説明

半導体用研磨剤、その製造方法及び研磨方法

【課題】分散安定性、優れた研磨特性及び優れた研磨の平坦化特性を同時に備える半導体用研磨剤の提供。
【解決手段】酸化セリウム砥粒、多糖類、水溶性有機高分子及び陰イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上および水を含む半導体用研磨剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造工程における化学的機械的研磨用の半導体用研磨剤及び研磨方法に関し、特に、シャロートレンチ分離や層間絶縁膜の平坦化に適した酸化セリウムを含む半導体用研磨剤、その製造方法及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化・高機能化の要請から、素子の高密度化のための微細加工技術の開発が進められている。特に、化学的機械的研磨法(Chemical Mechanical Polishing:以下CMPという)による平坦化技術の重要性が高まっている。例えば、半導体デバイスの微細化や配線の多層化が進むにつれ、製造工程における各層での表面の凹凸(段差)が大きくなりやすい。この段差がフォトリソグラフィの焦点深度を越え、十分な解像度が得られなくなるという問題を防ぐために、多層配線形成工程での層間絶縁膜や埋め込み配線の平坦化技術が重要である。
【0003】
また、従来の半導体デバイスでは、トランジスタなどの素子間を電気的に分離するために、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法というシリコン基板の選択的熱酸化法が用いられてきたが、熱酸化で形成される分離領域が体積膨張のため表面に凸凹を発生させる問題があった。また、横方向へ酸化が進行して素子領域に食い込む問題もあり、微細化の障害となっていた。そのため、近年ではシャロートレンチによる素子分離法(Shallow Trench Isolation:以下STIという)が導入されている。これは、素子領域を電気的に絶縁するために、シリコン基板にトレンチ溝を設け、トレンチ溝内にシリコン酸化膜などの絶縁膜を埋め込むものである。
【0004】
図1を用いてSTI工程について説明する。図1(a)は、素子領域をシリコン窒化膜3等でマスクして、シリコン基板1にトレンチ溝10を形成した後、トレンチ溝10を埋め込むようにシリコン酸化膜2などの絶縁膜を堆積した状態である。この状態において、CMPによって、凸部であるシリコン窒化膜3上の余分なシリコン酸化膜2を研磨除去し、凹部であるトレンチ溝10内の絶縁膜を残すことにより、トレンチ内に絶縁膜を埋め込んだ阻止分離構造が得られる。CMPの際、シリコン酸化膜の研磨速度とシリコン窒化膜の研磨速度に選択比を持たせ、図1(b)のようにシリコン窒化膜3が露出した時点で研磨が終了するように、シリコン窒化膜3をストッパーとして使用することが一般的である。この研磨速度に選択比を持たせるのが、CMP用の研磨剤に大きな効果であり、通常の研磨剤では実現しえない効果である。
【0005】
ここで、研磨が過剰であると、図1(c)に示すようにトレンチ溝部10に埋め込まれたシリコン酸化膜が研磨されて窪み、ディッシングと呼ばれる窪み20のような構造的欠陥が発生し、平坦化が不十分になったり、電気的な性能が劣化する場合がある。ディッシングの程度はトレンチ溝の幅に依存し、特に幅の広いトレンチ溝ではディッシングが大きくなる傾向がある。
【0006】
従来より、CMPに用いられる研磨砥粒としてはシリカ砥粒が一般的であったが、シリコン酸化膜の研磨速度とシリコン窒化膜の研磨速度の選択比が小さいため、STI工程においてはこれらに対する研磨選択性に優れた酸化セリウム砥粒が用いられるようになってきている。
【0007】
特許文献1には、酸化セリウム砥粒と、添加剤としてカルボキシル基又はカルボキシル基の塩からなる親水基を含む有機化合物を含む研磨剤により、凹部に対し凸部を優先的に研磨し平坦化する技術が開示されている。ここでいう添加剤はディッシングのトレンチ溝幅依存性を改善するものであり、広いトレンチ溝でもディッシングを低減するためには、上述の添加剤濃度が高い必要がある。しかし添加剤濃度を高めると、酸化セリウム砥粒の凝集を促進するため、砥粒の沈殿が起こり研磨剤の分散安定性が低下する。また、砥粒の凝集が起こるとスクラッチが増加し、デバイスが不良になるという問題もある。
【0008】
例えば、日本特許第3278532号では、純水に砥粒として研磨液全質量の1%の酸化セリウムと、添加剤として6.0%のポリカルボン酸アンモニウム塩を含む研磨液の実施例が開示されている。しかし添加剤が高濃度であるため砥粒の凝集が著しく、研磨液を静置した場合、酸化セリウム砥粒は数分以内に完全に沈降する。CMPの研磨工程では、研磨を行わない待機時間があるため、研磨剤が常に撹拌や流動されていない部分で砥粒の沈降が発生し、配管部品の閉塞の原因になることがある。
【0009】
これを防ぐため、研磨パッド直前の配管内や研磨パッド上で研磨剤に添加剤を混合する方法もあるが、混合が不十分となったり濃度が不均一になりやすく、研磨特性が不安定になりやすい。また、パッド上に砥粒が凝集、付着しやすくなるため、スクラッチが増加するという問題もあった。
【0010】
また、酸化セリウム砥粒は、従来のシリカ砥粒に比べ研磨特性は優れるものの、比重が大きいため沈降しやすい。さらに研磨特性の改善のため添加剤を過剰に添加すると凝集が促進され、凝集沈降が著しいという大きな問題がある。
【0011】
特許文献2には、シャロートレンチ分離に適用可能な研磨剤として、酸化セリウム粒子、水、陰イオン性界面活性剤を含む研磨剤であって、そのpH及び粘度(mPa・s)を、それぞれpHをx、粘度をyとする(x,y)座標で表すと、A点(5.5,0.9)、B点(5.5,3.0)、C点(10.0,3.0)、D点(9.0,0.9)の4点で囲まれた領域範囲内にある研磨剤が好ましいものとして開示されている。そして、グローバルな平坦化を実現するためには、パターン凹部の研磨速度が凸部の研磨速度に比べて十分小さい研磨特性が得られる範囲に界面活性剤の添加量及びpHを調整する必要があり、研磨剤の粘度は、1.0〜2.5mPa・s、特に1.0〜1.4mPa・sが好ましいと記載されている。
