説明

半導体装置及びその製造方法、電子装置及びその製造方法

【課題】半導体装置及び電子装置の微細接合部の接合信頼性を飛躍的に向上させる。
【解決手段】はんだ接合される電極パッドまたはリード部以外は耐熱性有機絶縁保護膜で覆われているチップ、ウエハー、インターポーザー(配線基板)、または実装基板の露出している全ての微小狭ピッチで電極パッドまたはリードの清浄化された金属表面に錫またははんだ粒子を少なくとも1個以上散在させた上で、前記粒子を前記パッドまたはリード金属表面に接着させる第1のプロセスと、前記パッドまたはリード金属表面を液温180〜300℃の油系溶媒に溶解しかつ分子構造的に安定かつ少なくともカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物1〜95質量%を含有する溶液、次いで酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度の溶融はんだ液、再び前記有機化合物溶液に接触させる第2のプロセスを経てバンプまたははんだ皮膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造技術、ならびに電子装置及びその製造方法に関し、特に半導体装置の狭ピッチで並列する多数の電極パッドにそれぞれ微小なはんだバンプを形成する技術と、同様に実装基板の狭ピッチで並列する多数の電極パッドまたはリード部金属表面に微小なはんだ皮膜を被覆する技術、また、多数の電極パッドが狭ピッチで並列した半導体チップを多数個並列的に保有する半導体ウエハーの全てのチップ内に存在する全ての電極パッドまたはリードにそれぞれ微小なはんだバンプを形成した半導体装置及びその製造技術、更にはこれらの半導体装置とその他の電子部品を実装基板にはんだ接合してなる電子装置及びその製造技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、とりわけ半導体チップや半導体装置はますます高集積高密度小型軽量化し品質的に高信頼性が要求されている。これに相応して、抵抗器、コンデンサー、コネクターなどの電子部品も小型高密度化され、これらを実装基板に搭載しはんだ接合された電子装置もますます小型高密度化されている。
半導体装置の中でも、特にLSI,BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)の半導体チップやインターポーザー(配線基板)は小型微小化に伴いバンプやはんだ接合部も狭ピッチ微細化が進み、かつますます高信頼性が要求されている。とりわけ半導体チップならびにそれを搭載するインターポーザー間の微小はんだ接合品質には極めて厳しい信頼性が要求されている。
このため、錫またははんだ接合に使用する錫またははんだ合金側にも接合強度、とりわけ半導体チップ、およびその他の電子部品の電極パッドまたはリードの接合面積および隣接ピッチの微小狭小化に伴う錫またははんだ微小接合部の高信頼性が要求されている。
【0003】
また一方では、近年、環境汚染ならびに人体に対する有害性の問題で鉛の使用禁止または規制化が進み、特に電子部品分野においては鉛を含有しない所謂「鉛フリーはんだ合金」がはんだ付け加工に広く使用されており、特に、錫・銀・銅系はんだ合金、及びそれにアンチモンを添加したはんだ合金(特許文献1)、錫・銀・銅系はんだ合金にニッケルまたはゲルマニウムなどを添加したはんだ合金(特許文献2)などが提案され、実用化されている。このほかにも、錫・亜鉛・ニッケル系はんだ合金及び更に銀、銅、ビスマスなどを添加したはんだ合金(特許文献3)など数多くの各種はんだ合金が提案されている。
【0004】
一般に、CSP用チップの微小な電極パッドに微小なバンプを形成させるには、バンプを形成させる電極パッド部を除いてそれ以外の表面全てに保護膜を塗布し被覆保護した後、開口している該電極パッド金属表面(一般に下地Niめっきの上にAuフラッシュめっきが施されている)に数10μmの厚さまで金バンプまたははんだバンプを電鋳めっきして使用されている。しかしながら、この場合、金は高価なこと、電鋳めっきは長時間かかり、管理も複雑で効率が悪く、原価が高い難点がある。
また、はんだバンプの大きさおよび隣接ピッチは、CSPを実装基板に搭載してはんだ接合する際の現行はんだの物性上および接合技術上の制約から、現行のはんだを溶融して使用すると、はんだ接合部に必要以上の容量ではんだが盛り上がる所謂「オーバーボリューム」(ツノ、ツララ)や隣接リードへブリッジしてリーク不良を生じやすい難点があるから、ハンダボールまたは溶融はんだ浸漬により形成されるはんだバンプ径は高々80μm程度、隣接ピッチとしては200μm程度の微小狭小化が現状では限界といわれ、例えば、バンプ径が80μm以下、隣接ピッチが150μm以下の微小微細はんだバンプは前記電鋳めっきバンプ以外は未だに完全には実用化されていない。
【0005】
一方、実装基板のパッドまたはリード表面に半導体装置、またはそれ以外の電子部品、例えば、コンデンサー、抵抗器、コネクターなどをはんだ接合し実装する方法としては、実装基板のはんだ接合するパッドまたはリードを除いてそれ以外の表面全てを保護膜で被覆した後、前記実装基板のパッドまたはリードに相当する個所のみ開口したメタルマスクを実装基板に重ねてローラーまたはスキージーで実装基板のパッドまたはリードに所定の厚さのソルダーペーストを印刷塗布し、その後、メタルマスクを外して自動表面実装機(マウンター)で実装基板上の所定のパッドまたはリード位置に所定の電子部品を自動搭載し、ソルダーペーストが融解してはんだ付けが出来る温度に加熱したリフロー炉を通過させることにより、各種部品を実装基板にはんだ接合して半導体装置または電子装置を生産している。
しかしながら、現行の錫またははんだ合金には一般的に数百ppmの酸化金属が存在するために溶融時の粘性が比較的高く、ぬれ性は比較的低いため、特にパッドまたはリード幅が80μ以下でピッチが150μm以下の微小微細な実装基板に半導体装置やその他の電子部品をはんだ接合する際には、譬え、適切なフラックスを使用しても接合部に必要以上の容量ではんだが盛り上がる所謂「オーバーボリューム」(ツノ、ツララ)や隣接リードへブリッジしてリーク不良を生じやすい難点があるばかりか、はんだ未着や、フラックスまたはソルダーペーストなどに含まれている溶剤や樹脂分がはんだ接合時に気化してマクロボイドを生ずる難点もある(特許文献4)。また、接合はんだの物理的機械的特性の1つである伸びが小さいために電子回路として半導体装置や電子装置に組み込まれた後、通電on−offを繰返すと、ヒートサイクルによりはんだ接合部が疲労破断して導通不良など生じやすく、微小化した電子機器の接続信頼性を損なうことが広く知られている。(特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開平5−50286(特許3027441)
