半導体装置およびその製造方法並びに電子装置
【課題】バンプ接合の界面における剥離を抑制すること。
【解決手段】第1バンプ32が形成された素子10と、第2バンプ34が形成され、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板20と、を具備し、前記第1バンプの終端面33は、前記素子の内側に向かって傾斜して形成され、前記第2バンプの終端面35は、前記第1バンプの終端面に対応するように形成され、前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とが接合されている半導体装置。
【解決手段】第1バンプ32が形成された素子10と、第2バンプ34が形成され、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板20と、を具備し、前記第1バンプの終端面33は、前記素子の内側に向かって傾斜して形成され、前記第2バンプの終端面35は、前記第1バンプの終端面に対応するように形成され、前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とが接合されている半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法並びに電子装置に関し、例えば素子と基板とをバンプを用い接合する半導体装置およびその製造方法並びに電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の素子と回路基板等の基板との接合には、半田バンプが用いられている。高集積化のため、Cu(銅)等の高融点金属バンプを用い、バンプ同士を接合させることにより、素子と基板とを接合する技術が知られている。Cu等は半田に比べ高融点であり、Cuバンプ同士の接合は、固相拡散接続となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−131035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バンプ同士を接合する場合、高温においてバンプ同士を接合し、その後室温に冷却する。素子と基板との線熱膨張係数が異なるため、バンプの接合面にせん断応力が加わり、バンプ接合の界面が剥離することがある。
【0005】
本半導体装置およびその製造方法並びに電子装置は、バンプ接合の界面における剥離を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、第1バンプが形成された素子と、第2バンプが形成され、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板と、を具備し、前記第1バンプの終端面は、前記素子の内側に向かって傾斜して形成され、前記第2バンプの終端面は、前記第1バンプの終端面に対応するように形成され、前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とが接合されていることを特徴とする半導体装置を用いる。
【0007】
例えば、素子に第1バンプを形成する工程と、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板に第2バンプを形成する工程と、前記第1バンプの終端面の傾斜を前記素子の内側に向かって傾斜するように加工する工程と、前記第2バンプの終端面の傾斜を、前記第1バンプの終端面の傾斜に対応するように加工する工程と、前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とを接合する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法を用いる。
【0008】
例えば、上記半導体装置を搭載したことを特徴とする電子装置を用いる。
【発明の効果】
【0009】
本半導体装置およびその製造方法並びに電子装置によれば、バンプ接合の界面における剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)および図1(b)は、比較例1に係る半導体装置の断面図である。
【図2】図2(a)から図2(e)は、比較例2に係る半導体装置の断面図である。
【図3】図3(a)から図3(c)は、実施例1に係る半導体装置を示す図である。
【図4】図4(a)および図4(b)は、実施例1のバンプ30cの断面図である。
【図5】図5(a)および図5(b)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す図(その1)である。
【図6】図6(a)および図6(b)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す図(その2)である。
【図7】図7(a)から図7(d)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す図(その3)である。
【図8】図8(a)および図8(b)は、実施例1に係る半導体装置の別の製造方法を示す図(その1)である。
【図9】図9(a)および図9(b)は、実施例1に係る半導体装置の別の製造方法を示す図(その2)である。
【図10】図10は、実施例1の変形例に係る半導体装置の断面図である。
【図11】図11は、実施例2に係る半導体装置の断面図である。
【図12】図12は、図11の領域Bの拡大図である。
【図13】図13は、実施例3に係る電子装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施例を説明する前に、比較例について説明する。まず、半田バンプを用いた素子と基板との接合について説明する。図1(a)および図1(b)は、比較例1に係る半導体装置104の断面図である。図1(a)のように、シリコン素子等の素子10と回路配線基板等の基板20とがバンプ30を用い接合されている。素子10は、素子基板11と素子基板11の下面に形成された電極パッド16とを含む。素子基板11は、例えば基板20側に電子回路が形成されたシリコン基板である。基板20は、絶縁基板21と絶縁基板21の上面に形成された配線電極26とを含む。絶縁基板21は、例えばガラスエポキシ樹脂を用いた回路基板である。バンプ30は、電極パッド16と配線電極26とを接合する。バンプ30は、例えば、Sn−3.0Ag−0.5Cu等の鉛フリー半田である。
【0012】
図1(a)は、バンプ30を溶融させて、素子10を基板20に搭載する図である。半田であるバンプ30を溶融させるため、素子10および基板20は例えば250℃の温度に曝される。
【0013】
図1(b)は、素子10および基板20を室温(例えば約25℃)に冷却した後の図である。シリコンの線熱膨張係数は、2〜3×10−6K−1に対しガラスエポキシ樹脂等の樹脂の線熱膨張係数は、例えば10−5K−1台である。このように、基板20の主要部である絶縁基板21の線熱膨張係数は素子10の主要部である素子基板11より大きい。これにより、矢印50で示した素子基板11の収縮に比べ、矢印52で示した絶縁基板21の収縮が大きくなる。しかし、半田は、比較的容易に変形しやすい。このため、図1(b)のバンプ30aのように、バンプ30の形状が変形し、素子10と基板20との線熱膨張係数の差に起因した応力を緩和することができる。
【0014】
一方、高集積化が進むと、バンプの間隔が狭くなるため、半田バンプ技術では、隣接するバンプ間のショートが発生する。また、バンプが小さくなるため電流密度増加によるエレクトロマイグレーション現象といった問題が発生する。そこで、Cu等の高融点金属を用いたバンプ同士を接合する技術がある。
【0015】
