説明

半導体装置の組立治具およびそれを用いた半導体装置の製造方法

【課題】半導体チップを導電パターン付き絶縁基板に半田付けする工程において、半導体チップの位置ズレが発生しない半導体装置の組立治具およびそれを用いた半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】組立治具200の構成部品として上下に自在に可動できる仕切り板25を設けることで、導電パターン付き絶縁基板28が凸状または凹状のいずれに曲がっても、半田付け工程で半導体チップ29の位置ズレをの発生を防止できる半導体装置の組立治具およびそれを用いた半導体装置の製造方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体チップを導電パターン付き絶縁基板に半田付けする場合に、半田付け時の熱ストレスにより導電パターン付き絶縁基板が曲がり、その曲がりによって半導体チップが位置ズレを起こすことを防止できる半導体装置の組立治具およびそれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図17は、半導体モジュールの模式断面図である。この半導体モジュールは、放熱ベース板61上に固化後の半田62を介して固着した導電パターン付き絶縁基板63(実装基板)と、導電パターン付き絶縁基板63上に固化後の半田64を介して固着した半導体チップ65と、半導体チップ65に接続するボンディングワイヤ66と、外部導出端子67が固着した樹脂ケース68と、樹脂ケース68内を充填する例えばゲル69などで構成される。図17では、導電パターン付き絶縁基板63のおもて側に形成される導電パターン63a(図18参照のこと)と裏面に形成される裏面導電膜63b(図18参照のこと)は図示されていない。
【0003】
図18は、半田付け工程における導電パターン付き絶縁基板の曲がりを説明する説明図であり、同図(a)は上方へ凸状に曲がった場合の断面図、同図(b)は上方へ凹状に曲がった断面図である。この図には半導体チップ65と、上方へ凹状に曲がった放熱ベース板61も示した。放熱ベース板61を上方へ凹状に曲げるのは、放熱ベース板61が図示しない冷却体に密着して固定できるようにするためであって、必要に応じて予め曲げておくことができるものである。。
【0004】
半導体モジュールを組み立てる場合、導電パターン付き絶縁基板63に半導体チップ65を半田付けする工程がある。この半田付け工程では、導電パターン付き絶縁基板63のおもて面に形成されている導電パターン63aと半導体チップ65が半田64で固着され、裏面に形成されている裏面導電膜63bと放熱ベース板61が半田62で固着される。導電パターン付き絶縁基板63のおもて面に形成される導電パターン63aと裏面に形成される裏面導電膜63bでは、導電膜全体の面積が異なる。また場合によっては導電膜の膜厚が異なる。そのため、絶縁基板63cに対する導電パターン63aと裏面導電膜63bでは熱膨張に差が生じる。導電パターン63aと裏面導電膜63bの形成の仕方によって、導電パターン付き絶縁基板63は、半田付け工程で、同図(a)のように上方に凸状に曲がったり、同図(b)のように上方に凹状に曲がったりする。
【0005】
図19は、半田付け工程で用いる従来の半導体装置の組立治具600の構成図であり、同図(a)は治具全体の上面図、同図(b)は同図(a)のX−X線で切断したときの要部断面図、同図(c)は第1治具の上面図、同図(d)は第2治具の上面図、同図(e)は同図(d)のY−Y線で切断した仕切り部の要部側断面図である。
【0006】
この組立治具600は、第1治具71およびこの第1治具71の第1開口部72に嵌合される第2治具73で構成される。第2治具73の第2開口部74の中央には仕切り部75が設けられ第2開口部74は2つに分割され開口部74a,74bとなる。
【0007】
仕切り部75および外枠73aは第2治具73の一部であり、仕切り部75の下面75aと外枠73aの下面73bは同一高さである。
図20〜図23は、図19の従来の半導体装置の組立治具600を用いた半田付け工程であり、工程順に示した要部製造工程断面図である。図には組立治具600の他に半導体チップ65、導電パターン付き絶縁基板63および放熱ベース板61も示されている。
【0008】
まず、放熱ベース板61上に第1治具71を配置し、第1治具71の第1開口部72に板半田76を配置し、その上に導電パターン付き絶縁基板63を載置する(図20)。
