説明

半導体発光素子

【課題】電流分布を均一させるためn側電極が電極面の中央部に配置しても、回路基板の電極パターンを簡単化できる半導体発光素子を提供する。
【解決手段】LEDダイ20の電極面において、p側電極27はn側電極26に対して一方の辺部にあり、他方の辺部にはフローティング電極25がある。このためn側電極26と接続する回路基板38の内部接続電極32は回路基板38の他方側にだけあれば良く、同様にp側電極27と接続する内部接続電極35は回路基板38の一方側だけにあれば良い。このときp側電極27はp型半導体層23全体と低抵抗接続しているので電流分布が不均一にならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフリップチップ実装用の半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハーから切り出された半導体発光素子(以後とくに断らない限りLEDダイと呼ぶ)は、しばしば透明絶縁基板上に発光層を含む半導体層を備えた構成をとる。このようなLEDダイを回路基板に実装した半導体発光装置(以後とくに断らない限りLED装置と呼ぶ)では、LEDダイの透明絶縁基板とは反対側の面(以後電極面と呼ぶ)に突起電極を形成し、突起電極を介してLEDダイと回路基板の電極を導電接続するフリップチップ実装(フェイスダウン実装ともいう)が行われることがある。このフリップチップ実装は、ワイヤボンディングを使う実装方法(フェイスアップ実装ともいう)に較べ熱伝導性や発光効率が良いという特徴がある。
【0003】
電極面にn側電極(カソード)とp側電極(アノード)を備えるLEDダイにおいて、n側電極及びその周囲が発光しないため、LEDダイの平面積が小さい場合、n側電極は電極面の角部若しくは辺部に設けられていた。これに対し最近ではLEDダイの平面積が大きくなり、電流を多く流し発光量を増加させるようになってきた。このような状況に対応するには電流分布を均一化することが有効であり、そのひとつの手段としてn側電極を電極面の中央の配置することがある。
【0004】
例えば特許文献1の図1(a)には、電極面の中央にN側電極15、電極面の四隅にp側電極16を備えたLEDチップ10(半導体発光素子)が示されている。特許文献1には電流分布の改善に関する記載はないが、n側電極を電極面の中央に配置し、さらにp電極を対称的に配置すると、電流分布が均一化し大きな電流を流しても輝度向上が図りやすくなる、ということが知られている。また特許文献1の図2にはリードフレームにLEDチップ10をフリップチップ実装した様子が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3365787号公報 (図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の図1に示されたLEDダイ(LEDチップ10)のように電極面の中央にn側電極(N側電極15)があり、電極面の四隅にp側電極(P側電極16)があると、LEDダイを実装する回路基板は電極パターンが複雑になる。つまりp側電極が分離しているので、LEDダイを回路基板に実装したときにフリップチップ実装面側の電極パターンにより全てのp側電極を接続しなければならなかったり、p側電極にとり囲まれているn側電極と接続する電極パターンをp側電極と接続する電極パターンから引き出さなければならなかったりする。このように電極パターンが複雑化すると、回路基板が製造しにくくなるばかりでなく、実装が困難になったり回路基板が大型化したりする。
【0007】
そこで本発明は、この課題を解決するため、n側電極が電極面の中央部にあっても、電流分布が均一で、回路基板の電極パターンを簡単化できる半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明の半導体発光素子は、n型半導体層及びp型半導体層、並びに前記n型半導体層及び前記p型半導体層と接続するn側電極及びp側電極を備える半導体発光素子において、
前記n側電極が電極面の中央部にあり、
前記n側電極に対して前記電極面の一方の辺部に前記p側電極があり、
前記n側電極に対して前記電極面の他方の辺部にフローティング電極があり、
前記p側電極に対して前記p型半導体層全体が低い抵抗で接続している
ことを特徴とする。
【0009】
上記構成の半導体発光素子をフリップチップ実装する回路基板は、フリップチップ実装面側においてp側電極と接続する回路基板の電極パターンがn側電極に対し一方側にだけあれば良い。同様にn側電極と接続する回路基板の電極パターンは、フリップチップ実装面においてn側電極に対し他方側にだけあれば良い。この電極パターンは中央部でn側電極と接続し、さらにフローティング電極とも接続する。このように回路基板のフリップチップ実装面側の電極パターンは一方側と他方側にそれぞれ設ければ良いだけなので形状や配置が簡単になる。このときp側電極とp型半導体層全体は低抵抗接続しているので電流分布が不均一にならない。
