説明

半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置

【課題】電源線と接地線が短絡しているような不良素子による他素子への影響がないように、事前に前記不良素子電極に絶縁被膜を形成する工程において、絶縁被膜形成品質の向上と絶縁被膜形成工程の生産性を向上する。
【解決手段】本発明は、半導体素子の電極5に絶縁被膜を形成するとき、紫外線樹脂9を塗布するノズルに45°の傾斜を設けることにより、紫外線樹脂9を電極5の特定の領域に集中的に滴下でき、またノズル7に回転機構を備えることにより、電極5が半導体素子上のどの位置にあっても同じ条件の方向に紫外線樹脂9の滴下方向を決めることができ、ノズル7と合わせて、滴下条件を決定しやすくなり、絶縁被膜形成の品質を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウエハーの不良素子電極上に紫外線硬化性樹脂を用いて絶縁被膜を形成する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先ず、絶縁被膜形成を行う半導体素子電極回りの関係を図1から図3を用いて説明する。図1のウエハーと半導体素子の配列説明図に示すようにウエハー1の半導体素子領域2内に複数の半導体素子を配置している。また、図2の半導体素子とスクライブレーンの関係を説明する図に示すようにウエハー状態で行う全ての検査終了後に半導体素子3を個片状態にするための切断代であるスクライブレーン4が半導体素子3の周辺に設けてある。更に、図3の素子と電極の配列を説明する図に示すように半導体素子3内に絶縁保護膜(回路部)6を囲うように絶縁被膜形成を行う電極5が配置されている。
【0003】
電極5表面に絶縁被膜形成を行うための従来技術は、半導体ウエハーを所定の位置に位置決めするX、Y、Zテーブルと、前記半導体ウエハー面に対して垂直に設けられた樹脂塗布用ノズル及び制御部より構成された装置において、前記X、Y、Zテーブルに載置された半導体ウエハー内の不良素子電極を所定の場所に位置決め後、X、Y、Zテーブルを上昇させ図4の従来の塗布状態を説明する図で示すようにノズル7先端を電極5表面に接触させ紫外線硬化性樹脂9を所定量滴下した後X、Y、Zテーブルを下降させて1回の処理を終了させる。この動作を不良素子の該当電極全てに対して行うことにより、最初の不良素子に対する絶縁被膜形成のための樹脂塗布処理が終わる。以上の動作をウエハー内の全不良素子に対して行うことにより1ウエハーの不良素子に対する絶縁被膜形成のための樹脂塗布処理が終了する。その後、ウエハー全体に紫外線を照射し樹脂を硬化させることにより絶縁被膜形成が完了する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の技術には次のような問題がある。すなわち半導体素子の微細化にともない、電極面積も小さくなってきているが、一方樹脂を滴下するノズルの形状は滴下性からこれ以上小型化することが困難になってきており、結果として電極寸法に対するノズル径の許容差がなくなってきている。このため、図4の従来の塗布状態を説明する図で示されるようにノズル7先端が電極5表面に接触した時点で紫外線硬化性樹脂9が電極5表面からはみ出た状態で塗布され図4のダム8表面にも紫外線硬化性樹脂9が滴下されてしまい、その後浸透性のためスクライブレーン4を越えて隣接する素子にまで紫外線硬化性樹脂9が浸透してしまい良品素子を不良にしてしまうことになる。また、絶縁被膜層の厚みは検査時の測定端子の接触圧に耐えるために3μm〜5μmが必要とされるが、塗布後の紫外線硬化性樹脂9が電極5の中心部側を形成する図4の絶縁保護膜(回路部)6に時間の経過とともに浸透していき、最終的に電極5表面の絶縁被膜層の厚みは1μm以下になり検査時の測定端子が絶縁被膜を突き破り電極5と導通してしまう課題が発生する。さらに、前記のように半導体ウエハーに対する絶縁被膜形成のための樹脂塗布工程は、1ウエハー内の不良素子電極全てに塗布後に、紫外線照射による硬化を行うため、1ウエハーの処理時間が長くなると、樹脂の絶縁保護膜への浸透という特殊性のため1ウエハーでみた場合、最初に塗布した部分の絶縁被膜層の厚み寸法が薄くなり終わり部分の絶縁被膜層厚み寸法が厚くなる1ウエハー内のばらつき現象が発生する。