半導体装置およびその製造方法
【課題】 環境に及ぼす影響を考慮した高信頼性の半導体装置を提供する。
【解決手段】 セラミック基板2aの両面に導体層2b,2cを形成した絶縁基板2が放熱ベース6上に半田層5を介して半田接合されると共に、その絶縁基板2上にIGBT等の半導体チップ4が半田層3を介して半田接合されたパワー半導体モジュール1を形成する際、絶縁基板2と半導体チップ4の接合、および絶縁基板2と放熱ベース6の接合に鉛フリー半田を用いる。また、絶縁基板2と放熱ベース6の接合時には、接合前にあらかじめ放熱ベース6に絶縁基板2が半田接合される面と反対の面側に接合後に平坦か平坦に近い状態が得られるような凸状の反りを与えておく。これにより、放熱ベース6を冷却フィン等に取り付けた際、それらの熱抵抗が低く抑えられ、半導体チップ4の熱が効率的に放散されて異常な温度上昇が防止される。
【解決手段】 セラミック基板2aの両面に導体層2b,2cを形成した絶縁基板2が放熱ベース6上に半田層5を介して半田接合されると共に、その絶縁基板2上にIGBT等の半導体チップ4が半田層3を介して半田接合されたパワー半導体モジュール1を形成する際、絶縁基板2と半導体チップ4の接合、および絶縁基板2と放熱ベース6の接合に鉛フリー半田を用いる。また、絶縁基板2と放熱ベース6の接合時には、接合前にあらかじめ放熱ベース6に絶縁基板2が半田接合される面と反対の面側に接合後に平坦か平坦に近い状態が得られるような凸状の反りを与えておく。これにより、放熱ベース6を冷却フィン等に取り付けた際、それらの熱抵抗が低く抑えられ、半導体チップ4の熱が効率的に放散されて異常な温度上昇が防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法に関し、特にパワー半導体が搭載されたパワー半導体モジュール等の半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、大電流・高電圧環境下でも動作可能なパワー半導体モジュールが様々な分野で用いられるようになってきている。このようなパワーモジュールは、主に、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor,IGBT)やフリーホイーリングダイオード(Free Wheeling Diode,FWD)等のパワー半導体を用いて構成される。
【0003】
図11は従来のパワー半導体モジュールの要部断面模式図である。
この図11に示すパワー半導体モジュール100は、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミック基板101aの両面に銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の導体層101b,101cが形成された絶縁基板101上に、半田層102を介して、パワー半導体等の半導体チップ103が接合されている。そして、このように半導体チップ103が接合された絶縁基板101は、その接合面側と反対の面側を、半田層104を介して、半導体チップ103で発生した熱の放散を目的として銅等の金属で形成された放熱ベース105に接合されている。
【0004】
ところが、このような構造のパワー半導体モジュール100を形成する場合には、セラミック基板101aを含む絶縁基板101と金属製の放熱ベース105という2つの熱膨張係数の異なる部材同士を半田層104によって接合するため、半田付け後には、元々平らだった放熱ベース105が反ってしまうことがある。
【0005】
図12は放熱ベースが反った状態の要部断面模式図である。なお、図12では、図11に示した要素と同一の要素については同一の符号を付している。
例えば、絶縁基板101のセラミック基板101aに窒化アルミニウムを用い、放熱ベース105に銅を用いた場合、窒化アルミニウムの熱膨張係数は約4.5ppm/K、銅の熱膨張係数は約16.5ppm/Kであり、比較的大きな差が生じる。そのため、半田付け後の冷却段階では、窒化アルミニウムよりも銅の収縮の方が大きくなり、放熱ベース105が絶縁基板101との接合面側に凸状に反ってしまう場合がある。放熱ベース105にこのような反りが発生してしまうと、その反りの程度によっては、半田付け以後の組立工程等に支障をきたしたり、パワー半導体モジュール100の性能低下を引き起こしたりする場合があった。
【0006】
従来、この放熱ベース105のような放熱部材に半田付け等の接合時に凸状の反りが発生してしまうのを防ぐための提案もいくつかなされている。例えば、セラミック基板に放熱用金属層を接合し、この放熱用金属層を、ロウ材層を介して、接合面積が300mm2以下になるようにして放熱部材に接合するようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。さらに、セラミック基板を放熱部材に接合する前に、あらかじめ放熱部材にセラミック基板を接合する面側と反対の面側に凸状に反りを与えておき、接合後にセラミック基板側へ発生する放熱部材の反りを相殺して抑えるようにした提案もなされている(特許文献2,3参照)。また、半田層の気泡を低減する目的で、例えば、セラミック基板の両面に、放熱部材との接合面側が厚くなるようにして異なる厚みの銅板を固着し、接合時にその銅板の厚みの違いを利用してセラミック基板を放熱部材側に凸状に反らせ、接合層から気泡を除去するようにした提案もある(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2004−140199号公報
【特許文献2】特開2003−46032号公報
【特許文献3】特開平4−96355号公報
【特許文献4】特開平10−270612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のようなパワー半導体モジュールを形成するに当たり、各部材間、特に熱膨張係数差のある部材間の接合に半田を用いた場合には、以下に示すような問題点がある。
【0008】
現在、パワー半導体モジュールに限らず、電子機器・電子部品の部材間の接合に用いられる半田は、その成分に鉛(Pb)を含んでいるものが少なくない。このような鉛を含む半田を利用した電子機器・電子部品は、もしそれが破棄されて屋外に放置され酸性雨等に晒されると、半田中の鉛が溶出して環境汚染を引き起こす恐れがある。そのため、各種電子機器・電子部品には、鉛を含まないスズ(Sn)等を主成分としたいわゆる鉛フリー半田を利用することが望ましいとされている。
【0009】
ところで、そのような鉛フリー半田は、鉛を含有する半田に比べ、その硬度が高いという性質を有している。上記図11および図12に示したようなパワー半導体モジュール100の絶縁基板101と元々平坦な放熱ベース105との間の接合に鉛を含んだ半田を用いた場合には、半田付けの際にたとえ放熱ベース105の絶縁基板101側への凸状の反りが発生しても、半田自体が柔らかいため半田付け直後から半田層104がクリープ変形し、それらの間の応力が緩和される。その結果、放熱ベース105の反りは解消され、放熱ベース105は、元の平坦な状態かあるいは平坦に近い状態に戻るようになる。
【0010】
これに対し、それらの接合に鉛フリー半田を用いた場合には、半田が硬く半田層104のクリープ変形が起こらないため、平坦であった放熱ベース105に発生した凸状の反りは元に戻らず残ってしまうようになる。その反り量は、おおよそ200μm〜500μm程度と大きく、その結果、前述のように、半田付け以後の組立工程に支障をきたしたり、パワー半導体モジュール100の性能低下を引き起こしたりする場合がある。
【0011】
図13はパワー半導体モジュールの組立工程の要部断面模式図である。なお、図13では、図11および図12に示した要素と同一の要素については同一の符号を付している。
パワー半導体モジュール100は、図13に示すように、通常、絶縁基板101と放熱ベース105との半田付け後に、さらに放熱ベース105を冷却フィン200にネジ止め等の方法で固定されるようになっている。
【0012】
絶縁基板101と放熱ベース105との接合に鉛を含んだ半田を用いた場合、その半田付け時に放熱ベース105に発生した凸状の反りは、その後解消される方向に向かう。そのため、放熱ベース105と冷却フィン200との間の接触熱抵抗は比較的小さく抑えられ、半導体チップ103で発生した熱は、効率良く放熱ベース105から放散されていくようになる。
【0013】
これに対し、絶縁基板101との接合に鉛フリー半田を用い放熱ベース105が絶縁基板101側に大きく凸状に反ってしまっている場合には、図13に示したように、冷却フィン200の平坦な面との間に大きな隙間201が発生するようになる。このような隙間201が発生すると、接触熱抵抗が大きくなるため半導体チップ103で発生した熱の放散効率が低下し、半導体チップ103の接合部の温度が異常上昇して熱破壊が起こりかねない。また、放熱ベース105が絶縁基板101側に大きく凸状に反ってしまっている場合には、放熱ベース105を冷却フィン200へネジ止め等する際にセラミック基板101aが割れてしまう等の問題が発生する場合もある。
【0014】
なお、上記のような例えば銅を用いた放熱ベース105に代えて、銅モリブデン(CuMo)複合材料やアルミニウムシリコンカーバイト(AlSiC)等の熱膨張係数の低い材料を用い、絶縁基板101との熱膨張係数差を小さくすることによって反りの発生を低減することも可能である。ただし、これらの材料は、銅に比べて熱膨張係数は小さいものの熱伝導率が低く、熱の放散性という点では不利となる。また、銅に比べると、コスト的にも不利といえる。
【0015】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、環境に及ぼす影響を考慮した、低コストで実現可能な信頼性の高い半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では上記問題を解決するために、セラミック基板の両面に導体層を有する絶縁基板が放熱ベース上に半田接合され、前記絶縁基板上に半導体チップが半田接合された構造を有する半導体装置において、前記半導体チップと前記絶縁基板との間および前記絶縁基板と前記放熱ベースとの間が鉛を含まない半田を用いて接合され、かつ、前記放熱ベースが前記鉛を含まない半田を用いて略平坦な状態で接合されていることを特徴とする半導体装置が提供される。
【0017】
このような半導体装置では、絶縁基板と放熱ベースの接合、および絶縁基板と半導体チップの接合に、鉛を含まない鉛フリー半田が用いられるので、これが屋外に放置されたような場合でも、半田接合部からの鉛の溶出が防止されるようになる。また、このような半導体装置では、放熱ベースが絶縁基板にほぼ平坦な状態で半田接合されるので、放熱ベースを冷却フィン等の他の部材の平坦な面に取り付ける際、その部材との間に大きな隙間ができず、必要な接触面積が確保されるようになる。また、取り付け時のセラミック基板の破損が防止されるようになる。
【0018】
また、本発明では、セラミック基板の両面に導体層を有する絶縁基板が放熱ベース上に半田接合され、前記絶縁基板上に半導体チップが半田接合された構造を有する半導体装置の製造方法において、前記絶縁基板上に前記半導体チップを半田接合する際には、前記絶縁基板上に鉛を含まない半田を用いて前記半導体チップを半田接合し、前記放熱ベース上に前記絶縁基板を半田接合する際には、接合前にあらかじめ前記放熱ベースに前記絶縁基板が半田接合される面と反対の面側に接合後に略平坦な状態が得られるような凸状の反りを与えておき、前記反りが与えられた前記放熱ベース上に前記鉛を含まない半田を用いて前記絶縁基板を半田接合する、ことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0019】
このような半導体装置の製造方法によれば、絶縁基板と放熱ベースの接合、および絶縁基板と半導体チップの接合に、鉛フリー半田が用いられるので、鉛の溶出が防止されるようになる。また、放熱ベースと絶縁基板を半田接合する際には、あらかじめ放熱ベースに所定の反りを与えておいてから鉛フリー半田を用いて絶縁基板を半田接合するので、半田接合後には、放熱ベースが絶縁基板にほぼ平坦な状態で半田接合されるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の半導体装置は、絶縁基板と放熱ベースの接合および絶縁基板と半導体チップの接合に鉛フリー半田を用いるので、鉛が溶出することがなく、環境汚染の防止に寄与することができる。また、本発明の半導体装置は、放熱ベースを、鉛フリー半田を用いた半田接合後に、ほぼ平坦な状態で得ることができるので、冷却フィン等との間に大きな隙間ができず接触熱抵抗を低く抑えることができ、半導体チップで発生した熱の放散を有効に行うことができる。それにより、半導体チップの異常な温度上昇を防止し、安定して動作する高信頼性の半導体装置を実現することができる。さらに、半導体装置を構成する部材の材質は、鉛フリー半田を用いる点を除いて従来のものと変更がないので、低コストで高信頼性の半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、パワー半導体モジュールに適用した場合を例に、図面を参照して詳細に説明する。
