説明

半導体装置及び電子機器

【課題】電極又はリードの間隔の狭小化を防止することができる半導体装置及び電子機器を提供することにある。
【解決手段】半導体装置は、電極12を有する半導体チップ10と、リード22が形成された基板20と、電極12とリード22との接合部30と、を有する。接合部30は、共晶合金32を含む。電極12のリード22に対する接合面と、リード22の電極12に対する接合面とは、異なる大きさを有するように形成されている。共晶合金32を含む接合部30の外形は、電極12及びリード22のうち接合面の大きい方の外形と同等又はそれより小さく形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの電極と基板のリードとをフェースダウンボンディングする工程では、半導体チップまたは基板に加圧力と加熱とを加えて、バンプとリードとを接合する。このように、半導体チップと基板との接合部を加熱した後に、加熱された接合部を冷却する。この場合、基板と半導体チップとの熱膨張率差によって、冷却時に基板と半導体チップとの収縮率差が生じるため、電極とリードとの接続不良が生じていた。このため、従来は、冷却時において、電極とリードとの接合部に、接合部の加熱中に加えられる加圧力と等しい加圧力を加えることにより、上記不良が生じるのを防止していた。
【0003】
しかし、この場合、電極がそのピッチ方向に潰れ過ぎたり、特に電極とリードとの間に共晶合金が形成される場合は、電極とリードの合金がこれらの側面方向に設けられやすかった。その結果、隣同士の電極及びリードがショートしやすく、電極(リード)の狭ピッチ化が難しく、ICの多ピン化に対応できないという問題があった。また、アンダーフィル材等の樹脂がバンプ(リード)間に充填されにくくなるため、ボイドが発生しやすい等の問題があった。
【特許文献1】特開平5−144878号公報
【特許文献2】特開2002−289768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の問題点を解決するもので、その目的は、接合部間のピッチの狭小化を防止することができる半導体装置及びその製造方法並びに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係る半導体装置の製造方法は、電極を含む半導体チップを基板にフェースダウンボンディングする工程を含み、
前記フェースダウンボンディング工程では、前記半導体チップと前記基板との接合部を加熱した後に、加熱された前記接合部を冷却し、
前記接合部の加熱中及び冷却中には、前記接合部に加圧力が加えられており、
前記接合部の加熱中に前記接合部に加えられる加圧力よりも、前記接合部の冷却中に前記接合部に加えられる加圧力のほうが小さい。
本発明によれば、冷却中の加圧力が加熱中の加圧力よりも小さいので、接合部が、その形成前後に電極又はリードの側面方向へ変形することを抑えることができる。さらに、接合部に共晶合金が形成される場合には、共晶合金が電極又はリードの側面方向に設けられるのを抑えることができる。したがって、接合部の狭ピッチ化が可能である。さらに、接合部の加熱中だけでなく冷却中にも、接合部に加圧力が加えられているので、基板と半導体チップとの熱膨張率差による収縮率差によって、電極とリードとの電気的な接続に不良が生じるのを防ぐことができる。
(2)この半導体装置の製造方法において、
さらに、前記フェースダウンボンディング工程の後に、少なくとも前記半導体チップと前記基板との間に樹脂を封入する工程を含んでもよい。
(3)この半導体装置の製造方法において、
前記接合部の加熱を終了すると同時に、前記接合部の加熱中に加えられた前記加圧力の減圧を開始してもよい。
(4)この半導体装置の製造方法において、
前記接合部の加熱を終了した後に、前記接合部の加熱中に加えられた前記加圧力の減圧を開始してもよい。
(5)この半導体装置の製造方法において、
前記接合部の冷却は、加熱を解除して、自然冷却することにより行ってもよい。
(6)この半導体装置の製造方法において、
前記接合部の冷却は、前記接合部にエアーを吹き付けて冷却することにより行ってもよい。
(7)この半導体装置の製造方法において、
前記電極の前記リードに対する接合面と、前記リードの前記電極に対する接合面とは、異なる大きさを有するように形成され、
前記電極及び前記リードのうち、少なくとも小さい前記接合面を有するものは、内部層と、前記内部層の少なくとも一部を覆う表面層と、を含み、
前記表面層が、前記内部層よりも融点が低くてもよい。
(8)この半導体装置の製造方法において、
前記フェースダウンボンディング工程で、少なくとも前記電極の前記表面層と前記リードの前記表面層によって共晶合金を形成してもよい。
(9)この半導体装置の製造方法において、
前記接合部の冷却中に加える加圧力は、前記電極及び前記リードの接合状態を保持する程度の加圧力であってもよい。
(10)本発明に係る半導体装置は、上記方法によって製造されたものである。
(11)本発明に係る半導体装置は、電極を有する半導体チップと、
リードが形成された基板と、
前記電極と前記リードとの接合部と、
を有し、
前記接合部は、共晶合金を含み、
前記電極の前記リードに対する接合面と、前記リードの前記電極に対する接合面とは、異なる大きさを有するように形成され、
前記共晶合金を含む前記接合部の外形は、前記電極及びリードのうち前記接合面の大きい方の外形と同等又はそれより小さく形成されてなる。
本発明によれば、共晶合金が電極又はリードの内側に収まっているので、接合部の狭ピッチ化が可能である。