【0010】
前記p型半導体層の周辺部に配置され、該p型半導体層とオーミック接続する金属配線を備え、該金属配線が前記p側電極と接続していても良い。
【0011】
前記n側電極及び前記p側電極の前記電極面側に反射性金属層を備えていても良い。
【0012】
前記n側電極及び前記p側電極を電解メッキ法で形成しても良い。
【0013】
前記p側電極を配置した前記一方の辺部に、前記フローティング電極とは分離したフローティング電極を配置しても良い。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明の半導体発光素子は、n側電極が電極面の中央部にあっても、電流分布が均一で、且つ回路基板の電極パターンを簡単化する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態におけるLEDダイの底面図。
【図2】図1に示したLEDダイの断面図。
【図3】図1に示したLEDダイから絶縁膜を剥がした状態の底面図。
【図4】図1に示したLEDダイを含むLED装置の断面図。
【図5】図4に示したLED装置に含まれる回路基板の上面図。
【図6】本発明の第2実施形態におけるLEDダイの底面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図1〜6を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また説明のため部材の縮尺は適宜変更している。さらに特許請求の範囲に記載した発明特定事項との関係をカッコ内に記載している。
(第1実施形態)
【0017】
図1により本発明の第1実施形態におけるLEDダイ20(半導体発光素子)の電極面を説明する。図1は本実施形態のLEDダイ20の底面図である。LEDダイ20を底面側から眺めると、絶縁膜24が占める領域のなかに2個のフローティング電極25、n側
電極26並びにp側電極27が見える。絶縁膜24はn側電極26とp側電極27の周りが開口している。図中、n側電極26は電極面の中央部にあり、n側電極26の周りにn型半導体層22が見える。p側電極27は電極面の右側(一方の辺部)にあり、p側電極27の周りにp型半導体層23が見える。フローティング電極25は電極面の左側(他方の辺部)にある。なおフローティング電極25の詳細については後述する。
【0018】
本実施形態においては、LEDダイ20は、広く普及しているフェイスアップ実装用LEDダイをフェイスダウン実装(フリップチップ実装)用LEDダイに転用したものとして説明する。フェイスアップ実装では回路基板に電極面とは反対側の面をダイボンディングし、絶縁膜24の二つの開口部にAu電極を形成し、それぞれの電極にn側のワイヤボンディング及びp側のワイヤボンディングを行う。本実施形態のLEDダイ20ではこのワイヤボンディング用の電極部にn側電極26及びp側電極27を形成している。なおフェイスアップ実装用LEDダイが連結して配列したウェハーを入手したとき、絶縁膜24の開口部にはワイヤボンディングのためのAu電極が形成されていることがある。この場合、n側電極26及びp側電極27はこのAu電極上に形成するので、n側電極26及びp側電極27の周りではAu電極の一部が見える。
【0019】
図2においてLEDダイ20の積層構造を説明する。図2は、図1のAA線に沿って描いたLEDダイ20の断面図である。サファイア基板21の下にはn型半導体層22が形成され、さらにn型半導体層22の下にp型半導体層23が形成されている。なお図ではp型半導体層23が分断されているように描かれているが、分断部はp型半導体層23の開口部であり、左右のp型半導体層23は接続している。絶縁膜24は開口部を除きn型半導体層22及びp型半導体層23を被覆している。フローティング電極25は絶縁膜24の下面に接続して形成されている。n側電極26は絶縁膜24及びp型半導体層23の開口部においてn型半導体層22と接続している。p側電極27は金属層28を介して絶縁膜24の開口部においてp型半導体層23と接続している。また金属層28は図3で後述するようにp型半導体層23の周辺部に敷設されており、図2の左側ではp型半導体層23に下に一部分が現れている。
【0020】