図2(a)から図2(e)は、比較例2に係る半導体装置106の断面図である。図2(a)のように、素子10は、素子基板11と素子基板11上(図2(a)では下面)に形成された電極パッド16と電極パッド16上(図2(a)では下面)に形成された第1バンプ32を備えている。基板20は、絶縁基板21と絶縁基板21上に形成された配線電極26と配線電極26上に形成された第2バンプ34とを備えている。配線電極26は、第2バンプ34用のパッドとしての機能以外にも、パッド間を電気的に接続する配線等の信号線の機能も備えている。第1バンプ32と第2バンプ34とが接合しバンプ30を形成することにより、素子10が基板20にフリップチップ搭載される。素子10は例えは主にシリコン基板等の素子基板11である。基板20は例えば主に回路基板であり、例えば樹脂から形成されている絶縁基板21である。第1バンプ32および第2バンプ34は、例えばCu等の高融点金属を含む。
【0016】
図2(a)は、例えば150℃〜250℃の温度で素子10と基板20とを加圧し、素子10を基板20に搭載する図である。図2(b)は、バンプ30の拡大図である。高温における加圧により、第1バンプ32と第2バンプ34とが接合する。第1バンプ32と第2バンプ34との接合界面は、素子10および基板20に対し略平行である。
【0017】
図2(c)は、素子10および基板20を室温に冷却した後の図である。図1(b)と同様に、素子10は基板20に比べ収縮が大きい。図2(d)および図2(e)は、周辺のバンプ30bの断面図である。図2(d)のように、接合界面36において、第1バンプ32と第2バンプ34とが拘束されるため、第1バンプ32の接合界面36近くには、素子10の収縮方向と逆方向の応力(矢印54)が加わる。第2バンプ34の接合界面36近くには、基板20の収縮方向の応力(矢印56)が加わる。これにより、接合界面36には、せん断応力が加わる。このせん断応力により、図3(e)のように、接合界面36にクラックまたは剥離58が発生する。以下に、比較例2に係る課題を解決する実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
図3(a)から図3(c)は、実施例1に係る半導体装置100を示す図である。図3(a)は、実施例1に係る半導体装置の断面図、図3(b)は、実施例1に係る半導体装置の平面図である。なお、図3(a)と図3(b)とは模式図であり、バンプ30の数および素子基板11および絶縁基板21の大きさ等は、両図において対応していない。図3(b)において、素子10を破線で図示し、バンプ30を実線で図示している。図3(a)のように、比較例1の図2(a)に比べ、素子10の周辺に行くほど、バンプ30の第1バンプ32と第2バンプ34との接合界面36が斜めになっている。接合界面36は第2バンプ34の膜厚が素子10の内側が外側に対し低くなるように傾斜している。外側のバンプ30は、接合界面36の傾斜が大きい。その他の構成は、実施例2の図2(a)と同じであり説明を省略する。
【0019】
図3(b)のように、素子10は基板20に複数のバンプ30を用い搭載されている。図3(c)は、図3(b)の右上のバンプ30cの斜視図である。図3(b)において、バンプ30cを通過し素子10の中心39に向かう方向を方向38とする。図3(c)のように、第1バンプ32の終端面33は、素子10の内側に向かって傾斜して形成されている。例えば、第1バンプ32の終端面33は、方向38に向かうに従い高くなる。第2バンプ34の終端面35は、基板20の内側に向かって傾斜して形成されている。例えば、第2バンプ34の終端面35は、方向38に向かうに従い低くなる。第1バンプ32の終端面33と第2バンプ34の終端面35とは対応するように形成されている。
【0020】
図4(a)および図4(b)は、実施例1のバンプ30cの断面図である。図4(a)を参照し、第1バンプ32の終端面33と第2バンプ34の終端面35とが接合することにより、第1バンプ32と第2バンプ34とが接合する。終端面33と終端面35とが接合した面が接合界面36である。比較例2の図2(d)と同様に、素子10と基板20との線熱膨張係数の差に起因し、第1バンプ32の接合界面36付近には応力(矢印60)が、第2バンプ34の接合界面付近には応力(矢印62)が発生する。図4(b)は、図4(a)の領域Aを拡大した図である。図4(b)のように、せん断応力が加わる方向に対し接合界面36が斜めであるため、接合界面36付近では、応力(矢印60)と応力(矢印62)とが圧縮応力となる。これにより、比較例2の図2(e)のような、接合界面36におけるクラックまたは剥離が抑制される。接合界面36におけるクラックまたは剥離の抑制のためには、素子10および基板20平面に対する接合界面36の傾斜角度は5°〜45°が好ましい。
【0021】
実施例1によれば、第1バンプ32の終端面33は、素子10の内側に向かって傾斜して形成されている。第2バンプ34の終端面35は、第1バンプ32の終端面33と対応するように形成されている。第1バンプ31と第2バンプ34とは電気的に接続されている。これにより、素子10と基板20との熱膨張係数(例えば線熱膨張係数)が異なる場合であっても、接合界面36におけるクラックまたは剥離が抑制できる。
【0022】
また、基板20上の外縁のバンプ30に熱応力に起因したせん断応力が最も加わる。よって、少なくとも素子上の外縁に配置された第1バンプ32の終端面33が、素子10の内側に向かって傾斜していることが好ましい。
【0023】
一方、素子10の中心付近のバンプ30に加わる熱応力に起因したせん断応力は小さい。よって、素子10の中心39付近の第1バンプ32の終端面33は、素子10および基板20に対し略平行であることが好ましい。このように、素子10の中央では、接合界面36はおおよそ水平であり、素子10の外側に行くにつれ、第1バンプ32の終端面33は急峻となることが好ましい。
【0024】
さらに、実施例1のように、基板20(主に絶縁基板21)の熱膨張係数が素子10(主に素子基板11)より大きい場合、図3(a)のように、第1バンプ32の終端面33を素子10の内側の高さが外側より高くなるように傾斜させる。これにより、接合界面36におけるクラックまたは剥離が抑制できる。
【0025】
素子10と基板20との線熱膨張係数の差に起因した応力は、素子基板11の中心に向かう応力となる。よって、接合界面36は、素子基板11の中心39に向かう方向38に傾斜していることが好ましい。
【0026】
実施例1のように、第1バンプ32と第2バンプ34との接合が固相拡散接続の場合、せん断応力により、接合界面36から剥離し易く、実施例1のように、接合界面36を斜めとすることが好ましい。
【0027】
なお、実施例1においては、第2バンプ34の高さは、素子10の内側ほど低く、接合界面36の傾きが緩くなっている。例えば、素子10の外縁から複数の第2バンプ34の高さおよび接合界面36の傾きの少なくとも一方を同じとすることもできる。
【0028】
第1バンプ32の終端面33と第2バンプ34の終端面35とは対応するように形成されている。例えば、第1バンプ32の終端面33と第2バンプ34の終端面35とは嵌合するように形成されていることが好ましい。例えば、第1バンプ32の終端面33と対応する第2バンプ34の終端面35とが面接触するように形成されていることが好ましい。
【0029】
また、素子10(主に素子基板11)の熱膨張係数が基板20(主に絶縁基板21)より大きい場合においても、以下のようにすることが好ましい。図示しないが、例えば、第2バンプ34の終端面35は、基板20の内側に向かって傾斜して形成されることが好ましい。第1バンプ32の終端面33は、第2バンプ34の終端面35と対応するように形成されることが好ましい。第1バンプ31と第2バンプ34とは電気的に接続されている。これにより、接合界面36におけるクラックまたは剥離が抑制できる。