【特許文献2】 特開平11−77366(特許3296289)
【特許文献3】 特開平9−94688(特許3299091)
【特許文献4】 特開2001−237536(特許32216709)
【特許文献5】 特開2003−334498(特許第4153723号)
【特許文献6】 特開2002−233994(特許第4203281号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来より実用されている電子部品用錫またははんだ合金および接合技術上の上記難点、即ち、「オーバーボリューム」(ツノ、ツララ)や隣接リードへブリッジオーバーによるリーク不良問題を排除し、溶融はんだを使用した従来技術では不可能であったバンプ径、またはリード幅が80μm以下で隣接ピッチが150μm以下の狭ピッチ微小微細チップとインターポーザーの溶融はんだ使用による直接はんだ接合を可能して回路を形成させた半導体装置とその製造技術、同様に幅が80μm以下で隣接ピッチが150μm以下の狭ピッチのパッドまたはリード金属表面に溶融はんだで直接はんだ被覆した実装基板上の所定の位置に半導体装置やそれ以外の電子部品を溶融はんだで直接はんだ接合して表面実装した電子装置およびその製造技術を提供することにある。
これにより、従来の高価なメタルマスクやソルダーペーストを使用せず、簡便で利便性に富み経済的かつ効率的で品質的に信頼性の高い半導体装置及びその製造技術、ならびに電子装置とその製造技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体装置およびその製造方法、ならびに電子装置及びその製造方法は、はんだ接合されるパッドまたはリード以外は保護膜で覆われているチップ、そのチップを多数個並列したウエハー、BGAのインターポーザー、または実装基板の露出している全てのパッドまたはリードの清浄な金属表面内に錫またははんだ粒子を散布し少なくとも1個以上の前記粒子を散在させて各パッドまたはリードの清浄な金属表面に接着させる第1のプロセスと、次に前記パッドまたはリードに錫またははんだ粒子が接着したチップ、ウエハー、インターポーザー、または実装基板を液温180〜300℃の油系溶媒に溶解しかつ分子構造的に安定かつ少なくともカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物1質量%以上を含有する溶液または100%有機化合物単体液と接触させた後、直ちに酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度溶融はんだ液に接触させ、再び直ちに前記溶液または100%単体液と接触させる第2のプロセスにより、前記パッドまたはリード表面に直接はんだバンプまたははんだ皮膜を形成させる。これにより狭ピッチの隣接回路に前記錫またははんだがブリッジすることなく微小はんだバンプまたは微小はんだ皮膜を形成させたリードを有するチップ、ウエハー、インターポーザー、または実装基板、更にはこれらを組合わせて信頼性の高い半導体装置、ならびに電子装置の製造が可能になる。
例えば、BGA半導体装置などは前記第1および第2プロセスにより、狭ピッチで微小バンプが形成されたチップ上のバンプをインターポーザーのパッドの位置に対応させて搭載して加熱雰囲気中で前記バンプのはんだを融解してチップとインターポーザーの電極間をはんだ接合することにより回路形成させて半導体装置を製造することができる。
また、前記チップをインターポーザーに搭載する際、前記バンプ以外の保護膜の一部と、これに位置的に対応するインターポーザーのパッド以外の保護膜個所とを耐熱性接着剤を介して接着させて位置を固定した後、再び液温180〜300℃の油系溶媒に溶解しかつ分子構造的に安定かつ少なくともカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物1質量%以上を含有する溶液または100%有機化合物単体液と接触させた後、直ちに酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度溶融はんだ液に接触させ、再び直ちに前記有機化合物溶液または100%単体液と接触させることによっても、狭ピッチの隣接回路がブリッジオーバーリークすることなくチップをインターポーザーの電極パッドまたはリードにはんだ接合してより信頼性の高い半導体装置の製造が可能である。
同様に、電子装置においては、前記第1および第2プロセスにより狭ピッチで微小バンプが形成されたCSP、BGAなどの半導体装置の前記バンプ、およびアウターリードがはんだ被覆されているその他の電子部品のリードを、これらに位置的に対応する電極パッドまたはリードが露出していて、それ以外の表面は保護膜で覆われた実装基板の所定の位置に搭載して、加熱雰囲気中で前記バンプ、アウターリードのはんだを融解して半導体装置およびその他の電子部品と実装基板のパッドまたはリードをはんだ接合することにより回路形成させて電子装置を製造することができる。この場合も、前記半導体装置およびその他の電子部品を実装基板に搭載する際、前記半導体装置の前記バンプ以外の保護膜の一部、およびその他の電子部品のアウターリード以外の絶縁部位と、これらに位置的に対応する実装基板のパッドまたはリード以外の保護個所とを耐熱性接着剤を介して接着させて位置を固定した後、液温180〜300℃の油系溶媒に溶解しかつ分子構造的に安定かつ少なくともカルボキシル基を有する有機化合物1質量%以上を含有する有機化合物溶液または100%単体液と接触させた後、直ちに酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度溶融はんだ液に接触させ、再び直ちに前記溶液または100%単体液と接触させることにより、狭ピッチの隣接回路がブリッジオーバーリークすることなく半導体装置およびその他の電子部品を実装基板の電極パッドまたはリードにはんだ接合して信頼性の高い電子装置の製造を可能にするものである。
【0009】
また、例えば、前記第1および第2プロセスにより狭ピッチで微小バンプが形成されたチップ上のバンプを、前記第1のプロセスで処理したインターポーザーまたは前記第1および第2のプロセスで処理したインターポーザーの電極パッドの位置に対応させて搭載して加熱雰囲気中で前記バンプのはんだを融解してチップとインターポーザーの電極間をはんだ接合することにより回路形成させて半導体装置を製造することもできる。この場合も、望ましくは、前記チップをインターポーザーに搭載する際、該チップの該バンプ以外の保護膜の一部と、これに位置的に対応するインターポーザーの電極パッド以外の保護膜個所とを耐熱性接着剤を介して接着させて位置を固定した後、再び液温180〜300℃の油系溶媒に溶解しかつ分子構造的に安定かつ少なくともカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物1質量%以上を含有する有機化合物溶液または該有機化合物100質量%単体液と接触させた後、直ちに酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度溶融はんだ液に接触させ、再び直ちに前記有機化合物溶液と接触させるプロセスを行うことにより、狭ピッチの隣接回路がブリッジオーバーリークすることなくチップをインターポーザーの電極パッドにはんだ接合してより信頼性の高い半導体装置の製造を可能にするものである。
