説明

半導体発光装置及びこれを用いたバックライト光源、バックライト光源システム、表示装置、電子機器

【課題】液晶バックライト用として適する、高出力(高輝度)のRGB光を放つ波長変換型RGB固体光源などを提供する。
【解決手段】本発明の半導体発光装置は、青色光成分と、緑色光成分と、赤色光成分とを放ち、前記青色光成分は、430nm以上490nm未満の波長領域に発光ピークを有する光を放つ第1の固体発光素子が放つ光成分であり、前記緑色光成分は、360nm以上420nm未満の波長領域に発光ピークを有する光を放つ第2の固体発光素子が放つ光の緑色蛍光体による波長変換光であり、前記赤色光成分は、前記第1の固体発光素子及び前記第2の固体発光素子から選ばれる少なくとも一つの固体発光素子が放つ光の赤色蛍光体による波長変換光であり、前記緑色蛍光体は、Mn2+の電子エネルギー遷移に基づく緑色光を放つことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体の半導体発光装置と、これを用いたバックライト光源、バックライト光源システム、液晶ディスプレイなどの表示装置、及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、固体発光素子(例えば、発光ダイオード。以後、LEDという。)と、上記固体発光素子が放つ一次光を吸収して、それよりも長波長の光に波長変換する蛍光体とを組み合わせて、光の三原色となる赤(R)/緑(G)/青(B)の光成分を少なくとも放つ構造の半導体発光装置(以後、波長変換型RGB固体光源という。)が知られている。
【0003】
従来公知の上記波長変換型RGB固体光源の組み合わせ構造としては、例えば、以下がある。
(1)紫外LEDとRGB蛍光体との組み合わせ構造(例えば、特許文献1参照)
(2)青色LEDとGR蛍光体との組み合わせ構造(例えば、特許文献2参照)
(3)紫外LEDと青色LEDとRG蛍光体との組み合わせ構造(例えば、特許文献10参照)
(4)青色LEDとG蛍光体と赤色LEDとの組み合わせ構造(例えば、特許文献3参照)
(5)青色LEDとG(黄緑色)蛍光体と緑色LEDと赤色蛍光体との組み合わせ構造(例えば、特許文献4参照)
(6)青色LEDと緑色LEDと赤色蛍光体との組み合わせ構造(例えば、特許文献5参照)
(7)紫外LEDとBG蛍光体と赤色LEDとの組み合わせ構造(例えば、特許文献6参照)
【0004】
上記以外の組み合わせ構造としては、例えば、異なる二つの波長の光を放つ発光層を持つLEDと蛍光体との組み合わせ構造も考案されている(例えば、特許文献7参照。)。
【0005】
これらの従来の上記半導体発光装置は、主に、照明光源用として考案がなされているものであり、多くが任意の色温度の光、又は、例えば、電球色の光を放つように各波長成分の出力調整が行われているものである(例えば、特許文献5、8参照。)。
【0006】
一方、上記波長変換型RGB固体光源の、表示装置用バックライト光源(例えば、液晶ディスプレイ用バックライト)への応用も進められており、例えば、紫外LEDとRGB蛍光体との組み合わせ構造、青色LEDとGR蛍光体との組み合わせ構造、紫外/紫LEDと青色LEDとGR蛍光体との組み合わせ構造などを応用する検討がなされ、当該バックライト光源を用いた液晶ディスプレイなども提案されるに至っている(例えば、特許文献9、10参照。)。
【0007】
なお、上記従来の紫外/紫LEDと青色LEDとGR蛍光体との組み合わせ構造による波長変換型RGB固体光源は、緑色光を放射する緑色蛍光体と、赤色光を放射する赤色蛍光体との光吸収特性が広帯域であり、青色光の全部が吸収されずに一部だけが吸収されることに起因して、青色光の吸収損失が生じる課題を解決するためになされたものであり、特に300〜420nmに亘る近紫外〜紫色の波長領域に励起ピークを持つEu2+付活緑色蛍光体あるいはEu2+付活赤色蛍光体を、励起ピーク付近の励起光で励起することによって高出力化を図るものである。
【0008】
このため、緑色蛍光体としては、例えば、SrAl24:Eu2+、あるいは、Eu2+ベースのチオガレート(例えば、SrGa24:Eu2+)など、青色波長領域に吸収スペクトルの傾きを持ち、近紫外〜青色の波長領域に亘る広帯域の光吸収特性を持つ蛍光体〔例えば、Eu2+で付活されており、Eu2+の(4f)7−(4f)65d1電子エネルギー遷移に基づく緑色光を放つ蛍光体〕の使用を前提としており、青色光が実質的に吸収されない緑色蛍光体〔例えば、Mn2+の(3d)5−(3d)5電子エネルギー遷移に基づく緑色光を放つ蛍光体〕の使用を前提としたものではない。
【0009】
さらに、上記緑色蛍光体は、上記青色LEDの光取り出し面上を覆わない構造が好ましい形態とされ、具体的には、上記緑色蛍光体と上記赤色蛍光体とは、少なくとも上記青色LEDと空間的に離す構造が提案されている。
【0010】
なお、本明細書で触れる蛍光体の絶対外部量子効率、及び、絶対内部量子効率の高精度測定技術については既に確立しており、蛍光体サンプルを用いて評価可能である(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2000−509912号公報
【特許文献2】特表2002−531956号公報
【特許文献3】特開2005−285920号公報
【特許文献4】特開2006−245443号公報
【特許文献5】特開2006−324653号公報
【特許文献6】特開2007−5549号公報
【特許文献7】特開2006−216926号公報
【特許文献8】特開2005−285925号公報
【特許文献9】特開2007−96133号公報
【特許文献10】特許第4035394号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】大久保和明ほか、「照明学会誌」、1999年、第83巻、第2号、p.87
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の波長変換型RGB固体光源では、一般に、液晶ディスプレイや液晶テレビに求められる、RGBの色純度が良好で、広い色表現範囲と高輝度とを両立する、実用性の高い表示装置を得ることが困難という課題があった。
【0014】
この課題の根本は、紫外光を放つ高出力の固体発光素子が開発途上にあることに起因しており、以下これについて詳説する。
【0015】
波長変換型RGB固体光源において、固体発光素子は蛍光体の励起源として機能するが、固体発光素子が放つ電磁波の選択肢は、技術上、遠紫外線、近紫外線、紫色光、青色光の四種類に限定される。但し、技術的成熟度から、製造コストと光出力性能の双方において有利な固体発光素子となると、青色光を放つ固体発光素子に限定される。このため、市場要望に応え得るバックライト光源用としては、青色LEDを上記励起源として多用する半導体発光装置に限られることとなる。
