説明

半導体発光装置の製造方法、及び、発光素子バーにおける光反射膜の形成方法

【課題】材料ロスが生じることを出来るだけ避けることができ、安価な工法で光反射膜を形成し得る半導体発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体発光装置の製造方法は、(A)化合物半導体層の積層構造体20が形成され、第1辺、第2辺、第3辺、第4辺を有する矩形形状の基板40を支持フィルム50と貼り合わせて、少なくとも基板の第2辺42から支持フィルム50が突出した状態とし、X方向と平行に支持フィルム50及び基板40をけがき、基板40を劈開し、次いで、支持フィルム50を引き裂くことで発光素子バー60を得た後、複数の発光素子バー60を積層し、支持フィルム50を加熱することでY方向に沿って支持フィルム50を熱収縮させて、発光素子バー60のXZ端面61,62と支持フィルム50の縁部との間に隙間を設け、各発光素子バー60の2つのXZ端面61,62に光反射膜63,64を形成する各工程を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置の製造方法、及び、発光素子バーにおける光反射膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高出力の半導体レーザ装置として、レーザ光の出射方向が揃うように複数(例えば、数個から50個程度)の半導体レーザ素子を一列に配置した発光素子アレイから成り、長さ10mm程度の発光素子バーが、屡々、用いられている。
【0003】
発光素子バーを製作するには、先ず、素子製造用基板(所謂ウエハ)上に、化合物半導体層の積層構造体から成る発光部を形成し、更には、電極等を形成することで、素子製造用基板に多数の発光素子を作製する。その後、素子製造用基板を、幾つかの矩形形状の基板に分割し、矩形形状に分割された基板のそれぞれを、ダイシング用シートに貼り付ける。そして、基板の表面に、スクライブ装置によって数μm深さのけがき線を入れる。次に、ブレークマシンによって、矩形形状に分割された基板を劈開する。あるいは又、ダイシング用シート側から圧力を加えながらゴム製ローラでローラ掛けすると、矩形形状に分割された基板が劈開される。こうして、1枚の矩形形状に分割された基板から複数の発光素子バーを得ることができる。
【0004】
その後、発光素子バーの劈開面に光反射膜を形成する。具体的には、発光素子バーを貼り付けたダイシング用シートを引き伸ばし、発光素子バーと発光素子バーとの間に隙間を開ける。次いで、ダイシング用シートから発光素子バーを1つずつ、ピンセット等の工具を使って剥がす。そして、剥がした発光素子バーを、1本ずつ、端面コート用の治具に納める。その後、100本程度の発光素子バーを納めた治具を、真空蒸着装置に搬入し、Al23やアモルファスSiから成る光反射膜を蒸着する。最後に、発光素子バーを、例えば、サブ・マウントを介して半田を用いてベース(ヒートシンク)に取り付ける。
【0005】
ダイシング用シートから剥がした発光素子バーを、1本ずつ、端面コート用の治具に納めるとき、発光素子バーと発光素子バーとの間に、発光素子バーの幅よりも狭い幅を有するSi、InPあるいはGaAsから成るスペーサを挿入し、発光素子バーの劈開面をスペーサから突出させることで、発光素子バーの劈開面に確実に光反射膜を形成する技術が、特開平10−093187に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−093187
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術にあっては、上述したとおり、ダイシング用シートから発光素子バーを1つずつ、ピンセット等の工具を使って剥がし、剥がした発光素子バーを、1本ずつ、端面コート用の治具に納めるが、このとき、発光素子バーに傷が付き易い。それ故、発光素子バーの両端部、1mm乃至2mm程度を作業代(しろ)とし、係る部分を工具で把持するようにしている。そして、最終的に両端部は使用に供さない。それ故、材料ロスが発生している。また、上述した特許公開公報に開示された方法にあっては、Si、InPあるいはGaAsから成るスペーサを用いるので、半導体発光装置の製造コスト増に繋がる。
【0008】
従って、本発明の目的は、材料ロスが生じることを出来るだけ避けることができ、しかも、安価な工法で光反射膜を形成し得る半導体発光装置の製造方法、及び、発光素子バーにおける光反射膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の半導体発光装置の製造方法は、
(A)化合物半導体層の積層構造体が形成され、対向する第1辺及び第3辺がX方向と平行であり、残りの第2辺及び第4辺がY方向と平行である矩形形状の基板を準備し、
(B)積層構造体を支持フィルムと貼り合わせ、少なくとも、基板の第2辺から支持フィルムが突出した状態とし、次いで、
(C)X方向と平行に支持フィルム及び基板をけがき、その後、
(D)基板をX方向と平行に劈開し、次いで、
(E)支持フィルムを引き裂くことで、支持フィルムが貼り合わされた状態の発光素子バーを得た後、
(F)複数の発光素子バーを、支持フィルムを介在させた状態で積層し、支持フィルムを加熱することで、少なくともY方向に沿って支持フィルムを熱収縮させ、以て、発光素子バーのXZ端面と支持フィルム縁部との間に、Y方向に沿って隙間を設け、その後、
(G)各発光素子バーの2つのXZ端面のそれぞれに、光反射膜を形成する、
各工程を備えている。
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法は、
(a)化合物半導体層の積層構造体が基板に形成されて成り、対向する第1辺及び第3辺がX方向と平行であり、残りの第2辺及び第4辺がY方向と平行である矩形形状の発光素子バーを準備し、
(b)積層構造体を支持フィルムと貼り合わせ、少なくとも、発光素子バーの第2辺から支持フィルムが突出した状態とし、次いで、
(c)複数の発光素子バーを、支持フィルムを介在させた状態で積層し、支持フィルムを加熱することで、少なくともY方向に沿って支持フィルムを熱収縮させ、以て、発光素子バーのXZ端面と支持フィルム縁部との間に、Y方向に沿って隙間を設け、その後、
(d)各発光素子バーの2つのXZ端面のそれぞれに、光反射膜を形成する、
