説明

半導体装置の製造方法

【課題】 半導体ウェハ外周部近傍にめっき膜を形成せず、かつ、パーティクルやシール不良などの不具合の発生を防止することができる半導体装置の製造方法を実現する。
【解決手段】 SOI基板10の素子形成基板10aの表面に、フォトレジストにより、素子形成領域10fを囲む遮断部材13を突出形成する。これにより、めっき液Lの素子形成基板10aの面方向への移動を遮断し、遮断部材13に囲まれた領域にのみめっき液Lを接触させて電気めっきを行うことができるため、素子形成領域10fにのみCuめっき膜Mを形成することができる。遮断部材13は、素子形成基板10a上に形成されているため、めっき装置20からSOI基板10を取り外すときに、遮断部材13に付着したCuめっき膜Mがめっき槽21に落下するおそれがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体素子が形成された素子形成基板を備えた半導体ウェハについて、当該素子形成基板表面にめっき液を接触させて電気めっきを行うめっき工程を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体素子が形成された素子形成基板を備えた半導体ウェハに、素子間を電気的に接続する配線などを行うためのめっき膜を形成する方法として、カップ式めっき装置を用いる電気めっき方法が知られている。
カップ式めっき装置は、カップ状に形成されためっき槽上部に半導体ウェハを載置し、めっき槽の下方からめっき液を供給して、半導体ウェハのめっき面にめっき液を接触させながら電気めっき処理を行う装置である。
ここで、半導体ウェハの外周部近傍は、半導体素子が形成されないため、形状精度が高く形成されていないため、めっき膜がきちんと成膜されずに、めっき膜の剥離などの不良が生じることがある。
特に、半導体ウェハとしてSOI(Silicon on Insulator)基板を用いた場合には、素子形成基板の端部にテラス部と呼ばれる段差が存在することがあり、上述した傾向が特に顕著に表れることがある。
そのため、半導体ウェハの外周部近傍にめっきされないようにするために、例えば、特許文献1では、半導体ウェハにリング状のシール部材を接触させて、半導体ウェハの端面にめっき液が接触しないようにシールする技術が開示されている。
【特許文献1】特開平5−247692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の技術では、シール部材にめっき膜が付着し、めっき処理が終了した後に半導体ウェハとシール部材とを離す際に、シール部材に付着しためっき膜がめっき槽に落下してパーティクルの原因となったり、シール部に残留して、次に半導体ウェハにめっき処理を行う場合にシール不良が生じたりするという問題があった。これにより、歩留まりの低下や設備メンテ頻度の増大という問題も生じる。
【0004】
そこで、本発明は、半導体ウェハ外周部近傍にめっき膜を形成せず、かつ、パーティクルやシール不良などの不具合の発生を防止することができる半導体装置の製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、半導体素子が形成された素子形成基板を備えた半導体ウェハについて、当該素子形成基板表面にめっき液を接触させて電気めっきを行うめっき工程を有する半導体装置の製造方法において、前記めっき工程は、前記半導体素子が形成された素子形成領域を囲んで突出形成され、前記めっき液の前記素子形成基板の面方向への移動を遮断する遮断部材を備えた前記半導体ウェハを用意し、前記遮断部材に囲まれた領域にのみ前記めっき液を接触させて電気めっきを行う、という技術的手段を用いる。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、半導体素子が形成された素子形成領域を囲んで突出形成された遮断部材により、めっき液の素子形成基板の面方向への移動を遮断し、遮断部材に囲まれた領域にのみめっき液を接触させて電気めっきを行うため、素子形成領域以外にめっきされないようにすることができる。
また、遮断部材は、半導体ウェハ上に形成されているため、めっき装置から半導体ウェハを取り外すときに、遮断部材に付着しためっきがめっき槽に落下したり、シール不良が生じたりするおそれがない。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、前記半導体ウェハは、前記素子形成基板と支持基板とを埋め込み絶縁膜を挟んで貼り合わせて形成されるSOI(Silicon on Insulator)基板である、という技術的手段を用いる。
【0008】
請求項2に記載の発明のように、本発明は、SOI基板に好適に適用することができる。SOI基板は、素子形成基板の端部にテラス部と呼ばれる段差が存在するため、めっき不良が発生しやすいが、本発明を適用することにより、遮断部材によりテラス部にめっきしないようにすることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、前記遮断部材は、フォトレジストにより形成されている、という技術的手段を用いる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、遮断部材は、フォトレジストにより形成されているため、フォトリソグラフィ法により所望の位置に正確かつ容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明に係る半導体装置の製造方法について、図を参照して説明する。ここでは、半導体素子が形成されているSOI基板に、各半導体素子を電気的に接続するための金属配線を、カップ式めっき装置を用いた電気めっき法により形成する場合を例に説明する。
