説明

半導体材料の複合ロッドを複数のウェハに同時に切断する方法

【課題】複合ロッドから製造されるウェハの反りを改善する。
【解決手段】半導体材料の複合ロッドをワイヤソーによって複数のウェハに同時に切断する方法において、a)1つ又は2つ以上の半導体ロッドから切断された、貯蔵された加工物から少なくとも2つの加工物を選択し;b)各ロッドの2つの端面のうちの少なくとも一方を研削し;c)複合ロッド片を製造するために少なくとも2つの加工物を研削された端面において接合し、複合ロッド片を長手方向に取り付けプレートに固定し、加工物の間に配置された固定手段による加工物の間の距離のみが個々に存在し;d)複合ロッド片が固定された取付けプレートをワイヤソーに締め付け;e)複合ロッドを長手方向軸線に対して垂直にワイヤソーによって切断するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体材料の複合ロッドを複数のウェハに同時に切断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料の加工物は一般的にワイヤソーによってウェハに切断される。ワイヤソーは従来技術において、半導体材料、例えばシリコンの円筒状の単結晶又は多結晶の加工物を一回の加工作業で同時に複数のウェハに切断するために使用されている。ワイヤソーのスループットはこの場合、方法の経済的実現性のために極めて重要である。
【0003】
ウェハが製造される方法に応じて、より短い及びより長いロッド片がウェハ製造において得られる。例えば結晶特性を試験するために、単結晶からロッド部分を切断することもしばしば必要である。次いでこれらの様々なロッド長さを切断する時にスループットを増大させるために、複数の加工物は、ワイヤソーにおいて同時に締め付けられ、一回の加工作業で切断される。
【0004】
米国特許第6119673号明細書には、同軸に相前後して配置された複数の円筒状の加工物の同時切断が記載されている。このために、慣用のワイヤソーが使用され、その際、複数の加工物は個々に、共通の取付けプレートに同軸配置で所定の間隔を置いて固定されている切断ストリップに接着され、取付けプレートによって加工物は、ワイヤソーに締め付けられ、同時に切断される。これは、依然として取付けプレートに固定されている、加工物の数に対応する多数のウェハのパケットを生じる。切断後、様々なパケットのウェハの混在を回避するためにウェハのパケットの間の間隔に分離プレートが緩く配置される。
【0005】
米国特許第6802928号明細書には、方法が記載されており、この方法において、同じ断面の疑似部材が、切断されるべき加工物の端面に接着されており、これらの疑似部材は加工物と一緒に切断され、次いで廃棄される。これは、加工物の2つの端部において得られるウェハが、切断の最終段階の間に拡開することを回避し、ウェハのジオメトリを改善しようとするものである。この方法は、ワイヤソーの寸法によって制限されるギャング長さの一部が、"使用されない"疑似部材を切断するために使用されるという決定的な欠点を有する。さらに、疑似部材の提供、取扱及び接着が、管理することが極めて手間がかかりかつ困難である。
【0006】
米国特許第6119673号明細書に記載のようにワイヤソーにおいて複数の加工物を同時に切断する場合、ワイヤソーのギャング長さも最適に使用されることができない。なぜならば、切断されるべき加工物は、製造される形態に応じて極めて異なる長さを有するからである。この問題は、特に加工物が単結晶半導体材料から成る場合にいつでも生じる。なぜならば、公知の結晶引上げ法は、結晶の利用可能な長さのみを許容するか、又は結晶引上げ法を監視するために、既に上述のように、結晶を分割し、結晶の様々な位置における試験試料を生ぜしめる必要があるからである。
【0007】
DE102006050330は、少なくとも2つの円筒状の加工物をワイヤソーによって複数のウェハの同時に切断する方法を開示しており、この場合、2つ以上の加工物が、貯蔵された加工物の中から選択され、これらの加工物は相前後して取付けプレートに固定され、加工物の間に所定の最小距離が個々に維持され、ワイヤソーに締め付けられ、ワイヤソーによって加工物の長手方向軸線(幾何学的軸線)に対して垂直に切断される。この方法はワイヤギャング長さのより良好な利用を可能にする。混在を回避するため、米国特許第6119673号明細書に記載された方法と同様に、分離片がウェハパケットの間に横方向に挿入され、次いでウェハキャリヤに固定される。分離片は、ウェハパケットを、側方に離れる方向へ傾斜することからも保護する。
