説明

半導体発光装置

【課題】線状や面状光源として使い勝手のよい半導体発光装置を提供する。
【解決手段】半導体発光装置は、複数の半導体層と、第1の電極と、第2の電極と、絶縁層と、第1の配線層と、第2の配線層と、第1の金属ピラーと、第2の金属ピラーと、樹脂層とを備え、曲げられた状態で曲面上に実装された。複数の半導体層は互いに分離され、各々の半導体層は発光層を含む。第1の電極は半導体層の第2の主面における発光層を有する領域に設けられ、第2の電極は第2の主面における発光層を含まない領域に設けられた。絶縁層は半導体層の第2の主面側に設けられた。第1の配線層は絶縁層における半導体層に対する反対側の面に設けられ、第1の電極と接続された。第2の配線層は絶縁層における半導体層に対する反対側の面に設けられて第2の電極と接続され、第2の電極と接続する面よりも第2の電極に対する反対側の面において面積が大である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光や白色光を放出可能な発光装置の用途は、照明装置、画像表示装置のバックライト光源、ディスプレイ装置などに拡大している。これらの用途では、線状光源や面状光源として広い面積を明るく照らすことが要求されている。また、用途の拡大に合わせて様々な実装形態への対応も求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−244012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、線状や面状光源として使い勝手のよい半導体発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、半導体発光装置は、複数の半導体層と、第1の電極と、第2の電極と、絶縁層と、第1の配線層と、第2の配線層と、第1の金属ピラーと、第2の金属ピラーと、樹脂層とを備え、曲げられた状態で曲面上に実装された。前記複数の半導体層は、互いに分離され、各々の半導体層は、第1の主面と、その反対側に形成された第2の主面と、発光層とを含む。前記第1の電極は、前記第2の主面における前記発光層を有する領域に設けられた。前記第2の電極は、前記第2の主面における前記発光層を含まない領域に設けられた。前記絶縁層は、前記半導体層の前記第2の主面側に設けられ、前記第1の電極に達する第1の開口と、前記第2の電極に達する第2の開口とを有する。前記第1の配線層は、前記絶縁層における前記半導体層に対する反対側の面及び前記第1の開口内に設けられ、前記第1の電極と接続された。前記第2の配線層は、前記絶縁層における前記半導体層に対する反対側の面及び前記第2の開口内に設けられて前記第2の電極と接続され、前記第2の電極と接続する面よりも前記第2の電極に対する反対側の面において面積が大である。前記第1の金属ピラーは、前記第1の配線層における前記第1の電極に対する反対側の面に設けられた。前記第2の金属ピラーは、前記第2の配線層における前記第2の電極に対する反対側の前記面に設けられた。前記樹脂層は、前記第1の金属ピラーの側面と前記第2の金属ピラーの側面との間に設けられた。前記互いに分離された複数の半導体層間には、前記半導体層より可撓性が高い部材が設けられた。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施形態に係る半導体発光装置の模式断面図。
【図2】実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を示す模式図。
【図3】実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を示す模式図。
【図4】実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を示す模式図。
【図5】実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を示す模式図。
【図6】実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を示す模式図。
【図7】実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を示す模式図。
【図8】実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を示す模式図。
【図9】実施形態に係る半導体発光装置の製造方法を示す模式図。
【図10】他の実施形態に係る半導体発光装置の模式断面図。