図1はパワー半導体モジュールの要部断面模式図である。
【0022】
この図1に示すパワー半導体モジュール1は、セラミック基板2aの両面に導体層2b,2cが設けられた絶縁基板2上に、半田層3を介して、半導体チップ4が接合されている。そして、このように半導体チップ4が接合された絶縁基板2は、その接合面側と反対の面側を、半田層5を介して、放熱ベース6に接合されている。
【0023】
ここで、絶縁基板2に用いられるセラミック基板2aは、例えばアルミナ(Al2O3)を主成分とする適当な厚さの基板である。また、導体層2b,2cは、例えば適当な厚さの銅箔を用いて形成されている。
【0024】
絶縁基板2と半導体チップ4を接合する半田層3、および絶縁基板2と放熱ベース6を接合する半田層5は、例えば成分にスズを含むスズ系半田で構成されている。なお、これらの半田層3,5には、いずれも成分に鉛を含まない鉛フリー半田が用いられている。鉛フリー半田の詳細については後述する。
【0025】
半導体チップ4は、例えばシリコン(Si)を主成分とするIGBTやFWDといったパワー半導体であり、動作時に比較的高温の発熱を伴い得るチップ部品である。
放熱ベース6は、主に熱伝導率とコストを考慮して、例えば銅を用いて構成されている。また、ここでは図示を省略するが、放熱ベース6の下面側(絶縁基板2との接合面と反対の面側)には、冷却フィンが取り付けられるようになっている。
【0026】
このようなパワー半導体モジュール1は、動作時には半導体チップ4が発熱し、その熱が半田層3、絶縁基板2、半田層5、放熱ベース6へと順に伝達され、放散されるようになっている。それにより、半導体チップ4の温度上昇が防止され、その正常な動作と導体層2b等との接続が確保されるようになっている。
【0027】
上記構成を有するパワー半導体モジュール1を形成する場合には、鉛フリー半田を用いた半田付け前に、あらかじめ放熱ベース6に半田層5の形成面側と反対の面側に凸状の反りを与えておく。すなわち、あらかじめ放熱ベース6を凹状に形成しておくようにする。その際、あらかじめ放熱ベース6に与えておく反りの量は、例えば、前述のように半田付け時に放熱ベース6が平坦であった場合に発生する絶縁基板2側への凸状の反りが約200μm〜約500μmの範囲である場合、約100μm〜約600μmの範囲とする。なお、このあらかじめ与えておく反り量は一例であって、放熱ベースの厚さ,面積、絶縁基板の厚さ,面積、絶縁基板に接合される導体層の厚さ,面積に応じて適宜設定される値である。また、後述する実施形態を組み合わせて適用することにより、あらかじめ与える反り量をより小さくすることが可能であり、100μm以下に設定されることもある。
【0028】
このように放熱ベース6に適当な量の反りを与えておくことにより、絶縁基板2を鉛を含まない半田層5を介して接合したときには、熱膨張係数の差から、放熱ベース6は接合後の冷却段階で絶縁基板2側に反ろうとする。その結果、その反りが放熱ベース6にあらかじめ与えられていた反りと相殺され、最終的には平坦か平坦に近い凹状あるいは凸状の放熱ベース6が得られるようになる。このとき、放熱ベース6は、最終的に平坦になることが理想であるが、平坦まではいかなくても平坦に近い凹状になった場合や、平坦な状態を通り越して凸状になった場合であっても、その反り量があらかじめ定めた範囲内であれば、冷却フィンへの取り付け時にも問題はなく、また、性能低下を引き起こすことはない。
【0029】
例えば、あらかじめ放熱ベース6に反りを与えておくことなく、鉛フリー半田を用いて半田付けを行ったときには、前述のように、絶縁基板2側への200μm〜500μm程度の凸状の反りが発生し、放熱ベース6と冷却フィンとの間に大きな隙間ができてしまう場合がある。これに対し、半田付け前にあらかじめ放熱ベース6に凹状の反りを与えておくことで、鉛フリー半田を用いた半田付け後でも平坦か平坦に近い状態の放熱ベース6が得られるようになるので、放熱ベース6と冷却フィンとの間に大きな隙間が発生するのを抑えることができる。その結果、放熱ベース6と冷却フィンとの間の接触熱抵抗を低く抑え、半導体チップ4の異常な温度上昇を防止し、熱破壊を防止して、信頼性の高いパワー半導体モジュール1を得ることが可能になる。
【0030】
ここで、パワー半導体モジュール1に用いる鉛フリー半田について説明する。
パワー半導体モジュール1に用いる鉛フリー半田としては、その成分に、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、銅(Cu)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)等を含むスズ系半田が用いられる。また、鉛フリー半田の中でも融点が低いものを用いるほど、半田付けの際に放熱ベース6に加えられる熱が低くなるので、銅の膨張・収縮が小さく、放熱ベース6に発生する反りを小さく抑えることが可能になる。
【0031】
図2は半田の固相線温度と放熱ベースの反り量の関係を示す図である。図2において、横軸は固相線温度(℃)を表し、縦軸は放熱ベースの反り量(μm)を表している。
ここでは、放熱ベースとして、縦43mm×横90mm×厚さ3mmの銅製で反りを与えていない平坦な放熱ベースAと、縦59.6mm×横119.6mm×厚さ3mmの銅製で反りを与えていない平坦な放熱ベースBの2種類のサンプルを用いた。そして、それぞれのサンプルについて、各種組成の鉛フリー半田を用い、アルミナを主成分とする基板の表裏面に銅箔を接合した同じ構造の絶縁基板を半田付けし、そのときの最終的な反り量を測定した。なお、図2中、放熱ベースAを用いた場合を黒塗りで示し、放熱ベースBを用いた場合を白抜きで示している。
【0032】
反り量は、平坦な状態を0μmとし、半田付け後にそこから放熱ベースA,Bの端が移動した距離で評価した。ここでは放熱ベースA,Bの最上端を基準にし、それらの端の移動方向をマイナス方向としている。また、スズ−インジウム系半田については、その組成比を変更して固相線温度を変化させている。図2中、半田組成を示す元素の前に付した数値は、その元素の含有量(%)を表したものであり、例えば、Sn−20Inと表される半田は、その組成に20%のインジウムを含んでいることを表している。
【0033】
図2には、接合に用いた各鉛フリー半田の固相線温度に対する放熱ベースA,Bの反り量をプロットしている。図2より、放熱ベースA,B共、固相線温度が低くなるほど反り量が少なくなる傾向が認められた。特にスズ−インジウム系半田の場合、インジウム含有量が5%,15%,20%と増加するのに伴い、固相線温度が低下し、放熱ベースA,Bの反り量が少なくなる。また、放熱ベースAの場合の方が放熱ベースBの場合に比べて反り量は少なく、放熱ベースAを用いた場合には、組成がSn−SbやSn−Agで表される鉛フリー半田を用いた場合にも反り量を少なく抑えることができる。このように、融点が250℃を下回るような鉛フリー半田を用いた場合、鉛フリー半田が低融点になるほど半田付け後に放熱ベースA,Bに生じる反り量は少なくなり、特に放熱ベースAでの反り量の低減効果が大きい。
【0034】
換言すれば、上記パワー半導体モジュール1を形成する場合においては、低融点の鉛フリー半田を用いるほど半田付け時に加える熱を低くすることができるので、放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を少なくすることできる。それにより、大きな反りを与えた放熱ベース6を高温で処理して平坦になるように変形させるよりも、最終的に放熱ベース6を平坦か平坦に近い状態に制御しやすくなる。したがって、放熱ベース6が絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを防止することが可能になる。
【0035】
また、図3は鉛フリー半田を用いたときのヒートショック試験の結果を示す図である。図3において、横軸はヒートショックサイクル数(回)を表し、縦軸は放熱ベースと絶縁基板の半田接合部コーナーからのクラック長さ(mm)を表している。
【0036】
ここでは、上記図2で述べた放熱ベースAと絶縁基板とを、同じく図2に示したSn−Ag,Sn−Sb,Sn−Ag−Bi−Inの3種の鉛フリー半田でそれぞれ接合したサンプルに対してヒートショック試験を行った。ヒートショック試験は、マイナス40℃での5分間保持と125℃での5分間保持とを途中常温での1分間保持を挟んで繰り返すことによって行った。なお、ヒートショック試験は、液槽式ヒートショック試験装置を使用し、その際の昇温・降温速度は50℃/minとした。
【0037】
図3より、組成がSn−Agで表される鉛フリー半田を用いた場合に比べ、組成がSn−Sb,Sn−Ag−Bi−Inで表される鉛フリー半田を用いた場合には、放熱ベースAと絶縁基板の間の半田接合部に生じるクラックの長さが短くなる傾向が認められた。特に組成がSn−Ag−Bi−Inで表される鉛フリー半田を用いた場合には、300回のヒートショックサイクル後にもクラックが発生していなかった。このように、インジウムやアンチモンを含有したスズ系の鉛フリー半田を用いることにより、半田接合部のクラック耐性を向上させることが可能になる。
【0038】
例えば、上記パワー半導体モジュール1において、半田層5に生じたクラックが絶縁基板2上に接合される半導体チップ4の直下にまで到達してしまったような場合には、半導体チップ4から放熱ベース6側への伝熱効率が低下してしまい、半導体チップ4の温度上昇が起こって製品寿命が短くなる場合がある。クラック耐性を向上させることにより、製品の長寿命化を図ることが可能になる。なお、このような一定の組成を有する鉛フリー半田を用いたときのクラック耐性向上の効果は、勿論、絶縁基板2と半導体チップ4の間に形成される半田層3についても同様に得られる。
【0039】
以上述べたように、パワー半導体モジュール1の絶縁基板2と放熱ベース6との接合に鉛フリー半田を用いる場合には、放熱ベース6にあらかじめ凹状の反りを与えておく。また、それと共に、形成するパワー半導体モジュール1の要求特性等に応じ、用いる鉛フリー半田の組成を適当に選定する。それにより、放熱ベース6の絶縁基板2側への大きな凸状の反りの発生を抑制して冷却フィンとの間に大きな隙間を作らず、また、半田層5でのクラックの発生を抑制して、両者の熱的・電気的接続を確保することができるようになる。また、パワー半導体モジュール1の半導体チップ4と絶縁基板2との接合にも鉛フリー半田を用いることにより、半田層3でのクラックの発生を抑制し、両者の熱的・電気的接続を確保することができるようになる。したがって、高性能、高信頼性、長寿命のパワー半導体モジュール1を実現することが可能になる。
【0040】
さらに、絶縁基板2と放熱ベース6との接合および半導体チップ4と絶縁基板2との接合に鉛フリー半田を用いるため、たとえこのパワー半導体モジュール1が屋外に放置されたような場合でも、鉛の溶出を防止することができる。
【0041】
以下では、上記のようなパワー半導体モジュール1を形成する上で、その放熱ベース6の反り量に影響を及ぼす種々の要素について検討する。
まず、絶縁基板2と放熱ベース6との間の接合面積が放熱ベース6の反り量に及ぼす影響について説明する。
【0042】
図4は絶縁基板と放熱ベースとの間の接合面積と放熱ベースの反り量の関係を示す図である。図4において、横軸は接合面積(mm2)を表し、縦軸は放熱ベースの反り量(μm)を表している。
【0043】
図4には、あらかじめ凹状の反りを与えていない平坦な銅製の放熱ベースに鉛フリー半田を用いて各絶縁基板a〜fを接合した場合の放熱ベースに生じる各絶縁基板a〜f側への凸状の反りの量を測定した結果を示している。
【0044】
