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光を遮断するカバーを前記第2の領域に被せる、という技術的手段を用いる。
【0021】
請求項15に記載の発明では、請求項11に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光に対して不透明な保護層を前記第2の領域の表面に形成する、という技術的手段を用いる。
【0022】
請求項16に記載の発明では、請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程では、前記分断予定ライン上に設定された第2の領域には、前記レーザ光の集光点を合わせない、という技術的手段を用いる。
【0023】
請求項17に記載の発明では、請求項16に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第2の領域では、前記レーザ光の集光点が前記第2の領域の表面に合わないように、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くする、という技術的手段を用いる。
【0024】
請求項18に記載の発明では、請求項17に記載の半導体基板の分断方法において、前記半導体基板を前記レーザヘッドから遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くする、という技術的手段を用いる。
【0025】
請求項19に記載の発明では、請求項17に記載の半導体基板の分断方法において、前記レーザヘッドを前記半導体基板から遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くする、という技術的手段を用いる。
【0026】
請求項20に記載の発明では、請求項16に記載の半導体基板の分断方法において、前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第2の領域では、前記レーザ光の焦点距離を調節するための焦点距離調節手段により前記レーザ光の焦点距離を短くし、前記レーザ光の集光点を前記半導体基板の外部とする、という技術的手段を用いる。
【0027】
請求項21に記載の発明では、請求項1ないし請求項20のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法において、前記第1の領域は、前記半導体基板の面取り部である、という技術的手段を用いる。
【0028】
請求項22に記載の発明では、半導体チップが、請求項1ないし請求項21のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法によって作製された前記半導体チップであって、前記第1の領域には前記改質領域が形成されていない、という技術的手段を用いる。
【0029】
請求項23に記載の発明では、半導体チップが、請求項11ないし請求項21のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法によって作製された前記半導体チップであって、前記第1の領域及び前記第2の領域には前記改質領域が形成されていない、という技術的手段を用いる。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に記載の発明によれば、改質領域形成工程では、分断予定ラインであって、半導体基板の外周端部から所定の第1の領域には、レーザ光を照射しないため、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
したがって、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる半導体基板の分断方法を実現することができる。つまり、半導体チップにパーティクルが付着することがないため、パーティクルの発生による製品の歩留まり低下や品質低下を防止できる。
【0031】
請求項2に記載の発明によれば、改質領域形成工程においてレーザ光を分断予定ラインに沿って照射するときに、第1の領域ではレーザ光の照射を停止するため、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0032】
請求項3に記載の発明によれば、改質領域形成工程においてレーザ光を分断予定ラインに沿って照射するときに、第1の領域では、レーザ光を遮断する遮断手段をレーザ光の光路中に配置する、請求項4に記載の発明によれば、レーザ光を遮断するカバーを第1の領域に被せる、または、請求項5に記載の発明によれば、レーザ光に対して不透明な保護層を第1の領域の表面に形成する、ことによりレーザ光を遮断するため、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
更に、レーザ光の照射を停止することがないため、一旦、レーザ光を停止した後に、再度レーザ光を照射するためのタイムラグもない。
【0033】
請求項6に記載の発明によれば、改質領域形成工程では、分断予定ラインであって、半導体基板の外周端部から所定の第1の領域の表面には、レーザ光の集光点を合わせないため、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0034】
