説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】半導体素子と配線基板とをフリップチップ接続した半導体装置に関し、半導体素子の4隅のコーナー部において半導体素子と配線基板の間隙の封止樹脂充填性が悪いため、半導体素子の4隅のコーナー部において封止樹脂が不足し、半導体装置の接続信頼性低下が懸念される。
【解決手段】半導体素子と配線基板をフィルム状の封止樹脂を介して接続するフリップチップ実装の半導体装置の構造で、半導体素子の4隅のコーナー部にのみ樹脂保護膜を形成し、フリップチップ実装することで半導体素子搭載領域の中央部に比べ、コーナー部の半導体素子と配線基板の間隙が狭くなり、コーナー部の樹脂充填を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は封止樹脂フィルムを介して半導体素子を配線基板にフリップチップ接合させる半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯情報機器等の小型、軽量化に伴い、半導体装置の高密度化、小型化、薄型化が要求される。これらの要望に応えるために、半導体素子をフリップチップ方式で搭載した半導体装置が開発されているが、半導体素子の薄型化に対応出来る工法として、封止樹脂フィルムを介して半導体素子を配線基板に接合するフリップチップ実装構造が提案されている。
【0003】
以下、従来の半導体装置について図面を参照しながら説明する。図15に従来の半導体素子を、図16に従来の半導体素子搭載用配線基板をそれぞれ記載する。図15(a)、(b)に記載の半導体素子1は、いずれもその回路形成面である主面の周辺部に、バンプを介して配線基板と接続するための電極パッド2が形成されている。図15(a)に記載の半導体素子1は、半導体素子1主面に樹脂保護膜が形成されていない半導体素子であり、図15(b)に記載の半導体素子1は、半導体素子1の回路形成領域である中央部と主面の4隅のコーナー部に樹脂保護膜3が形成された半導体素子である。樹脂保護膜3は、半導体素子1を配線基板に実装する際にそれらの間に介在させる封止樹脂フィルム中の無機フィラーの衝撃から半導体素子1を保護する目的で形成されるものであるが、非常に微細な球状の無機フィラーからなる衝撃の危険性のない封止樹脂フィルムを用いる場合には、これら樹脂保護膜3は必要とせず、図15(a)記載の半導体素子1を用いることが可能である。このように、従来の半導体素子1は、その主面に樹脂保護膜を有しないもの(図15(a))、電極パッド2を除いた主面全体に樹脂保護膜3を有するもの(図15(b))のいずれかが用いられていた。
【0004】
図16は半導体素子1を搭載する配線基板4の平面図である。図示するように配線基板4は、半導体素子1を搭載する面に、バンプを介して半導体素子1の電極パッド2と接続する端子電極5、表層配線6および半導体素子搭載領域7よりも大きいサイズで開口した基板樹脂層8が形成されている。基板樹脂層8の開口部に、端子電極5が露出し、搭載する半導体素子1の電極パッド2との電気的な導通が図られる。
【0005】
次に図17に従来のフリップチップ実装構造の説明図、図18に実装後の平面図と断面図を示す。図17に示すように、電極パッド2上にバンプ9を形成した半導体素子1と、開口部に半導体素子1の面積よりも大きなサイズの封止樹脂フィルム10が貼り付けられた配線基板4とが相対する位置に位置決めされ実装された構造となっている。
【0006】
具体的には、半導体素子1の電極パッド2にワイヤボンディング技術を利用して金ボールのバンプ(スタッドバンプともいう)9を形成し、一方配線基板4側では、電極パッド2と対応させた配置に端子電極5を形成しておき、バンプ9と配線基板4の端子電極5とを封止樹脂フィルム10を介して熱と荷重で圧着して接続することにより半導体素子1を配線基板4に実装する(圧接工法とも呼ぶ)。その際、封止樹脂フィルム10は、加熱により溶融され、余分な封止樹脂を押し出しながら半導体素子1と配線基板4との間を封止樹脂で充填し、その後、封止樹脂フィルム10中に含まれた硬化剤によって硬化される。この封止樹脂により、半導体素子1の電極パッド2上のバンプ9と配線基板4の端子電極5との接続が強固に保たれる。
【0007】
この際の半導体素子1と配線基板4との間の樹脂充填性および半導体素子1からはみ出す樹脂の量は半導体素子1と配線基板4の間隙量および介在させた封止樹脂フィルム10のサイズと厚みに影響される。封止樹脂フィルム10の面積は半導体素子1の面積よりも若干大きなサイズに切り出して使用し、厚みは半導体素子搭載領域7のうち配線基板4上に凸状に形成されている表層配線6の体積分不要になるため、接合後の半導体素子1と配線基板4の間隙量よりも薄い厚みの封止樹脂フィルム10を用いる。このように、実装によって、半導体素子1の周辺への樹脂のはみ出しが存在するため、半導体装置の小型化のためには、この樹脂のはみ出しが少なくなるような封止樹脂フィルム10の厚みを選択することが必要である。
【0008】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【特許文献1】国際公開第98/30073号パンフレット(特許第3150347号公報)
【特許文献2】特開平11−340278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の技術には以下のような問題があった。
【0010】
封止樹脂フィルム10を用いたフリップチップ接続では、半導体素子1の電極パッド2に形成されたバンプ9を荷重で変形させながら配線基板4の端子電極5に接触させ、同時に加熱させることで封止樹脂フィルム10を溶解、流動させ、余分な樹脂を半導体素子1周辺に押し出しながら樹脂を硬化させ、半導体素子1の電極パッド2上のバンプ9と配線基板4の端子電極5との接続を保つ。
【0011】