同様に、電子装置においても、前記第1および第2プロセスにより狭ピッチで微小バンプが形成されたCSP、BGAなどの半導体装置の該バンプ、およびアウターリードがはんだ被覆されているその他の電子部品のリードを、前記第1のプロセスで処理した実装基板または前記第1および第2のプロセスで処理した実装基板の電極パッドまたはリードの位置に対応させて搭載して加熱雰囲気中で前記バンプまたはリードのはんだを融解して半導体装置およびその他の電子部品と実装基板の電極パッドまたはリードをはんだ接合することにより回路形成させて電子装置を製造することができる。この場合も望ましくは、前記半導体装置およびその他の電子部品を実装基板に搭載する際、前記半導体装置の前記バンプ以外の絶縁保護膜の一部、およびその他の電子部品のアウターリード以外の絶縁部位と、これらに位置的に対応する実装基板の電極パッドまたはリード以外の保護膜個所とを耐熱性接着剤を介して接着させた後、液温180〜300℃の油系溶媒に溶解しかつ分子構造的に安定かつ少なくともカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物1質量%以上を含有する有機化合物溶液または前記有機化合物100質量%単体液と接触させた後、直ちに酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度溶融はんだ液に接触させ、再び直ちに前記有機化合物溶液または該単体液と接触させるプロセスを行うことにより、狭ピッチの隣接回路がブリッジすることなく半導体装置およびその他の電子部品を実装基板の電極パッドまたはリードにはんだ接合して信頼性の高い電子装置の製造を可能にするものである。
【0010】
更に詳しく述べると、先ず第1のプロセスで「全ての電極パッドまたはリードの清浄な金属表面内に錫またははんだ粒子を散布し少なくとも1個以上の前記粒子を散在させて高温加熱して各電極パッドまたはリードの清浄な金属表面に接着させる」目的は溶融はんだを電極パッドまたはリード内に呼び込み、良好なはんだバンプまたははんだ皮膜を形成させることにある。即ち、チップ、インターポーザー、または実装基板は電極パッドまたはリードのみ金属表面が露出しているが、それ以外の表面は厚さが数μmから数10μmの保護膜で覆われており(電極パッドまたはリードの最小幅、隣接ピッチ、更には用途と目的により異なる)、特に、最小幅が狭くかつ周囲を厚い保護膜で囲まれている電極パッドまたはリード(例えば、幅20μm、保護膜厚さ20μm以上など)は譬えぬれ性の良い溶融はんだ液を使用しても溶融はんだ特有のぬれ角の問題や前記保護膜で囲まれている部分に存在するエアーが障害となり、底部の電極パッドまたはリード表面に溶融はんだが接触できないためはんだバンプもはんだ皮膜の形成は殆ど不可能である。このため、本発明の方法では、電極パッドまたはリードの最小幅に応じて0.5〜20μmφの錫またははんだ粒子を溶融はんだ液呼び込みの核として使用する。
【0011】
この粒子の材質は純錫でも、また通常の錫を主成分とし銀、銅、亜鉛、鉛、ビスマス、アンチモン、ニッケル、ゲルマニウム、インジウムなどのいずれか1種以上を含有する通常のはんだ合金で良いが、酸素濃度が5ppm以下であることが望ましい。粒形は転がり性の観点から真円に近い球形状で表面が平滑なほど好ましく、また、内部に所謂ボイドまたはマイクロボイドが存在しないものが望ましい。表面が粗なものまたは多孔状のものは転がり性が悪いためあまり好ましくない。また、内部にボイドやマイクロボイドが存在するものあるいは粒子全体が多孔質なものは、第2のプロセスで溶融はんだと合体してはんだバンプもしくははんだ皮膜を形成させる際、バンプもしくははんだ皮膜の内部や電極パッドまたはリードとの接合界面にマイクロボイドを点在させる恐れがあり、経時的に接合強度を劣化させる原因となるため好ましくない。
【0012】
また、粒径は0.5μmφ未満の小粒子または粉状物は転がりにくいこと、静電気の影響をより受けやすく、均一に散布することが難しく、また必要以上の数量が電極パッドまたはリード内部に多数個の粒子が堆積し、核を形成させる際に多孔質状になり、第2のプロセスで溶融はんだと合体してはんだバンプもしくははんだ皮膜を形成させる際、バンプもしくははんだ皮膜の内部や電極パッドまたはリードとの接合界面にマイクロボイドを存在させる恐れがあり、経時的に接合強度を劣化させる原因となるから好ましくない。
従って、望ましい粒径は5〜40μmφであるが、電極パッドまたはリードの最小幅で上限は制約され、囲まれている前記保護膜厚さより低く、かつ前記パッドまたはリードの最小幅の0.3〜0.8倍程度の直径の球状体が最適である。
【0013】
前記錫またははんだ粒子を散布して、周囲を保護膜で囲われた電極パッドまたはリード表面に1個以上散在させる方法としては、単純に電極パッドまたはリード表面が上面になるように配置して上部から機械的に前記粒子を全面に振りかける方法、振動を利用して振込む方法、超純水の中に該粒子を分散させて超純水と一緒に吹きかける方法、超純水の代わりに揮発性溶媒に前記粒子を分散させてスプレーで吹きかける方法、あるいは電極パッドまたはリード部の配列と形状に対応して開口部が設けられたマスクと刷毛を使用して振込む方法、更には溶融錫または溶融はんだに直接超音波を照射しながらノズルから溶融錫またははんだ粒子を噴射散布する方法などがある。また、各電極パッドまたはリードの中心位置に対応し、かつ振込む粒子の大きさに対応した半球状の孔を有する粉末焼結で作られた専用治具を使用して、半球内に1〜3個の粒子を吸引し、それを各電極パッドまたはリードに振込む自動振込機を使用しても良い。
尚、前記専用マスク治具や自動振込機を使わず、チップ、ウエハー、インターポーザー、あるいは実装基板の全面に単純に振り掛ける場合は、電極パッドまたはリード以外の保護膜に残存する余分な粒子は排除するに越したことはないが、排除しなくとも、第2のプロセスで有機化合物溶液で洗い流すことも可能であるし、また溶融はんだ液の中に取り込まれるので支障はない。但し、前記粒子の組成と本発明に使用する前記溶融はんだ液の組成が異なると、本体である該溶融はんだ液中の成分比率が経時的に変化するため、好ましくない。この場合は核に使用する粒子は第2のプロセスで使用するはんだと同一の組成のはんだを使用することが望ましい。
【0014】