【0008】
全ての公知の方法に共通の特徴は、ロッド片の間の距離が、ロッド片を切断するために維持されるということである。
【0009】
上述の方法において、このように組み立てられた特定の長さのロッドから切断されたウェハの幾何学的ばらつきは、対応する長さの単一の半導体ロッドから切断されたウェハと比較して生じることが分かっている。これは、複合ロッドと単一のロッドとが等しい長さであり、かつ使用されるワイヤギャングがしたがって同じである場合にも観察される。
【0010】
厚さのばらつき(TTV,GBI)の他に、半導体ウェハの2つの面の平坦度が極めて重要である。半導体単結晶、例えばシリコン単結晶をワイヤソーによって切断した後、このように製造されたウェハは、波状の表面を有する。その後のステップ、例えば研削又はラッピングにおいて、このうねりは、うねりの波長及び振幅と、材料除去の深さとに応じて、部分的に又は完全に除去されることができる。最悪の場合、数mmから例えば50mmまでの周期を有することがあるこのような表面の不規則さ("波打ち","うねり")は、仕上げが行われた半導体ウェハにおけるポリッシングの後にさえも依然として検出され、この場合、このような不規則さは局所的なジオメトリに不利な影響を与える
従来技術から知られる方法の欠点は、所望の理想的なウェハ形状からの実際のウェハ形状のずれの程度としてのバウ及びワープ(又は"そり")に関して特に重要であることが分かっている。これは、特にウェハのワープに属する。ワープは、SEMI規格M1−1105に規定されており、ウェハの裏側における基準平面に関するウェハの中間平面の最小及び最大のずれの差を示す。単純に表現すると、ワープはウェハの変形の程度を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6119673号明細書
【特許文献2】米国特許第6802928号明細書
【特許文献3】DE102006050330
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、このような幾何学的なばらつきを回避すること、特に複合ロッドから製造されるウェハのワープを改善することである。
【0013】
発明者は、従来技術におけるこれらの幾何学的なばらつきが、ロッド片の間隔による技術的なプロセス変化によるものであることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的は、以下のステップ:
a)1つ又は2つ以上の半導体ロッドから切断された、貯蔵された加工物から少なくとも2つの加工物を選択する;
b)各ロッドの2つの端面のうちの少なくとも一方を研削する;
c)複合ロッド片を製造するために少なくとも2つの加工物を研削された端面において固定手段を使用することによって接合し、複合ロッド片を長手方向に取付けプレートに固定し、加工物の間に配置された固定手段による加工物の間の距離のみが個々に存在する;
d)複合ロッド片が固定された取付けプレートをワイヤソーに締め付ける;
e)複合ロッドをワイヤソーによって長手方向軸線に対して垂直に切断する;
を含む、半導体材料の複合ロッドをワイヤソーによって複数のウェハに同時に切断する方法によって達成される。
【0015】
ステップa)における加工物の切断は、好適にはワイヤソーを用いて行われる。内周刃式切断機の使用も同様に適切である。ステップc)において使用される固定手段は好適には接着剤であってよい。
【0016】
接着により結合される、少なくとも2つの加工物の2つの端面が平行平面であるように端面を研削することにより、2つのロッド片の間の接着部をできるだけ小さくすることができる。
【0017】
好適には、同じ半導体ロッドの隣接するロッド位置からのロッド片のみが接着される。したがって、2つのロッド片は好適には同じ結晶仕様(たとえば欠陥特性、ドーピング等)を有する。
【0018】
好適には、正確に2つのロッド片が接着される。
【0019】
さらに、ロッド片は好適には、引張り縁部を整合させながら(引張り縁部を同一平面にしながら)接着される。
【0020】
接合されたロッドは好適には、380mm以下の全長を有する。
【0021】
二液型接着剤が好適には接着剤として使用される。例えば、Huntsman Advanced MaterialsのAralditeブランドの高性能二液型接着剤がこれに適している。
【0022】
