説明

半導体素子の製造方法および半導体装置の製造方法

【課題】生産性に優れた半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも1の面に粘着層を設けたダイシングフィルムの粘着層を、半導体ウエハに貼着する工程と、前記半導体ウエハをダイシングし半導体素子を得る工程とを有する半導体素子の製造方法であって、前記基材フィルムが8MPa以上の降伏点応力(測定方法:JISK7161準拠 測定温度:25℃)を有するとともに所定の破断エネルギー評価試験における破断エネルギーが30mJ以上であることを特徴とする半導体素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造方法および半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、半導体ウエハやパッケージ等を切断する際に半導体ウエハ加工用の粘着フィルムダイシングフィルムが用いられる。この粘着フィルムは、半導体ウエハやパッケージ等を貼り付け、ダイシング(切断)し、さらに粘着フィルムをエキスパンティング等することにより、前記半導体ウエハ等をピックアップするために用いられる。
【0003】
前記粘着フィルムは、一般に基材フィルムと、基材フィルムの少なくとも片面に設けられた粘着層とで構成されている。従来、基材フィルムとしてはポリ塩化ビニル(PVC)樹脂シートが多く用いられている。しかしながら、PVC起因の可塑剤の付着によるウエハの汚染防止や、環境問題に対する意識の高まりから、最近ではオレフィン系シート、エチレンビニルアルコール系シートやエチレンメタクリル酸アクリレート系のシート等のポリオレフィン系材料を用いた基材フィルムが開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また近年では半導体素子(ウエハ)の小型化・薄型化が進んでおり、半導体ウエハが割れやすくなることから、ダイシングフィルムに更なる軽剥離(ピックアップ)性が求められている。これまではピックアップ性改良のために特許文献2に示すような粘着層の改良が実施されてきたが、半導体装置の生産性向上に向けた更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−257893
【0006】
【特許文献2】特開2008−060434
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生産性に優れた半導体素子の製造方法および半導体装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の本発明により解決することができる。
【0009】
[1]基材フィルムの少なくとも1の面に粘着層を設けたダイシングフィルムの粘着層を、半導体ウエハに貼着する工程と、前記半導体ウエハをダイシングし半導体素子を得る工程とを有する半導体素子の製造方法であって、前記基材フィルムが8MPa以上の降伏点応力(測定方法:JISK7161準拠 測定温度:25℃)を有するとともに以下の破断エネルギー評価試験における破断エネルギーが30mJ以上であることを特徴とする半導体素子の製造方法。
[破断エネルギー評価試験]
フィルムの片面に下記切創作成条件にて十字の切創を作成する。
切創を作成した面を下側にし、十字の切創の交差点に対し下記の落錘試験条件にて、
落錘試験を実施し、基材が破断する錘の位置エネルギーを破断エネルギーとする。
[切創作成条件]
ブレードを用いて深さ20μm、長さ40mm以上の切創を十字に作成する。
[落錘試験条件]
錘 :1.02kg
錘形先端状 :直径20mmの半球状
試験片固定形状 :直径40mmの円形状
【0010】
[2]前記基材フィルムがオレフィン樹脂を主成分とするものである[1]項に記載の半導体素子の製造方法。
【0011】
[3]前記オレフィン系樹脂が、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリスチレンからなる群より選択される1または2以上の樹脂である[2]項に記載の半導体素子の製造方法。
【0012】
[4]前記基材フィルムが更にオレフィン系エラストマーを含む[3]項に記載の半導体素子の製造方法。
【0013】
[5]前記オレフィン系エラストマーが、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、ブテン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・ブテン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・ブテン−αオレフィン共重合体及び、エチレン・プロピレン・ブテン−α・オレフィン共重合体、からなる群より選ばれる少なくとも1または2以上の樹脂を含む[4]項に記載の半導体素子の製造方法。
【0014】