【0016】
一方、青色LEDを蛍光体励起源とする、例えば白色LEDでは、励起光となる青色光と波長変換光となる可視光のエネルギー差が比較的小さくなるために、蛍光体が持つ物性上、高効率励起可能な蛍光体が限られる課題が生じる。
【0017】
特に、緑色蛍光体は、光吸収と発光のエネルギー差(青色吸収光と緑色発光のエネルギー差)が極端に小さくなることに起因して、数多くの実用条件を満たす緑色蛍光体となると、わずかな種類のEu2+又はCe3+付活蛍光体に限定される。
【0018】
このようにして選択使用される、Eu2+付活蛍光体、及びCe3+付活蛍光体は、その発光が、Eu2+、あるいはCe3+イオンの(4f)n−(4f)n-15d1電子エネルギー遷移〔n=1(Ce3+)、n=7(Eu2+)〕に基づき得られるものであり、その発光メカニズム上、発光スペクトル半値幅は比較的広いものになる。
【0019】
この結果、出力光の中の少なくとも緑色光成分は、上記バックライト光源用としては、スペクトル半値幅が65nm以上の広いものとなり、表示装置の広色域化が困難になる本質的な課題を抱えることになる。
【0020】
また、特に、Eu2+付活緑色蛍光体に限って述べると、当該Eu2+付活緑色蛍光体は、慨して、300nm以上420nm未満の近紫外〜紫色の波長領域に励起ピークを持つため、青色LEDを蛍光体励起源とする場合では、蛍光体が持つ特性を最良の状態で利用し得るものではない。即ち、励起ピークから長波長側にずれる波長の光で励起するために、十分な性能を発揮し得るものではない。この結果、出力光の中の緑色光成分は、概して発光効率の面で劣るものとなり易く、高輝度化が阻害された半導体発光装置になる傾向が認められる。
【0021】
Eu2+付活緑色蛍光体及びEu2+付活赤色蛍光体が励起ピークを持つ300〜420nmの波長の光を放つ近紫外又は紫色LEDで、当該蛍光体を高効率励起すると、半導体発光装置の高出力化は図り得るものの、前述の理由で、緑色光成分及び赤色光成分のスペクトル半値幅は広く、R/G/Bの各カラーフィルターを用いてRGB光成分を分離した時の各光が、色純度の面で劣るだけでなく、画像を表示した時の色域も狭く、表示装置の広色域化は困難である。
【0022】
一方、RGBの各光成分の、スペクトル半値幅を狭くする目的で、発光色が大きく異なる複数種類のLED(例えば、青色LEDと緑色LEDと赤色LEDとの組み合わせ、青色LEDと緑色LEDとの組み合わせ、青色LEDと赤色LEDとの組み合わせなど)を応用する取り組みもなされているが、この場合では、RGBの色バランスを良好なものとする回路構成が複雑になる課題があり、実用が困難になるという新たな課題が生じる。
【0023】
これは、色調が大幅に異なる、RGBの中の少なくとも二つの発光色を得るためには、固体発光素子の発光層材料として、材料系が異なる少なくとも二種類の固体発光素子(例えば、InGaN系とGaP系、InGaN系とAlGaAs系など)を選択して組み合わせざるを得ないという本質的な課題に直面することに起因している。
【0024】
材料系が異なる複数種類のLEDを用いると、投入電力−光出力特性の違いに起因して、例えば、階調表示しようとした時に、色バランスを保つことが困難になる。このため、所望の色バランスを保つためには、駆動回路側で手当てをせざるを得なくなり、バックライト光源の回路構成は複雑化する。
【0025】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、発光層の材料系が同じ固体発光素子を用いて、特に、液晶バックライト用として適する、高出力(高輝度)のRGB光を放つ波長変換型RGB固体光源など、とりわけ、半値幅の狭い青色光成分と緑色光成分とを少なくとも放ち、広色域表示性に優れる波長変換型RGB固体光源などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の半導体発光装置は、430nm以上490nm未満の波長領域に発光ピークを有する青色光成分と、500nm以上550nm未満の波長領域に発光ピークを有する緑色光成分と、600nm以上660nm未満の波長領域に発光ピークを有する赤色光成分とを放つ半導体発光装置であって、前記青色光成分は、430nm以上490nm未満の、青色の波長領域に発光ピークを有する光を放つ第1の固体発光素子が放つ光成分であり、前記緑色光成分は、360nm以上420nm未満の、近紫外から紫色の波長領域に発光ピークを有する光を放つ第2の固体発光素子が放つ光の、緑色蛍光体による波長変換光であり、前記赤色光成分は、前記第1の固体発光素子、及び、前記第2の固体発光素子から選ばれる少なくとも一つの固体発光素子が放つ光の、赤色蛍光体による波長変換光であり、前記緑色蛍光体は、Mn2+の電子エネルギー遷移に基づく緑色光を放つことを特徴とする。
【0027】
また、本発明のバックライト光源及びバックライト光源システムは、それぞれ前記本発明の半導体発光装置を含むことを特徴とする。
【0028】
また、本発明の表示装置は、前記本発明のバックライト光源又は前記本発明のバックライト光源システムを含むことを特徴とする。
【0029】
また、本発明の電子機器は、前記本発明の表示装置を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、表示装置の広色域化と高輝度化の両立を可能とする、実用性の高い、波長変換型RGB固体光源及びバックライト光源などを提供できる。また、広色域化と高輝度化を両立する、上記波長変換型RGB固体光源を用いた表示装置、特に液晶ディスプレイパネル及びそれを用いた電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の半導体発光装置の一例を示す模式断面図である。
【図2】図2は、本発明の半導体発光装置の一例を示す模式断面図である。
【図3】図3は、本発明の半導体発光装置の一例を示す模式断面図である。
【図4】図4は、本発明の半導体発光装置の一例を示す模式断面図である。
【図5】図5は、本発明の半導体発光装置の一例を示す模式断面図である。
【図6】図6は、本発明の半導体発光装置が放つ出力光の分光分布の一例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の半導体発光装置が放つ出力光の分光分布の一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明のバックライト光源の一例を示す概略図である。