絶縁基板a〜fは、最も接合面積が小さくなる平面正方形形状の絶縁基板aを基準に、縦横方向の長さの比率を一定にして面積を増加させた平面正方形形状の絶縁基板b,c、短手方向の長さを一定にして長手方向の長さを増加させた平面長方形形状の絶縁基板d,e、絶縁基板eに対して長手方向の長さを一定にして短手方向の長さを増加させた平面長方形形状の絶縁基板f、という関係を有している。なお、絶縁基板b,dは、長手方向の長さが同じで短手方向の長さが異なっており、同様に、絶縁基板e,f,cは、長手方向の長さが同じで短手方向の長さが異なっている。また、絶縁基板b,fは、短手方向の長さが同じで長手方向の長さが異なっている。
【0045】
各絶縁基板a〜fと放熱ベースとの接合には同種の鉛フリー半田を用いた。また、放熱ベースは、厚みが3mmで、半田付けする各絶縁基板a〜fの平面サイズに応じた平面サイズのものを使用した。ここでは、放熱ベースが平坦なときにその端から半田付けする各絶縁基板a〜fの端までの距離が10mmになる平面サイズの放熱ベースを用いた。半田付け後の放熱ベースの反り量は、長手方向の端の平坦な状態からの移動量で評価した。ここでは、その移動方向をプラス方向としている。
【0046】
図4より、まず、絶縁基板a,b,cについて、接合面積の放熱ベース反り量への影響を見ると、接合面積の増加に伴って反り量が比例的に増加していく傾向が認められた。絶縁基板a,d,eについて、接合面長手方向の長さの放熱ベース反り量への影響を見ると、長手方向の長さの増加に伴って反り量が比例的に増加していく傾向が認められた。また、絶縁基板e,f,cについて、接合面短手方向の長さの放熱ベース反り量への影響を見ると、短手方向の長さの増加に伴って反り量が増加していく傾向が認められた。このように、絶縁基板a〜fと放熱ベースとの接合に鉛フリー半田を用いた際の放熱ベースの反り量は、絶縁基板a〜fの接合面積に大きく影響されることがわかる。
【0047】
換言すれば、パワー半導体モジュール1を形成する場合においては、この結果を用い、鉛フリー半田を用いて接合する絶縁基板2のサイズに応じて放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を設定することが可能になる。それにより、最終的に放熱ベース6を平坦か平坦に近い状態に制御しやすくなり、放熱ベース6が絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを防止することが可能になる。
【0048】
なお、この図4に示した傾向は、鉛フリー半田の種類を変更した場合にも同様に認められた。
また、同程度の接合面積の絶縁基板2では、それが分割された状態になっているか否かによっても、放熱ベース6の反り量が変化するようになる。
【0049】
図5は絶縁基板の分割が放熱ベースの反り量に及ぼす影響を説明する図である。図5において、横軸は接合面積(mm2)を表し、縦軸は放熱ベースの反り量(μm)を表している。
【0050】
ここでは、上記図4で述べた絶縁基板aを用い、まず、2枚の絶縁基板aを放熱ベースに間隔2mmで横に並べて半田接合したものを形成し、見かけ上絶縁基板dが2等分されて放熱ベースに半田接合された状態を形成した(絶縁基板d´)。同様にして、3枚の絶縁基板aを放熱ベースに間隔2mmで横に並べて半田接合したものを形成し、見かけ上絶縁基板eが3等分されて放熱ベースに半田接合された状態を形成した(絶縁基板e´)。また、4枚の絶縁基板aを放熱ベースに間隔2mmで縦横に並べて半田接合したもの、および2枚の絶縁基板dを放熱ベースに間隔2mmで横に並べて半田接合したものを形成し、見かけ上絶縁基板bが4等分あるいは2等分されて放熱ベースに半田接合された状態を形成した(絶縁基板b´,b´´)。
【0051】
上記図4同様、各絶縁基板d´,e´,b´,b´´と放熱ベースとの接合には同種の鉛フリー半田を用いた。また、放熱ベースは、厚みが3mmで、半田付けする各絶縁基板d´,e´,b´,b´´の平面サイズに応じた平面サイズのものを用いた。ここでは、放熱ベースが平坦なときにその端から各絶縁基板d´,e´,b´,b´´の端までの距離が10mmになる平面サイズの放熱ベースを用いた。半田付け後の放熱ベースの反り量は、長手方向の端の平坦な状態からの移動量で評価した。
【0052】
図5より、絶縁基板d´,e´,b´,b´´のいずれの場合にも、対応するそれぞれの絶縁基板d,e,bに比べ、放熱ベースの反り量が大幅に減少することがわかる。なお、この図5に示した傾向は、鉛フリー半田の種類を変更した場合にも同様に認められた。
【0053】
このように、パワー半導体モジュール1を形成する際には、絶縁基板2と放熱ベース6との間の接合面積が同じ場合でも、絶縁基板2が分割された状態で接合されるか否かに応じて、放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を設定することが可能になる。
【0054】
図6は絶縁基板の設計方法の説明図である。
ここでは、絶縁基板の短手方向の長さの最大値を50mm、長手方向の長さ(複数の絶縁基板を並べて配置する場合には各絶縁基板の長手方向の長さの総和)の最大値を85mmとした場合に、上記図4および図5に示したような測定データを基に、厚さ3mmの放熱ベースに発生する反り量が250μm以下となる絶縁基板サイズを計算によって求めた結果を図示している。なお、絶縁基板のアルミナを主成分とする基板および銅箔の厚さはいずれも0.25mmとした。
【0055】
反り量が250μm以下となるときの絶縁基板の最大サイズは、絶縁基板を1枚使った場合には50mm×50mm、絶縁基板を2枚使った場合には70mm×46mm(絶縁基板1枚のサイズ:35mm×46mm)、絶縁基板を3枚使った場合には85mm×43mm(絶縁基板1枚のサイズ:28mm×43mm)になった。
【0056】
したがって、パワー半導体モジュール1を形成する場合には、この図6に示したようなデータを用いて絶縁基板2のサイズや分割数を規定することにより、放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を適切に設定することが可能になる。さらに、絶縁基板2の最大サイズに応じたサイズのパワー半導体モジュール1を形成することが可能になる。絶縁基板2のサイズを大きくした場合には、半導体チップ4の実装数を増やすことが可能になり、また、導体層2b,2cの設計自由度を増すことも可能になる。
【0057】
次に、絶縁基板2の導体層2b,2cの厚さが放熱ベース6の反り量に及ぼす影響について説明する。
パワー半導体モジュール1を形成する場合には、鉛フリー半田による半田付け前に放熱ベース6に凹状の反りを与えておくため、半田付け時には、平坦な絶縁基板2と放熱ベース6との間にできる空間が多少大きくなる。
【0058】
図7は半田付け時の絶縁基板と放熱ベースの要部断面模式図である。
上記のように導体層2b,2cの厚みを適当に調整する、例えばこの図7に示すように導体層2cを導体層2bよりも厚く形成することにより、鉛フリー半田による半田付け処理時には、絶縁基板2が放熱ベース6側へ反り、放熱ベース6にあらかじめ与えられている凹状の反りとの間の空間が減少するようになる。そして、半田付け後には、絶縁基板2は平坦な形状に戻り、一方、放熱ベース6は平坦か平坦に近い形状に変形するようになる。その結果、絶縁基板2と放熱ベース6との間にできる空間が減るため、半田層5に半田量が不足する部分が生じることがなく、未接合部分の発生を抑えることが可能になる。
【0059】
なお、導体層2b,2cは、用いる銅箔の厚みが厚い方が絶縁基板2と放熱ベース6との熱膨張係数差を小さくするように寄与するため、放熱ベース6の絶縁基板2側への大きな凸状の反りの発生を抑制することが可能になる。
【0060】
図8は銅箔の厚さと放熱ベースの反り量の関係を示す図である。図8において、横軸は絶縁基板表裏面に形成した銅箔の厚さ(mm)を表し、縦軸は放熱ベースの反り量(μm)を表している。
【0061】
ここでは、アルミナを主成分とする基板の厚さが共通で銅箔の厚さが異なる絶縁基板を使用し、放熱ベースには、上記図2で述べた放熱ベースAを用いた。なお、各絶縁基板の表裏面の銅箔は同じ厚さにした。また、絶縁基板と放熱ベースAの接合には、同種の鉛フリー半田を使用した。半田付け後の放熱ベースの反り量は、長手方向の端の平坦な状態からの移動量で評価した。
【0062】
図8より、アルミナを主成分とする基板に形成される銅箔の厚さが0.4mmを超える領域で放熱ベースAの反り量が減少することがわかる。このように、アルミナを主成分とする基板に形成する銅箔を厚くして絶縁基板と放熱ベースAとの熱膨張係数差を小さくすることにより、放熱ベースAの反りを少なくすることができる。なお、この図8に示した傾向は、鉛フリー半田の種類を変更した場合にも同様に認められた。
【0063】
このように、あらかじめ凹状の反りを与えられた放熱ベース6を用いてパワー半導体モジュール1を形成する際には、導体層2bに比べて導体層2cを厚く形成する、あるいは導体層2b,2cを0.4mmを超えるような厚さで形成することにより、絶縁基板2と放熱ベース6との間の未接合部分の発生を抑えると共に、放熱ベース6が凹状から平坦な状態になった後にさらに絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを抑えることが可能になる。また、放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を少なく設定することも可能になる。
【0064】
なお、導体層2bの厚さは、導体層2b上に接合される半導体チップ4に所望の電流を流しうる厚さを勘案し、さらに、導体層2b,2cの厚さは上記のような熱膨張係数差、セラミック基板2aの材質や厚さを考慮して、その厚さを0.4mm以上でできるだけ厚くすることが好ましい。セラミック基板2aへの導体層2b,2cの接合性は、セラミック基板2aの材質や厚さにもよるが、例えばセラミック基板2aに窒化珪素を主成分とする基板を用いた場合には0.8mmより厚い導体層2b,2cを接合することが可能であり、アルミナを主成分とする基板についても同様に0.8mmより厚い導体層2b,2cを接合することが可能である。
【0065】
また、ここでは絶縁基板2の導体層2b,2cの厚さに着目したが、導体層2b,2cの体積に着目し、その比を適当に設定するようにしてもよい。例えば、導体層2bの体積に対する導体層2cの体積の比が1以上になるようにする。このような体積比であれば、導体層2b,2cのパターン形状によっては、導体層2bよりも導体層2cの方が厚い場合のほか、導体層2b,2cの厚さが同じかあるいは導体層2bの方が厚い場合でも、上記のような未接合部分の発生や放熱ベース6の大きな凸状の反りの発生を抑えることが可能になると共に、放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を少なく設定することが可能になる。
【0066】
次に、絶縁基板2のセラミック基板2aの厚さが放熱ベース6の反り量に及ぼす影響について説明する。
上記のように絶縁基板2を構成する導体層2b,2cの厚さを適当に設定するのと同様の考え方から、セラミック基板2aの厚さを薄くすることによって、絶縁基板2と放熱ベース6との熱膨張係数差を小さくするようにしてもよい。
【0067】
図9はセラミック基板の厚さと放熱ベースの反り量の関係を示す図である。図9において、縦軸は放熱ベースの反り量(μm)を表している。
ここでは、放熱ベースとして、上記図2で述べた2種類の放熱ベースA,Bであらかじめ凹状の反りは与えていない平坦なものを用いた。絶縁基板には、厚さ0.25mm,0.32mm,0.635mmの各アルミナを主成分とする基板に、厚さが共通の銅箔を形成した絶縁基板を用いた。これらの放熱ベースA,Bと絶縁基板の接合には、同種の鉛フリー半田を用いた。半田付け後の放熱ベースの反り量は、長手方向の端の平坦な状態からの移動量で評価した。
【0068】
図9より、いずれの放熱ベースA,Bの場合でも、アルミナを主成分とする基板の厚さが薄くなることで、その反り量が減少することがわかる。このように、アルミナを主成分とする基板を薄くして絶縁基板と放熱ベースA,Bとの熱膨張係数差を小さくすることにより、放熱ベースA,Bの反りを少なくすることができる。特にアルミナを主成分とする基板は、セラミックの中でも熱膨張係数が比較的金属の熱膨張係数に近く(約8ppm/K)、放熱ベースA,Bの反りを少なくする点で有効である。なお、この図9に示した傾向は、鉛フリー半田の種類を変更した場合でも同様であった。
【0069】
このように、パワー半導体モジュール1を形成する際には、セラミック基板2aであるアルミナを主成分とする基板の厚さを適当に設定して絶縁基板2を形成することにより、絶縁基板2と放熱ベース6との未接合部分の発生を抑えると共に、放熱ベース6が絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを抑えることが可能になる。絶縁基板2のセラミック基板2aとして窒化珪素を主成分とする基板を用いた場合にも同様のことが言える。