つぎに、第1治具71の第1開口部72に第2治具73を嵌合する。第2治具73の第2開口部74は仕切り部75により2つの開口部74a,74bに分割されている。この2個の開口部74a、74bに板半田76aを挿入し、板半田76a上に半導体チップ65を載置する(図21)。
【0009】
つぎに、リフロー炉に入れて、半田76,76aを溶融させ、冷却して溶融した半田を固化させる(固化した半田62,64)。この半田付け工程で導電パターン付き絶縁基板63は上方へ凸状に曲がる(図22)。
【0010】
つぎに、第1治具71、第2治具73を取り外して、放熱ベース板61と導電パターン付き絶縁基板63および半導体チップ65の半田付けが終了する(図23)。
図22の工程では、導電パターン付き絶縁基板63が凸状に曲がる場合を示している。この場合は、半導体チップ65の外周部は第2治具73の枠部73aと仕切り部75で位置決めされているので、半導体チップ65の位置ズレは発生しない。
【0011】
また、特許文献1に記載されている内容を以下に示す。用いられる位置決め治具において、板状本体の下面に各位置決め孔の一部を含む範囲の段差部を凹設することにより、板状本体の下面に、絶縁基板の外周縁寄りで、且つ絶縁基板側に突出する凸部を設けた。これにより、本位置決め治具1を凸湾曲状で反った状態の絶縁基板上に配置すると、板状本体の下面に設けた凸部が絶縁基板の外周縁寄りの上面に接触または近接するので、各位置決め孔内のはんだ箔及び発熱素子は、凸部により各位置決め孔内での移動が規制されて位置決めされ、所定位置に実装される。これにより、素子を、反った状態の絶縁基板上に位置ズレを起すことなく所定位置に実装することのできる素子の位置決め治具及び実装方法を提供できる。
【0012】
また、特許文献2に記載されている内容を以下に示す。半導体チップ位置決め治具ユニットにより半導体チップが位置決めされた後、半導体チップの接合が行われる。まず半田シートが溶融されることにより、半田用の隙間に溶融状態の半田が流れ込んで第2の治具が沈み込む。このときに、第2の治具の規制部が第1の治具の上面に当接して第2の治具の移動が止められる。次に、溶融された半田が冷却されて固まることにより、基板の上面に半田層が形成される。この半田層の厚みは、基板の上面から、半導体チップの接合前の半田シートの上面までであり、半田層が半導体チップと基板との接合強度を適度な大きさに確保しつつ、適度な熱伝導性を有する厚みである。このように、半導体チップ位置決め治具ユニットを用いることで、半導体チップの接合時に形成される半田層の厚みを適度な厚みに容易に設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−270262号公報
【特許文献2】特開2010−98153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、図24に示すように、導電パターン付き絶縁基板63が上方へ凹状に曲がった場合に、仕切り部75と導電パターン付き絶縁基板63の間には隙間80が発生し、そのため、半導体チップ65が重力により中央に移動するという位置ズレを発生させる。
【0015】
また、特許文献1、2では、半田付け工程で用いられる治具の構成要件に可動式の仕切り板(桟)を用いてチップの位置ずれを防止できることについての記載はない。
この発明の目的は、前記の課題を解決して、半導体チップを導電パターン付き絶縁基板に半田付けする工程において、半導体チップの位置ズレが発生しない半導体装置の組立治具およびそれを用いた半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するために、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明によれば、導電パターン付き絶縁基板に半導体チップを半田付けするときに用いられる半導体装置の組立治具において、組立治具が、導電パターン付き絶縁基板の位置決めに用いられる第1開口部を有する第1治具と、前記第1開口部に嵌合されて位置決めされ第2開口部を有する第2治具と、前記第2開口部を分割する仕切り板とを有していて、前記仕切り板の前記第2治具の上面から前記仕切り板の下端の間の距離が前記第2治具の上面と下面の間の距離より大きい構成とする。
【0017】
また、特許請求の範囲の請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記仕切り板は、該仕切り板の上部に前記第2治具の上面に係止する突起部を有し、前記仕切り板は前記第2治具に対して自在に上下に摺動する構成とする。
【0018】
