半導体層を形成するオリゴマー化合物
本発明は、改善された半導電性を有するオリゴマーの有機化合物及びコアシェル構造を有する高分子化合物及び/又はモノマーの線状化合物とのその混合物並びにその電子部品における使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された半導電性を有する、オリゴマーの有機化合物及びそのコアシェル構造を有する高分子化合物及び/又はモノマーの線状化合物との混合物並びにその電子部品における使用に関する。
【0002】
分子電子の分野は、過去15年で有機導電性及び半導電性化合物の発見と共に著しい進歩を遂げた。この時に半導電性又は電気光学特性を有する化合物が多数見出された。分子電子は珪素をベースとする従来の半導体部品の代わりとは一般に考えられていない。そうではなく、分子電子部品は広い面積の被覆に適し、構造的可撓性、低温での加工性及び低コストが必要とされる新しい使用分野を開いてゆくことを前提としている。現在半導電性有機化合物は、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、センサー及び光起電子素子のような使用分野用に開発されている。集積有機半導体スイッチングへのOFETの簡単な構造化及び組み込みによって、珪素技術を用いてはこれまで価格及び珪素の可撓性欠如のために実現することができなかったスマートカード(smart cards)又はプライスタグに関する問題を低価で解決することができる。同じくOFETはスイッチ素子として広面積のフレキシブルなマトリックスディスプレイに使用することができる。有機半導体、集積半導体スイッチング及びその使用に関する概観は、例えばElectronics 2002、第15巻、38頁又はH.Klauk(編集者)、Organic Electronics、Materials、Manufacturing and Applications、Wiley−VCH2006に記載されている。
【0003】
電界効果トランジスタは、薄い導電チャンネルの導電性が2個の電極(いわゆる"ソース"及び"ドレイン")間で、薄い絶縁層によって導電チャンネルと分離されている第3の電極(いわゆる"ゲート")によって制御されている3電子素子である。電界効果トランジスタの最重要特性は、電荷キャリアの移動度であり、これはトランジスタのスイッチ速度及びスイッチを入れた状態及びスイッチを切った状態の電流間の比、即ち"オン/オフ比"を決定する。
【0004】
有機電界効果トランジスタにはこれまで2つの主な種類の化合物が使用されている。2種類の化合物は連続共役単位を有し、分子量及び構造に応じて共役ポリマー及び共役オリゴマーに分けられる。
【0005】
オリゴマーは通常単一の分子構造及び10000ダルトンより下の分子量を有する。ポリマーは、通常一つの分子量分布を有する均一な反復単位の鎖から成る。しかし、オリゴマーとポリマーの間には流動的な遷移性が存在する。
【0006】
オリゴマーとポリマーの区別でこれらの化合物の加工で根本的な相違が存在することがしばしば指摘されている。オリゴマーは、蒸発可能であることが多く、蒸着法により支持体に塗布される。もはや蒸発可能でなく、従って、その他の方法により塗布される化合物が、その分子構造とは無関係に、ポリマーと称されることが多い。ポリマーでは通常液体媒体、例えば有機溶剤に可溶性であり、従って相応する塗布方法により塗布することができる化合物が求められる。極めて一般的な塗布方法は、例えばスピンコーチング("Spin−Coating")である。特に優れた方法は、半導電性化合物のインクジェット法による塗布である。この方法では半導電性化合物の溶液を微細滴の形で支持体に塗布し、乾燥させる。この方法により塗布の間に構造化を行うことができる。この塗布方法の詳細は例えばNature、第401巻、685頁に記載されている。
【0007】
通常簡単な方法で割安な有機集積半導体スイッチングを得るための大いなる可能性は、湿式化学方法にある。
【0008】
価値の高い有機半導体スイッチングを製造するための重要な前提条件は、化合物が極めて高い純度であることである。半導体では配列現象が大きな役割を演じる。化合物の均一なアラインメント及び粒界の形の阻害は半導体特性の著しい低下を招くので、純度のあまり高くない化合物を使用して製造した有機半導体スイッチングは通常使用することができない。残留する不純物は例えば半導電性化合物中に電荷を注入し("ドーピング")、従ってオン/オフ比を低下させるか又は電荷トラップとして働き、それによって移動度を急激に低下させる恐れがある。更に、不純物は半導電性化合物と酸素との反応を開始させ、酸化作用を有する不純物は半導電性化合物を酸化させ、それによって可能な貯蔵−、加工−及び操業時間を短くする恐れがある。
【0009】
通常必要とされる純度は非常に高いので、公知のポリマー化学の方法、例えば洗浄、沈澱及び抽出によっては通常その純度に達することができない。それに対して、オリゴマーは分子的に均一でかつしばしば揮発性である化合物として、比較的簡単に昇華又はクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0010】
半導電性ポリマーの幾つかの重要な例を下記に記載する。ポリフルオレン及びフルオレンコポリマー、例えばポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ビチオフェン)(I)
【化1】
に関しては、0.02cm2/Vsまでの電荷移動度(以下では省略して移動度と記載する)が達成され(Science、2000、第290巻、2123頁)、レジオレギュラーポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(II)
【化2】
では、0.1cm2/Vsまでの移動度でさえ達成された(Science、1998、第280巻、1741頁)。ポリフルオレン、ポリフルオレン−コポリマー及びポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)は、ほぼ全ての長鎖ポリマーと同様に、溶液からの塗布により良好な塗膜を形成し、従って簡単に加工できる。しかし一つの分子量分布を有する高分子ポリマーとしては、真空昇華によっては精製できず、クロマトグラフィーによって精製することも難しい。
【0011】
オリゴマーの半導電性化合物の重要な例は、例えばオリゴチオフェン、特に式(III)
【化3】
による末端アルキル置換基を有するもの及びペンタセン(IV)
【化4】
である。
【0012】
例えばα,α’−ジヘキシルクォーター−、−クインケ−及び−セキシチオフェンに関する典型的な移動度は、0.05〜0.1cm2/Vsである。オリゴチオフェンは通常ホール半導体であり、即ち専らプラスの電荷キャリアが搬送される。
【0013】
化合物の最高移動度は単結晶で得られ、例えば1.1cm2/Vsの移動度は、α,α’−セキシチオフェンの単結晶に関して(Science、2000、第290巻、963頁)及び4.6cm2/Vsはルブレン単結晶に関して(Adv.Mater.、2006、第18巻、2320頁)記載されている。オリゴマーを溶液から塗布すると、移動度は大抵急激に下がる。通常溶液からのオリゴマー化合物の加工における半導電性特性の低下は、中程度の溶解性及びオリゴマー化合物の僅かな塗膜形成性傾向に起因する。従って不均一性は、例えば溶液からの乾燥の間の沈澱に起因する(Chem.Mater.、1998、第10巻、633頁)。
【0014】
従って半導電性ポリマーの良好な加工特性及び塗膜形成特性を半導電性オリゴマーの特性と組み合わせることが試みられてきた。特許明細書US−A6025462には、星状構造を有する導電性ポリマーが記載されており、これは枝分かれ状コア及び共役側鎖基から成るシェルから成る。これはもちろん幾つかの欠点を有する。側鎖基が側鎖で置換されていない共役構造から成る場合には、生じる化合物は難溶性又は不溶性であり、加工可能でない。共役単位を側鎖基で置換する場合には、確かに溶解性の改善はもたらされるが、側鎖基はその立体的要求により内部配向不良及び形態学的障害をもたらし、これによってこれらの化合物の半導電性特性が損なわれる。
【0015】
公開明細書WO02/26859A1には、芳香族共役鎖と結合している共役バックボーンから成るポリマーが記載されている。このポリマーは電子導電性を可能にするジアリールアミン側鎖基を有する。しかしこの化合物はジアリールアミン側鎖基のために半導体としては不適当である。
【0016】
公開明細書EP−A1398341及びEP−A1580217には、半導体として電子部品中に使用し、溶液から加工することができる、コアシェル構造を有する半導電性化合物が記載されている。しかしこの化合物は、加工の間に劣悪な結晶化作用を有する塗膜を生じる傾向があり、これは結晶化された塗膜が高い電荷キャリア運動の前提条件であるので、多くの用途にとって妨げとなる恐れがある。有機半導体の塗膜を温度処理によって後構造化することができることは確かに公知である(deLeeuwその他、WO2005104265)が、しかし化合物の高分子特性が温度処理による完全な後での構造化を妨げる恐れがある。
【0017】
Applied Physics Letters 90、053504(2007)にJangその他は、インクジェット印刷法によるトランジスタの製造を記載している。有機半導体として、α,α’−ジヘキシルクォーターチオフェンを使用した。その際検出された移動度0.043cm2/Vsは材料の蒸着層の移動度に相応する。しかし6μmのトランジスタの非常に小さな電極間隔が選択された。ロール・ツー・ロール大量印刷法ではこのような小さな構造を製造することはできない。最新印刷法は現在約20〜50μmの解像を達成する。この間隔では半導電性層の均質性及び相界面が著しく重要な役割を演じる。
【0018】
Russelその他は、Appl.Phys.Lett.87、222109(2005)に、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)及びα,α’−ジヘキシルクォーターチオフェンから成る混合物の有機電界効果トランジスタにおける半導体層用の使用を記載している。その際、α,α’−ジヘキシルクォーターチオフェンはポリマーにより結合される結晶島を形成する。しかし半導体層の検出された移動度は、α,α’−ジヘキシルクォーターチオフェンに比して僅かなポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)の移動度により制限される。Jap.J.Appl.Phys.(2005)、第44巻L1567頁では、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)及びα,α’−ジヘキシルセキシチオフェンから成る混合物を電界効果トランジスタの製造用に使用する。しかし化合物の十分な溶解性を得るためには溶液を190℃に加熱する必要があり、これは工業的使用には適さない。Adv.Funct.Mater.2007、17、1617−1622には、過飽和溶液から晶出するシクロヘキシル置換されたクォーターチオフェンが記載されている。しかしこのような方法は大量生産を可能にしない。更に、結晶がこの構造上で十分なオーバーラップを有することを保証するためには、電極構造で小さなチャンネル長さを使用する必要がある。このような小さな電極構造の製造にも費用のかさむ石版印刷法が必要であり、これは大量生産用の迅速印刷法では使用することができない。
【0019】
従って溶剤から加工後に改良された特性を有する半導体が求められている。
【0020】
本発明の課題は、一般的な溶剤から加工することができ、良好な特性を有する半導電性膜を生じ、空気中で貯蔵する際に十分安定である有機化合物を提供することであった。このような化合物は、有機半導電性層の広い面積の塗布に極めて好適であろう。
【0021】
化合物が均一な厚さ及び形態の高品質な層を形成し、電子工学的用途に好適であることが特に望ましいであろう。
【0022】
意外にも、オリゴマーの有機化合物及びそのコアシェル構造を有する高分子化合物及び/又はモノマーの線状化合物を有する化合物とのその混合物が、特別な特性を有する特に好適な塗膜を生じることを見出した。その際、オリゴマーの化合物は、フレキシブルな橋を介して相互に結合している線状構造を有する化合物から成る。これは、結晶挙動にプラスの影響を与えるためにこれまで高い純度及び均質性を有する化合物が要求されていたので、意外でありかつ予期できなかった。
【0023】
特にオリゴマーの有機化合物及びそのコアシェル構造を有する高分子化合物及び/又はモノマーの線状化合物を有する化合物とのその混合物から成る塗膜の塗膜形態及びそれによって得られる肉眼的電気特性は、純粋なモノマーの線状化合物又はコアシェル構造を有する純粋な高分子化合物から成る半導体に対して改善されている。
【0024】
本発明の目的は、一般式(M)
【化5】
[式中、Lは、線状共役オリゴマー鎖、有利には場合により置換されたチオフェン−、フェニレン−又はフルオレニル単位を含有するものであり、RA、RBは、相互に無関係に、同一又は異なる、線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基、C3−C8−シクロアルキレン基、1個又は数個不飽和のC2−C20−アルケニレン基、C2−C20−オキシアルキレン基、C2−C20−アラルキレン基又はC2−C20−オリゴ−又はC2−C20−ポリエーテル基、有利には線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基を表し、XA、XBは、相互に無関係に、場合により置換されたビニル基、塩素−、沃素−、ヒドロキシル−、炭素原子1〜3個を有するアルコキシ基、アルコキシシリル−、シリル−、クロロシリル−、シロキサン−、ヒドロキシ−、カルボキシ−、メチル−又はエチルカーボネート−、アルデヒド−、メチルカルボニル−、アミノ−、アミド−、スルホン−、スルホン酸−、ハロゲンスルホニル−、スルホネート−、ホスホン酸−、ホスホネート−、トリクロロメチル−、トリブロモメチル−、シアネート−、イソシアネート−、チオシアネート、イソチオチオシアネート−、シアノ−、ニトロ基又はHから選択した同一又は異なる基を表し、有利にはジシロキサン又はHを表し、Yは、相互に無関係に同一又は異なる基を表すが、有利には場合により置換されたアルコキシシリレン−、シリレン−、クロロシリレン−、メチレン−、ジクロロメチレン−、ジブロモメチレン−又は二価のシロキサン−、ジシロキサン−、カルボキシ−、カーボネート−、アミノ−、アミド−、スルフェート−、ホスホネート−、ホスフェート−又はボレート基から選択した同一基又はS又はO、有利にはエーテル−又は二価のジシロキサン基を表し、nは、1〜10の整数を表し、有利には1〜3の整数を表す]のオリゴマー化合物である。
【0025】
本発明のもう一つの目的は、少なくとも1種の一般式(M)の化合物及びコアシェル構造を有する少なくとも1種の高分子化合物を含有する混合物であるが、その際、コア(K)は珪素及び/又は炭素をベースとする高分子基礎構造を有し、炭素をベースとする結合鎖を介して共役二重結合を有する炭素をベースとする線状オリゴマー鎖少なくとも3個と結合しており、その際、線状共役鎖は、各々少なくとも1個のその他の、共役二重結合なしの、特に脂肪族、芳香脂肪族又はオキシ脂肪族鎖で飽和されている。
【0026】
本発明による態様は、一般式(M)のオリゴマー化合物及びコアシェル構造を有する高分子化合物を質量比99:1〜1:99、有利には10:90〜90:10で含有する混合物である。このような混合物は固体混合物であってもよいが、両方の前記成分を含有する溶液であってもよい。
【0027】
本発明のもう一つの目的は、一般式(M)のオリゴマー化合物及び一般式(P)
【化6】
[式中、Lは、線状共役オリゴマー鎖、有利には場合により置換されたチオフェン−、フェニレン−又はフルオレニル単位を含有するものであり、RC、RDは、相互に無関係に、同一又は異なる、線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基、C3−C8−シクロアルキレン基、1個又は数個不飽和のC2−C20−アルケニレン基、C2−C20−オキシアルキレン基、C2−C20−アラルキレン基又はC2−C20−オリゴ−又はC2−C20−ポリエーテル基、有利には線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基を表し、XC、XDは相互に無関係に、場合により置換されたビニル基、塩素−、沃素−、ヒドロキシル−、炭素原子1〜3個を有するアルコキシ基、アルコキシシリル−、シリル−、クロロシリル−、シロキサン−、ヒドロキシ−、カルボキシ−、メチル−又はエチルカーボネート−、アルデヒド−、メチルカルボニル−、アミノ−、アミド−、スルホン−、スルホン酸−、ハロゲンスルホニル−、スルホネート−、ホスホン酸−、ホスホネート−、トリクロロメチル−、トリブロモメチル−、シアネート−、イソシアネート−、チオシアネート、イソチオチオシアネート−、シアノ−、ニトロ基又はHから選択した同一又は異なる基を表し、有利にはジシロキサン又はHを表す]の少なくとも1種の化合物を含有する混合物である。
【0028】
本発明による態様は、一般式(M)のオリゴマー化合物及び一般式(P)の化合物を質量比99:1〜1:99、有利には20:80〜80:20で含有する混合物である。このような混合物は固体混合物であってもよいが、両方の前記成分を含有する溶液であってもよい。
【0029】
前記の本発明による混合物、即ち一般式(M)のオリゴマー化合物少なくとも1種及び一般式(P)の化合物少なくとも1種又はコアシェル構造を有する高分子化合物少なくとも1種を含有する混合物が溶液である場合には、好適な溶剤は、芳香族物質、エーテル又はハロゲン化脂肪族炭素水素、例えばクロロホルム、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン又はテトラヒドロフラン又はこれらから成る混合物である。
【0030】
コアシェル構造を有する有機高分子化合物は、有利な態様ではオリゴマー又はポリマーである。本発明でオリゴマーとは、1000ダルトンより下の分子量を有する化合物であり、ポリマーとは、1000ダルトン以上の平均分子量を有する化合物である。平均分子量は、測定法により数平均(Mn)又は質量平均(Mw)であってよい。ここでは数平均(Mn)である。
【0031】
本発明でコアシェル構造は、分子レベル上の構造であり、即ちそれは分子の構造自体に関する。
【0032】
線状共役オリゴマー鎖の末端結合位置とは、共役二重結合を有する線状オリゴマー鎖の末端単位の場所であり、それを介してその他の単位との更なる結合はもはや起こらない。末端とはコアから最も離れているという意味である。連続的共役二重結合を有する線状オリゴマー鎖は、以下で略して線状共役オリゴマー鎖と称する。
【0033】
コアシェル構造を有する高分子化合物は有利には、一般式(Z)
【化7】
[式中、Kは、n−官能性コアであり、Vは、結合鎖であり、Lは、線状共役オリゴマー鎖であり、Rは、線状又は枝分かれC2−C20−アルキル基、C3−C8−シクロアルキレン基、1個又は数個不飽和のC2−C20−アルケニル基、C2−C20−アルコキシ基、C2−C20−アラルキル基又はC2−C20−オリゴ−又はC2−C20−ポリエーテル基であり、qは、3以上の整数、有利には4を表す]のコアシェル構造を有する。