請求項7〜9に記載の発明によれば、改質領域形成工程においてレーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、第1の領域では、レーザ光の集光点が前記第1の領域の表面に合わないように、半導体基板をレーザヘッドから遠ざける、または、レーザヘッドを半導体基板から遠ざける、などの方法により、レーザヘッドと半導体基板との間隔を広くするため、第1の領域の表面でレーザ光の集光点が合うことがないので、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0035】
請求項10に記載の発明によれば、改質領域形成工程においてレーザ光を分断予定ラインに沿って照射するときに、第1の領域では、レーザ光の焦点距離を調節するための焦点距離調節手段によりレーザ光の焦点距離を短くし、レーザ光の集光点を半導体基板の外部とするため、第1の領域の表面でレーザ光の集光点が合うことがないので、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0036】
請求項11〜15に記載の発明によれば、改質領域形成工程では、分断予定ライン上に設定された第2の領域には、レーザ光を照射しないため、例えば、第2の領域に位置決めのための段部が形成されているような場合においても、第2の領域の表面でレーザ光の集光点が合うことがないので、請求項1〜5に記載の発明と同様に、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0037】
請求項16〜20に記載の発明によれば、請求項6〜10に記載の発明と同様に、第2の領域の表面でレーザ光の集光点が合うことがないので、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0038】
特に、請求項21に記載するように、半導体基板の外周端部が面取りされている場合に、請求項1ないし請求項20のいずれか1つに記載の発明を適用すれば、半導体基板を分断するときに、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0039】
請求項22に記載するように、半導体チップの第1の領域に改質領域が形成されていない場合には、その半導体チップは請求項1ないし請求項21のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法によって作製された半導体チップであると推定することができる。
【0040】
請求項23に記載するように、半導体チップの第1の領域及び第2の領域に改質領域が形成されていない場合には、その半導体チップは請求項11ないし請求項21のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法によって作製された半導体チップであると推定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
[第1実施形態]
この発明の半導体基板の分断方法の第1実施形態について、図を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る分断方法により分断する半導体基板の構成例を示す模式図である。図1(A)は、ウェハの表面の平面説明図であり、図1(B)は、図1(A)の1B−1B矢視断面拡大図である。図2は、改質領域形成工程において、レーザ光の照射を停止する方法の説明図である。
【0042】
図1(A)に示すように、ウェハ20aを用意する。ウェハ20aは、シリコンからなる薄板円盤形状の半導体基板21の表面21aに、拡散工程等を経て形成された複数のチップDevが碁盤の目のように整列配置されて形成されており、外周の一部に結晶方位を示すオリエンテーションフラットが形成されている。これらのチップDevは、ダイシング工程により分断予定ラインDLに沿ってそれぞれ分断された後、マウント工程、ボンディング工程、封入工程等といった各工程を経ることによってパッケージされたICやLSIとして完成する。なお、本実施形態では、ウェハ20aは、チップDevの支持基板となるシリコン層を形成し得るものである。
図1(B)に示すように、ウェハ20aには、外周縁部Mの欠けを防止するために、外周に面取り加工が施された面取り部21bが形成されている。
【0043】
まず、図1(A)に示す分断予定ラインDLの1つを、ウェハ検出用のレーザ光で走査し、外周端部21c(図1(B))を検出する。次に、図2に示すように、分断予定ラインDLに、外周端部21cから径方向に所定の距離(例えば、1mm程度)の範囲であって、面取り部21bを含む領域1と、領域1の内側で平坦な表面21aのみから構成される領域2を設定する。ここで、分断予定ラインDLの外周縁部Mに向かう方向を「外側」、その反対方向を「内側」という。
【0044】
図2に示すように、レーザ光Lを照射するレーザヘッド31は、レーザ光Lを集光する集光レンズCVを備えており、レーザ光Lを所定の焦点距離で集光させることができる。ここでは、レーザ光Lの集光点Pが半導体基板21の表面21aから厚さ方向へ深さdの箇所に形成されるように設定されている。
次に、分断予定ラインDLに沿って、半導体基板21の外周端部21cよりも外側から内側に向かって(図中矢印F4方向)レーザヘッド31を走査する。このとき、領域1ではレーザ光Lの照射を停止し、領域2においてのみレーザ光Lを照射する。さらに、領域2に続いて分断予定ラインDLの他端に設けられている図示しない領域1では、レーザ光Lの照射を停止する。
これにより、領域1では面取り部21bでレーザ光Lの集光点P2が合うことがないため、面取り部21bの表面におけるアブレーションを防ぐことができる。領域2では、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路に、改質領域Kが適正に形成される。