周囲を保護膜で囲われた電極パッドまたはリード表面に1個以上散在する前記錫またははんだ粒子を該表面に接着させる方法としては、該粒子の融点〜+50℃以内で0.5〜10秒程度加熱して接着させれば充分である。また、予め加温された対象物(ワーク)に該粒子を振りかけて粒子がワークの電極パッドまたはリード表面に到達するとそのまま接着する方式を取る効率的な方法もある。あるいは前記粒子の融点〜+50℃以内の高温の有機脂肪酸溶液中を通過させながら、電極パッドまたはリード表面上に散布して接着させることも有効である。
【0015】
一方、第2のプロセス、即ち、「電極パッドまたはリード部に錫またははんだ合金が部分接着したチップ、ウエハー、インターポーザー(配線基板)、または実装基板を液温180〜300℃の油系溶媒に溶解しかつ分子構造的に安定かつ少なくともカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物1質量%以上を含有する有機化合物溶液または該有機化合物100質量%単体液と接触させた後、直ちに酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度溶融はんだ液に接触させ、再び直ちに前記有機化合物溶液と接触させる」目的は、酸素濃度5ppm以下に精製した特殊はんだの溶融状態における特異で優れた特性、即ち、同一組成の一般のはんだ(酸素濃度が数百ppm含有)に較べて、溶融状態における粘性が著しく低く、凝固温度も10〜30℃低いため、特に液温180〜300℃の油系溶媒に溶解しかつ分子構造的に安定かつ少なくともカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物1質量%以上を含有する溶液または該有機化合物100質量%単体液と併用するとはんだの「切れ」が良く、ボリュームオーバーになりにくく、従ってブリッジを発生し難い特性を活用して狭ピッチで微小バンプや微細リードの回路形成すること、更にはそれにより半導体装置および電子装置の高信頼性を確保しながら更なる小型化を達成することにある。
【0016】
このプロセスにカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物溶液を使用する目的は、パッドまたはリードの金属表面をケン化反応により酸化膜を除去し清浄活性化することと、同時に清浄活性化された表面を保護すること、更には併用する酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度溶融はんだ液の酸化を防止し混入する酸化物を前記溶融はんだ液から取り除く役割を果たすとともに、形成されたはんだバンプおよびはんだ皮膜の表面にも化学吸着保護膜としてコーティングすることにある。この他に付随的に第1のプロセスでワークの保護膜表面に付着した余分な粒子をある程度洗い流す効果もある。尚、これらの作用、効果ならびに表面処理技術としては既に特許文献5および6により公知である。
【0017】
また、本発明のプロセスで用いる有機化合物は、少なくともカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物であることが必須であり、例えば、メタン酸(蟻酸)、エタン酸(酢酸)、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、α−メチル−βオキシ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、活性吉草酸、ピバル酸(トリメチル酢酸)、2−エチル酪酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキ酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、シクロヘキサンカルボン酸、蓚酸、マロイン酸、コハク酸、グルタル酸、エチルマロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸およびその異性体、安息香酸、トルイル酸、フェニル酢酸、フェニルコハク酸、フタール酸、イソフタル酸、サリチル酸、α−ナフトエ酸、β−ナフトエ酸、カルセイン、シクロプロパンジカルボン酸、ニトロフタール酸、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、フェニルアラニン、トレオニン、メチオニン、リジン、ヒスチジンなどの有機酸や有機脂肪酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸などのキレート化合物などの有機化合物が挙げられる。。
これらの内、望ましくは180〜300℃で使用する溶媒に溶解し分解などせず安定している有機化合物がよい。沸点が低い有機化合物の場合は高圧にして使用することも可能であるが、安全性、実用性の点で好ましくない。経済性や取扱い上から工業的により実用に適するものは、例えば、炭素数13〜20の有機脂肪酸、即ち、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸などであり、本発明の目的に合致した効果が大きく、特に有用である。
有機脂肪酸は炭素数12以下でも使用可能ではあるが吸水性があり、高温で使用する関係からあまり好ましくないこと、更に接合後のはんだ表面に保護膜としてコーティングされても吸水性があるため長期保存時の品質に障害をもたらすこともあり好ましくない。また、炭素数21以上の有機脂肪酸でも使用は可能であるが、融点が高いこと及び浸透性が悪くまた取扱いし難く処理後の錫またははんだ合金の防錆効果もやや不充分になる。特に望ましいのは、工業的にも大量に生産され使用されて入手もしやすい炭素数16のパルミチン酸、炭素数18のステアリン酸が最適であり、そのいずれか1種以上を1〜95重量%と残部が180℃〜350℃の高温領域で安定な油系溶媒からなる液温180〜300℃の溶液を使用すると本発明の効果も大きい。
【0018】
前記液有機化合物の濃度については1質量%以下でも充分効果はあるが、連続して大量に処理に使用する場合は補充管理などが煩雑なこと、また80質量%以上あるいは100質量%単体でも本発明の効果はあり使用可能であるが、発煙性と臭気の問題もきつくなるため、好ましくは5〜80質量%である。
液温は使用する溶融はんだ液の温度で決まり、その溶融はんだの液温より±20℃の範囲内であることが効率的で望ましい。但し、上限温度は発火性、発煙性、安全性を考慮すると、320℃程度であるが、臭気の問題、更には省エネの観点から300℃程度以下が望ましい。
【0019】
また本発明に使用する有機脂肪酸の溶媒としては、前記有機化合物を溶かし前記高温領域で安定な溶媒であれば、鉱物油、植物油、合成油のいずれでもよいが、特に安定性、安全性、経済性、取扱い性の点でエステル合成油が最適である。高温で安定な溶媒を使用する目的と理由は、効果上からは特にないが、強いて言えば、前記有機化合物の高温発煙性ならびに臭気の緩和抑制にあり、また若干粘性を下げ浸透性も多少改善される。その濃度は前記有機化合物濃度で決まる。