【0034】
その際、有利な化合物のシェルは、各々コアと結合しているq−V−L−R構成要素から成る。
【0035】
qが3、4又は6である例では、これは式(Z−3)、(Z−4)又は(Z−6)
【化8】
[式中、K、V、L及びRは、前記したものを表す]の構造である。
【0036】
このような化合物は、多官能性単位から構成されている、即ち分枝状コア、結合鎖、線状共役オリゴマー鎖及び非共役鎖が相互に結合しているように構成されている。
【0037】
多官能性単位から構成されているコアは、有利には樹状又は超高分枝構造を有する。
【0038】
超高分枝構造及びその製造は当業者に自体公知である。超高分枝ポリマー又はオリゴマーは、使用されるモノマーの構造により予め定められる特別な構造を有する。モノマーとしていわゆるABn−モノマー、即ち二つの異なる官能性A及びBを有するモノマーを使用する。この中、官能性(A)は分子当たり1回だけ、もう一つの官能性(B)は数回(n−回)存在する。この二つの官能性A及びBは相互に反応して、例えば重合して、化学結合を形成することができる。モノマー構造により重合の際に樹状構造を有する分枝状ポリマー、いわゆる超高分枝ポリマーが生成する。超高分枝ポリマーは、規則的な分枝部位を有さず、環を有さず、鎖末端に実質的にB−官能性のみを有する。超高分枝ポリマー、その構造、分枝の問題及びその命名法は、珪素をベースとする超高分枝状ポリマーの例について、L.J.Mathias、T.W.Carothers、Adv.Dendritic Macromol.(1995)、2、101−121及びその中に引用されている論文に記載されている。
【0039】
本発明では超高分枝構造は、有利には樹状ポリマーである。
【0040】
本発明で樹状構造は、合成高分子構造であり、これは各々2個以上のモノマーが各々の既に結合したモノマーとの結合によって段階的に構成されており、その結果各段階でモノマーの末端基の数が指数関数的に増加し、最後には球状樹状構造が生じる。このようにして分枝点を有し、中心から規則的な様式で周縁部まで広がる基を有する樹状高分枝構造が形成される。このような構造は、通常当業者に公知の方法により積層的に作られる。層の数は通常世代と称される。各層の分枝数並びに末端基の数は、世代の上昇に伴って増加する。その規則的な構造により、樹状構造は特別な利点を提供することができる。樹状構造、製造法及び命名法は当業者に公知であり、例えばG.R.Newkomeその他著Dendrimers and Dendrons、Wiley−VCH、Weinheim、2001に記載されている。
【0041】
樹状又は超高分枝構造から構成されたコア(以下で略して樹状又は超高分枝コアと称する)に使用可能な構造は、例えばUS−A6025462に記載されているものである。これは、例えば超高分枝構造、例えばUS−A5183862、US−A5225522及びUS−A5270402に記載されているようなポリフェニレン、ポリエーテルケトン、ポリエステル、例えばUS−A5264543に記載されているようなアラミド、例えばUS−A5346984に記載されているようなポリアミド、例えばUS−A6384172に記載されているようなポリカルボシラン又はポリカルボシロキサン、又は例えばUS−A5070183又はUS−A5145930に記載されているようなポリアリーレン又は例えばUS−A4435548及びUS−A4507466に記載されているような樹状構造、例えばポリアレーン、ポリアリーレンエーテル又はポリアミドアミン並びに例えばUS−A4631337に記載されているようなポリエチレンイミンである。
【0042】
しかし、樹状又は超高分枝コアを作るためにその他の構造単位を使用することもできる。樹状又は超高分枝コアの役割は、主として一連の官能性を供給し、それによってマトリックスを形成することであり、このマトリックスには線状共役オリゴマー鎖を有する結合鎖が結合し、それによって配列されてコアシェル構造が得られる。線状共役オリゴマー鎖はマトリックスと結合することによって予備位置調整され、従ってその有効性が高められる。
【0043】
樹状又は超高分枝コアは、線状共役オリゴマー鎖を有する結合鎖の結合に好適である多数の官能性−結合部の意味−を有する。特に樹状コア及び超高分枝構造から成るコアは、少なくとも3個、有利には少なくとも4個の官能性を有する。
【0044】
樹状又は超高分枝コア中の有利な構造は、1,3,5−フェニレン−単位(式V−a)及び式(V−b)から(V−e)
【化9】
[式中、式(V−c)及び(V−d)の単位中でa、b、c及びdは相互に無関係に0、1、2又は3を表す]の単位であり、その際、式(V−a)から(V−e)の多数の同一又は異なる単位が相互に結合している。
【0045】
式(V−a)から(V−e)並びに下記で使用される式中の*印の位置は、結合位置を表す。単位(V−a)から(V−e)は、これら相互を介してか又は結合鎖を介して線状共役オリゴマー鎖(L)と結合する。
【0046】
式(V−a)の単位から成る樹状鎖(K)の例は下記である:
【化10】
【0047】
*印の位置で結合鎖(V)を介して線状共役オリゴマー鎖(L)との結合が行われる。
【0048】
コアシェル構造を有する高分子化合物のシェルは、結合鎖(V)、線状共役オリゴマー鎖(L)及び非共役鎖(R)から構成されている。一般式(M)のオリゴマー化合物は、線状共役オリゴマー鎖(L)及び末端官能性(X)及び架橋単位(Y)を有する非共役鎖(R)から形成される。一般式(P)の化合物は、線状共役鎖(L)及び末端官能性(X)を有する非共役鎖(R)から形成される。
【0049】
結合鎖(V)は、有利には高い可撓性、即ち高い分子(内)易動性を有し、それによってコアの周りにセグメントL−Rの幾何学的配置を生じるものである。可撓性は、本発明では分子(内)で易動性であると解する。
【0050】
結合鎖としては、基本的には下記構造特徴を有する線状又は分枝鎖が好適である:
・単結合によって炭素原子と結合した炭素原子、
・炭素と結合した水素原子、
・炭素と単結合によって結合した酸素原子、
・炭素と単結合によって結合した珪素原子及び/又は
・酸素と単結合によって結合した珪素原子、これらは有利には合計6〜60個の原子から成り、有利には環構造を有さない。
【0051】
好適な結合鎖は、特に有利には線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン鎖、例えば、エチレン−、n−ブチレン−、n−ヘキシレン−、n−オクチレン及びn−ドデシレン−鎖、線状又は枝分かれポリオキシアルキレン鎖、例えば−OCH2−、−OCH(CH3)−又は−O−(CH2)4−セグメントを含有するオリゴエーテル鎖、線状又は枝分かれシロキサン鎖、例えばジメチルシロキサン構造単位を有するもの及び/又は直鎖又は枝分かれカルボシラン鎖、即ち珪素−炭素−単結合を含有する鎖(その際、鎖中の珪素及び炭素原子は相互に統計的又はブロック状に配置されていてよい)、例えば−SiR2−CH2−CH2−CH2−SiR2−構造単位を有するものである。
【0052】
一般式(M)、(P)及び(Z)の線状共役オリゴマー鎖(L)としては、このような導電性又は半導電性オリゴマー又はポリマーを形成する構造を有する鎖が全て原則として好適である。これらは例えば、ホモポリマー又は−オリゴマーとして又はコポリマー又は−オリゴマーとして使用することができる、場合により置換されたポリアニリン、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリフェニレン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリイソナフテン、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレンである。有利には線状共役オリゴマー鎖として使用することができるこのような構造の例は、一般式(VI−a)から(VI−f)
【化11】
[式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なるものであってよく、水素、直鎖又は枝分かれC1−C20−アルキル−又はC1−C20−アルコキシ基を表し、有利には同一であり、水素を表し、R4は、同一又は異なるものであってよく、水素、直鎖又は枝分かれC1−C20−アルキル基又はC1−C20−アルコキシ基、有利には水素又はC6−C12−アルキル基を表し、R5は、水素又はメチル−又はエチル基、有利には水素を表し、s、tは相互に無関係に0〜4の整数を表しかつs+t≧3、有利にはs+t=4である]の単位2〜10個、特に有利には2〜8個から成る鎖である。
【0053】
式(V−a)から(V−f)の*印を付けた位置は結合位置を表し、これを介して単位(V−a)から(V−f)が相互に結合して線状共役オリゴマー鎖を形成するか又は各鎖末端で非共役鎖(R)を有する。
【0054】
場合により置換された2,5−チオフェン(VI−a)又は(VI−b)又は場合により置換された1,4−フェニレン(VI−c)から成る単位を含有する、線状共役オリゴマー鎖が特に有利である。最初の数2,5−又は1,4−は、これを介して結合が行われる単位中の位置を示す。
【0055】
ここ及び以下で置換されているとは、その他に記載のない限り、アルキル−、特にC1−C20−アルキル基又はアルコキシ−、特にC1−C20−アルコキシ基での置換を意味する。
【0056】
場合により置換された2,5−チオフェン(VI−a)又は2,5−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(VI−b)から成る単位を有する線状共役オリゴマー鎖が極めて特に有利である。
【0057】
一般式(M)、(P)及び(Z)中でLで示される線状共役オリゴマー鎖は、末端結合位置で各々非共役鎖(R)で飽和されている。非共役鎖は有利には、高い可撓性、即ち高い分子(内)易動性を有し、それによって溶剤分子と良好に相互作用し、従って良好な溶解性を生じるものである。可撓性は、本発明では分子(内)で易動性であるという意味を有すると解される。非共役鎖(R)は、場合により酸素により中断された炭素原子2〜20個、有利には炭素原子6〜20個を有する直鎖又は枝分かれ脂肪族、不飽和又は芳香脂肪族鎖又はC3−C8シクロアルキレンである。脂肪族及びオキシ脂肪族基、即ちアルコキシ基又は酸素により中断された直鎖又は枝分かれ脂肪族基、例えばオリゴ−又はポリエーテル基又はC3−C8シクロアルキレンが有利である。特に枝なしC2−C20−アルキル−又はC2−C20−アルコキシ基又はC3−C8シクロアルキレンが有利である。好適な鎖の例は、アルキル基、例えばn−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル及びn−ドデシル基並びにアルコキシ基、例えばn−ヘキシルオキシ−、n−ヘプチルオキシ−、n−オクチルオキシ、n−ノニルオキシ−、n−デシルオキシ−及びn−ドデシルオキシ基又はC3−C8シクロアルキレン、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルである。
【0058】
各々末端結合位置で非共役鎖により飽和されている、線状共役オリゴマー鎖から成る一般式(Z)の構造要素L−Rの例としては、一般式(VI−a−R)及び(VI−b−R)
【化12】
[式中、Rは一般式(Z)で前記したものを表し、pは2〜10、有利には2〜8、特に有利には2〜7の整数である]の構造要素が挙げられる。
【0059】
一般式(M)の構造要素−RA−L−RB−の例としては、一般式(VI−a−RA/B)及び(VI−b−RA/B)
【化13】
[式中、RA及びRBは、一般式(M)で前記したものを表し、pは2〜10、有利には2〜8、特に有利には4〜6の整数である]の構造要素が挙げられる。
【0060】
コアシェル構造を有する高分子化合物の有利な態様は、樹状コア中にシロキサン−及び/又はカルボシラン単位、結合鎖として、線状枝なしアルキレン基、線状共役オリゴマー鎖として2〜8個、有利には4〜6個の場合により置換されたチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有する非置換オリゴチオフェン鎖及び/又はオリゴ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)鎖並びにC6−C12−アルキル基を可撓性非共役鎖として含有する、コアシェル構造である。
【0061】
このための例として、下記の式(Z−4−a)及び(Z−4−b)
【化14】
[式中、(Z−4−a)及び(Z−4−b)中で、nは0又は1を表し、mは3又は4を表し、その際、n+m=4であるという条件であり、有利にはnは0であり、mは4である]の化合物が挙げられる。
【0062】
一般式(M)のオリゴマー化合物の有利な態様は、線状共役オリゴマー鎖(L)として2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)の場合により置換されたチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有する、場合により置換されたチオフェン単位、特に有利には、場合により置換されたオリゴチオフェン鎖及び/又はオリゴ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)鎖を有するものである。本発明のもう一つの有利な態様では、一般式(M)のオリゴマー化合物は、非共役鎖RA及びRBとして、同一又は異なる、線状又は枝分かれC1−C12−アルキレン基及び末端基XA及びXBとして水素を含有する。本発明のもう一つのなお有利な態様では、一般式(M)のオリゴマー化合物で、Yはカーボネート−、エーテル−又は二価のジシロキサン基を表し、特に有利にはエーテル−又は二価のジシロキサン基を表す。本発明の特に有利な態様は、nが1を表す一般式(M)のオリゴマー化合物を含有する。
【0063】
このための例として、下記の式(M−V)から(M−VIII)
【化15】
の化合物が挙げられる。
【0064】
本発明の有利な態様は、1種以上の一般式(Z)の化合物及び1種以上の一般式(M)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は10:90〜90:10で含有する混合物であるが、その際、式(Z)及び(M)の成分は、同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有する線状オリゴマー鎖を有する。特に、1種以上の一般式(Z)の化合物及び1種以上の一般式(M)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は10:90〜90:10で含有し、その際、式(Z)及び(M)の成分が、オリゴマー鎖に同じ数の同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有するような線状オリゴマー鎖を有する、混合物が特に有利である。
【0065】
一般式(P)のモノマーの線状化合物の有利な態様は、線状共役オリゴマー鎖(L)として、2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)又は(VI−c)の芳香族単位、極めて特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)、(VI−b)又は(VI−c)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−又はチオフェン−フェニレン鎖から成る芳香族単位を有する、場合により置換されたチオフェン単位、有利には場合により置換されたオリゴチオフェン鎖及び/又はオリゴ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)鎖及び/又はチオフェン−フェニレン鎖を有するものである。本発明のもう一つの有利な態様では、一般式(P)の化合物は、非共役鎖RC及びRDとして、同一又は異なる、線状又は枝分かれC1−C12−アルキレン基及び末端基XA及びXBとして水素を含有する。
【0066】
このための例として、下記の式(P−I)から(P−III)
【化16】
の化合物が挙げられる。
【0067】
化合物P−I、P−II及びP−IIIは、例えばChem.Mater.(1998)、第10巻、457頁、J.Mater.Chem.(2003)、第13巻、197頁、J.Am.Chem.Soc.(2005)、第127巻、1348頁及びEP−A153155から公知である。
【0068】
本発明の有利な態様は、1種以上の一般式(M)の化合物及び1種以上の一般式(P)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は20:80〜80:20で含有する混合物であるが、その際、式(M)及び(P)の成分は、同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有する線状オリゴマー鎖を有する。特に、1種以上の一般式(M)の化合物及び1種以上の一般式(P)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は20:80〜80:20で含有し、その際、式(M)及び(P)の成分が、オリゴマー鎖に同じ数の同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有するような線状オリゴマー鎖を有する、混合物が有利である。
【0069】
本発明の有利な態様は、少なくとも1種の一般式(M)の化合物、コアシェル構造を有する少なくとも1種の高分子化合物及び少なくとも1種の一般式(P)の化合物を含有する混合物である。その際、一般式(M)、(P)及び(Z)の各々の化合物に関しては前記の有利な範囲が該当する。
【0070】
本発明の有利な態様は、1種以上の一般式(Z)の化合物、1種以上の一般式(M)の化合物及び1種以上の一般式(P)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は10:90〜90:10で含有する混合物であるが、その際、式(Z)、(M)及び(P)の成分は、同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有する線状オリゴマー鎖を有する。特に、1種以上の一般式(Z)の化合物、1種以上の一般式(M)の化合物及び1種以上の一般式(P)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は10:90〜90:10で含有し、その際、式(Z)、(M)及び(P)の成分が、オリゴマー鎖に同じ数の同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有するような線状オリゴマー鎖を有する、混合物が特に有利である。本発明による混合物中の前記質量比は、例えば1種以上の一般式(Z)及び1種以上の一般式(M)の化合物が一緒になって1質量割合及び1種以上の一般式(P)の化合物が混合物の99質量割合を形成すると解される。
【0071】