領域1は、外周端部21cから1mm程度と狭い領域であるため、分断工程において、改質領域Kから領域1に容易にクラックが進展する。そのため、領域1に改質領域Kが形成されていなくてもクラックが偏向することがなく、半導体基板を厚さ方向に容易にかつ精度よく分断して、チップDevを作製することができる。
なお、レーザ光Lを、同じ分断予定ラインDLに沿って、深さdを変えて繰り返し照射する場合には、レーザヘッド31を領域2にレーザ光Lを照射できる範囲のみで走査してもよい。
【0045】
[第1実施形態の効果]
(1)改質領域形成工程では、レーザ光Lを分断予定ラインDLに沿って照射するときに、外周端部21cから分断予定ラインDLに設定された領域1には、レーザ光Lの照射を停止することによりレーザ光Lを照射しないため、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
したがって、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる半導体基板21の分断方法を実現することができる。つまり、半導体チップにパーティクルが付着することがないため、パーティクルの発生による製品の歩留まり低下や品質低下を防止できる。
【0046】
[第2実施形態]
この発明の半導体基板分断方法の第2実施形態について、図を参照して説明する。図3は、改質領域形成工程において、シャッターによりレーザ光の照射を停止する方法の説明図である。図4は、改質領域形成工程において、カバーによりレーザ光を遮断する方法の説明図である。図5は、改質領域形成工程において、レーザ光に対して不透明な保護層によりレーザ光を遮断する方法の説明図である。
なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を使用するとともに説明を省略する。
【0047】
図3には、レーザ光Lを遮断するシャッターを使用する方法を示す。レーザヘッド31の内部には、レーザ光Lを遮断するシャッター41が、レーザ光Lの光路に挿脱可能に設けられている。シャッター41は、ステンレス、アルミニウムなどのレーザ光に対して不透明な材料、またはレーザ光を反射する材料で形成されており、レーザ光Lの光路に挿入することにより、半導体基板21に対するレーザ光Lの照射を遮断することができる。
この実施形態では、レーザヘッド31よりレーザ光Lを照射した状態で、半導体基板21の外周端部21cよりも外側から内側に向かって(図中矢印F4方向)レーザヘッド31を走査する。領域1では、レーザ光Lの光路にシャッター41を挿入して、半導体基板21に対してレーザ光Lを遮断する。領域2では、レーザ光Lの光路からシャッター41を取り外して、半導体基板21にレーザ光Lを照射する。さらに、領域2に続いて分断予定ラインDLの他端に設けられている図示しない領域1では、レーザ光Lの光路にシャッター41を挿入して、半導体基板21に対してレーザ光Lを遮断する。
これにより、領域1では面取り部21bで集光点P2が合うことがないため、アブレーションを防ぐことができる。領域2では、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路に、改質領域Kが適正に形成される。更に、レーザ光の照射を停止することがないため、一旦、レーザ光Lを停止した後に、再度レーザ光Lを照射を開始するためのタイムラグもない。
【0048】
シャッター41は、レーザ光を照射するための図示しないレーザ光照射装置の内部のレーザ光Lの光路に設けてもよい。また、レーザヘッド31と半導体基板21の間に設けてもよい。また、レーザ光Lを遮断する手段として、シャッター41を例示したが、レーザ光Lの進路を変更するために光路に配置されている図示しないミラーの角度を変更することにより、レーザ光Lを遮断するなどの方法を使用してもよい。
【0049】
次に、図4及び図5を参照して、第1実施形態に係る半導体基板21の分断方法の変更例を説明する。
図4には、半導体基板21の領域1の上方にレーザ光Lを遮断するカバーを被せる方法を示す。レーザ光Lを遮断するカバー51は、半導体基板21の領域1の上部を、領域1と領域2の境界部まで覆うように形成されている。カバー51は、シャッター41と同様に、レーザ光Lに対して不透明な材料、または、レーザ光Lを反射する材料で形成されている。
この変更例では、レーザヘッド31からレーザ光Lを照射した状態で、半導体基板21の外周端部21cよりも外側から内側に向かって(図中矢印F4方向)レーザヘッド31を走査する。領域1では、レーザ光Lはカバー51により遮断されるため、面取り部21bで集光点P2が合うことがないので、アブレーションを防ぐことができる。領域2では、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路に、改質領域Kが適正に形成される。更に、レーザ光の照射を停止することがないため、一旦、レーザ光Lを停止した後に、再度レーザ光Lを照射を開始するためのタイムラグもない。
なお、カバー51の形状は半導体基板21の外周部の全周を覆うものでもよいし、分断予定ラインDL及びその近傍のみを覆うものでもよい。
【0050】
図5には、領域1の面取り部21bの表面に、レーザ光Lに対して不透明な保護層を形成する方法を示す。外周端部21cから領域1と領域2の境界まで、面取り部21bを覆ってレーザ光Lに対して不透明な保護層61が形成されている。保護層61は、アルミニウム、チタンなどの金属膜のスパッタや粘土、樹脂塗料の塗布などにより形成することができる。
これによる作用および効果は、前述のカバー51と同様である。更に、保護層61は半導体基板21に直接形成されるため、カバー51などを使用した場合のように、半導体基板21とレーザ光Lを遮蔽する部材との位置関係を正確に決める必要がない。