サファイア基板21は透明絶縁基板であり厚さが80〜120μmである。n型半導体層22はGaNバッファ層とn型GaN層からなり厚さが5μm程度である。p型半導体層23は、透明電極層などを含む金属多層膜とp型GaN層からなり厚みが1μm程度である。図示していないが発光層はp型半導体層23とn型半導体層22の境界部にあり、平面形状はp型半導体層23とほぼ等しい。絶縁膜24はSiO2やポリイミドからなり厚さが数100nm〜1μm程度である。フローティング電極25、n側電極26並びにp側電極27はAu又はCuをコアとするバンプであり、電解メッキ法で形成し厚さが10〜30μm程度である。なお電解メッキ法において高反射アルミ層、TiW層並びにAu層を順に積層した共通電極を使用しているので、フローティング電極25、n側電極26並びにp側電極27は電極面側に反射層を備えている。金属配線28はAuからなり、厚さは数100nmである。
【0021】
図3においてLEDダイ20の電極面をさらに詳しく説明する。図3はLEDダイ20の電極面からフローティング電極25、n側電極26、p側電極27並びに絶縁膜24を取り去った状態の底面図である。n型半導体層22の内側にp型半導体層23があり、さらにn型半導体層22は中央部のp型半導体層23の開口部からも見える。図の右側においてp側電極27(図2参照)のあった場所からp型半導体層23の辺に沿って金属配線28が延びている。金属配線28は透明電極(図示せず)を介してp型GaN層とオーミック接続しており、p型半導体層23の端部まで低抵抗で電流が流れるように機能する。すなわち金属によりp型半導体層23の周辺部とp側電極とが接続することで、p側電極27に対してp型半導体層23全体が低い抵抗で接続する。
【0022】
前述したようにLEDダイ20はフェイスアップ実装用のLEDダイをフリップチップ実装用に転用したものであった。LED20のもととなったLEDダイをフェイスアップ実装した場合、p型半導体層23側に光が出射する。このためp型半導体層23表面には透明電極が形成され、さらに光の出射の大きな影響を与えないように低抵抗化のため細い金属配線28を設けていた。しかしながら本発明のLEDダイにおける低抵抗化は金属配線だけに限られない。例えば透明電極を低抵抗化してもよい。またLEDダイをフリップチップ専用に設計できれば、p型半導体層に反射層などさまざまな目的で金属層を積層できるので、この金属層によりp型半導体層全体に亘って抵抗を低くできる。
【0023】
図4においてLEDダイ20を含むLED装置30(半導体発光装置)について説明する。図4はLED装置30の断面図である。LEDダイ20は回路基板38にフリップチップ実装されている。フローティング電極25及びn側電極26は回路基板38の上面に形成された内部接続電極32(他方の電極パターン)と接続し、p側電極27は回路基板38の上面に形成された内部接続電極35(一方の電極パターン)と接続している。内部接続電極32,35はそれぞれスルーホール電極33,36を介して外部接続電極34,37と接続している。回路基板38の上面及びLEDダイ20の周囲は蛍光樹脂31で被覆されている。内部接続電極32,35及び外部接続電極34,37は、表面にNi,Au層を備え厚さが数μm〜数10μmの銅箔である。スルーホール電極33,36は直径が100〜300μm程度のスルーホールに金属ペーストを充填している。なお輝度向上を図る場合、内部接続電極32,35は表面にAg等の反射率の高い金属層を備えると良い。
【0024】
次に図5により回路基板38の上面(フリップチップ実装面)を説明する。図5はLED装置30に含まれる回路基板38の上面図である。回路基板38の内側には矩形の内部接続電極32,35が形成されている。図4に示したように内部接続電極32にはフローティング電極25とn側電極26が接続し、内部接続電極35にはp側電極27が接続する。
【0025】
このフローティング電極25は、フリップチップ実装時にLEDダイ20へ圧力を掛けたとき、LEDダイ20が傾かないように支持する。また発光層の発する熱の一部をp型半導体層23、絶縁膜24及びフローティング電極25からなる経路で回路基板14の内部接続電極32に放出する。さらにフローティング電極25はLEDダイ20と回路基板14の接続を強固なものにする。これらの機能を達成するだけならフローティング電極はp型半導体層23が占める領域に沿って形成すれば良い。しかしながら回路基板14の内部接続電極32を簡単な形状とするためには、例えば図1ならn側電極26より左側に形成しなければならない。
【0026】
また図2等で示しているようにn側電極26は絶縁膜24の角部から離れている。この絶縁膜24の角部はクラックが入っていたりピンホールがあったりする。すなわちLEDダイ20は、n側電極26が絶縁膜24の角部から離れているため、絶縁膜24のクラックやピンホールによるp型半導体層23とn型半導体層22のショートを防止している。
(第2実施形態)
【0027】