この場合、封止樹脂フィルム10は、上述したように配線基板4上に形成された表層配線6の体積分厚みの薄いものを使用するため、半導体素子1と配線基板4を接続する際、まず、溶融した封止樹脂は、半導体素子1と配線基板4との間隙を封止し、その上で余分な封止樹脂を半導体素子1の周辺に押し出して硬化する。その際、図18(a)に示すように、半導体素子1の周辺に押し出され円弧状に広がった封止樹脂11を形成する。このように円弧状に広がった場合、半導体素子1の各辺中央部では封止樹脂11のはみ出し量であるフィレット長Lは大きくなるが、半導体素子1の4隅のコーナー部では、封止樹脂11が広がらず、図18(b)、(c)に示すように未充填やボイドが発生し、接続信頼性を低下させるという課題が存在する。
【0012】
一方、コーナー部での樹脂の充填性を上げ、このような不具合を防止するために封止樹脂フィルム10の厚み等を調整し、樹脂量を増やした場合、半導体素子1の各辺中央部のフィレット長Lが大きくなり、配線基板4は、このフィレット長分大きなサイズが必要となり、半導体装置の小型化の妨げとなってしまう。
【0013】
よって、半導体装置の小型化のためには、半導体素子1の各辺中央部からの封止樹脂11のフィレット長Lが大きくならないような封止樹脂フィルム10の厚みを選択し、かつコーナー部での樹脂の充填性を上げることが必要である。
【0014】
引用文献1には、フリップチップ実装の生産性と生産コストと言う課題を解決するため、従来の封止樹脂フィルムを用いたフリップチップ実装技術が開示されているが、半導体素子の4隅のコーナー部における封止樹脂の充填性の課題に触れておらず、コーナー部において未充填やボイドが発生する可能性がある。
【0015】
また、引用文献2には、半導体素子コーナー部の封止樹脂の充填性の課題を解決するために、回路基板の配線電極形成部よりも内側の領域であって、かつ半導体素子の4つ角付近に樹脂層を形成する技術が開示されているが、当該引例においては、半導体素子よりも小さい大きさの封止樹脂シートを使用し、封止樹脂シートの4つ角に相当する位置に凸状の樹脂層を形成するものであって、半導体素子の4隅のコーナー部に凸を設け、該コーナー部における半導体素子と配線基板の間隙を小さくするものではなく、半導体素子コーナー部の封止樹脂の充填性の課題を依然有するものである。また、封止樹脂シートは半導体素子よりも小さいものであるため、このような封止樹脂シートでは、接合時に半導体素子の電極及び配線基板の突起電極を覆わず、接合部周辺にボイドを発生させる可能性があり、接続信頼性を低下させるものである。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するものであって、半導体素子の4隅まで完全に封止することで接続信頼性を向上でき、かつ小型化を達成できるフリップチップ実装方法およびそれに用いる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る半導体装置は、主面の周辺に電極パッドと前記電極パッドより内方に回路形成領域とを有する半導体素子を、バンプを介して前記電極パッドと接続する端子電極を表面に有する配線基板にフリップチップ接続し、前記半導体素子の主面と前記配線基板との間に封止樹脂を備えた半導体装置であって、前記半導体素子の主面側と前記配線基板の表面側との間に存在する間隙の大きさが、前記回路形成領域よりも、前記半導体素子のコーナー部の方が小さくなっていることを特徴とする。
【0018】
また、上記半導体装置に係る半導体素子は、半導体素子の主面のコーナー部の上面にのみ樹脂膜を形成することを特徴とする。
【0019】
もしくは、上記半導体装置に係る半導体素子は、前記回路形成領域の上面に形成された第1の樹脂膜と、前記半導体素子のコーナー部の上面に形成された前記第1の樹脂膜より厚みの厚い第2の樹脂膜とを有することを特徴とする。
【0020】
一方、上記半導体装置に係る配線基板は、前記配線基板の表面であって前記半導体素子の前記コーナー部に対応する位置にダミーランドを有することを特徴とする。
【0021】
もしくは、上記半導体装置に係る配線基板は、上面に、少なくとも前記半導体素子の搭載領域のコーナー部を除いた前記搭載領域に開口部を有することを特徴とする。
【0022】
または、上記の半導体素子、配線基板の組み合わせによって、以下の特徴を有する。
【0023】
半導体装置は、前記半導体素子の主面のコーナー部の上面にのみ樹脂膜が形成され、前記半導体素子の前記コーナー部に対応する位置の前記配線基板の表面にダミーランドが形成されたことを特徴とする。
【0024】
または、前記半導体素子の主面のコーナー部の上面にのみ樹脂膜が形成され、前記配線基板の上面に少なくとも前記半導体素子の搭載領域のコーナー部を除いた前記搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を備えたことを特徴とする。
【0025】
または、前記半導体素子の前記回路形成領域の上面に第1の樹脂膜および前記半導体素子の前記コーナー部の上面に前記第1の樹脂膜より厚みの厚い第2の樹脂膜が形成され、前記半導体素子の前記コーナー部に対応する位置の前記配線基板の表面にダミーランドが形成されたことを特徴とする。
【0026】
または、前記半導体素子の前記回路形成領域の上面に第1の樹脂膜および前記半導体素子の前記コーナー部の上面に前記第1の樹脂膜より厚みの厚い第2の樹脂膜が形成され、
前記配線基板の上面に少なくとも前記半導体素子の搭載領域のコーナー部を除いた前記搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を有することを特徴とする。
【0027】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、主面の周辺に電極パッドを有する半導体素子を、表面に端子電極および前記端子電極を露出するように前記半導体素子の搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を備えた配線基板にフリップチップ接続した半導体装置の製造方法であって、前記配線基板上の前記樹脂保護膜の開口部に、前記端子電極を覆うように封止樹脂フィルムを載置する工程と、前記半導体素子の主面のコーナー部にのみ樹脂膜を形成する工程と、前記封止樹脂フィルムを介して前記半導体素子を前記配線基板にフリップチップ接続する工程と、前記封止樹脂フィルムを加熱し流動させることで、前記半導体素子と前記配線基板との間隙を樹脂封止する工程とからなることを特徴とする。
【0028】