各工程を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体発光装置の製造方法にあっては、工程(B)において、積層構造体を支持フィルムと貼り合わせ、少なくとも、基板の第2辺から支持フィルムが突出した状態とする。また、本発明の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法にあっては、工程(b)において、積層構造体を支持フィルムと貼り合わせ、少なくとも、発光素子バーの第2辺から支持フィルムが突出した状態とする。従って、それ以降の工程にあっては、基板の第2辺から突出した支持フィルムを作業代として用いればよいので、材料ロスが生じることを出来る限り避けることができる。また、発光素子バーの欠けや端面の傷を防止することができ、高い信頼性を得ることができる。更には、本発明の半導体発光装置の製造方法あるいは本発明の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法にあっては、発光素子バーのXZ端面と支持フィルム縁部との間にY方向に沿って隙間を設けた状態で、複数の発光素子バーを支持フィルムを介在させた状態で積層し、その後、各発光素子バーの2つのXZ端面のそれぞれに光反射膜を形成する。従って、従来の技術と同様に、所謂ダイシング用シートと同じ機能を有する支持フィルムを用いるが、係る支持フィルムを、特開平10−093187に開示されたスペーサとしても用いるので、しかも、単に加熱することで、発光素子バーのXZ端面と支持フィルム縁部との間にY方向に沿って隙間を設けることができるので、安価な工法で光反射膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1の(A)及び(B)は、実施例1の半導体発光装置の製造方法を説明するための素子製造用基板等の模式的な一部断面図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、それぞれ、図1の(B)に引き続き、実施例1の半導体発光装置の製造方法を説明するための基板等を上から眺めた模式図及びXZ平面で切断したときの模式的な断面図である。
【図3】図3は、図2の(A)に引き続き、実施例1の半導体発光装置の製造方法を説明するための基板等を上から眺めた模式図である。
【図4】図4は、図2の(A)に引き続き、実施例1の半導体発光装置の製造方法を説明するための支持フィルムを下から眺めた模式図である。
【図5】図5は、図3に引き続き、実施例1の半導体発光装置の製造方法を説明するための基板等を上から眺めた模式図である。
【図6】図6の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、図5に引き続き、実施例1の半導体発光装置の製造方法を説明するための発光素子バーを上から眺めた模式図、XZ平面で切断したときの模式的な断面図、及び、YZ平面で切断したときの模式的な断面図である。
【図7】図7は、図6に引き続き、実施例1の半導体発光装置の製造方法を説明するために、発光素子バー/支持フィルム積層体をY方向から眺めた模式図である。
【図8】図8は、図6に引き続き、実施例1の半導体発光装置の製造方法を説明するために、発光素子バー/支持フィルム積層体をX方向から眺めた模式図である。
【図9】図9の(A)及び(B)は、それぞれ、図7及び図8に引き続き、実施例1の半導体発光装置の製造方法を説明するための発光素子バーを上から眺めた模式図、及び、YZ平面で切断したときの模式的な断面図である。
【図10】図10の(A)及び(B)は、実施例1の半導体発光装置の製造方法を説明するために、発光素子バー/支持フィルム積層体をX方向から眺めた模式図である。
【図11】図9の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1の半導体発光装置の製造方法を説明するための発光素子バーを上から眺めた模式図、及び、YZ平面で切断したときの模式的な断面図である。
【図12】図12の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例2の半導体発光装置の製造方法を説明するための発光素子バーを上から眺めた模式図である。
【図13】図13の(A)、(B)及び(C)は、それぞれ、実施例3の半導体発光装置の製造方法を説明するための発光素子バーを上から眺めた模式図、XZ平面で切断したときの模式的な断面図、及び、YZ平面で切断したときの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。また、本発明の半導体発光装置の製造方法及び本発明の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法を、総称して、単に、『本発明の方法』と呼ぶ場合がある。
1.本発明の半導体発光装置の製造方法、及び、本発明の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の半導体発光装置の製造方法の具体的な説明)
3.実施例2(実施例1の半導体発光装置の製造方法の変形例)
4.実施例3(本発明の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法の具体的な説明)
【0014】
[本発明の半導体発光装置の製造方法、及び、本発明の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法、全般に関する説明]
本発明の半導体発光装置の製造方法にあっては、前記工程(G)に引き続き、また、本発明の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法にあっては、前記工程(e)に引き続き、発光素子バーをY方向と平行に劈開して、複数の発光素子チップを得た後、支持フィルムをX方向に引き延ばし、次いで、支持フィルムから発光素子チップを取り外す工程を含む形態とすることができる。そして、これによって、1つの発光素子バーから複数の発光素子チップを得ることができる。
【0015】
上記の好ましい形態を含む本発明の方法において、発光素子バーのXZ端面と支持フィルム縁部との間にY方向に沿って設けられた隙間の長さは、0mmを越えていればよいが、支持フィルムを引き裂いたときの支持フィルム幅のバラツキを考慮すると、発光素子バーのY方向に沿った長さの少なくとも5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である構成とすることが望ましい。隙間の長さの上限は、特に制限がある訳ではない。
【0016】