最後に、複合ロッドはワイヤソーによってウェハに切断される。ワイヤソー切断ステップ自体は従来技術に従って行われる。
【0023】
複合ロッドは好適にはワイヤソー切断ステップの前に丸く研削される。しかしながら、複合ロッドを形成するために組み立てられる前に加工物を丸く研削することも同様に好適である。
【0024】
単結晶を個々のロッド片に切断する場合、単結晶は慣用的に幾何学的な軸線に切断される。その後、しかしながら、個々のロッド片(向きを規定した後)慣用的に結晶軸に対して平行に丸く研削される。幾何学的な軸線と結晶軸との相違は、端面の対応する傾斜を生じ、この傾斜は、端面の対応する直角の研削によって修正される。
【0025】
状況は、単結晶において隣接する位置を前もって占めていた加工物のために異なる。ここでは、端面を研削することを回避することも考えられかつ好適であり、加工物を丸く研削する前に加工物が複合ロッドに組み立てられる、すなわち複合体として加工物を丸く研削することも考えられかつ好適である。
【0026】
分離片を使用することなく複合ロッドを形成するためにロッド片を組み立て、その後切断することは、ワイヤソーの使用がさらに改良されるので従来技術と比較してより経済的な実施を提供する。
【0027】
他方では、本発明による複合ロッドは、切断プロセスにおいて単一のロッドとして同様に働く。従来技術において見られる幾何学的なばらつきが回避されることができる。
【0028】
好適には、以下の手順が詳細に採用される:
a)まず、結晶からバンドソーによって切断された、異なる長さであることができる加工物が、丸く研削される。
丸く研削されたあと、ロッド片端面は、結晶軸及び方位に関する規定された角度設定において、研削される。次いで、ロッド片の2つの端部側は、正確に互いに平行である;
b)このようにして準備されたロッド片は、貯蔵され、組立てのための計画システムに利用される。計画システムは、ギャング長さの最大限の使用のための最適な構成を決定し、これを複合ロッドの準備のために提案する;
c)選択されたロッド片は、接合のために準備される:すなわち、接着されるための位置を浄化し、接合剤を規定された層厚さで塗布し(例えば鋸歯状のへらによって)、接合装置によって整合させ、組立て、パケットを同一平面を固定し、
切断ストリップを接合及び固定し、最後に接着剤を硬化させ;
d)ワイヤソーによって複合ロッドを切断する;
e)接合位置を検出し、接合剤を除去し、ロッドを分離する。ロッド片には好適には前もって、材料の識別のために側面に対応するマークが提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】複合ロッドを示す斜視図である。
【図2】従来技術による組み立てられたロッド片と、本発明による複合ロッドとのための、幾何学的なパラメータの様々な値の比較を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ワイヤソーにおけるワイヤギャング長さをできるだけ効率的に使用するために、(同じ元の半導体ロッドからの)2つのロッド片は、接合され、ワイヤソーによる切断によって、"ウェハ化"、すなわちウェハに切断される。
【0031】
このために、シリコンのロッド片は、丸く研削されていない状態において、それぞれが97mmと91mmとの長さを備える2つのロッド片に切断される。2つのロッド片は、正確な引張り縁部と整合しながら、端面においてAralditeブランドの二液型接着剤を用いて接着される。
【0032】
この"複合ロッド"は、引き続き丸く研削され、亜鉛ワイヤを使用するワイヤソーによって、ウェハに切断され、完全に分析される。
【0033】
この場合における利点は、使用されるAralditeブランドの二液型接着剤が切断されることができるということである。実施例において、2つのロッド片のためのロッドの向きは同じである。
【0034】
基本的に、加工物は、ワイヤソーのギャング長さが最適に使用されるように、異なる長さであることができる貯蔵された加工物から選択される。分離片が使用されないので、組み立てられた加工物の間の接着部は最小限であり、したがって、ワイヤソーの能力はより良好に利用され、これは従来技術と比較してプロセスの生産性をさらに増大する。
【0035】
慣用のワイヤソーは、本発明による方法において使用されてよい。これらのワイヤソーの基本的な構成要素は、機械フレームと、前方送り装置と、平行なワイヤ区分のギャング(一群)から成る切断工具とを含む。加工物は概して取付けプレートに固定され、この取付けプレート共にワイヤソーに締め付けられる。