【0070】
なお、絶縁基板2のセラミック基板2aは、未接合部分の発生と放熱ベース6の絶縁基板2側への反りの発生を抑えることに加え、伝熱効率および絶縁基板2自体の強度を一定以上に保つ必要性を考慮し、その厚さを0.635mm以下とするのが好ましく、さらには、セラミック基板2aの熱伝導等を勘案すると、0.2mm〜0.4mmの範囲とすることが好ましい。図9に示したように、セラミック基板2aの厚さが0.635mmの場合には、厚さが0.25mm,0.32mmの場合に比べるとその反り量は大きくなるが、放熱ベース6の形態を適当に選択すれば、絶縁基板2と放熱ベース6との未接合部分の発生を抑え、さらに放熱ベース6が絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを抑えることは可能である。
【0071】
次に、放熱ベース6の厚さがその反り量に及ぼす影響について説明する。
図10は放熱ベースの厚さとその反り量の関係を示す図である。図10において、横軸は半田付け処理の際の温度(℃)を表し、縦軸は放熱ベースの反り量(μm)を表している。
【0072】
ここでは、放熱ベースとして同一平面サイズで厚さが2mm,3mm,4mmのものを用い、これを鉛フリー半田を用いた通常の半田付け条件と同様の条件で熱処理したときの各温度での反り量を測定した。反り量は、放熱ベースの最上端を基準(0μm)にし、その端の移動方向をマイナス方向としたときの移動量で評価した。
【0073】
図10より、放熱ベースが厚くなるほど温度に対する反り量の変化は小さく、温度30℃での反り量、すなわち半田付け後の反り量は、最も薄い2mmの放熱ベースで最大になり、最も厚い4mmの放熱ベースで最小になった。このように、放熱ベースは、厚くなるほど反り量が少なくなることがわかる。特に、放熱ベースの厚さが3mm以上の場合には反りを比較的小さく抑えることができ、あらかじめ与えておく反り量を少なく設定することが可能になる。
【0074】
このように、あらかじめ凹状の反りを与えられた放熱ベース6を用いてパワー半導体モジュール1を形成する際には、放熱ベース6は厚い方があらかじめ与えておく反り量を少なく設定することができ、放熱ベース6が絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを防止することが可能になる。なお、放熱ベース6は、パワー半導体モジュール1の形成上、発生する反りの大きさ、平坦か平坦に近い状態へのしやすさ、パワー半導体モジュール1のサイズ等を考慮し、その厚さを3mm〜4mmの範囲とすることが好ましい。ただし、放熱ベース6の厚さが3mmを下回るような場合であっても、絶縁基板2側の形態を適当に選択すれば、あらかじめ与えておく反り量を少なくして放熱ベース6が絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを防止することは可能である。パワー半導体モジュール1の形成上は、この点も考慮し、放熱ベース6の厚さを2mm〜4mmの範囲とすることができる。
【0075】
以上述べたように、鉛フリー半田を用いてパワー半導体モジュール1を形成する際には、放熱ベース6の反り量に影響を及ぼす種々の要素、すなわち絶縁基板2の形態(放熱ベース6との接合面積、分割状態、導体層2b,2cの厚さ、セラミック基板2aの厚さ)や放熱ベース6の形態(平面サイズ、厚さ)に応じて、放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を設定することができる。そして、この反り量を適切に設定することにより、絶縁基板2と放熱ベース6との間の未接合部の発生や放熱ベース6と冷却フィンとの間の大きな隙間の発生が抑えられた、クラック耐性が高く、さらに鉛溶出のない、高性能、高信頼性、長寿命のパワー半導体モジュール1が実現される。
【0076】
最後に、放熱ベース6の形成方法について説明する。
放熱ベース6は、プレス型を用いて形成することができる。反りを与えて放熱ベース6を形成する場合には、与える反りに応じた形状のプレス型を用意し、それを用いて形成する。例えば、銅製の放熱ベース6を形成する場合、所定形状のプレス型内に銅粉末を充填してこれをプレスすることによって成型体を形成し、さらに、この成型体を不活性ガス雰囲気中等で熱処理する。これにより、プレス型に応じた形状の放熱ベース6が形成される。このような方法によれば、プレス型を変更することにより、機械的な加工を行わずに、様々な反り量および平面サイズの放熱ベース6を形成することができる。
【0077】
以上説明したように、上記構成を有するパワー半導体モジュール1においては、半導体チップ4と絶縁基板2との接合および絶縁基板2と放熱ベース6との接合に鉛フリー半田を用いるようにしたので、環境汚染を防ぐことが可能になる。さらに、それらの接合に鉛フリー半田を用いると共に、放熱ベース6にあらかじめ凹状に反りを与えておいて半田付け後に平坦か平坦に近い状態が得られるようにしたので、放熱ベース6と冷却フィンとの接触熱抵抗を低く抑えることが可能になる。その結果、半導体チップ4の放熱性を確保し、高性能かつ高信頼性のパワー半導体モジュール1が実現可能になる。また、パワー半導体モジュール1の要求特性等に応じ、用いる鉛フリー半田を適当に選択することにより、クラック耐性を向上させ、パワー半導体モジュール1の長寿命化を図れる。
【0078】
なお、以上の説明では、主にパワー半導体モジュール1の絶縁基板2と放熱ベース6を鉛フリー半田で接合する場合を例にして述べたが、本発明は、その他の半導体装置において熱膨張係数差が比較的大きい部材間を鉛フリー半田で接合するような場合に同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】パワー半導体モジュールの要部断面模式図である。
【図2】半田の固相線温度と放熱ベースの反り量の関係を示す図である。
【図3】鉛フリー半田を用いたときのヒートショック試験の結果を示す図である。
【図4】絶縁基板と放熱ベースとの間の接合面積と放熱ベースの反り量の関係を示す図である。
【図5】絶縁基板の分割が放熱ベースの反り量に及ぼす影響を説明する図である。
【図6】絶縁基板の設計方法の説明図である。
【図7】半田付け時の絶縁基板と放熱ベースの要部断面模式図である。
【図8】銅箔の厚さと放熱ベースの反り量の関係を示す図である。
【図9】セラミック基板の厚さと放熱ベースの反り量の関係を示す図である。
【図10】放熱ベースの厚さとその反り量の関係を示す図である。
【図11】従来のパワー半導体モジュールの要部断面模式図である。
【図12】放熱ベースが反った状態の要部断面模式図である。
【図13】パワー半導体モジュールの組立工程の要部断面模式図である。
【符号の説明】
【0080】
1 パワー半導体モジュール
2 絶縁基板
2a セラミック基板
2b,2c 導体層
3,5 半田層
4 半導体チップ
6 放熱ベース
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法に関し、特にパワー半導体が搭載されたパワー半導体モジュール等の半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、大電流・高電圧環境下でも動作可能なパワー半導体モジュールが様々な分野で用いられるようになってきている。このようなパワーモジュールは、主に、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor,IGBT)やフリーホイーリングダイオード(Free Wheeling Diode,FWD)等のパワー半導体を用いて構成される。
【0003】
図11は従来のパワー半導体モジュールの要部断面模式図である。
この図11に示すパワー半導体モジュール100は、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミック基板101aの両面に銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の導体層101b,101cが形成された絶縁基板101上に、半田層102を介して、パワー半導体等の半導体チップ103が接合されている。そして、このように半導体チップ103が接合された絶縁基板101は、その接合面側と反対の面側を、半田層104を介して、半導体チップ103で発生した熱の放散を目的として銅等の金属で形成された放熱ベース105に接合されている。
【0004】
ところが、このような構造のパワー半導体モジュール100を形成する場合には、セラミック基板101aを含む絶縁基板101と金属製の放熱ベース105という2つの熱膨張係数の異なる部材同士を半田層104によって接合するため、半田付け後には、元々平らだった放熱ベース105が反ってしまうことがある。
【0005】
図12は放熱ベースが反った状態の要部断面模式図である。なお、図12では、図11に示した要素と同一の要素については同一の符号を付している。
例えば、絶縁基板101のセラミック基板101aに窒化アルミニウムを用い、放熱ベース105に銅を用いた場合、窒化アルミニウムの熱膨張係数は約4.5ppm/K、銅の熱膨張係数は約16.5ppm/Kであり、比較的大きな差が生じる。そのため、半田付け後の冷却段階では、窒化アルミニウムよりも銅の収縮の方が大きくなり、放熱ベース105が絶縁基板101との接合面側に凸状に反ってしまう場合がある。放熱ベース105にこのような反りが発生してしまうと、その反りの程度によっては、半田付け以後の組立工程等に支障をきたしたり、パワー半導体モジュール100の性能低下を引き起こしたりする場合があった。
【0006】
従来、この放熱ベース105のような放熱部材に半田付け等の接合時に凸状の反りが発生してしまうのを防ぐための提案もいくつかなされている。例えば、セラミック基板に放熱用金属層を接合し、この放熱用金属層を、ロウ材層を介して、接合面積が300mm2以下になるようにして放熱部材に接合するようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。さらに、セラミック基板を放熱部材に接合する前に、あらかじめ放熱部材にセラミック基板を接合する面側と反対の面側に凸状に反りを与えておき、接合後にセラミック基板側へ発生する放熱部材の反りを相殺して抑えるようにした提案もなされている(特許文献2,3参照)。また、半田層の気泡を低減する目的で、例えば、セラミック基板の両面に、放熱部材との接合面側が厚くなるようにして異なる厚みの銅板を固着し、接合時にその銅板の厚みの違いを利用してセラミック基板を放熱部材側に凸状に反らせ、接合層から気泡を除去するようにした提案もある(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2004−140199号公報
【特許文献2】特開2003−46032号公報
【特許文献3】特開平4−96355号公報
【特許文献4】特開平10−270612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のようなパワー半導体モジュールを形成するに当たり、各部材間、特に熱膨張係数差のある部材間の接合に半田を用いた場合には、以下に示すような問題点がある。
【0008】
現在、パワー半導体モジュールに限らず、電子機器・電子部品の部材間の接合に用いられる半田は、その成分に鉛(Pb)を含んでいるものが少なくない。このような鉛を含む半田を利用した電子機器・電子部品は、もしそれが破棄されて屋外に放置され酸性雨等に晒されると、半田中の鉛が溶出して環境汚染を引き起こす恐れがある。そのため、各種電子機器・電子部品には、鉛を含まないスズ(Sn)等を主成分としたいわゆる鉛フリー半田を利用することが望ましいとされている。
【0009】
ところで、そのような鉛フリー半田は、鉛を含有する半田に比べ、その硬度が高いという性質を有している。上記図11および図12に示したようなパワー半導体モジュール100の絶縁基板101と元々平坦な放熱ベース105との間の接合に鉛を含んだ半田を用いた場合には、半田付けの際にたとえ放熱ベース105の絶縁基板101側への凸状の反りが発生しても、半田自体が柔らかいため半田付け直後から半田層104がクリープ変形し、それらの間の応力が緩和される。その結果、放熱ベース105の反りは解消され、放熱ベース105は、元の平坦な状態かあるいは平坦に近い状態に戻るようになる。