【0030】
図5(a)から7(d)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す図である。図5(a)および図5(b)は、素子10の断面図である。図5(a)のように、素子基板11上(例えば電子回路が形成された面上)に、例えばCu等の金属膜を用い電極パッド16を形成する。素子基板11上にバンプ形成用のフォトレジスト70を形成する。露光技術を用い、電極パッド16上のフォトレジスト70にバンプ形成用の開口を形成する。Cuの電解めっき法を用い、第1バンプ32として第1バンプ32を10μm〜30μmの高さで形成する。これにより、電極パッド16上に第1バンプ32が形成される。図5(b)のように、工具74に単結晶ダイヤモンド76を固定したダイヤモンド工具を用い、第1バンプ32表面を矢印78のようにフォトレジスト70とともに切削加工する。このとき、第1バンプ32の切削面の切削粗さRa<10nm程度とする。このように第1バンプ32の表面の平坦化することにより、後に強固な固相結合を得ることができる。
【0031】
実施例1では、少なくとも3軸以上の位置制御の可能な機械装置を用い、第1バンプ32の切削加工を行なう。図5(a)のように、素子基板11の中心付近の第1バンプ32が最も高く、上面は平坦である。素子基板11の周辺付近の第1バンプ32が最も低く、上面は最も斜めである。素子基板11、電極パッド16および第1バンプ32から素子10が形成される。
【0032】
図6(a)および図6(b)は、絶縁基板21の断面図である。図6(a)のように、絶縁基板21上に、例えばCu等の金属膜を用い配線電極26を形成する。絶縁基板21の上面に、バンプ形成用の開口を備えるフォトレジスト72を形成する。Cuの電解めっき法を用い、第2バンプ34を10μm〜30μmの高さで形成する。これにより、配線電極26上に第2バンプ34が形成される。図6(b)のように、図5(b)と同様に、ダイヤモンド工具を用い、第2バンプ34表面を矢印79のようにフォトレジスト72とともに切削加工する。このとき、第2バンプ34の切削面は第1バンプ32と同様の平坦度とする。図6(b)のように、絶縁基板21の中心付近の第2バンプ34が最も低く、上面は平坦である。絶縁基板21の周辺付近の第2バンプ34が最も低く、上面は最も斜めである。絶縁基板21、配線電極26および第2バンプ34から基板20が形成される。
【0033】
図7(a)のように、素子10および基板20をチャンバー80内に導入する。なお、図7(a)においては、電極パッド16および配線電極26の図示を省略している。チャンバー80内に、還元性ガスとして蟻酸ガス84を導入する。チャンバー80内の雰囲気82に蟻酸ガスが含まれる。これにより、第1バンプ32および第2バンプ34の表面酸化膜を除去することができる。第1バンプ32および第2バンプ34の表面酸化膜の除去は、他の還元性ガスを用いてもよく、さらに、プラズマ処理法または酸洗浄法を用いてもよい。
【0034】
図7(b)のように、フリップチップボンダを用い、第1バンプ32と第2バンプ34との位置が一致するように、基板20上に素子10を位置合わせする。素子10と基板20とを矢印86のように仮圧着する。図7(c)のように、第1バンプ32と第2バンプ34とを仮圧着することにより、素子10と基板20とを仮接合する。
【0035】
図7(d)のように、仮接合した素子10と基板20とをチャンバー90内に導入する。チャンバー90内を150℃〜250℃に加熱する。素子10と基板20とを、加圧機96を用い1個のバンプあたり100MPa〜300MPaの圧力で加圧(矢印96)する。この状態を0.5時間〜1時間維持する。これにより、第1バンプ32と第2バンプ34とが固相拡散接合する。このとき、十分に固相拡散が進展すると、第1バンプ32の終端面および第2バンプ34の終端面とが接する界面が消失し、強固な接合が達成される。以上により、素子10が基板20に搭載される。図7(a)および図7(d)においては、電極パッド16および配線電極26の図示を省略している。
【0036】
第1バンプ32および第2バンプ34としては半田より高融点のCuまたはAu等の金属を用いることができる。図7(d)のように、融点より低い150℃〜200℃程度において、固相拡散する金属が好ましい。また、半田を用いた場合であっても、融点より低い温度において接合させる場合等は、実施例1のように接合界面36を斜めにすることが好ましい。
【0037】
次に、図5(a)から図6(b)を用い説明した第1バンプ32および第2バンプ34の形成方法とは別の形成方法を説明する。図8(a)から図9(b)は、実施例1に係る半導体装置の別の製造方法を示す図である。図8(a)および図8(b)は、素子10の断面図である。図8(a)のように、予め傾斜のついた構造体98を作製しておく。構造体98の下面には、中心部が平坦で、周辺部が傾斜する凹部111が形成されている。素子基板11上には、電極パッド16および第1バンプ32を形成しておく。構造体98と素子10とを位置合わせする。150℃〜200℃の温度とし、1個のバンプあたり10MPa〜100MPaの圧力で、構造体98を第1バンプ32に押し当てる(矢印110)。図8(b)のように、第1バンプ32が構造体98により変形する。
【0038】
図9(a)および図9(b)は、基板20の断面図である。図9(a)のように、予め傾斜のついた構造体99を作製しておく。構造体99の下面には、中心部が平坦で、周辺部が傾斜する凸部113が形成されている。凸部113は、構造体98の凹部111に対応した形状となっている。絶縁基板21には配線電極26および第2バンプ34を例えばめっき法を用い形成しておく。構造体99と基板20とを位置合わせする。150℃〜200℃の温度とし、1個のバンプあたり10MPa〜100MPaの圧力で、構造体99を第2バンプ34に押し当てる(矢印112)。図9(b)のように、第2バンプ34が構造体99により変形する。このように、第1バンプ32および第2バンプ34に傾斜を形成することができる。
【0039】
図10は、実施例1の変形例に係る半導体装置101の断面図である。図10のように、実施例1の図3(a)に比べ、第1バンプ32と第2バンプ34との間に、Sn(錫)等を含む金属層が形成されている。その他の構成は、実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例1においては、第1バンプ32または第2バンプ34を形成する際に、第1バンプ32および第2バンプ34の少なくとも一方上に、例えばSn等の低融点金属層を、無電界めっき法または電界めっき法を用い形成する。低融点金属層の膜厚は例えば2μm〜5μmである。低融点金属層の融点は、第1バンプ32および第2バンプ34を形成する金属より低い。図7(d)における第1バンプ32と第2バンプ34との接合時に、例えば200℃〜250℃程度の温度で1分〜10分加熱する。これにより、Snが溶融し、SnとCuとの反応が進み、金属層37が形成される。このように、第1バンプ32と第2バンプ34とを固相−液相接合した場合においても、図2(d)のようなせん断応力が大きければ、図2(e)のようなクラックまたは剥離が発生する。よって、素子10の周辺のバンプ30の接合界面36を斜めとすることが好ましい。
【実施例2】
【0040】