【0012】
また、界面活性剤の添加量とともに粘度が増加するので、粘度を1.0〜1.4mPa・sの範囲内にしてパターン依存性の少ない平坦化特性を実現するためには、界面活性剤を添加した後の研磨剤のpHは5.5〜9、特に6〜8.5が好ましく、このpH範囲ではシリコン酸化膜の研磨速度とシリコン窒化膜の研磨速度の選択比を大きくできると記載されている。また、砥粒に対しあらかじめ微量の分散剤を添加することを例示している。
【0013】
しかし、この公開公報の実施例に基づいて研磨剤を作製すると、砥粒を分散させた液に界面活性剤を添加することにより、平均粒径が砥粒分散液の平均粒径の2〜3倍に凝集する。そのため、研磨剤中の砥粒の分散性が悪く、数分以内に砥粒が沈降し、使用が困難であり、研磨速度も不十分であった。また、界面活性剤の濃度が高い場合はディッシングのバラツキが小さく平坦化特性に優れているが、界面活性剤の濃度が低めの実施例に基づく研磨剤では、ディッシングのバラツキが大きく平坦化特性がよくなかった。
【0014】
さらに、界面活性剤の濃度が高くなると、スクラッチ数が急激に増加する。これは、界面活性剤の濃度が高いと酸化セリウム砥粒の凝集、沈降が促進され、研磨パッド上に蓄積されるためと考えられる。すなわち、研磨砥粒中にスクラッチの原因となる粗大粒子が僅かでも存在すると、砥粒が凝集することにより研磨パッド上に蓄積し、スクラッチの増加の原因となっていると考えられる。また、凝集により巨大化した研磨砥粒凝集体そのものもスクラッチの原因になる場合もあると考えられる。
【0015】
このように、従来技術においては、研磨剤の分散安定性及び優れたスクラッチ特性と、優れた研磨の平坦化特性との両方を備える研磨剤は得られておらず、十分な特性の半導体デバイスを得ることが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3278532号公報
【特許文献2】特開2000−160137公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで本発明は、上述の課題を解決し、分散安定性、優れた研磨特性及び優れた研磨の平坦化特性を同時に備える半導体用研磨剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
すなわち、本発明は以下の特徴を要旨するものである。すなわち、酸化セリウム砥粒、多糖類、水溶性有機高分子及び陰イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上および水を含む半導体用研磨剤である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の研磨剤は、特有な添加物を用いることにより、優れた研磨特性及び優れた研磨の平坦化特性を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明では、研磨砥粒として酸化セリウムを用いるが、シリコン酸化膜を初めとするガラス系の材料の研磨において、酸化セリウム砥粒が特異的に速い研磨速度を示す。これは、酸化セリウムと被研磨材中の酸化ケイ素が接触することにより、両者の間に化学的な結合が生じ、単なる機械的作用以上の研削力を生ずるためである。したがって、酸化セリウムを用いた研磨においては、砥粒と研磨対象物の接触の制御が重要であり、酸化ケイ素では発生しなかった課題が発生しうる。
【0022】
STI工程や層間絶縁膜のCMP工程では、表面に凹凸のあるシリコン酸化膜等の研磨対象物を効率的に平坦化することが求められる。すなわち、凸部を選択的に研磨することが望ましい。これを実現するために、酸化セリウム砥粒の表面に吸着してシリコン酸化膜等の研磨対象物との直接の接触を妨げ、研磨を抑制する添加剤を研磨剤中に含有させることが重要である。このような添加剤を加えることにより、高い圧力が加わると酸化セリウム砥粒の表面に吸着した添加剤が剥れ、研磨対象物との接触が生じ、研磨が進むことになる。
【0023】
研磨対象物を研磨パッド等に押しつけ相対運動させる一般的な研磨方法においては、研磨対象物の表面に加わる圧力は、その表面形状によって局所的に異なる。凸部は凹部に比べ、加わる圧力が高いため、凸部では酸化セリウム砥粒の表面に吸着した添加剤が剥れやすく、研磨対象物との接触が生じて研磨が進みやすくなり、凸部を凹部に対して選択的に研磨することが可能となる。
【0024】
酸化セリウム砥粒は特に限定されないが、例えば特開平11−12561又は特開2001−35818に開示される酸化セリウム砥粒が好ましく使用できる。上記出願は本願の範囲内である。すなわち、硝酸セリウム(IV)アンモニウム水溶液にアルカリを加えて水酸化セリウムゲルを作製し、濾過、洗浄、焼成して得た酸化セリウム粉末が好ましく使用できる。また、高純度の炭酸セリウムを粉砕後焼成し、さらに粉砕、分級して得られる酸化セリウム砥粒も好ましく使用できる。
【0025】
酸化セリウム砥粒の平均粒径は、0.05〜0.5μm、特に0.05〜0.3μm、さらには0.05〜0.2μmが好ましい。平均粒径が大きすぎると、半導体基板表面にスクラッチなどの研磨キズが発生しやすくなるおそれがある。また平均粒径が小さすぎると、研磨速度が低くなるおそれがある。また、単位体積あたりの表面積の割合が大きいため、表面状態の影響を受けやすく、pHや添加剤濃度等の条件によっては研磨剤が凝集しやすくなる場合がある。
【0026】
平均粒径の測定には、レーザー回折・散乱式、動的光散乱式、光子相関式などの粒度分布計を使用することができる。粒子径がある程度大きく沈降しやすいような場合には、レーザー回折・散乱式の粒度分布計が好ましく、上述の範囲はレーザー回折・散乱式の粒度分布計を用いて測定した場合の好ましい範囲である。
【0027】
酸化セリウム粒子は、研磨剤の全質量に対し0.1〜5.0質量%、特に0.15〜0.35質量%の範囲で含まれていることが好ましい。0.1質量%未満では充分な研磨速度が得られない場合があり得る。5.0質量%を超えると研磨剤の粘度が高くなり、取扱いが困難になる場合が多くなる。