【0010】
これに対し、それらの接合に鉛フリー半田を用いた場合には、半田が硬く半田層104のクリープ変形が起こらないため、平坦であった放熱ベース105に発生した凸状の反りは元に戻らず残ってしまうようになる。その反り量は、おおよそ200μm〜500μm程度と大きく、その結果、前述のように、半田付け以後の組立工程に支障をきたしたり、パワー半導体モジュール100の性能低下を引き起こしたりする場合がある。
【0011】
図13はパワー半導体モジュールの組立工程の要部断面模式図である。なお、図13では、図11および図12に示した要素と同一の要素については同一の符号を付している。
パワー半導体モジュール100は、図13に示すように、通常、絶縁基板101と放熱ベース105との半田付け後に、さらに放熱ベース105を冷却フィン200にネジ止め等の方法で固定されるようになっている。
【0012】
絶縁基板101と放熱ベース105との接合に鉛を含んだ半田を用いた場合、その半田付け時に放熱ベース105に発生した凸状の反りは、その後解消される方向に向かう。そのため、放熱ベース105と冷却フィン200との間の接触熱抵抗は比較的小さく抑えられ、半導体チップ103で発生した熱は、効率良く放熱ベース105から放散されていくようになる。
【0013】
これに対し、絶縁基板101との接合に鉛フリー半田を用い放熱ベース105が絶縁基板101側に大きく凸状に反ってしまっている場合には、図13に示したように、冷却フィン200の平坦な面との間に大きな隙間201が発生するようになる。このような隙間201が発生すると、接触熱抵抗が大きくなるため半導体チップ103で発生した熱の放散効率が低下し、半導体チップ103の接合部の温度が異常上昇して熱破壊が起こりかねない。また、放熱ベース105が絶縁基板101側に大きく凸状に反ってしまっている場合には、放熱ベース105を冷却フィン200へネジ止め等する際にセラミック基板101aが割れてしまう等の問題が発生する場合もある。
【0014】
なお、上記のような例えば銅を用いた放熱ベース105に代えて、銅モリブデン(CuMo)複合材料やアルミニウムシリコンカーバイト(AlSiC)等の熱膨張係数の低い材料を用い、絶縁基板101との熱膨張係数差を小さくすることによって反りの発生を低減することも可能である。ただし、これらの材料は、銅に比べて熱膨張係数は小さいものの熱伝導率が低く、熱の放散性という点では不利となる。また、銅に比べると、コスト的にも不利といえる。
【0015】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、環境に及ぼす影響を考慮した、低コストで実現可能な信頼性の高い半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では上記問題を解決するために、セラミック基板の両面に導体層を有する絶縁基板が放熱ベース上に半田接合され、前記絶縁基板上に半導体チップが半田接合された構造を有する半導体装置において、前記半導体チップと前記絶縁基板との間および前記絶縁基板と前記放熱ベースとの間が鉛を含まない半田を用いて接合され、かつ、前記放熱ベースが前記鉛を含まない半田を用いて略平坦な状態で接合されていることを特徴とする半導体装置が提供される。
【0017】
このような半導体装置では、絶縁基板と放熱ベースの接合、および絶縁基板と半導体チップの接合に、鉛を含まない鉛フリー半田が用いられるので、これが屋外に放置されたような場合でも、半田接合部からの鉛の溶出が防止されるようになる。また、このような半導体装置では、放熱ベースが絶縁基板にほぼ平坦な状態で半田接合されるので、放熱ベースを冷却フィン等の他の部材の平坦な面に取り付ける際、その部材との間に大きな隙間ができず、必要な接触面積が確保されるようになる。また、取り付け時のセラミック基板の破損が防止されるようになる。
【0018】
また、本発明では、セラミック基板の両面に導体層を有する絶縁基板が放熱ベース上に半田接合され、前記絶縁基板上に半導体チップが半田接合された構造を有する半導体装置の製造方法において、前記絶縁基板上に前記半導体チップを半田接合する際には、前記絶縁基板上に鉛を含まない半田を用いて前記半導体チップを半田接合し、前記放熱ベース上に前記絶縁基板を半田接合する際には、接合前にあらかじめ前記放熱ベースに前記絶縁基板が半田接合される面と反対の面側に接合後に略平坦な状態が得られるような凸状の反りを与えておき、前記反りが与えられた前記放熱ベース上に前記鉛を含まない半田を用いて前記絶縁基板を半田接合する、ことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0019】
このような半導体装置の製造方法によれば、絶縁基板と放熱ベースの接合、および絶縁基板と半導体チップの接合に、鉛フリー半田が用いられるので、鉛の溶出が防止されるようになる。また、放熱ベースと絶縁基板を半田接合する際には、あらかじめ放熱ベースに所定の反りを与えておいてから鉛フリー半田を用いて絶縁基板を半田接合するので、半田接合後には、放熱ベースが絶縁基板にほぼ平坦な状態で半田接合されるようになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の半導体装置は、絶縁基板と放熱ベースの接合および絶縁基板と半導体チップの接合に鉛フリー半田を用いるので、鉛が溶出することがなく、環境汚染の防止に寄与することができる。また、本発明の半導体装置は、放熱ベースを、鉛フリー半田を用いた半田接合後に、ほぼ平坦な状態で得ることができるので、冷却フィン等との間に大きな隙間ができず接触熱抵抗を低く抑えることができ、半導体チップで発生した熱の放散を有効に行うことができる。それにより、半導体チップの異常な温度上昇を防止し、安定して動作する高信頼性の半導体装置を実現することができる。さらに、半導体装置を構成する部材の材質は、鉛フリー半田を用いる点を除いて従来のものと変更がないので、低コストで高信頼性の半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、パワー半導体モジュールに適用した場合を例に、図面を参照して詳細に説明する。
図1はパワー半導体モジュールの要部断面模式図である。
【0022】
この図1に示すパワー半導体モジュール1は、セラミック基板2aの両面に導体層2b,2cが設けられた絶縁基板2上に、半田層3を介して、半導体チップ4が接合されている。そして、このように半導体チップ4が接合された絶縁基板2は、その接合面側と反対の面側を、半田層5を介して、放熱ベース6に接合されている。
【0023】
ここで、絶縁基板2に用いられるセラミック基板2aは、例えばアルミナ(Al2O3)を主成分とする適当な厚さの基板である。また、導体層2b,2cは、例えば適当な厚さの銅箔を用いて形成されている。
【0024】
絶縁基板2と半導体チップ4を接合する半田層3、および絶縁基板2と放熱ベース6を接合する半田層5は、例えば成分にスズを含むスズ系半田で構成されている。なお、これらの半田層3,5には、いずれも成分に鉛を含まない鉛フリー半田が用いられている。鉛フリー半田の詳細については後述する。
【0025】
半導体チップ4は、例えばシリコン(Si)を主成分とするIGBTやFWDといったパワー半導体であり、動作時に比較的高温の発熱を伴い得るチップ部品である。
放熱ベース6は、主に熱伝導率とコストを考慮して、例えば銅を用いて構成されている。また、ここでは図示を省略するが、放熱ベース6の下面側(絶縁基板2との接合面と反対の面側)には、冷却フィンが取り付けられるようになっている。
【0026】
このようなパワー半導体モジュール1は、動作時には半導体チップ4が発熱し、その熱が半田層3、絶縁基板2、半田層5、放熱ベース6へと順に伝達され、放散されるようになっている。それにより、半導体チップ4の温度上昇が防止され、その正常な動作と導体層2b等との接続が確保されるようになっている。
【0027】
上記構成を有するパワー半導体モジュール1を形成する場合には、鉛フリー半田を用いた半田付け前に、あらかじめ放熱ベース6に半田層5の形成面側と反対の面側に凸状の反りを与えておく。すなわち、あらかじめ放熱ベース6を凹状に形成しておくようにする。その際、あらかじめ放熱ベース6に与えておく反りの量は、例えば、前述のように半田付け時に放熱ベース6が平坦であった場合に発生する絶縁基板2側への凸状の反りが約200μm〜約500μmの範囲である場合、約100μm〜約600μmの範囲とする。なお、このあらかじめ与えておく反り量は一例であって、放熱ベースの厚さ,面積、絶縁基板の厚さ,面積、絶縁基板に接合される導体層の厚さ,面積に応じて適宜設定される値である。また、後述する実施形態を組み合わせて適用することにより、あらかじめ与える反り量をより小さくすることが可能であり、100μm以下に設定されることもある。
【0028】
このように放熱ベース6に適当な量の反りを与えておくことにより、絶縁基板2を鉛を含まない半田層5を介して接合したときには、熱膨張係数の差から、放熱ベース6は接合後の冷却段階で絶縁基板2側に反ろうとする。その結果、その反りが放熱ベース6にあらかじめ与えられていた反りと相殺され、最終的には平坦か平坦に近い凹状あるいは凸状の放熱ベース6が得られるようになる。このとき、放熱ベース6は、最終的に平坦になることが理想であるが、平坦まではいかなくても平坦に近い凹状になった場合や、平坦な状態を通り越して凸状になった場合であっても、その反り量があらかじめ定めた範囲内であれば、冷却フィンへの取り付け時にも問題はなく、また、性能低下を引き起こすことはない。
【0029】
例えば、あらかじめ放熱ベース6に反りを与えておくことなく、鉛フリー半田を用いて半田付けを行ったときには、前述のように、絶縁基板2側への200μm〜500μm程度の凸状の反りが発生し、放熱ベース6と冷却フィンとの間に大きな隙間ができてしまう場合がある。これに対し、半田付け前にあらかじめ放熱ベース6に凹状の反りを与えておくことで、鉛フリー半田を用いた半田付け後でも平坦か平坦に近い状態の放熱ベース6が得られるようになるので、放熱ベース6と冷却フィンとの間に大きな隙間が発生するのを抑えることができる。その結果、放熱ベース6と冷却フィンとの間の接触熱抵抗を低く抑え、半導体チップ4の異常な温度上昇を防止し、熱破壊を防止して、信頼性の高いパワー半導体モジュール1を得ることが可能になる。
【0030】
ここで、パワー半導体モジュール1に用いる鉛フリー半田について説明する。
パワー半導体モジュール1に用いる鉛フリー半田としては、その成分に、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、銅(Cu)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)等を含むスズ系半田が用いられる。また、鉛フリー半田の中でも融点が低いものを用いるほど、半田付けの際に放熱ベース6に加えられる熱が低くなるので、銅の膨張・収縮が小さく、放熱ベース6に発生する反りを小さく抑えることが可能になる。
【0031】
図2は半田の固相線温度と放熱ベースの反り量の関係を示す図である。図2において、横軸は固相線温度(℃)を表し、縦軸は放熱ベースの反り量(μm)を表している。
ここでは、放熱ベースとして、縦43mm×横90mm×厚さ3mmの銅製で反りを与えていない平坦な放熱ベースAと、縦59.6mm×横119.6mm×厚さ3mmの銅製で反りを与えていない平坦な放熱ベースBの2種類のサンプルを用いた。そして、それぞれのサンプルについて、各種組成の鉛フリー半田を用い、アルミナを主成分とする基板の表裏面に銅箔を接合した同じ構造の絶縁基板を半田付けし、そのときの最終的な反り量を測定した。なお、図2中、放熱ベースAを用いた場合を黒塗りで示し、放熱ベースBを用いた場合を白抜きで示している。
【0032】
反り量は、平坦な状態を0μmとし、半田付け後にそこから放熱ベースA,Bの端が移動した距離で評価した。ここでは放熱ベースA,Bの最上端を基準にし、それらの端の移動方向をマイナス方向としている。また、スズ−インジウム系半田については、その組成比を変更して固相線温度を変化させている。図2中、半田組成を示す元素の前に付した数値は、その元素の含有量(%)を表したものであり、例えば、Sn−20Inと表される半田は、その組成に20%のインジウムを含んでいることを表している。
【0033】