実施例2は、素子が半導体素子であり、基板が積層基板の例である。図11は、実施例2に係る半導体装置102の断面図である。図12は、図11の領域Bの拡大図である。図11および図12のように、素子基板11上(図11においては下)には、多層配線層12が形成されている。多層配線層12は、絶縁膜13と、絶縁膜13内に形成された配線15と、絶縁膜13を上下に貫通する貫通電極18により形成されている。絶縁膜13は例えば酸化シリコンにより形成されている。配線15および貫通電極18は例えばCu等の金属により形成されている。多層配線層12下には電極パッド16が形成されている。電極パッド16下には第1バンプ32が形成されている、電極パッド16を覆うように保護膜19が形成されている。保護膜19は、例えばポリイミド膜等の絶縁膜である。
【0041】
絶縁基板21として、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁性基板22が積層されている。絶縁性基板22間には、配線25が形成されている。また、絶縁性基板22を上下に貫通する貫通電極28が形成されている。絶縁基板21の上面には、配線電極26が形成されている。配線電極26上には第2バンプ34が形成されている。配線電極26間には、ソルダーレジスト29が形成されている。ソルダーレジスト29は、例えばエポキシ樹脂等の絶縁膜である。ソルダーレジスト29は配線電極26間のショートを抑制する。絶縁基板21の下面には、パッド24が形成されている。パッド24下には半田ボール41が形成されている。配線25、貫通電極28、配線電極26および24は、例えばCu等の金属膜により形成されている。
【0042】
第1バンプ32と第2バンプ34とが接合しバンプ30が形成されている。第1バンプ32と第2バンプ34との接合界面36は、実施例1と同様に、素子10の周辺部で斜めになっている。素子10と基板20との間に、アンダーフィル材40が設けられている。アンダーフィル材40は、素子10と基板20との間に異物等が混入することを抑制する。素子10は封止樹脂42により封止される。封止樹脂42は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂である。以上のように、半導体素子を回路基板にフリップチップ搭載した半導体装置102において、実施例1と同様の第1バンプ32および第2バンプ34の接合を用いることができる。
【実施例3】
【0043】
実施例3は、実施例2に係る半導体装置が搭載された電子装置の例である。図13は、実施例3に係る電子装置の断面図である。電子装置103のマザーボード88に、実施例2に係る半導体装置102が搭載されている。半導体装置102は、実施例2の図11の半導体装置であり説明を省略する。実施例3のように、実施例1または実施例2に係る半導体装置を電子装置に搭載することができる。
【0044】
実施例1〜3を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
付記1:
第1バンプが形成された素子と、第2バンプが形成され、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板と、を具備し、前記第1バンプの終端面は、前記素子の内側に向かって傾斜して形成され、前記第2バンプの終端面は、前記第1バンプの終端面に対応するように形成され、前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とが接合されていることを特徴とする半導体装置。
付記2:
少なくとも前記基板上の外縁に形成された第1バンプの終端面が、前記素子の内側に向かって傾斜していることを特徴とする付記1記載の半導体装置。
付記3:
前記基板の熱膨張係数は前記素子より大きく、前記第1バンプの終端面は、前記素子の内側の高さが外側より高くなるように傾斜していることを特徴とする付記1または2記載の半導体装置。
付記4:
前記素子の外側に行くにつれ、前記第1バンプの終端面の傾斜が急峻となることを特徴とする付記1から3のいずれか一項記載の半導体装置。
付記5:
前記第1バンプと前記第2バンプとは同じ材料から形成されていることを特徴とする付記1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
付記6:
前記第1バンプおよび前記第2バンプは、CuまたはAuを含むことを特徴とする付記1から5のいずれか一項記載の半導体装置。
付記7:
電極パッドと前記電極パッド上に形成された第1バンプとを備えた素子と、配線電極と前記配線電極上に形成された第2バンプとを備え、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板と、を具備し、前記第2バンプの終端面は、前記基板の内側に向かって傾斜して形成され、前記第1バンプの終端面は、前記第2バンプの終端面に嵌合するように形成され、前記第1バンプと前記第2バンプとは接合されていることを特徴とする半導体装置。
付記8:
素子に第1バンプを形成する工程と、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板に第2バンプを形成する工程と、前記第1バンプの終端面の傾斜を前記素子の内側に向かって傾斜するように加工する工程と、前記第2バンプの終端面の傾斜を、前記第1バンプの終端面の傾斜に対応するように加工する工程と、前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とを接合する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
付記9:
素子に電極パッドと、前記電極パッド上に第1バンプと、を形成する工程と、前記素子と熱膨張係数の異なる基板に配線電極と、前記配線電極上に第2バンプと、を形成する工程と、前記第2バンプの終端面の傾斜を前記基板の内側に向かって傾斜するように加工する工程と、前記第1バンプの終端面の傾斜を、前記第2バンプの終端面の傾斜に嵌合するように加工する工程と、前記第1バンプと前記第2バンプとを接合する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
付記10:
付記1から7のいずれか一項記載の半導体装置を搭載したことを特徴とする電子装置。
【符号の説明】
【0045】
10 素子
11 素子基板
16 電極パッド
20 基板
21 絶縁基板
26 配線パッド
30 バンプ
32 第1バンプ
33、35 終端面
34 第2バンプ
36 接合界面
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法並びに電子装置に関し、例えば素子と基板とをバンプを用い接合する半導体装置およびその製造方法並びに電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の素子と回路基板等の基板との接合には、半田バンプが用いられている。高集積化のため、Cu(銅)等の高融点金属バンプを用い、バンプ同士を接合させることにより、素子と基板とを接合する技術が知られている。Cu等は半田に比べ高融点であり、Cuバンプ同士の接合は、固相拡散接続となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−131035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バンプ同士を接合する場合、高温においてバンプ同士を接合し、その後室温に冷却する。素子と基板との線熱膨張係数が異なるため、バンプの接合面にせん断応力が加わり、バンプ接合の界面が剥離することがある。
【0005】