上記の好ましい形態、構成を含む本発明の方法において、支持フィルムは、X方向に沿って伸縮性を有し、Y方向に易引裂性を有することが好ましい。そして、この場合、支持フィルムのX方向に沿った伸び率は、125%以上、好ましくは200%以上であることが望ましい。ここで、『支持フィルムはY方向に易引裂性を有する』とは、Y方向に沿った幅が20mmの支持フィルムのY方向と平行な一辺の中央に切れ目を入れ、切れ目を挟んで、この一辺の端部を2箇所で把持し、一方の把持部を固定し、他方の把持部を一方の把持部に対して180度の方向に1m/分の速度で移動させることで支持フィルムを引き裂いたとき、引っかかりなく、直線状に裂け、しかも、20mm引き裂いたときの幅の値と、引き裂き前の幅の値との差異が0.5mm以下であることを意味する。
【0017】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の方法において、支持フィルムは、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂、二軸延伸ポリエステル系樹脂、一軸延伸高密度ポリエチレン系樹脂、一軸延伸中密度ポリエチレン系樹脂、一軸延伸低密度ポリエチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂から成り、あるいは、これらの樹脂の混合物から成り、あるいは、これらの樹脂のいずれかから成るフィルムの積層体である構成とすることができるが、中でも、優れた耐熱性と方向性(フィルムの縦方向と横方向との強度差が大きく、縦方向の引き裂きに弱い)を有する二軸延伸ポリプロピレン系樹脂や一軸延伸高密度ポリエチレン系樹脂を用いることが、より好ましい。更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の方法において、支持フィルムの一面には、粘着剤層若しくは接着剤層が形成されている構成とすることが好ましい。ここで、粘着剤層を構成する材料として、天然ゴムや合成ゴムをベースポリマーとしたゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、アクリル系重合体をベースポリマーとしたアクリル系接着剤を挙げることができるし、接着剤層として、アクリル樹脂系の接着剤、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂系の接着剤を挙げることができる。積層構造体を支持フィルムに貼り合わせる方法は、粘着剤層、接着剤層を構成する材料に依存して、適宜、決定すればよいが、例えば、ローラ等を用いて粘着剤層に圧力を加える方法、紫外線や熱によって接着剤層に接着機能を発揮させる方法を挙げることができる。また、積層構造体を支持フィルムから剥がす方法として、機械的に圧力を加えて剥がす方法、紫外線や熱によって接着機能を失わせる方法を挙げることができる。
【0018】
本発明の半導体発光装置の製造方法、あるいは、本発明の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法にあっては、工程(F)あるいは工程(c)において、複数の発光素子バーを支持フィルムを介在させた状態で積層し、支持フィルムを加熱することで少なくともY方向に沿って支持フィルムを熱収縮させるが、複数の発光素子バーを支持フィルムを介在させた状態で積層した後、支持フィルムを加熱してもよいし、支持フィルムを加熱した後、複数の発光素子バーを支持フィルムを介在させた状態で積層してもよい。
【0019】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の半導体発光装置の製造方法、あるいは、以上に説明した好ましい構成を含む本発明の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法(以下、これらを総称して、単に、『本発明』と呼ぶ場合がある)において、発光素子バーは、光の出射方向が揃うように複数の発光素子を一列に配置した発光素子アレイあるいは発光素子集合体から成る。即ち、複数の発光素子の光出射部はX方向に沿って一列に配列されている。そして、発光素子の数として、例えば、20,25,33,50,100を挙げることができるし、100以上であってもよい。発光素子バーの長さ(複数の発光素子が一列に配置された方向に沿った長さであり、具体的には、X方向に沿った長さ)として、10mm程度を挙げることができる。
【0020】
本発明において、基板として、あるいは又、化合物半導体層の積層構造体が形成された素子製造用基板(所謂ウエハ)として、GaAs基板、GaP基板、InP基板、AlGaN基板、GaInP基板、ZnS基板、サファイア基板、SiC基板、アルミナ基板、ZnO基板、LiMgO基板、LiGaO2基板、MgAl24基板、Si基板、Ge基板を挙げることができる。更には、これらの素子製造用基板の表面(主面)に、バッファ層や中間層が形成されたものを基板あるいは素子製造用基板として用いることもできる。また、これらの素子製造用基板の主面に関しては、結晶構造(例えば、立方晶型や六方晶型等)によっては、所謂A面、B面、C面、R面、M面、N面、S面等の名称で呼ばれる結晶方位面、あるいは、これらを特定方向にオフさせた面等を用いることもできる。尚、素子製造用基板を劈開あるいは切断することで、対向する二辺がX方向と平行であり、残りの二辺がY方向と平行である矩形形状の基板を得ることができる。
【0021】
本発明の半導体発光装置の製造方法にあっては、工程(A)において、対向する第1辺及び第3辺がX方向と平行であり、残りの第2辺及び第4辺がY方向と平行である矩形形状の基板を準備する。また、本発明の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法にあっては、工程(a)において、対向する第1辺及び第3辺がX方向と平行であり、残りの第2辺及び第4辺がY方向と平行である矩形形状の発光素子バーを準備する。ここで、第1辺及び第3辺はX方向と平行であると表現しているが、第1辺及び第3辺を得るにあたり、製造工程上のバラツキ等によって、第1辺及び第3辺がX方向と厳密には平行でない状態もあり得る。同様に、第2辺及び第4辺はY方向と平行であると表現しているが、第2辺及び第4辺を得るにあたり、製造工程上のバラツキ等によって、第2辺及び第4辺がY方向と厳密には平行でない状態もあり得る。従って、矩形形状の基板を準備し、あるいは又、矩形形状の発光素子バーを準備するが、厳密な意味での矩形形状の基板、矩形形状の発光素子バーではない基板、発光素子バーが準備される場合もあり得る。