【0028】
本発明における研磨剤においては、水溶性有機高分子及び陰イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上を含有する。水溶性有機高分子としてはカルボン酸基又はカルボン酸塩基を有するものが好ましく、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等のカルボン酸基を有するモノマーの単独重合体や、当該重合体のカルボン酸基の部分がアンモニウム塩等の塩となっている単独重合体が挙げられる。また、カルボン酸基を有するモノマーと、カルボン酸塩基を有するモノマーや、カルボン酸塩基を有するモノマーとカルボン酸のアルキルエステル等の誘導体との共重合体も好ましい。さらにポリビニルアルコール等の水溶性有機高分子類、オレイン酸アンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等の陰イオン性界面活性剤が好適に使用できる。
【0029】
水溶性有機高分子及び陰イオン性界面活性剤として、特にカルボン酸基又はその塩を有するポリマーが好ましい。具体的には、ポリアクリル酸、又はポリアクリル酸のカルボン酸基の少なくとも一部がカルボン酸アンモニウム塩基に置換されたポリマー(以下、ポリアクリル酸アンモニウムと称する)等が挙げられる。本発明の研磨剤中に後述する無機酸又は無機酸塩を含有させる場合は、pHを本発明の研磨剤の範囲に調整するためにポリアクリル酸アンモニウムが特に好ましい。ここでポリアクリル酸アンモニウム等の水溶性有機高分子を添加剤として使用する場合は、その分子量は1000〜50000、特に2000〜30000が好ましい。ただし、必ずしも水溶性有機高分子及び陰イオン性界面活性剤が含まれている必要はない。
【0030】
上記水溶性有機高分子及び陰イオン性界面活性剤の合計含有量は、分散安定性維持の目的のため、0.001〜0.5質量%、特に0.001〜0.2質量%であることが好ましい。
【0031】
一方、被研磨物であるシリコンウェハにおける研磨速度の面内均一性が重要である。STI CMPを例に説明する。STI CMPにおいては、ウェハ面内すべての点において、シリコン窒化膜上のシリコン酸化膜をすべて除去するまで研磨を行うのが通常である。その際、面内均一性が悪いと、研磨速度が高い部分においては先にシリコン窒化膜が露出することとなる一方、研磨速度が遅い部分ではまだシリコン窒化膜が露出しないこととなる。研磨速度が遅い部分において、シリコン窒化膜が露出するまで研磨しつづけると、研磨速度が高い部分においてトレンチ部分の酸化膜の研磨が進行し、凹み量が大きくなる問題がある。この凹み量の増大により、素子分離機能をもつトレンチ酸化膜厚のバラつきが発生し、デバイス不良を引き起こすため、結果として歩留まりが低下する可能性がある。
【0032】
多糖類であるプルランは研磨速度の面内均一性を改善するため好ましい。プルランを添加すると研磨速度の面内均一性は向上する。その理由は定かではないが、砥粒表面の水酸基とプルランの水酸基および被研磨物であるシリコン酸化膜の水酸基さらには研磨パッドの末端基の相互作用により、砥粒、シリコン酸化膜、研磨パッドの親和性が向上し、研磨の際の潤滑性が改善することで面内均一性が向上することが考えられる。
【0033】
本発明における研磨剤は多糖類を含む。多糖類とは、単糖分子がグリコシド結合によって多数重合した物質を意味し、具体的にはアミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マンナン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、プルラン、キチン、アガロース、カラギーナン、ペクチン、ペバリン、キシログルカン、デキストリンなどである。上記多糖類は、ヒロドキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒアルロン酸、コンドロイチンやプルランであることが好ましく、特にプルランであることが好ましい。プルランとは、グルコース3分子がα−1,4結合したマルトトリオースが、さらにα−1,6結合した多糖類である。プルランは、重量平均分子量が1万〜100万の範囲にある場合にその効果が高い。水酸基の存在が重要な因子になっているものと考えられる。重量平均分子量が1万未満では、研磨速度向上効果が小さく、100万を超えても格段の効果増大は望めない。特に、5万〜30万の範囲が好ましい。なお、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定することができる。また、多糖類は、1種のみならず複数種類含有していてもよい。
【0034】
プルランの研磨剤中における濃度は、研磨促進の十分な効果を得る点から、0.005〜20質量%、特に0.005〜5質量%、さらには0.005〜1質量%である。プルランの研磨剤中における濃度は研磨速度、研磨剤スラリーの均一性等を考慮して適宜設定することが好ましい。
【0035】
水溶性有機高分子及び陰イオン性界面活性剤としてポリアクリル酸アンモニウムを用いる場合、プルランとポリアクリル酸アンモニウムとの割合量は、質量%で、1:0.0005〜1:100、特に1:0.001〜1:40であることが好ましい。
【0036】
研磨剤における別の添加剤として、硝酸アンモニウムを含んでいてもよい。硝酸アンモニウムを含むことで研磨速度を上昇させる効果があると推測される。硝酸アンモニウムの研磨剤中における濃度は、研磨促進の十分な効果を得る点から、0.01〜0.5質量%、特に0.01〜0.2質量%である。プルランの研磨剤中における濃度は研磨速度、研磨剤スラリーの均一性等を考慮して適宜設定することが好ましい。プルランと硝酸アンモニウムとの割合は、質量%で、1:0.0005〜1:100、特に1:0.02〜1:40であることが好ましい。
【0037】
また、研磨剤における別の添加剤として、微生物および菌の発生、増加を抑制する目的で抗菌剤、殺菌剤を含んでいてもよい。
【0038】
本研磨剤のpHは、十分な研磨速度を得るおよび分散安定性を維持するという理由で、4〜10、特に5〜9であることが好ましい。