本半導体装置およびその製造方法並びに電子装置は、バンプ接合の界面における剥離を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、第1バンプが形成された素子と、第2バンプが形成され、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板と、を具備し、前記第1バンプの終端面は、前記素子の内側に向かって傾斜して形成され、前記第2バンプの終端面は、前記第1バンプの終端面に対応するように形成され、前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とが接合されていることを特徴とする半導体装置を用いる。
【0007】
例えば、素子に第1バンプを形成する工程と、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板に第2バンプを形成する工程と、前記第1バンプの終端面の傾斜を前記素子の内側に向かって傾斜するように加工する工程と、前記第2バンプの終端面の傾斜を、前記第1バンプの終端面の傾斜に対応するように加工する工程と、前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とを接合する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法を用いる。
【0008】
例えば、上記半導体装置を搭載したことを特徴とする電子装置を用いる。
【発明の効果】
【0009】
本半導体装置およびその製造方法並びに電子装置によれば、バンプ接合の界面における剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)および図1(b)は、比較例1に係る半導体装置の断面図である。
【図2】図2(a)から図2(e)は、比較例2に係る半導体装置の断面図である。
【図3】図3(a)から図3(c)は、実施例1に係る半導体装置を示す図である。
【図4】図4(a)および図4(b)は、実施例1のバンプ30cの断面図である。
【図5】図5(a)および図5(b)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す図(その1)である。
【図6】図6(a)および図6(b)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す図(その2)である。
【図7】図7(a)から図7(d)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す図(その3)である。
【図8】図8(a)および図8(b)は、実施例1に係る半導体装置の別の製造方法を示す図(その1)である。
【図9】図9(a)および図9(b)は、実施例1に係る半導体装置の別の製造方法を示す図(その2)である。
【図10】図10は、実施例1の変形例に係る半導体装置の断面図である。
【図11】図11は、実施例2に係る半導体装置の断面図である。
【図12】図12は、図11の領域Bの拡大図である。
【図13】図13は、実施例3に係る電子装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施例を説明する前に、比較例について説明する。まず、半田バンプを用いた素子と基板との接合について説明する。図1(a)および図1(b)は、比較例1に係る半導体装置104の断面図である。図1(a)のように、シリコン素子等の素子10と回路配線基板等の基板20とがバンプ30を用い接合されている。素子10は、素子基板11と素子基板11の下面に形成された電極パッド16とを含む。素子基板11は、例えば基板20側に電子回路が形成されたシリコン基板である。基板20は、絶縁基板21と絶縁基板21の上面に形成された配線電極26とを含む。絶縁基板21は、例えばガラスエポキシ樹脂を用いた回路基板である。バンプ30は、電極パッド16と配線電極26とを接合する。バンプ30は、例えば、Sn−3.0Ag−0.5Cu等の鉛フリー半田である。
【0012】
図1(a)は、バンプ30を溶融させて、素子10を基板20に搭載する図である。半田であるバンプ30を溶融させるため、素子10および基板20は例えば250℃の温度に曝される。
【0013】
図1(b)は、素子10および基板20を室温(例えば約25℃)に冷却した後の図である。シリコンの線熱膨張係数は、2〜3×10−6K−1に対しガラスエポキシ樹脂等の樹脂の線熱膨張係数は、例えば10−5K−1台である。このように、基板20の主要部である絶縁基板21の線熱膨張係数は素子10の主要部である素子基板11より大きい。これにより、矢印50で示した素子基板11の収縮に比べ、矢印52で示した絶縁基板21の収縮が大きくなる。しかし、半田は、比較的容易に変形しやすい。このため、図1(b)のバンプ30aのように、バンプ30の形状が変形し、素子10と基板20との線熱膨張係数の差に起因した応力を緩和することができる。
【0014】
一方、高集積化が進むと、バンプの間隔が狭くなるため、半田バンプ技術では、隣接するバンプ間のショートが発生する。また、バンプが小さくなるため電流密度増加によるエレクトロマイグレーション現象といった問題が発生する。そこで、Cu等の高融点金属を用いたバンプ同士を接合する技術がある。
【0015】
図2(a)から図2(e)は、比較例2に係る半導体装置106の断面図である。図2(a)のように、素子10は、素子基板11と素子基板11上(図2(a)では下面)に形成された電極パッド16と電極パッド16上(図2(a)では下面)に形成された第1バンプ32を備えている。基板20は、絶縁基板21と絶縁基板21上に形成された配線電極26と配線電極26上に形成された第2バンプ34とを備えている。配線電極26は、第2バンプ34用のパッドとしての機能以外にも、パッド間を電気的に接続する配線等の信号線の機能も備えている。第1バンプ32と第2バンプ34とが接合しバンプ30を形成することにより、素子10が基板20にフリップチップ搭載される。素子10は例えは主にシリコン基板等の素子基板11である。基板20は例えば主に回路基板であり、例えば樹脂から形成されている絶縁基板21である。第1バンプ32および第2バンプ34は、例えばCu等の高融点金属を含む。
【0016】
図2(a)は、例えば150℃〜250℃の温度で素子10と基板20とを加圧し、素子10を基板20に搭載する図である。図2(b)は、バンプ30の拡大図である。高温における加圧により、第1バンプ32と第2バンプ34とが接合する。第1バンプ32と第2バンプ34との接合界面は、素子10および基板20に対し略平行である。
【0017】
図2(c)は、素子10および基板20を室温に冷却した後の図である。図1(b)と同様に、素子10は基板20に比べ収縮が大きい。図2(d)および図2(e)は、周辺のバンプ30bの断面図である。図2(d)のように、接合界面36において、第1バンプ32と第2バンプ34とが拘束されるため、第1バンプ32の接合界面36近くには、素子10の収縮方向と逆方向の応力(矢印54)が加わる。第2バンプ34の接合界面36近くには、基板20の収縮方向の応力(矢印56)が加わる。これにより、接合界面36には、せん断応力が加わる。このせん断応力により、図3(e)のように、接合界面36にクラックまたは剥離58が発生する。以下に、比較例2に係る課題を解決する実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
図3(a)から図3(c)は、実施例1に係る半導体装置100を示す図である。図3(a)は、実施例1に係る半導体装置の断面図、図3(b)は、実施例1に係る半導体装置の平面図である。なお、図3(a)と図3(b)とは模式図であり、バンプ30の数および素子基板11および絶縁基板21の大きさ等は、両図において対応していない。図3(b)において、素子10を破線で図示し、バンプ30を実線で図示している。図3(a)のように、比較例1の図2(a)に比べ、素子10の周辺に行くほど、バンプ30の第1バンプ32と第2バンプ34との接合界面36が斜めになっている。接合界面36は第2バンプ34の膜厚が素子10の内側が外側に対し低くなるように傾斜している。外側のバンプ30は、接合界面36の傾斜が大きい。その他の構成は、実施例2の図2(a)と同じであり説明を省略する。