【図11】さらに他の実施形態に係る半導体発光装置の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。また、工程を表す図面においては、ウェーハ状態における一部の領域を表す。
【0008】
図1は、実施形態に係る半導体発光装置9の模式断面図である。図1は、半導体発光装置9が、湾曲して曲面上に実装された状態を表す。
【0009】
半導体発光装置9は、互いに分離された複数の半導体層15を有し、いわゆるマルチチップ構造の半導体発光装置である。各半導体層15は、第1の主面15aと、その反対側に形成された第2の主面を有する。第2の主面側に電極及び配線層が設けられ、第1の主面15aから、主として光が取り出される。
【0010】
各半導体層15は、第1の半導体層11と第2の半導体層13を有する。第1の半導体層11は、例えばn型のGaN層であり、電流の横方向経路として機能する。但し、第1の半導体層11の導電型はn型に限らず、p型であってもよい。第2の半導体層13は、発光層(活性層)12を、n型層とp型層とで挟んだ積層構造を有する。
【0011】
各半導体層15の第2の主面側は凹凸形状に加工され、第2の主面側には上段部と下段部が設けられている。第1の主面15aから見て下段部よりも上段側に位置する上段部は、発光層12を含む。下段部は、発光層12を含まず、発光層12の外周(端部)よりも外側に設けられている。
【0012】
上段部の表面である第2の半導体層13の表面には、第1の電極としてp側電極16が設けられている。すなわち、p側電極16は、発光層12を有する領域に設けられている。下段部の第1の半導体層11の表面には、第2の電極としてn側電極17が設けられている。
【0013】
図2(b)に、p側電極16とn側電極17の平面レイアウトの一例を示す。一つの半導体層15において、p側電極16の面積の方がn側電極17の面積よりも広い。したがって、発光領域を広く確保できる。
【0014】
半導体層15の第2の主面側は、絶縁層18で覆われている。また、隣り合う複数の半導体層15の間にも絶縁層18が充填され、各半導体層15の端部(側面)は絶縁層18で覆われている。絶縁層18は、p側電極16とn側電極17との間にも充填されている。絶縁層18は、例えば、微細開口のパターニング性に優れたポリイミド等の樹脂である。あるいは、絶縁層18としてシリコン酸化物を用いてもよい。
【0015】
絶縁層18において、半導体層15に対する反対側の面に第1の配線層としてのp側配線層21と、第2の配線層としてのn側配線層22が設けられている。p側配線層21は、p側電極16に達して絶縁層18に形成された第1の開口18a内にも設けられ、p側電極16と接続されている。n側配線層22は、n側電極17に達して絶縁層18に形成された第2の開口18b内にも設けられ、n側電極17と接続されている。
【0016】
p側配線層21においてp側電極16に対する反対側の面には、第1の金属ピラーとしてp側金属ピラー23が設けられている。n側配線層22においてn側電極17に対する反対側の面には、第2の金属ピラーとしてn側金属ピラー24が設けられている。
【0017】
p側金属ピラー23の周囲、n側金属ピラー24の周囲、p側配線層21およびn側配線層22は、樹脂層25で覆われている。樹脂層25は、隣接するピラー間に充填されている。p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24のそれぞれの下面は、樹脂層25から露出している。
【0018】
各半導体層15において発光層12を含まない部分に設けられたn側電極17と接続するn側配線層22の面積は、n側電極17側の面よりも、n側電極17とは反対側の面において大きくなっている。すなわち、n側配線層22とn側金属ピラー24とが接触する面積は、n側配線層22とn側電極17とが接触する面積より大きい。また、p側配線層21とp側金属ピラー23とが接触する面積は、p側配線層21とp側電極16とが接触する面積より大きい。あるいは、p側配線層21とp側金属ピラー23とが接触する面積が、p側配線層21とp側電極16とが接触する面積より小さい場合もある。また、n側配線層22の一部は、絶縁層18上を、発光層12の下に重なる位置まで延在する。
【0019】
これにより、より広い発光層12によって高い光出力を保ちつつ、半導体層15における発光層12を含まない部分の狭い面積に設けられたn側電極17から、n側配線層22を介して、より広い引き出し電極を形成できる。
【0020】
第1の半導体層11は、n側電極17及びn側配線層22を介してn側金属ピラー24と電気的に接続されている。第2の半導体層13は、p側電極16及びp側配線層21を介してp側金属ピラー23と電気的に接続されている。