【0039】
本発明の研磨剤には無機酸又は無機酸塩を含有してもよい。前記無機酸又は無機酸塩としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、炭酸及びそれらのアンモニウム塩又はカリウム塩等を例示できる。無機酸又は無機酸塩により、研磨剤のpHを調整することができる。
【0040】
本研磨剤を所定のpHに調整するために、酸とは別に、本研磨剤中に塩基性の化合物を添加してもよい。塩基性の化合物としては、アンモニア、水酸化カリウム、またはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドやテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(以下、TEAHという。)のような4級アンモニウムヒドロキシド等が使用できる。アルカリ金属を含まない方が望ましい場合には、アンモニアが好適である。
【0041】
酸化セリウム砥粒の等電点やゲル化領域を考慮して、最適pH値に調整することが好ましい。そのためにpH緩衝剤を使用してもよい。pH緩衝剤としては一般のpH緩衝能がある物質ならばどのようなものでも使用できるが、多価カルボン酸であるコハク酸、クエン酸、シュウ酸、フタル酸、酒石酸およびアジピン酸から選ばれた1種以上が好ましい。また、グリシルグリシンや炭酸アルカリも使用できる。なお、本研磨剤中のpH緩衝剤の濃度は、研磨剤全質量の0.01〜10質量%が好ましい。硝酸アンモニウムはpHの調整剤としての機能だけでなく、他の添加剤濃度によっては研磨速度の上昇に寄与することもある。
【0042】
本研磨剤は研磨剤としての効果を奏するために溶媒として水を使うことが好ましい。水の含有量は、50〜99.9質量%、特に80〜99.9質量%、さらには90〜99質量%であることが好ましい。本発明に係る水については、特に制限はないが、他の剤に対する影響、不純物の混入、pH等への影響から、純水、超純水、イオン交換水等を好ましく使用することができる。
【0043】
なお、半導体向けの研磨剤においてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、重金属などの金属不純物を含まないことが好ましい。含有濃度としては100PPM未満が好ましい。より好ましくは10ppm未満、更に好ましくは1ppm未満であることが好ましい。
【0044】
本発明の研磨剤の製造方法は、研磨剤の長期保存安定性や研磨諸特性の安定性の点に鑑み、酸化セリウム砥粒と水を含むA液と、添加剤と水を含むB液とを作製し、研磨の前にA液とB液を混合して半導体用研磨剤を得る方法を採用している。A液とB液の混合方法としては、研磨パッド直前の配管内や研磨パッド上で混合する方法もあるが、本発明の半導体用研磨剤は混合後もほとんど凝集が進まず、実用的に十分な期間安定であるため、あらかじめ混合しておいてもよい。すなわち、A液とB液を半導体研磨剤保管タンクに入れ、プロペラ撹拌機などで撹拌混合したり、循環ラインにより研磨剤を絶えず流動させたりする、一般に用いられる半導体研磨剤供給装置を利用できる。
【0045】
本発明においては、酸化セリウム砥粒と添加剤とが十分混合し、砥粒表面への添加剤の吸着状態を安定化させるために、酸化セリウム砥粒と水を含むA液と添加剤と水とを含むB液とをあらかじめ混合、撹拌した後に研磨液を使用することが好ましい。研磨液はA液とB液の混合直後でも使用可能であるが、数分間以上の混合後に使用することが好ましい。特に混合後15分以上経過してから研磨剤を使用することが好ましい。混合されてできた半導体研磨剤をポンプを介して研磨装置に供給することにより安定的にCMP研磨が可能である。供給ラインには、半導体研磨剤の均一化のため循環ラインを設けてもよい。
【0046】
A液の作製では、純水や脱イオン水に酸化セリウム砥粒を分散させる方法が好ましく、分散の際には超音波のエネルギーにより凝集体をほぐして砥粒を水中に分散させる超音波分散機や、ホモジナイザーや、砥粒同士を衝突させ衝突の運動エネルギーにより凝集体をほぐして砥粒を水中に分散させるホモジナイザー(商品名、スギノマシン社製)、ナノマイザー(商品名、吉田機械興業社製)等を用いることが好ましい。また、その際に分散剤を同時に添加することが好ましい。ここで分散剤とは、研磨砥粒を純水等の分散媒中に安定的に分散させるために添加するものであるが、分散剤には上述の添加剤と同様のものが使用できる。すなわち、本発明における添加剤は、B液だけでなくA液にも分散剤の機能を有するものとして添加できる。
【0047】
分散剤を添加する場合、その濃度としては、酸化セリウム砥粒の質量に対して質量比で0.1〜1.0%、さらには0.3〜0.7%の範囲が好ましい。この濃度範囲より分散剤の濃度が低いと砥粒の分散性が不十分となりやすく、この範囲より分散剤の濃度が高いと砥粒の凝集が徐々に進む傾向が見られる。
【0048】
B液の作製では、純水や脱イオン水に上述の多糖類、水溶性有機高分子及び陰イオン性界面活性剤などの添加剤を溶解させる方法を例示できる。また、B液に無機酸又は無機酸塩を含有させ、あらかじめpH調整を行うことにより、A液とB液を混合して作製される半導体用研磨剤のpHを所定の値にすることもできる。また、混合後の半導体用研磨剤のpHを所定の値にする方法としては、上記添加剤のpHを制御する方法も採用できる。例えば、添加剤としてカルボン酸とカルボン酸の塩とからなる共重合体を使用する場合、カルボン酸とカルボン酸の塩との重合比率を制御することによりpH調整する方法も採用できる。
【0049】
A液及びB液の濃度は、例えば研磨使用時の濃度の2倍とし、A液とB液を質量比で1:1で混合することにより、所定の濃度とすることができる。また、保管や輸送の利便性のため、例えばA液及びB液の濃度は、砥粒や添加剤等の成分の濃度を研磨使用時の濃度の10倍程度とし、使用時に2倍濃度に希釈し、さらにA液とB液を質量比で1:1に混合することにより、所定の濃度になるようにしてもよい。また、10倍濃度のA液、B液及び脱イオン水を、質量比で1:1:8となるように混合することにより所定の濃度になるようにすることもできるが、濃度調整方法はこれらに限定されない。