本発明のもう一つの目的は更に、少なくとも1種の一般式(P)の化合物及びコアシェル構造を有する少なくとも1種の高分子化合物を含有する混合物であるが、その際、コアは珪素及び/又は炭素をベースとする高分子基礎構造を有し、少なくとも3個の、炭素をベースとする結合鎖を介して炭素をベースとする共役二重結合を有する線状オリゴマー鎖と結合しておりかつその際、線状共役鎖は各々少なくとも1個のその他の、共役二重結合なしの、特に脂肪族、芳香脂肪族又はオキシ脂肪族鎖で飽和されている。その際、一般式(P)及び(Z)の各化合物に関しては前記した有効範囲が該当する。
【0072】
本発明の有利な態様は、1種以上の一般式(Z)の化合物及び1種以上の一般式(P)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は20:80〜80:20で含有する混合物であるが、その際、式(Z)及び(P)の成分は、同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有する線状オリゴマー鎖を有する。特に、1種以上の一般式(Z)の化合物及び1種以上の一般式(M)及び(P)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は20:80〜80:20で含有し、その際、式(Z)、(M)及び(P)の成分が、オリゴマー鎖に同じ数の同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有するような線状オリゴマー鎖を有する、混合物が特に有利である。
【0073】
本発明による一般式(M)のオリゴマー化合物から成る層及び一般式(M)のオリゴマー化合物及びコアシェル構造を有する高分子化合物及び/又は一般式(P)のモノマーの線状化合物を含有する本発明による混合物から成る層及びコアシェル構造を有する高分子化合物及び一般式(P)のモノマーの線状化合物を含有する層は、有利には導電性又は半導電性である。本発明の特に有利な目的は、半導電性であるような化合物又は混合物の層である。少なくとも10−4cm2/Vsの電荷キャリアの移動度を有するような化合物又は混合物の層が特に有利である。電荷キャリアは例えばプラスのホール電荷である。
【0074】
本発明による化合物及び混合物は、典型的には慣用の有機溶剤に良好に溶解性であり、従って溶液からの加工に極めて好適である。特に好適な溶剤は、芳香族物質、エーテル又はハロゲン化脂肪族炭化水素、例えばクロロホルム、トルエン、ベンゼン、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン又はテトラヒドロフラン又はこれらから成る混合物である。本発明による一般式(M)のオリゴマー化合物及び本発明による一般式(M)の化合物及びコアシェル構造を有する高分子化合物及び/又は一般式(P)の化合物を含有する混合物が、相応するモノマーの化合物に対して、大きな単結晶範囲を有する均質で広い面積の湿潤性塗膜を生じることは特に意外である。更に、成分の混合によって層の内部秩序又は形態を損なわないことは意外である。従って本発明による化合物又は混合物は、広い面積のコーティングに好適であり、相応してこれらの塗膜中で良好な半導電性特性を有する。本発明による半導電性化合物又は混合物は更に卓越した熱安定性及び良好な老化挙動を有する。
【0075】
本発明による一般式(M)のオリゴマー化合物及びコアシェル構造を有する高分子化合物及び/又は一般式(P)の化合物とのその混合物又は一般式(P)の化合物及びコアシェル構造を有する高分子化合物から成る混合物は、例えば公知モノマー化合物に対して、慣用の有機溶剤中の高められた溶解性が達成されるという利点を有する。これは半導体層への化合物の加工を容易にする。
【0076】
本発明による化合物及び混合物の製造は、種々の方法で可能である。
【0077】
コアシェル構造を有する高分子化合物の製造は、EP−A1580217及びPonomarenkoその他、Chem.Mater.2006、第18巻、4101頁に記載されている。一般式(P)の化合物の製造は、例えばEP−A1531155、EP−A1531154、EP−A1439173、WO−A2005/080369、Kirchmeyerその他、J.Mater.Chem.2003、第13巻、197頁又はPonomarenkoその他、Polymer Preprints2005、第46巻、576頁に記載されている。本発明による一般式(M)のオリゴマー化合物の製造は例えば例1−3に記載されているように行うことができる。
【0078】
一般式(M)のオリゴマー化合物と一般式(P)のモノマーの線状化合物及び/又はコアシェル構造を有する高分子化合物の混合又はコアシェル構造を有する高分子化合物及び一般式(P)の化合物の混合は、相応する溶剤中で共−溶解により行うことができる。溶解工程は有利には加熱して行う。得られた溶液は安定であり、加工可能である。
【0079】
更に成分の混合を一つの成分をその他の成分の製造の間に添加することによって製造することができ、例えば一般式(P)のモノマーの化合物を一般式(M)のオリゴマーの化合物の合成の間に添加するか又は一般式(M)のオリゴマーの化合物をコアシェル構造を有する高分子化合物の合成の間に添加して、単離する際に本発明による混合物が得られる。
【0080】
本発明による混合物は更に好適な支持体上で個々の成分の溶液を一緒にすることによって製造することもできる。支持体としては例えば、構造付与珪素ウェファー又は被覆ガラス支持体(例えばITOで被覆した)を使用することができる。本発明による混合物の個々の成分を例えば別々の滴加塗布法、例えばインクジェット印刷法により、支持体に塗布することができる。もう一つの方法は例えば、スピンコーティングで支持体に同時にか又は相互に別々に個々の成分を添加することによる本発明による混合物の製造である。
【0081】
本発明による化合物及び混合物の特性に関して、製造方法はあまり重要な意味を持たない。
【0082】
本発明による化合物及び混合物は、常用の溶剤、例えば芳香族物質、エーテル又はハロゲン化脂肪族炭化水素、例えばクロロホルム、トルエン、ベンゼン、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン又はテトラヒドロフランに少なくとも0,1質量%、有利には少なくとも1質量%、特に有利には少なくとも5質量%まで可溶性である。
【0083】
本発明による化合物及び混合物は、蒸発させた溶液から均一な厚さ及び形態の高品質な層を形成し、従って電子工学的用途に好適である。
【0084】
最後に、本発明の目的は、本発明による化合物及び混合物の電子部品、例えば電界効果トランジスタ、発光構造素子、例えば有機発光ダイオード又は光起電力電池、レーザー及びセンサーにおける半導体としての使用である。
【0085】
これらの目的用には層の形の本発明による化合物及び混合物が有利である。
【0086】
半導体としての機能を有効に確保するために、本発明による化合物及び混合物は、十分な移動度、例えば少なくとも10−4cm2/Vsを有する。電荷移動度は、例えばM.Pope及びC.E.Swenberg、Electronic Processes in Organic Crystals and Polymers、第2版、709〜713頁(Oxford Unversity Press、New York Oxford 1999)に記載されているようにして測定することができる。
【0087】
使用するために、本発明による化合物及び混合物を好適な支持体、例えば電気又は電子構造を具備した珪素ウェファー、ポリマーフィルム又はガラス板上に塗布する。塗布用に原則として全ての塗布法が挙げられる。有利には本発明による化合物及び混合物を液体相から、即ち溶液から塗布し、引き続き溶剤を蒸発させる。溶液からの塗布は、自体公知の方法により、例えば吹き付け、浸漬、印刷及びナイフ塗布によって行うことができる。特にスピンコーティング及びインクジェット印刷による塗布が有利である。
【0088】
本発明による化合物及び混合物から製造した層は、塗布後更に例えば温度処理、例えば液晶相を通過させて変性することもできるし、例えばレーザーアブレーションにより構造化するために変性することができる。
【0089】
本発明のもう一つの目的は、本発明による化合物及び混合物を半導体として含む電子部品である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】例1によるOFETの電気特有値を表す図。
【図2】例2によるOFETの電気特有値を表す図。
【図3】例3によるOFETの電気特有値を表す図。
【図4】例4によるOFETの電気特有値を表す図。
【図5】例5によるOFETの電気特有値を表す図。
【図6】例6によるOFETの電気特有値を表す図。
【図7】例7によるOFETの電気特有値を表す図。
【図8】例8によるOFETの電気特有値を表す図。
【図9】例9によるOFETの電気特有値を表す図。
【図10】例10によるOFETの電気特有値を表す図。
【図11】例11によるOFETの電気特有値を表す図。
【図12】比較例3によるOFETの電気特有値を表す図。
【図13】比較例4によるOFETの電気特有値を表す図。
【図14】例4によるOFETの電気特有値の結果を表す図。
【0091】
次に本発明を実施例につき詳説するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0092】
実施例
式Zの化合物は、例えばEP−A1580217及びChem.Mater.2006、第18巻、4101頁から公知の方法により製造した。式Pの化合物は、例えばEP−A1439173、J.Mater.Chem.2003、第13巻、197頁、Synthesis 1993、1099頁又はChem.Mater.1993、第5巻、430頁から公知の方法により合成した。式(M)の本発明による化合物は、例1−3に記載したような合成により製造することができる。
【0093】
反応容器は全て使用前に常用の保護ガス方法により加熱し、窒素でフラッシュした。
OFET−製造:
(a)OFET用の支持体及び洗浄
厚さ300nmの熱成長酸化物層を有する片面を研磨したp−添加珪素ウェファー(Sil−Chem)を切断して25mm×25mmの大きさの支持体にした。支持体をまず注意深く洗浄した。付着する珪素破片を蒸留水を流しながら無塵室タオル(Bemot M−3、Ashaih Kasei Corp.)で擦り、引き続き支持体を超音波浴中で2%水/Mucasol水溶液中で60℃で15分間洗浄した。その後支持体を蒸留水ですすぎ、遠心分離機で遠心脱水して乾燥させた。塗布直前に研磨した表面をUV/オゾン反応器(PR−100、UVP Inc.、Cambridge、GB)中で10分間洗浄した。
(b)誘電層
i.誘電中間層として、オクチルジメチルクロロシラン(ODMC)(Aldrich、246859)を使用した。ODMCをペトリ皿に底部がちょうど覆われるように注入した。その上に、縦に置いた洗浄済みSi−支持体が入っているマガジンを置いた。全てを裏返したビーカーで覆い、ペトリ皿を70℃に加熱した。支持体をオクチルジメチルクロロシラン高含有雰囲気中で15分間保持した。
ii.ヘキサメチルジシラザン(HMDS):誘電中間層用に使用されるヘキサメチルジシラザン(Aldrich、37921−2)をビーカーに注入したが、このビーカー中には、縦に置かれた洗浄済Si−支持体を有するマガジンを入れておいた。シラザンが支持体を完全に覆った。ビーカーを覆い、ホットプレート上で70℃に加熱した。支持体はシラザン中で24時間保持した。次いで支持体を乾燥窒素流中で乾燥させた。
【0094】
例ではODMCを誘電中間層として使用する;HMDSを誘電中間層として使用する場合には、そのことを明示する。
(c)有機半導体
半導体層を塗布するために好適な溶剤中の化合物の溶液を製造した。成分を完全に溶解させるために、溶液を60℃で超音波浴中に約1分間置いた。溶液の濃度は0.3質量%であった。
【0095】
誘電中間層を具備した支持体を研磨した面を上からスピンコーター(Carl Suess、RC8 with Gyrset(R))のホールダーに載せ、フェーンで約70℃に加熱した。まだ熱い溶液約1mlを表面に滴加し、有機半導体を有する溶液を1200rpmで加速度500rev/sec2及びオープンGyrset(R)で支持体にスピンコーティングした。こうして製造した塗膜をホットプレート上で70℃で3分間乾燥させた。層は均質であり、混濁は全くなかった。
(d)電極の塗布
ソース・ドレイン用電極をついでこの層の上に蒸着した。このために、2個の連動カムから成る4つのカットアウトを有する電気メッキ製造したNiフィルムから成るシャドーマスクを使用した。個々のカムの歯は、幅100μm及び長さ4.7mmであった。マスクを塗布した支持体表面に載せ、裏側から磁石で固定した。
【0096】
蒸着設備(Univex 350、Leybold)中で支持体に金を蒸着させた。こうして製造した電極構造は100μmの間隔で長さ14.85cmを有した。
c)容量測定
装置の電気容量を、同じに製造したが、有機半導体層は有さない支持体を同じシャドーマスクの後ろに並行して蒸着して、測定した。p−添加珪素ウェファーと蒸着した電極の間の容量をマルチメーター、MetraHit18S、Gossen Metrawatt GmbHを用いて測定した。測定した容量は、この装置に関してC=0.7nF、電極形態により面積容量は、C=6.8nF/cm2であった。
f)電気特性
特性曲線を2個の電流電圧源(Keithley238)を用いて測定した。一つの電圧源はソース・ドレインで電位を生じさせ、その際流れる電流を測定し、一方二番目の電圧源はゲート・ソースで電位を生じさせる。ソース・ドレインを貼り付けたAu棒と接触させ、高添加Siウェファーはゲート電極を形成し、酸化物を引掻きとった裏面を介して接触させた。特性曲線の作成及び評価は、例えば"Organic thin−film transistors:A review of recent advances"、C.D.Dimitrakopoulos、D.J.Mascaro、IBM J.Res&Dev.第45巻、No.1、2001年1月に記載されているような、公知方法により行った。
【0097】
電気特性表示(図1)からこのトランジスタ構造に関して適切な下記の特有値が得られた:
i.移動度(mobility)
ii.オン/オフ比(On/Off−Ratio)
ID(UG=−60V)/ID(UG=0V)
注:オフ電流測定ID(UG=0V)の感度は不完全な絶縁ケーブルにより約1nAに制限される。
iii.いき値電圧(threshold voltage)
トランジスタ測定結果は、第1表にまとめる。
【0098】
例1
1,3−ビス{11−[5’’’−ヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチエン−5−イル]ヘキシル}−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−V):
【化17】
【0099】
5−(ヘキス−5−エン−1−イル)−5’’’−ヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチオフェン0.50g(1.0ミリモル)をトルエン10ml及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン80μlに溶解させ、キシレン中の白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの0.1モル溶液10μlを加えた。混合物を密閉装置中で100℃に加熱した。10時間後に1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン20μlを添加し、再び100℃で10時間攪拌した。反応溶液をシリカゲルを充填したクロマトグラフィーカラムに入れ、トルエンで溶離した。得られた生成物をトルエンから再結晶させた。収量:橙色の固体(M−V)0.16g(理論値の28%)。
【0100】
【0101】
OFETを製造するために、物質を60℃でトルエン1部及びクロロホルム1部から成る混合物に0.3質量%で溶解させた。視覚的に均質な塗膜が得られた。このOFETの電気特有値の結果(図1)を第1表にまとめる。
【0102】
例2
a)1,3−ビス[11−(2,2’−ビチエン−5−イル)ウンデシル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−VI−a)の製造
【化18】
【0103】
11−(2,2’−ビチエン−5−イル)ウンデセン5.37gを無水ヘキサン30mlに溶解させ、テトラメチルジシロキサン1.42lを添加し、溶液を0℃に冷却した。この温度でキシレン中の白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの0.1モル溶液160μlを加えた。反応を0℃で1時間、次いで室温で16時間後攪拌した。反応溶液をシリカゲルを充填したクロマトグラフィーカラムに入れ、ヘキサンで溶離した。収量:無色から淡黄色の油状物(M−VI−a)5.24g(理論値の84%)。
【0104】
【0105】
b)1,3−ビス[11−(5’−ブロモ−2,2’−ビチエン−5−イル)ウンデシル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−VI−b)の製造:
【化19】
【0106】
1,3−ビス[11−(2,2’−ビチエン−5−イル)ウンデシル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−VI−a)(9.82g、12.7ミリモル)をDMF(40ml)及びトルエン(40ml)から成る混合物に溶解させ、−10℃でDMF(70ml)中のNBS(4.55g、25.5ミリモル)から成る溶液を1時間以内に滴加した。引き続き−10℃で30分間及び室温で16時間後攪拌した。溶液を水(1000ml)に入れ、塩化メチレンで振出した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶剤を除去し、残分を真空中で乾燥させた。収量:淡黄色の油状物(M−VI−b)8.59g(理論値の73%)。
FD MS分析:M・+100%、m/e=928
【0107】
c)1,3−ビス{11−[5’’’−ヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチエン−5−イル]ウンデシル}−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−VI)の製造:
【化20】
【0108】
1,3−ビス[11−(5’−ブロモ−2,2’−ビチエン−5−イル)ウンデシル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−VI−b)(6.32g、6.8ミリモル)を4,4,5,5−テトラメチル−2−[5’−ヘキシル−2,2’−ビチエン−5−イル]−1,3,2−ジオキサボロラン(6.13g、16.3ミリモル)及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(1.54g、1.3ミリモル)と一緒に無水テトラヒドロフラン(130ml)及び2MのNa2CO3水溶液85ml中で8時間還流下に沸騰させた。反応混合物を水(300ml)及び1MHCl(90ml)から成る混合物中に入れ、トルエンで振出した。有機相を分離し、乾燥させ、溶剤を除去し、残分をクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離剤ヘキサン:トルエン1:1、55℃)にかけた。得られた粗生成物をトルエン:ヘキサンから再結晶させた。収量:帯黄橙色粉末(M−VI)3.45g(理論値の40%)。