(12)本発明に係る電子機器は、上記半導体装置を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る半導体装置を示す図である。半導体装置は、半導体チップ10と基板20を有する。半導体チップ10は、集積回路チップである。半導体チップ10は、複数の電極12を有する。各電極12は、パッド14及びバンプ16からなる。パッド14は、例えばアルミニウムから形成され、バンプ16は、例えば金または金と銅とを含む合金から形成されている。バンプ16は、メッキで形成してもよいし、ワイヤーボンディングのボールによって形成してもよい。
【0007】
基板20は、フレキシブル基板であってもよいし、フィルムであってもよいし、リジット基板であってもよい。基板20は、例えばポリイミド樹脂からなるベース基板の上に複数のリード22が形成されている。複数のリード22によって配線パターンが形成される。図3に示すように、半導体チップ10の電極12(バンプ16)と接合される前のリード22は、表面層24と内部層26とを有してもよい。例えば、表面層24は、スズ(Sn)などのろう材で、内部層26は、銅(Cu)から形成されてもよい。また、表面層24又は内部層26を複数層で形成してもよい。
【0008】
半導体チップ10は、基板20にフェースダウンボンディングされている。すなわち、半導体チップ10の電極12が設けられた面と基板20のリード22が設けられた面とが対向した状態で、電極12(バンプ16)とリード22とが接合されている。図3に示すように、電極12(バンプ16)のリード22に対する接合面と、リード22の電極12(バンプ16)に対する接合面とは、異なる大きさになっていてもよい(例えば前者が後者より大きい)。電極12(バンプ16)及びリード22のうち、小さい接合面を有するものの表面層24は、その内部層26よりも融点が低いものでもよい。また、電極12の少なくとも表面層(バンプ16の少なくとも表面層)と、リード22の少なくとも表面層24とは、同じ材料から形成されてもよいし、異なる材料から形成されていてもよい。
【0009】
図4に示すように、電極12(バンプ16)とリード22との接合部30は、共晶合金32(例えばAu−Sn共晶)を含むものでもよい。接合部30とは、電極12とリード22とのうち、金属接合方式または接着接合方式などの接合方式により接合される、または、接合された部分である。この場合、共晶合金32を含む接合部30の外形は、電極12(バンプ16)又はリード22のうち大きいほうの一部であって前記接合部30に隣接する部分の外形と、同等もしくはそれより小さく形成される。このため、電極12又はリード22間のピッチを十分確保できるため、電極12又はリード22間のショートを防ぐことができ、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0010】
さらに、半導体チップ10と基板20との間に、少なくとも電極12とリード22との一部を覆うように、絶縁性の樹脂(例えばアンダーフィル材36)が設けられていてもよい。
【0011】
次に、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。半導体装置の製造方法は、フェースダウンボンディング工程によって、半導体チップ10を基板20に実装することを含む。例えば、図2に示すように、半導体チップ10の電極12が形成された面と、基板20のリード22が形成された面を対向させ、ボンディングツール40を使用して、電極12とリード22のボンディングを行う。この際、基板20または半導体チップ10上に、絶縁性の接着剤が設けられた状態でボンディングを行ってもよい。図3及び図4は、図2の部分拡大図である。ボンディングツール40は、加圧及び加熱用のツールであってもよいし、加圧用のみのツールであってもよい。
【0012】
図5は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。図5において、横軸は時間(秒)を示し、縦軸は加圧力(N)及び温度(℃)を示す。また、実線は接合部30の温度を示し、破線は接合部30に加えられる加圧力を示す。接合部30とは、電極12とリード22とのうち、金属接合方式または接着接合方式などの接合方式により接合される、または、接合された部分である。フェースダウンボンディング工程では、図3または4に示すように、半導体チップ10と基板20と(電極12とリード22と)の接合部30を加熱する。その後、加熱された接合部30を冷却する。例えば、図5に示すように、時間t1まで、接合部30に加えられる加圧力がP2になるように、ボンディングツール40を降下させて、加圧力がP2になったらボンディングツール40の降下を停止させる。時間t2までに、接合部30の温度を接合部30が形成される温度T2まで昇温させ、時間t2からt3まで接合部30の温度をT2のまま維持する。時間t2からt3までの間、接合部30に加圧力P2を加えるとともに、接合部30を温度T2で加熱する。ここで、時間t1とt2とは、同時であってもよい。時間t3からt4までの間に、接合部30に加えられる加圧力がP1になるまで、ボンディングツール40を上昇させる。時間t3からt5までの間に、接合部30に加圧力P1を加えたまま、接合部30が温度T1になるまで冷却する。この冷却は、ボンディングツール40を上昇させると同時に開始してもよいし、加圧力がP1になった後に開始してもよい。また、加熱を解除することにより自然冷却してもよいし、エアーを吹き付けて積極的に冷却してもよい。時間t5からt6までの間に、ボンディングツール40を、接合部30に加えられる加圧力がゼロになるまで、さらに上昇させる。例えば、加熱(約490℃)を約1秒間行い、その後、約5秒間の冷却を行う。