[6]前記ダイシングフィルムのUV照射後、25℃における貯蔵弾性率(E´)が1.0×10Pa以上、1.0×1010Pa以下である[1]項乃至[5]項のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
【0015】
[7]基板上に半導体素子を載置する工程を有する半導体装置の製造方法であって、前記半導体素子が、[1]項乃至[6]項のいずれか一項に記載の半導体素子の製造方法に得られた半導体素子である半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の半導体素子の製造方法によれば、半導体素子および半導体装置の製造における量産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の半導体素子の製造方法に用いられるダイシングフィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】半導体ウエハを貼着したダイシングフィルムの一例を示す概略断面図である。
【図3】半導体ウエハがダイシングされる状態の一例を示す概略断面図である。
【図4】破断エネルギー評価試験に用いる十字切創作製後の試験用フィルムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る半導体素子の製造方法は、基材フィルムの少なくとも1の面に粘着層を設けたダイシングフィルムの粘着層を半導体ウエハに貼着する工程1と、前記半導体ウエハをダイシングし半導体素子を得る工程2とを有し、前記ダイシングフィルムの基材フィルムが所定の物性値を有するものであることを特徴とする。そして当該特徴により、半導体素子ダイシング後のピックアップ性が良好なものとなり半導体素子製造における作業性、量産性が改善される。
【0019】
以下本発明の構成要件について図面を用いて説明する。
【0020】
(工程1)
図1は、半導体ウエハ3に貼着するダイシングフィルム10の一例を示す概略断面図である。ダイシングフィルム10は基材フィルム2と粘着層1とを有しており、図2に示すように半導体ウエハが粘着層1に貼着される。
【0021】
(工程2)
工程1によりダイシングフィルム10に貼着された半導体ウエハ3は、図3(b)に示すようにダイシング(個片化)され、半導体素子4が得られる。
【0022】
(ダイシングフィルムの構成)
(基材フィルム)
本発明に係る半導体素子の製造方法に用いられるダイシングフィルム10は、図1に例示するように基材フィルム2と粘着層1とを少なくとも有するものである。
基材フィルム2には、降伏点応力(JIS 7161準拠 測定温度:25℃)が8MPa以上となるものを用いることが好ましく、更に好ましくは10MPa以上20MPa以下のものである。前記範囲下限値以上のものを用いることによりピックアップ性に優れ、また、前記範囲上限値以下の物を用いることによりエキスパンド性に優れる。
【0023】
また、基材フィルム2は、所定の破断エネルギー評価試験において30mJ以上であることが好ましく、更に好ましくは、100mJ以上500mJ以下である。前記範囲下限値以上であることによりエキスパンド時の基材の破断を抑制することができる。前記範囲上限値以下であることによりピックアップ性に優れる。
【0024】
本発明における破断エネルギー評価試験の詳細は以下の通りである。
厚み80μmとなるφ50mm以上となる試験用フィルムを作成し、図4に示すように、試験片の片面に深さ20μm、長さ40mm以上の十字の切創5を作成する。
【0025】
試験用フィルムの表面に作成される切創は、ブレードを用いて作製する。例えば、半導体ウエハダイシング用のダイサーを用いて作成することができる。
【0026】
上記により切創を作成したフィルムを、切創を作成した面が下になるよう所定の治具にて固定する。そして試験用フィルム上面側(即ち切創を作成していない面側)より重さ1.02kgの先端形状が半球状の錘を落下させ、試験用フィルムが破断する錘の落下高さから錘の位置エネルギーを算出し試験用フィルムの破断エネルギーとする。なお破断エネルギー評価試験は25℃環境下において行う。
【0027】
なお上記破断エネルギー評価試験は、JIS K7124−2に規定される破断エネルギー評価方法を参考としたものであり、試験用フィルム表面に切創を作成する点を除いては、当該規格に準拠したものである。
【0028】
本発明に係る半導体素子の製造方法に用いられるダイシングフィルム10の基材フィルム2は、上記降伏点応力および破断エネルギーを充たすものであれば公知の樹脂材料を使用することができるが、これらの特性を両立させやすいという観点からはオレフィン樹脂を主成分とするものであることが好ましい。中でも製膜製や材料コストの観点からポリプロピレン、ポリエチレン及びポリスチレンを主成分とするものが好ましい。なお、主成分とする樹脂材料は、2種以上の樹脂からなるものでもかまわない。
【0029】