【0109】
【0110】
融点(DSC):190℃
OFETを製造するために、物質を60℃でトルエン1部及びクロロホルム1部から成る混合物に0.3質量%で溶解させた。視覚的に均質な塗膜が得られた。このOFETの電気特有値の結果(図2)を第1表にまとめる。
【0111】
例3
1,3−ビス{11−[5’’’−(2−メチルプロピル)−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチエン−5−イル]ウンデシル}−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−VII):
【化21】
【0112】
5−(2−メチルプロピル)−5’’’−ウンデセ−10−エン−1−イル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチオフェン0.45g(0.83ミリモル)及び1−[11−(5’’’−(2−メチルプロピル)−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチエン−5−イル)ウンデシル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン0.67g(1.0ミリモル)をトルエン30ml中で攪拌した。反応混合物を軽く温めることによって溶液にし、引き続きガス抜きした。白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの0.1モル溶液20μlを加え、溶液を75℃に加熱した。6時間後、反応溶液をシリカゲルを充填したカラムを用い熱時クロマトグラフィーにかけ(溶離剤:トルエン、70℃)、得られた生成物をトルエンから再結晶させた。収量:帯黄橙色粉末(M−VII)0.69g(理論値の69%)。
【0113】
【0114】
OFETを製造するために、物質を60℃でトルエン1部及びクロロホルム1部から成る混合物に0.3質量%で溶解させた。視覚的に均質な塗膜が得られた。このOFETの電気特有値の結果(図3)を第1表にまとめる。
【0115】
例4:
式(P−I)の化合物及び式(M−VI)の化合物を質量比1:2で含有する溶液をクロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る混合物中で製造した。物質混合物は視覚的に均質な塗膜を生じた。混合物は空気中で長時間貯蔵する際に、図14が示すように、安定のままであった。
【0116】
このOFETの電気特有値の結果(図4)を第1表にまとめる。
【0117】
例5:
式(P−I)の化合物及び式(M−VII)の化合物を質量比1:2で含有する溶液をクロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る混合物中で製造した。物質混合物は視覚的に均質な塗膜を生じた。
【0118】
このOFETの電気特有値の結果(図5)を第1表にまとめる。
【0119】
比較例1:
有機半導体として、クロロホルム1質量部及びトルエン1質量部中の式(P−I)の化合物の溶液を製造した。スピンコーティングした塗膜は顕微鏡で個々の結晶構造を示した。
【0120】
電気特性曲線を測定することはできなかった。
【0121】
例6:
有機半導体として、クロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る溶剤混合物中の質量比85:15の式(Z−4−a−1)
【化22】
の化合物及び式(M−VI)
【化23】
の化合物から成る溶液を製造した。溶液の濃度は0.3%(質量)であった。
【0122】
このOFETの電気特有値の結果(図6)を第1表にまとめる。
【0123】
例7:
有機半導体として、クロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る混合物中の質量比5:4:1の式(Z−4−a−1)の化合物、式(M−VI)の化合物及び式(Z−4−a−2)
【化24】
の化合物から成る溶液を製造した。視覚的に良好な品質の塗膜が得られた。
【0124】
このOFETの電気特有値の結果(図7)を第1表にまとめる。
【0125】
例8:
有機誘電層としてヘキサメチルジシラザンを使用した。有機半導体として、クロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る混合物中の質量比1:1の化合物(Z−4−a−1)及び式(P−I)の化合物
【化25】
から成る溶液を製造した。この物質混合物も視覚的に均質な塗膜を生じた。
【0126】
このOFETの電気特有値の結果(図8)を第1表にまとめる。
例9
有機半導体として、クロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る混合物中の質量比17:3:20の式(Z−4−a−1)の化合物、式(M−VI)の化合物及び式(P−I)の化合物から成る溶液を製造した。視覚的に良好な品質の均質な塗膜が得られた。
【0127】
このOFETの電気特有値の結果(図9)を第1表にまとめる。
【0128】
例10:
有機半導体として、クロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る混合物中の質量比13:2:5の化合物(Z−4−a−1)、化合物(M−VI)及び化合物(P−I)から成る溶液を製造した。視覚的に良好な品質の均質な塗膜が得られた。
【0129】
このOFETの電気特有値の結果(図10)を第1表にまとめる。
【0130】
例11:
有機半導体として、純粋なトルエン中の質量比1:1の式(Z−4−a−3)
【化26】
の化合物及び化合物(P−I)から成る溶液を製造した。視覚的に良好な品質の均質な塗膜が得られた。
【0131】
このOFETの電気特有値の結果(図11)を第1表にまとめる。
【0132】
比較例2:
有機半導体として、純粋なトルエン中の化合物(Z−4−a−1)の溶液を使用した。得られた塗膜は視覚的に不規則な構造を示した。
【0133】
電気特性曲線を測定することはできなかった。
【0134】
比較例3:
製造は比較例2と同様にして行ったが、支持体上に有機誘電層は塗布しなかった。得られた塗膜は視覚的に不規則な構造を示す。
【0135】
このOFETの電気特有値の結果(図12)を第1表にまとめる。
【0136】
比較例4:
有機半導体として、純粋なトルエン中の化合物(Z−4−a−3)の溶液を製造した。得られた塗膜は視覚的に不規則な構造を示した。
【0137】
このOFETの電気特有値の結果(図13)を第1表にまとめる。
【0138】
トランジスタ測定結果を第1表にまとめる。
【0139】
第1表:
【表1】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された半導電性を有する、オリゴマーの有機化合物及びそのコアシェル構造を有する高分子化合物及び/又はモノマーの線状化合物との混合物並びにその電子部品における使用に関する。
【0002】
分子電子の分野は、過去15年で有機導電性及び半導電性化合物の発見と共に著しい進歩を遂げた。この時に半導電性又は電気光学特性を有する化合物が多数見出された。分子電子は珪素をベースとする従来の半導体部品の代わりとは一般に考えられていない。そうではなく、分子電子部品は広い面積の被覆に適し、構造的可撓性、低温での加工性及び低コストが必要とされる新しい使用分野を開いてゆくことを前提としている。現在半導電性有機化合物は、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、センサー及び光起電子素子のような使用分野用に開発されている。集積有機半導体スイッチングへのOFETの簡単な構造化及び組み込みによって、珪素技術を用いてはこれまで価格及び珪素の可撓性欠如のために実現することができなかったスマートカード(smart cards)又はプライスタグに関する問題を低価で解決することができる。同じくOFETはスイッチ素子として広面積のフレキシブルなマトリックスディスプレイに使用することができる。有機半導体、集積半導体スイッチング及びその使用に関する概観は、例えばElectronics 2002、第15巻、38頁又はH.Klauk(編集者)、Organic Electronics、Materials、Manufacturing and Applications、Wiley−VCH2006に記載されている。
【0003】
電界効果トランジスタは、薄い導電チャンネルの導電性が2個の電極(いわゆる"ソース"及び"ドレイン")間で、薄い絶縁層によって導電チャンネルと分離されている第3の電極(いわゆる"ゲート")によって制御されている3電子素子である。電界効果トランジスタの最重要特性は、電荷キャリアの移動度であり、これはトランジスタのスイッチ速度及びスイッチを入れた状態及びスイッチを切った状態の電流間の比、即ち"オン/オフ比"を決定する。
【0004】
有機電界効果トランジスタにはこれまで2つの主な種類の化合物が使用されている。2種類の化合物は連続共役単位を有し、分子量及び構造に応じて共役ポリマー及び共役オリゴマーに分けられる。
【0005】
オリゴマーは通常単一の分子構造及び10000ダルトンより下の分子量を有する。ポリマーは、通常一つの分子量分布を有する均一な反復単位の鎖から成る。しかし、オリゴマーとポリマーの間には流動的な遷移性が存在する。
【0006】
オリゴマーとポリマーの区別でこれらの化合物の加工で根本的な相違が存在することがしばしば指摘されている。オリゴマーは、蒸発可能であることが多く、蒸着法により支持体に塗布される。もはや蒸発可能でなく、従って、その他の方法により塗布される化合物が、その分子構造とは無関係に、ポリマーと称されることが多い。ポリマーでは通常液体媒体、例えば有機溶剤に可溶性であり、従って相応する塗布方法により塗布することができる化合物が求められる。極めて一般的な塗布方法は、例えばスピンコーチング("Spin−Coating")である。特に優れた方法は、半導電性化合物のインクジェット法による塗布である。この方法では半導電性化合物の溶液を微細滴の形で支持体に塗布し、乾燥させる。この方法により塗布の間に構造化を行うことができる。この塗布方法の詳細は例えばNature、第401巻、685頁に記載されている。
【0007】
通常簡単な方法で割安な有機集積半導体スイッチングを得るための大いなる可能性は、湿式化学方法にある。
【0008】
価値の高い有機半導体スイッチングを製造するための重要な前提条件は、化合物が極めて高い純度であることである。半導体では配列現象が大きな役割を演じる。化合物の均一なアラインメント及び粒界の形の阻害は半導体特性の著しい低下を招くので、純度のあまり高くない化合物を使用して製造した有機半導体スイッチングは通常使用することができない。残留する不純物は例えば半導電性化合物中に電荷を注入し("ドーピング")、従ってオン/オフ比を低下させるか又は電荷トラップとして働き、それによって移動度を急激に低下させる恐れがある。更に、不純物は半導電性化合物と酸素との反応を開始させ、酸化作用を有する不純物は半導電性化合物を酸化させ、それによって可能な貯蔵−、加工−及び操業時間を短くする恐れがある。
【0009】
通常必要とされる純度は非常に高いので、公知のポリマー化学の方法、例えば洗浄、沈澱及び抽出によっては通常その純度に達することができない。それに対して、オリゴマーは分子的に均一でかつしばしば揮発性である化合物として、比較的簡単に昇華又はクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0010】
半導電性ポリマーの幾つかの重要な例を下記に記載する。ポリフルオレン及びフルオレンコポリマー、例えばポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ビチオフェン)(I)
【化1】
に関しては、0.02cm2/Vsまでの電荷移動度(以下では省略して移動度と記載する)が達成され(Science、2000、第290巻、2123頁)、レジオレギュラーポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(II)
【化2】
では、0.1cm2/Vsまでの移動度でさえ達成された(Science、1998、第280巻、1741頁)。ポリフルオレン、ポリフルオレン−コポリマー及びポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)は、ほぼ全ての長鎖ポリマーと同様に、溶液からの塗布により良好な塗膜を形成し、従って簡単に加工できる。しかし一つの分子量分布を有する高分子ポリマーとしては、真空昇華によっては精製できず、クロマトグラフィーによって精製することも難しい。
【0011】
オリゴマーの半導電性化合物の重要な例は、例えばオリゴチオフェン、特に式(III)
【化3】
による末端アルキル置換基を有するもの及びペンタセン(IV)
【化4】
である。
【0012】
例えばα,α’−ジヘキシルクォーター−、−クインケ−及び−セキシチオフェンに関する典型的な移動度は、0.05〜0.1cm2/Vsである。オリゴチオフェンは通常ホール半導体であり、即ち専らプラスの電荷キャリアが搬送される。
【0013】
化合物の最高移動度は単結晶で得られ、例えば1.1cm2/Vsの移動度は、α,α’−セキシチオフェンの単結晶に関して(Science、2000、第290巻、963頁)及び4.6cm2/Vsはルブレン単結晶に関して(Adv.Mater.、2006、第18巻、2320頁)記載されている。オリゴマーを溶液から塗布すると、移動度は大抵急激に下がる。通常溶液からのオリゴマー化合物の加工における半導電性特性の低下は、中程度の溶解性及びオリゴマー化合物の僅かな塗膜形成性傾向に起因する。従って不均一性は、例えば溶液からの乾燥の間の沈澱に起因する(Chem.Mater.、1998、第10巻、633頁)。
【0014】
従って半導電性ポリマーの良好な加工特性及び塗膜形成特性を半導電性オリゴマーの特性と組み合わせることが試みられてきた。特許明細書US−A6025462には、星状構造を有する導電性ポリマーが記載されており、これは枝分かれ状コア及び共役側鎖基から成るシェルから成る。これはもちろん幾つかの欠点を有する。側鎖基が側鎖で置換されていない共役構造から成る場合には、生じる化合物は難溶性又は不溶性であり、加工可能でない。共役単位を側鎖基で置換する場合には、確かに溶解性の改善はもたらされるが、側鎖基はその立体的要求により内部配向不良及び形態学的障害をもたらし、これによってこれらの化合物の半導電性特性が損なわれる。
【0015】
公開明細書WO02/26859A1には、芳香族共役鎖と結合している共役バックボーンから成るポリマーが記載されている。このポリマーは電子導電性を可能にするジアリールアミン側鎖基を有する。しかしこの化合物はジアリールアミン側鎖基のために半導体としては不適当である。
【0016】
公開明細書EP−A1398341及びEP−A1580217には、半導体として電子部品中に使用し、溶液から加工することができる、コアシェル構造を有する半導電性化合物が記載されている。しかしこの化合物は、加工の間に劣悪な結晶化作用を有する塗膜を生じる傾向があり、これは結晶化された塗膜が高い電荷キャリア運動の前提条件であるので、多くの用途にとって妨げとなる恐れがある。有機半導体の塗膜を温度処理によって後構造化することができることは確かに公知である(deLeeuwその他、WO2005104265)が、しかし化合物の高分子特性が温度処理による完全な後での構造化を妨げる恐れがある。
【0017】
Applied Physics Letters 90、053504(2007)にJangその他は、インクジェット印刷法によるトランジスタの製造を記載している。有機半導体として、α,α’−ジヘキシルクォーターチオフェンを使用した。その際検出された移動度0.043cm2/Vsは材料の蒸着層の移動度に相応する。しかし6μmのトランジスタの非常に小さな電極間隔が選択された。ロール・ツー・ロール大量印刷法ではこのような小さな構造を製造することはできない。最新印刷法は現在約20〜50μmの解像を達成する。この間隔では半導電性層の均質性及び相界面が著しく重要な役割を演じる。
【0018】
Russelその他は、Appl.Phys.Lett.87、222109(2005)に、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)及びα,α’−ジヘキシルクォーターチオフェンから成る混合物の有機電界効果トランジスタにおける半導体層用の使用を記載している。その際、α,α’−ジヘキシルクォーターチオフェンはポリマーにより結合される結晶島を形成する。しかし半導体層の検出された移動度は、α,α’−ジヘキシルクォーターチオフェンに比して僅かなポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)の移動度により制限される。Jap.J.Appl.Phys.(2005)、第44巻L1567頁では、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)及びα,α’−ジヘキシルセキシチオフェンから成る混合物を電界効果トランジスタの製造用に使用する。しかし化合物の十分な溶解性を得るためには溶液を190℃に加熱する必要があり、これは工業的使用には適さない。Adv.Funct.Mater.2007、17、1617−1622には、過飽和溶液から晶出するシクロヘキシル置換されたクォーターチオフェンが記載されている。しかしこのような方法は大量生産を可能にしない。更に、結晶がこの構造上で十分なオーバーラップを有することを保証するためには、電極構造で小さなチャンネル長さを使用する必要がある。このような小さな電極構造の製造にも費用のかさむ石版印刷法が必要であり、これは大量生産用の迅速印刷法では使用することができない。
【0019】
従って溶剤から加工後に改良された特性を有する半導体が求められている。
【0020】
本発明の課題は、一般的な溶剤から加工することができ、良好な特性を有する半導電性膜を生じ、空気中で貯蔵する際に十分安定である有機化合物を提供することであった。このような化合物は、有機半導電性層の広い面積の塗布に極めて好適であろう。
【0021】
化合物が均一な厚さ及び形態の高品質な層を形成し、電子工学的用途に好適であることが特に望ましいであろう。
【0022】
意外にも、オリゴマーの有機化合物及びそのコアシェル構造を有する高分子化合物及び/又はモノマーの線状化合物を有する化合物とのその混合物が、特別な特性を有する特に好適な塗膜を生じることを見出した。その際、オリゴマーの化合物は、フレキシブルな橋を介して相互に結合している線状構造を有する化合物から成る。これは、結晶挙動にプラスの影響を与えるためにこれまで高い純度及び均質性を有する化合物が要求されていたので、意外でありかつ予期できなかった。
【0023】