【図9】図9は、本発明のバックライト光源システムの一例を示す概略図である。
【図10】図10は、本発明の表示装置の一例を示す概略図である。
【図11】図11は、本発明の電子機器の代表例である液晶テレビの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の各図面では、同一部分には同一の符合を付して重複した説明を省略する場合がある。
【0033】
(実施形態1)
先ず、本発明の半導体発光装置の実施形態を説明する。図1〜5は、本発明の半導体発光装置の一例を示す模式断面図である。図1〜5は断面図であるが、図面の見易さを考慮して固体発光素子2及び透光性樹脂7の断面を示すハッチングは省略している。また、図6及び図7は、本発明の半導体発光装置が放つ出力光の分光分布の代表例を示す図である。
【0034】
図1〜5において、基板1は、固体発光素子2を固定するための基台となるものであり、例えば、セラミックス(Al23、AlNなど)、金属(Al、Cuなど)、ガラス、樹脂(シリコーン樹脂、フィラー入りシリコーン樹脂など)などから形成される。
【0035】
また、基板1上には配線導体3が設けられ、固体発光素子2の給電電極4と配線導体3とを電気的に接続することによって、固体発光素子2に給電している。
【0036】
固体発光素子2は、直流、交流、又はパルスの中から選ばれる少なくともいずれかの電圧を印加する電力供給によって、電気エネルギーを光エネルギーに変換する電光変換素子であり、例えば、LED、レーザーダイオード(LD)、無機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、有機EL素子などである。なお、高出力かつ狭スペクトル半値幅の一次光を得る目的で好ましい固体発光素子2は、LED又はLDである。
【0037】
波長変換層5は、蛍光物質からなる蛍光体6を含み、固体発光素子2が放つ一次光を、当該一次光よりも長波長の光に波長変換するためのものであり、例えば、樹脂蛍光膜、透光性蛍光セラミックス、蛍光ガラスなどから構成されるが、本実施形態では、透光性樹脂7中に蛍光体6を分散させた樹脂蛍光膜で構成した。
【0038】
本発明の半導体発光装置は、図6及び図7にその出力光の分光分布の一例を示すように、430nm以上490nm未満、好ましくは、440nm以上470nm未満の波長領域に発光ピークを有する青色光成分12と、500nm以上550nm未満の波長領域に発光ピークを有する緑色光成分13と、600nm以上660nm未満の波長領域に発光ピークを有する赤色光成分14とを放つ。
【0039】
青色光成分12は、430nm以上490nm未満の青色の波長領域に発光ピークを有する光を放つ第1の固体発光素子2aが放つ光成分であり、緑色光成分13は、360nm以上420nm未満の近紫外から紫色、好ましくは380nm以上410nm未満の紫色の波長領域に発光ピークを有する光を放つ第2の固体発光素子2bが放つ光の、緑色蛍光体8による波長変換光であり、赤色光成分14は、第1の固体発光素子2a、及び、第2の固体発光素子2bから選ばれる少なくとも一つの固体発光素子が放つ光の、赤色蛍光体9による波長変換光である(図1〜5)。
【0040】
また、緑色蛍光体8は、Mn2+の電子エネルギー遷移〔(3d)5−(3d)5電子エネルギー遷移〕に基づく緑色光を放つことを特徴とする。さらに、緑色蛍光体8は、実質的に、波長450nmの青色光を吸収せず、当該青色光で励起されない緑色蛍光体であることが好ましい。
【0041】
上記「実質的に、波長450nmの青色光を吸収せず、当該青色光で励起されない」とは、波長450nmの青色光による励起下における、室温条件下での絶対外部量子効率が10%未満であることを意味するものとする。ここで、絶対外部量子効率とは、蛍光体を照射する励起光の量子数に対して、蛍光体から放射される光の量子数の割合をいい、その測定方法は前述の非特許文献1に記載されている。
【0042】
なお、図6及び図7において、近紫外〜紫色光成分11は、第2の固体発光素子2bが放つ一次光の漏れである。
【0043】
このように、青色の波長領域に発光ピークを有する光を放つ第1の固体発光素子2aと、近紫外から紫色の波長領域に発光ピークを有する光を放つ第2の固体発光素子2bとを組み合わせて用いることによって、少なくとも、緑色蛍光体8は、第1の固体発光素子2aが放つ青色光ではなく、第2の固体発光素子2bが放つ近紫外線又は紫色光で励起されることになるので、緑色蛍光体8については、光吸収と発光のエネルギー差(近紫外から紫色の吸収光と緑色発光のエネルギー差)が大きくなり、緑色蛍光体8の選択の幅が広がることになる。
【0044】
この結果、上記青色光を吸収せず、その青色光で実質的に励起されない緑色蛍光体の使用が可能になり、Eu2+やCe3+付活緑色蛍光体以外の蛍光体も使用できることになる。
【0045】
また、本発明の好ましい形態では、緑色蛍光体8は、波長450nm付近の青色光を吸収せず、当該青色光で励起されないので、第1の固体発光素子2aが放つ青色光による干渉を受けない装置構成になるため、出力色の色調の調整や制御などが比較的容易で、工業生産に適するものとなる。
【0046】
また、緑色蛍光体8は、Mn2+の(3d)5−(3d)5電子エネルギー遷移に基づく緑色光を放つものにすることによって、緑色光成分13のスペクトル半値幅が60nm未満の狭いものになり、この結果、図6及び図7に示すように、490nm付近の青緑色、及び575nm付近の黄色の発光成分強度が小さくなる。
【0047】
このようにして、例えば、上記青緑色及び黄色の光エネルギー強度は、共に、出力光の分光分布ピークの30%以下、好ましい形態では20%以下にもし得るので、青色光と緑色光、及び、緑色光と赤色光の境界が明瞭になるだけでなく、光出力成分を、青色と緑色と赤色に集中して出力するので、カラーフィルターの設計技術にさほど頼らずとも、RGBの明確な色分離を図り、カラーフィルター通過後の光出力を増すことも可能になるので、工業生産に適する装置構成になる。
【0048】
このようにして、本発明の半導体発光装置では、比較的容易に、RGB各光成分の高色純度化と高出力化とを図ることができ、高光出力の広色域表示を実現するものになる。
【0049】
さらに、Mn2+付活緑色蛍光体は、510〜520nmの深い緑色の波長領域に発光ピークを有する緑色光を放つものが多く、上記近紫外から紫色の波長領域に発光ピークを有する光を高い光子変換効率(絶対内部量子効率)で緑色光に波長変換し得るので、緑色の色純度の面で良好かつ発光効率の面でも良好な緑色発光成分13を放つ、実用性の高い半導体発光装置になる。ここで、光子変換効率(絶対内部量子効率)とは、蛍光体に吸収された励起光の量子数に対して、蛍光体から放射される光の量子数の割合をいい、その測定方法は前述の非特許文献1に記載されている。