【0021】
なお、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24のそれぞれの表面(図1において下面)には、必要に応じて、防錆などを目的とした表面処理膜(例えば、Ni、Auなどの無電解メッキ膜、プリコートされたはんだ、OSP(Organic Solderbility Preservatives)と呼ばれる揮発性の有機塗布膜等)が形成される。
【0022】
n側配線層22、p側配線層21、n側金属ピラー24、p側金属ピラー23の材料としては、銅、金、ニッケル、銀などを用いることができる。これらのうち、良好な熱伝導性、高いマイグレーション耐性及び絶縁材との優れた密着性を備えた銅がより好ましい。
【0023】
n側金属ピラー24及びp側金属ピラー23を補強する役目をする樹脂層25は、実装基板81と熱膨張率が同じもしくは近いものを用いるのが望ましい。そのような樹脂層25として、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などを一例として挙げることができる。
【0024】
半導体層15の第1の主面15a上には蛍光体層28が設けられ、さらに蛍光体層28の上にレンズ27が設けられている。蛍光体層28は、各半導体層15の第1の主面15a上、および隣接する半導体層15間の絶縁層18上に連続して一体に設けられている。
【0025】
蛍光体層28は、発光層12からの光を吸収し波長変換光を放出可能である。このため発光層12からの光と蛍光体層28における波長変換光との混合光が放出可能となる。例えば発光層12を窒化物系とすると、その発光層12からの青色光と、例えば黄色蛍光体層28における波長変換光である黄色光との混合色として白色または電球色などを得ることができる。なお、蛍光体層28は、複数種の蛍光体(例えば、赤色蛍光体と緑色蛍光体)を含む構成であってもよい。
【0026】
発光層12から発光された光は、主に、第1の半導体層11、第1の主面15a、蛍光体層28およびレンズ27を進んで、外部に放出される。
【0027】
半導体発光装置9は、例えばはんだ等の外部端子50を介して、実装基板81上に実装される。外部端子50は、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24のそれぞれの下面と、実装基板81上に形成されたパッド82との間に介在され、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24のそれぞれとパッド82とを接続する。
【0028】
半導体発光装置9は、全体が湾曲した状態で実装基板81の曲面上に実装されている。例えば、図1に示す形態では、蛍光体層28が設けられた光の放出面側が凸状に湾曲している。これにより、放出光を拡げる配光特性が実現できる。あるいは、光の放出面側が凹状になるように半導体発光装置9を曲げてもよい。この場合、集光効果が期待できる。いずれにしても、半導体発光装置9を曲げて実装することで、配光を制御することが容易になり、線状もしくは面状光源として使う場合の光学設計が容易になる。
【0029】
実装基板81が例えばフレキシブル基板の場合、半導体発光装置9の実装後にフレキシブル基板ごと半導体発光装置9を曲げることで、曲面上に実装された形態の半導体発光装置9が得られる。あるいは、半導体発光装置9が実装される前の状態で、湾曲している実装基板81に対して、半導体発光装置9を曲げつつ実装してもよい。
【0030】
複数の半導体層15は相互に分離され、つながっていない。したがって、半導体発光装置9全体を曲げるにあたって、半導体層15は曲げる必要がなく、半導体層15の破損を回避できる。また、複数のp側電極16とn側電極17も相互に分離され、複数のp側配線層21とn側配線層22も相互に分離され、複数のp側金属ピラー23とn側金属ピラー24も相互に分離されている。
【0031】
樹脂層25は、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24の周囲を囲んで、面方向全体にわたって形成されている。また、半導体発光装置9の強度を確保するために、樹脂層25は、半導体層15、p側電極16、n側電極17、絶縁層18、p側配線層21およびn側配線層22を含む積層体の厚みよりも厚い。したがって、半導体発光装置9の曲げやすさは、樹脂層25の曲げやすさに依存し、樹脂層25には可撓性が要求される。
【0032】