特にオリゴマーの有機化合物及びそのコアシェル構造を有する高分子化合物及び/又はモノマーの線状化合物を有する化合物とのその混合物から成る塗膜の塗膜形態及びそれによって得られる肉眼的電気特性は、純粋なモノマーの線状化合物又はコアシェル構造を有する純粋な高分子化合物から成る半導体に対して改善されている。
【0024】
本発明の目的は、一般式(M)
【化5】
[式中、Lは、線状共役オリゴマー鎖、有利には場合により置換されたチオフェン−、フェニレン−又はフルオレニル単位を含有するものであり、RA、RBは、相互に無関係に、同一又は異なる、線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基、C3−C8−シクロアルキレン基、1個又は数個不飽和のC2−C20−アルケニレン基、C2−C20−オキシアルキレン基、C2−C20−アラルキレン基又はC2−C20−オリゴ−又はC2−C20−ポリエーテル基、有利には線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基を表し、XA、XBは、相互に無関係に、場合により置換されたビニル基、塩素−、沃素−、ヒドロキシル−、炭素原子1〜3個を有するアルコキシ基、アルコキシシリル−、シリル−、クロロシリル−、シロキサン−、ヒドロキシ−、カルボキシ−、メチル−又はエチルカーボネート−、アルデヒド−、メチルカルボニル−、アミノ−、アミド−、スルホン−、スルホン酸−、ハロゲンスルホニル−、スルホネート−、ホスホン酸−、ホスホネート−、トリクロロメチル−、トリブロモメチル−、シアネート−、イソシアネート−、チオシアネート、イソチオチオシアネート−、シアノ−、ニトロ基又はHから選択した同一又は異なる基を表し、有利にはジシロキサン又はHを表し、Yは、相互に無関係に同一又は異なる基を表すが、有利には場合により置換されたアルコキシシリレン−、シリレン−、クロロシリレン−、メチレン−、ジクロロメチレン−、ジブロモメチレン−又は二価のシロキサン−、ジシロキサン−、カルボキシ−、カーボネート−、アミノ−、アミド−、スルフェート−、ホスホネート−、ホスフェート−又はボレート基から選択した同一基又はS又はO、有利にはエーテル−又は二価のジシロキサン基を表し、nは、1〜10の整数を表し、有利には1〜3の整数を表す]のオリゴマー化合物である。
【0025】
本発明のもう一つの目的は、少なくとも1種の一般式(M)の化合物及びコアシェル構造を有する少なくとも1種の高分子化合物を含有する混合物であるが、その際、コア(K)は珪素及び/又は炭素をベースとする高分子基礎構造を有し、炭素をベースとする結合鎖を介して共役二重結合を有する炭素をベースとする線状オリゴマー鎖少なくとも3個と結合しており、その際、線状共役鎖は、各々少なくとも1個のその他の、共役二重結合なしの、特に脂肪族、芳香脂肪族又はオキシ脂肪族鎖で飽和されている。
【0026】
本発明による態様は、一般式(M)のオリゴマー化合物及びコアシェル構造を有する高分子化合物を質量比99:1〜1:99、有利には10:90〜90:10で含有する混合物である。このような混合物は固体混合物であってもよいが、両方の前記成分を含有する溶液であってもよい。
【0027】
本発明のもう一つの目的は、一般式(M)のオリゴマー化合物及び一般式(P)
【化6】
[式中、Lは、線状共役オリゴマー鎖、有利には場合により置換されたチオフェン−、フェニレン−又はフルオレニル単位を含有するものであり、RC、RDは、相互に無関係に、同一又は異なる、線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基、C3−C8−シクロアルキレン基、1個又は数個不飽和のC2−C20−アルケニレン基、C2−C20−オキシアルキレン基、C2−C20−アラルキレン基又はC2−C20−オリゴ−又はC2−C20−ポリエーテル基、有利には線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基を表し、XC、XDは相互に無関係に、場合により置換されたビニル基、塩素−、沃素−、ヒドロキシル−、炭素原子1〜3個を有するアルコキシ基、アルコキシシリル−、シリル−、クロロシリル−、シロキサン−、ヒドロキシ−、カルボキシ−、メチル−又はエチルカーボネート−、アルデヒド−、メチルカルボニル−、アミノ−、アミド−、スルホン−、スルホン酸−、ハロゲンスルホニル−、スルホネート−、ホスホン酸−、ホスホネート−、トリクロロメチル−、トリブロモメチル−、シアネート−、イソシアネート−、チオシアネート、イソチオチオシアネート−、シアノ−、ニトロ基又はHから選択した同一又は異なる基を表し、有利にはジシロキサン又はHを表す]の少なくとも1種の化合物を含有する混合物である。
【0028】
本発明による態様は、一般式(M)のオリゴマー化合物及び一般式(P)の化合物を質量比99:1〜1:99、有利には20:80〜80:20で含有する混合物である。このような混合物は固体混合物であってもよいが、両方の前記成分を含有する溶液であってもよい。
【0029】
前記の本発明による混合物、即ち一般式(M)のオリゴマー化合物少なくとも1種及び一般式(P)の化合物少なくとも1種又はコアシェル構造を有する高分子化合物少なくとも1種を含有する混合物が溶液である場合には、好適な溶剤は、芳香族物質、エーテル又はハロゲン化脂肪族炭素水素、例えばクロロホルム、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン又はテトラヒドロフラン又はこれらから成る混合物である。
【0030】
コアシェル構造を有する有機高分子化合物は、有利な態様ではオリゴマー又はポリマーである。本発明でオリゴマーとは、1000ダルトンより下の分子量を有する化合物であり、ポリマーとは、1000ダルトン以上の平均分子量を有する化合物である。平均分子量は、測定法により数平均(Mn)又は質量平均(Mw)であってよい。ここでは数平均(Mn)である。
【0031】
本発明でコアシェル構造は、分子レベル上の構造であり、即ちそれは分子の構造自体に関する。
【0032】
線状共役オリゴマー鎖の末端結合位置とは、共役二重結合を有する線状オリゴマー鎖の末端単位の場所であり、それを介してその他の単位との更なる結合はもはや起こらない。末端とはコアから最も離れているという意味である。連続的共役二重結合を有する線状オリゴマー鎖は、以下で略して線状共役オリゴマー鎖と称する。
【0033】
コアシェル構造を有する高分子化合物は有利には、一般式(Z)
【化7】
[式中、Kは、n−官能性コアであり、Vは、結合鎖であり、Lは、線状共役オリゴマー鎖であり、Rは、線状又は枝分かれC2−C20−アルキル基、C3−C8−シクロアルキレン基、1個又は数個不飽和のC2−C20−アルケニル基、C2−C20−アルコキシ基、C2−C20−アラルキル基又はC2−C20−オリゴ−又はC2−C20−ポリエーテル基であり、qは、3以上の整数、有利には4を表す]のコアシェル構造を有する。
【0034】
その際、有利な化合物のシェルは、各々コアと結合しているq−V−L−R構成要素から成る。
【0035】
qが3、4又は6である例では、これは式(Z−3)、(Z−4)又は(Z−6)
【化8】
[式中、K、V、L及びRは、前記したものを表す]の構造である。
【0036】
このような化合物は、多官能性単位から構成されている、即ち分枝状コア、結合鎖、線状共役オリゴマー鎖及び非共役鎖が相互に結合しているように構成されている。
【0037】
多官能性単位から構成されているコアは、有利には樹状又は超高分枝構造を有する。
【0038】
超高分枝構造及びその製造は当業者に自体公知である。超高分枝ポリマー又はオリゴマーは、使用されるモノマーの構造により予め定められる特別な構造を有する。モノマーとしていわゆるABn−モノマー、即ち二つの異なる官能性A及びBを有するモノマーを使用する。この中、官能性(A)は分子当たり1回だけ、もう一つの官能性(B)は数回(n−回)存在する。この二つの官能性A及びBは相互に反応して、例えば重合して、化学結合を形成することができる。モノマー構造により重合の際に樹状構造を有する分枝状ポリマー、いわゆる超高分枝ポリマーが生成する。超高分枝ポリマーは、規則的な分枝部位を有さず、環を有さず、鎖末端に実質的にB−官能性のみを有する。超高分枝ポリマー、その構造、分枝の問題及びその命名法は、珪素をベースとする超高分枝状ポリマーの例について、L.J.Mathias、T.W.Carothers、Adv.Dendritic Macromol.(1995)、2、101−121及びその中に引用されている論文に記載されている。
【0039】
本発明では超高分枝構造は、有利には樹状ポリマーである。
【0040】
本発明で樹状構造は、合成高分子構造であり、これは各々2個以上のモノマーが各々の既に結合したモノマーとの結合によって段階的に構成されており、その結果各段階でモノマーの末端基の数が指数関数的に増加し、最後には球状樹状構造が生じる。このようにして分枝点を有し、中心から規則的な様式で周縁部まで広がる基を有する樹状高分枝構造が形成される。このような構造は、通常当業者に公知の方法により積層的に作られる。層の数は通常世代と称される。各層の分枝数並びに末端基の数は、世代の上昇に伴って増加する。その規則的な構造により、樹状構造は特別な利点を提供することができる。樹状構造、製造法及び命名法は当業者に公知であり、例えばG.R.Newkomeその他著Dendrimers and Dendrons、Wiley−VCH、Weinheim、2001に記載されている。
【0041】
樹状又は超高分枝構造から構成されたコア(以下で略して樹状又は超高分枝コアと称する)に使用可能な構造は、例えばUS−A6025462に記載されているものである。これは、例えば超高分枝構造、例えばUS−A5183862、US−A5225522及びUS−A5270402に記載されているようなポリフェニレン、ポリエーテルケトン、ポリエステル、例えばUS−A5264543に記載されているようなアラミド、例えばUS−A5346984に記載されているようなポリアミド、例えばUS−A6384172に記載されているようなポリカルボシラン又はポリカルボシロキサン、又は例えばUS−A5070183又はUS−A5145930に記載されているようなポリアリーレン又は例えばUS−A4435548及びUS−A4507466に記載されているような樹状構造、例えばポリアレーン、ポリアリーレンエーテル又はポリアミドアミン並びに例えばUS−A4631337に記載されているようなポリエチレンイミンである。
【0042】
しかし、樹状又は超高分枝コアを作るためにその他の構造単位を使用することもできる。樹状又は超高分枝コアの役割は、主として一連の官能性を供給し、それによってマトリックスを形成することであり、このマトリックスには線状共役オリゴマー鎖を有する結合鎖が結合し、それによって配列されてコアシェル構造が得られる。線状共役オリゴマー鎖はマトリックスと結合することによって予備位置調整され、従ってその有効性が高められる。
【0043】
樹状又は超高分枝コアは、線状共役オリゴマー鎖を有する結合鎖の結合に好適である多数の官能性−結合部の意味−を有する。特に樹状コア及び超高分枝構造から成るコアは、少なくとも3個、有利には少なくとも4個の官能性を有する。
【0044】
樹状又は超高分枝コア中の有利な構造は、1,3,5−フェニレン−単位(式V−a)及び式(V−b)から(V−e)
【化9】
[式中、式(V−c)及び(V−d)の単位中でa、b、c及びdは相互に無関係に0、1、2又は3を表す]の単位であり、その際、式(V−a)から(V−e)の多数の同一又は異なる単位が相互に結合している。
【0045】
式(V−a)から(V−e)並びに下記で使用される式中の*印の位置は、結合位置を表す。単位(V−a)から(V−e)は、これら相互を介してか又は結合鎖を介して線状共役オリゴマー鎖(L)と結合する。
【0046】
式(V−a)の単位から成る樹状鎖(K)の例は下記である:
【化10】
【0047】
*印の位置で結合鎖(V)を介して線状共役オリゴマー鎖(L)との結合が行われる。
【0048】
コアシェル構造を有する高分子化合物のシェルは、結合鎖(V)、線状共役オリゴマー鎖(L)及び非共役鎖(R)から構成されている。一般式(M)のオリゴマー化合物は、線状共役オリゴマー鎖(L)及び末端官能性(X)及び架橋単位(Y)を有する非共役鎖(R)から形成される。一般式(P)の化合物は、線状共役鎖(L)及び末端官能性(X)を有する非共役鎖(R)から形成される。
【0049】
結合鎖(V)は、有利には高い可撓性、即ち高い分子(内)易動性を有し、それによってコアの周りにセグメントL−Rの幾何学的配置を生じるものである。可撓性は、本発明では分子(内)で易動性であると解する。
【0050】
結合鎖としては、基本的には下記構造特徴を有する線状又は分枝鎖が好適である:
・単結合によって炭素原子と結合した炭素原子、
・炭素と結合した水素原子、
・炭素と単結合によって結合した酸素原子、
・炭素と単結合によって結合した珪素原子及び/又は
・酸素と単結合によって結合した珪素原子、これらは有利には合計6〜60個の原子から成り、有利には環構造を有さない。
【0051】
好適な結合鎖は、特に有利には線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン鎖、例えば、エチレン−、n−ブチレン−、n−ヘキシレン−、n−オクチレン及びn−ドデシレン−鎖、線状又は枝分かれポリオキシアルキレン鎖、例えば−OCH2−、−OCH(CH3)−又は−O−(CH2)4−セグメントを含有するオリゴエーテル鎖、線状又は枝分かれシロキサン鎖、例えばジメチルシロキサン構造単位を有するもの及び/又は直鎖又は枝分かれカルボシラン鎖、即ち珪素−炭素−単結合を含有する鎖(その際、鎖中の珪素及び炭素原子は相互に統計的又はブロック状に配置されていてよい)、例えば−SiR2−CH2−CH2−CH2−SiR2−構造単位を有するものである。
【0052】
一般式(M)、(P)及び(Z)の線状共役オリゴマー鎖(L)としては、このような導電性又は半導電性オリゴマー又はポリマーを形成する構造を有する鎖が全て原則として好適である。これらは例えば、ホモポリマー又は−オリゴマーとして又はコポリマー又は−オリゴマーとして使用することができる、場合により置換されたポリアニリン、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリフェニレン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリイソナフテン、ポリフェニレンビニレン、ポリフルオレンである。有利には線状共役オリゴマー鎖として使用することができるこのような構造の例は、一般式(VI−a)から(VI−f)
【化11】
[式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なるものであってよく、水素、直鎖又は枝分かれC1−C20−アルキル−又はC1−C20−アルコキシ基を表し、有利には同一であり、水素を表し、R4は、同一又は異なるものであってよく、水素、直鎖又は枝分かれC1−C20−アルキル基又はC1−C20−アルコキシ基、有利には水素又はC6−C12−アルキル基を表し、R5は、水素又はメチル−又はエチル基、有利には水素を表し、s、tは相互に無関係に0〜4の整数を表しかつs+t≧3、有利にはs+t=4である]の単位2〜10個、特に有利には2〜8個から成る鎖である。
【0053】
式(V−a)から(V−f)の*印を付けた位置は結合位置を表し、これを介して単位(V−a)から(V−f)が相互に結合して線状共役オリゴマー鎖を形成するか又は各鎖末端で非共役鎖(R)を有する。
【0054】
場合により置換された2,5−チオフェン(VI−a)又は(VI−b)又は場合により置換された1,4−フェニレン(VI−c)から成る単位を含有する、線状共役オリゴマー鎖が特に有利である。最初の数2,5−又は1,4−は、これを介して結合が行われる単位中の位置を示す。
【0055】
ここ及び以下で置換されているとは、その他に記載のない限り、アルキル−、特にC1−C20−アルキル基又はアルコキシ−、特にC1−C20−アルコキシ基での置換を意味する。
【0056】
場合により置換された2,5−チオフェン(VI−a)又は2,5−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(VI−b)から成る単位を有する線状共役オリゴマー鎖が極めて特に有利である。
【0057】
一般式(M)、(P)及び(Z)中でLで示される線状共役オリゴマー鎖は、末端結合位置で各々非共役鎖(R)で飽和されている。非共役鎖は有利には、高い可撓性、即ち高い分子(内)易動性を有し、それによって溶剤分子と良好に相互作用し、従って良好な溶解性を生じるものである。可撓性は、本発明では分子(内)で易動性であるという意味を有すると解される。非共役鎖(R)は、場合により酸素により中断された炭素原子2〜20個、有利には炭素原子6〜20個を有する直鎖又は枝分かれ脂肪族、不飽和又は芳香脂肪族鎖又はC3−C8シクロアルキレンである。脂肪族及びオキシ脂肪族基、即ちアルコキシ基又は酸素により中断された直鎖又は枝分かれ脂肪族基、例えばオリゴ−又はポリエーテル基又はC3−C8シクロアルキレンが有利である。特に枝なしC2−C20−アルキル−又はC2−C20−アルコキシ基又はC3−C8シクロアルキレンが有利である。好適な鎖の例は、アルキル基、例えばn−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル及びn−ドデシル基並びにアルコキシ基、例えばn−ヘキシルオキシ−、n−ヘプチルオキシ−、n−オクチルオキシ、n−ノニルオキシ−、n−デシルオキシ−及びn−ドデシルオキシ基又はC3−C8シクロアルキレン、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルである。
【0058】
各々末端結合位置で非共役鎖により飽和されている、線状共役オリゴマー鎖から成る一般式(Z)の構造要素L−Rの例としては、一般式(VI−a−R)及び(VI−b−R)
【化12】
[式中、Rは一般式(Z)で前記したものを表し、pは2〜10、有利には2〜8、特に有利には2〜7の整数である]の構造要素が挙げられる。
【0059】
一般式(M)の構造要素−RA−L−RB−の例としては、一般式(VI−a−RA/B)及び(VI−b−RA/B)
【化13】
[式中、RA及びRBは、一般式(M)で前記したものを表し、pは2〜10、有利には2〜8、特に有利には4〜6の整数である]の構造要素が挙げられる。
【0060】
コアシェル構造を有する高分子化合物の有利な態様は、樹状コア中にシロキサン−及び/又はカルボシラン単位、結合鎖として、線状枝なしアルキレン基、線状共役オリゴマー鎖として2〜8個、有利には4〜6個の場合により置換されたチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有する非置換オリゴチオフェン鎖及び/又はオリゴ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)鎖並びにC6−C12−アルキル基を可撓性非共役鎖として含有する、コアシェル構造である。
【0061】
このための例として、下記の式(Z−4−a)及び(Z−4−b)
【化14】
[式中、(Z−4−a)及び(Z−4−b)中で、nは0又は1を表し、mは3又は4を表し、その際、n+m=4であるという条件であり、有利にはnは0であり、mは4である]の化合物が挙げられる。