【0022】
本発明における化合物半導体層の積層構造体、あるいは又、発光素子バーを構成する各発光素子は、例えば、基板の上に順次形成された、第1導電型を有する第1化合物半導体層、活性層、及び、第1導電型とは導電型が異なる第2導電型を有する第2化合物半導体層から構成され、第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極、第2化合物半導体層に電気的に接続された第2電極を備えている。尚、素子製造用基板が導電性を有している場合、素子製造用基板の一方の面(主面)上に、第1化合物半導体層、活性層、第2化合物半導体層を、順次、形成し、素子製造用基板の他方の面に第1電極を形成し、係る第1電極を、複数の発光素子において共通の第1電極とすればよい。一方、第2電極は、例えば、第2化合物半導体層上に形成すればよい。ここで、第1導電型をn型、第2導電型をp型としてもよいし、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。
【0023】
活性層を含む各種化合物半導体層として、例えば、GaN系化合物半導体(AlGaN混晶あるいはAlGaInN混晶、GaInN混晶を含む)、GaInNAs系化合物半導体(GaInAs混晶あるいはGaNAs混晶を含む)、AlGaInP系化合物半導体、AlAs系化合物半導体、AlGaInAs系化合物半導体、AlGaAs系化合物半導体、GaInAs系化合物半導体、GaInAsP系化合物半導体、GaInP系化合物半導体、GaP系化合物半導体、InP系化合物半導体、InN系化合物半導体、AlN系化合物半導体を例示することができる。化合物半導体層に添加されるn型不純物として、例えば、ケイ素(Si)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、錫(Sn)を挙げることができるし、p型不純物として、炭素(C)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)を挙げることができる。活性層は、単一の化合物半導体層から構成されていてもよいし、単一量子井戸構造[QW構造]あるいは多重量子井戸構造[MQW構造]を有していてもよい。活性層を含む各種化合物半導体層の形成方法(成膜方法)として、有機金属化学的気相成長法(MOCVD法、MOVPE法)や有機金属分子線エピタキシー法(MOMBE法)、ハロゲンが輸送あるいは反応に寄与するハイドライド気相成長法(HVPE法)、プラズマアシステッド物理的気相成長法(PPD法)を挙げることができる。
【0024】
或る発光素子における第2化合物半導体層と、この発光素子に隣接する発光素子における第2化合物半導体層とは、電気的に分離されている必要がある。この電気的な分離を達成するためには、例えば、或る発光素子と、この発光素子に隣接する発光素子との間(以下、この部分を、便宜上、『発光素子の境界部分』と呼ぶ場合がある)における第2化合物半導体層の部分を除去して空間的に分離する方法、発光素子の境界部分における第2化合物半導体層の部分を除去して絶縁層を形成(成膜)する方法、発光素子の境界部分における第2化合物半導体層の部分を除去して第1化合物半導体層を成長する方法、発光素子の境界部分における第2化合物半導体層の部分を除去してポリイミド樹脂等の絶縁材料で埋め込む方法、発光素子の境界部分における第2化合物半導体層の部分にホウ素イオンや水素イオンをイオン注入する方法を採用すればよい。
【0025】
第1電極あるいは第2電極をp型の導電型を有する化合物半導体層あるいは基板上に形成する場合、係る電極(p側電極)として、Au/AuZn、Au/Pt/Ti(/Au)/AuZn、Au/AuPd、Au/Pt/Ti(/Au)/AuPd、Au/Pt/TiW(/Ti)(/Au)/AuPd、Au/Pt/Ti、Au/Tiを挙げることができる。また、第1電極あるいは第2電極をn型の導電型を有する化合物半導体層あるいは基板上に形成する場合、係る電極(n側電極)として、Au/Ni/AuGe、Au/Pt/Ti(/Au)/Ni/AuGe、Au/Pt/TiW(/Ti)/Ni/AuGeを挙げることができる。尚、「/」の前の層ほど、活性層から電気的に離れたところに位置する。
【0026】
基板をX方向と平行に劈開するが、劈開の方法は、スクライブ装置を用いる等の周知の方法とすればよい。支持フィルムを引き裂く方法として、例えば、Y方向に沿って最外周部に位置する基板を引っ張るといった方法を挙げることができる。また、支持フィルム及び基板をけがく方法も周知の方法とすればよい。基板あるいは発光素子バーの第2辺、あるいは、第2辺と第4辺から支持フィルムが突出した状態とするが、突出した支持フィルムの部分の長さは、作業の行い易さといった観点から、適宜、決定すればよい。支持フィルムを収縮させるための支持フィルムの加熱温度、時間、雰囲気、加熱方法も、支持フィルムを構成する材料、支持フィルムに形成された粘着剤層若しくは接着剤層を構成する材料に基づき、適宜、決定すればよい。複数の発光素子バーを支持フィルムを介在させた状態で積層するためには、適切な治具を用いればよい。
【0027】
各発光素子バーの2つのXZ端面のそれぞれに光反射膜を形成する方法として、各種の真空蒸着法やスパッタリング法を挙げることができる。一般に、光反射面である発光素子バーの一方のXZ端面(便宜上、『XZ後端面』と呼ぶ)に形成された光反射膜は、高い光反射率を有する。一方、光出射面である発光素子バーの他方のXZ端面(便宜上、『XZ前端面』と呼ぶ)に形成された光反射膜は、低い光反射率を有し、かなりの割合の光を通過させる。XZ前端面の光反射率は、例えば15%前後であり、XZ後端面の光反射率は、例えば95%前後である。XZ後端面に形成される光反射膜として、Al23膜/アモルファスシリコン膜の多層構成膜、例えば、厚さ97nmのAl23膜と厚さ44nmのアモルファスシリコン膜を3回繰り返した6層膜を挙げることができるし、XZ前端面に形成される光反射膜として、Al23膜(厚さ:130nmあるいは265nm)を挙げることができる。
【0028】
発光素子バーの準備方法については、後述する。
【0029】