図1に示したLEDダイ20においてフローティング電極25の平面形状は円形であった。しかしながらフローティング電極の平面形状は円形に限られない。また実装時の水平バランスをとるには少なくともp側電極とは反対側の辺部にフローティング電極があれば良いので、追加的なフローティング電極をp側電極の近傍に配置しても良い。そこでフローティング電極の変形例として図6により本発明の第2実施形態におけるLEDダイ60(半導体発光素子)の電極面を説明する。
【0028】
図6はLEDダイ60の底面図である。LEDダイ60の電極面には、絶縁膜24の内側にn側電極26、p側電極27、フローティング電極61,62,63がある。図1のLEDダイ20の電極面と同様に、LEDダイ60の電極面の中央部にn側電極26、右側(一方の辺部)にp側電極27があり、絶縁膜24の開口部においてn側電極26及びp側電極27の周囲にn型半導体層22及びp型半導体層23が見える。フローティング電極61は電極面の左側(他方の辺部)にあり、コの字型で大きな面積を占めている。さらに電極面の右側にはp側電極27と並ぶようにフローティング電極62,63がある。n側電極26、p側電極27、フローティング電極61,62,63は図1のLEDダイ20と同様にメッキバンプである。すなわちLEDダイ60はLEDダイ20と同じLEDダイ(バンプ形成前)に、同じ形状のn側電極26及びp側電極27を形成するとともに、異なった形状のフローティング電極61,62,63を形成したものである。またこのLEDダイ60は回路基板38(図4,5参照)にフリップチップ実装することができ、このとき内部接続電極32にはn側電極26とともにフローティング電極61が接続し、内部接続電極35にはp側電極27とともにフローティング電極62,63が接続する。
【0029】
フローティング電極61を大きくし、さらにフローティング電極62,63を追加した主な目的は、LEDダイの放熱特性の改善と輝度の向上である。LEDダイ60は主に発光層で発熱するため、発光層と積層するp型半導体層23(図2,3参照)は回路基板38(図4,5参照)との間に大きな面積で熱伝導性の良い放熱経路を必要とする。フローティング電極61,62,63は、大きな面積を持ち、金属からなるため熱伝導性も良好であるので優れた放電経路となる。またフローティング電極61,62,63は、フローティング電極25と同様に電極面側に反射層を備えており、広い面積を占めていることからLEDダイ60の発光効率を向上させることができる。
【0030】
第1実施形態のLED20及び第2実施形態のLED60ではp側電極27が円形であった。p側電極の形状も円形に限定されず、例えば絶縁膜24のp側の開口部が長円形であれば、長円形のp側電極を形成しても良い。

【符号の説明】
【0031】
20,60…LEDダイ(半導体発光素子)、
21…サファイア基板、
22…n型半導体層、
23…p型半導体層、
24…絶縁膜、
25,61,62,63…フローティング電極、
26…n側電極、
27…p側電極、
28…金属配線、
30…LED装置(半導体発光装置)、
31…蛍光樹脂、
32,35…内部接続電極(電極パターン)、
33,36…スルーホール電極、
34,37…外部接続電極、
38…回路基板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体層及びp型半導体層、並びに前記n型半導体層及び前記p型半導体層と接続するn側電極及びp側電極を備える半導体発光素子において、
前記n側電極が電極面の中央部にあり、
前記n側電極に対して前記電極面の一方の辺部に前記p側電極があり、
前記n側電極に対して前記電極面の他方の辺部にフローティング電極があり、
前記p側電極に対して前記p型半導体層全体が低い抵抗で接続している
ことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記p型半導体層の周辺部に配置され、該p型半導体層とオーミック接続する金属配線を備え、該金属配線が前記p側電極と接続していることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記n側電極及び前記p側電極の前記電極面側に反射性金属層を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記n側電極及び前記p側電極を電解メッキ法で形成することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記p側電極を配置した前記一方の辺部に、前記フローティング電極とは分離したフローティング電極を配置したことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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