図1は、本実施形態で用いる半導体ウェハの構造を示す説明図である。図1(A)は、素子形成基板側から見た平面図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A矢視断面説明図である。図2は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法におけるめっき工程の説明図である。図2(A)は、SOI基板が載置されためっき装置の断面説明図であり、図2(B)は、図2(A)の破線部の拡大説明図である。図3は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法におけるめっき工程の説明図である。図4及び図5は、遮蔽部材の変更例を示す説明図である。
なお、各図では、説明のために一部を拡大して誇張して示している。
【0012】
まず、図1(A)及び(B)に示すように、MOSFETなどの半導体素子(図示略)が形成されたSOI基板10を用意する。SOI基板10は、半導体素子が形成された素子形成基板10aと、Siなどからなる支持基板10bとが、埋め込み酸化膜10cを介して接着されて形成されている。素子形成基板10aの表面には、Cuの拡散を防止するバリアメタル膜11と、電気めっきの電極として作用するCuシード膜12とが積層形成されている。
本実施形態で用いるSOI基板10の外周部には、素子形成基板10aに対して支持基板10bが外側に張り出したテラス部10dと、素子形成基板10aの端部近傍からテラス部10dにかけて傾斜した傾斜部10eと、が形成されている。
【0013】
次に、素子形成基板10aの表面に、フォトレジストを用いてフォトリソグラフィ法により、半導体素子が形成されている素子形成領域10fを囲む遮断部材13を突出形成する。遮断部材13は、フォトレジストにより形成されているため、フォトリソグラフィ法により所望の位置に正確かつ容易に形成することができる。
ここで、遮断部材13は、少なくとも素子形成領域10fと傾斜部10eとの間には存在するように、かつ、後に形成するめっき膜M(図3)の厚さよりも高くなるように形成する。これにより、素子形成領域10fとSOI基板10の外周部とが遮断部材13により区画される。
本実施形態では、遮断部材13は、傾斜部10eの全面を覆って、一部がテラス部10dにかかるように形成されている。
【0014】
続いて、図2(A)及び(B)に示すように、カップ式のめっき装置20の支持部23に、素子形成基板10aを下にしてSOI基板10を載置する。
めっき装置20は、めっき液Lを貯留するカップ状のめっき槽21と、めっき槽21の底部中央からめっき液Lを供給する供給部22と、めっき槽21の上部に設けられ、SOI基板10を外周部において支持する支持部23と、支持部23に設けられ、SOI基板10にめっき電流を供給するカソード電極24と、支持部23の下方に形成され、めっき液Lをめっき槽21から排出するための排出部25と、めっき槽21内部に素子形成基板10aと対向する位置に配置されたアノード電極26と、を備えている。
【0015】
支持部23にSOI基板10を載置すると、SOI基板10は遮断部材13より外側で支持されるとともに、カソード電極24がCuシード膜12に接触する。つまり、カソード電極24は遮断部材13よりも外側の領域においてCuシード膜12に接触し、素子形成基板10aにめっき電流を供給することができるようになる。
【0016】
続いて、供給部22よりめっき槽21内にめっき液Lを供給する。本実施形態では、めっき液Lには硫酸銅溶液を用いた。
めっき液Lはめっき槽21内を上昇して、まず、素子形成基板10aの素子形成領域10fに接触し、続いて素子形成基板10aの面方向に沿って外周方向に向かって流れ、素子形成領域10fの全面と接触し、排出部25からめっき槽21の外部に排出される。ここで、素子形成基板10aの外周部には遮断部材13が形成されているので、図2(B)に示すように、遮断部材13よりも外側の領域にめっき液Lが接触することを防ぐことができる。
【0017】
この状態で、カソード電極24からCuシード膜12にめっき電流を供給し、アノード電極26との間で通電することにより、電気めっきを行うことができる。これにより、遮断部材13よりも内側の素子形成領域10fにのみCuめっき膜Mが形成される。
Cuめっき膜Mは下方に成長するが、遮断部材13は形成するめっき膜Mの厚さよりも高くなるように形成されているため、Cuめっき膜Mを形成した後も遮断部材13よりも外側の領域にめっき液Lが接触することはない。
【0018】
続いて、図3(A)に示すように、SOI基板10にめっき処理を施した後に、遮断部材13を除去することにより、素子形成領域10fにのみCuめっき膜Mを形成した構造を得ることができる。ここで、Cuめっき膜Mの端部は、遮断部材13に向かってせり上がった形状をしている。
【0019】