【0062】
一般式(M)のオリゴマー化合物の有利な態様は、線状共役オリゴマー鎖(L)として2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)の場合により置換されたチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有する、場合により置換されたチオフェン単位、特に有利には、場合により置換されたオリゴチオフェン鎖及び/又はオリゴ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)鎖を有するものである。本発明のもう一つの有利な態様では、一般式(M)のオリゴマー化合物は、非共役鎖RA及びRBとして、同一又は異なる、線状又は枝分かれC1−C12−アルキレン基及び末端基XA及びXBとして水素を含有する。本発明のもう一つのなお有利な態様では、一般式(M)のオリゴマー化合物で、Yはカーボネート−、エーテル−又は二価のジシロキサン基を表し、特に有利にはエーテル−又は二価のジシロキサン基を表す。本発明の特に有利な態様は、nが1を表す一般式(M)のオリゴマー化合物を含有する。
【0063】
このための例として、下記の式(M−V)から(M−VIII)
【化15】
の化合物が挙げられる。
【0064】
本発明の有利な態様は、1種以上の一般式(Z)の化合物及び1種以上の一般式(M)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は10:90〜90:10で含有する混合物であるが、その際、式(Z)及び(M)の成分は、同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有する線状オリゴマー鎖を有する。特に、1種以上の一般式(Z)の化合物及び1種以上の一般式(M)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は10:90〜90:10で含有し、その際、式(Z)及び(M)の成分が、オリゴマー鎖に同じ数の同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有するような線状オリゴマー鎖を有する、混合物が特に有利である。
【0065】
一般式(P)のモノマーの線状化合物の有利な態様は、線状共役オリゴマー鎖(L)として、2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)又は(VI−c)の芳香族単位、極めて特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)、(VI−b)又は(VI−c)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−又はチオフェン−フェニレン鎖から成る芳香族単位を有する、場合により置換されたチオフェン単位、有利には場合により置換されたオリゴチオフェン鎖及び/又はオリゴ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)鎖及び/又はチオフェン−フェニレン鎖を有するものである。本発明のもう一つの有利な態様では、一般式(P)の化合物は、非共役鎖RC及びRDとして、同一又は異なる、線状又は枝分かれC1−C12−アルキレン基及び末端基XA及びXBとして水素を含有する。
【0066】
このための例として、下記の式(P−I)から(P−III)
【化16】
の化合物が挙げられる。
【0067】
化合物P−I、P−II及びP−IIIは、例えばChem.Mater.(1998)、第10巻、457頁、J.Mater.Chem.(2003)、第13巻、197頁、J.Am.Chem.Soc.(2005)、第127巻、1348頁及びEP−A153155から公知である。
【0068】
本発明の有利な態様は、1種以上の一般式(M)の化合物及び1種以上の一般式(P)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は20:80〜80:20で含有する混合物であるが、その際、式(M)及び(P)の成分は、同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有する線状オリゴマー鎖を有する。特に、1種以上の一般式(M)の化合物及び1種以上の一般式(P)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は20:80〜80:20で含有し、その際、式(M)及び(P)の成分が、オリゴマー鎖に同じ数の同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有するような線状オリゴマー鎖を有する、混合物が有利である。
【0069】
本発明の有利な態様は、少なくとも1種の一般式(M)の化合物、コアシェル構造を有する少なくとも1種の高分子化合物及び少なくとも1種の一般式(P)の化合物を含有する混合物である。その際、一般式(M)、(P)及び(Z)の各々の化合物に関しては前記の有利な範囲が該当する。
【0070】
本発明の有利な態様は、1種以上の一般式(Z)の化合物、1種以上の一般式(M)の化合物及び1種以上の一般式(P)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は10:90〜90:10で含有する混合物であるが、その際、式(Z)、(M)及び(P)の成分は、同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有する線状オリゴマー鎖を有する。特に、1種以上の一般式(Z)の化合物、1種以上の一般式(M)の化合物及び1種以上の一般式(P)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は10:90〜90:10で含有し、その際、式(Z)、(M)及び(P)の成分が、オリゴマー鎖に同じ数の同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有するような線状オリゴマー鎖を有する、混合物が特に有利である。本発明による混合物中の前記質量比は、例えば1種以上の一般式(Z)及び1種以上の一般式(M)の化合物が一緒になって1質量割合及び1種以上の一般式(P)の化合物が混合物の99質量割合を形成すると解される。
【0071】
本発明のもう一つの目的は更に、少なくとも1種の一般式(P)の化合物及びコアシェル構造を有する少なくとも1種の高分子化合物を含有する混合物であるが、その際、コアは珪素及び/又は炭素をベースとする高分子基礎構造を有し、少なくとも3個の、炭素をベースとする結合鎖を介して炭素をベースとする共役二重結合を有する線状オリゴマー鎖と結合しておりかつその際、線状共役鎖は各々少なくとも1個のその他の、共役二重結合なしの、特に脂肪族、芳香脂肪族又はオキシ脂肪族鎖で飽和されている。その際、一般式(P)及び(Z)の各化合物に関しては前記した有効範囲が該当する。
【0072】
本発明の有利な態様は、1種以上の一般式(Z)の化合物及び1種以上の一般式(P)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は20:80〜80:20で含有する混合物であるが、その際、式(Z)及び(P)の成分は、同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有する線状オリゴマー鎖を有する。特に、1種以上の一般式(Z)の化合物及び1種以上の一般式(M)及び(P)の化合物を質量比1:99〜99:1、有利は20:80〜80:20で含有し、その際、式(Z)、(M)及び(P)の成分が、オリゴマー鎖に同じ数の同じ単位を有する線状オリゴマー鎖(L)、有利には2〜8個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位、特に有利には4〜6個の一般式(VI−a)又は(VI−b)のチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有するような線状オリゴマー鎖を有する、混合物が特に有利である。
【0073】
本発明による一般式(M)のオリゴマー化合物から成る層及び一般式(M)のオリゴマー化合物及びコアシェル構造を有する高分子化合物及び/又は一般式(P)のモノマーの線状化合物を含有する本発明による混合物から成る層及びコアシェル構造を有する高分子化合物及び一般式(P)のモノマーの線状化合物を含有する層は、有利には導電性又は半導電性である。本発明の特に有利な目的は、半導電性であるような化合物又は混合物の層である。少なくとも10−4cm2/Vsの電荷キャリアの移動度を有するような化合物又は混合物の層が特に有利である。電荷キャリアは例えばプラスのホール電荷である。
【0074】
本発明による化合物及び混合物は、典型的には慣用の有機溶剤に良好に溶解性であり、従って溶液からの加工に極めて好適である。特に好適な溶剤は、芳香族物質、エーテル又はハロゲン化脂肪族炭化水素、例えばクロロホルム、トルエン、ベンゼン、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン又はテトラヒドロフラン又はこれらから成る混合物である。本発明による一般式(M)のオリゴマー化合物及び本発明による一般式(M)の化合物及びコアシェル構造を有する高分子化合物及び/又は一般式(P)の化合物を含有する混合物が、相応するモノマーの化合物に対して、大きな単結晶範囲を有する均質で広い面積の湿潤性塗膜を生じることは特に意外である。更に、成分の混合によって層の内部秩序又は形態を損なわないことは意外である。従って本発明による化合物又は混合物は、広い面積のコーティングに好適であり、相応してこれらの塗膜中で良好な半導電性特性を有する。本発明による半導電性化合物又は混合物は更に卓越した熱安定性及び良好な老化挙動を有する。
【0075】
本発明による一般式(M)のオリゴマー化合物及びコアシェル構造を有する高分子化合物及び/又は一般式(P)の化合物とのその混合物又は一般式(P)の化合物及びコアシェル構造を有する高分子化合物から成る混合物は、例えば公知モノマー化合物に対して、慣用の有機溶剤中の高められた溶解性が達成されるという利点を有する。これは半導体層への化合物の加工を容易にする。
【0076】
本発明による化合物及び混合物の製造は、種々の方法で可能である。
【0077】
コアシェル構造を有する高分子化合物の製造は、EP−A1580217及びPonomarenkoその他、Chem.Mater.2006、第18巻、4101頁に記載されている。一般式(P)の化合物の製造は、例えばEP−A1531155、EP−A1531154、EP−A1439173、WO−A2005/080369、Kirchmeyerその他、J.Mater.Chem.2003、第13巻、197頁又はPonomarenkoその他、Polymer Preprints2005、第46巻、576頁に記載されている。本発明による一般式(M)のオリゴマー化合物の製造は例えば例1−3に記載されているように行うことができる。
【0078】
一般式(M)のオリゴマー化合物と一般式(P)のモノマーの線状化合物及び/又はコアシェル構造を有する高分子化合物の混合又はコアシェル構造を有する高分子化合物及び一般式(P)の化合物の混合は、相応する溶剤中で共−溶解により行うことができる。溶解工程は有利には加熱して行う。得られた溶液は安定であり、加工可能である。
【0079】
更に成分の混合を一つの成分をその他の成分の製造の間に添加することによって製造することができ、例えば一般式(P)のモノマーの化合物を一般式(M)のオリゴマーの化合物の合成の間に添加するか又は一般式(M)のオリゴマーの化合物をコアシェル構造を有する高分子化合物の合成の間に添加して、単離する際に本発明による混合物が得られる。
【0080】
本発明による混合物は更に好適な支持体上で個々の成分の溶液を一緒にすることによって製造することもできる。支持体としては例えば、構造付与珪素ウェファー又は被覆ガラス支持体(例えばITOで被覆した)を使用することができる。本発明による混合物の個々の成分を例えば別々の滴加塗布法、例えばインクジェット印刷法により、支持体に塗布することができる。もう一つの方法は例えば、スピンコーティングで支持体に同時にか又は相互に別々に個々の成分を添加することによる本発明による混合物の製造である。
【0081】
本発明による化合物及び混合物の特性に関して、製造方法はあまり重要な意味を持たない。
【0082】
本発明による化合物及び混合物は、常用の溶剤、例えば芳香族物質、エーテル又はハロゲン化脂肪族炭化水素、例えばクロロホルム、トルエン、ベンゼン、キシレン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン又はテトラヒドロフランに少なくとも0,1質量%、有利には少なくとも1質量%、特に有利には少なくとも5質量%まで可溶性である。
【0083】
本発明による化合物及び混合物は、蒸発させた溶液から均一な厚さ及び形態の高品質な層を形成し、従って電子工学的用途に好適である。
【0084】
最後に、本発明の目的は、本発明による化合物及び混合物の電子部品、例えば電界効果トランジスタ、発光構造素子、例えば有機発光ダイオード又は光起電力電池、レーザー及びセンサーにおける半導体としての使用である。
【0085】
これらの目的用には層の形の本発明による化合物及び混合物が有利である。
【0086】
半導体としての機能を有効に確保するために、本発明による化合物及び混合物は、十分な移動度、例えば少なくとも10−4cm2/Vsを有する。電荷移動度は、例えばM.Pope及びC.E.Swenberg、Electronic Processes in Organic Crystals and Polymers、第2版、709〜713頁(Oxford Unversity Press、New York Oxford 1999)に記載されているようにして測定することができる。
【0087】
使用するために、本発明による化合物及び混合物を好適な支持体、例えば電気又は電子構造を具備した珪素ウェファー、ポリマーフィルム又はガラス板上に塗布する。塗布用に原則として全ての塗布法が挙げられる。有利には本発明による化合物及び混合物を液体相から、即ち溶液から塗布し、引き続き溶剤を蒸発させる。溶液からの塗布は、自体公知の方法により、例えば吹き付け、浸漬、印刷及びナイフ塗布によって行うことができる。特にスピンコーティング及びインクジェット印刷による塗布が有利である。
【0088】
本発明による化合物及び混合物から製造した層は、塗布後更に例えば温度処理、例えば液晶相を通過させて変性することもできるし、例えばレーザーアブレーションにより構造化するために変性することができる。
【0089】
本発明のもう一つの目的は、本発明による化合物及び混合物を半導体として含む電子部品である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】例1によるOFETの電気特有値を表す図。
【図2】例2によるOFETの電気特有値を表す図。
【図3】例3によるOFETの電気特有値を表す図。
【図4】例4によるOFETの電気特有値を表す図。
【図5】例5によるOFETの電気特有値を表す図。
【図6】例6によるOFETの電気特有値を表す図。
【図7】例7によるOFETの電気特有値を表す図。
【図8】例8によるOFETの電気特有値を表す図。
【図9】例9によるOFETの電気特有値を表す図。
【図10】例10によるOFETの電気特有値を表す図。
【図11】例11によるOFETの電気特有値を表す図。
【図12】比較例3によるOFETの電気特有値を表す図。
【図13】比較例4によるOFETの電気特有値を表す図。
【図14】例4によるOFETの電気特有値の結果を表す図。
【0091】
次に本発明を実施例につき詳説するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0092】
実施例
式Zの化合物は、例えばEP−A1580217及びChem.Mater.2006、第18巻、4101頁から公知の方法により製造した。式Pの化合物は、例えばEP−A1439173、J.Mater.Chem.2003、第13巻、197頁、Synthesis 1993、1099頁又はChem.Mater.1993、第5巻、430頁から公知の方法により合成した。式(M)の本発明による化合物は、例1−3に記載したような合成により製造することができる。
【0093】
反応容器は全て使用前に常用の保護ガス方法により加熱し、窒素でフラッシュした。
OFET−製造:
(a)OFET用の支持体及び洗浄
厚さ300nmの熱成長酸化物層を有する片面を研磨したp−添加珪素ウェファー(Sil−Chem)を切断して25mm×25mmの大きさの支持体にした。支持体をまず注意深く洗浄した。付着する珪素破片を蒸留水を流しながら無塵室タオル(Bemot M−3、Ashaih Kasei Corp.)で擦り、引き続き支持体を超音波浴中で2%水/Mucasol水溶液中で60℃で15分間洗浄した。その後支持体を蒸留水ですすぎ、遠心分離機で遠心脱水して乾燥させた。塗布直前に研磨した表面をUV/オゾン反応器(PR−100、UVP Inc.、Cambridge、GB)中で10分間洗浄した。
(b)誘電層
i.誘電中間層として、オクチルジメチルクロロシラン(ODMC)(Aldrich、246859)を使用した。ODMCをペトリ皿に底部がちょうど覆われるように注入した。その上に、縦に置いた洗浄済みSi−支持体が入っているマガジンを置いた。全てを裏返したビーカーで覆い、ペトリ皿を70℃に加熱した。支持体をオクチルジメチルクロロシラン高含有雰囲気中で15分間保持した。
ii.ヘキサメチルジシラザン(HMDS):誘電中間層用に使用されるヘキサメチルジシラザン(Aldrich、37921−2)をビーカーに注入したが、このビーカー中には、縦に置かれた洗浄済Si−支持体を有するマガジンを入れておいた。シラザンが支持体を完全に覆った。ビーカーを覆い、ホットプレート上で70℃に加熱した。支持体はシラザン中で24時間保持した。次いで支持体を乾燥窒素流中で乾燥させた。
【0094】
例ではODMCを誘電中間層として使用する;HMDSを誘電中間層として使用する場合には、そのことを明示する。
(c)有機半導体
半導体層を塗布するために好適な溶剤中の化合物の溶液を製造した。成分を完全に溶解させるために、溶液を60℃で超音波浴中に約1分間置いた。溶液の濃度は0.3質量%であった。
【0095】
誘電中間層を具備した支持体を研磨した面を上からスピンコーター(Carl Suess、RC8 with Gyrset(R))のホールダーに載せ、フェーンで約70℃に加熱した。まだ熱い溶液約1mlを表面に滴加し、有機半導体を有する溶液を1200rpmで加速度500rev/sec2及びオープンGyrset(R)で支持体にスピンコーティングした。こうして製造した塗膜をホットプレート上で70℃で3分間乾燥させた。層は均質であり、混濁は全くなかった。
(d)電極の塗布
ソース・ドレイン用電極をついでこの層の上に蒸着した。このために、2個の連動カムから成る4つのカットアウトを有する電気メッキ製造したNiフィルムから成るシャドーマスクを使用した。個々のカムの歯は、幅100μm及び長さ4.7mmであった。マスクを塗布した支持体表面に載せ、裏側から磁石で固定した。