【0020】
一方、この第2のプロセスで併用する溶融はんだ液は、酸素濃度が5ppm以下に精製された溶融はんだを使用することが必須である。その理由は、はんだの主原料である市販の精製純錫および各種はんだ母合金には数百ppmの微量微小の錫酸化物が存在するため、それを溶融してはんだ接合に使用すると、本発明に使用する酸素濃度5ppm以下の溶融はんだ液と比較して粘性と凝固温度が高いため、はんだ接合後に被はんだ接合部を溶融はんだ液から引き出す際のはんだの「切れ」が悪く、従って、はんだの盛り上がりが大きく、所謂オーバーボリューム(ツノ、ツララ)を生じ易く、狭ピッチ回路では隣接回路にブリッジしてリーク不良を多発する難点がある(図3−3b)のに対して、本発明に使用する酸素濃度5ppm以下のはんだは溶融した状態での粘性と凝固温度が相対的に非常に低く、明らかにさらさらしており、はんだ接合後に被はんだ接合部を溶融はんだ液から引き出す際のはんだの「切れ」が著しく良いため、例えば、リード幅が20μmで隣接ビッチが60μmの回路においてもオーバーボリュームにならず、従ってブリッジオーバーもなくそれによるリーク不良も発生しない(図3−3a、3c)。
【0021】
本発明に使用する酸素濃度5ppm以下のはんだを製造する方法としては、市販の精製錫およびはんだ組成に必要な精製金属またははんだ母合金を融解した溶融はんだ液を、本発明でも使用している液温180〜300℃の油系溶媒に溶解しかつ分子構造的に安定かつ少なくともカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物1〜95質量%を含有する溶液の中に注入して激しく撹拌処理することにより、有機脂肪酸のケン化反応により該溶融はんだ内部に存在する微小な酸化物や不純金属が除去され、酸素濃度を5ppm以下に精製することが出来る。
具体的には、例えば、市販のAg2.5質量%、Cu0.5質量%、ニッケル0.01質量%、ゲルマニウム0.005質量%、残部錫からなる錫銀銅系鉛フリーはんだ合金を融解した液温260℃の溶融はんだ液を、パルミチン酸50重量%と残部エステル合成油からなる液温260℃の溶液中に滴下しながら1時間激しく撹拌混合処理することにより、ケン化反応を促進すれば、溶融はんだ液内部に存在する微小な酸化物や不純金属が除去され、酸素濃度5ppm以下のはんだが得られる。はんだ中の酸素濃度が5ppm以下になると、酸素濃度数十から数百ppmのはんだに較べて、溶融したときの粘性が圧倒的に低く、また温度降下過程において、凝固の核になる酸化物が少ないから、結晶化凝固点も低く、このためはんだ液からワークを引き上げるときの所謂「はんだ切れ」が非常に良く、過剰なはんだ盛り上がりがなく所謂「オーバーボリューム」や「ツノ」「ツララ」現象を引き起こし難いこと、従って、微小狭ピッチ回路におけるはんだブリッジによるリーク不良を生じにくいメリットがあることが判った
【0022】
本発明に適用できる錫またははんだ合金の種類は、通常電子部品の接合に使用されるもので、前記同様の処理をして酸素濃度5ppm以下に精製すれば全て使用可能であるが、環境問題および接合信頼性の観点から、望ましくは、錫、または錫を主成分とし銀、銅、亜鉛、ビスマス、アンチモン、ニッケル、ゲルマニウムのいずれか1種以上の金属を添加した溶融鉛フリーはんだ合金を用いることが好ましい。
本発明の実施検証例としては、実際に錫・銀・銅系とそれにニッケル、ゲルマニウムを添加したはんだおよび錫・亜鉛系合金にニッケル、銀を添加した酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度はんだを中心にその効果を検証したが、これ以外の鉛フリーはんだ合金、純錫、錫鉛系はんだ合金でも酸素濃度5ppm以下に精製して本発明の第2のプロセスに適用すれば同様の効果が得られるものと推定される。何故なら、精製された原料錫中には数十ナノミクロン程度の極微小錫酸化物粒子が点在しており、それを原料にして製造され市販されているはんだ合金にも同等以上の数十ナノミクロン程度の極微小錫酸化物粒子が点在しているからである。
繰り返すが、酸素濃度5ppm以下に精製した低酸素濃度はんだは、従来のはんだにない物理的機械的化学的物性、即ち。特に柔軟で伸び、靭性に富み、溶融時の粘性が明らかに著しく低く(見た目の感覚でも従来の錫、はんだ合金と比較して明らかに「さらさら」感がある)、ぬれ性が良いので、溶融したはんだ液から引き出す時の「はんだ切れ」がよく、これを用いることにより、従来の溶融はんだでは殆ど不可能な回路幅80μm以下で隣接回路ピッチが150μm以下の微小リード・狭リードピッチ回路はもとより、回路幅10〜20μm隣接ピッチ20〜50μmの回路でさえ、ツノ、ツララも、はんだブリッジを発生することもなく、接合信頼性の高い高密度微細電子回路、更にはそれを組み立てた高接合信頼性高密度半導体装置および電子装置の製造を可能にするものである。
これに対して、酸素濃度が10ppm以上では酸素濃度が大きくなるに連れて、粘性も高く、溶融はんだ液から引き出す時の「はんだ切れ」が悪く、凝固点も高く、明らかにブリッジを生じやすい。発明者らは酸素濃度と「はんだ切れ」及び「ブリッジ」の関係を詳細に研究した結果、酸素濃度5ppm付近に前述の通り、物理的機械的化学的物性、即ち、特に柔軟で伸び、靭性に富み、凝固温度降下、更には溶融時の粘性の変曲点が存在することを突き止め、5ppmが臨界点であることを知見した。
【0023】
また、本発明の方法の第2のプロセスにおいては、電子回路のパッドまたはリードにはんだバンプまたははんだ被覆する対象物(ワーク)の被はんだ接合表面に前記有機脂肪酸溶液、および酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度溶融はんだ液を接触させることも必須条件であるが、その最も簡便な具体的方法としては両液を1つの槽に入れて一定の温度範囲に制御しながら放置して比重差により前記有機脂肪酸溶液が上層に該溶融はんだ液が下層になった上下2層の液に上部からワークを浸漬すると、先ず上層の有機脂肪酸溶液でワークの被はんだ表面が清浄活性化され、かつ保護皮膜が形成される。つぎに、そのままワークを押し下げて下層の該溶融はんだ液に浸漬すると、ぬれ性が良いため瞬時に、例えば0.1〜1秒程度(パッドまたはリード表面状態やそれを取り囲む耐熱/絶縁保護膜の厚さ即ち壁の高さや第1のプロセスで接着した核粒子の形状にもよる)で、前記溶融はんだ液が引き込まれて前記表面にはんだ接合される。その後、ワークを引き上げると下層からはんだ接合部が出る際にはんだ「切れ」が良いため接合はんだ量はオーバーボリュームならず、従って、隣接回路同士がブリッジも生ずることもなく適量のはんだバンプもしくははんだ皮膜が形成できる。更にワークを引き上げると必然的に再び上層の有機脂肪酸溶液の中を通過するので、その際に接合されたはんだバンプまたははんだ皮膜の表面に有機脂肪酸が化学吸着して保護膜が形成される。