【0051】
[第2実施形態の効果]
(1)改質領域形成工程においてレーザ光Lを分断予定ラインDLに沿って照射するときに、領域1では、レーザ光Lの光路中にシャッター41を配置する、レーザ光Lを遮断するカバーを領域1に被せる、または、レーザ光Lに対して不透明な保護層61を面取り部21bに形成する、ことによりレーザ光Lを遮断するため、アブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
更に、レーザ光Lの照射を停止することがないため、一旦、レーザ光Lを停止した後に、再度レーザ光Lを照射するためのタイムラグもない。
【0052】
[第3実施形態]
この発明の半導体基板分断方法の第3実施形態について、図を参照して説明する。
図6は、改質領域形成工程において、レーザヘッド31と半導体基板21との間隔を広くする方法の説明図である。図7は、改質領域形成工程において、レーザヘッド31と半導体基板21との間隔を広くする方法の変更例の説明図である。図8には、改質領域形成工程において、レーザ光の焦点距離調節手段によりレーザ光の焦点を調節する方法の説明図である。
なお、第1実施形態、または、第2実施形態と同様の構成については、同じ符号を使用するとともに説明を省略する。
【0053】
図6に示すように、まず、レーザヘッド31と半導体基板21の表面21aとの間隔として、半導体基板21の深さdの位置に改質領域Kを形成するための距離D1と、空気中におけるレーザ光Lの焦点距離よりも大きい距離D2とを設定する。
次に、半導体基板21の外周端部21cよりも外側から内側に向かって(図中矢印F4方向)レーザヘッド31を走査し、半導体基板21にレーザ光Lを照射する。ここで、領域1にレーザ光Lが照射されるときは、レーザヘッド31と半導体基板21の表面21aとの間隔が距離D2となるように、図示しないレーザ光照射装置に設けられた移動手段によってレーザヘッド31を上方に移動させて、レーザヘッド31を半導体基板21から遠ざける。領域2にレーザ光Lが照射されるときは、レーザヘッド31と半導体基板21の表面21aとの間隔が距離D1となるように、前記移動手段によってレーザヘッド31を下方に移動させる。
これによると、領域1にレーザ光Lが照射されるときは、レーザヘッド31と半導体基板21の表面21aとの間隔が、空気中におけるレーザ光Lの焦点距離よりも大きいため、レーザ光Lの集光点P2は、半導体基板21の上方の大気中となる。領域1は集光点P2の下方にあるため、レーザ光Lは広がった状態で領域1に照射される。広がった状態のレーザ光Lはエネルギー密度が小さいため、面取り部21bでアブレーションが起きることはない。
領域2では、レーザヘッド31と半導体基板21の表面21aとの間隔が距離D1となるようにレーザヘッド31を移動させるため、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路に、改質領域Kを適正に形成することができる。
【0054】
また、図7に示すように、レーザヘッド31と半導体基板21の表面21aとの間隔として、空気中におけるレーザ光Lの焦点距離よりも大きい距離D3を設定し、領域1にレーザ光が照射されるときは、半導体基板21が載置されている図示しないステージにより、レーザヘッド31と半導体基板との間隔が距離D3となるように半導体基板21を下方に移動させてもよい。これによる作用および効果は、上記図6に示す方法と同様である。
【0055】
次に、図8を参照して、第3実施形態に係る半導体基板21の分断方法の変更例を説明する。
レーザヘッド31は、レーザ光Lの光路にレーザ光の焦点距離を調節するためのレンズユニット71を備えている。領域1にレーザ光が照射されるときは、レンズユニット71によりレーザ光Lの焦点距離を短くして、レーザ光Lの集光点P3が半導体基板21の上部の大気中となるように調節する。このとき、領域1は集光点P3よりも下方にあるため、レーザ光Lは広がった状態で領域1に照射されるので、面取り部21bでアブレーションが起きることはない。
領域2にレーザ光が照射されるときには、レンズユニット71により、半導体基板の深さdの部分に集光点が合うように調節するため、レーザ光Lの集光点Pが走査された深さdの経路に、改質領域Kを適正に形成することができる。
【0056】
[第3実施形態の効果]
(1)改質領域形成工程においてレーザ光Lを分断予定ラインDLに沿って照射するときに、領域1の表面には、レーザ光Lの集光点P2を合わせないため、面取り部21bにおけるアブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0057】
(2)改質領域形成工程においてレーザ光Lを分断予定ラインDLに沿って照射するときに、領域1では、レーザ光Lの集光点P2が領域1の表面に合わないように、半導体基板21をレーザヘッド31から遠ざける、または、レーザヘッド31を半導体基板21から遠ざける、などの方法により、レーザヘッド31と半導体基板21との間隔を広くするため、領域1の表面でレーザ光Lの集光点P2が合うことがないので、面取り部21bにおけるアブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0058】
(3)改質領域形成工程においてレーザ光Lを分断予定ラインDLに沿って照射するときに、領域1では、レーザ光Lの焦点距離を調節するためのレンズユニット32によりレーザ光Lの焦点距離を短くし、レーザ光Lの集光点P3を半導体基板21の外部とするため、領域1の表面でレーザ光Lの集光点P3が合うことがないので、面取り部21bにおけるアブレーションによるパーティクルの発生を防止できる。