また、基材フィルム2の破断エネルギーを高めるためにさらにオレフィン系エラストマーを含めることが好ましい。
【0030】
オレフィン系エラストマーとしてはエチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、ブテン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・ブテン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・ブテン−αオレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン−α・オレフィン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体およびスチレン・エチレン・ブチレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1または2以上の樹脂を含むものとすることができる。これらの中でもエキスパンド性を向上させるという観点からは特にスチレン・イソプレン共重合体を用いることが好ましい。
【0031】
また基材フィルム2はオレフィン系樹脂100重量部に対して、オレフィン系エラストマーが10〜65重量部となるものが好ましく、20〜40重量部となるものがより好ましい。
前記範囲下限値以上とすることによりエキスパンド性に優れ、前記範囲上限値以下とすることによりピックアップ性に優れる。
【0032】
また基材フィルム2には本発明の効果を損なわない範囲で、目的に合わせて、各種樹脂や添加剤等を添加することができる。例えば、帯電防止性を付与するために、ポリエーテルポリオレフィンブロックポリマーやポリエーテルエステルアミド等の高分子型帯電防止剤やカーボンブラック等が添加可能な材料として挙げられる。なお、帯電防止効果を付与する場合においては、オレフィン系樹脂との相溶性という観点からは、ポリエーテルポリオレフィン共重合体を用いたイオン伝導型帯電防止剤が好ましい。
【0033】
基材フィルム2の厚みは、ウエハカット用では50μm以上150μm以下であることが好ましく、更に好ましくは、70μm以上100μm以下である。また、パッケージ等の特殊部材カット用では、100μm以上300μm以下であることが好ましく、更に好ましくは、150μm以上200μm以下である。前記範囲下限値以上とすることによりエキスパンド時の基材フィルム2が破損しにくいものとなり、前記範囲上限値以下とすることによりダイシング時の基材ヒゲの発生を抑制することができる。
【0034】
(粘着層)
図1に例示するように本発明に係る半導体素子の製造方法に用いられるダイシングフィルム10の基材フィルム2の少なくとも片面には、粘着層1が設けられる。粘着層1に用いられる樹脂組成物としては、アクリル系粘着剤、UV硬化性ウレタンアクリレート樹脂、イソシアネート系架橋剤等があげられる。これらの中でもウエハマント、チップ飛び及びチッピングを抑制するたためには極性基を含有したアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。特に極性基としてアミド基を含有するアクリル系粘着剤を用いることが好ましい。
【0035】
粘着層1の厚みは、ウエハカット用では3μm以上10μm以下であることが好ましい。また、パッケージ等の特殊部材カット用としては10μm以上50μm以下であることが好ましい。前記範囲下限値以上とすることにより被着体の保持力に優れ、前記範囲上限値以下とすることによりダイシング時の加工性に優れる。
【0036】
粘着層1は、基材フィルム1または基材フィルム2を含む樹脂フィルムに対して、粘着層1として用いられる樹脂を適宜溶剤に溶解または分散させて塗工液とし、ロールコーティングやグラビュアコーティングなどの公知のコーティング法により塗布し、乾燥することにより形成される。
【0037】
ダイシングフィルム10はUV照射後、25℃での貯蔵弾性率(E´)が1.0×10Pa以上、1.0×1010Pa以下でるものが好ましい。前記範囲下限値以上とすることによりピックアップ性に優れ、前記範囲上限値以下とすることによりエキスパンド性に優れる。
【0038】
本発明に係る半導体素子の製造方法に用いられるダイシングフィルム10には、本発明の効果を損なわない範囲で目的に応じて帯電防止層等の他の樹脂層を設けることができる。
【実施例】
【0039】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これは単なる例示であり、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0040】
<基材の作製>
下記原料を表1に示す比率でドライブレンドにより混合した後、50mmのフルフライト押出機(L/D=25 圧縮比=2.9 有効長=1245mm)、吐出=30kg/時、樹脂温度=210℃(スクリュー先端)でシーティングし、厚み80μmのシートを得た。