その他の対象物(ワーク)の被はんだ接合表面に前記有機脂肪酸溶液、および酸素濃度10ppm以下の低酸素濃度溶融はんだ液を接触させる方法としては、それぞれの液をポンプでノズルに循環給液して噴流させて吹きかける方式と、それぞれの液をポンプで別々の槽に循環給液して溢流させながらその中をワークを通過させて処理する方式もある。いずれの場合も個別に該有機脂肪酸溶液、該溶融はんだ液、そして再び該有機脂肪酸溶液の順に接触させる処理する必要がある。いずれも前記上下2層方式と同じ効果が得られ、有効である。
噴流させる方式の場合はノズルはワークの大きさと形状により適宜工夫が必要であるが、一般的にはスリット状のノズルを用いると良い。
また、前記有機脂肪酸溶液を充満させた槽内に前記溶融はんだの噴流スリットノズルを設けて前記有機脂肪酸溶液中で前記溶融はんだ液を噴流させワークを上部から浸漬して、前記有機脂肪酸溶液、前記溶融はんだ液、そして再び前記有機脂肪酸溶液の順に接触させる方法もある。この場合は、ワークは垂直に移動させても良いし、被はんだ接合面を斜め上もしくは斜め下に傾斜角をつけて移動させても良い。
【発明の効果】
【0024】
上述の通り、本発明の方法、即ち、電極パッドまたはリードが露出し、それ以外の部分が保護膜で覆われているチップ、ウエハー、インターポーザーまたは実装基板の電極パッドまたはリードの清浄な金属表面に、大きさが0.5〜40μmφの錫またははんだ粒子を散布して全ての該電極パッドまたはリード内に該粒子を少なくとも1個以上散在させた後、該実装基板を加熱雰囲気中で前記電極パッドまたはリード金属表面に接着させる第1のプロセスと、該チップ、ウエハー、インターポーザーまたは実装基板を液温180〜300℃の油系溶媒に溶解しかつ分子構造的に安定かつ少なくともカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物1質量%以上を含有する有機化合物溶液または該有機化合物100質量%単体液と接触させた後、直ちに酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度溶融はんだ液に接触させ、その後、直ちに再び前記有機化合物溶液または100質量%有機化合物単体液と接触させることにより該電極パッドまたはリード表面にはんだ皮膜を形成させる第2のプロセスにより、パッドまたはリード幅が80μm以下でかつ隣接ピッチが150μm以下の微小狭ピッチで、オーバーボリュームもなく隣接回路とのはんだブリッジ不良もない安定した良好なはんだバンプおよびはんだ皮膜を形成できることが判った。即ち、本発明の技術を使用すれば、パッドまたはリードの幅が10〜50μm、隣接ピッチ20〜120μ(リード幅に応じて隣接最小空間幅で10μm)の微小微細狭ピッチ電子回路でさえ、安定して製造することが可能になり、これにより、チップ、それを多数個配列したウエハー、インターポーザー、または実装基板の微小微細狭ピッチ電子回路上のパッドまたはリードに微小なはんだバンプや微小はんだ皮膜をオーバーボリュームもなく隣接回路とのブリッジリーク不良もなく安定して製造でき、半導体装置および電子装置の更なる微小小型化ができる効果がある。これは従来の溶融はんだ接合技術では殆ど不可能なことであり、本発明の効果は工業的に極めて価値が高いものである。
これを更に詳しく具体的事例で以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態である半導体装置事例および電子装置事例の構造を模式的に示した概略図で、1aはCSP(Chip Size Package)の断面事例、1bはBGA(Ball Grid Array)の断面の事例、1cは半導体装置およびその他の電子部品を搭載した電子装置の平面の事例、1dは半導体装置およびその他の電子部品を搭載した電子装置の断面の事例、である。
【図2】本発明の実施例および比較例のはんだ合金の内部断面結晶組織を示したもので、2aは実施例1、2bは比較例1、2cは実施例2、2dは比較例2の事例である。
【図3】本発明の実施例2および従来の比較例2の鉛フリーはんだ合金をそれぞれ微小幅20μmで隣接回路との間隔が60μmの狭ピッチ実装基板(ワークA)に適用してはんだ被覆した工業的応用事例のはんだ被覆状態を示した写真であり、3aは上部から拡大撮影した実施例2の外観写真、3bは上部から拡大撮影した比較例2の外観写真、3cは上記2aを斜め上部から拡大撮影した写真である。
【符号の説明】
【0026】
1 電極パッド
2 はんだ粒子を電極バッド表面に接着させた核
3 電極パッドまたはリード表面に接合させた低酸素濃度はんだをバンプまたははんだ皮膜
4 保護膜
5 封止樹脂
6 チップ
7 インターポーザー
8 Au線ボンディングワイヤー
9 実装基板
10 BGA半導体装置
11 CSP半導体装置
12 DIP半導体装置
13 BGA半導体装置
14 ミニトランジスター
15 チップコンデンサー
16 抵抗器
17 電子装置(モジュール)
【発明を実施するための形態】
【0027】
先ず、実施例と比較例に使用したはんだ組成と実験条件を[表1]に示す。
尚、共通の実験条件として、リード幅20μmX長さ360μmが隣接ピッチ60μの微細狭ピッチパターンがマトリックス状に100X50本配列されたテスト用実装基板ワークA(図1−1a)と、面積40μmX40μmの電極パッドが隣接ピッチ100μmでマトリックス状に20X20個配列されたチップがマトリックス状に10X10個配列された試験用ウエハーワークB(図1−1b)を使用し、
1)実施例1〜3および比較例2については、本発明の第1のプロセス、即ち、前記Aの全てのリード、および前記Bの全ての電極パッドの清浄な金属表面内に実施例1と同一組成で粒径が8〜18μのはんだ粒子を散布して1〜数個散在させて260℃のリフロー炉中に5秒放置してはんだ粒子(ワークAには粒子径をそれぞれ該バッドまたはリードに接着させ、次に第2のプロセスとして、ワークAおよびBを温260℃のカルボニル基(−COOH)を有する各有機化合物溶液と接触させた後、直ちに各溶融はんだ液に接触させ、再び直ちに各有機化合物溶液と接触させて、ワークAのリードにははんだ皮膜を、ワークBの電極パッドにははんだバンプを形成させた。
2)一方、比較例1および3については、ワークAおよびBのリードまたは電極パッドにメタルマスクを使い市販のソルダーペーストを塗布した後、260℃のリフロー炉中に5秒放置した
【0028】
【表1】


【0029】
まず、上記実験に先立ち、各比較例および実施例の鉛フリーはんだ中の酸素濃度分析、および物理的機械的特性、化学的特性について調べた。
酸素濃度については、TOF−SIMS分析装置により比較例1〜3、実施例1〜4の鉛フリーはんだの内部(表面から深さ10μmまで)の酸素濃度を測定した。