【0050】
上記Mn2+の電子エネルギー遷移に基づく緑色光を放つ緑色蛍光体8は、Eu2+とMn2+の組み合わせ、又は、Ce3+とMn2+の組み合わせのいずれかで共付活した蛍光体であることが好ましい。
【0051】
このような緑色蛍光体8にすると、第2の固体発光素子2bが放つ、360nm以上420nm未満の近紫外から紫色の波長領域の光を、Eu2+又はCe3+が効率良く吸収してMn2+へと移し、吸収した近紫外又は紫色の光を理論限界に近い高い光子変換効率で緑色光へと波長変換するので、半導体発光装置は高出力化する。
【0052】
また、第2の固体発光素子2bが放つ、上記近紫外から紫色の波長領域の光によって、Mn2+による緑色光成分13に、Eu2+又はCe3+の電子エネルギー遷移に基づく青色の光成分(スペクトル半値幅の比較的広い青色光成分である。)を付加した緑色光(僅かに青みがかった緑色光になる。)を得ることもできるので、出力光の微妙な色調制御も容易にできることになる。
【0053】
さらに、このような緑色蛍光体8にすると、蛍光体の励起光として利用する上記近紫外から紫色の光のピーク波長が、緑色蛍光体8の励起ピークの波長と一致する必要性は少なく、緑色蛍光体8の励起ピークよりも励起光のピーク波長が長波長側にずれる場合であっても、理論限界に近い光子変換効率で、上記近紫外又は紫色の光を緑色光に波長変換し得るので、高出力の半導体発光装置の、設計の面で融通が利く構成になる。
【0054】
例えば、上記緑色蛍光体8は、360nm未満の波長領域に励起ピークを有し、360nm以上420nm未満の近紫外から紫色の波長領域に励起ピークを有さないものであっても、近紫外から紫色光を理論限界に近い極めて高い光子変換効率で緑色光に波長変換し得る特性を持つので高出力の半導体発光装置を提供し得る。
【0055】
また、このような、Eu2+又はCe3+の少なくともいずれかとMn2+とを共付活した蛍光体は、青色光を吸収しないものが大半であり、第1の固体発光素子2aが放つ青色の波長領域の光による干渉を抑制でき、出力光の色度調整も比較的容易になる。
【0056】
このようなMn2+を付活した緑色蛍光体8の具体例としては、Eu2+−Mn2+共付活アルカリ土類金属アルミン酸塩緑色蛍光体(例えば、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+)、Ce3+−Mn2+共付活希土類アルミン酸塩緑色蛍光体〔例えば、CeMgAl1119:Mn2+やCe(Mg,Zn)Al1119:Mn2+〕などが挙げられる。
【0057】
特に、上記Eu2+−Mn2+共付活アルカリ土類金属アルミン酸塩緑色蛍光体は、温度消光が小さい高耐熱性の蛍光体として知られ、高圧水銀ランプ用としても実用実績を持つ高効率蛍光体であり、緑色光成分13の高出力化の面で好ましい蛍光体である。
【0058】
前述のように、半導体発光装置などの出力光の色調を制御する目的で、上記Eu2+又はCe3+の少なくともいずれかとMn2+とを共付活した蛍光体は、上記緑色光だけでなく、430nm以上490nm未満の青色の波長領域に、Eu2+又はCe3+の電子エネルギー遷移に基づく青色の出力成分を幾分持つ蛍光体とすることも好ましい。この場合、青色光成分12のスペクトル半値幅が広くなり過ぎて、青色の色純度を損ねないようにする目的で、Eu2+又はCe3+の電子エネルギー遷移に基づく青色光の、上記青色の波長領域内の強度最大値は、上記緑色光の強度最大値の30%以下程度、好ましくは20%以下にし、青色光の強度最大値を低く抑えた緑色蛍光体とすることが好ましい。
【0059】
さらに、本発明によれば、上記第1の固体発光素子2aと上記第2の固体発光素子2bとは、発光ピークが、360nm以上490nm未満の近紫外〜紫〜青色の波長領域、特に、380nm以上470nm未満の紫〜青色の波長領域に位置するものの中から、発光ピークが近紫外〜紫色の波長領域にあるものとして第2の固体発光素子2bを、また、発光ピークが青色の波長領域にあるものとして第1の固体発光素子2aをそれぞれ選べばよいことになる。
【0060】
この結果、第1の固体発光素子2aと第2の固体発光素子2bとの発光層材料は、比較的物性が似通った、同じ材料系のものから選択できることになり、例えば、固体発光素子2をLEDとする場合では、少なくともGaとNとを含む化合物とすれば足りることになる。より具体的には、第1の固体発光素子2aの発光層は、InGaN系化合物で形成し、第2の固体発光素子2bの発光層は、GaN系化合物で形成すればよい。
【0061】
この結果、発光層の組成の面で若干異なる複数種類のLEDを用いるとは言え、材料系が同じで、投入電力−光出力特性が似通ったものになるために、表示装置用として色バランスを保つことが比較的容易で、バックライト光源などの回路構成も単純なものになる。
【0062】
本発明によれば、青色の波長領域に発光ピークを有する光を放つ第1の固体発光素子2aと、近紫外から紫色の波長領域に発光ピークを有する光を放つ第2の固体発光素子2bとを組み合わせて用いることによって、赤色蛍光体9は、第1の固体発光素子2aが放つ青色光、及び、第2の固体発光素子2bが放つ近紫外線又は紫色光から選ばれる少なくとも一方で励起されるものであれば足りるので、青色光励起赤色蛍光体だけでなく、高効率の蛍光体種類数が比較的多い近紫外線励起赤色蛍光体の利用も可能になり、緑色蛍光体8だけでなく、赤色蛍光体9の選択の幅も広がる。
【0063】
この結果、スペクトル半値幅が広いEu2+付活赤色蛍光体以外の蛍光体、特に、表示装置の赤色純度の面で好ましいとされる、輝線状の発光スペクトル形状を持つEu3+付活赤色蛍光体の使用も可能になり、色純度が良好かつ発光効率の面でも良好な赤色発光成分14をさらに放つ半導体発光装置も提供できることになる。
【0064】
本発明によれば、緑色蛍光体8は、第2の固体発光素子2bが放つ近紫外〜紫色光励起下での絶対内部量子効率が高い(例えば、80%以上)高効率蛍光体であればよく、第1の固体発光素子2aが放つ青色光励起下での絶対内部量子効率が50%未満、特に10%未満の低発光効率蛍光体であってもよい。
【0065】
このような緑色蛍光体8としては、例えば、前述したEu2+とMn2+とを共付活したアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体(例えば、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+)があり、本発明では、このような蛍光体を緑色蛍光体として用いる。
【0066】