【0013】
例えば、接合部30の加熱中に、接合部30に加圧力(約68.64655N(7kgf)/半導体チップ)を加える。そして、接合部30の冷却中に、接合部30の加熱中に加えられた加圧力(約68.64655N(7kgf)/半導体チップ)よりも小さい加圧力(約19.6133N(2kgf)/半導体チップ)を接合部30に加える。接合部30の加熱終了後に、接合部30の加熱中に加えられた加圧力(約68.64655N(7kgf)/半導体チップ)を減圧してもよい。そして、冷却期間も終了すると、ボンディングツール40を上昇させる。すなわち、接合部30への加圧力をゼロにする。
【0014】
この場合、図4に示すように、電極12(バンプ16)とリード22との接合部30は、共晶合金32(例えばAu−Sn共晶)を含むものでもよい。共晶合金32は、接合前の電極12(バンプ16)及びリード22の側面方向に設けられない、または、設けられるのをできるだけ防ぐことができる。これは、冷却時に接合部30に加えられる加圧力を小さくすることによって、電極12とリード22との上面の共晶合金32又は表面層24が、電極12又はリード22の側面方向に流れにくくなるためである。これにより、電極12又はリード22間のピッチを十分確保できるため、電極12又はリード22間のショートを防ぐことができ、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0015】
以上の工程によって、図4に示すように、電極12とリード22を接合する。その後、半導体チップ10と基板20との間に、図1に示すように、アンダーフィル材36等の絶縁性の樹脂を充填してもよい。上記のように、電極12又はリード22が潰れにくいため、その側面方向に幅が広がりにくく、また、共晶合金32が側面方向に設けられにくいため、絶縁性の樹脂を電極12間又はリード22間に、樹脂が注入されやすくなる。
【0016】
本実施の形態によれば、接合部30に加えられる冷却中の加圧力が、加熱中の加圧力よりも小さいので、バンプ16が、その側面方向に大きく潰れにくい。すなわち、接合部30が側面方向に大きくなりにくい。さらに、共晶合金32が電極12の側面方向に設けられるのを防ぐことができる。したがって、接合部30、電極12(バンプ16)又はリード22の狭ピッチ化が可能である。また、アンダーフィル材36を充填する領域を大きく確保することができ、ボイドの発生を防止することができる。狭ピッチの電極12を有する半導体チップ10のフェースダウンボンディングに、本実施の形態は効果的である。
【0017】
図6は、本発明の実施の形態に係る半導体装置の一例を示す図である。この例では、COF(Chip On Film)の形態が適用された半導体装置1が、液晶パネル50に取り付けられている。半導体装置1は、上述した半導体チップ10及び基板20を有する。液晶パネル50を電子機器ということもできる。本発明の実施の形態に係る半導体装置を有する電子機器として、図7にはノート型パーソナルコンピュータ60が示され、図8には携帯電話70が示されている。
【0018】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る半導体装置を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図3】図3は、図2の一部拡大図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る半導体装置の接合部を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明する図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係る電子機器を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係る電子機器を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係る電子機器を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
10 半導体チップ、 12 電極、14 パッド、16 バンプ、20 基板、22 リード、24 表面層、26 内部層、30 接合部、32 共晶合金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を有する半導体チップと、
リードが形成された基板と、
前記電極と前記リードとの接合部と、
を有し、
前記接合部は、共晶合金を含み、
前記電極の前記リードに対する接合面と、前記リードの前記電極に対する接合面とは、異なる大きさを有するように形成され、
前記共晶合金を含む前記接合部の外形は、前記電極及びリードのうち前記接合面の大きい方の外形と同等又はそれより小さく形成されてなる半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−41559(P2006−41559A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302048(P2005−302048)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【分割の表示】特願2002−4608(P2002−4608)の分割
【原出願日】平成14年1月11日(2002.1.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】