発光素子バーは、屡々、ヒートシンクに取り付けられる。ヒートシンクは、例えば、銅、銅タングステン、銅合金、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金といった金属や合金から、機械加工(例えば、切削加工)に基づき作製すればよい。ヒートシンクと発光素子バーとの間に、ヒートシンクの熱膨張係数と発光素子バーの熱膨張係数との差を緩和するための層(例えば、AlN、SiCあるいはCuWから成る層)を備えたサブ・マウントを配置してもよい。発光素子バーをヒートシンクに取り付けるには、例えば、発光素子バーに設けられた電極とヒートシンクとを半田付けすればよい。発光素子の第2電極をヒートシンクに取り付けてもよいし、発光素子の第1電極をヒートシンクに取り付けてもよい。前者の場合、ヒートシンクの上に、化合物半導体層、基板がこの順に積層された構造となり、所謂ジャンクション・ダウン方式での発光素子バーの取り付けとなる。一方、後者の場合、電極ブロックの上に、基板、化合物半導体層がこの順に積層された構造となり、所謂ジャンクション・アップ方式での発光素子バーの取り付けとなる。
【0030】
本発明における発光素子として、具体的には、半導体レーザ素子を例示することができる。そして、本発明における発光素子バーは、例えば、レーザプロジェクターの赤色光源等として用いることができる。
【実施例1】
【0031】
実施例1は、本発明の半導体発光装置の製造方法に関する。
【0032】
実施例1にあっては、基板40として、あるいは又、化合物半導体層の積層構造体(発光部)が形成された素子製造用基板(ウエハ)10として、n−GaAs基板を用いる。化合物半導体層の積層構造体20、あるいは又、発光素子バー(半導体レーザ・バー)60を構成する各発光素子は、基板40の上に形成された第1導電型(実施例1にあっては、n型)を有する第1化合物半導体層21、活性層23、及び、第1導電型とは導電型が異なる第2導電型(実施例1にあっては、p型)を有する第2化合物半導体層22から構成されている。そして、第1化合物半導体層21に電気的に接続された第1電極31、第2化合物半導体層22に電気的に接続された第2電極32を備えている。尚、基板40が導電性を有しているので、基板40の一方の面(主面)上に、第1化合物半導体層21、活性層23、第2化合物半導体層22を、順次、形成し、基板40の他方の面に第1電極31を形成している。そして、係る第1電極31を、複数の発光素子において共通の第1電極としている。尚、第1電極31は、基板40側から、例えば、金(Au)−ゲルマニウム(Ge)合金層、ニッケル(Ni)層、及び、金(Au)層が、順次、積層された構造を有する。一方、第2電極は、第2化合物半導体層22上に形成されている。尚、第2電極32は、例えば、チタン(Ti)層、白金(Pt)層、金(Au)層、チタン(Ti)層、白金(Pt)層、及び、金(Au)層が、順次、積層された構造を有する。
【0033】
第1化合物半導体層21、活性層23、第2化合物半導体層22等の組成を以下の表1に例示する。
【0034】
[表1]
第2化合物半導体層
p側コンタクト層 :GaAs
中間層 :GaInP
第2p型クラッド層 :AlInP
エッチングストップ層:GaInP
第1p型クラッド層 :AlInP
第2光ガイド層 :Al0.6Ga0.4InP
活性層
井戸層 :GaInP
第1化合物半導体層
第1光ガイド層 :Al0.6Ga0.4InP
n型クラッド層 :AlInP
バッファ層 :GaInP
【0035】
発光素子バー60は、具体的には、33個の半導体レーザ素子の光出射部がX方向に沿って一列に配列された発光素子アレイから成る。発光素子は、例えば、630nm以上690nm以下の波長域に発振波長を有する赤色発光の半導体レーザ素子から構成されている。発光素子バー60のX方向に沿った長さを10mm、共振器長(発光素子バー60のY方向に沿った長さ)を200μm乃至1.5mm、具体的には実施例1にあっては、0.7mmとした。発光素子バー60の厚さは約100μmである。
【0036】
実施例1の半導体発光装置の製造方法において、使用する支持フィルム50は、厚さ50μmの二軸延伸ポリプロピレン系樹脂から成り、支持フィルム50の一面には、シリコーン系粘着剤層が形成されている。支持フィルム50は、X方向に沿って伸縮性を有し、Y方向に易引裂性を有する。具体的には、支持フィルム50のX方向に沿った伸び率は、150%である。
【0037】
以下、図1〜図11を参照して、実施例1の半導体発光装置の製造方法を説明する。
【0038】
[工程−100]
先ず、素子製造用基板10上に、化合物半導体層の積層構造体(発光部)20を形成する。尚、以下の実施例において、MOCVD法にて各種の化合物半導体層を結晶成長させるとき、例えば、リン原料としてホスフィン(PH3)を用い、ガリウム原料としてトリメチルガリウム(TMG)ガスあるいはトリエチルガリウム(TEG)ガスを用い、アルミニウム原料としてトリメチルアルミニウム(TMA)ガスを用い、In原料としてトリメチルインジウム(TMI)ガスを用い、シリコン原料としてモノシランガス(SiH4ガス)を用い、Mg源としてシクロペンタジエニルマグネシウムガスを用いればよい。
【0039】
具体的には、n−GaAs基板から成る素子製造用基板(ウエハ)10の主面上に、通常のMOCVD法、即ち、有機金属や水素化合物を原料ガスとするMOCVD法に基づき、バッファ層11、第1化合物半導体層21、活性層23、第2化合物半導体層22をエピタキシャル成長させる。こうして、図1の(A)に模式的な一部断面図を示す構造を得ることができる。尚、図面においては、第1化合物半導体層21、活性層23、第2化合物半導体層22のそれぞれを1層で示す場合があり、また、バッファ層11の図示を省略する場合があり、更には、積層構造体20を1層で示す場合がある。
【0040】
次いで、発光素子の境界部分(電流狭窄領域)を形成する。具体的には、発光素子の境界部分における第2化合物半導体層22の部分を、エッチング層の上方まで溝状に除去し、係る溝状に除去された第2化合物半導体層22の部分に、CVD法にて、SiO2やSiN、Al23から成る絶縁層24を形成(成膜)する。尚、発光素子の境界部分の形成方法として、その他、第2化合物半導体層の部分を除去して空間的に分離する方法、発光素子の境界部分における第2化合物半導体層の部分を除去してポリイミド樹脂等の絶縁材料で埋め込む方法、発光素子の境界部分における第2化合物半導体層の部分を除去して第1化合物半導体層を成長する方法、発光素子の境界部分における第2化合物半導体層の部分にホウ素イオンや水素イオンをイオン注入する方法を採用してもよい。次いで、第2化合物半導体層22の頂面に、電子線蒸着法に基づき第2電極32を形成する。一方、研磨によって厚さを薄くされた素子製造用基板10の裏面に、電子線蒸着法に基づき第1電極31を形成する。こうして、図1の(B)に模式的な一部断面図を示す構造を得ることができる。