例えば、樹脂層25が、ポリジメチルシロキサン(PDMS:polydimethylsiloxane)などのゴムを主成分として含む構造であれば、樹脂層25は半導体層15及び絶縁層18よりも高い可撓性を発現し、半導体発光装置9を容易に湾曲させることが可能になる。
【0033】
また、絶縁層18も分断されずに面方向全体にわたって形成されている。このため、絶縁層18も、半導体層15より可撓性が高く、無機物に比べて軟らかい樹脂材料から構成することが望ましい。絶縁層18には、複数の微細開口18a、18bが形成されるパターニングが行われる。このため、絶縁層18として、微細開口のパターニング性に優れた例えばポリイミドなどの樹脂を用いるのが望ましい。これに対して、樹脂層25は、低コストで厚く形成でき、且つ補強を担う機能に適した樹脂を用いるのが望ましい。また、樹脂層25は、実装基板81と熱膨張率が同じもしくは近いものを用いるのが望ましい。
【0034】
また、樹脂層25の補強材としての機能を高めるために、樹脂層25に例えばシリカ等の固形粉末を混入させることが有効である。この場合、樹脂層25が硬くなり、曲げにくくなる場合がある。
【0035】
そこで、図10に示すように、樹脂層25にスリット25aを形成することで、樹脂層25をより曲げやすくできる。スリット25aは、樹脂層25の厚み方向に形成されている。複数の半導体層15がつながっていない部分で、半導体発光装置9は曲げられるため、複数の半導体層15の間の部分の下にスリット25aを形成することが効果的である。
【0036】
スリット25aは、樹脂層25側から絶縁層18にまで入り込んで形成されていてもよい。また、蛍光体層28側から絶縁層18に対してスリットを形成してもよい。半導体発光装置9の曲げやすさと強度との両立を考慮した上で、スリットの本数、深さなどが決められる。
【0037】
n側金属ピラー24及びp側金属ピラー23のそれぞれの厚み(図1において上下方向の厚み)は、半導体層15、n側電極17、p側電極16、および絶縁層18を含む積層体の厚みよりも厚い。各金属ピラー23、24のアスペクト比(平面サイズに対する厚みの比)は1以上であることに限らず、その比は1よりも小さくてもよい。すなわち、金属ピラー23、24は、その平面サイズよりも厚みが小さくてもよい。
【0038】
本実施形態の構造によれば、半導体層15が薄くても、n側金属ピラー24、p側金属ピラー23および樹脂層25を厚くすることで機械的強度を保つことが可能となる。また、実装基板81に実装した場合に、外部端子50を介して半導体層15に加わる応力をn側金属ピラー24とp側金属ピラー23が吸収することで緩和することができる。なお、半導体発光装置9と実装基板81との接続を担う外部端子50は、はんだに限らず、他の金属を用いてもよい。
【0039】
次に、図2(a)〜図9(b)を参照して、本実施形態に係る半導体発光装置の製造方法について説明する。
【0040】
まず、基板10の主面上に第1の半導体層11を形成し、その上に発光層12を含む第2の半導体層13を形成する。これら半導体層15が例えば窒化物系半導体の場合、半導体層15は例えばサファイア基板上に結晶成長させることができる。
【0041】
次に、図示しないレジストを用いた例えばRIE(Reactive Ion Etching)法で、図2(a)及びその下面図である図2(b)に示すように、半導体層15を貫通して基板10に達する分離溝14を形成する。分離溝14は、ウェーハ状態の基板10上で例えば格子状に形成され、半導体層15を複数に分離する。
【0042】
また、図示しないレジストを用いた例えばRIE法で、発光層12を含む第2の半導体層13の一部を除去して、第1の半導体層11の一部を露出させる。これにより、半導体層15の第2の主面側に、基板10から見て相対的に上段に位置する上段部と、上段部よりも基板10側の下段に位置する下段部が形成される。上段部は発光層12を含み、下段部は発光層12を含まない。
【0043】
そして、上段部の表面(第2の半導体層13の表面)にp側電極16を、下段部の表面(第1の半導体層11の表面)にn側電極17を形成する。p側電極16とn側電極17はどちらを先に形成してもよく、あるいはp側電極16とn側電極17とを同じ材料で同時に形成してもよい。
【0044】
次に、基板10上の露出している部分すべてを絶縁層18で覆った後、図3(a)に示すように、例えばウェットエッチングにより絶縁層18をパターニングし、絶縁層18に選択的に第1の開口18aと第2の開口18bを形成する。第1の開口18aは、p側電極16に達する。第2の開口18bは、n側電極17に達する。分離溝14には、絶縁層18が充填される。
【0045】