【0050】
本発明の半導体研磨剤で研磨する半導体基板としては、前述のシャロートレンチ分離用のSTI基板が好ましい例として挙げられる。上述のとおり、本発明の半導体用研磨剤は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜に対する研磨速度選択性が高く、かつシリコン酸化膜に対して高研磨速度でディッシングの少ない研磨が可能である。したがって、本発明の研磨剤は、シリコン基板1上にシリコン酸化膜2とシリコン窒化膜3が形成された半導体基板を研磨する際に有効である。さらに応用として、多層配線間の層間絶縁膜の平坦化のための研磨にも本発明の研磨剤は有効である。
【0051】
シリコン酸化膜2としては、テトラエトキシシランを原料にプラズマCVD法で成膜したいわゆるPE−TEOS膜が挙げられる。また、高密度プラズマCVD法で成膜されたいわゆるHDP膜も挙げられる。シリコン窒化膜3としては、シラン又はジクロロシランとアンモニアを原料として、低圧CVD法やプラズマCVD法で成膜したものが例示できる。また、シリコン酸化膜のかわりとして、SiOF膜、BPSG(Boro−Phospho−Silicate Glass)膜、PSG(Phospho−Silicate Glass)膜等も使用できる。また、シリコン窒化膜のかわりとしてSiON膜、SiCN膜等が使用できる。
【0052】
本発明の半導体用研磨剤を用いて半導体基板を研磨する方法としては、半導体用研磨剤を供給しながら、半導体基板の被研磨面と研磨パッドとを接触させ、かつ相対運動させて行う研磨方法が好ましい。研磨装置としては、一般的な研磨装置を使用できる。例えば図2は、本発明の研磨方法に適用可能な研磨装置の一例を示す図である。研磨剤供給配管35から半導体用研磨剤36を供給しながら、研磨ヘッド32に半導体基板31を保持し、研磨定盤33表面に貼り付けた研磨パッド34に接触させ、かつ研磨ヘッド32と研磨定盤33を回転させ相対運動させる方式であるが、これに限定されない。
【0053】
ここで、研磨ヘッド34は回転だけでなく直線運動をしてもよい。研磨定盤33及び研磨パッド34が半導体基板31と同程度又はそれ以下の大きさであってもよい。その場合は研磨ヘッド32と研磨定盤33を相対的に移動させることにより、半導体基板の全面を研磨できるようにすることが好ましい。また研磨定盤33及び研磨パッド34は回転式でなくてもよく、例えばベルト式で一方向に移動するものでもよい。
【0054】
研磨条件は特に制限されないが、研磨ヘッド34に荷重をかけ研磨パッド34に押しつける圧力を変化させることにより研磨速度を向上できる。このときの研磨圧力は、0.5〜50kPa程度が好ましく、研磨速度の半導体基板内均一性、平坦性、スクラッチ等の研磨欠陥防止の観点から、3〜40kPa程度が特に好ましい。また研磨定盤、研磨ヘッドの回転数は50〜500rpm程度が好ましいが、これに限定されない。
【0055】
研磨パッドとしては一般的な不織布、発泡ポリウレタン、多孔質樹脂、非多孔質樹脂等からなるものが使用できる。また、研磨パッドの表面に、半導体用研磨剤の供給を促進させたり、半導体用研磨剤が一定量溜まるようにするために、格子状、同心円状、らせん状などの溝加工がなされていてもよい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例を説明する。例1〜6が実施例、例7〜11が比較例である。実施例において「%」は、特に断らない限り質量%を意味する。特性値は下記の方法により評価した。
【0057】
(pH)
横河電機社製のpH81−11で測定した。
【0058】
(研磨特性)
研磨は以下の装置、条件で行った。
研磨機:全自動CMP装置Mirra(Applied Materials社製)。
研磨剤供給速度:200ミリリットル/分。
研磨パッド:2層パッドIC−1400、K−groove。(Rohm&Haas社製)
研磨パッドのコンディショニング:MEC100−PH3.5L。(三菱マテリアル社製)
研磨圧力:14kPa
研磨定盤の回転数:77rpm
研磨ヘッドの回転数:73rpm
【0059】
(被研磨物)
原料としてオルトケイ酸エチル(TEOS)を用いたプラズマCVD法(PE−TEOS)により製膜したシリコン酸化膜の8インチシリコンウェハ基板。
【0060】
(研磨速度の測定)
研磨速度の測定は、KLA−Tencor社の膜厚計UV−1280SEを使用した。研磨前の膜厚と1分間研磨後の膜厚の差をとることにより研磨速度を算出した。以下の方法により、研磨速度の平均値および面内均一性を評価指標とした。
・研磨速度(Å/min):ウェハ面内49点の研磨速度の平均
・面内均一性(%):標準偏差/平均値×100
[例1]
酸化セリウム砥粒および、酸化セリウム砥粒100質量%に対して、分散剤として0.7質量%のポリアクリル酸アンモニウムを、脱イオン水中で攪拌しながら混合し、超音波分散、フィルターリングを施して、砥粒濃度10質量%、分散剤濃度0.07質量%の砥粒混合液を作製した。次にこれを脱イオン水で20倍に希釈し砥粒濃度0.5質量%、分散剤濃度0.0035質量%の砥粒混合液Aを作製した。そのpHは8.1であった。次に脱イオン水中に、濃度0.1質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、さらに硝酸アンモニウムを0.1質量%、プルランを0.02質量%となるように添加し添加剤液B1を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液Bを攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム(分子量5000)濃度0.05質量%、硝酸アンモニウム濃度0.05質量%、プルラン濃度0.01質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.73であった。なお、砥粒濃度とは酸化セリウム砥粒の濃度を意味し、分散剤濃度とは砥粒混合液Aに添加したポリアクリル酸アンモニウムの濃度を意味する。
【0061】