【0059】
[その他の実施形態]
(1)図9は、分断予定ラインDL上に、位置決め部などの断部を有する領域が形成されている場合に起こりうるアブレーションの説明図である。
図9(A)に示すように、分断予定ラインDL上に、半導体基板1の位置決めの基準となる位置決め部81などの凹部を有する領域が形成されている場合には、図9(B)に示すように、半導体基板21の表面21aよりも下方に段部81aが形成され、この段部81aにレーザ光Lの集光点P2が合ってしまい、アブレーションによりパーティクルが発生することがある。
ここで、図10に示すように、分断予定ラインDL上に、位置決め部71の前後の所定の範囲を含めた領域として領域3(請求項11に記載の第2の領域に対応)を設定し、第1実施形態、第2実施形態、または、第3実施形態で使用した方法により、領域3にレーザ光Lを照射しない、または、集光点P2を合わせないようにすることができる。図中にはシャッター41を用いた場合を例示する。
これにより、分断予定ラインDL上に、位置決め部71など凹部を有する領域が形成されている場合においても、段部81aにおけるアブレーションによるパーティクルの発生を防止でき、その他の領域では、改質領域を適切に形成することができる。
【0060】
(2)半導体基板21には、シリコンのみで構成された半導体基板を用いたが、本発明の適用はこれに限られることはなく、例えば、酸化シリコンからなる酸化膜を半導体基板21の表面21aに形成したものやSOI(Silicon On Insulator)のウェハについて適用することも可能である。
【0061】
(3)改質領域形成工程において、半導体基板21の裏面からレーザ光Lを照射することもできる。半導体基板21の裏面には、表面21aに形成されている位置決め部などの断部がないため、外周縁部Mにのみ第1実施形態、第2実施形態、または、第3実施形態で使用した方法を適用することで、アブレーションによるパーティクル発生を防止できる。
【0062】
[各請求項と実施形態との対応関係]
改質領域Kが請求項1に記載の改質領域に、チップDevが半導体チップに、領域1が第1の領域にそれぞれ対応する。シャッタ―41が請求項3に記載の遮断手段に対応する。レンズユニット71が請求項10に記載の焦点距離調節手段に対応する。領域3が請求項11に記載の第2の領域に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1(A)は、ウェハの表面の平面説明図であり、図1(B)は、図1(A)の1B−1B矢視断面拡大図である。
【図2】改質領域形成工程において、レーザ光の照射を停止する方法の説明図である。
【図3】改質領域形成工程において、シャッターによりレーザ光の照射を停止する方法の説明図である。
【図4】改質領域形成工程において、カバーによりレーザ光を遮断する方法の説明図である。
【図5】改質領域形成工程において、レーザ光に対して不透明な保護層によりレーザ光を遮断する方法の説明図である。
【図6】改質領域形成工程において、レーザヘッド31と半導体基板21との間隔を広くする方法の説明図である。
【図7】改質領域形成工程において、レーザヘッド31と半導体基板21との間隔を広くする方法の変更例の説明図である。
【図8】改質領域形成工程において、レーザ光の焦点距離調節手段によりレーザ光の焦点を調節する方法の説明図である。
【図9】図9(A)は、分断予定ラインDL上に形成されている位置決め部の説明図であり、図9(B)は、位置決め部においてアブレーションによりパーティクルが発生する状況の説明図である。
【図10】位置決め部の前後の所定の範囲を含めた領域に、レーザ光Lを照射しない、または、集光点P2を合わせない方法の説明図である。
【図11】図11(A)はレーザ光の照射による改質領域形成工程の説明図であり、図11(B)は分断工程の説明図である。
【図12】従来のレーザダイシングにおいて、アブレーションによりパーティクルが発生する状況の説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 領域(第1の領域)
2 領域
3 領域(第2の領域)
20a ウェハ
21 半導体基板
21a 表面
21b 面取り部
21c 外周端部
31 レーザヘッド
41 シャッタ―
51 カバー
61 保護層
71 レンズユニット
81 位置決め部
CV 集光レンズ
Dev チップ(半導体チップ)
DL 分断予定ライン
K 改質領域
L レーザ光
M 外周縁部
P、P2、P3 集光点
W ウェハ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板をその厚さ方向に分断するための分断予定ラインに沿って、レーザ光を照射するレーザヘッドを前記半導体基板に対して相対移動させながら、前記半導体基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、前記集光点に多光子吸収による改質領域を形成する改質領域形成工程と、
この改質領域形成工程を経た前記半導体基板を、前記改質領域を起点にして、前記分断予定ラインに沿って厚さ方向に分断して半導体チップを得る分断工程と、を備えた半導体基板の分断方法において、
前記改質領域形成工程では、前記分断予定ラインであって、前記半導体基板の外周端部から所定の第1の領域には、前記レーザ光を照射しないことを特徴とする半導体基板の分断方法。