本発明の半導体発光装置において、上記青色光成分12の半値幅は、20nm以上40nm未満であり、上記緑色光成分13の半値幅は、20nm以上60nm未満であることが好ましい。これによって、少なくとも、青色光成分12と緑色光成分13とは、スペクトル半値幅が狭く、色純度の面で、良好なものになるだけでなく、前述した青緑色と黄色の発光成分強度を小さくできるので、青色と緑色の高光出力の広色域表示用として好ましい半導体発光装置になる。
【0067】
このような青色光成分12は、波長変換層5を通過した、青色LEDなどの第1の固体発光素子2aが放つ一次光の一部又は全部を、そのまま出力光の青色光成分12として利用すればよい。
【0068】
なお、青色LEDが放つ上記青色光成分12は、蛍光体が放つ光とは異なり、指向性が強い光であるので、少なくとも上記第1の固体発光素子2aが放つ一次光は、光拡散作用を持つ光拡散層を通して出力することが好ましい。このような光拡散層としては、無機粉末や樹脂粉末などの粒子群を分散させた透光性シートなどが挙げられ、上記粒子群としては蛍光体(上記緑色蛍光体8および/または赤色蛍光体9)を利用することもできる。このようにすると、上記青色光成分12の指向性が緩和され、蛍光体が放つ波長変換光に類似した比較的均一に拡散する光となって出力するので、照明光源用や表示装置用として適する、色むら(色分離)を抑制した白色光が得られるようになる。
【0069】
一方、このようなスペクトル半値幅の狭い緑色光成分13は、例えば、上記BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+緑色蛍光体など、少なくともMn2+イオンで付活した蛍光体の、Mn2+イオンの電子エネルギー遷移に基づくものとすることによって実現し得る。
【0070】
本発明の半導体発光装置において、第1の固体発光素子2aの発光層と、第2の固体発光素子2bの発光層とは、前述のとおり、いずれもGaとNとを含む化合物からなることが好ましい。これによって、高出力の、近紫外〜紫色、及び青色の一次光を得ることができ、半導体発光装置は高出力化する。
【0071】
また、広色域化と高輝度化を両立させるために、本発明の半導体発光装置において、上記赤色蛍光体9は、Eu2+を付活した窒化物蛍光体又は酸窒化物蛍光体(以下、窒化物系蛍光体という。)、及び、Eu3+を付活した酸化物蛍光体又は酸硫化物蛍光体の少なくとも一つであることが好ましい。
【0072】
このような赤色蛍光体9は、近紫外〜紫色、及び/又は青色の光励起で高効率発光することが判っており、その光子変換効率(絶対内部量子効率)は80%を超える水準にある。したがって、これによって、表示装置の高輝度化を可能にする半導体発光装置を提供することができる。
【0073】
上記Eu2+を付活した窒化物系蛍光体としては、Eu2+を付活したアルカリ土類金属窒化アルミノ珪酸塩蛍光体、Eu2+を付活したアルカリ土類金属窒化珪酸塩蛍光体、Eu2+を付活したアルカリ土類金属酸窒化アルミノ珪酸塩蛍光体などがあり、例えば、以下の化学式で表される赤色蛍光体である。
【0074】
(1)MAlSiN3:Eu2+
(2)M2Si58:Eu2+
(3)M2Si5-xAlx8-xx:Eu2+
(4)MAl1+ySi4-y7-yy:Eu2+
但し、上記Mは、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、及びBaから選ばれる少なくとも一つの元素)、上記xは、0<x≦2を満足する数値であり、上記yは、0≦y≦1を満足する数値である。
【0075】
上記Eu2+を付活した窒化物系蛍光体は、近紫外〜紫色光励起でも青色光励起でも高効率発光する赤色蛍光体9であるので、当該赤色蛍光体9を励起する光を放つ固体発光素子2としては、第1の固体発光素子2aと第2の固体発光素子2bのいずれもが使用できる。
【0076】
一方、上記Eu3+を付活した酸化物蛍光体又は酸硫化物蛍光体としては、例えば、以下の化学式で表される赤色蛍光体が挙げられる。
【0077】
(1)Ln22S:Eu3+
(2)Ln23:Eu3+,Bi3+
(3)Ln(P,V)O4:Eu3+
(4)Ln(P,V)O4:Eu3+,Bi3+
但し、上記Lnは、Sc、Y、La、Ce、及びGdから選ばれる少なくとも一つの元素である。
【0078】
上記Eu3+を付活した酸化物蛍光体又は酸硫化物蛍光体は、近紫外〜紫色光励起で高効率発光する赤色蛍光体9であるので、当該赤色蛍光体9を励起する光を放つ固体発光素子2としては、第2の固体発光素子2bが使用できる。
【0079】
第1の固体発光素子2aと第2の固体発光素子2bと波長変換層5とを組み合わせた構造としては、例えば以下があり、本発明の半導体発光装置は、これら組み合わせ構造から適宜選択すればよい。
【0080】
(1)第1の固体発光素子2a及び第2の固体発光素子2bが放つ双方の一次光が、緑色蛍光体8及び赤色蛍光体9とを混合した波長変換層5を照射する構造(例えば、図1及び図2)
(2)第1の固体発光素子2aが放つ一次光は、波長変換層5を照射することなく出力し、第2の固体発光素子2bが放つ一次光は、赤色蛍光体9を混合した波長変換層5a及び緑色蛍光体8を混合した波長変換層5bを照射する構造(例えば、図3)
(3)第1の固体発光素子2aが放つ一次光は、赤色蛍光体9を混合した波長変換層5aを照射し、第2の固体発光素子2bが放つ一次光は、緑色蛍光体8を混合した波長変換層5bを照射する構造(例えば、図4)
【0081】
上記(1)の組み合わせ構造は、単純な構造の半導体発光装置を提供し得るので、製造工程の簡略化を図ることができ、低製造コストの半導体発光装置を提供し得る。また、第1の固体発光素子2a及び第2の固体発光素子2bが放つ双方の一次光が、蛍光体粒子によって光拡散して、指向性が弱められるので、色むら(色分離)の少ない白色光を得ることもできる。
【0082】
上記(2)の組み合わせ構造は、出力光の光色調整が比較的容易であり、製造時の特性ばらつきを抑制した半導体発光装置を提供し得る。
【0083】
また、上記(3)の組み合わせ構造も、出力光の色調制御が比較的容易であり、製造時の特性ばらつきを抑制した半導体発光装置を提供し得る。
【0084】
さらに、比較的波長の短い第2の固体発光素子2bが放つ近紫外〜紫色光で緑色蛍光体8を励起し、比較的波長の長い第1の固体発光素子2aが放つ青色光で赤色蛍光体9を励起するので、発光波長が異なる二種類の固体発光素子を用いる装置構造において、蛍光体の光吸収と発光のエネルギー差を最小限にすることができる。
【0085】