得られた半導体用研磨剤の研磨特性については、上記に示すような方法によって、研磨速度および面内均一性にて評価した。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0062】
[例2]
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.1質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、さらに硝酸アンモニウムを0.2質量%、プルランを0.02質量%となるように添加し添加剤液B2を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B2を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム濃度0.05質量%、硝酸アンモニウム濃度0.1質量%、プルラン濃度0.01質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.54であった。
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0063】
[例3]
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.1質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、さらに硝酸アンモニウムを0.4質量%、プルランを0.02質量%となるように添加し添加剤液B3を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B3を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム濃度0.05質量%、硝酸アンモニウム濃度0.2質量%、プルラン濃度0.01質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.33であった。
【0064】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0065】
[例4]
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.1質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、さらに硝酸アンモニウムを0.1質量%、プルランを0.02質量%となるように添加し添加剤液B3を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B3を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム濃度0.05質量%、硝酸アンモニウム濃度0.05質量%、プルラン濃度0.005質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.33であった。
【0066】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0067】
[例5]
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.1質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、さらに硝酸アンモニウムを0.1質量%、プルランを0.04質量%となるように添加し添加剤液B3を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B3を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム濃度0.05質量%、硝酸アンモニウム濃度0.05質量%、プルラン濃度0.02質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.73であった。
【0068】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0069】
[例6]
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.04質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、さらに硝酸アンモニウムを0.1質量%、さらにプルランを0.02質量%となるように添加し添加剤液B6を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B6を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム濃度0.02質量%、硝酸アンモニウム濃度0.05質量%、プルラン濃度0.01質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.61であった。
【0070】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0071】
[例7]
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、硝酸アンモニウムを0.1質量%、プルランを0.02質量%となるように添加し添加剤液B7を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B7を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム)濃度0.0018質量%、硝酸アンモニウム濃度0.05質量%、プルラン濃度0.01質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.02であった。
【0072】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0073】
[例8]