このため、従来技術では、図5の従来の樹脂塗布プロセスを説明する図で示すようにウエハーを絶縁被膜層厚み寸法がばらつかない10分程度の時間毎で絶縁被膜形成処理を複数ブロックに分け、最初のブロックでステップS01からステップS03の処理を繰り返して不良素子の電極に樹脂を塗布後、ステップS04の紫外線硬化処理で絶縁被膜形成を完了させる。以上の処理を全ブロックに対して行うことにより1ウエハー当たりの絶縁被膜の厚みを一定水準に確保している。したがって、本発明では、1ウエハー全体の不良素子に対する絶縁被膜品質を確保するために、微細な電極上の限られた領域に樹脂を滴下する方法と、絶縁保護膜の浸透性による電極上の樹脂が時間経過とともに吸収され膜厚が減少しにくくすることが課題となる。また、ブロック化による紫外線硬化処理による絶縁被膜形成工程の生産性低下対策も課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の半導体製造装置、製造方法では樹脂塗布用のノズルを半導体ウエハー面に対して45°の角度に設定し、ノズルの先端の一部が電極に接触した状態で樹脂を滴下するようにすることで微細電極への樹脂塗布を実現した。また、図3の素子と電極の配列を説明する図のように、電極5は素子の四囲に沿って配置されているため、前記45°に傾斜した固定ノズルを使用した場合、辺ごとにノズル傾斜とスクライブレーン4や図3の絶縁保護膜(回路部)6との位置関係が変わってしまい、滴下条件を一定に決められない。このため、本発明では、ノズルに回転装置を設けて、ノズル傾斜方向と電極5周囲のスクライブレーン4や絶縁保護膜(回路部)6との関係が同じになるようにして、一定の条件で樹脂が滴下できるようにすることで樹脂塗布条件を大幅に広げることが可能となった。さらに膜厚品質と絶縁被膜形成工程の生産性を向上させるために、高粘度の樹脂を導入して、樹脂の絶縁保護膜への浸透を遅らして、ウエハー内の不良素子全てに樹脂塗布後、ホットプレートによりウエハー全体を加熱することにより樹脂を軟化させて電極上に樹脂を均一の厚みに広げたあと、紫外線を照射して絶縁被膜を形成するようにした。この方法により1ウエハーの全不良素子の該当電極に樹脂を塗布後、紫外線硬化を1回実施するだけで絶縁被膜を形成することが出来るので生産性向上が可能となった。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように、本発明の半導体製造方法、製造装置をとれば次のような効果がある。すなわち、本発明のように45°に傾けた塗布ノズルを使うことで、微細な電極に対しても均質な絶縁被膜を形成する樹脂塗布を行うことができる。また、ノズルの方向を変える回転機構を具備することにより1回の樹脂量が増やせ、絶縁保護膜への浸透を遅らせることができる。さらには、高粘度の樹脂を使用し、ホットプレートによる一括樹脂軟化・硬化プロセスを採用することにより、均質な絶縁被膜を形成でき、また紫外線硬化処理が1回で済み生産性を大幅に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図6のように本発明の塗布方法は電極5表面に対してノズル7の角度を45°に傾斜させノズル7の方向を素子の中心方向に設定する。この状態でX、Y、Zテーブルを上昇させて電極5表面にノズル7先端の一部を接触させたまま、紫外線硬化性樹脂9を滴下した後、X、Y、Zテーブルを下降させて1回分の樹脂塗布を完了させる。このような樹脂塗布方法を採ると、紫外線硬化性樹脂9の滴下状態が従来方式に比べて電極5表面の限られた領域に集中的に滴下されるので、その後電極5表面を緩やかに広がって電極5のスクライブレーン4側に設けられたダム8で紫外線硬化性樹脂9が堰きとめられスクライブレーン4まで浸透することが防止できる。さらにノズル7方向を素子の中心方向にすることで、紫外線硬化性樹脂9の滴下時にノズル7と電極5表面との接触部分から前方に多く吐出されることになり、スクライブレーン4に溢れずに、従来方式に比べて4倍の紫外線硬化性樹脂9を1回で塗布することが可能となった。その結果、絶縁保護膜への樹脂吸収状態が早く飽和状態になるため時間が経過しても電極5表面の絶縁被膜厚が薄くなることがなくなり、ブロック化処理を行っていた紫外線硬化を無くしても、電極5表面に必要絶縁被膜厚が確保出来るようになった。次に、前記ノズル7方向を素子中心部に向けるための方法を図7の本発明のノズル方向を変える装置の説明を使って説明していく。本装置はデータ部10と制御部11と回転機構12と、樹脂供給部13、XYZテーブル14及び、ノズル7より構成され、半導体素子の位置データを記憶しているデータ部10より、順次位置データを制御部11に読み込み、データに従って制御部11が回転機構12を駆動しノズル7を所定の方向に回転する。こうすることにより、電極がどの位置にあっても、ノズル7からの紫外線樹脂9の滴下方向が素子中心方向に保つことが出来るので、前述のように1回の樹脂量をどの電極位置でも増やすことが可能となった。