粘度アルミナ坩堝の中にそれぞれのはんだを個別に入れ、アルゴン雰囲気中で溶解して、300℃から徐々に温度を下げて凝固点までアルミナ振動片式粘度計を用いて測定した。
また、はんだぬれ性については、上記比較例および実施例の各はんだ合金をそれぞれ別々に溶融させ液温260℃に自動温度制御したはんだ浴槽中に、0.4mmφの純銅線を測定ピンとして使用し、メニスコグラフによるはんだぬれ性試験方法によりそれぞれ繰返し4(n=4)でゼロクロス時間を測定した。
また、各実施例および比較例に使用したはんだの融解温度および凝固温度については示差熱分析装置を使用して温度プロファイルを記録し解析した。
物理的機械的評価方法としては、上記比較例および実施例の各はんだ合金をそれぞれステンレス(SUS 304)製鋳造金型(JIS 6号)を用い、評点間距離 L=50mm、直径 8mmφ、チャッキング部長さ L=20mm、直径 10mmφの試験片を作成し、JIS Z 4421)の試験方法により島津製作所製引張り試験機(AG100型)を用い、室温25℃において、それぞれ繰返し2(n=2)で、荷重負荷速度 5mm/minで試験測定した
更に、オーバーボリューム性(ツノ、ツララの発生有無)、ブリッジ性については、双眼式実体顕微鏡(10〜40倍ズーム)に上記比較例および実施例の各実験で作成した試料をそれぞれ観察して評価した。
【0030】
その結果はまず、各はんだの各種特性値は下記[表2]の通りで、実施例1〜4に使用した各低酸素濃度はんだは酸素濃度がいずれも5ppm以下であるのに対し、比較例は70〜140ppmで微細な酸化物が内部に散在していることが覗える。また、機械的特性値でも実施例の各はんだは伸びが比較例のそれに対し顕著に大きく、引っ張り強さは大差ないことから、実施例は靭性に優れていることが判った。逆に比較例の通常のはんだは伸びが小さく硬く脆弱であることが確認された。
一方、溶融状態における粘度(粘性)については300℃から凝固点付近まで徐々に温度を下げて5℃おきに測定した結果、比較例が0.005〜0.007Pa・Sであったのに対して、本発明の実施例に使用したはんだは0.003〜0.004Pa・Sで圧倒的に低粘性を有することが知見され、これも「はんだぬれ性」を良くし、溶融はんだ液からワークを引き出す時の「はんだ切れ」が良い一因と思われ、「オーバーボリューム」と「ブリッジ不良」抑制に大いなる寄与をしていると考えられる。但し、特に実施例の「はんだ切れ」の良さ、「オーバーボリュームにならないこと」、従って「ブリッジ不良のないこと」に関しては低酸素濃度はんだ固有の特性の効果だけではなく、カルボキシル基を有する有機化合物溶液または該有機化合物単体液と共用する相乗効果である。
また更に、実施例と比較例について示差熱分析装置で分析した結果は、昇温時の融点は両者とも実験に用いた錫銀銅系はんだでは217℃近辺でほぼ同じであるにも拘らず、降温時の凝固特性は比較例が218℃付近で凝固が始まり、213℃付近でで凝固完了するのに対し、本発明の実施例ではほんの一部は218℃付近で凝固しかけるものもあるが殆どのものは215℃付近で凝固し始め、204℃付近に下がってもまだ約半量ぐらいしか凝固せず、最終的に凝固完了するのは189℃付近であり、凝固時の結晶形態も実施例が細かい粒状結晶になるのに対して(図2−2a、2c)、比較例はいずれも比較的大きな柱状結晶を多く含む粗い結晶形態(図2−2b、2d)を呈していることが知見され、明らかに物性上有意差があることが判った。
以上をまとめて考察すると、はんだの金属組成は実施例1と比較例1、同様に実施例2と比較例2、実施例3と比較例3はそれぞれ対として同一組成で対応しているにも拘らず、上述の通り、実施例はそれに対応する比較例のはんだを精製して酸素濃度を5ppm以下にしただけで、溶融状態における粘性(粘度)、伸び、靭性、凝固温度、結晶粒の大きさ、はんだぬれ性のいずれの特性にも著しい差があり、本発明の実施例が優れていることが検証された。これにより、本発明の第1のプロセスおよび第2のプロセスを組合わせることにより、微小狭ピッチはんだバンプおよびはんだ皮膜形成が可能になり、この技術を適用すれば半導体装置および電子装置の更なる小型化が実現できる。
【0031】
【表2】

【0032】
一方、実際のチップおよび実装基板に近似させた試作用チップおよび実装基板に本発明技術を適用した試作品(実施例1〜4)と、従来技術で試作した同様の試作用チップおよび実装基板の試作品(比較例1〜3)について微小狭ピッチ回路におけるオーバーボリューム性とブリッジ(不良)性について調べた結果は、実施例1〜4には全てオーバーボリュームもブリッジ不良がなかったのに対して(図3−3a、3c)、比較例には全て局部的あるいは大半の個所で隣接部にオーバーボリュームとブリッジが認められた(図3−3b)[表3]。
【0033】
【表3】

【0034】
以上の通り、本発明の技術は明らかに従来の溶融はんだを使用する技術では全く不可能な幅50μm以下の微小パッドまたはリード、隣接ピッチ120μ以下の微小/狭ピッチ電子回路のはんだバンプまたははんだ皮膜形成をも可能にし、オーバーボリュームも隣接回路とのブリッジ不良もない信頼性の高い半導体装置、および電子装置の製造を可能にする技術を提供するものであり、工業的価値が極めて高い画期的な技術である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅120μm以下、隣接ピッチ200μm以下の狭ピッチで多数個配列された電極パッドまたはリードを有する半導体装置において、前記電極パッドまたはリード表面が大きさ0.5〜40μmの錫またははんだ粒子を核として、少なくとも酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度はんだ皮膜で形成された半導体チップまたはインターポーザーで構成されたこと特徴とする半導体装置。
【請求項2】
幅120μm以下、隣接ピッチ200μm以下の狭ピッチで多数個配列された電極パッドまたはリードを有する半導体装置において、複数の電極パッドまたはリードの表面上に大きさが0.5〜40μmφの錫またははんだ粒子を少なくとも1個以上を散布して前記錫またははんだ粒子を前記パッドまたはリード表面に接着させた上で、前記パッドまたはリードを液温180〜300℃の油系溶媒に溶解しかつ分子構造的に安定かつ少なくともカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物1質量%以上を含有する有機化合物溶液または該有機化合物100質量%単体液と接触させ、その後、直ちに酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度溶融はんだ液と接触させ、再び前記有機化合物溶液と接触させることにより、前記パッドまたはリード表面にはんだバンプまたははんだ皮膜を形成させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