または、主面の周辺に電極パッドを有する半導体素子を、表面に端子電極および前記端子電極を露出するように前記半導体素子の搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を備えた配線基板にフリップチップ接続した半導体装置の製造方法であって、前記配線基板上の前記樹脂保護膜の開口部に、前記端子電極を覆うように封止樹脂フィルムを形成する工程と、前記半導体素子の主面の回路形成領域に第1の樹脂膜とコーナー部に前記第1の樹脂膜より厚みの厚い第2の樹脂膜とを形成する工程と、前記封止樹脂フィルムを介して前記半導体素子を前記配線基板にフリップチップ接続する工程と、前記封止樹脂フィルムを加熱し流動させることで、前記半導体素子と前記配線基板との間隙を樹脂封止する工程とからなることを特徴とする。
【0029】
または、主面の周辺に電極パッドを有する半導体素子を、表面に端子電極および前記端子電極を露出するように前記半導体素子の搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を備えた配線基板にフリップチップ接続した半導体装置の製造方法であって、前記配線基板の前記半導体素子の搭載領域のコーナー部にダミーランドを形成する工程と、前記配線基板上の前記樹脂保護膜の開口部に、前記端子電極を覆うように封止樹脂フィルムを形成する工程と、前記封止樹脂フィルムを介して前記半導体素子を前記配線基板にフリップチップ接続する工程と、前記封止樹脂フィルムを加熱し流動させることで、前記半導体素子と前記配線基板との間隙を樹脂封止する工程とからなることを特徴とする。
【0030】
または、主面の周辺に電極パッドを有する半導体素子を、表面に端子電極および前記端子電極を露出するように前記半導体素子の搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を備えた配線基板にフリップチップ接続した半導体装置の製造方法であって、前記配線基板の上面に、少なくとも前記半導体素子の搭載領域のコーナー部を除いた前記搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を形成する工程と、前記配線基板上の前記樹脂保護膜の開口部に、前記端子電極を覆うように封止樹脂フィルムを載置する工程と、前記封止樹脂フィルムを介して前記半導体素子を前記配線基板にフリップチップ接続する工程と、前記封止樹脂フィルムを加熱し流動させることで、前記半導体素子と前記配線基板との間隙を樹脂封止する工程とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、半導体素子と配線基板の4隅の間隙が薄くなり、4隅の充填に必要な体積が小さくなることから、充填されにくいコーナー部の樹脂充填性が向上され、余分な樹脂のはみ出し量も少なくかつコーナー部の樹脂が十分に確保されることとなり半導体装置の小型化、および接続信頼性の向上を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0033】
図1は、第1の実施形態に係わる半導体素子の平面図である。図1に示す半導体素子101は、回路形成面である主面の周辺部に電極パッド102が複数個配置された構造になっており、4隅のコーナー部のうち、少なくとも電極パッド102が配置されていないコーナー部には樹脂保護膜103が形成されている。
【0034】
この樹脂保護膜103は、例えば、材料としてポリイミド材などが用いられ、半導体素子101の周辺部に形成された電極パッド102の大きさと同程度、もしくは多列の電極パッド構造の場合、その電極パッド列の幅と同程度の大きさに形成される。例えば、電極パッド102のパッド長さが100μmのとき、樹脂保護膜103の大きさは100μm角程度に、パッド長さが100μmの電極パッド2が2列で形成されている場合、200μm角程度の大きさのものを使うことが出来る。ただし、製造プロセスにより、この大きさは変更することが可能である。
【0035】
このように半導体素子101の各コーナー部にのみ樹脂保護膜103を形成することで、フリップチップ実装で配線基板に実装した際に、半導体素子101の中央部(回路形成領域)よりも、半導体素子101の4隅のコーナー部における半導体素子101と配線基板との間隙を狭くすることができる。ここで、半導体素子101の各コーナー部とは、半導体素子101の周辺部に形成された電極パッド102の並びに囲まれた部分である。
【0036】
次に、第1の実施形態における半導体素子101の配線基板への実装構造および実装工程について説明する。図2は第1の実施形態に係る半導体装置の実装構造の説明図、図3は実装工程の説明図、図4(a)は実装体の平面図、(b)はコーナー部の断面図、図5は図2のX−X’断面図である。
【0037】
本実施形態では、図2および図3(a)、(b)にあるように、まず、主面に電極パッド102を有する半導体素子101の電極パッド102上にバンプ109を形成し、半導体素子101のコーナー部に樹脂保護膜103を形成した半導体素子101を用いる。また、図2および図3(c)にあるように、半導体素子101の電極パッド102上に形成されたバンプ109と電気的に接続するための端子電極105と半導体素子搭載領域107よりも大きいサイズで開口した基板樹脂層108とを表面に有する配線基板104を用い、配線基板104表面の基板樹脂層108の開口部内の半導体素子搭載領域107に封止樹脂フィルム110を貼り付ける。この封止樹脂フィルム110が、後の工程で加熱、溶解、硬化され、半導体素子101と配線基板104との間隙を封止し、バンプ109の接続を強固にする封止樹脂111となる。
【0038】
封止樹脂フィルム110の大きさについては、半導体素子101よりも小さい面積の封止樹脂フィルム110を用いた場合、この封止樹脂フィルム110を加熱、溶解し、バンプ109を端子電極105に圧着する際、バンプ109の周囲を囲うように樹脂が流動することが必要となり、バンプ109周りに未充填が発生しやすくなり、接続安定性の低下、ボイドの発生の原因となることから、半導体素子101のバンプ109周りを封止樹脂フィルム110が覆うように、半導体素子101の大きさよりも若干大きなものを用いることが望ましい。また、封止樹脂フィルム110の厚みはフリップチップ実装後の半導体素子101と配線基板104の間隙よりも薄いものを使用することが望ましい。配線基板104上の表層配線106が半導体素子搭載領域107に凸状に存在するため、半導体素子101と配線基板104の間隙に対し表層配線106の体積分余分となるからである。