次に、図3(b)に示すように、絶縁層18の表面、第1の開口18aおよび第2の開口18bの内面に、連続したシードメタル19を形成する。さらに、図4(a)に示すように、シードメタル19上に選択的にレジスト41を形成し、シードメタル19を電流経路としたCu電解メッキを行う。
【0046】
これにより、図4(b)に示すように、シードメタル19上に、選択的にp側配線層21とn側配線層22が形成される。p側配線層21及びn側配線層22はメッキ法により同時に形成される銅材料からなる。p側配線層21は、第1の開口18a内にも形成され、シードメタル19を介してp側電極16と接続される。n側配線層22は、第2の開口18b内にも形成され、シードメタル19を介してn側電極17と接続される。
【0047】
p側配線層21及びn側配線層22のメッキに使ったレジスト41は、例えば薬液で除去される(図5(a))。この後、図5(b)に示すように、金属ピラー形成用の別のレジスト42を形成し、シードメタル19を電流経路としたCu電解メッキを行う。レジスト42は、レジスト41よりも厚い。
【0048】
これにより、図6(a)に示すように、p側配線層21の表面にp側金属ピラー23が形成され、n側配線22の表面にn側金属ピラー24が形成される。p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24は、メッキ法により同時に形成される銅材料からなる。
【0049】
レジスト42は、図6(b)に示すように、例えば薬液で除去される。この後、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24をマスクにして、シードメタル19の露出している部分をウェットエッチングする。これにより、p側配線層21とn側配線層22とのシードメタル19を介した電気的接続が分断される。
【0050】
次に、図7(a)に示すように、絶縁層18に対して樹脂層25を積層させる。樹脂層25は、p側配線層21とn側配線層22との間、およびp側金属ピラー23とn側金属ピラー24との間に充填される。p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24のそれぞれの側面は、樹脂層25で覆われる。樹脂層25の裏面は研削され、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24のそれぞれの下面は露出される。
【0051】
この後、図7(b)に示すように、基板10を除去する。基板10は、例えばレーザーリフトオフ法により除去される。具体的には、基板10の裏面側から第1の半導体層11に向けてレーザ光が照射される。レーザ光は、基板10に対して透過性を有し、第1の半導体層11に対しては吸収領域となる波長を有する。
【0052】
レーザ光が基板10と第1の半導体層11との界面に到達すると、その界面付近の第1の半導体層11はレーザ光のエネルギーを吸収して分解する。例えば、第1の半導体層11がGaNの場合、Gaと窒素ガスに分解する。この分解反応により、基板10と第1の半導体層11との間に微小な隙間が形成され、基板10と第1の半導体層11とが分離する。
【0053】
レーザ光の照射を、設定された領域ごとに複数回に分けてウェーハ全体にわたって行い、基板10を除去する。第1の主面15a上から基板10が除去されることで、光取り出し効率の向上を図れる。
【0054】
基板10が除去された面は洗浄され、さらにフロスト処理により粗面化される。第1の主面15aが粗面化されることで、光取り出し効率を向上できる。
【0055】
その後、図8(a)に示すように、第1の主面15a上及び隣接する半導体層15間の絶縁層18上に蛍光体層28が形成される。例えば、蛍光体粒子が分散された液状の透明樹脂をスピンコート法で塗布した後、熱硬化させることで、蛍光体層28が形成される。さらに、図8(b)に示すように、蛍光体層28上にレンズ27が形成される。
【0056】
その後、分離溝14(図2(a)、(b))の位置でダイシングし、複数の半導体発光装置9に個片化する(図9(a))。ダイシング時、基板10はすでに除去されている。さらに、分離溝14には、半導体層15は存在せず、絶縁層18として樹脂を埋め込んでおけば、容易にダイシングでき生産性を向上できる。さらに、ダイシング時に半導体層15が受けるダメージを回避することができる。また、個片化後に、半導体層15の端部(側面)が樹脂で覆われて保護された構造が得られる。個片化された半導体発光装置9は、複数の半導体層15を含むマルチチップ構造である。
【0057】