また、特許請求の範囲の請求項3記載の発明によれば、請求項2に記載の発明において、前記第2治具の前記第2開口部に繋げて上下方向に溝を配置し、前記仕切り板の側端部を前記溝に挿着したものである構成とする。
【0019】
また、特許請求の範囲の請求項4に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明において、前記第1治具、第2治具および第3治具の材質が、カーボンであるとよい。
また、特許請求の範囲の請求項5に記載の発明によれば、前記請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の組立治具を用いた半導体装置の製造方法において、放熱ベース板上に第1治具を載置し、該第1治具の第1開口部に第1の半田を配置し、該第1の半田上に導電パターン付き絶縁基板を載置する工程と、前記第1治具の開口部に第2治具を嵌合し前記導電パターン付き絶縁基板上に該第2治具を載置する工程と、前記第2治具の開口部を前記第2治具に対して自在に上下に摺動する仕切り板で分割しさらに該仕切り板の下端を前記導電パターン付き絶縁基板上に接触させる工程と、前記仕切り板で分割された前記開口部のそれぞれに第2の半田を配置し前記導電パターン付き絶縁基板の導電パターン上に載置する工程と、前記仕切り板で分割された前記開口部のそれぞれに半導体チップを挿入し前記第2の半田上に前記半導体チップを載置する工程と、前記第1の半田および第2の半田を加熱し溶融し、その後冷却して該溶融した半田を固化し、前記導電パターン付き絶縁基板の前記導電パターンに前記半導体チップを半田接合する工程と、前記放熱ベース板および前記導電パターン付き絶縁基板から前記第1治具、第2治具および前記仕切り板を取り外す工程と、を含む導体装置の製造方法とする。
【0020】
また、特許請求の範囲の請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明において、前記の第1の半田が板半田もしくは半田ペーストであり、第2の半田が板半田であるとよい。
【発明の効果】
【0021】
この発明において、組立治具の構成品として上下に自在に可動できる仕切り板を設けることで、導電パターン付き絶縁基板が凸状または凹状のいずれに曲がっても、半田付け工程で半導体チップの位置ズレをの発生を防止できる半導体装置の組立治具を提供することができる。
【0022】
また、この組立治具を用いることで、位置ズレのない半導体チップの組立ができる半導体装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の第1実施例の半導体装置の組立治具100の構成図であり、(a)は治具全体の上面図、(b)は(a)のX−X線で切断したときの要部断面図、(c)は第1治具の上面図、(d)の第2治具の上面図、(e)は(d)のY−Y線で切断した仕切り部の要部側断面図である。
【図2】図1の組立治具100を用いて、導電パターン付き絶縁基板6に半導体チップ7を半田付けする状態を示す要部断面図である。
【図3】導電パターン付き絶縁基板6が凸状に曲がった場合の要部断面図である。
【図4】この発明の第2実施例の半導体装置の組立治具200の構成図であり、(a)は治具全体の上面図、(b)は第1治具の上面図、(c)の第2治具の上面図、(d)は第3治具である仕切り板の上面図である。
【図5】図4のX−X線で切断した要部断面図であり、(a)は治具全体の断面図、(b)は第1治具の断面図、(c)の第2治具の断面図、(d)は第3治具である仕切り板の断面図である。
【図6】図4の組立治具200を用いて、導電パターン付き絶縁基板28に半導体チップ29を半田付けする状態を示す要部断面図である。
【図7】導電パターン付き絶縁基板が凸状に曲がったときの要部断面図である。
【図8】この発明の第3実施例の半導体装置の要部製造工程断面図である。
【図9】図8に続く、この発明の第3実施例の半導体装置の要部製造工程断面図である。
【図10】図9に続く、この発明の第3実施例の半導体装置の要部製造工程断面図である。
【図11】図10に続く、この発明の第3実施例の半導体装置の要部製造工程断面図である。
【図12】図11に続く、この発明の第3実施例の半導体装置の要部製造工程断面図である。
【図13】図12に続く、この発明の第3実施例の半導体装置の要部製造工程断面図である。
【図14】この発明の第1変形例の半導体装置の組立治具300の構成図であり、(a)は全体の要部平面図、(b)は第2治具の要部平面図、(c)と(d)は2つの異なる第3治具である仕切り板の要部断面図である。