【0039】
次に、図3(d)に示すように、封止樹脂フィルム110を貼り付けた配線基板104の端子電極105と、半導体素子101の電極パッド102上に形成されたバンプ109とを位置合わせし、半導体素子101を裏面から加圧して、バンプ109を荷重で変形させながら配線基板104の端子電極105に接合し、同時に加熱することで余分な樹脂を半導体素子101の周辺へ押し出しながら封止樹脂111を硬化させることにより、半導体素子101の電極パッド102上のバンプ109と配線基板104の端子電極105との電気的接続および接続補強を保つ構造となっている。
【0040】
このとき、封止樹脂フィルム110の厚みは、配線基板104の半導体素子搭載領域107に存在する端子電極105やそれに接続した表層配線106の体積分、フリップチップ実装後の半導体素子101と配線基板104の間隙よりも薄く、かつ半導体素子搭載領域107よりも大きい面積を有するものを用いるが、半導体素子101を実装するに際し、封止樹脂フィルム110を加熱することにより溶融した封止樹脂111は、一度半導体素子101のコーナー部より内側に流動し、その後、円弧状に広がろうとする。その際、均一に円弧状に広がると4隅のコーナー部にいきわたる樹脂量が少なくなるが、コーナー部に設けた樹脂保護膜103によって、半導体素子101と配線基板104との間隙が他の部分と比較して狭くなっているため、図4(b)で示すように半導体素子101の4隅のコーナー部の封止樹脂111で充填すべき体積が小さくなり、図4(a)で示すようにコーナー部にも十分に封止樹脂111は広がり、同じ樹脂量でコーナー部の樹脂充填性が向上される。
【0041】
これによって、樹脂量を増やすことなくコーナー部を充填できるため、半導体素子101の各辺中央部におけるフィレット長Lを最小にしながら、コーナー部の樹脂充填性を十分に確保することが可能となる。
【0042】
例えば図5を用いて数値を入れて説明すると、実装後の半導体素子101の回路形成領域における半導体素子101と配線基板104の間隙Hと半導体素子101のコーナー部における半導体素子101と配線基板104の間隙hの関係において、間隙Hが40μm程度となる場合、封止樹脂フィルム110の厚みは、表層配線106等の体積分を考慮して、5μm薄い35μm程度となる。その時、半導体素子101の4隅のコーナー部に厚みが5μm程度の樹脂保護膜103を形成すると、封止樹脂で封止すべき間隙hは35μmとなり、封止樹脂フィルム110の厚みと同一となる。これによって、最低限コーナー部の必要な樹脂量が確保できることとなる。すなわち、樹脂保護膜103の厚みとしては、回路形成領域における半導体素子101と配線基板104との間隙Hと封止樹脂フィルム110の厚みとの差以上の厚みを有することが好ましい。
【0043】
また、図6に示す電極パッド102を除いた半導体素子101主面全体に樹脂保護膜103が形成された半導体素子101を用いる場合の実装構造を図7に、図7のX−X’断面図を図8に示す。
【0044】
このような半導体素子101であっても、図8に示すように、コーナー部に設けた樹脂保護膜103を中央部(回路形成領域)の樹脂保護膜103より厚く形成することで、第1の実施形態の半導体装置と同様の効果を得ることが可能である。
【0045】
すなわち、半導体素子101の回路形成領域における半導体素子101と配線基板104との間隙Hと半導体素子101のコーナー部における半導体素子101と配線基板104との間隙hとの関係において、H>hの関係が成り立つよう回路形成領域の樹脂保護膜103とコーナー部の樹脂保護膜103との厚みに差を持たせることで、回路形成領域に比べて4隅のコーナー部の封止樹脂111で充填する体積が小さくなり、同じ樹脂量でコーナー部の樹脂充填性が向上される。
【0046】
さらに、これによって、樹脂量を増やすことなくコーナー部を充填できるため、半導体素子101の各辺中央部におけるフィレット長Lを最小にしながら、コーナー部の樹脂充填性を十分に確保することが可能となる。
【0047】
なお、本技術により得られたこれらの半導体装置は、半導体素子101のサイズに比べ半導体装置のサイズがあまり大きくならず小型化されるという特徴を有している。
【0048】
さらには、本実施形態では半導体素子101の電極パッド102が半導体素子101の周辺部のみに配置されている場合を説明したが、電極パッド102は半導体素子101の回路形成面上に格子状に配置されたエリアパッドアレイの場合であっても半導体素子101の4隅のコーナー部において、半導体素子101と配線基板104との間隙を狭くすることで同様の効果が得られる。
【0049】
次に第2の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0050】
図9は第2の実施形態に係わる配線基板の平面図、図10は図9に示す配線基板に半導体素子を実装した半導体装置のX−X’断面図である。図9に示す配線基板104は、その表面に半導体素子のバンプと接合される端子電極105と表層配線106と半導体素子搭載領域107よりも大きなサイズで開口された基板樹脂層108を形成している。また、端子電極105および表層配線106は基板樹脂層108の開口部内に設けられ、該開口部内の半導体素子の4隅のコーナー部に相当する半導体素子搭載領域107のコーナー部にダミーランド112が形成された構造となっている。半導体素子搭載領域107のコーナー部とは、配線基板104上の端子電極105の並びに囲まれた部分である。
【0051】
このように配線基板104側にダミーランド112を設けることで、第1の実施形態における半導体素子101のコーナー部に設けられた保護樹脂膜103と同じ役割を果たすものである。なお、ダミーランド112は半導体素子101とは電気的に接続しない配線であり、配線基板104上へ端子電極105を形成する工程と同一工程で形成されるため、別途工程を増やす必要がない。材料としては、例えば銅材などで形成され、酸化防止、接続性の安定化からニッケル、金等のめっきが施されている。