【0019】
図3(b)のように、素子10は基板20に複数のバンプ30を用い搭載されている。図3(c)は、図3(b)の右上のバンプ30cの斜視図である。図3(b)において、バンプ30cを通過し素子10の中心39に向かう方向を方向38とする。図3(c)のように、第1バンプ32の終端面33は、素子10の内側に向かって傾斜して形成されている。例えば、第1バンプ32の終端面33は、方向38に向かうに従い高くなる。第2バンプ34の終端面35は、基板20の内側に向かって傾斜して形成されている。例えば、第2バンプ34の終端面35は、方向38に向かうに従い低くなる。第1バンプ32の終端面33と第2バンプ34の終端面35とは対応するように形成されている。
【0020】
図4(a)および図4(b)は、実施例1のバンプ30cの断面図である。図4(a)を参照し、第1バンプ32の終端面33と第2バンプ34の終端面35とが接合することにより、第1バンプ32と第2バンプ34とが接合する。終端面33と終端面35とが接合した面が接合界面36である。比較例2の図2(d)と同様に、素子10と基板20との線熱膨張係数の差に起因し、第1バンプ32の接合界面36付近には応力(矢印60)が、第2バンプ34の接合界面付近には応力(矢印62)が発生する。図4(b)は、図4(a)の領域Aを拡大した図である。図4(b)のように、せん断応力が加わる方向に対し接合界面36が斜めであるため、接合界面36付近では、応力(矢印60)と応力(矢印62)とが圧縮応力となる。これにより、比較例2の図2(e)のような、接合界面36におけるクラックまたは剥離が抑制される。接合界面36におけるクラックまたは剥離の抑制のためには、素子10および基板20平面に対する接合界面36の傾斜角度は5°〜45°が好ましい。
【0021】
実施例1によれば、第1バンプ32の終端面33は、素子10の内側に向かって傾斜して形成されている。第2バンプ34の終端面35は、第1バンプ32の終端面33と対応するように形成されている。第1バンプ31と第2バンプ34とは電気的に接続されている。これにより、素子10と基板20との熱膨張係数(例えば線熱膨張係数)が異なる場合であっても、接合界面36におけるクラックまたは剥離が抑制できる。
【0022】
また、基板20上の外縁のバンプ30に熱応力に起因したせん断応力が最も加わる。よって、少なくとも素子上の外縁に配置された第1バンプ32の終端面33が、素子10の内側に向かって傾斜していることが好ましい。
【0023】
一方、素子10の中心付近のバンプ30に加わる熱応力に起因したせん断応力は小さい。よって、素子10の中心39付近の第1バンプ32の終端面33は、素子10および基板20に対し略平行であることが好ましい。このように、素子10の中央では、接合界面36はおおよそ水平であり、素子10の外側に行くにつれ、第1バンプ32の終端面33は急峻となることが好ましい。
【0024】
さらに、実施例1のように、基板20(主に絶縁基板21)の熱膨張係数が素子10(主に素子基板11)より大きい場合、図3(a)のように、第1バンプ32の終端面33を素子10の内側の高さが外側より高くなるように傾斜させる。これにより、接合界面36におけるクラックまたは剥離が抑制できる。
【0025】
素子10と基板20との線熱膨張係数の差に起因した応力は、素子基板11の中心に向かう応力となる。よって、接合界面36は、素子基板11の中心39に向かう方向38に傾斜していることが好ましい。
【0026】
実施例1のように、第1バンプ32と第2バンプ34との接合が固相拡散接続の場合、せん断応力により、接合界面36から剥離し易く、実施例1のように、接合界面36を斜めとすることが好ましい。
【0027】
なお、実施例1においては、第2バンプ34の高さは、素子10の内側ほど低く、接合界面36の傾きが緩くなっている。例えば、素子10の外縁から複数の第2バンプ34の高さおよび接合界面36の傾きの少なくとも一方を同じとすることもできる。
【0028】
第1バンプ32の終端面33と第2バンプ34の終端面35とは対応するように形成されている。例えば、第1バンプ32の終端面33と第2バンプ34の終端面35とは嵌合するように形成されていることが好ましい。例えば、第1バンプ32の終端面33と対応する第2バンプ34の終端面35とが面接触するように形成されていることが好ましい。
【0029】
また、素子10(主に素子基板11)の熱膨張係数が基板20(主に絶縁基板21)より大きい場合においても、以下のようにすることが好ましい。図示しないが、例えば、第2バンプ34の終端面35は、基板20の内側に向かって傾斜して形成されることが好ましい。第1バンプ32の終端面33は、第2バンプ34の終端面35と対応するように形成されることが好ましい。第1バンプ31と第2バンプ34とは電気的に接続されている。これにより、接合界面36におけるクラックまたは剥離が抑制できる。
【0030】
図5(a)から7(d)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す図である。図5(a)および図5(b)は、素子10の断面図である。図5(a)のように、素子基板11上(例えば電子回路が形成された面上)に、例えばCu等の金属膜を用い電極パッド16を形成する。素子基板11上にバンプ形成用のフォトレジスト70を形成する。露光技術を用い、電極パッド16上のフォトレジスト70にバンプ形成用の開口を形成する。Cuの電解めっき法を用い、第1バンプ32として第1バンプ32を10μm〜30μmの高さで形成する。これにより、電極パッド16上に第1バンプ32が形成される。図5(b)のように、工具74に単結晶ダイヤモンド76を固定したダイヤモンド工具を用い、第1バンプ32表面を矢印78のようにフォトレジスト70とともに切削加工する。このとき、第1バンプ32の切削面の切削粗さRa<10nm程度とする。このように第1バンプ32の表面の平坦化することにより、後に強固な固相結合を得ることができる。
【0031】
実施例1では、少なくとも3軸以上の位置制御の可能な機械装置を用い、第1バンプ32の切削加工を行なう。図5(a)のように、素子基板11の中心付近の第1バンプ32が最も高く、上面は平坦である。素子基板11の周辺付近の第1バンプ32が最も低く、上面は最も斜めである。素子基板11、電極パッド16および第1バンプ32から素子10が形成される。
【0032】
図6(a)および図6(b)は、絶縁基板21の断面図である。図6(a)のように、絶縁基板21上に、例えばCu等の金属膜を用い配線電極26を形成する。絶縁基板21の上面に、バンプ形成用の開口を備えるフォトレジスト72を形成する。Cuの電解めっき法を用い、第2バンプ34を10μm〜30μmの高さで形成する。これにより、配線電極26上に第2バンプ34が形成される。図6(b)のように、図5(b)と同様に、ダイヤモンド工具を用い、第2バンプ34表面を矢印79のようにフォトレジスト72とともに切削加工する。このとき、第2バンプ34の切削面は第1バンプ32と同様の平坦度とする。図6(b)のように、絶縁基板21の中心付近の第2バンプ34が最も低く、上面は平坦である。絶縁基板21の周辺付近の第2バンプ34が最も低く、上面は最も斜めである。絶縁基板21、配線電極26および第2バンプ34から基板20が形成される。
【0033】