【0041】
<粘着剤の作製>
アクリル系樹脂(アクリルアミド系モノマー/アクリル(メタクリル)酸エステル/水酸基含有(メタ)アクリレートの共重合体、重量平均分子量:50万、ガラス転移温度:−15℃、アミン価:115mgKOH/g、水酸基価:10mgKOH/g)100重量部に対し、多官能ウレタンアクリレート(1290KAE ダイセルサイテック株式会社製)110重量部、トリレンジイソシアネートの多価アルコール付加体(コロネートL、日本ポリウレタン工業株式会社製)13重量部、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン7重量部を酢酸エチルに溶解し、粘着剤を得た。
【0042】
<ダイシングフィルムの作製>
前記粘着剤を剥離処理したポリエステルフィルム(厚さ38μm)に乾燥後の厚さが5μmになるように塗工し粘着層を得た。
上述の粘着層を30℃でラミネートロールを用いて、表1の配合比で得られた平均厚み80μmのシートにラミネートしてダイシングフィルムを得た。
【0043】
<実施例/比較例に使用した原料>
(ポリプロピレン樹脂)
ランダムポリピロピレン F327 (株式会社プライムポリマー製)
ホモポリプロピレン F704NP (株式会社プライムポリマー製)
ホモポリプロピレン VS200A (サンアロマー株式会社製)
ブロックポリプロピレン VB170A (サンアロマー株式会社製)
直鎖状低密度ポリエチレン FV202 (住友化学株式会社製 先行技術文 献、特許文献2の実施例の基材に相当する)
(オレフィン系エラストマー)
スチレン・イソプレン共重合体 7125 (株式会社クラレ製)
スチレン・エチレン・ブチレン共重合体 H1221 (旭化成ケミカルズ株式 会社製)
エチレン−αオレフィン共重合体 A0550S (三井化学株式会社製)
【0044】
(降伏点応力)
前記基材の降伏点応力をJISK7161に基づいて(サンプル幅10mm・引張速度500mm/min)測定を実施した。
【0045】
(破断エネルギー)
基材フィルムに下記ダイシング条件1で十字にダイシングを実施後、カットラインを下にして基材裏面からカットライン十字の交差部に下記落錘試験条件1で落錘試験を実施し、基材が破断する錘の位置エネルギーを測定し、破断エネルギーとした。
【0046】
<ダイシング条件1>
ブレード :NBC−ZH 2050 27HEDD (株式会社ディスコ製)
ブレード回転数 :40000rpm
カット速度 :50mm/sec
ブレードハイト :60μm
【0047】
<落錘試験条件1>
錘 :1.02kg
錘形先端状 :直径20mmの半球状
試験片固定形状 :直径40mmの円形状
【0048】
(弾性率)
得られたダイシングフィルムを下記UV照射条件1にてUV照射を実施した。UV照射後のシートの貯蔵弾性率(E´)を下記弾性率測定条件1で測定した。
【0049】
<UV照射条件1>(ダイシング後1時間後にUV照射を実施)
照度 :65mW/cm2
積算光量 :200mJ/cm2
UVランプ :高圧水銀ランプ H03−L21 80W/cm
(アイグラフィックス株式会社製)
UV照度計 :UV―PFA1(アイグラフィックス株式会社製)
【0050】
<弾性率測定条件1>
サンプルサイズ:4mmx20mm
測定周波数 :1Hz
測定温度 :25℃
測定機器 :DMS6100 (セイコーインスツルメンツ製)
【0051】
<評価項目>
(エキスパンド性)
前記条件で作製したダイシングフィルムを用い、下記ダイシング条件2でダイシングし、下記UV照射条件2にてUV照射後に下記エキスパンド条件にてエキスパンドを実施し、テープが破断しないものを○、テープが破断するものを×とした。
【0052】
<ダイシング条件2>
(ウエハをダイシングフィルムに貼付け常温にて1時間放置後ダイシングを実施)
ウエハ/リングサイズ:12インチ
ウエハ厚み :100μ(裏面仕上げ#2000 ウエハ研削後5分後のウ エハをダイシングフィルムに貼付)
カットサイズ :10x13mm□
ブレード :NBC−ZH 2050 27HEDD (株式会社ディス コ製)
ブレード回転数 :40000rpm
カット速度 :50mm/sec
ブレードハイト :60μm
【0053】
<UV照射条件2>(ダイシング後1時間後にUV照射を実施)
照度 :65mW/cm2
積算光量 :200mJ/cm2
UVランプ :高圧水銀ランプ H03−L21 80W/cm
(アイグラフィックス株式会社製)
UV照度計 :UV―PFA1(アイグラフィックス株式会社製)
【0054】
<エキスパンド条件>
エキスパンド装置 :DB―700
エキスパンド量 :7mm
エキスパンド速度 :100%
【0055】
(ピックアップ性)
前記条件でエキスパンド後に下記ピックアップ条件1でピックアップを実施し、ウエ ハの上下左右中央の5箇所でチップがピックアップ可能な最低ニードルハイトを測定 した。
【0056】