【0036】
概して、ワイヤソーのワイヤギャング(ワイヤ群)は、少なくとも2つ(選択的には3つ、4つ又はそれ以上)のワイヤ案内ロールの間において緊張させられた多数の平行なワイヤ区分によって形成されており、ワイヤ案内ロールは回転可能に取り付けられており、ワイヤ案内ロールのうちの少なくとも1つは駆動される。ワイヤ区分は概して1つの有限ワイヤに属しており、この有限ワイヤは、ロールシステムの周囲にらせん状に案内されており、貯蔵ロールから受容ロールへ巻き出される。ギャング長さは、第1のワイヤ区分から最後のワイヤ区分まで、ワイヤ案内ロールの軸線に対して平行にかつワイヤ区分に対して垂直な方向な方向で測定されるワイヤ群の長さである。
【0037】
切断プロセスの間、前方送り装置は、ワイヤ区分と加工物との互いに反対の相対移動を誘発する。この前方送り移動の結果、切断懸濁液が提供されるワイヤは、加工物を通過し、平行な切断切り口を形成する。スラリとも呼ばれる切断懸濁液は、液体中に懸濁された、例えば炭化ケイ素の硬い材料粒子を含んでいる。しっかりと結合された硬い材料粒子を備えた切断ワイヤが使用されてもよい。この場合、切断懸濁液を提供する必要はない。ワイヤ及び加工物を過熱から保護しかつ同時に加工物削りくずを切断溝から搬出する、液体冷却潤滑剤を供給することだけが必要である。
【0038】
複合ロッドを形成するために組み立てられた円筒状の加工物は、ワイヤソーによって処理されることができる材料、例えば、シリコン等の単結晶又は多結晶の半導体材料から成ってよい。単結晶シリコンの場合、加工物は概して、実質的に円筒状のシリコン単結晶を、数センチメートルから数十センチメートルの長さを備えた結晶片に切断することによって製造される。結晶片の最小長さは概して5cmである。加工物、例えばシリコンから成る結晶片は、概して極めて異なる長さを有するが、常に同じ断面を有している。"円筒状"という言葉は、加工物が円形の断面を有していなければならないことを意味すると解釈されるべきではない。むしろ、加工物は、あらゆる一般化された円筒の形状を有してよい。ただし、円筒状の断面を備えた加工物への本発明の適用が好適である。一般化された円筒は、閉鎖された準線曲線を備えた円筒面と、2つの平行な平面、つまり円筒の底面とによって区切られている。
【0039】
複合ロッドは好適には取付けプレートに直接に固定されるのではなく、まず、いわゆる切断ストリップ又は切断支持体に固定される。加工物は、概して、接着剤によって切断ストリップに固定される。
【0040】
取付けプレートは、この取付けプレートに固定された複合ロッドと一緒にワイヤソーに締め付けられ、同時に、長手方向軸線に対して基本的に垂直に、ウェハに切断される。
【0041】
発明を以下に図面を用いて説明する。
【0042】
図1は、複合ロッド1を形成するために組み立てられた2つの加工物11及び12と、接着部2と、切断ストリップ3と、取付けプレート4とを示している。
【0043】
加工物11及び12は、複合ロッド1を形成するために二液型接着剤を用いて組み立てられている。2つの加工物が接着される端面における製造精度により、接着部2はできるだけ小さく選択されることができる。複合ロッド1を形成するために組み立てられた加工物11及び12は切断ストリップ3に接合されている。2つの加工物11及び12を含みかつ切断ストリップ3を備える複合ロッド1は、取付けプレート4に固定され、ワイヤソーに締め付けられる。
【0044】
表1は、従来技術による組み立てられたロッド片(欄2)と、本発明による複合ロッド(欄3)のための幾何学的なパラメータの様々な値の比較を示している。
【0045】
3つの異なる分位数の3つの値が各パラメータに対して与えられている:すなわち、Wav_max 97.7%=56.29μm/mmは、ウェハの97.7%が56.29μm/mm以下のWav_maxを有することを意味する。
【0046】
従来技術に対する著しい改善が、実質的に全ての調査されたパラメータ及び分位数に対して見られた。
【0047】
ワイヤソーの前方送り方向におけるウェハのジオメトリは、例えば走査型容量センサ対によって決定される。まず、前側及び後側の信号の差が決定される。うねりを決定するために、10mmの長さを備えたウインドウが、このようにして得られた評価曲線上を通過させられる。ウインドウ内での最大のずれは、ウインドウ中心のための新たな値を生ぜしめる(ローリング・ボックスカー・フィルタリング)。ウェハ全体にわたる走査内での最大のずれ(ピーク・トゥ・バレー(PV))は、Waviness_max(Wav_max)である。Waviness_inは、同様の形式で決定されるが、走査の最初の50mmだけ(ワイヤソー切り込み領域)だけが考慮される(同様にこれに対して:Wav_out)。