【請求項2】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では前記レーザ光の照射を停止することを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項3】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光を遮断する遮断手段を前記レーザ光の光路中に配置することにより前記レーザ光を遮断することを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項4】
前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光を遮断するカバーを前記第1の領域に被せることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項5】
前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光に対して不透明な保護層を前記第1の領域の表面に形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項6】
半導体基板をその厚さ方向に分断するための分断予定ラインに沿って、レーザ光を照射するレーザヘッドを前記半導体基板に対して相対移動させながら、前記半導体基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、前記集光点に多光子吸収による改質領域を形成する改質領域形成工程と、
この改質領域形成工程を経た前記半導体基板を、前記改質領域を起点にして、前記分断予定ラインに沿って厚さ方向に分断して半導体チップを得る分断工程と、を備えた半導体基板の分断方法において、
前記改質領域形成工程では、前記分断予定ラインであって、前記半導体基板の外周端部から所定の第1の領域の表面には、前記レーザ光の集光点を合わせないことを特徴とする半導体基板の分断方法。
【請求項7】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光の集光点が前記第1の領域の表面に合わないように、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くすることを特徴とする請求項6に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項8】
前記半導体基板を前記レーザヘッドから遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くすることを特徴とする請求項7に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項9】
前記レーザヘッドを前記半導体基板から遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くすることを特徴とする請求項7に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項10】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光の焦点距離を調節するための焦点距離調節手段により前記レーザ光の焦点距離を短くし、前記レーザ光の集光点を前記半導体基板の外部とすることを特徴とする請求項6に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項11】
前記改質領域形成工程では、前記分断予定ライン上に設定された第2の領域には、前記レーザ光を照射しないことを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法。
【請求項12】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第2の領域では前記レーザ光の照射を停止することを特徴とする請求項11に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項13】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光を遮断する遮断手段を前記レーザ光の光路中に配置することにより前記レーザ光を遮断することを特徴とする請求項11に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項14】
前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光を遮断するカバーを前記第2の領域に被せることを特徴とする請求項11に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項15】
前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光に対して不透明な保護層を前記第2の領域の表面に形成することを特徴とする請求項11に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項16】
前記改質領域形成工程では、前記分断予定ライン上に設定された第2の領域には、前記レーザ光の集光点を合わせないことを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法。
【請求項17】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第2の領域では、前記レーザ光の集光点が前記第2の領域の表面に合わないように、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くすることを特徴とする請求項16に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項18】