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.1質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、プルランを0.02質量%となるように添加し添加剤液B8を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B8を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム濃度0.05質量%、プルラン濃度0.01質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは8.15であった。
【0074】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0075】
[例9]
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.04質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、さらに硝酸を0.004質量%、プルランを0.02質量%となるように添加し添加剤液B9を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B9を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム濃度0.02質量%、硝酸濃度0.002質量%、プルラン濃度0.01質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.63であった。
【0076】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0077】
[例10](比較例)
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.1質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ添加剤液B10を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B3を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム濃度0.05質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは8.2であった。
【0078】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0079】
[例11](比較例)
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.1質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、さらに硝酸アンモニウムを0.1質量%となるように添加し添加剤液B11を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B11を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム濃度0.05質量%、硝酸アンモニウム濃度0.05質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.69であった。
【0080】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0081】
[例12](比較例)
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.1質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、さらに硝酸を0.009質量%となるように添加し添加剤液B12を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B12を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、硝酸濃度0.0045質量%半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.48であった。
【0082】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0083】
[例13](比較例)
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.1質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、さらに硝酸アンモニウムを0.1質量%、グルコースを0.04質量%となるように添加し添加剤液B3を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B3を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム濃度0.05質量%、硝酸アンモニウム濃度0.05質量%、グルコース濃度0.02質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.7であった。
【0084】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0085】
[例14](比較例)
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.1質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、さらに硝酸アンモニウムを0.1質量%、トレハロースを0.05質量%となるように添加し添加剤液B3を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B3を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム濃度0.05質量%、硝酸アンモニウム濃度0.05質量%、グルコース濃度0.025質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.7であった。