【図15】この発明の第2変形例の半導体装置の組立治具400の構成図であり、(a)は全体の要部平面図、(b)は第2治具の要部平面図、(c)と(d)は2つの異なる第3治具である仕切り板の要部断面図である。
【図16】この発明の第3変形例の半導体装置の組立治具500の構成図であり、(a)は全体の要部平面図、(b)は第2治具の要部平面図、(c)と(d)は2つの異なる形状の第3治具である仕切り板の要部断面図である。
【図17】半導体モジュールの模式断面図である。
【図18】半田付け工程における導電パターン付き絶縁基板の曲がりを説明する説明図であり、(a)は上方へ凸状に曲がった場合の断面図、(b)は上方へ凹状に曲がった断面図である。
【図19】半田付け工程で用いる従来の半導体装置の組立治具600の構成図であり、(a)は治具全体の上面図、(b)は(a)のX−X線で切断したときの要部断面図、(c)は第1治具の上面図、(d)は第2治具の上面図、(e)は(d)のY−Y線で切断した仕切り部の要部側断面図である。
【図20】図19の従来の半導体装置の組立治具600を用いた要部製造工程断面図である。
【図21】図20に続く、図19の従来の半導体装置の組立治具600を用いた要部製造工程断面図である。
【図22】図21に続く、図19の従来の半導体装置の組立治具600を用いた要部製造工程断面図である。
【図23】図22に続く、図19の従来の半導体装置の組立治具600を用いた要部製造工程断面図である。
【図24】導電パターン付き絶縁基板63が上方へ凹状に曲がった場合の半田付けしたときの要部断面図である。
【図25】図4における、仕切り板25が第2治具23に対して上下に自在に摺動して可動できる構造についての別の実施例。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施の形態を以下の実施例および変形例で説明する。
<実施例1>
図1は、この発明の第1実施例の半導体装置の組立治具100の構成図であり、同図(a)は治具全体の上面図、同図(b)は同図(a)のX−X線で切断したときの要部断面図、同図(c)は第1治具の上面図、同図(d)の第2治具の上面図、同図(e)は同図(d)のY−Y線で切断した仕切り部の要部側断面図である。なお、図1(b)において点線で示された部分は外枠3aのへりである。これは見易さのため点線で表したものである。このような表示は以下の図においても同様である。
【0025】
この組立治具100は、第1治具1およびこの第1治具1の第1開口部2に嵌合される第2治具3で構成される。第2治具3の第2開口部4の中央には仕切り部5が設けられ第2開口部4は2つに分割され開口部4a,4bとなる。この第2治具3は外枠3aと仕切り部5で構成される。この仕切り部5の底部は外枠3aからはみ出している。
【0026】
図2は、図1の組立治具100を用いて、導電パターン付き絶縁基板6に半導体チップ7を半田付けする状態を示す要部断面図である。この図は導電パターン付き絶縁基板6が凹状に曲がった場合の断面図であり、放熱ベース板8も合せて示した。導電パターン付き絶縁基板6と半導体チップ7は半田11aで固着する。また放熱ベース板8と導電パターン付き絶縁基板6は半田11bで固着する。
【0027】
第2治具3と導電パターン付き絶縁基板6の間に隙間9が発生しても、仕切り部5の底面5aが導電パターン付き絶縁基板6のおもて面6a(導電パターン6b)に接触するため、半導体チップ7は中央に移動することはなく、位置ズレは発生しない。
【0028】
図3は、導電パターン付き絶縁基板6が凸状に曲がった場合の要部断面図である。導電パターン付き絶縁基板6と半導体チップ7は半田11aで固着し、放熱ベース板8と導電パターン付き絶縁基板6は半田11bで固着する。
【0029】
しかし、図3に示すように、導電パターン付き絶縁基板6が凸状に曲がったときは、仕切り部5で第2治具3が持ち上げられ、第2治具3の外枠3aと導電パターン付き絶縁基板6の間に大きな隙間9aが出来て、半導体チップ7は矢印で示すように外側へ重力で位置ズレを起こす。
【0030】
また、半導体チップ7と導電パターン6aを固着する半田11が第2治具3の仕切り部5の底部に達して、仕切り部5の底部を半田11で挟み込むと、第2治具3を導電パターン付き絶縁基板6から外すときに、第2治具3を斜めに持ち上げたときに、仕切り部5に大きな応力が掛かり機械的欠陥10を発生する。これは導電パターン付き絶縁基板6が凸状に曲がった場合および凹状に曲がった場合のいずれでも発生する。
【0031】
この第1実施例の組立治具100の不具合および従来の組立治具600の不具合を同時に解消する方策について第2実施例で説明する。