【0052】
図9では、ダミーランド112は、配線基板104の半導体素子搭載領域107のコーナー部にのみ形成されているが、配線基板104上の表層配線106の引き回しに影響されない限り半導体素子搭載領域107から外側への大きさは規制されない。また、ダミーランド112は端子電極105の形成と同一工程で形成されるため、その厚みは、端子電極105の厚みと同じ厚みとなる。
【0053】
例えば図10(a)を用いて数値を入れて説明すると、実装後半導体素子101の回路形成領域における半導体素子101と配線基板104の間隙Hと半導体素子101のコーナー部における半導体素子101と配線基板104の間隙hの関係において、間隙Hが40μm程度となる場合、封止樹脂フィルム110の厚みは、表層配線106等の体積分を考慮して、5μm薄い35μm程度となる。その時、配線基板104の半導体素子搭載領域107の4隅のコーナー部に厚みが10μm程度のダミーランド112を形成すると、封止樹脂で封止すべき間隙hは30μmとなり、封止樹脂フィルム110の厚みより小さくなる。これによって、最低限コーナー部の必要な樹脂量が確保できることとなる。
【0054】
なお、ダミーランド112は端子配線105の任意の配線を共用させても良い。
【0055】
本配線基板104の構造は、フリップチップ実装で半導体素子101を実装した際に半導体素子101の4隅のコーナー部における半導体素子101と配線基板104との間隙hを回路形成領域の間隙Hに比較して狭くさせるものである。
【0056】
これによって、コーナー部での樹脂の充填すべき体積が小さくなるため、少ない樹脂量で半導体素子101のコーナー部に樹脂を充填することが可能となり、半導体素子101の各辺の中央部分でのフィレット長Lを小さくすることができ、半導体装置の小型化を図ることが可能である。また、樹脂の未充填を防ぐことで、接続安定性を得ることができる。
【0057】
さらに、図9に示す配線基板に第1の実施形態の半導体素子を実装した半導体装置を図10(b)に示す。このように、配線基板104の半導体素子101のコーナー部に形成した保護樹脂膜103に対応する位置にダミーランド112を形成することで、半導体素子101のコーナー部における半導体素子101と配線基板104との間隙hを一層狭くすることができ、コーナー部の樹脂充填性を向上させることが可能である。
【0058】
例えば図10(b)を用いて数値を入れて説明すると、実装後の半導体素子101の回路形成領域における半導体素子101と配線基板104の間隙Hと半導体素子101のコーナー部における半導体素子101と配線基板104の間隙hの関係において、間隙Hが40μm程度となる場合、封止樹脂フィルム110の厚みは、表層配線106等の体積分を考慮して、5μm薄い35μm程度となる。その時、半導体素子101の4隅のコーナー部に厚みが5μm程度の樹脂保護膜103を形成し、かつ配線基板104の半導体素子搭載領域107の4隅のコーナー部に厚みが10μm程度のダミーランド112を形成すると、封止樹脂で封止すべき間隙hは25μmとなり、封止樹脂フィルム110の厚みより10μm程度小さくなる。これによって、コーナー部に十分な樹脂量が確保できることとなる。
【0059】
次に、第2の実施形態における半導体素子の配線基板への実装工程について説明する。図11は本実施形態にかかる半導体装置の実装工程の説明図である。
【0060】
図11(a)にあるように、まず、主面に電極パッド102を有する半導体素子101の電極パッド102上にバンプ109を形成した半導体素子101を用いる。また、図11(b)にあるように、半導体素子101の電極パッド102上に形成されたバンプ109と電気的に接続するための端子電極105と半導体素子搭載領域107よりも大きいサイズで開口した基板樹脂層108とを表面に有する配線基板104を用いる。配線基板104の表面には、前記端子電極105を形成する工程において同時に、半導体素子の4隅のコーナー部に相当する半導体素子搭載領域107のコーナー部にダミーランド112を形成する。次に、図11(c)に示すように、配線基板104上の基板樹脂層108の開口部内の半導体素子搭載領域107に封止樹脂フィルム110を貼り付ける。この封止樹脂フィルム110が、後の工程で加熱、溶解、硬化することで半導体素子101と配線基板104との間隙を封止し、バンプ109の接続を強固にする封止樹脂111となる。
【0061】
封止樹脂フィルム110の大きさについては、半導体素子101よりも小さい面積の封止樹脂フィルム110を用いた場合、この封止樹脂フィルム110を加熱、溶解しバンプ109を端子電極105に圧着する際、バンプ109の周囲を囲うように樹脂が流動することが必要となり、バンプ109周りに未充填が発生しやすくなり、接続安定性の低下、ボイドの発生の原因となることから、半導体素子101のバンプ109周りを封止樹脂フィルム110が覆うように、半導体素子101の大きさよりも若干大きなものを用いることが望ましい。また、封止樹脂フィルム110の厚みはフリップチップ実装後の半導体素子101と配線基板104の間隙よりも薄いものを使用することが望ましい。配線基板104上の表層配線106が半導体素子搭載領域107に凸状に存在するため、半導体素子101と配線基板104の間隙に対し表層配線106の体積分余分となるからである。
【0062】
次に、図11(d)に示すように、封止樹脂フィルム110を貼り付けた配線基板104の端子電極105と、半導体素子101の電極パッド102上に形成されたバンプ109とを位置合わせし、半導体素子101を裏面から加圧して、バンプ109を荷重で変形させながら配線基板104の端子電極105に接合し、同時に加熱することで余分な樹脂を半導体素子101の周辺へ押し出しながら封止樹脂111を硬化させることにより、半導体素子101の電極パッド102上のバンプ109と配線基板104の端子電極105との電気的接続および接続補強を保つ構造となっている。
【0063】