図2には、接合に用いた各鉛フリー半田の固相線温度に対する放熱ベースA,Bの反り量をプロットしている。図2より、放熱ベースA,B共、固相線温度が低くなるほど反り量が少なくなる傾向が認められた。特にスズ−インジウム系半田の場合、インジウム含有量が5%,15%,20%と増加するのに伴い、固相線温度が低下し、放熱ベースA,Bの反り量が少なくなる。また、放熱ベースAの場合の方が放熱ベースBの場合に比べて反り量は少なく、放熱ベースAを用いた場合には、組成がSn−SbやSn−Agで表される鉛フリー半田を用いた場合にも反り量を少なく抑えることができる。このように、融点が250℃を下回るような鉛フリー半田を用いた場合、鉛フリー半田が低融点になるほど半田付け後に放熱ベースA,Bに生じる反り量は少なくなり、特に放熱ベースAでの反り量の低減効果が大きい。
【0034】
換言すれば、上記パワー半導体モジュール1を形成する場合においては、低融点の鉛フリー半田を用いるほど半田付け時に加える熱を低くすることができるので、放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を少なくすることできる。それにより、大きな反りを与えた放熱ベース6を高温で処理して平坦になるように変形させるよりも、最終的に放熱ベース6を平坦か平坦に近い状態に制御しやすくなる。したがって、放熱ベース6が絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを防止することが可能になる。
【0035】
また、図3は鉛フリー半田を用いたときのヒートショック試験の結果を示す図である。図3において、横軸はヒートショックサイクル数(回)を表し、縦軸は放熱ベースと絶縁基板の半田接合部コーナーからのクラック長さ(mm)を表している。
【0036】
ここでは、上記図2で述べた放熱ベースAと絶縁基板とを、同じく図2に示したSn−Ag,Sn−Sb,Sn−Ag−Bi−Inの3種の鉛フリー半田でそれぞれ接合したサンプルに対してヒートショック試験を行った。ヒートショック試験は、マイナス40℃での5分間保持と125℃での5分間保持とを途中常温での1分間保持を挟んで繰り返すことによって行った。なお、ヒートショック試験は、液槽式ヒートショック試験装置を使用し、その際の昇温・降温速度は50℃/minとした。
【0037】
図3より、組成がSn−Agで表される鉛フリー半田を用いた場合に比べ、組成がSn−Sb,Sn−Ag−Bi−Inで表される鉛フリー半田を用いた場合には、放熱ベースAと絶縁基板の間の半田接合部に生じるクラックの長さが短くなる傾向が認められた。特に組成がSn−Ag−Bi−Inで表される鉛フリー半田を用いた場合には、300回のヒートショックサイクル後にもクラックが発生していなかった。このように、インジウムやアンチモンを含有したスズ系の鉛フリー半田を用いることにより、半田接合部のクラック耐性を向上させることが可能になる。
【0038】
例えば、上記パワー半導体モジュール1において、半田層5に生じたクラックが絶縁基板2上に接合される半導体チップ4の直下にまで到達してしまったような場合には、半導体チップ4から放熱ベース6側への伝熱効率が低下してしまい、半導体チップ4の温度上昇が起こって製品寿命が短くなる場合がある。クラック耐性を向上させることにより、製品の長寿命化を図ることが可能になる。なお、このような一定の組成を有する鉛フリー半田を用いたときのクラック耐性向上の効果は、勿論、絶縁基板2と半導体チップ4の間に形成される半田層3についても同様に得られる。
【0039】
以上述べたように、パワー半導体モジュール1の絶縁基板2と放熱ベース6との接合に鉛フリー半田を用いる場合には、放熱ベース6にあらかじめ凹状の反りを与えておく。また、それと共に、形成するパワー半導体モジュール1の要求特性等に応じ、用いる鉛フリー半田の組成を適当に選定する。それにより、放熱ベース6の絶縁基板2側への大きな凸状の反りの発生を抑制して冷却フィンとの間に大きな隙間を作らず、また、半田層5でのクラックの発生を抑制して、両者の熱的・電気的接続を確保することができるようになる。また、パワー半導体モジュール1の半導体チップ4と絶縁基板2との接合にも鉛フリー半田を用いることにより、半田層3でのクラックの発生を抑制し、両者の熱的・電気的接続を確保することができるようになる。したがって、高性能、高信頼性、長寿命のパワー半導体モジュール1を実現することが可能になる。
【0040】
さらに、絶縁基板2と放熱ベース6との接合および半導体チップ4と絶縁基板2との接合に鉛フリー半田を用いるため、たとえこのパワー半導体モジュール1が屋外に放置されたような場合でも、鉛の溶出を防止することができる。
【0041】
以下では、上記のようなパワー半導体モジュール1を形成する上で、その放熱ベース6の反り量に影響を及ぼす種々の要素について検討する。
まず、絶縁基板2と放熱ベース6との間の接合面積が放熱ベース6の反り量に及ぼす影響について説明する。
【0042】
図4は絶縁基板と放熱ベースとの間の接合面積と放熱ベースの反り量の関係を示す図である。図4において、横軸は接合面積(mm2)を表し、縦軸は放熱ベースの反り量(μm)を表している。
【0043】
図4には、あらかじめ凹状の反りを与えていない平坦な銅製の放熱ベースに鉛フリー半田を用いて各絶縁基板a〜fを接合した場合の放熱ベースに生じる各絶縁基板a〜f側への凸状の反りの量を測定した結果を示している。
【0044】
絶縁基板a〜fは、最も接合面積が小さくなる平面正方形形状の絶縁基板aを基準に、縦横方向の長さの比率を一定にして面積を増加させた平面正方形形状の絶縁基板b,c、短手方向の長さを一定にして長手方向の長さを増加させた平面長方形形状の絶縁基板d,e、絶縁基板eに対して長手方向の長さを一定にして短手方向の長さを増加させた平面長方形形状の絶縁基板f、という関係を有している。なお、絶縁基板b,dは、長手方向の長さが同じで短手方向の長さが異なっており、同様に、絶縁基板e,f,cは、長手方向の長さが同じで短手方向の長さが異なっている。また、絶縁基板b,fは、短手方向の長さが同じで長手方向の長さが異なっている。
【0045】
各絶縁基板a〜fと放熱ベースとの接合には同種の鉛フリー半田を用いた。また、放熱ベースは、厚みが3mmで、半田付けする各絶縁基板a〜fの平面サイズに応じた平面サイズのものを使用した。ここでは、放熱ベースが平坦なときにその端から半田付けする各絶縁基板a〜fの端までの距離が10mmになる平面サイズの放熱ベースを用いた。半田付け後の放熱ベースの反り量は、長手方向の端の平坦な状態からの移動量で評価した。ここでは、その移動方向をプラス方向としている。
【0046】
図4より、まず、絶縁基板a,b,cについて、接合面積の放熱ベース反り量への影響を見ると、接合面積の増加に伴って反り量が比例的に増加していく傾向が認められた。絶縁基板a,d,eについて、接合面長手方向の長さの放熱ベース反り量への影響を見ると、長手方向の長さの増加に伴って反り量が比例的に増加していく傾向が認められた。また、絶縁基板e,f,cについて、接合面短手方向の長さの放熱ベース反り量への影響を見ると、短手方向の長さの増加に伴って反り量が増加していく傾向が認められた。このように、絶縁基板a〜fと放熱ベースとの接合に鉛フリー半田を用いた際の放熱ベースの反り量は、絶縁基板a〜fの接合面積に大きく影響されることがわかる。
【0047】
換言すれば、パワー半導体モジュール1を形成する場合においては、この結果を用い、鉛フリー半田を用いて接合する絶縁基板2のサイズに応じて放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を設定することが可能になる。それにより、最終的に放熱ベース6を平坦か平坦に近い状態に制御しやすくなり、放熱ベース6が絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを防止することが可能になる。
【0048】
なお、この図4に示した傾向は、鉛フリー半田の種類を変更した場合にも同様に認められた。
また、同程度の接合面積の絶縁基板2では、それが分割された状態になっているか否かによっても、放熱ベース6の反り量が変化するようになる。
【0049】
図5は絶縁基板の分割が放熱ベースの反り量に及ぼす影響を説明する図である。図5において、横軸は接合面積(mm2)を表し、縦軸は放熱ベースの反り量(μm)を表している。
【0050】
ここでは、上記図4で述べた絶縁基板aを用い、まず、2枚の絶縁基板aを放熱ベースに間隔2mmで横に並べて半田接合したものを形成し、見かけ上絶縁基板dが2等分されて放熱ベースに半田接合された状態を形成した(絶縁基板d´)。同様にして、3枚の絶縁基板aを放熱ベースに間隔2mmで横に並べて半田接合したものを形成し、見かけ上絶縁基板eが3等分されて放熱ベースに半田接合された状態を形成した(絶縁基板e´)。また、4枚の絶縁基板aを放熱ベースに間隔2mmで縦横に並べて半田接合したもの、および2枚の絶縁基板dを放熱ベースに間隔2mmで横に並べて半田接合したものを形成し、見かけ上絶縁基板bが4等分あるいは2等分されて放熱ベースに半田接合された状態を形成した(絶縁基板b´,b´´)。
【0051】
上記図4同様、各絶縁基板d´,e´,b´,b´´と放熱ベースとの接合には同種の鉛フリー半田を用いた。また、放熱ベースは、厚みが3mmで、半田付けする各絶縁基板d´,e´,b´,b´´の平面サイズに応じた平面サイズのものを用いた。ここでは、放熱ベースが平坦なときにその端から各絶縁基板d´,e´,b´,b´´の端までの距離が10mmになる平面サイズの放熱ベースを用いた。半田付け後の放熱ベースの反り量は、長手方向の端の平坦な状態からの移動量で評価した。
【0052】
図5より、絶縁基板d´,e´,b´,b´´のいずれの場合にも、対応するそれぞれの絶縁基板d,e,bに比べ、放熱ベースの反り量が大幅に減少することがわかる。なお、この図5に示した傾向は、鉛フリー半田の種類を変更した場合にも同様に認められた。
【0053】
このように、パワー半導体モジュール1を形成する際には、絶縁基板2と放熱ベース6との間の接合面積が同じ場合でも、絶縁基板2が分割された状態で接合されるか否かに応じて、放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を設定することが可能になる。
【0054】
図6は絶縁基板の設計方法の説明図である。
ここでは、絶縁基板の短手方向の長さの最大値を50mm、長手方向の長さ(複数の絶縁基板を並べて配置する場合には各絶縁基板の長手方向の長さの総和)の最大値を85mmとした場合に、上記図4および図5に示したような測定データを基に、厚さ3mmの放熱ベースに発生する反り量が250μm以下となる絶縁基板サイズを計算によって求めた結果を図示している。なお、絶縁基板のアルミナを主成分とする基板および銅箔の厚さはいずれも0.25mmとした。
【0055】
反り量が250μm以下となるときの絶縁基板の最大サイズは、絶縁基板を1枚使った場合には50mm×50mm、絶縁基板を2枚使った場合には70mm×46mm(絶縁基板1枚のサイズ:35mm×46mm)、絶縁基板を3枚使った場合には85mm×43mm(絶縁基板1枚のサイズ:28mm×43mm)になった。
【0056】
したがって、パワー半導体モジュール1を形成する場合には、この図6に示したようなデータを用いて絶縁基板2のサイズや分割数を規定することにより、放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を適切に設定することが可能になる。さらに、絶縁基板2の最大サイズに応じたサイズのパワー半導体モジュール1を形成することが可能になる。絶縁基板2のサイズを大きくした場合には、半導体チップ4の実装数を増やすことが可能になり、また、導体層2b,2cの設計自由度を増すことも可能になる。
【0057】
次に、絶縁基板2の導体層2b,2cの厚さが放熱ベース6の反り量に及ぼす影響について説明する。
パワー半導体モジュール1を形成する場合には、鉛フリー半田による半田付け前に放熱ベース6に凹状の反りを与えておくため、半田付け時には、平坦な絶縁基板2と放熱ベース6との間にできる空間が多少大きくなる。
【0058】
図7は半田付け時の絶縁基板と放熱ベースの要部断面模式図である。
上記のように導体層2b,2cの厚みを適当に調整する、例えばこの図7に示すように導体層2cを導体層2bよりも厚く形成することにより、鉛フリー半田による半田付け処理時には、絶縁基板2が放熱ベース6側へ反り、放熱ベース6にあらかじめ与えられている凹状の反りとの間の空間が減少するようになる。そして、半田付け後には、絶縁基板2は平坦な形状に戻り、一方、放熱ベース6は平坦か平坦に近い形状に変形するようになる。その結果、絶縁基板2と放熱ベース6との間にできる空間が減るため、半田層5に半田量が不足する部分が生じることがなく、未接合部分の発生を抑えることが可能になる。