蛍光体の光吸収と発光のエネルギー差(波長変換に伴うエネルギー損失に等しい。)は、波長変換層5の温度上昇(発熱)に関与し、蛍光体の温度消光を促して、半導体発光装置の性能低下につながるので、このようにすると、波長の短い近紫外〜紫色光を放つ上記第2の固体発光素子2bは、少なくとも、波長の長い赤色光を放つ赤色蛍光体9を励起しない構造となり、赤色蛍光体9による光吸収と発光のエネルギー差を小さくするので、高出力化の面で有利な装置構造になる。
【0086】
上記(2)の組み合わせ構造において、必要に応じて、例えば、図3に示すように、第1の固体発光素子2aが放つ光の指向性を弱める目的で、光出力経路上に、光拡散作用を持つ光拡散体20(例えば、無機粉末、樹脂粒子など。)を配置することも好ましい。
【0087】
本発明の半導体発光装置においては、緑色蛍光体8は、第2の固体発光素子2bの主光取り出し面上を少なくとも覆うことが好ましい。好ましい形態では、緑色蛍光体8は、第1の固体発光素子2aが放つ青色光を吸収せず、その青色光によって励起されないので、これによって、第2の固体発光素子2bが放つ近紫外又は紫色光による緑色蛍光体8の出力制御が比較的容易になり、出力光の色調制御が容易な半導体発光装置を提供できるようになる。ここで、「主光取り出し面」とは、固体発光素子2の全出力光の70%以上を放つ面をいい、以下も同様である。
【0088】
本発明の半導体発光装置において、例えば、図4に示すように、緑色蛍光体8は、第2の固体発光素子2bの主光取り出し面上を覆い、赤色蛍光体9は、第1の固体発光素子2aの主光取り出し面上を覆うことも好ましい。これによって、出力光における、近紫外〜紫色光と緑色光の出力割合を、第2の固体発光素子2bと緑色蛍光体8で制御し、青色光と赤色光の出力割合を、第1の固体発光素子2aと赤色蛍光体9で制御し、近紫外〜紫色光及び緑色光と、青色光及び赤色光との出力割合を、別々に制御できるようになるので、出力光の色調制御が一層容易な半導体発光装置を提供できるようになる。
【0089】
本発明の半導体発光装置においては、緑色蛍光体8と赤色蛍光体9とは、いずれも、第1の固体発光素子2aと第2の固体発光素子2bの、双方の主光取り出し面を覆うものとすることも好ましい。これによって、構造面で単純な半導体発光装置になるので、製造工程の簡略化を図ることができ、低製造コストで実用性の高い半導体発光装置を提供し得るものとなる。
【0090】
また、本発明の半導体発光装置においては、例えば図5に一例を示すように、赤色蛍光体9は、第1の固体発光素子2a及び第2の固体発光素子2bの、双方の主光取り出し面を直接覆うことが好ましい。また、緑色蛍光体8は、第1の固体発光素子2a及び第2の固体発光素子2bの、いずれの主光取り出し面も直接には覆わず、赤色蛍光体9を含んでなる赤色蛍光体層を透過した、第2の固体発光素子2bが放つ光によって励起されることも好ましい。これによって、例えば、上記Eu2+を付活した窒化物系蛍光体を赤色蛍光体9とした場合に生じる、緑色蛍光体8と赤色蛍光体9との干渉(緑色蛍光体8が放つ緑色光を赤色蛍光体9が吸収して発光する相互干渉)を抑制するので、出力光の色調制御が容易な半導体発光装置を提供できるようになる。
【0091】
図1は、筐体10内に、少なくとも、第1の固体発光素子2aと第2の固体発光素子2bとを配置するとともに、筐体10内に、蛍光体6を少なくとも内在する波長変換層5を設けた構造のチップタイプの半導体発光装置を示す。
【0092】
図1では、第1の固体発光素子2a及び第2の固体発光素子2bが放つ双方の一次光が、緑色蛍光体8及び赤色蛍光体9とを混合した波長変換層5を照射する構造としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、前述の(1)〜(3)の構造をとり得るものにできる。
【0093】
図2〜4は、基板1の上に、少なくとも、第1の固体発光素子2aと第2の固体発光素子2bとを、フリップチップ実装して導通搭載するとともに、波長変換層5となる、蛍光体6を少なくとも内在する樹脂蛍光膜によって、双方(図2、図4)又は一方(図3)の固体発光素子2を封止した構造の半導体発光装置を示す。
【0094】
例えば、図2では、第1の固体発光素子2a及び第2の固体発光素子2bが放つ双方の一次光が、緑色蛍光体8と赤色蛍光体9とを混合した波長変換層5を照射する構造としている。
【0095】
例えば、図3では、第1の固体発光素子2aが放つ一次光は、波長変換層5を照射することなく出力し、第2の固体発光素子2bが放つ一次光は、赤色蛍光体9を混合した波長変換層5a及び緑色蛍光体8を混合した波長変換層5bを照射する構造としている。
【0096】
例えば、図4では、第1の固体発光素子2aが放つ一次光は、赤色蛍光体9を混合した波長変換層5aを照射し、第2の固体発光素子2bが放つ一次光は、緑色蛍光体8を混合した波長変換層5bを照射する構造としている。
【0097】
図2及び図4では、視感度が低いために、出力光の輝度への寄与度が低い、第2の固体発光素子2bが放つ光の出力割合を減らす目的で、第1の固体発光素子2aを覆う波長変換層5aよりも第2の固体発光素子2bを覆う波長変換層5bの方が、厚みが厚いようにしている。これによって、出力光の輝度への寄与度が低い、第2の固体発光素子2bが放つ光の多くを、波長変換層5bが含む蛍光体6によって吸収し、少なくとも、視感度の高い緑色光成分13(図6、図7)に波長変換するので、高出力化するようになる。
【0098】
第2の固体発光素子2bが放つ光のさらに多くを、蛍光体6によって吸収して、高出力化を図る目的では、緑色蛍光体8だけでなく、赤色蛍光体9も第2の固体発光素子2bが放つ光を吸収する構成にすることが好ましいものとなる。
【0099】
また、図3では、第1の固体発光素子2aよりも第2の固体発光素子2bの数が多くなるようにして、青色光成分12と緑色光成分13と赤色光成分14を各々構成する光子数が、バランスのとれたものとなるようにしている。また、緑色光成分13と赤色光成分14とは、各々、異なる固体発光素子2が放つ光の波長変換光となるようにして、青色光成分12と緑色光成分13と赤色光成分14とが独立に制御できる構造とし、色調制御がいっそう容易にできるようにしている。
【0100】
本発明では、このような構造にして、第1の固体発光素子2a及び第2の固体発光素子2bに通電し、第1の固体発光素子2aは、430nm以上490nm未満の、青色の波長領域に発光ピークを有する光を放ち、第2の固体発光素子2bは、360nm以上420nm未満の、近紫外から紫色の波長領域に発光ピークを有する光を放つようにした上で、蛍光体6を少なくとも含む波長変換層5を利用して、青色光成分12と、緑色光成分13と、赤色光成分14とを放つ半導体発光装置にする。
【0101】