【0086】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0087】
[例15](比較例)
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.1質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、さらに硝酸アンモニウムを0.1質量%、PEG(ポリエチレングリコール 分子量20000)を0.05質量%となるように添加し添加剤液B3を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B3を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム濃度0.05質量%、硝酸アンモニウム濃度0.05質量%、ポリエチレングリコール濃度0.025質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.7であった。
【0088】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【0089】
[例16](比較例)
砥粒混合液Aは例1と同様の手法で作製した。次に脱イオン水中に、濃度0.1質量%となるようポリアクリル酸アンモニウムを溶解させ、さらに硝酸アンモニウムを0.1質量%、PVP(ポリビニルピロリドン、分子量9000)を0.02質量%となるように添加し添加剤液B3を作製した。この砥粒混合液Aと添加剤液B3を攪拌しながら混合することにより、砥粒濃度0.25質量%、分散剤濃度0.0018質量%、ポリアクリル酸アンモニウム濃度0.05質量%、硝酸アンモニウム濃度0.05質量%、ポリビニルピロリドン濃度0.01質量%の半導体用研磨剤を作製した。そのpHは7.7であった。
【0090】
得られた半導体用研磨剤の評価を例1と同様に行った。半導体用研磨剤の組成は表1に、評価結果を表2に示した。
【表1】

【表2】

【0091】
表1の例1〜7に記載されているとおり、添加剤として硝酸アンモニウムおよびプルランの両方を含む場合は、良好な研磨速度および均一性が保たれており、良好な結果となっている。なお、研磨速度は1800(Å/min)以上であることが好ましく、さらに1900(Å/min)以上であることがさらに好ましい。また、均一性については、10%以下、特に7%以下であることが好ましい。
【0092】
また、表1の例8および9に記載されているとおり、硝酸アンモニウムを含有しなくとも、プルランのみでも良好な結果が得られていることが分かる。
【0093】
表1の例10〜16はプルランを含まない比較例であり、どの例についても均一性に難があり、好ましくない。グルコースやトレハロースなどは、それぞれ単糖および二糖であり、多糖に比べ潤滑性改善効果が低いという理由でプルランよりも劣ると推測される。その理由はプルランを添加することで、研磨の際にシリコン酸化膜―研磨パッドー研磨砥粒間の潤滑性が改善されたためであると推測している。また、本研磨剤は、砥粒の凝集がなく分散安定性にも優れ、研磨欠陥に対しても有利である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の研磨剤は、半導体デバイス製造工程における化学的機械的研磨用の半導体用研磨剤及び研磨方法に関し、特に、シャロートレンチ分離や層間絶縁膜の平坦化に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】STI工程において半導体研磨剤により半導体デバイス基板を研磨する際の模式的な断面図。
【図2】本発明の研磨方法に適用可能な研磨装置の一例を示す図。
【符号の説明】
【0096】
1:シリコン基板
2:シリコン酸化膜
3:シリコン窒化膜
10:トレンチ溝部
20:窪み
31:半導体基板
32:研磨ヘッド
33:研磨定盤
34:研磨パッド
35:研磨剤供給配管
36:半導体用研磨剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化セリウム砥粒、多糖類、水溶性有機高分子及び陰イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上および水を含む半導体用研磨剤。
【請求項2】
前記水溶性有機高分子及び陰イオン性界面活性剤はカルボン酸基又はその塩を有するポリマーである請求項1に記載の半導体用研磨剤。
【請求項3】
硝酸アンモニウムをさらに含む、請求項1または2に記載の半導体用研磨剤。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体用研磨剤の製造方法であって、前記酸化セリウム砥粒と水を含むA液と、多糖類、水溶性有機高分子及び陰イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上、および水を含むB液とを混合することを特徴とする半導体用研磨剤の製造方法。
【請求項5】
半導体用研磨剤を供給しながら、被研磨面と研磨パッドとを接触させかつ相対運動させて行う研磨方法において、前記研磨剤として請求項1〜3のいずれかに記載の半導体用研磨剤を用い、前記被研磨面として半導体基板を研磨することを特徴とする研磨方法。
【請求項6】
前記半導体基板が、少なくともシリコン酸化膜を含む半導体デバイス用基板である請求項5に記載の研磨方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−109287(P2012−109287A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61917(P2009−61917)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】