このとき、封止樹脂フィルム110の厚みは、配線基板104の半導体素子搭載領域107に存在する端子電極105やそれに接続した表層配線106の体積分、フリップチップ実装後の半導体素子101と配線基板104の間隙よりも薄く、かつ半導体素子搭載領域107よりも大きい面積を有するものを用いるが、半導体素子101を実装するに際し、封止樹脂フィルム110を加熱することにより溶融した封止樹脂111は、一度半導体素子101のコーナー部より内側に流動し、その後、円弧状に広がろうとする。その際、均一に円弧状に広がると4隅のコーナー部にいきわたる樹脂量が少なくなるが、コーナー部に設けたダミーバンプ112によって、半導体素子101と配線基板104との間隙が他の部分と比較して狭くなっているため、図11(e)で示すように半導体素子101の4隅のコーナー部の封止樹脂で充填する体積が小さくなり、同じ樹脂量でコーナー部の樹脂充填性が向上される。
【0064】
これによって、樹脂量を増やすことなくコーナー部を充填できるため、半導体素子101の各辺中央部におけるフィレット長Lを最小にしながら、コーナー部の樹脂充填性を十分に確保することが可能となる。
【0065】
さらには、本実施形態では半導体素子101の電極パッド102が半導体素子101の周辺部のみに配置されている場合を説明したが、電極パッド102は半導体素子101の回路形成面上に格子状に配置されたエリアパッドアレイの場合であっても半導体素子101の4隅のコーナー部において、半導体素子101と配線基板104との間隙を狭くすることで同様の効果が得られる。
【0066】
次に第3の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0067】
図12は、第3の実施形態に係わる配線基板の平面図、図13は図12に示す配線基板に半導体素子を実装した半導体装置の断面図である。図12に示す配線基板104では、半導体素子搭載領域107に開口部を有する基板樹脂層108の開口部の形状が第2の実施形態のものと異なる。
【0068】
本実施形態は、第2の実施形態におけるダミーランド112の位置に基板樹脂層108が延長して形成されている。すなわち、基板樹脂層108の形状が、半導体素子101の各辺中央部に対応する部分は、半導体素子搭載領域107より大きく開口しているが、半導体素子搭載領域107の4隅のコーナー部のみが半導体素子搭載領域107まで延長して形成された構造となっている。
【0069】
例えば、図13を用いて数値を入れて説明すると、図13(a)に示すように、実装後の半導体素子101の回路形成領域における半導体素子101と配線基板104の間隙Hと半導体素子101のコーナー部における半導体素子101と配線基板104の間隙hの関係において、間隙Hが40μm程度となる場合、封止樹脂フィルム110の厚みは、表層配線106等の体積分を考慮して、5μm薄い35μm程度となる。その時、基板樹脂層108の厚みは20μm程度のため、配線基板104の半導体素子搭載領域107の4隅のコーナー部に厚みが20μm程度の基板樹脂層108を形成すると、封止樹脂で封止すべき間隙hは20μmとなり、封止樹脂フィルム110の厚みより15μm程度小さくなる。これによって、コーナー部の十分な樹脂量が確保できることとなる。
【0070】
本実施形態にかかる配線基板104の構造は、フリップチップ実装で半導体素子101を実装した際に半導体素子101の4隅のコーナー部の半導体素子101と配線基板104との間隙hを回路形成領域の間隙Hに比較して狭くさせるものであり、第2の実施形態と同一の効果を有する。さらに、本実施形態の配線基板104は、基板樹脂層108を形成する際にコーナー部まで延長させればよく、製造上、別の工程を必要としない点で有効である。
【0071】
さらに、図12に示す配線基板に第1の実施形態の半導体素子を実装した半導体装置を図13(b)に示す。このように、配線基板104の半導体素子101のコーナー部に形成した保護樹脂膜103に対応する位置まで基板樹脂層108を延長して形成することで、半導体素子101のコーナー部における半導体素子101と配線基板104との間隙hの幅を一層狭くすることができ、コーナー部の樹脂充填性を向上させることが可能である。
【0072】
例えば図13(b)を用いて数値を入れて説明すると、実装後の半導体素子101の回路形成領域における半導体素子101と配線基板104の間隙Hと半導体素子101のコーナー部における半導体素子101と配線基板104の間隙hの関係において、間隙Hが40μm程度となる場合、封止樹脂フィルム110の厚みは、表層配線106等の体積分を考慮して、5μm薄い35μm程度となる。その時、半導体素子101の4隅のコーナー部に厚みが5μm程度の樹脂保護膜103を形成し、かつ配線基板104の半導体素子搭載領域107の4隅のコーナー部に厚みが20μm程度の基板樹脂層108を形成すると、封止樹脂で封止すべき間隙hは15μmとなり、封止樹脂フィルム110の厚みより20μm程度小さくなる。これによって、コーナー部に十分な樹脂量が確保できることとなる。
【0073】
すなわち、半導体素子101の回路形成領域における半導体素子101と配線基板104との間隙Hに比較して、コーナー部における半導体素子101と配線基板104との間隙hが小さくなることで、4隅のコーナー部の封止樹脂で充填する体積が小さくなり、同じ樹脂量でコーナー部の樹脂充填性が向上される。
【0074】
さらに、これによって、樹脂量を増やすことなくコーナー部を充填できるため、半導体素子101の各辺中央部におけるフィレット長Lを最小にしながら、コーナー部の樹脂充填性を十分に確保することが可能となる。
【0075】
さらには、本実施形態では半導体素子101の電極パッド102が半導体素子101の周辺部のみに配置されている場合を説明したが、電極パッド102は半導体素子101の回路形成面上に格子状に配置されたエリアパッドアレイの場合であっても半導体素子101の4隅のコーナー部において、半導体素子101と配線基板104との間隙を狭くすることで同様の効果が得られる。
【0076】
次に、第3の実施形態における半導体素子の配線基板への実装工程について説明する。図14は本実施形態にかかる半導体装置の実装工程の説明図である。
【0077】