【0048】
バウ及びワープは、ウェハの変形の程度を表している。ワープは、基準平面からの、ウェハ全体の中立素分の(上方及び下方への)最大のずれの合計である(三次元)。
【0049】
【表1】

【0050】
線形形状範囲(LSR)は、真っ直ぐな基準線からのワイヤソーの前方送り方向における走査の中立素分の最大のずれの合計に相当する(二次元)。
【0051】
GBIRは、以前はTTVとも呼ばれ、合計厚さのばらつき(最大厚さと最小厚さとの差)に相当する。
【0052】
例えば、E+H Eichhorn+Hausmannの測定機器MX7012(切断されたままのウェハのための高解像度厚さ及び表面プロファイラ)は、前記幾何学的なパラメータを決定するのに適している。
【0053】
また、切断されたウェハのワープの分布(μmにおけるワープに対する%における分位数)は、単一のロッド(個々の加工物から組み立てられていない)と、本発明による複合ロッドと、従来技術による加工物から組み立てられたロッド(分離片を用いて互いに分離されている)とに対して、一回決定された。全てのロッドは、380mmの同じ長さと、同じ結晶仕様と、同じ方位とを有していた。
【0054】
ワープの分布における著しい改善が、従来技術における組み立てられた加工物と比較して見られた。これは、ワイヤソー切断中に、本発明による複合ロッドが、加工物から組み立てられた1つのロッドのように働くということを証明している。
【0055】
要求の過酷なワープ仕様のあるオーダのために、本発明はしたがって、複合ロッドから複数のウェハを製造することを可能にし、これらのウェハは、比較的低レベルにおける"ワープ"幾何学的パラメータの比較的狭い分布を有する。
【0056】
図2は、従来技術による2つの加工物から組み立てられたロッドと、本発明による複合ロッドとのためのWav_maxパラメータの分布を同様に示しており、本発明による複合ロッドもまた2つの加工物から組み立てられているが、本発明によれば、これらの加工物は、固定手段(二液型接着剤)によってのみ互いから分離されている。Wav_max値は、加工物A及びBの接合位置の近傍における、加工物A及びBの7つのロットのために個々に表わされている。切断の後、ロッドは複数のウェハを含み、これらのウェハは、カセット(ウェハボックス)に引き続き収容される("分割ロット")。ウェハごとのWav_max値は各ロットのために決定された。5は複合ロッドのための加工物A及びBの間の接合位置又は接着位置を示している。
【0057】
本発明による二重ロッドにおいて、ロットA1とB1との間に距離が存在する。加工物は互いに接着されているのではなく、切断ストリップにおいて互いから所定の距離を置いて接着されている。従来技術による二重ロッドのためのロットA1とB1との間に、Wav_max値の著しい跳躍が見られる。うねりにおけるこのような跳躍は、切断後に本発明による複合ロッドにおいて生じない。つまり、ロットA1及びB1のうねり値は実質的に同じであり、これは、本発明による方法の利点を示している。
【0058】
ロットB7に続くロット(図示されていない)は、より高いWav_max値を示す。これにより、表1に示されたより高い分位数も説明される。しかしながら、うねりのこのような上昇は、1つのロッドにおいても生じ、本発明の範囲において注目すべき点ではない。図2は、加工物Aと加工物Bとの移行領域におけるうねりの分布のみに関する。
【0059】
要求の過酷なうねり仕様を備えたオーダのために、したがって、本発明は、図2に示されているように、特に、組み立てられた加工物の接合位置の領域において従来技術で観察された跳躍を回避しながら、"うねり"パラメータの比較的狭い分布を有する(表1参照)複数のウェハを、複合ロッドから製造することを可能にする。
【符号の説明】
【0060】
1 複合ロッド、 2 接着部、 3 切断ストリップ、 4 取付けプレート、 11,12 加工物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体材料の複合ロッドをワイヤソーによって複数のウェハに同時に切断する方法において、
a)1つ又は2つ以上の半導体ロッドから切断された、貯蔵された加工物から少なくとも2つの加工物を選択し;
b)各ロッドの2つの端面のうちの少なくとも一方を研削し;