【0059】
なお、導体層2b,2cは、用いる銅箔の厚みが厚い方が絶縁基板2と放熱ベース6との熱膨張係数差を小さくするように寄与するため、放熱ベース6の絶縁基板2側への大きな凸状の反りの発生を抑制することが可能になる。
【0060】
図8は銅箔の厚さと放熱ベースの反り量の関係を示す図である。図8において、横軸は絶縁基板表裏面に形成した銅箔の厚さ(mm)を表し、縦軸は放熱ベースの反り量(μm)を表している。
【0061】
ここでは、アルミナを主成分とする基板の厚さが共通で銅箔の厚さが異なる絶縁基板を使用し、放熱ベースには、上記図2で述べた放熱ベースAを用いた。なお、各絶縁基板の表裏面の銅箔は同じ厚さにした。また、絶縁基板と放熱ベースAの接合には、同種の鉛フリー半田を使用した。半田付け後の放熱ベースの反り量は、長手方向の端の平坦な状態からの移動量で評価した。
【0062】
図8より、アルミナを主成分とする基板に形成される銅箔の厚さが0.4mmを超える領域で放熱ベースAの反り量が減少することがわかる。このように、アルミナを主成分とする基板に形成する銅箔を厚くして絶縁基板と放熱ベースAとの熱膨張係数差を小さくすることにより、放熱ベースAの反りを少なくすることができる。なお、この図8に示した傾向は、鉛フリー半田の種類を変更した場合にも同様に認められた。
【0063】
このように、あらかじめ凹状の反りを与えられた放熱ベース6を用いてパワー半導体モジュール1を形成する際には、導体層2bに比べて導体層2cを厚く形成する、あるいは導体層2b,2cを0.4mmを超えるような厚さで形成することにより、絶縁基板2と放熱ベース6との間の未接合部分の発生を抑えると共に、放熱ベース6が凹状から平坦な状態になった後にさらに絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを抑えることが可能になる。また、放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を少なく設定することも可能になる。
【0064】
なお、導体層2bの厚さは、導体層2b上に接合される半導体チップ4に所望の電流を流しうる厚さを勘案し、さらに、導体層2b,2cの厚さは上記のような熱膨張係数差、セラミック基板2aの材質や厚さを考慮して、その厚さを0.4mm以上でできるだけ厚くすることが好ましい。セラミック基板2aへの導体層2b,2cの接合性は、セラミック基板2aの材質や厚さにもよるが、例えばセラミック基板2aに窒化珪素を主成分とする基板を用いた場合には0.8mmより厚い導体層2b,2cを接合することが可能であり、アルミナを主成分とする基板についても同様に0.8mmより厚い導体層2b,2cを接合することが可能である。
【0065】
また、ここでは絶縁基板2の導体層2b,2cの厚さに着目したが、導体層2b,2cの体積に着目し、その比を適当に設定するようにしてもよい。例えば、導体層2bの体積に対する導体層2cの体積の比が1以上になるようにする。このような体積比であれば、導体層2b,2cのパターン形状によっては、導体層2bよりも導体層2cの方が厚い場合のほか、導体層2b,2cの厚さが同じかあるいは導体層2bの方が厚い場合でも、上記のような未接合部分の発生や放熱ベース6の大きな凸状の反りの発生を抑えることが可能になると共に、放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を少なく設定することが可能になる。
【0066】
次に、絶縁基板2のセラミック基板2aの厚さが放熱ベース6の反り量に及ぼす影響について説明する。
上記のように絶縁基板2を構成する導体層2b,2cの厚さを適当に設定するのと同様の考え方から、セラミック基板2aの厚さを薄くすることによって、絶縁基板2と放熱ベース6との熱膨張係数差を小さくするようにしてもよい。
【0067】
図9はセラミック基板の厚さと放熱ベースの反り量の関係を示す図である。図9において、縦軸は放熱ベースの反り量(μm)を表している。
ここでは、放熱ベースとして、上記図2で述べた2種類の放熱ベースA,Bであらかじめ凹状の反りは与えていない平坦なものを用いた。絶縁基板には、厚さ0.25mm,0.32mm,0.635mmの各アルミナを主成分とする基板に、厚さが共通の銅箔を形成した絶縁基板を用いた。これらの放熱ベースA,Bと絶縁基板の接合には、同種の鉛フリー半田を用いた。半田付け後の放熱ベースの反り量は、長手方向の端の平坦な状態からの移動量で評価した。
【0068】
図9より、いずれの放熱ベースA,Bの場合でも、アルミナを主成分とする基板の厚さが薄くなることで、その反り量が減少することがわかる。このように、アルミナを主成分とする基板を薄くして絶縁基板と放熱ベースA,Bとの熱膨張係数差を小さくすることにより、放熱ベースA,Bの反りを少なくすることができる。特にアルミナを主成分とする基板は、セラミックの中でも熱膨張係数が比較的金属の熱膨張係数に近く(約8ppm/K)、放熱ベースA,Bの反りを少なくする点で有効である。なお、この図9に示した傾向は、鉛フリー半田の種類を変更した場合でも同様であった。
【0069】
このように、パワー半導体モジュール1を形成する際には、セラミック基板2aであるアルミナを主成分とする基板の厚さを適当に設定して絶縁基板2を形成することにより、絶縁基板2と放熱ベース6との未接合部分の発生を抑えると共に、放熱ベース6が絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを抑えることが可能になる。絶縁基板2のセラミック基板2aとして窒化珪素を主成分とする基板を用いた場合にも同様のことが言える。
【0070】
なお、絶縁基板2のセラミック基板2aは、未接合部分の発生と放熱ベース6の絶縁基板2側への反りの発生を抑えることに加え、伝熱効率および絶縁基板2自体の強度を一定以上に保つ必要性を考慮し、その厚さを0.635mm以下とするのが好ましく、さらには、セラミック基板2aの熱伝導等を勘案すると、0.2mm〜0.4mmの範囲とすることが好ましい。図9に示したように、セラミック基板2aの厚さが0.635mmの場合には、厚さが0.25mm,0.32mmの場合に比べるとその反り量は大きくなるが、放熱ベース6の形態を適当に選択すれば、絶縁基板2と放熱ベース6との未接合部分の発生を抑え、さらに放熱ベース6が絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを抑えることは可能である。
【0071】
次に、放熱ベース6の厚さがその反り量に及ぼす影響について説明する。
図10は放熱ベースの厚さとその反り量の関係を示す図である。図10において、横軸は半田付け処理の際の温度(℃)を表し、縦軸は放熱ベースの反り量(μm)を表している。
【0072】
ここでは、放熱ベースとして同一平面サイズで厚さが2mm,3mm,4mmのものを用い、これを鉛フリー半田を用いた通常の半田付け条件と同様の条件で熱処理したときの各温度での反り量を測定した。反り量は、放熱ベースの最上端を基準(0μm)にし、その端の移動方向をマイナス方向としたときの移動量で評価した。
【0073】
図10より、放熱ベースが厚くなるほど温度に対する反り量の変化は小さく、温度30℃での反り量、すなわち半田付け後の反り量は、最も薄い2mmの放熱ベースで最大になり、最も厚い4mmの放熱ベースで最小になった。このように、放熱ベースは、厚くなるほど反り量が少なくなることがわかる。特に、放熱ベースの厚さが3mm以上の場合には反りを比較的小さく抑えることができ、あらかじめ与えておく反り量を少なく設定することが可能になる。
【0074】
このように、あらかじめ凹状の反りを与えられた放熱ベース6を用いてパワー半導体モジュール1を形成する際には、放熱ベース6は厚い方があらかじめ与えておく反り量を少なく設定することができ、放熱ベース6が絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを防止することが可能になる。なお、放熱ベース6は、パワー半導体モジュール1の形成上、発生する反りの大きさ、平坦か平坦に近い状態へのしやすさ、パワー半導体モジュール1のサイズ等を考慮し、その厚さを3mm〜4mmの範囲とすることが好ましい。ただし、放熱ベース6の厚さが3mmを下回るような場合であっても、絶縁基板2側の形態を適当に選択すれば、あらかじめ与えておく反り量を少なくして放熱ベース6が絶縁基板2側へ大きく凸状に反ってしまうのを防止することは可能である。パワー半導体モジュール1の形成上は、この点も考慮し、放熱ベース6の厚さを2mm〜4mmの範囲とすることができる。
【0075】
以上述べたように、鉛フリー半田を用いてパワー半導体モジュール1を形成する際には、放熱ベース6の反り量に影響を及ぼす種々の要素、すなわち絶縁基板2の形態(放熱ベース6との接合面積、分割状態、導体層2b,2cの厚さ、セラミック基板2aの厚さ)や放熱ベース6の形態(平面サイズ、厚さ)に応じて、放熱ベース6にあらかじめ与えておく反り量を設定することができる。そして、この反り量を適切に設定することにより、絶縁基板2と放熱ベース6との間の未接合部の発生や放熱ベース6と冷却フィンとの間の大きな隙間の発生が抑えられた、クラック耐性が高く、さらに鉛溶出のない、高性能、高信頼性、長寿命のパワー半導体モジュール1が実現される。
【0076】
最後に、放熱ベース6の形成方法について説明する。
放熱ベース6は、プレス型を用いて形成することができる。反りを与えて放熱ベース6を形成する場合には、与える反りに応じた形状のプレス型を用意し、それを用いて形成する。例えば、銅製の放熱ベース6を形成する場合、所定形状のプレス型内に銅粉末を充填してこれをプレスすることによって成型体を形成し、さらに、この成型体を不活性ガス雰囲気中等で熱処理する。これにより、プレス型に応じた形状の放熱ベース6が形成される。このような方法によれば、プレス型を変更することにより、機械的な加工を行わずに、様々な反り量および平面サイズの放熱ベース6を形成することができる。
【0077】
以上説明したように、上記構成を有するパワー半導体モジュール1においては、半導体チップ4と絶縁基板2との接合および絶縁基板2と放熱ベース6との接合に鉛フリー半田を用いるようにしたので、環境汚染を防ぐことが可能になる。さらに、それらの接合に鉛フリー半田を用いると共に、放熱ベース6にあらかじめ凹状に反りを与えておいて半田付け後に平坦か平坦に近い状態が得られるようにしたので、放熱ベース6と冷却フィンとの接触熱抵抗を低く抑えることが可能になる。その結果、半導体チップ4の放熱性を確保し、高性能かつ高信頼性のパワー半導体モジュール1が実現可能になる。また、パワー半導体モジュール1の要求特性等に応じ、用いる鉛フリー半田を適当に選択することにより、クラック耐性を向上させ、パワー半導体モジュール1の長寿命化を図れる。
【0078】
なお、以上の説明では、主にパワー半導体モジュール1の絶縁基板2と放熱ベース6を鉛フリー半田で接合する場合を例にして述べたが、本発明は、その他の半導体装置において熱膨張係数差が比較的大きい部材間を鉛フリー半田で接合するような場合に同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】パワー半導体モジュールの要部断面模式図である。
【図2】半田の固相線温度と放熱ベースの反り量の関係を示す図である。
【図3】鉛フリー半田を用いたときのヒートショック試験の結果を示す図である。
【図4】絶縁基板と放熱ベースとの間の接合面積と放熱ベースの反り量の関係を示す図である。
【図5】絶縁基板の分割が放熱ベースの反り量に及ぼす影響を説明する図である。
【図6】絶縁基板の設計方法の説明図である。
【図7】半田付け時の絶縁基板と放熱ベースの要部断面模式図である。
【図8】銅箔の厚さと放熱ベースの反り量の関係を示す図である。
【図9】セラミック基板の厚さと放熱ベースの反り量の関係を示す図である。
【図10】放熱ベースの厚さとその反り量の関係を示す図である。
【図11】従来のパワー半導体モジュールの要部断面模式図である。
【図12】放熱ベースが反った状態の要部断面模式図である。
【図13】パワー半導体モジュールの組立工程の要部断面模式図である。
【符号の説明】
【0080】
1 パワー半導体モジュール
2 絶縁基板
2a セラミック基板
2b,2c 導体層
3,5 半田層
4 半導体チップ
6 放熱ベース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基板の両面に導体層を有する絶縁基板が放熱ベース上に半田接合され、前記絶縁基板上に半導体チップが半田接合された構造を有する半導体装置において、