そして、図3(B)に示すように、Cuシード膜12とバリアメタル膜11とをエッチングにより除去した後に、所定の形状にパターニングすることにより、所望のCu配線14を形成することができる。このとき、Cuめっき膜Mの端部のせり上がった部分もエッチングされて除去される。
【0020】
以上のように、遮断部材13は、素子形成基板10a上に形成されているため、めっき装置20からSOI基板10を取り外すときに、遮断部材13に付着したCuめっき膜Mがめっき槽21に落下するおそれがない。また、SOI基板10毎に遮断部材13が形成されているため、従来のシール部材を繰り返し使用した場合のように、シール不良が生じるおそれもない。
【0021】
(変更例)
遮断部材13は種々の形状に形成することができる。例えば、図4(A)に示すように、素子形成領域10fにパターン形成してもよい。これによれば、めっき処理を行うだけで、エッチングを行うことなく、Cuを所望のパターンで成膜することができる。
また、本実施形態では、遮断部材13は、傾斜部10eの全面を覆って、一部がテラス部10dにかかるように形成されているが、図4(B)に示すように、素子形成領域10fにのみ形成してもよい。これによれば、遮断部材13を段差部に形成するよりも均一に形成することができる。
【0022】
図5(A)及び(B)に示すように、遮断部材13の先端部をR状に形成することもできる。これによれば、めっき液Lが遮断部材13に遮断された後の流れをスムースにすることができる。
図5(C)に示すように、先端部を断面三角形状に形成しても、図5(A)及び(B)に示す構成と同様の効果が得られる。
【0023】
[最良の形態の効果]
(1)素子形成領域10fを囲んで突出形成された遮断部材13により、めっき液Lの素子形成基板10aの面方向への移動を遮断し、遮断部材13に囲まれた領域にのみめっき液Lを接触させて電気めっきを行うため、素子形成領域10fにのみCuめっき膜Mを形成することができる。
【0024】
(2)遮断部材13は、素子形成基板10a上に形成されているため、めっき装置20からSOI基板10を取り外すときに、遮断部材13に付着したCuめっき膜Mがめっき槽21に落下するおそれがない。また、SOI基板10毎に遮断部材13が形成されているため、従来のシール部材を繰り返し使用した場合のように、シール不良が生じるおそれもない。
【0025】
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態では、遮断部材13はフォトレジストを用いて形成したが、めっき液Lを遮断することができれば、他の材料を用いて形成してもよい。例えば、ポリイミドを用いることができる。ポリイミドはフォトレジストに比べて堅牢であるため、めっき液Lの流れによる力で遮断部材13が破壊されるおそれがない。
【0026】
(2)本発明は、SOI基板10以外の基板、例えば、シリコンのみで構成された半導体ウェハにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態で用いる半導体ウェハの構造を示す説明図である。図1(A)は、素子形成基板側から見た平面図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A矢視断面説明図である。
【図2】本実施形態に係る半導体装置の製造方法におけるめっき工程の説明図である。図2(A)は、SOI基板が載置されためっき装置の断面説明図であり、図2(B)は、図2(A)の破線部の拡大説明図である。
【図3】本実施形態に係る半導体装置の製造方法におけるめっき工程の説明図である。
【図4】遮蔽部材の変更例を示す説明図である。
【図5】遮蔽部材の変更例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
10 SOI基板
10a 素子形成基板
10d テラス部
10e 傾斜部
10f 素子形成領域
12 Cuシード膜
13 遮蔽部材
20 めっき装置
21 めっき槽
23 支持部
24 カソード電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成された素子形成基板を備えた半導体ウェハについて、当該素子形成基板表面にめっき液を接触させて電気めっきを行うめっき工程を有する半導体装置の製造方法において、
前記めっき工程は、前記半導体素子が形成された素子形成領域を囲んで突出形成され、前記めっき液の前記素子形成基板の面方向への移動を遮断する遮断部材を備えた前記半導体ウェハを用意し、前記遮断部材に囲まれた領域にのみ前記めっき液を接触させて電気めっきを行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体ウェハは、前記素子形成基板と支持基板とを埋め込み絶縁膜を挟んで貼り合わせて形成されるSOI(Silicon on Insulator)基板であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記遮断部材は、フォトレジストにより形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−283121(P2008−283121A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128026(P2007−128026)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】