<ピックアップ条件1>
ピックアップ装置 :DB―700
ニードル本数 :9本(9本=3×3 ニードル配置外周8x12mm)
ニードル突上速度 :10mm/sec
コレット吸引圧力 :−60KPa
コレット荷重 :0.5N
コレット待機時間 :100msec
【0057】
(総合判定)
上記特性の確認を実施し、以下のすべに当てはまるものを○、ひとつでも当てはまらないものを×とした。
降伏点応力 :6MPa以上
破断エネルギー :30mJ以上
エキスパンド性 :基材破断なし
ピックアップ性 :ニードルハイト 250μm以下
【0058】
【表1】

【0059】
実施例および比較例の結果から、本発明に係る半導体素子の製造方法は、ダイシング後のフィルムのエキスパンドおよび半導体素子のピックアップにおける作業性が向上しており、生産性の改善につながることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る半導体素子の製造方法を用いることにより半導体素子の生産性を著しく改善することができる。
【符号の説明】
【0061】
1・・・粘着層
2・・・基材フィルム
3・・・半導体ウエハ
4・・・半導体素子
5・・・切創
10・・・ダイシングフィルム
11・・・半導体ウエハ付きダイシングフィルム
20・・・破断エネルギー評価試験用フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも1の面に粘着層を設けたダイシングフィルムの粘着層を、半導体ウエハに貼着する工程と、前記半導体ウエハをダイシングし半導体素子を得る工程とを有する半導体素子の製造方法であって、前記基材フィルムが8MPa以上の降伏点応力(測定方法:JISK7161準拠 測定温度:25℃)を有するとともに以下の破断エネルギー評価試験における破断エネルギーが30mJ以上であることを特徴とする半導体素子の製造方法。
[破断エネルギー評価試験]
フィルムの片面に下記切創作成条件にて十字の切創を作成する。
切創を作成した面を下側にし、十字の切創の交差点に対し下記の落錘試験条件にて、
落錘試験を実施し、基材が破断する錘の位置エネルギーを破断エネルギーとする。
[切創作成条件]
ブレードを用いて深さ20μm、長さ40mm以上の切創を十字に作成する。
[落錘試験条件]
錘 :1.02kg
錘形先端状 :直径20mmの半球状
試験片固定形状 :直径40mmの円形状
【請求項2】
前記基材フィルムがオレフィン樹脂を主成分とするものである請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記オレフィン系樹脂が、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリスチレンからなる群より選択される1または2以上の樹脂である請求項2記載の半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記基材フィルムが更にオレフィン系エラストマーを含む請求項3記載の半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記オレフィン系エラストマーが、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、ブテン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・ブテン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・ブテン−αオレフィン共重合体及び、エチレン・プロピレン・ブテン−α・オレフィン共重合体、からなる群より選ばれる少なくとも1または2以上の樹脂を含む請求項4に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記ダイシングフィルムのUV照射後、25℃における貯蔵弾性率(E´)が1.0×10Pa以上、1.0×1010Pa以下である請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体素子の製造方法。
【請求項7】
基板上に半導体素子を載置する工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体素子が、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体素子の製造方法に得られた半導体素子である半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−43929(P2012−43929A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183012(P2010−183012)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】