前記半導体基板を前記レーザヘッドから遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くすることを特徴とする請求項17に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項19】
前記レーザヘッドを前記半導体基板から遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くすることを特徴とする請求項17に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項20】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第2の領域では、前記レーザ光の焦点距離を調節するための焦点距離調節手段により前記レーザ光の焦点距離を短くし、前記レーザ光の集光点を前記半導体基板の外部とすることを特徴とする請求項16に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項21】
前記第1の領域は、前記半導体基板の面取り部であることを特徴とする請求項1ないし請求項20のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法。
【請求項22】
請求項1ないし請求項21のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法によって作製された前記半導体チップであって、前記第1の領域には前記改質領域が形成されていないことを特徴とする半導体チップ。
【請求項23】
請求項11ないし請求項21のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法によって作製された前記半導体チップであって、前記第1の領域及び前記第2の領域には前記改質領域が形成されていないことを特徴とする半導体チップ。
【請求項1】
半導体基板をその厚さ方向に分断するための分断予定ラインに沿って、レーザ光を照射するレーザヘッドを前記半導体基板に対して相対移動させながら、前記半導体基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、前記集光点に多光子吸収による改質領域を形成する改質領域形成工程と、
この改質領域形成工程を経た前記半導体基板を、前記改質領域を起点にして、前記分断予定ラインに沿って厚さ方向に分断して半導体チップを得る分断工程と、を備えた半導体基板の分断方法において、
前記改質領域形成工程では、前記分断予定ラインであって、前記半導体基板の外周端部から所定の第1の領域には、前記レーザ光を照射しないことを特徴とする半導体基板の分断方法。
【請求項2】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では前記レーザ光の照射を停止することを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項3】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光を遮断する遮断手段を前記レーザ光の光路中に配置することにより前記レーザ光を遮断することを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項4】
前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光を遮断するカバーを前記第1の領域に被せることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項5】
前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光に対して不透明な保護層を前記第1の領域の表面に形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項6】
半導体基板をその厚さ方向に分断するための分断予定ラインに沿って、レーザ光を照射するレーザヘッドを前記半導体基板に対して相対移動させながら、前記半導体基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し、前記集光点に多光子吸収による改質領域を形成する改質領域形成工程と、
この改質領域形成工程を経た前記半導体基板を、前記改質領域を起点にして、前記分断予定ラインに沿って厚さ方向に分断して半導体チップを得る分断工程と、を備えた半導体基板の分断方法において、
前記改質領域形成工程では、前記分断予定ラインであって、前記半導体基板の外周端部から所定の第1の領域の表面には、前記レーザ光の集光点を合わせないことを特徴とする半導体基板の分断方法。
【請求項7】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光の集光点が前記第1の領域の表面に合わないように、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くすることを特徴とする請求項6に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項8】