ダイシングされる前までの前述した各工程は、ウェーハ状態で一括して行われるため、個片化された個々のデバイスごとに、配線及びパッケージングを行う必要がなく、大幅な生産コストの低減が可能になる。すなわち、個片化された状態で、すでに配線及びパッケージングが済んでいる。また、ウェーハレベルで検査することが可能となる。このため、生産性を高めることができ、その結果として価格低減が容易となる。
【0058】
個片化された半導体発光装置9は、図9(b)に示すように、外部端子50を介して実装基板81上に実装される。外部端子50として例えばはんだを用いた場合、はんだを実装基板81上に形成されたパッド82上に供給、もしくは半導体発光装置9のp側金属ピラー23及びn側金属ピラー24の下面に設けた後、はんだを介して半導体発光装置9を実装基板81上にマウントする。そして、はんだを溶融させることで、p側金属ピラー23及びn側金属ピラー24のそれぞれと、パッド82とをはんだ接合させる。
【0059】
実装基板81が例えばフレキシブル基板の場合、半導体発光装置9の実装後にフレキシブル基板ごと半導体発光装置9を曲げることで、図1に示すように、曲面上に実装された形態の半導体発光装置9が得られる。あるいは、湾曲した実装基板に対して、半導体発光装置9を曲げつつ実装してもよい。
【0060】
なお、図11に示すように、第1の主面15a上にレンズ27を形成した後、そのレンズ27を覆うように、蛍光体層28を形成してもよい。また、レンズは、凸状に限らず、凹状であってもよい。
【0061】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形、代用、省略が可能である。
【0062】
蛍光体層としては、以下に例示する赤色蛍光体層、黄色蛍光体層、緑色蛍光体層、青色蛍光体層を用いることができる。
【0063】
赤色蛍光体層は、例えば、窒化物系蛍光体CaAlSiN:Euやサイアロン系蛍光体を含有することができる。
サイアロン系蛍光体を用いる場合、特に、
(M1−x,Ra1AlSib1c1d1・・・組成式(1)
(MはSi及びAlを除く少なくとも1種の金属元素であり、特に、Ca若しくはSrの少なくとも一方が望ましい。Rは発光中心元素であり、特に、Euが望ましい。x、a1、b1、c1、d1は、次の関係を満たす。0<x≦1、0.6<a1<0.95、2<b1<3.9、0.25<c1<0.45、4<d1<5.7)を用いることが好ましい。
組成式(1)で表されるサイアロン系蛍光体を用いることで、波長変換効率の温度特性が向上し、大電流密度領域での効率をさらに向上させることができる。
【0064】
黄色蛍光体層は、例えば、シリケート系蛍光体(Sr,Ca,Ba)SiO:Euを含有することができる。
【0065】
緑色蛍光体層は、例えば、ハロ燐酸系蛍光体(Ba,Ca,Mg)10(PO・Cl:Euやサイアロン系蛍光体を含有することができる。
サイアロン系蛍光体を用いる場合、特に、
(M1−x,Ra2AlSib2c2d2・・・組成式(2)
(MはSi及びAlを除く少なくとも1種の金属元素であり、特に、Ca若しくはSrの少なくとも一方が望ましい。Rは発光中心元素であり、特に、Euが望ましい。x、a2、b2、c2、d2は、次の関係を満たす。0<x≦1、0.93<a2<1.3、4.0<b2<5.8、0.6<c2<1、6<d2<11)を用いることが好ましい。
組成式(2)で表されるサイアロン系蛍光体を用いることで、波長変換効率の温度特性が向上し、大電流密度領域での効率をさらに向上させることができる。
【0066】
青色蛍光体層は、例えば、酸化物系蛍光体BaMgAl1017:Euを含有することができる。
【符号の説明】
【0067】
9…半導体発光装置、10…基板、11…第1の半導体層、12…発光層、13…第2の半導体層、15…半導体層、15a…第1の主面、16…p側電極、17…n側電極、18…絶縁層、19…シードメタル、21…p側配線層、22…n側配線層、23…p側金属ピラー、24…n側金属ピラー、25…樹脂層、25a…スリット、28…蛍光体層、81…実装基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と、その反対側に形成された第2の主面と、発光層とを含み、互いに分離された複数の半導体層と、
前記第2の主面における前記発光層を有する領域に設けられた第1の電極と、
前記第2の主面における前記発光層を含まない領域に設けられた第2の電極と、
前記半導体層の前記第2の主面側に設けられ、前記第1の電極に達する第1の開口と、前記第2の電極に達する第2の開口とを有する絶縁層と、
前記絶縁層における前記半導体層に対する反対側の面及び前記第1の開口内に設けられ、前記第1の電極と接続された第1の配線層と、