さらに、青色光成分12は、第1の固体発光素子2aが放つ光成分であり、緑色光成分13は、第2の固体発光素子2bが放つ光の、緑色蛍光体による波長変換光であり、赤色光成分14は、第1の固体発光素子2a、及び、第2の固体発光素子2bから選ばれる少なくとも一つの固体発光素子が放つ光の、赤色蛍光体による波長変換光であるようにする。
【0102】
これによって、図6及び図7に示すように、少なくとも、スペクトル半値幅の狭い青色光成分12と、スペクトル半値幅の狭い緑色光成分13と、赤色光成分14とを持ち、高効率の白色系出力光を放つ半導体発光装置を、同じ材料系の発光層を持つ固体発光素子を用いて構成できるようになり、広色域表示に適する高効率白色系光を放つ半導体発光装置を提供できるようになる。
【0103】
図6及び図7から判るように、このような半導体発光装置が放つ白色光の分光分布における好ましい形態では、少なくとも490nmの青緑と575nmの黄色との出力強度割合は、いずれも出力光の分光分布ピークの30%以下、より好ましい形態では20%以下になる。
【0104】
この結果、上記白色光の分光分布は、青、緑、赤に光が集中するものになり、青、緑、赤の光を透過するカラーフィルターと組み合わせた時に、カラーフィルターによって吸収損失する光成分割合が減り高出力化するだけでなく、色純度の面でも良好な、青、緑、赤の出力光が得られるようになり、広い色表現範囲を得ることができるものにもなる。
【0105】
また、好ましい形態では、樹脂蛍光膜の厚みを増す、あるいは、樹脂蛍光膜を形成する透光性樹脂中の蛍光体濃度を増すなどの手段によって、近紫外〜紫色光の大半を蛍光体に吸収させて波長変換することができるので、近紫外〜紫色光成分11の出力強度割合も、青緑や黄色同様に、出力光の分光分布ピークの30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下に抑制でき、高出力化が可能になる。
【0106】
特に、第1の固体発光素子2a、及び/又は、第2の固体発光素子2bが放つ光が照射する波長変換層5a、5bを、図2〜図4に一例を示すように、空間的に分離した装置構成は、出力光の色調制御が容易であり、例えば、第2の固体発光素子2bが放つ光(近紫外〜紫色光成分11の起源である。)の出力割合を抑制する目的などで好ましいものである。
【0107】
以上のように本発明の半導体発光装置では、RGBの明確な色分離を図り、RGBの各光成分の高色純度化を図って、広色域表示を実現できる。
【0108】
(実施形態2)
次に、本発明のバックライト光源、及び、バックライト光源システムの実施形態を説明する。
【0109】
図8は、本発明のバックライト光源の一例を示す概略図であり、実施形態1の半導体発光装置の出力光を利用してなる、複数の発光部15を有する照明モジュール16の斜視図を示す。
【0110】
本発明のバックライト光源は、図1〜5に一例を示した、少なくとも一つの実施形態1の半導体発光装置を用いて構成したことを特徴とし、実施形態1の半導体発光装置が放つ出力光を発光部15が放つ光として利用することを特徴とする。
【0111】
また、図9は、本発明のバックライト光源システムの一例を示す概略図であり、図1〜5に一例を示した実施形態1の半導体発光装置を用いて構成したことを特徴とする。本発明にかかる典型的なバックライト光源システムは、図8に示した本発明のバックライト光源に点灯回路システム17を付加するなどして、広色域表示用として適する前述の白色系光を放つようにした光源システムである。
【0112】
このような構成のバックライト光源、及びバックライト光源システムの作用や効果などは、実施形態1の半導体発光装置の場合と同様である。
【0113】
(実施形態3)
図10は、図8及び図9で概略を示した、実施形態2のバックライト光源又はバックライト光源システムを組み込んだ、本発明の表示装置の一例を示す概略図であり、表示画素18を備えた平板型の表示装置の斜視図である。
【0114】
上記表示装置の代表的なものが、液晶ディスプレイパネルであり、実施形態2のバックライト光源と、光変調素子と、カラーフィルターとを少なくとも組み合わせて構成できる。
【0115】
本発明の表示装置は、実施形態2のバックライト光源又はバックライト光源システムを用いて構成したことを特徴とするものであり、その一例である液晶ディスプレイパネルは、携帯電話、ハンディータイプのビデオカメラ、小型ゲーム機器、液晶テレビなどの電子機器などに広く利用可能である。
【0116】
実施形態2のバックライト光源又はバックライト光源システムは、実施形態1の半導体発光装置を用いて構成するので、本発明によれば、少なくとも、スペクトル半値幅の狭い青色光成分12と、スペクトル半値幅の狭い緑色光成分13と、赤色光成分14とを有し(図6、図7)、高効率のRGB光を放つ表示装置を提供できるようになる。
【0117】
また、第1の固体発光素子2aと第2の固体発光素子2bとは、同じ材料系の発光層を持つものとすることができるので、先に説明した色バランスを保つことが比較的容易で、駆動回路を複雑化させる必要性も少ない。
【0118】
これらの相乗効果によって、広い色表現範囲と高輝度とを両立する、実用性の高い表示装置、特に、液晶ディスプレイパネルを、比較的容易に提供できるようになる。
【0119】
このような液晶ディスプレイパネルは、外光の強い屋外での視認性にも優れるものになるので、屋外で使用し得る各種電子機器などへの搭載を目的とした用途に適するものになる。
【0120】
(実施形態4)
図11は、本発明の電子機器の代表例である液晶テレビの一例を示す概略図であり、実施形態3の表示装置を用いて構成したことを特徴とする。
【0121】
図11に示した液晶テレビ19は、図10に示した本発明の表示装置(液晶ディスプレイパネル)に放送受信装置や音響システムなどを付加して、放送を映像や音声と共に楽しめるように構成した液晶テレビである。
【0122】
実施形態4の液晶テレビは、広い色表現範囲と高輝度とを両立する液晶ディスプレイパネルを用いて組み立てるので、画像表示特性の面で優れるテレビ装置になる。また、広い色表現範囲と高輝度とを両立し、素性として、外光に対して強い表示画面を持つ液晶ディスプレイパネルを用いるので、コントラストに優れるテレビ装置の設計も比較的容易なものとなるため、高コントラストの液晶テレビも提供できる。
【0123】
なお、本発明の表示装置は、外光の強い屋外での視認性にも優れるものであるので、上記液晶ディスプレイパネルを搭載する本発明の上記電子機器にも同様の作用効果が得られる。この作用効果は、とりわけ、屋外でも使用できるように機器設計がなされた、上記液晶ディスプレイパネルを搭載する本発明の上記電子機器において顕著なものとなる。