【0096】
蒸着設備(Univex 350、Leybold)中で支持体に金を蒸着させた。こうして製造した電極構造は100μmの間隔で長さ14.85cmを有した。
c)容量測定
装置の電気容量を、同じに製造したが、有機半導体層は有さない支持体を同じシャドーマスクの後ろに並行して蒸着して、測定した。p−添加珪素ウェファーと蒸着した電極の間の容量をマルチメーター、MetraHit18S、Gossen Metrawatt GmbHを用いて測定した。測定した容量は、この装置に関してC=0.7nF、電極形態により面積容量は、C=6.8nF/cm2であった。
f)電気特性
特性曲線を2個の電流電圧源(Keithley238)を用いて測定した。一つの電圧源はソース・ドレインで電位を生じさせ、その際流れる電流を測定し、一方二番目の電圧源はゲート・ソースで電位を生じさせる。ソース・ドレインを貼り付けたAu棒と接触させ、高添加Siウェファーはゲート電極を形成し、酸化物を引掻きとった裏面を介して接触させた。特性曲線の作成及び評価は、例えば"Organic thin−film transistors:A review of recent advances"、C.D.Dimitrakopoulos、D.J.Mascaro、IBM J.Res&Dev.第45巻、No.1、2001年1月に記載されているような、公知方法により行った。
【0097】
電気特性表示(図1)からこのトランジスタ構造に関して適切な下記の特有値が得られた:
i.移動度(mobility)
ii.オン/オフ比(On/Off−Ratio)
ID(UG=−60V)/ID(UG=0V)
注:オフ電流測定ID(UG=0V)の感度は不完全な絶縁ケーブルにより約1nAに制限される。
iii.いき値電圧(threshold voltage)
トランジスタ測定結果は、第1表にまとめる。
【0098】
例1
1,3−ビス{11−[5’’’−ヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチエン−5−イル]ヘキシル}−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−V):
【化17】
【0099】
5−(ヘキス−5−エン−1−イル)−5’’’−ヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチオフェン0.50g(1.0ミリモル)をトルエン10ml及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン80μlに溶解させ、キシレン中の白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの0.1モル溶液10μlを加えた。混合物を密閉装置中で100℃に加熱した。10時間後に1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン20μlを添加し、再び100℃で10時間攪拌した。反応溶液をシリカゲルを充填したクロマトグラフィーカラムに入れ、トルエンで溶離した。得られた生成物をトルエンから再結晶させた。収量:橙色の固体(M−V)0.16g(理論値の28%)。
【0100】
【0101】
OFETを製造するために、物質を60℃でトルエン1部及びクロロホルム1部から成る混合物に0.3質量%で溶解させた。視覚的に均質な塗膜が得られた。このOFETの電気特有値の結果(図1)を第1表にまとめる。
【0102】
例2
a)1,3−ビス[11−(2,2’−ビチエン−5−イル)ウンデシル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−VI−a)の製造
【化18】
【0103】
11−(2,2’−ビチエン−5−イル)ウンデセン5.37gを無水ヘキサン30mlに溶解させ、テトラメチルジシロキサン1.42lを添加し、溶液を0℃に冷却した。この温度でキシレン中の白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの0.1モル溶液160μlを加えた。反応を0℃で1時間、次いで室温で16時間後攪拌した。反応溶液をシリカゲルを充填したクロマトグラフィーカラムに入れ、ヘキサンで溶離した。収量:無色から淡黄色の油状物(M−VI−a)5.24g(理論値の84%)。
【0104】
【0105】
b)1,3−ビス[11−(5’−ブロモ−2,2’−ビチエン−5−イル)ウンデシル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−VI−b)の製造:
【化19】
【0106】
1,3−ビス[11−(2,2’−ビチエン−5−イル)ウンデシル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−VI−a)(9.82g、12.7ミリモル)をDMF(40ml)及びトルエン(40ml)から成る混合物に溶解させ、−10℃でDMF(70ml)中のNBS(4.55g、25.5ミリモル)から成る溶液を1時間以内に滴加した。引き続き−10℃で30分間及び室温で16時間後攪拌した。溶液を水(1000ml)に入れ、塩化メチレンで振出した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶剤を除去し、残分を真空中で乾燥させた。収量:淡黄色の油状物(M−VI−b)8.59g(理論値の73%)。
FD MS分析:M・+100%、m/e=928
【0107】
c)1,3−ビス{11−[5’’’−ヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチエン−5−イル]ウンデシル}−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−VI)の製造:
【化20】
【0108】
1,3−ビス[11−(5’−ブロモ−2,2’−ビチエン−5−イル)ウンデシル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−VI−b)(6.32g、6.8ミリモル)を4,4,5,5−テトラメチル−2−[5’−ヘキシル−2,2’−ビチエン−5−イル]−1,3,2−ジオキサボロラン(6.13g、16.3ミリモル)及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(1.54g、1.3ミリモル)と一緒に無水テトラヒドロフラン(130ml)及び2MのNa2CO3水溶液85ml中で8時間還流下に沸騰させた。反応混合物を水(300ml)及び1MHCl(90ml)から成る混合物中に入れ、トルエンで振出した。有機相を分離し、乾燥させ、溶剤を除去し、残分をクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離剤ヘキサン:トルエン1:1、55℃)にかけた。得られた粗生成物をトルエン:ヘキサンから再結晶させた。収量:帯黄橙色粉末(M−VI)3.45g(理論値の40%)。
【0109】
【0110】
融点(DSC):190℃
OFETを製造するために、物質を60℃でトルエン1部及びクロロホルム1部から成る混合物に0.3質量%で溶解させた。視覚的に均質な塗膜が得られた。このOFETの電気特有値の結果(図2)を第1表にまとめる。
【0111】
例3
1,3−ビス{11−[5’’’−(2−メチルプロピル)−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチエン−5−イル]ウンデシル}−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(M−VII):
【化21】
【0112】
5−(2−メチルプロピル)−5’’’−ウンデセ−10−エン−1−イル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチオフェン0.45g(0.83ミリモル)及び1−[11−(5’’’−(2−メチルプロピル)−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチエン−5−イル)ウンデシル]−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン0.67g(1.0ミリモル)をトルエン30ml中で攪拌した。反応混合物を軽く温めることによって溶液にし、引き続きガス抜きした。白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの0.1モル溶液20μlを加え、溶液を75℃に加熱した。6時間後、反応溶液をシリカゲルを充填したカラムを用い熱時クロマトグラフィーにかけ(溶離剤:トルエン、70℃)、得られた生成物をトルエンから再結晶させた。収量:帯黄橙色粉末(M−VII)0.69g(理論値の69%)。
【0113】
【0114】
OFETを製造するために、物質を60℃でトルエン1部及びクロロホルム1部から成る混合物に0.3質量%で溶解させた。視覚的に均質な塗膜が得られた。このOFETの電気特有値の結果(図3)を第1表にまとめる。
【0115】
例4:
式(P−I)の化合物及び式(M−VI)の化合物を質量比1:2で含有する溶液をクロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る混合物中で製造した。物質混合物は視覚的に均質な塗膜を生じた。混合物は空気中で長時間貯蔵する際に、図14が示すように、安定のままであった。
【0116】
このOFETの電気特有値の結果(図4)を第1表にまとめる。
【0117】
例5:
式(P−I)の化合物及び式(M−VII)の化合物を質量比1:2で含有する溶液をクロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る混合物中で製造した。物質混合物は視覚的に均質な塗膜を生じた。
【0118】
このOFETの電気特有値の結果(図5)を第1表にまとめる。
【0119】
比較例1:
有機半導体として、クロロホルム1質量部及びトルエン1質量部中の式(P−I)の化合物の溶液を製造した。スピンコーティングした塗膜は顕微鏡で個々の結晶構造を示した。
【0120】
電気特性曲線を測定することはできなかった。
【0121】
例6:
有機半導体として、クロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る溶剤混合物中の質量比85:15の式(Z−4−a−1)
【化22】
の化合物及び式(M−VI)
【化23】
の化合物から成る溶液を製造した。溶液の濃度は0.3%(質量)であった。
【0122】
このOFETの電気特有値の結果(図6)を第1表にまとめる。
【0123】
例7:
有機半導体として、クロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る混合物中の質量比5:4:1の式(Z−4−a−1)の化合物、式(M−VI)の化合物及び式(Z−4−a−2)
【化24】
の化合物から成る溶液を製造した。視覚的に良好な品質の塗膜が得られた。
【0124】
このOFETの電気特有値の結果(図7)を第1表にまとめる。
【0125】
例8:
有機誘電層としてヘキサメチルジシラザンを使用した。有機半導体として、クロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る混合物中の質量比1:1の化合物(Z−4−a−1)及び式(P−I)の化合物
【化25】
から成る溶液を製造した。この物質混合物も視覚的に均質な塗膜を生じた。
【0126】
このOFETの電気特有値の結果(図8)を第1表にまとめる。
例9
有機半導体として、クロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る混合物中の質量比17:3:20の式(Z−4−a−1)の化合物、式(M−VI)の化合物及び式(P−I)の化合物から成る溶液を製造した。視覚的に良好な品質の均質な塗膜が得られた。
【0127】
このOFETの電気特有値の結果(図9)を第1表にまとめる。
【0128】
例10:
有機半導体として、クロロホルム1質量部及びトルエン1質量部から成る混合物中の質量比13:2:5の化合物(Z−4−a−1)、化合物(M−VI)及び化合物(P−I)から成る溶液を製造した。視覚的に良好な品質の均質な塗膜が得られた。
【0129】
このOFETの電気特有値の結果(図10)を第1表にまとめる。
【0130】
例11:
有機半導体として、純粋なトルエン中の質量比1:1の式(Z−4−a−3)
【化26】
の化合物及び化合物(P−I)から成る溶液を製造した。視覚的に良好な品質の均質な塗膜が得られた。
【0131】
このOFETの電気特有値の結果(図11)を第1表にまとめる。
【0132】
比較例2:
有機半導体として、純粋なトルエン中の化合物(Z−4−a−1)の溶液を使用した。得られた塗膜は視覚的に不規則な構造を示した。
【0133】
電気特性曲線を測定することはできなかった。
【0134】
比較例3:
製造は比較例2と同様にして行ったが、支持体上に有機誘電層は塗布しなかった。得られた塗膜は視覚的に不規則な構造を示す。
【0135】
このOFETの電気特有値の結果(図12)を第1表にまとめる。
【0136】
比較例4:
有機半導体として、純粋なトルエン中の化合物(Z−4−a−3)の溶液を製造した。得られた塗膜は視覚的に不規則な構造を示した。
【0137】
このOFETの電気特有値の結果(図13)を第1表にまとめる。
【0138】
トランジスタ測定結果を第1表にまとめる。
【0139】
第1表:
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(M)
【化1】
[式中、
Lは、線状共役オリゴマー鎖、有利には場合により置換されたチオフェン−、フェニレン−又はフルオレニル単位を含有するものであり、
RA、RBは、相互に無関係に、同一又は異なる、線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基、C3−C8−シクロアルキレン基、1個又は数個不飽和のC2−C20−アルケニレン基、C2−C20−オキシアルキレン基、C2−C20−アラルキレン基又はC2−C20−オリゴ−又はC2−C20−ポリエーテル基、有利には線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基を表し、
XA、XBは、相互に無関係に、場合により置換されたビニル基、塩素−、沃素−、ヒドロキシル−、炭素原子1〜3個を有するアルコキシ基、アルコキシシリル−、シリル−、クロロシリル−、シロキサン−、ヒドロキシ−、カルボキシ−、メチル−又はエチルカーボネート−、アルデヒド−、メチルカルボニル−、アミノ−、アミド−、スルホン−、スルホン酸−、ハロゲンスルホニル−、スルホネート−、ホスホン酸−、ホスホネート−、トリクロロメチル−、トリブロモメチル−、シアネート−、イソシアネート−、チオシアネート、イソチオチオシアネート−、シアノ−、ニトロ基又はHから選択した同一又は異なる基を表し、有利にはジシロキサン又はHを表し、
Yは、相互に無関係に、同一又は異なる基を表すが、有利には場合により置換されたアルコキシシリレン−、シリレン−、クロロシリレン−、メチレン−、ジクロロメチレン−、ジブロモメチレン−又は二価のシロキサン−、ジシロキサン−、カルボキシ−、カーボネート−、アミノ−、アミド−、スルフェート−、ホスホネート−、ホスフェート−又はボレート基から選択した同一基又はS又はO、有利にはエーテル−又は二価のジシロキサン基を表し、
nは、1〜10の整数を表し、有利には1〜3の整数を表す]のオリゴマー化合物。
【請求項2】
Lが、場合により置換されたチオフェン単位を含有する線状共役オリゴマー鎖、有利には、2〜8個、有利には4〜6個の場合により置換されたチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン単位を有する、場合により置換されたオリゴチオフェン鎖及び/又はオリゴ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)鎖であることを特徴とする、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項3】
RA及びRBが、同一又は異なる、線状又は枝分かれC1−C12−アルキレン基であり、XA及びXBが水素であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のオリゴマー化合物。
【請求項4】
Yが二価のジシロキサン基であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項5】
nが1であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の少なくとも1種のオリゴマー化合物及び一般式(P)
【化2】
[式中、
Lは、線状共役オリゴマー鎖、有利には場合により置換されたチオフェン−、フェニレン−又はフルオレニル単位を含有するものであり、
RC、RDは、相互に無関係に、同一又は異なる、線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基、C3−C8−シクロアルキレン基、1個又は数個不飽和のC2−C20−アルケニレン基、C2−C20−オキシアルキレン基、C2−C20−アラルキレン基又はC2−C20−オリゴ−又はC2−C20−ポリエーテル基、有利には線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基を表し、
XC、XDは、相互に無関係に、場合により置換されたビニル基、塩素−、沃素−、ヒドロキシル−、炭素原子1〜3個を有するアルコキシ基、アルコキシシリル−、シリル−、クロロシリル−、シロキサン−、ヒドロキシ−、カルボキシ−、メチル−又はエチルカーボネート−、アルデヒド−、メチルカルボニル−、アミノ−、アミド−、スルホン−、スルホン酸−、ハロゲンスルホニル−、スルホネート−、ホスホン酸−、ホスホネート−、トリクロロメチル−、トリブロモメチル−、シアネート−、イソシアネート−、チオシアネート、イソチオチオシアネート−、シアノ−、ニトロ基又はHから選択した同一又は異なる基を表し、有利にはジシロキサン又はHを表す]の少なくとも1種の化合物を含有する混合物。
【請求項7】
一般式(P)の化合物が、線状オリゴマー鎖Lとして、場合により置換されたチオフェン単位、有利には、2〜8個、有利には4〜6個の場合により置換されたチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン単位を有する、場合により置換されたオリゴチオフェン鎖及び/又はオリゴ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)鎖を含有することを特徴とする、請求項6に記載の混合物。
【請求項8】
Rが、相互に無関係に、同一又は異なる、線状又は枝分かれC1−C12−アルキレン基であり、Xが水素であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の混合物。