c)複合ロッド片を製造するために少なくとも2つの加工物を研削された端面において接合し、複合ロッド片を長手方向に取り付けプレートに固定し、加工物の間に配置された固定手段による加工物の間の距離のみが個々に存在し;
d)複合ロッド片が固定された取付けプレートをワイヤソーに締め付け;
e)複合ロッドを長手方向軸線に対して垂直にワイヤソーによって切断するステップを含むことを特徴とする、半導体材料の複合ロッドをワイヤソーによって複数のウェハに同時に切断する方法
【請求項2】
加工物が、ワイヤソー又は内周刃式切断機を用いてステップa)において切断される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
同じ半導体ロッドの隣接するロッド位置からの加工物が、互いに接合される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
正確に2つの加工物が互いに接合される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
引張り縁部を整合させながら、つまり引張り縁部を同一平面にしながら、加工物が互いに接合される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
互いに接合されたロッドが、380mm以下の合計長さを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
固定手段が、少なくとも2つの加工物を互いに接合するための接着剤である、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
固定手段が、少なくとも2つの加工物を互いに接合するための二液型接着剤である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
複合ロッドが、ステップe)におけるワイヤソー切断の前に丸く研削される、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
加工物が、複合ロッドを形成するために組み立てられる前にすでに丸く研削される、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ステップb)による端面の研削が行われず、加工物が元の半導体ロッドにおける隣接するロッド位置を占めているならば、加工物が、加工物を丸く研削する前に複合ロッドを形成するために組み立てられる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
加工物の2つの端面が、加工物の端面が互いに対して正確に平行になるように、結晶格子及び結晶方位の設定に関して規定された角度設定で研削される、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
材料の識別のために加工物の側面に、対応するマークが設けられている、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
複合ロッドにおいて、該複合ロッドが、互いに平行な端面において接合された半導体材料の少なくとも2つの加工物を含み、前記複合ロッドが、特に単一のロッドから得られるウェハのワープ値から僅かにのみ異なる複合ロッドから形成されたウェハのワープ値の分布に関して、ワイヤソーによって複数のウェハに切断される場合に、加工物から組み立てられていない実質的に半導体材料の1つのロッドとして働くことを特徴とする、複合ロッド。
【請求項15】
第2の加工物の端面と接合された端面の領域における、第1の加工物から切断されたウェハのWaviness_maxパラメータが、同様に第1の加工物の端面と接合された端面の領域における、第2の加工物から切断されたウェハのWaviness_maxから、僅かにのみ異なることを特徴とする、請求項14記載の複合ロッド。
【請求項16】
請求項14又は15のいずれか1項記載の複合ロッドからワイヤソーによって切断された半導体ウェハ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−98307(P2010−98307A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−233045(P2009−233045)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】