図14(a)にあるように、まず、半導体素子101の主面の電極パッド102上にバンプ109を形成した半導体素子101を用いる。また、図14(b)にあるように、半導体素子101の電極パッド102上に形成されたバンプ109と電気的に接続するための端子電極105と基板樹脂層108とを表面に有する配線基板104を用いる。基板樹脂層108は、半導体素子搭載領域107の4隅のコーナー部を除いて半導体素子搭載領域107より大きい開口部を有し、半導体素子搭載領域107の4隅のコーナー部のみ延長して形成されている。次に、図14(c)に示すように、配線基板104上の基板樹脂層108の開口部内の半導体素子搭載領域107に封止樹脂フィルム110を貼り付け、裏面から樹脂フィルム貼付ツール113によって押圧する。この封止樹脂フィルム110が、後の工程で加熱、溶解、硬化することで半導体素子101と配線基板104との間隙を封止し、バンプ109の接続を強固にする封止樹脂111となる。
【0078】
本実施形態に係る配線基板104に半導体素子101よりも若干大きな面積を有する封止樹脂フィルム110を貼り付ける場合、配線基板104上の基板樹脂層108が半導体素子搭載領域107のコーナー部まで延在しているため、コーナー部において、基板樹脂層108と封止樹脂フィルム110が重なることになる。この場合、樹脂フィルム貼付ツールの押圧面が平坦なものを用いると、コーナー部では、基板樹脂層108の厚み分の段差が存在するため、封止樹脂フィルム110の中央部では、十分に押圧できないこととなる。ゆえに、本実施形態に用いる樹脂フィルム貼付ツール113は、基板樹脂層108と封止樹脂フィルム110とが重なる部分に相当するコーナー部に段差を有する。これによれば、封止樹脂フィルムを同一厚みで空気層含むことなく、安定して貼り付けられるため、半導体装置として半導体素子と配線基板との樹脂の充填性が向上することとなり、接続信頼性を向上させることが可能である。
【0079】
次に、図14(d)に示すように、封止樹脂フィルム110を貼り付けた配線基板104の端子電極105と、半導体素子101の電極パッド102上に形成されたバンプ109とを位置合わせし、半導体素子101を裏面から加圧して、バンプ109を荷重で変形させながら配線基板104の端子電極105に接合し、同時に加熱することで余分な樹脂を半導体素子101の周辺へ押し出しながら封止樹脂111を硬化させることにより、半導体素子101の電極パッド102上のバンプ109と配線基板104の端子電極105との電気的接続および接続補強を保つ構造となっている。
【0080】
このとき、封止樹脂フィルム110の厚みは、配線基板104の半導体素子搭載領域107に存在する端子電極105やそれに接続した表層配線106の体積分、フリップチップ実装後の半導体素子101と配線基板104の間隙よりも薄く、かつ半導体素子搭載領域107よりも大きい面積を有するものを用いるが、半導体素子101を実装するに際し、封止樹脂フィルム110を加熱することにより溶融した封止樹脂111は、一度半導体素子101のコーナー部より内側に流動し、その後、円弧状に広がろうとする。その際、均一に円弧状に広がると4隅のコーナー部にいきわたる樹脂量が少なくなるが、コーナー部に延長して形成された基板樹脂層108によって、半導体素子101と配線基板104との間隙が回路形成領域に比較して狭くなっているため、図14(e)で示すように半導体素子101の4隅のコーナー部の封止樹脂111で充填する体積が小さくなり、同じ樹脂量でコーナー部の樹脂充填性が向上される。
【0081】
これによって、樹脂量を増やすことなくコーナー部を充填できるため、半導体素子101の各辺中央部におけるフィレット長Lを最小にしながら、コーナー部の樹脂充填性を十分に確保することが可能となる。
【0082】
さらには、本実施形態では半導体素子101の電極パッド102が半導体素子101の周辺部のみに配置されている場合を説明したが、電極パッド102は半導体素子101の回路形成面上に格子状に配置されたエリアパッドアレイの場合であっても半導体素子101の4隅のコーナー部において、半導体素子101と配線基板104との間隙を狭くすることで同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の半導体装置およびその製造方法は、フリップチップ方式で接合させる半導体装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1の実施形態に係る半導体素子の平面図
【図2】第1の実施形態に係る半導体装置の実装構造の説明図
【図3】第1の実施形態に係る半導体装置の実装工程の説明図
【図4】第1の実施形態に係る半導体装置の平面図および断面図
【図5】第1の実施形態に係る半導体装置の断面図
【図6】第1の実施形態に係る半導体素子の平面図
【図7】第1の実施形態に係る半導体装置の実装構造の説明図
【図8】第1の実施形態に係る半導体装置の断面図
【図9】第2の実施形態に係る配線基板の平面図
【図10】第2の実施形態に係る半導体装置の断面図
【図11】第2の実施形態に係る半導体装置の実装工程の説明図
【図12】第3の実施形態に係る配線基板の平面図
【図13】第3の実施形態に係る半導体装置の断面図
【図14】第3の実施形態に係る半導体装置の実装工程の説明図
【図15】従来の半導体素子の平面図
【図16】従来の配線基板の平面図
【図17】従来の半導体装置の実装構造の説明図
【図18】従来の半導体装置の平面図および断面図
【符号の説明】
【0085】
1、101 半導体素子
2、102 電極パッド
3、103 樹脂保護膜
4、104 配線基板
5、105 端子電極
6、106 表層配線
7、107 半導体素子搭載領域
8、108 基板樹脂層
9、109 バンプ
10、110 封止樹脂フィルム
11、111 封止樹脂
112 ダミーランド
113 樹脂フィルム貼付ツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面の周辺に電極パッドと前記電極パッドより内方に回路形成領域とを有する半導体素子を、バンプを介して前記電極パッドと接続する端子電極を表面に有する配線基板にフリップチップ接続し、前記半導体素子の主面と前記配線基板との間に封止樹脂を備えた半導体装置であって、