【請求項9】
一般式(M)によるオリゴマー化合物及び一般式(P)の化合物が、同じ単位、有利には同じ数の単位を有する線状オリゴマー鎖Lを含有することを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項10】
式(M)のオリゴマー化合物及び一般式(P)の化合物が、質量比99:1〜1:99、有利には20:80〜80:20で含有されていることを特徴とする、請求項6から9までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項11】
付加的に、芳香族物質、エーテル又はハロゲン化脂肪族炭素水素から成る群から選択した溶剤少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項6から10までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項12】
コアが、珪素及び/又は炭素をベースとする高分子基礎構造を有し、炭素をベースとする結合鎖を介して共役二重結合を有する炭素をベースとする線状オリゴマー鎖少なくとも3個と結合しており、線状共役鎖が、各々少なくとも1個のもう一つの、共役二重結合なしの、特に脂肪族、芳香脂肪族又はオキシ脂肪族鎖で飽和されている、コアシェル構造を有する高分子化合物少なくとも1種及び請求項1から5までのいずれか1項に記載のオリゴマー化合物少なくとも1種を含有する混合物。
【請求項13】
コアシェル構造を有する高分子化合物が、一般式(Z)
【化3】
[式中、
Kはn−官能性コアであり、
Vは結合鎖であり、
Lは、線状共役オリゴマー鎖であり、有利には場合により置換されたチオフェン−又はフェニル単位を含有するものであり、
Rは、線状又は枝分かれC2−C20−アルキル基、C3−C8−シクロアルキレン基、1個又は数個不飽和のC2−C20−アルケニル基、C2−C20−アルコキシ基、C2−C20−アラルキル基又はC2−C20−オリゴ−又はC2−C20−ポリエーテル基であり、
qは、3以上の整数、有利には4を表す]のものであることを特徴とする、請求項12に記載の混合物。
【請求項14】
高分子化合物のコアが、樹状又は超高分枝構造、有利には樹状構造を有することを特徴とする、請求項12又は13に記載の混合物。
【請求項15】
高分子化合物の樹状コアが、シロキサン−及び/又はカルボシラン単位を有することを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項16】
高分子化合物のシェルが、線状共役オリゴマー鎖として、2〜8個の場合により置換されたチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有するオリゴチオフェン鎖及び/又はオリゴ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)鎖を含有することを特徴とする、請求項12から15までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項17】
高分子化合物の線状共役オリゴマー鎖が、各々末端結合位置で同一又は異なる、枝分かれ又は枝なしアルキル−又はアルコキシ基、有利にはアルキル基により飽和されていることを特徴とする、請求項12から16のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項18】
コアシェル構造を有する高分子化合物及び一般式(M)のオリゴマー化合物が、質量比99:1〜1:99、有利には10:90〜90:10で含有されていることを特徴とする、請求項12から17までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項19】
一般式(M)のオリゴマー化合物及び式(Z)の高分子化合物が、同じ単位、有利には同じ単位を同じ数有する線状オリゴマー鎖Lを含有することを特徴とする、請求項12から18までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項20】
コアシェル構造を有する高分子化合物及び一般式(M)のオリゴマー化合物の他に付加的に、芳香族物質、エーテル又はハロゲン化脂肪族炭化水素から成る群から選択した溶剤少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項12から19までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項21】
付加的に一般式(P)の化合物少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項12から20までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項22】
一般式(P)の化合物少なくとも1種及びコアシェル構造を有する高分子化合物少なくとも1種を含有する混合物において、コアが、珪素及び/又は炭素をベースとする高分子基本構造を有し、炭素をベースとする結合鎖を介して共役二重結合を有する炭素をベースとする線状オリゴマー鎖少なくとも3個と結合しており、線状共役鎖が、各々少なくとも1個のもう一つの、共役二重結合なしの、特に脂肪族、芳香脂肪族又はオキシ脂肪族鎖で飽和されている、一般式(P)の化合物少なくとも1種及びコアシェル構造を有する高分子化合物少なくとも1種を含有する混合物。
【請求項23】
請求項1から5のいずれか1項に記載のオリゴマー化合物又は請求項6から22のいずれか1項に記載の混合物の電子部品における半導体としての使用。
【請求項24】
部品が、電界効果トランジスタ、発光構造素子、特に有機発光ダイオード又は光起電力電池、レーザー及びセンサーであることを特徴とする、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
オリゴマー化合物又は混合物を、溶液から層の形で部品上に塗布してあることを特徴とする、請求項23又は24に記載の使用。
【請求項26】
請求項1から5までのいずれか1項に記載のオリゴマー化合物又は請求項6から21までのいずれか1項に記載の混合物を半導体として含有する電子部品。
【請求項1】
一般式(M)
【化1】
[式中、
Lは、線状共役オリゴマー鎖、有利には場合により置換されたチオフェン−、フェニレン−又はフルオレニル単位を含有するものであり、
RA、RBは、相互に無関係に、同一又は異なる、線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基、C3−C8−シクロアルキレン基、1個又は数個不飽和のC2−C20−アルケニレン基、C2−C20−オキシアルキレン基、C2−C20−アラルキレン基又はC2−C20−オリゴ−又はC2−C20−ポリエーテル基、有利には線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基を表し、
XA、XBは、相互に無関係に、場合により置換されたビニル基、塩素−、沃素−、ヒドロキシル−、炭素原子1〜3個を有するアルコキシ基、アルコキシシリル−、シリル−、クロロシリル−、シロキサン−、ヒドロキシ−、カルボキシ−、メチル−又はエチルカーボネート−、アルデヒド−、メチルカルボニル−、アミノ−、アミド−、スルホン−、スルホン酸−、ハロゲンスルホニル−、スルホネート−、ホスホン酸−、ホスホネート−、トリクロロメチル−、トリブロモメチル−、シアネート−、イソシアネート−、チオシアネート、イソチオチオシアネート−、シアノ−、ニトロ基又はHから選択した同一又は異なる基を表し、有利にはジシロキサン又はHを表し、
Yは、相互に無関係に、同一又は異なる基を表すが、有利には場合により置換されたアルコキシシリレン−、シリレン−、クロロシリレン−、メチレン−、ジクロロメチレン−、ジブロモメチレン−又は二価のシロキサン−、ジシロキサン−、カルボキシ−、カーボネート−、アミノ−、アミド−、スルフェート−、ホスホネート−、ホスフェート−又はボレート基から選択した同一基又はS又はO、有利にはエーテル−又は二価のジシロキサン基を表し、
nは、1〜10の整数を表し、有利には1〜3の整数を表す]のオリゴマー化合物。
【請求項2】
Lが、場合により置換されたチオフェン単位を含有する線状共役オリゴマー鎖、有利には、2〜8個、有利には4〜6個の場合により置換されたチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン単位を有する、場合により置換されたオリゴチオフェン鎖及び/又はオリゴ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)鎖であることを特徴とする、請求項1に記載のオリゴマー化合物。
【請求項3】
RA及びRBが、同一又は異なる、線状又は枝分かれC1−C12−アルキレン基であり、XA及びXBが水素であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のオリゴマー化合物。
【請求項4】
Yが二価のジシロキサン基であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項5】
nが1であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のオリゴマー化合物。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の少なくとも1種のオリゴマー化合物及び一般式(P)
【化2】
[式中、
Lは、線状共役オリゴマー鎖、有利には場合により置換されたチオフェン−、フェニレン−又はフルオレニル単位を含有するものであり、
RC、RDは、相互に無関係に、同一又は異なる、線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基、C3−C8−シクロアルキレン基、1個又は数個不飽和のC2−C20−アルケニレン基、C2−C20−オキシアルキレン基、C2−C20−アラルキレン基又はC2−C20−オリゴ−又はC2−C20−ポリエーテル基、有利には線状又は枝分かれC2−C20−アルキレン基を表し、
XC、XDは、相互に無関係に、場合により置換されたビニル基、塩素−、沃素−、ヒドロキシル−、炭素原子1〜3個を有するアルコキシ基、アルコキシシリル−、シリル−、クロロシリル−、シロキサン−、ヒドロキシ−、カルボキシ−、メチル−又はエチルカーボネート−、アルデヒド−、メチルカルボニル−、アミノ−、アミド−、スルホン−、スルホン酸−、ハロゲンスルホニル−、スルホネート−、ホスホン酸−、ホスホネート−、トリクロロメチル−、トリブロモメチル−、シアネート−、イソシアネート−、チオシアネート、イソチオチオシアネート−、シアノ−、ニトロ基又はHから選択した同一又は異なる基を表し、有利にはジシロキサン又はHを表す]の少なくとも1種の化合物を含有する混合物。
【請求項7】
一般式(P)の化合物が、線状オリゴマー鎖Lとして、場合により置換されたチオフェン単位、有利には、2〜8個、有利には4〜6個の場合により置換されたチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン単位を有する、場合により置換されたオリゴチオフェン鎖及び/又はオリゴ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)鎖を含有することを特徴とする、請求項6に記載の混合物。
【請求項8】
Rが、相互に無関係に、同一又は異なる、線状又は枝分かれC1−C12−アルキレン基であり、Xが水素であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の混合物。
【請求項9】
一般式(M)によるオリゴマー化合物及び一般式(P)の化合物が、同じ単位、有利には同じ数の単位を有する線状オリゴマー鎖Lを含有することを特徴とする、請求項6から8までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項10】
式(M)のオリゴマー化合物及び一般式(P)の化合物が、質量比99:1〜1:99、有利には20:80〜80:20で含有されていることを特徴とする、請求項6から9までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項11】
付加的に、芳香族物質、エーテル又はハロゲン化脂肪族炭素水素から成る群から選択した溶剤少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項6から10までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項12】
コアが、珪素及び/又は炭素をベースとする高分子基礎構造を有し、炭素をベースとする結合鎖を介して共役二重結合を有する炭素をベースとする線状オリゴマー鎖少なくとも3個と結合しており、線状共役鎖が、各々少なくとも1個のもう一つの、共役二重結合なしの、特に脂肪族、芳香脂肪族又はオキシ脂肪族鎖で飽和されている、コアシェル構造を有する高分子化合物少なくとも1種及び請求項1から5までのいずれか1項に記載のオリゴマー化合物少なくとも1種を含有する混合物。
【請求項13】
コアシェル構造を有する高分子化合物が、一般式(Z)
【化3】
[式中、
Kはn−官能性コアであり、
Vは結合鎖であり、
Lは、線状共役オリゴマー鎖であり、有利には場合により置換されたチオフェン−又はフェニル単位を含有するものであり、
Rは、線状又は枝分かれC2−C20−アルキル基、C3−C8−シクロアルキレン基、1個又は数個不飽和のC2−C20−アルケニル基、C2−C20−アルコキシ基、C2−C20−アラルキル基又はC2−C20−オリゴ−又はC2−C20−ポリエーテル基であり、
qは、3以上の整数、有利には4を表す]のものであることを特徴とする、請求項12に記載の混合物。
【請求項14】
高分子化合物のコアが、樹状又は超高分枝構造、有利には樹状構造を有することを特徴とする、請求項12又は13に記載の混合物。
【請求項15】
高分子化合物の樹状コアが、シロキサン−及び/又はカルボシラン単位を有することを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項16】
高分子化合物のシェルが、線状共役オリゴマー鎖として、2〜8個の場合により置換されたチオフェン−又は3,4−エチレンジオキシチオフェン−単位を有するオリゴチオフェン鎖及び/又はオリゴ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)鎖を含有することを特徴とする、請求項12から15までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項17】
高分子化合物の線状共役オリゴマー鎖が、各々末端結合位置で同一又は異なる、枝分かれ又は枝なしアルキル−又はアルコキシ基、有利にはアルキル基により飽和されていることを特徴とする、請求項12から16のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項18】
コアシェル構造を有する高分子化合物及び一般式(M)のオリゴマー化合物が、質量比99:1〜1:99、有利には10:90〜90:10で含有されていることを特徴とする、請求項12から17までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項19】
一般式(M)のオリゴマー化合物及び式(Z)の高分子化合物が、同じ単位、有利には同じ単位を同じ数有する線状オリゴマー鎖Lを含有することを特徴とする、請求項12から18までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項20】
コアシェル構造を有する高分子化合物及び一般式(M)のオリゴマー化合物の他に付加的に、芳香族物質、エーテル又はハロゲン化脂肪族炭化水素から成る群から選択した溶剤少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項12から19までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項21】
付加的に一般式(P)の化合物少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項12から20までのいずれか1項に記載の混合物。
【請求項22】
一般式(P)の化合物少なくとも1種及びコアシェル構造を有する高分子化合物少なくとも1種を含有する混合物において、コアが、珪素及び/又は炭素をベースとする高分子基本構造を有し、炭素をベースとする結合鎖を介して共役二重結合を有する炭素をベースとする線状オリゴマー鎖少なくとも3個と結合しており、線状共役鎖が、各々少なくとも1個のもう一つの、共役二重結合なしの、特に脂肪族、芳香脂肪族又はオキシ脂肪族鎖で飽和されている、一般式(P)の化合物少なくとも1種及びコアシェル構造を有する高分子化合物少なくとも1種を含有する混合物。
【請求項23】
請求項1から5のいずれか1項に記載のオリゴマー化合物又は請求項6から22のいずれか1項に記載の混合物の電子部品における半導体としての使用。
【請求項24】
部品が、電界効果トランジスタ、発光構造素子、特に有機発光ダイオード又は光起電力電池、レーザー及びセンサーであることを特徴とする、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
オリゴマー化合物又は混合物を、溶液から層の形で部品上に塗布してあることを特徴とする、請求項23又は24に記載の使用。
【請求項26】
請求項1から5までのいずれか1項に記載のオリゴマー化合物又は請求項6から21までのいずれか1項に記載の混合物を半導体として含有する電子部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−503635(P2010−503635A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527804(P2009−527804)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059506
【国際公開番号】WO2008/031813
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(507239651)ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (59)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059506
【国際公開番号】WO2008/031813
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(507239651)ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (59)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】
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