前記半導体チップと前記絶縁基板との間および前記絶縁基板と前記放熱ベースとの間が鉛を含まない半田を用いて接合され、かつ、前記放熱ベースが前記鉛を含まない半田を用いて略平坦な状態で接合されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記鉛を含まない半田は、融点が250℃以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記鉛を含まない半田は、銀、ビスマス、インジウム、アンチモン、亜鉛、アルミニウム、銅のうちの少なくとも1種とスズとを含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁基板は、前記半導体チップ接合面側に設けられた前記導体層の厚さと前記放熱ベース接合面側に設けられた前記導体層の厚さとが等しいか、前記半導体チップ接合面側に設けられた前記導体層よりも前記放熱ベース接合面側に設けられた前記導体層の方が厚く形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記絶縁基板は、前記半導体チップ接合面側に設けられた前記導体層の体積に対する前記放熱ベース接合面側に設けられた前記導体層の体積の比が1以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記絶縁基板は、前記導体層に銅箔が用いられ、前記セラミック基板にアルミナを主成分とする基板が用いられていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁基板は、複数に分割された状態で前記放熱ベースおよび前記半導体チップに接合されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記絶縁基板は、前記導体層の厚さが0.4mm以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
前記絶縁基板は、前記セラミック基板の厚さが0.2mm〜0.635mmであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項10】
前記放熱ベースは、銅を用いて構成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項11】
前記放熱ベースは、厚さが2mm〜4mmであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項12】
セラミック基板の両面に導体層を有する絶縁基板が放熱ベース上に半田接合され、前記絶縁基板上に半導体チップが半田接合された構造を有する半導体装置の製造方法において、
前記絶縁基板上に前記半導体チップを半田接合する際には、前記絶縁基板上に鉛を含まない半田を用いて前記半導体チップを半田接合し、
前記放熱ベース上に前記絶縁基板を半田接合する際には、接合前にあらかじめ前記放熱ベースに前記絶縁基板が半田接合される面と反対の面側に接合後に略平坦な状態が得られるような凸状の反りを与えておき、前記反りが与えられた前記放熱ベース上に前記鉛を含まない半田を用いて前記絶縁基板を半田接合する、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記鉛を含まない半田は、融点が250℃以下であることを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記鉛を含まない半田は、銀、ビスマス、インジウム、アンチモン、亜鉛、アルミニウム、銅のうちの少なくとも1種とスズとを含むことを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
あらかじめ前記放熱ベースに与える前記反りの量を、接合する前記絶縁基板の形態に応じて設定することを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記反りの量を、前記放熱ベースに前記絶縁基板を接合する際の前記絶縁基板の接合面積に応じて設定することを特徴とする請求項15記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記絶縁基板を複数に分割し、前記反りの量を、分割された状態における前記絶縁基板の接合面積に応じて設定することを特徴とする請求項16記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記反りの量を、前記絶縁基板の前記導体層の厚さに応じて設定することを特徴とする請求項15記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記反りの量を、前記絶縁基板の前記セラミック基板の両面に設けられた前記導体層の体積比に応じて設定することを特徴とする請求項15記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記反りの量を、前記絶縁基板の前記セラミック基板の厚さに応じて設定することを特徴とする請求項15記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
あらかじめ前記放熱ベースに与える前記反りの量を、前記放熱ベースの厚さに応じて設定することを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記絶縁基板は、前記導体層に銅箔が用いられ、前記セラミック基板にアルミナを主成分とする基板が用いられていることを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項23】
前記放熱ベースは、銅を用いて構成されていることを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
セラミック基板の両面に導体層を有する絶縁基板が放熱ベース上に半田接合され、前記絶縁基板上に半導体チップが半田接合された構造を有する半導体装置において、
前記半導体チップと前記絶縁基板との間および前記絶縁基板と前記放熱ベースとの間が鉛を含まない半田を用いて接合され、かつ、前記放熱ベースが前記鉛を含まない半田を用いて略平坦な状態で接合されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記鉛を含まない半田は、融点が250℃以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記鉛を含まない半田は、銀、ビスマス、インジウム、アンチモン、亜鉛、アルミニウム、銅のうちの少なくとも1種とスズとを含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁基板は、前記半導体チップ接合面側に設けられた前記導体層の厚さと前記放熱ベース接合面側に設けられた前記導体層の厚さとが等しいか、前記半導体チップ接合面側に設けられた前記導体層よりも前記放熱ベース接合面側に設けられた前記導体層の方が厚く形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記絶縁基板は、前記半導体チップ接合面側に設けられた前記導体層の体積に対する前記放熱ベース接合面側に設けられた前記導体層の体積の比が1以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記絶縁基板は、前記導体層に銅箔が用いられ、前記セラミック基板にアルミナを主成分とする基板が用いられていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記絶縁基板は、複数に分割された状態で前記放熱ベースおよび前記半導体チップに接合されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記絶縁基板は、前記導体層の厚さが0.4mm以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
前記絶縁基板は、前記セラミック基板の厚さが0.2mm〜0.635mmであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項10】
前記放熱ベースは、銅を用いて構成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項11】
前記放熱ベースは、厚さが2mm〜4mmであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項12】
セラミック基板の両面に導体層を有する絶縁基板が放熱ベース上に半田接合され、前記絶縁基板上に半導体チップが半田接合された構造を有する半導体装置の製造方法において、
前記絶縁基板上に前記半導体チップを半田接合する際には、前記絶縁基板上に鉛を含まない半田を用いて前記半導体チップを半田接合し、
前記放熱ベース上に前記絶縁基板を半田接合する際には、接合前にあらかじめ前記放熱ベースに前記絶縁基板が半田接合される面と反対の面側に接合後に略平坦な状態が得られるような凸状の反りを与えておき、前記反りが与えられた前記放熱ベース上に前記鉛を含まない半田を用いて前記絶縁基板を半田接合する、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記鉛を含まない半田は、融点が250℃以下であることを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記鉛を含まない半田は、銀、ビスマス、インジウム、アンチモン、亜鉛、アルミニウム、銅のうちの少なくとも1種とスズとを含むことを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
あらかじめ前記放熱ベースに与える前記反りの量を、接合する前記絶縁基板の形態に応じて設定することを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記反りの量を、前記放熱ベースに前記絶縁基板を接合する際の前記絶縁基板の接合面積に応じて設定することを特徴とする請求項15記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記絶縁基板を複数に分割し、前記反りの量を、分割された状態における前記絶縁基板の接合面積に応じて設定することを特徴とする請求項16記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記反りの量を、前記絶縁基板の前記導体層の厚さに応じて設定することを特徴とする請求項15記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記反りの量を、前記絶縁基板の前記セラミック基板の両面に設けられた前記導体層の体積比に応じて設定することを特徴とする請求項15記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記反りの量を、前記絶縁基板の前記セラミック基板の厚さに応じて設定することを特徴とする請求項15記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
あらかじめ前記放熱ベースに与える前記反りの量を、前記放熱ベースの厚さに応じて設定することを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記絶縁基板は、前記導体層に銅箔が用いられ、前記セラミック基板にアルミナを主成分とする基板が用いられていることを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【請求項23】
前記放熱ベースは、銅を用いて構成されていることを特徴とする請求項12記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−202884(P2006−202884A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11369(P2005−11369)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】
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