前記半導体基板を前記レーザヘッドから遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くすることを特徴とする請求項7に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項9】
前記レーザヘッドを前記半導体基板から遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くすることを特徴とする請求項7に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項10】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光の焦点距離を調節するための焦点距離調節手段により前記レーザ光の焦点距離を短くし、前記レーザ光の集光点を前記半導体基板の外部とすることを特徴とする請求項6に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項11】
前記改質領域形成工程では、前記分断予定ライン上に設定された第2の領域には、前記レーザ光を照射しないことを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法。
【請求項12】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第2の領域では前記レーザ光の照射を停止することを特徴とする請求項11に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項13】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第1の領域では、前記レーザ光を遮断する遮断手段を前記レーザ光の光路中に配置することにより前記レーザ光を遮断することを特徴とする請求項11に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項14】
前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光を遮断するカバーを前記第2の領域に被せることを特徴とする請求項11に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項15】
前記改質領域形成工程を行う前に、前記レーザ光に対して不透明な保護層を前記第2の領域の表面に形成することを特徴とする請求項11に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項16】
前記改質領域形成工程では、前記分断予定ライン上に設定された第2の領域には、前記レーザ光の集光点を合わせないことを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法。
【請求項17】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第2の領域では、前記レーザ光の集光点が前記第2の領域の表面に合わないように、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くすることを特徴とする請求項16に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項18】
前記半導体基板を前記レーザヘッドから遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くすることを特徴とする請求項17に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項19】
前記レーザヘッドを前記半導体基板から遠ざけることにより、前記レーザヘッドと前記半導体基板との間隔を広くすることを特徴とする請求項17に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項20】
前記改質領域形成工程において前記レーザ光を前記分断予定ラインに沿って照射するときに、前記第2の領域では、前記レーザ光の焦点距離を調節するための焦点距離調節手段により前記レーザ光の焦点距離を短くし、前記レーザ光の集光点を前記半導体基板の外部とすることを特徴とする請求項16に記載の半導体基板の分断方法。
【請求項21】
前記第1の領域は、前記半導体基板の面取り部であることを特徴とする請求項1ないし請求項20のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法。
【請求項22】
請求項1ないし請求項21のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法によって作製された前記半導体チップであって、前記第1の領域には前記改質領域が形成されていないことを特徴とする半導体チップ。
【請求項23】
請求項11ないし請求項21のいずれか1つに記載の半導体基板の分断方法によって作製された前記半導体チップであって、前記第1の領域及び前記第2の領域には前記改質領域が形成されていないことを特徴とする半導体チップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−258236(P2007−258236A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77218(P2006−77218)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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