【0124】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上説明したように、本発明によれば、高色表現範囲と高輝度とを兼ね備える、表示装置用として適する半導体発光装置、バックライト光源、バックライト光源システム、及び表示装置などを比較的容易に提供でき、その実用的価値は大きい。
【符号の説明】
【0126】
1 基板
2 固体発光素子
2a 第1の固体発光素子
2b 第2の固体発光素子
3 配線導体
4 給電電極
5、5a、5b 波長変換層
6 蛍光体
7 透光性樹脂
8 緑色蛍光体
9 赤色蛍光体
10 筐体
11 近紫外〜紫色光成分
12 青色光成分
13 緑色光成分
14 赤色光成分
15 発光部
16 照明モジュール
17 点灯回路システム
18 表示画素
19 液晶テレビ
20 光拡散体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
430nm以上490nm未満の波長領域に発光ピークを有する青色光成分と、
500nm以上550nm未満の波長領域に発光ピークを有する緑色光成分と、
600nm以上660nm未満の波長領域に発光ピークを有する赤色光成分とを放つ半導体発光装置であって、
前記青色光成分は、430nm以上490nm未満の、青色の波長領域に発光ピークを有する光を放つ第1の固体発光素子が放つ光成分であり、
前記緑色光成分は、360nm以上420nm未満の、近紫外から紫色の波長領域に発光ピークを有する光を放つ第2の固体発光素子が放つ光の、緑色蛍光体による波長変換光であり、
前記赤色光成分は、前記第1の固体発光素子、及び、前記第2の固体発光素子から選ばれる少なくとも一つの固体発光素子が放つ光の、赤色蛍光体による波長変換光であり、
前記緑色蛍光体は、Mn2+の電子エネルギー遷移に基づく緑色光を放つことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記緑色蛍光体は、実質的に、波長450nmの青色光を吸収せず、前記青色光で励起されない緑色蛍光体である請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記緑色蛍光体は、Eu2+とMn2+の組み合わせ、又は、Ce3+とMn2+の組み合わせのいずれかで共付活した蛍光体である請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記緑色蛍光体は、360nm未満の波長領域に励起ピークを有し、360nm以上420nm未満の近紫外から紫色の波長領域に励起ピークを有さない請求項3に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記緑色蛍光体は、Eu2+−Mn2+共付活アルカリ土類金属アルミン酸塩緑色蛍光体である請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記Eu2+−Mn2+共付活アルカリ土類金属アルミン酸塩緑色蛍光体は、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+の組成式からなる請求項5に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記緑色蛍光体は、Ce3+−Mn2+共付活希土類アルミン酸塩緑色蛍光体である請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記Ce3+−Mn2+共付活希土類アルミン酸塩緑色蛍光体は、CeMgAl1119:Mn2+又はCe(Mg,Zn)Al1119:Mn2+の組成式からなる請求項7に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記第1の固体発光素子の発光層と、前記第2の固体発光素子の発光層とは、いずれもGaとNとを含む化合物からなる請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記赤色蛍光体は、Eu2+を付活した窒化物蛍光体又は酸窒化物蛍光体である請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記赤色蛍光体は、Eu3+を付活した酸化物蛍光体又は酸硫化物蛍光体である請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項12】
前記緑色蛍光体は、前記第2の固体発光素子の主光取り出し面上を少なくとも覆う請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項13】
前記緑色蛍光体は、前記第2の固体発光素子の主光取り出し面上を覆い、前記赤色蛍光体は、前記第1の固体発光素子の主光取り出し面上を覆う請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項14】
前記緑色蛍光体と前記赤色蛍光体とは、いずれも、前記第1の固体発光素子と前記第2の固体発光素子の、双方の主光取り出し面を覆う請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項15】
前記赤色蛍光体は、前記第1の固体発光素子と前記第2の固体発光素子の、双方の主光取り出し面を覆い、
前記緑色蛍光体は、前記第1の固体発光素子及び前記第2の固体発光素子の、いずれの主光取り出し面も覆わず、前記赤色蛍光体を含んでなる赤色蛍光体層を透過した、前記第2の固体発光素子が放つ光によって励起される請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項16】
請求項1に記載の半導体発光装置を含むことを特徴とするバックライト光源。
【請求項17】
請求項1に記載の半導体発光装置を含むことを特徴とするバックライト光源システム。
【請求項18】
請求項16に記載のバックライト光源又は請求項17に記載のバックライト光源システムを含むことを特徴とする表示装置。
【請求項19】
請求項18に記載の表示装置を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項20】
前記表示装置が、液晶ディスプレイパネルである請求項19に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−80935(P2010−80935A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188617(P2009−188617)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】