【0041】
[工程−110]
次いで、化合物半導体層の積層構造体20が形成され、対向する第1辺及び第3辺がX方向と平行であり、残りの第2辺及び第4辺がY方向と平行である矩形形状の基板40を準備する。具体的には、スクライブ装置を用いて、素子製造用基板10を劈開することで、基板40を得ることができる。矩形形状の基板40のX方向の長さ(発光素子バーの長さに相当する)を10mm、Y方向の長さを35mmとした。幅0.7mmの発光素子バー、50本取りとした。但し、図面においては、図面を簡素化するために、10本の発光素子バーを表示している。
【0042】
[工程−120]
その後、積層構造体20を支持フィルム50と貼り合わせ、少なくとも、基板40の第2辺42から支持フィルム50が突出した状態とする。実施例1にあっては、基板40の第2辺42及び第4辺44から支持フィルム50が突出した状態とした。この状態を上(基板側)から眺めた図を図2の(A)の模式図に示し、この状態をXZ平面で切断したときの模式的な断面図を図2の(B)に示す。積層構造体20を支持フィルム50に貼り合わせるためには、支持フィルム50を積層構造体20に接触させた状態で、支持フィルム50に、例えば、ゴム製のローラを用いて圧力を加えればよい。
【0043】
[工程−130]
次に、X方向と平行に支持フィルム50及び基板40をけがく。具体的には、基板40の露出面に、スクライブ装置によって、X方向に沿って49本のけがき線を入れる。けがき線の長さは例えば0.5mm、深さ数μmとする。また、同様に、支持フィルム50にもけがき線を入れる。けがき線の長さを例えば1mm、深さを例えば数μmとする。この状態を上(基板側)から眺めた図を図3の模式図に示し、この状態を下(支持フィルム側)から眺めた図を図4の模式図に示す。
【0044】
[工程−140]
そして、基板40をX方向と平行に劈開する。具体的には、ブレークマシンを用いて劈開を行う。具体的には、支持フィルム側から、ブレークマシンに備えられたセラミックス製の治具を基板40に設けられたけがき線と一致するように配置し、支持フィルム50を押すことで、基板40に設けられたけがき線を起点として、基板40が劈開される。この操作を49回、繰り返すことで、基板40を50個の細片に分けることができる。この状態を上(基板側)から眺めた図を図5の模式図に示す。
【0045】
[工程−150]
その後、支持フィルム50を引き裂くことで、支持フィルム50が貼り合わされた状態の発光素子バー(半導体レーザ・バー)60を得ることができる。具体的には、Y方向に沿って最外周部に位置する基板40を、図5に示した矢印の方向に引っ張ればよい。こうして得られた発光素子バー60を上(基板側)から眺めた図を図6の(A)の模式図に示す。また、発光素子バー60をXZ平面で切断したときの模式的な断面図を図6の(B)に示し、YZ平面で切断したときの模式的な断面図を図6の(C)に示す。
【0046】
[工程−160]
次いで、複数の発光素子バー60を支持フィルム50を介在させた状態で積層し、支持フィルム50を加熱することで、少なくともY方向に沿って支持フィルム50を熱収縮させ、以て、発光素子バー60のXZ端面61,62と支持フィルム50の縁部との間に、Y方向に沿って隙間を設ける。具体的には、100本の発光素子バー60を、支持フィルム50を介在させた状態で積層し、上下にシリコンから成る抑え板51を配置する。そして、これらの抑え板51、更には、複数の発光素子バー60が移動しないように、適切な方法で2枚の抑え板51を固定する。この状態をY方向から眺めた模式図を図7に示し、X方向から眺めた模式図を図8に示す。尚、参照番号50’は、上側の抑え板51と基板40との間に挟み込まれた保護フィルムである。ここで、この状態を、便宜上、『発光素子バー/支持フィルム積層体』と呼ぶ。そして、発光素子バー/支持フィルム積層体をオーブン内に搬入し、90゜C、5分間、加熱することで、X方向及び、Y方向に沿って支持フィルム50を熱収縮させる。こうして、発光素子バー60のXZ端面61,62と支持フィルム50の縁部との間に、Y方向に沿って長さ約0.1mmの隙間を設けることができる。この状態において、発光素子バー60を上(基板側)から眺めた図を図9の(A)の模式図に示す。また、発光素子バー60をXZ平面で切断したときの模式的な断面図を図9の(B)に示し、YZ平面で切断したときの模式的な断面図を図9の(C)に示す。更には、この状態の発光素子バー/支持フィルム積層体をX方向から眺めた模式的な断面図を図10の(A)に示す。
【0047】
[工程−170]
その後、各発光素子バー60の2つのXZ端面61,62のそれぞれに、光反射膜63,64を形成する。具体的には、発光素子バー/支持フィルム積層体をオーブンから搬出し、真空蒸着装置に搬入する。そして、発光素子バー60のXZ前端面(光出射面)61に、Al23膜から成り、光反射率が約15%の光反射膜63を成膜する。一方、発光素子バー60のXZ後端面(光反射面)62に、Al23膜/アモルファスシリコン膜の多層構成膜から成り、光反射率が約95%の光反射膜64を成膜する。この状態の発光素子バー/支持フィルム積層体をX方向から眺めた模式図を図10の(B)に示す。また、発光素子バー60を上(基板側)から眺めた図を図11の(A)の模式図に示す。更には、発光素子バー60をXZ平面で切断したときの模式的な断面図を図11の(B)に示し、YZ平面で切断したときの模式的な断面図を図11の(C)に示す。発光素子バー60のXZ端面61,62と支持フィルム50の縁部との間には、Y方向に沿って隙間が存在するので、XZ端面61,62への光反射膜63,64の成膜が、支持フィルム50によって遮られることはない。尚、場合によっては、真空蒸着装置内で、[工程−160]を実行してもよい。
【0048】
[工程−180]
次いで、発光素子バー/支持フィルム積層体を真空蒸着装置から搬出した後、治具から発光素子バー/支持フィルム積層体を外す。この際、発光素子バー60には支持フィルム50が貼り付けられているので、発光素子バー60のXZ前端面61とXZ後端面62の峻別を容易に行うことができる。具体的には、例えば、発光素子バー61の両端の余白の支持フィルム50の長さを変えたり、支持フィルム50の色、模様を変える。これによって、どちら側が発光素子バー60のXZ前端面61かXZ後端面62かを作業者が容易に判断することができ、作業時間の短縮、製造コストの低減を図ることができる。その後、発光素子バー60を支持フィルム50から剥がし、サブ・マウントに発光素子バー60の基板40を半田付けする。更に、サブ・マウントをベース(ヒートシンク)に取り付けた後、ベース上に絶縁板を介して電極部材を固定し、ワイヤの一端部を電極部材の段部に接合し、ワイヤの他端部を第2電極32に接合する。こうして、半導体発光装置を完成させることができる。