図7(a)のように、素子10および基板20をチャンバー80内に導入する。なお、図7(a)においては、電極パッド16および配線電極26の図示を省略している。チャンバー80内に、還元性ガスとして蟻酸ガス84を導入する。チャンバー80内の雰囲気82に蟻酸ガスが含まれる。これにより、第1バンプ32および第2バンプ34の表面酸化膜を除去することができる。第1バンプ32および第2バンプ34の表面酸化膜の除去は、他の還元性ガスを用いてもよく、さらに、プラズマ処理法または酸洗浄法を用いてもよい。
【0034】
図7(b)のように、フリップチップボンダを用い、第1バンプ32と第2バンプ34との位置が一致するように、基板20上に素子10を位置合わせする。素子10と基板20とを矢印86のように仮圧着する。図7(c)のように、第1バンプ32と第2バンプ34とを仮圧着することにより、素子10と基板20とを仮接合する。
【0035】
図7(d)のように、仮接合した素子10と基板20とをチャンバー90内に導入する。チャンバー90内を150℃〜250℃に加熱する。素子10と基板20とを、加圧機96を用い1個のバンプあたり100MPa〜300MPaの圧力で加圧(矢印96)する。この状態を0.5時間〜1時間維持する。これにより、第1バンプ32と第2バンプ34とが固相拡散接合する。このとき、十分に固相拡散が進展すると、第1バンプ32の終端面および第2バンプ34の終端面とが接する界面が消失し、強固な接合が達成される。以上により、素子10が基板20に搭載される。図7(a)および図7(d)においては、電極パッド16および配線電極26の図示を省略している。
【0036】
第1バンプ32および第2バンプ34としては半田より高融点のCuまたはAu等の金属を用いることができる。図7(d)のように、融点より低い150℃〜200℃程度において、固相拡散する金属が好ましい。また、半田を用いた場合であっても、融点より低い温度において接合させる場合等は、実施例1のように接合界面36を斜めにすることが好ましい。
【0037】
次に、図5(a)から図6(b)を用い説明した第1バンプ32および第2バンプ34の形成方法とは別の形成方法を説明する。図8(a)から図9(b)は、実施例1に係る半導体装置の別の製造方法を示す図である。図8(a)および図8(b)は、素子10の断面図である。図8(a)のように、予め傾斜のついた構造体98を作製しておく。構造体98の下面には、中心部が平坦で、周辺部が傾斜する凹部111が形成されている。素子基板11上には、電極パッド16および第1バンプ32を形成しておく。構造体98と素子10とを位置合わせする。150℃〜200℃の温度とし、1個のバンプあたり10MPa〜100MPaの圧力で、構造体98を第1バンプ32に押し当てる(矢印110)。図8(b)のように、第1バンプ32が構造体98により変形する。
【0038】
図9(a)および図9(b)は、基板20の断面図である。図9(a)のように、予め傾斜のついた構造体99を作製しておく。構造体99の下面には、中心部が平坦で、周辺部が傾斜する凸部113が形成されている。凸部113は、構造体98の凹部111に対応した形状となっている。絶縁基板21には配線電極26および第2バンプ34を例えばめっき法を用い形成しておく。構造体99と基板20とを位置合わせする。150℃〜200℃の温度とし、1個のバンプあたり10MPa〜100MPaの圧力で、構造体99を第2バンプ34に押し当てる(矢印112)。図9(b)のように、第2バンプ34が構造体99により変形する。このように、第1バンプ32および第2バンプ34に傾斜を形成することができる。
【0039】
図10は、実施例1の変形例に係る半導体装置101の断面図である。図10のように、実施例1の図3(a)に比べ、第1バンプ32と第2バンプ34との間に、Sn(錫)等を含む金属層が形成されている。その他の構成は、実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例1においては、第1バンプ32または第2バンプ34を形成する際に、第1バンプ32および第2バンプ34の少なくとも一方上に、例えばSn等の低融点金属層を、無電界めっき法または電界めっき法を用い形成する。低融点金属層の膜厚は例えば2μm〜5μmである。低融点金属層の融点は、第1バンプ32および第2バンプ34を形成する金属より低い。図7(d)における第1バンプ32と第2バンプ34との接合時に、例えば200℃〜250℃程度の温度で1分〜10分加熱する。これにより、Snが溶融し、SnとCuとの反応が進み、金属層37が形成される。このように、第1バンプ32と第2バンプ34とを固相−液相接合した場合においても、図2(d)のようなせん断応力が大きければ、図2(e)のようなクラックまたは剥離が発生する。よって、素子10の周辺のバンプ30の接合界面36を斜めとすることが好ましい。
【実施例2】
【0040】
実施例2は、素子が半導体素子であり、基板が積層基板の例である。図11は、実施例2に係る半導体装置102の断面図である。図12は、図11の領域Bの拡大図である。図11および図12のように、素子基板11上(図11においては下)には、多層配線層12が形成されている。多層配線層12は、絶縁膜13と、絶縁膜13内に形成された配線15と、絶縁膜13を上下に貫通する貫通電極18により形成されている。絶縁膜13は例えば酸化シリコンにより形成されている。配線15および貫通電極18は例えばCu等の金属により形成されている。多層配線層12下には電極パッド16が形成されている。電極パッド16下には第1バンプ32が形成されている、電極パッド16を覆うように保護膜19が形成されている。保護膜19は、例えばポリイミド膜等の絶縁膜である。
【0041】
絶縁基板21として、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁性基板22が積層されている。絶縁性基板22間には、配線25が形成されている。また、絶縁性基板22を上下に貫通する貫通電極28が形成されている。絶縁基板21の上面には、配線電極26が形成されている。配線電極26上には第2バンプ34が形成されている。配線電極26間には、ソルダーレジスト29が形成されている。ソルダーレジスト29は、例えばエポキシ樹脂等の絶縁膜である。ソルダーレジスト29は配線電極26間のショートを抑制する。絶縁基板21の下面には、パッド24が形成されている。パッド24下には半田ボール41が形成されている。配線25、貫通電極28、配線電極26および24は、例えばCu等の金属膜により形成されている。
【0042】
第1バンプ32と第2バンプ34とが接合しバンプ30が形成されている。第1バンプ32と第2バンプ34との接合界面36は、実施例1と同様に、素子10の周辺部で斜めになっている。素子10と基板20との間に、アンダーフィル材40が設けられている。アンダーフィル材40は、素子10と基板20との間に異物等が混入することを抑制する。素子10は封止樹脂42により封止される。封止樹脂42は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂である。以上のように、半導体素子を回路基板にフリップチップ搭載した半導体装置102において、実施例1と同様の第1バンプ32および第2バンプ34の接合を用いることができる。
【実施例3】
【0043】
実施例3は、実施例2に係る半導体装置が搭載された電子装置の例である。図13は、実施例3に係る電子装置の断面図である。電子装置103のマザーボード88に、実施例2に係る半導体装置102が搭載されている。半導体装置102は、実施例2の図11の半導体装置であり説明を省略する。実施例3のように、実施例1または実施例2に係る半導体装置を電子装置に搭載することができる。
【0044】
実施例1〜3を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