前記絶縁層における前記半導体層に対する反対側の面及び前記第2の開口内に設けられて前記第2の電極と接続され、前記第2の電極と接続する面よりも前記第2の電極に対する反対側の面において面積が大である第2の配線層と、
前記第1の配線層における前記第1の電極に対する反対側の面に設けられた第1の金属ピラーと、
前記第2の配線層における前記第2の電極に対する反対側の前記面に設けられた第2の金属ピラーと、
前記第1の金属ピラーの側面と前記第2の金属ピラーの側面との間に設けられた樹脂層と、
を備え、
前記互いに分離された複数の半導体層間には、前記半導体層より可撓性が高い部材が設けられ、
曲げられた状態で曲面上に実装されたことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
第1の主面と、その反対側に形成された第2の主面と、発光層とを含み、互いに分離された複数の半導体層と、
前記第2の主面における前記発光層を有する領域に設けられた第1の電極と、
前記第2の主面における前記発光層を含まない領域に設けられた第2の電極と、
前記半導体層の前記第2の主面側および前記互いに分離された複数の半導体層間に設けられ、前記第1の電極に達する第1の開口と、前記第2の電極に達する第2の開口とを有する絶縁層と、
前記絶縁層における前記半導体層に対する反対側の面及び前記第1の開口内に設けられ、前記第1の電極と接続された第1の配線層と、
前記絶縁層における前記半導体層に対する反対側の面及び前記第2の開口内に設けられて前記第2の電極と接続され、前記第2の電極と接続する面よりも前記第2の電極に対する反対側の面において面積が大である第2の配線層と、
前記第1の配線層における前記第1の電極に対する反対側の面に設けられた第1の金属ピラーと、
前記第2の配線層における前記第2の電極に対する反対側の前記面に設けられた第2の金属ピラーと、
前記第1の金属ピラーの側面と前記第2の金属ピラーの側面との間に設けられ、前記絶縁層よりも高い可撓性を有する樹脂層と、
を備えたことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項3】
前記樹脂層に、厚み方向にスリットが形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記スリットは、前記複数の半導体層の間の部分の下に形成されたことを特徴とする請求項3記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記樹脂層は、固形粉末を含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記樹脂層は、ゴムを主成分とすることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記半導体発光装置は、曲げられた状態で曲面上に実装されることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記複数の半導体層の間に前記絶縁層が充填されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記絶縁層は、前記樹脂層とは異なる樹脂材料からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記第1の電極の面積は、前記第2の電極の面積よりも広いことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記第2の配線層と前記第2の金属ピラーとが接触する面積は、前記第2の配線層と前記第2の電極とが接触する面積より大であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項12】
前記第2の配線層の一部は、前記絶縁層上を、前記発光層に重なる位置まで延在することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項13】
前記第2の電極は、前記第2の主面における前記発光層の外周よりも外側に設けられたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の半導体発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−253999(P2011−253999A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127968(P2010−127968)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】