【0049】
実施例1の半導体発光装置の製造方法にあっては、[工程−120]において、積層構造体20を支持フィルム50と貼り合わせ、少なくとも、基板40の第2辺42から支持フィルム50が突出した状態とする。従って、それ以降の工程にあっては、基板40の第2辺42から突出した支持フィルム50を作業代として用いればよいので、材料ロスが生じることを出来る限り避けることができる。具体的には、発光素子バーの長さを10mmとしたとき、従来にあっては、発光素子バーの長さを13mmとし、両端部1.5mmを作業代とし、最終的に、この作業代は除去するので、30%の材料ロスが発生するが、実施例1の半導体発光装置の製造方法にあっては、このような材料ロスの発生が無い。
【0050】
更には、実施例1の半導体発光装置の製造方法にあっては、複数の発光素子バー60を支持フィルム50を介在させた状態で積層し、発光素子バー60のXZ端面61,62と支持フィルム50の縁部との間にY方向に沿って隙間を設けた状態で、各発光素子バー60の2つのXZ端面61,62のそれぞれに光反射膜63,64を形成(成膜)する。従って、従来の技術と同様に、所謂ダイシング用シートと同じ機能を有する支持フィルム50を用いるが、係る支持フィルム50を一種のスペーサとしても用いるので、しかも、単に加熱することで、発光素子バー60のXZ端面61,62と支持フィルム50の縁部との間にY方向に沿って隙間を設けることができるので、安価な工法にて光反射膜63,64を形成することができる。
【実施例2】
【0051】
実施例2は、実施例1の半導体発光装置の製造方法の変形である。実施例2にあっては、実施例1の[工程−170]の後、支持フィルム50に貼り合わされた発光素子バー60をY方向と平行に劈開する。その後、支持フィルム50をX方向に引き延ばす。これらの状態における発光素子バー60を上(基板側)から眺めた図を図12の(A)及び(B)の模式図に示す。これによって、発光素子バー60にあっては、支持フィルム50に貼り合わされた状態で、隣接する発光素子チップ70の間に隙間が生じ、発光素子チップ70が分離される。次いで、支持フィルム50から発光素子チップ70を取り外すことで、発光素子チップ70を得ることができる。こうして、1つの発光素子バー60から複数の発光素子チップ70を得ることができる。
【実施例3】
【0052】
実施例3は、本発明の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法に関する。
【0053】
以下、図13を参照して、実施例3の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法を説明する。
【0054】
[工程−300]
先ず、化合物半導体層の積層構造体20が基板40に形成されて成り、対向する第1辺41及び第3辺43がX方向と平行であり、残りの第2辺42及び第4辺44がY方向と平行である矩形形状の発光素子バー360を準備する。
【0055】
具体的には、実施例1の[工程−100]と同様にして、素子製造用基板10上に、化合物半導体層の積層構造体20を形成する。次いで、発光素子の境界部分(電流狭窄領域)を形成し、更に、第2電極32、第1電極31を形成する。
【0056】
[工程−310]
次いで、実施例1の[工程−110]と同様にして、化合物半導体層の積層構造体20が形成され、対向する第1辺及び第3辺がX方向と平行であり、残りの第2辺及び第4辺がY方向と平行である矩形形状の基板40を準備する。その後、矩形形状の基板40の積層構造体側にダイシング用シート(図示せず)を周知の方法に基づき貼り合わせる。そして、スクライブ装置を用いて、基板40を劈開することで、発光素子バー360を得ることができる。
【0057】
[工程−320]
その後、基板40を支持フィルム50と貼り合わせ、少なくとも、発光素子バー360の第2辺42から支持フィルム50が突出した状態とした後、ダイシング用シートを剥がす。尚、支持フィルム50の幅(Y方向の長さ)は、発光素子バー360のY方向の長さと同じであるか、それ以下である。即ち、支持フィルム50の端部が、発光素子バー360のXZ端面61,62から突出することはない。こうして得られた発光素子バー360を上(基板側)から眺めた図を図13の(A)の模式図に示す。また、発光素子バー360をXZ平面で切断したときの模式的な断面図を図13の(B)に示し、YZ平面で切断したときの模式的な断面図を図13の(C)に示す。
【0058】
[工程−330]
次いで、複数の発光素子バー360を支持フィルム50を介在させた状態で積層し、支持フィルム50を加熱することで、少なくともY方向に沿って支持フィルム50を熱収縮させ、以て、発光素子バー360のXZ端面61,62と支持フィルム50の縁部との間に、Y方向に沿って隙間を設ける。その後、各発光素子バー360の2つのXZ端面61,62のそれぞれに、光反射膜63,64を形成する。以上の各工程は、実施例1の[工程−160]〜[工程−170]と同様とすることができる。その後、実施例1の[工程−180]と同様の工程を実行することで、発光素子バーを完成させることができる。
【0059】
尚、実施例3にあっても、実施例2と同様の工程を実行することで、1つの発光素子バー360から複数の発光素子チップ70を得ることができる。
【0060】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明した発光素子バーや発光素子チップの構成、構造、発光素子バーや発光素子チップを構成する材料、発光素子バーや発光素子チップの製造条件や各種数値は例示であり、適宜変更することができる。実施例においては、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたが、これとは逆に、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。
【0061】