<実施例2>
図4は、この発明の第2実施例の半導体装置の組立治具200の構成図であり、同図(a)は治具全体の上面図、同図(b)は第1治具の上面図、同図(c)の第2治具の上面図、同図(d)は第3治具である仕切り板の上面図である。
【0032】
図5は、図4のX−X線で切断した要部断面図であり、同図(a)は治具全体の断面図、同図(b)は第1治具の断面図、同図(c)の第2治具の断面図、同図(d)は第3治具である仕切り板の断面図である。
【0033】
この組立治具200は、第1治具21、第2治具23、第3治具である仕切り板25の3つの治具で構成される。第1治具21の第1開口部22に第2治具23が嵌合される。第2治具23の第2開口部24の中央に仕切り板25が配置され、第2開口部24を2つの開口部24a,24bに分割する。仕切り板25は第2治具23の第2開口部24に繋がって形成される溝26に沿って上下に自在に可動できる構造となっている。また、図5(d)に示すように、仕切り板25の上部には横方向に突起部27(引っ掛かり部)が形成され、この突起部27が第2治具23の外枠23a上面に接して係止し(引っ掛かって)、第2治具23から下方に抜けない構造になっている。この構造により、半田付けが終わった後、第2治具23を導電パターン付き絶縁基板28から取り外すときに、第2治具23と仕切り板25を同時に持ち上げて外せるので組立効率がよく、生産性が向上し、製造コストを低減することができる。
【0034】
図6は、図4の組立治具200を用いて、導電パターン付き絶縁基板28に半導体チップ29を半田付けする状態を示す要部断面図である。この図は導電パターン付き絶縁基板28が凹状に曲がった場合の断面図であり、放熱ベース板30も合せて示した。図中の33は放熱ベース板30と導電パターン付き絶縁基板28を構成する裏面導電膜34とを固着する固化した半田であり、35は導電パターン付き絶縁基板28を構成する絶縁基板である。
【0035】
第2治具23と導電パターン付き絶縁基板28の間に隙間31が発生しても、仕切り板25の下端25aが導電パターン付き絶縁基板28のおもて面28aに接触するため、半導体チップ29は中央に移動することはなく、位置ズレは発生しない。
【0036】
また、仕切り板25が半田32で挟み込まれたときには、まっすくに上方へ仕切り板25のみを引っ張り上げることで、仕切り板25に割れや欠けなどの機械的欠陥33を与えることなく仕切り板25を導電パターン付き絶縁基板28のおもて面28aから外すことができる。
【0037】
図7は、導電パターン付き絶縁基板が凸状に曲がったときの要部断面図である。この場合は、半導体チップ29は第2治具23の外枠23aと仕切り板25で押さえられるので半導体チップ29の位置ズレは発生しない。
【0038】
また、仕切り板25の下端25aと接触する導電パターン付き絶縁基板28が例えば凹状に曲がる場合には、図5(d)の点線で示すように仕切り板25に曲率をつけると広い範囲で仕切り板25と導電パターン付き絶縁基板28を接触させることが出来て、一層、半導体チップ29の位置ズレを防止することができる。
【0039】
前記の仕切り板25の上部に形成される突起部27は半導体チップ29の位置ズレには係らないので、特に設けない場合もある。
尚、前記の第1治具21、第2治具23および第3治具である仕切り板25の材質は、例えば、溶融半田に対して濡れ性が悪く(半田に密着し難い)、加工が容易なカーボンなどである。
【0040】
前記の第1治具21の第1開口部22と第2治具23との間の隙間T1は0.1mm程度である。また、溝26と仕切り板25の突起部27の間の隙間T2は0.1mm程度である。また突起部27を第2治具23の外枠27aに接触させたときの仕切り板25が第2治具23から出っ張る長さLは1mm程度である。
【0041】
また、突起部27の下端(第2治具23の上面に接する箇所)と仕切り板25の下端25aの間の距離は前記第2治具23の上面と下面の間の距離(第2治具の厚さ)より大きい。ここではL=1mm程度大きい。
【0042】
なお、この実施例においては、仕切り板25は第2治具23の第2開口部24に対して上下に自在に摺動して可動できる構造については、図4に示すような溝26を形成してその溝に仕切り板25を嵌める構成について説明したが、この摺動して稼動できる構造は、図25に示すように第2治具に仕切り板25が嵌合するような凸部51aを形成したものであっても良く、仕切り板25が第2治具23に対して自在に上下に摺動するような構造であればどのような構造であっても良い。図25は突起部27を省略して第2治具に仕切り板25が嵌合するような凸部51aの周辺のみを示したものであって、この場合でも突起部27を設けることができる。