付記1:
第1バンプが形成された素子と、第2バンプが形成され、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板と、を具備し、前記第1バンプの終端面は、前記素子の内側に向かって傾斜して形成され、前記第2バンプの終端面は、前記第1バンプの終端面に対応するように形成され、前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とが接合されていることを特徴とする半導体装置。
付記2:
少なくとも前記基板上の外縁に形成された第1バンプの終端面が、前記素子の内側に向かって傾斜していることを特徴とする付記1記載の半導体装置。
付記3:
前記基板の熱膨張係数は前記素子より大きく、前記第1バンプの終端面は、前記素子の内側の高さが外側より高くなるように傾斜していることを特徴とする付記1または2記載の半導体装置。
付記4:
前記素子の外側に行くにつれ、前記第1バンプの終端面の傾斜が急峻となることを特徴とする付記1から3のいずれか一項記載の半導体装置。
付記5:
前記第1バンプと前記第2バンプとは同じ材料から形成されていることを特徴とする付記1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
付記6:
前記第1バンプおよび前記第2バンプは、CuまたはAuを含むことを特徴とする付記1から5のいずれか一項記載の半導体装置。
付記7:
電極パッドと前記電極パッド上に形成された第1バンプとを備えた素子と、配線電極と前記配線電極上に形成された第2バンプとを備え、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板と、を具備し、前記第2バンプの終端面は、前記基板の内側に向かって傾斜して形成され、前記第1バンプの終端面は、前記第2バンプの終端面に嵌合するように形成され、前記第1バンプと前記第2バンプとは接合されていることを特徴とする半導体装置。
付記8:
素子に第1バンプを形成する工程と、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板に第2バンプを形成する工程と、前記第1バンプの終端面の傾斜を前記素子の内側に向かって傾斜するように加工する工程と、前記第2バンプの終端面の傾斜を、前記第1バンプの終端面の傾斜に対応するように加工する工程と、前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とを接合する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
付記9:
素子に電極パッドと、前記電極パッド上に第1バンプと、を形成する工程と、前記素子と熱膨張係数の異なる基板に配線電極と、前記配線電極上に第2バンプと、を形成する工程と、前記第2バンプの終端面の傾斜を前記基板の内側に向かって傾斜するように加工する工程と、前記第1バンプの終端面の傾斜を、前記第2バンプの終端面の傾斜に嵌合するように加工する工程と、前記第1バンプと前記第2バンプとを接合する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
付記10:
付記1から7のいずれか一項記載の半導体装置を搭載したことを特徴とする電子装置。
【符号の説明】
【0045】
10 素子
11 素子基板
16 電極パッド
20 基板
21 絶縁基板
26 配線パッド
30 バンプ
32 第1バンプ
33、35 終端面
34 第2バンプ
36 接合界面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1バンプが形成された素子と、
第2バンプが形成され、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板と、
を具備し、
前記第1バンプの終端面は、前記素子の内側に向かって傾斜して形成され、
前記第2バンプの終端面は、前記第1バンプの終端面に対応するように形成され、
前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とが接合されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
少なくとも前記基板上の外縁に形成された第1バンプの終端面が、前記素子の内側に向かって傾斜していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記基板の熱膨張係数は前記素子より大きく、前記第1バンプの終端面は、前記素子の内側の高さが外側より高くなるように傾斜していることを特徴とする請求項記1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
素子に第1バンプを形成する工程と、
前記素子とは熱膨張係数の異なる基板に第2バンプを形成する工程と、
前記第1バンプの終端面の傾斜を前記素子の内側に向かって傾斜するように加工する工程と、
前記第2バンプの終端面の傾斜を、前記第1バンプの終端面の傾斜に対応するように加工する工程と、
前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とを接合する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項記載の半導体装置を搭載したことを特徴とする電子装置。
【請求項1】
第1バンプが形成された素子と、
第2バンプが形成され、前記素子とは熱膨張係数の異なる基板と、
を具備し、
前記第1バンプの終端面は、前記素子の内側に向かって傾斜して形成され、
前記第2バンプの終端面は、前記第1バンプの終端面に対応するように形成され、
前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とが接合されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
少なくとも前記基板上の外縁に形成された第1バンプの終端面が、前記素子の内側に向かって傾斜していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記基板の熱膨張係数は前記素子より大きく、前記第1バンプの終端面は、前記素子の内側の高さが外側より高くなるように傾斜していることを特徴とする請求項記1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
素子に第1バンプを形成する工程と、
前記素子とは熱膨張係数の異なる基板に第2バンプを形成する工程と、
前記第1バンプの終端面の傾斜を前記素子の内側に向かって傾斜するように加工する工程と、
前記第2バンプの終端面の傾斜を、前記第1バンプの終端面の傾斜に対応するように加工する工程と、
前記第1バンプの終端面と前記第2バンプの終端面とを接合する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項記載の半導体装置を搭載したことを特徴とする電子装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−231093(P2012−231093A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100066(P2011−100066)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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