実施例にあっては、AlGaInP系化合物半導体層から成る積層構造体を有し、赤色を発光する半導体レーザ素子を例にとり、説明を行ったが、本発明は、例えばAlGaAs系化合物半導体層から成る積層構造体を有する赤外半導体レーザ素子、GaN系半導体レーザ素子(発振波長400nm乃至500nm)等の、他の材料系から構成された発光素子バーや発光素子チップの製造にも適用可能である。加えて、実施例では、半導体レーザ素子アレイを備えた発光素子バーを例にとり、説明を行ったが、本発明は、その他、端面発光型の半導体発光素子、スーパールミネッセントダイオード等の半導体発光素子を備えた半導体発光装置の製造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10・・・素子製造用基板(ウエハ)、11・・・バッファ層、20・・・積層構造体、21・・・第1化合物半導体層、22・・・第2化合物半導体層、23・・・活性層、24・・・絶縁層、31・・・第1電極、32・・・第2電極、40・・・基板、41・・・第1辺、42・・・第2辺、43・・・第3辺、44・・・第4辺、50・・・支持フィルム、50’・・・保護フィルム、51・・・抑え板、60,360・・・発光素子バー、61,62・・・XZ端面、63,64・・・光反射膜、70・・・発光素子チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)化合物半導体層の積層構造体が形成され、対向する第1辺及び第3辺がX方向と平行であり、残りの第2辺及び第4辺がY方向と平行である矩形形状の基板を準備し、
(B)積層構造体を支持フィルムと貼り合わせ、少なくとも、基板の第2辺から支持フィルムが突出した状態とし、次いで、
(C)X方向と平行に支持フィルム及び基板をけがき、その後、
(D)基板をX方向と平行に劈開し、次いで、
(E)支持フィルムを引き裂くことで、支持フィルムが貼り合わされた状態の発光素子バーを得た後、
(F)複数の発光素子バーを、支持フィルムを介在させた状態で積層し、支持フィルムを加熱することで、少なくともY方向に沿って支持フィルムを熱収縮させ、以て、発光素子バーのXZ端面と支持フィルム縁部との間に、Y方向に沿って隙間を設け、その後、
(G)各発光素子バーの2つのXZ端面のそれぞれに、光反射膜を形成する、
各工程を備えている半導体発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(G)に引き続き、発光素子バーをY方向と平行に劈開して、複数の発光素子チップを得た後、支持フィルムをX方向に引き延ばし、次いで、支持フィルムから発光素子チップを取り外す請求項1に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項3】
発光素子バーのXZ端面と支持フィルム縁部との間にY方向に沿って設けられた隙間の長さは、発光素子バーのY方向に沿った長さの少なくとも10%以上である請求項1に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項4】
支持フィルムは、X方向に沿って伸縮性を有し、Y方向に易引裂性を有する請求項1に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項5】
支持フィルムのX方向に沿った伸び率は125%以上である請求項4に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項6】
支持フィルムは、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂、二軸延伸ポリエステル系樹脂、一軸延伸高密度ポリエチレン系樹脂、一軸延伸中密度ポリエチレン系樹脂、一軸延伸低密度ポリエチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂から成り、あるいは、これらの樹脂の混合物から成り、あるいは、これらの樹脂のいずれかから成るフィルムの積層体である請求項1に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項7】
支持フィルムの一面には、粘着剤層若しくは接着剤層が形成されている請求項1に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項8】
(a)化合物半導体層の積層構造体が基板に形成されて成り、対向する第1辺及び第3辺がX方向と平行であり、残りの第2辺及び第4辺がY方向と平行である矩形形状の発光素子バーを準備し、
(b)積層構造体を支持フィルムと貼り合わせ、少なくとも、発光素子バーの第2辺から支持フィルムが突出した状態とし、次いで、
(c)複数の発光素子バーを、支持フィルムを介在させた状態で積層し、支持フィルムを加熱することで、少なくともY方向に沿って支持フィルムを熱収縮させ、以て、発光素子バーのXZ端面と支持フィルム縁部との間に、Y方向に沿って隙間を設け、その後、
(d)各発光素子バーの2つのXZ端面のそれぞれに、光反射膜を形成する、
各工程を備えている発光素子バーにおける光反射膜の形成方法。
【請求項9】
発光素子バーのXZ端面と支持フィルム縁部との間にY方向に沿って設けられた隙間の長さは、発光素子バーのY方向に沿った長さの少なくとも10%以上である請求項8に記載の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法。
【請求項10】
支持フィルムは、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂、二軸延伸ポリエステル系樹脂、一軸延伸高密度ポリエチレン系樹脂、一軸延伸中密度ポリエチレン系樹脂、一軸延伸低密度ポリエチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂から成り、あるいは、これらの樹脂の混合物から成り、あるいは、これらの樹脂のいずれかから成るフィルムの積層体である請求項8に記載の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法。
【請求項11】
支持フィルムの一面には、粘着剤層若しくは接着剤層が形成されている請求項8に記載の発光素子バーにおける光反射膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−245182(P2010−245182A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90277(P2009−90277)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】