<実施例3>
図8〜図13は、この発明の第3実施例の半導体装置の製造方法であり、工程順に示した要部製造工程断面図である。これは図4の組立治具200を用いた半導体装置の製造方法である。
【0043】
放熱ベース板30上に第1治具21を載置し、第1治具21の開口部22に板半田41を載置し、該板半田41上に導電パターン付き絶縁基板28を載置する(図8)。板半田41の代わりに半田ペーストを塗布する場合もある。
【0044】
つぎに、前記放熱ベース板30上に第1治具21を位置合わせして載置し、続いて、前記第1治具21の第1開口部22に第2治具23を嵌合する(図9)。
つぎに、前記第2治具23の第2開口部24と繋がる溝26に第3治具である仕切り板25を挿入し、前記第2開口部24を2つの開口部24a,24bに分割し、前記仕切り板25の下端25aを前記導電パターン付き絶縁基板28上に接触させる(図10)。
【0045】
つぎに、前記仕切り板25で分割された前記開口部24a,24bのそれぞれに板半田42を挿入し前記導電パターン付き絶縁基板28の導電パターン28b上に載置した後、この板半田42上に半導体チップ29を載置する(図11)。
【0046】
つぎに、前記板半田41,42を加熱し溶融し、その後冷却して該溶融した半田を固化させて(固化した半田32,33)、前記導電パターン付き絶縁基板28の前記導電パターン28bに前記半導体チップを半田32,33接合する(図12)。
【0047】
つぎに、前記導電パターン付き絶縁基板28から前記第1治具21、第2治具22および第3治具である仕切り板25を取り外す(図13)。
前記の図12の工程で、導電パターン付き絶縁基板28の凹状の曲がりが発生するが、この曲がりに追随して仕切り板25は重力により下方へ可動するので、仕切り板25の下端25aは常に導電パターン付き絶縁基板28のおもて面28aに接触している。そのため、凹状の曲がりで半導体チップ29が中央へ移動しようとしても仕切り板25で遮られて位置ズレを起こすことはない。
【0048】
また、導電パターン付き絶縁基板28が凸状に曲がる場合は、図7に示すように、半導体チップ29は中央から離れる方向に移動しようとするが、第2治具23の第2開口部24(24a,24b)で遮られて位置ズレを起こすことはない。この場合も仕切り板25は自在に上下に可動するため常に導電パターン付き絶縁基板28のおもて面28aに接触している。
【0049】
つまり、上下に自在に可動する仕切り板25と第2治具23は導電パターン付き絶縁基板28の曲がりに応じて常に接触しているため、半導体チップ29の位置ズレは発生しない。
【0050】
また、仕切り板25の底部が半田32で挟まれた場合に、垂直に仕切り板25を引き抜くことで仕切り板25に割れや欠けなどの機械的欠陥10が発生することはない。
尚、前記実施例1〜実施例3では、放熱ベース板8,30を用いないで組み立てる場合もある。その場合は、第1治具1,21は不要となり、第2治具3,23を導電パターン付き絶縁基板6,28に位置合わせする。
<変形例1>
図14は、この発明の第1変形例の半導体装置の組立治具300の構成図であり、同図(a)は全体の要部平面図、同図(b)は第2治具の要部平面図、同図(c)と同図(d)は2つの異なる第3治具である仕切り板の要部断面図である。図14は実施例2の変形例である。図中の43は第1治具である。
【0051】
図14の組立治具300と図4の組立治具100の違いは、第2治具44の第2開口部44aが左右で非対称に分割されており、第3治具である仕切り板45a、45bが異なる形状で2種類ある点である。この場合は半導体チップ29の配置が左右で異なる場合に適用する。この場合も図4の組立治具200で得られた効果が同様に得られる。
<変形例2>
図15は、この発明の第2変形例の半導体装置の組立治具400の構成図であり、同図(a)は全体の要部平面図、同図(b)は第2治具の要部平面図、同図(c)と同図(d)は2つの異なる第3治具である仕切り板の要部断面図である。図15は実施例2の変形例である。図中の46は第1治具である。
【0052】
図15の組立治具400と図14の組立治具300の違いは、第2治具47の第2開口部47aが4分割されている点である。仕切り板48,49は切り欠き50の入る位置が異なる。この場合は4個の半導体チップ29を配置する場合に適用する。この場合も図4の組立治具で得られた効果が同様に得られる。
<変形例3>