、半導体装置の電極パッドまたはリードを前記有機化合物溶液または低酸素濃度溶融はんだ液に接触させる方法として、液温180〜300℃のパルミチン酸またはステアリン酸のいずれか1種以上を5〜80質量%と残部エステル合成油からなる有機脂肪酸溶液を上層に配し、下層が錫を主成分とし銀、銅、ニッケル、ゲルマニウムのいずれか1種類以上の金属を添加した酸素濃度5ppm以下の溶融はんだ液で構成された上下2層の液中に該半導体装置を上層液、下層液の順に浸漬し再び上層液中を通過させて引き出すことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記請求項2に記載の半導体装置の製造方法において、半導体装置の電極パッドまたはリードを前記有機化合物溶液または低酸素濃度溶融はんだ液に接触させる方法として、液温180〜300℃のパルミチン酸またはステアリン酸のいずれか1種以上を5〜80質量%と残部エステル合成油からなる有機脂肪酸溶液と、錫を主成分とし銀、銅、ニッケル、ゲルマニウムのいずれか1種類以上の金属を添加した酸素濃度5ppm以下の溶融はんだ液とをそれぞれの給液管またはノズルから噴流させて電極パッドに吹きかけることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記請求項2、3、および4に記載の半導体装置の製造方法において、半導体チップが多数個並列した半導体ウエハー内の複数の電極パッドまたはリード内に大きさが0.5〜40μmφのはんだ粒子を少なくとも1個以上散布して前記錫またははんだ粒子を各電極パッドまたはリードに融着後、上層が液温180〜300℃のパルミチン酸またはステアリン酸のいずれか1種以上を1〜95質量%と残部エステル合成油からなる有機脂肪酸溶液で、下層が錫を主成分とし銀、銅、ニッケル、ゲルマニウムのいずれか1種類以上の金属を添加した酸素濃度5ppm以下の溶融はんだ液で構成された上下2層の液中に該ウエハーを上層液、下層液の順に浸漬し再び上層液中を通過させて引き出す工程を経てはんだバンプを形成させたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
実装基板に少なくとも半導体装置がはんだ接合により搭載された電子装置において、幅120μm以下、隣接ピッチ200μm以下の狭ピッチの電極パッドまたはリード表面上に接着した、大きさが0.5〜40μmφの錫またははんだ粒子の核と、その上に酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度はんだを融合させたバンプまたははんだ皮膜を有する半導体装置を、前記半導体装置のバンプ位置に対応した電極パッドまたはリードを有する実装基板上の所定の対応位置にはんだ接合した構造を有することを特徴とする電子装置。
【請求項7】
前記請求項6に記載の電子装置において、前記半導体装置のバンプ位置に対応した電極パッドとそれ以外の半導体装置およびその他の電子部品の電極パッドまたはリードに対応したパッドまたはリードを有し、かつ全てのパッドまたはリード表面が大きさ0.5〜40μmφのはんだ粒子を核として酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度はんだで被覆された実装基板に、半導体装置およびその他の電子部品を搭載して構成されたことを特徴とする電子装置。
【請求項8】
実装基板に半導体装置または電子部品をはんだ接合した電子装置の製造方法において、はんだ接合される電極パッドまたはリード部以外が保護膜で覆われている実装基板の露出している電極パッドまたはリードの清浄な金属表面に、大きさが0.5〜40μmφの錫またははんだ粒子を散布して全ての前記電極パッドまたはリード内に該粒子を少なくとも1個以上散在させた後、加熱雰囲気中で前記電極パッドまたはリード金属表面に該粒子を接着させる第1のプロセスと、その後前記金属表面を液温180〜300℃の油系溶媒に溶解しかつ分子構造的に安定かつ少なくともカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物1質量%以上を含有する有機化合物溶液または前記有機化合物100質量%単体液と接触させた後、直ちに酸素濃度5ppm以下の低酸素濃度溶融はんだ液に接触させ、その後、直ちに再び前記有機化合物溶液または100質量%有機化合物単体液と接触させることにより前記電極パッドまたはリード表面にはんだ皮膜を形成させる第2のプロセスを経てはんだ皮膜が形成された実装基板の、所定のパッドまたはリード上に半導体装置およびそれ以外の電子部品を搭載してはんだ接合することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項9】
前記請求項8に記載の電子装置の製造方法において、第2のプロセスで実装基板を前記有機化合物溶液および低酸素濃度溶融はんだ液に接触させる方法として、液温180〜300℃のパルミチン酸またはステアリン酸のいずれか1種以上を5〜80質量%と残部エステル合成油からなる有機脂肪酸溶液を上層に配し、下層が錫を主成分とし銀、銅、ニッケル、ゲルマニウムのいずれか1種類以上の金属を添加した酸素濃度5ppm以下の溶融はんだ液で構成された上下2層の液中に該半導体装置を上層液、下層液の順に浸漬し再び上層液中を通過させて引き出すことにより、はんだ皮膜を形成させた実装基板の所定のパッドまたはリード上に半導体装置およびそれ以外の電子部品を搭載してはんだ接合することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項10】
前記請求項8に記載の電子装置の製造方法において、第2のプロセスで実装基板を前記有機化合物溶液または低酸素濃度溶融はんだ液に接触させる方法として、液温180〜300℃のパルミチン酸またはステアリン酸のいずれか1種以上を5〜80質量%と残部エステル合成油からなる有機脂肪酸溶液と、錫を主成分とし銀、銅、ニッケル、ゲルマニウムのいずれか1種類以上の金属を添加した酸素濃度5ppm以下の溶融はんだ液とをそれぞれの給液管またはノズルから噴流させて電極パッドに吹きかけるか、溢流する液中を通過させてパッドまたはリードにはんだ皮膜を形成させた実装基板の所定のパッドまたはリード上に半導体装置およびそれ以外の電子部品を搭載してはんだ接合することを特徴とする電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−211137(P2011−211137A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93487(P2010−93487)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(506356450)ホライゾン技術研究所株式会社 (8)
【Fターム(参考)】