前記半導体素子の主面側と前記配線基板の表面側との間に存在する間隙の大きさが、前記回路形成領域よりも、前記半導体素子のコーナー部の方が小さくなっていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体素子の主面のコーナー部の上面にのみ樹脂膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体素子は、前記回路形成領域の上面に形成された第1の樹脂膜と、前記半導体素子のコーナー部の上面に形成された前記第1の樹脂膜より厚みの厚い第2の樹脂膜とを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記配線基板は、前記配線基板の表面であって前記半導体素子の前記コーナー部に対応する位置にダミーランドを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記配線基板の上面に、少なくとも前記半導体素子の搭載領域のコーナー部を除いた前記搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体素子の主面のコーナー部の上面にのみ樹脂膜が形成され、
前記半導体素子の前記コーナー部に対応する位置の前記配線基板の表面にダミーランドが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体素子の主面のコーナー部の上面にのみ樹脂膜が形成され、
前記配線基板の上面に少なくとも前記半導体素子の搭載領域のコーナー部を除いた前記搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を備えたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体素子の前記回路形成領域の上面に第1の樹脂膜および前記半導体素子の前記コーナー部の上面に前記第1の樹脂膜より厚みの厚い第2の樹脂膜が形成され、前記半導体素子の前記コーナー部に対応する位置の前記配線基板の表面にダミーランドが形成されたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体素子の前記回路形成領域の上面に第1の樹脂膜および前記半導体素子の前記コーナー部の上面に前記第1の樹脂膜より厚みの厚い第2の樹脂膜が形成され、
前記配線基板の上面に少なくとも前記半導体素子の搭載領域のコーナー部を除いた前記搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
主面の周辺に電極パッドを有する半導体素子を、表面に端子電極および前記端子電極を露出するように前記半導体素子の搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を備えた配線基板にフリップチップ接続した半導体装置の製造方法であって、
前記配線基板上の前記樹脂保護膜の開口部に、前記端子電極を覆うように封止樹脂フィルムを載置する工程と、
前記半導体素子の主面のコーナー部にのみ樹脂膜を形成する工程と、
前記封止樹脂フィルムを介して前記半導体素子を前記配線基板にフリップチップ接続する工程と、
前記封止樹脂フィルムを加熱し流動させることで、前記半導体素子と前記配線基板との間隙を樹脂封止する工程とからなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
主面の周辺に電極パッドを有する半導体素子を、表面に端子電極および前記端子電極を露出するように前記半導体素子の搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を備えた配線基板にフリップチップ接続した半導体装置の製造方法であって、
前記配線基板上の前記樹脂保護膜の開口部に、前記端子電極を覆うように封止樹脂フィルムを形成する工程と、
前記半導体素子の主面の回路形成領域に第1の樹脂膜とコーナー部に前記第1の樹脂膜より厚みの厚い第2の樹脂膜とを形成する工程と、
前記封止樹脂フィルムを介して前記半導体素子を前記配線基板にフリップチップ接続する工程と、
前記封止樹脂フィルムを加熱し流動させることで、前記半導体素子と前記配線基板との間隙を樹脂封止する工程とからなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
主面の周辺に電極パッドを有する半導体素子を、表面に端子電極および前記端子電極を露出するように前記半導体素子の搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を備えた配線基板にフリップチップ接続した半導体装置の製造方法であって、
前記配線基板の前記半導体素子の搭載領域のコーナー部にダミーランドを形成する工程と、
前記配線基板上の前記樹脂保護膜の開口部に、前記端子電極を覆うように封止樹脂フィルムを形成する工程と、
前記封止樹脂フィルムを介して前記半導体素子を前記配線基板にフリップチップ接続する工程と、
前記封止樹脂フィルムを加熱し流動させることで、前記半導体素子と前記配線基板との間隙を樹脂封止する工程とからなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
主面の周辺に電極パッドを有する半導体素子を、表面に端子電極および前記端子電極を露出するように前記半導体素子の搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を備えた配線基板にフリップチップ接続した半導体装置の製造方法であって、
前記配線基板の上面に、少なくとも前記半導体素子の搭載領域のコーナー部を除いた前記搭載領域に開口部を有する樹脂保護膜を形成する工程と、
前記配線基板上の前記樹脂保護膜の開口部に、前記端子電極を覆うように封止樹脂フィルムを載置する工程と、
前記封止樹脂フィルムを介して前記半導体素子を前記配線基板にフリップチップ接続する工程と、
前記封止樹脂フィルムを加熱し流動させることで、前記半導体素子と前記配線基板との間隙を樹脂封止する工程とからなることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−300500(P2008−300500A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143259(P2007−143259)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】