図16は、この発明の第3変形例の半導体装置の組立治具500の構成図であり、同図(a)は全体の要部平面図、同図(b)は第2治具の要部平面図、同図(c)と同図(d)は2つの異なる形状の第3治具である仕切り板の要部断面図である。図16は実施例2の変形例である。図中の51は第1治具である。
【0053】
図16の組立治具500と図15の組立治具400の違いは、第2治具52の第2開口部52aが4分割され、分割された開口部が左右で大きさが異なる点である。仕切り板53は1枚であり、仕切り板54は3枚である。この場合は4個の半導体チップ29を配置し、左右で半導体チップ29の大きさが異なる場合に適用する。この場合も図4の組立治具100で得られた効果が同様に得られる。
【符号の説明】
【0054】
1,21,43,46,51 第1治具
2,22 第1開口部
3,23,44,47,52 第2治具
4,24,47a,52a 第2開口部
4a,4b,24a,24b,44a 開口部
5,25,45,46,48,49,53,54 仕切り板
6,28 導電パターン付き絶縁基板
7,29 半導体チップ
8,30 放熱ベース板
9,9a,31 隙間
10 機械的欠陥
11,32,33 半田
23a 外枠
26 溝
25a 下端
27 突起部
28a おもて面
28b 導電パターン
34 裏面導電膜
35 絶縁基板
41,42 板半田
50 切り欠き
51a 凸部
100,200,300,400,500 組立治具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電パターン付き絶縁基板に半導体チップを半田付けするときに用いられる半導体装置の組立治具において、
組立治具が、導電パターン付き絶縁基板の位置決めに用いられる第1開口部を有する第1治具と、前記第1開口部に嵌合されて位置決めされ第2開口部を有する第2治具と、前記第2開口部を分割する仕切り板とを有していて、前記仕切り板の前記第2治具の上面から前記仕切り板の下端の間の距離が前記第2治具の上面と下面の間の距離より大きいことを特徴とする半導体装置の組立治具。
【請求項2】
前記仕切り板は、該仕切り板の上部に前記第2治具の上面に係止する突起部を有し、前記仕切り板は前記第2治具に対して自在に上下に摺動することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の組立治具。
【請求項3】
前記第2治具の前記第2開口部に繋げて上下方向に溝を配置し、前記仕切り板の側端部を前記溝に挿着したものであることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の組立治具。
【請求項4】
前記第1治具、第2治具および第3治具の材質が、カーボンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体装置の組立治具。
【請求項5】
前記請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の組立治具を用いた半導体装置の製造方法において、
放熱ベース板上に第1治具を載置し、該第1治具の第1開口部に第1の半田を配置し、該第1の半田上に導電パターン付き絶縁基板を載置する工程と、
前記第1治具の開口部に第2治具を嵌合し前記導電パターン付き絶縁基板上に該第2治具を載置する工程と、
前記第2治具の開口部を前記第2治具に対して自在に上下に摺動する仕切り板で分割しさらに該仕切り板の下端を前記導電パターン付き絶縁基板上に接触させる工程と、
前記仕切り板で分割された前記開口部のそれぞれに第2の半田を配置し前記導電パターン付き絶縁基板の導電パターン上に載置する工程と、
前記仕切り板で分割された前記開口部のそれぞれに半導体チップを挿入し前記第2の半田上に前記半導体チップを載置する工程と、
前記第1の半田および第2の半田を加熱し溶融し、その後冷却して該溶融した半田を固化し、前記導電パターン付き絶縁基板の前記導電パターンに前記半導体チップを半田接合する工程と、
前記放熱ベース板および前記導電パターン付き絶縁基板から前記第1治具、第2治具および前記仕切り板を取り外す工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記の第1の半田が板半田もしくは半田ペーストであり、第2の半田が板半田であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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