【0008】
さらに、粘度1000cpsの高粘度タイプの紫外線樹脂9を使った塗布方法を図8、図9を使って説明する。先ず、図8の本発明の樹脂塗布プロセスを説明する図で、ステップS11からS13までの処理を繰り返してウエハー内の全不良素子の電極に紫外線樹脂9を塗布する、そのときの紫外線樹脂9の状態は図9の本発明の塗布された紫外線樹脂9の状態の変化を説明する図のC11のように高粘度樹脂のため電極5の表面全体には広がらず一点に集中した状態になる。次のステップ図8のS14でホットプレートにより40℃でウエハー裏面全体を2分程度の熱を加えることにより紫外線樹脂9が軟化して粘度が100cps程度となり図9のC12のように電極5表面に均一に紫外線樹脂9が広がる。最後に図8のステップS15の処理で紫外線を5秒間照射することにより、図9のC13のように紫外線樹脂9が硬化して絶縁被膜が形成される。この方法をとることにより、紫外線樹脂9の電極5表面への広がりと紫外線硬化のプロセスがウエハー全体で一括処理となるため絶縁被膜厚が均一になる効果と、ウエハーを加熱するまでは紫外線樹脂9が電極5表面に広がらず、絶縁保護膜への浸透もしないので、紫外線硬化処理をブロック化する必要がなくなった。
【産業上の利用可能性】
【0009】
半導体素子の検査効率を向上させ、電子機器の信頼性向上、コスト削減を実現する手段として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ウエハーと半導体素子の配列説明図
【図2】半導体素子とスクライブレーンの関係を説明する図
【図3】素子と電極の配列を説明する図
【図4】従来の塗布状態を説明する図
【図5】従来の樹脂塗布プロセスを説明する図
【図6】本発明の塗布方法を説明する図
【図7】本発明のノズルの方向を変える装置を説明する図
【図8】本発明の樹脂塗布プロセスを説明する図
【図9】本発明の塗布された樹脂の状態の変化を説明する図
【符号の説明】
【0011】
1 ウエハー
2 半導体素子領域
3 半導体素子
4 スクライブレーン
5 電極
6 絶縁保護膜(回路部)
7 ノズル
8 ダム
9 紫外線硬化性樹脂
10 データ部
11 制御部
12 回転機構
13 樹脂供給部
14 XYZテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハーに形成された複数の半導体集積回路素子の各検査用電極に電圧を印加して、前記複数の半導体集積回路素子の電気特性をウエハー状態で一括して検査する場合に、電源線と接地線が短絡しているような不良素子による他素子への影響がないように、事前に前記不良素子電極に絶縁被膜を形成する工程において、絶縁被膜を形成するための樹脂塗布ノズルを電極面に対して45°傾けて樹脂塗布を行うことを特徴とした半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記45°に傾けた樹脂塗布ノズルの方向を変えることが出来る機構を具備した請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁被膜形成時に樹脂塗布後、紫外線による硬化前に、ウエハー加熱用のホットプレートで、樹脂を一度軟化させた後に、紫外線硬化を行う工程を特徴とした請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の半導体装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−191155(P2006−191155A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98867(P2006−98867)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【分割の表示】特願2002−110178(P2002−110178)の分割
【原出願日】平成14年4月12日(2002.4.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】