説明

半導体装置

【課題】 半導体レーザがファイスダウン実装される場合においても、さらに半導体層と電極とがオーミック接続された領域以外の領域において絶縁膜や保護膜等が介在している場合においても、電極材料との良好な密着性を得ることにより、電極の剥がれ等を防止して、信頼性が高く、低電圧化及び高輝度化を実現することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 半導体層上に電気的に接続された電極を有する半導体装置であって、前記半導体層と電極との間の一部の領域において、誘電体膜と縮退半導体からなる密着膜とがこの順に積層され、かつ該密着膜が電極と接触するように介在してなる半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、より詳細には、半導体レーザ素子の電極部分における電極と半導体層及び誘電体膜との密着膜を確保し得る半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置、特に半導体レーザ素子は、小型、軽量、高信頼性及び高出力化が進み、パーソナルコンピュータ、DVD等の電子機器や医療機器等の光源に利用されている。なかでも、III−V族窒化物半導体は、比較的短波長の発光が可能であるため、盛んに研究されている。
【0003】
例えば、窒化物半導体を用いた半導体レーザは、図5に示すように、サファイア基板30上に、中間層31を介して、n型GaN層等からなるn型半導体層32、InGaN多重量子井戸からなる活性層35及び表面にリッジが形成されたp型AlGaN層等からなるp型半導体層36がこの順に積層されて構成されている。n型半導体層32上にはnオーミック電極33及びnパッド電極34が形成されている。p型半導体層36上にはリッジ上面以外の表面が絶縁膜38で覆われ、リッジ上面においてp型半導体層36にオーミック接続されたpオーミック電極39が形成されている。さらに、pオーミック電極39上の一部の領域を除いて、n型半導体層32、活性層35及びp型半導体層36の表面には、保護膜37が形成されており、保護膜37上に、pオーミック電極39と電気的に接続されたpパッド電極40が配置している。
【0004】
このような半導体レーザでは、特定の電極材料を選択したり(例えば、特許文献1及び2)、p型半導体層の不純物濃度を調整したりして(例えば、特許文献3)、半導体層と電極とのオーミック接続をより低抵抗化して、駆動電圧の低減及び発光効率の向上を図っている。
【特許文献1】特開平5−291621号公報
【特許文献2】特開平6−275868号公報
【特許文献3】特開平10−303504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したような種々の方法により、半導体層と電極とのオーミック接続を確保したとしても、その効果は十分でない。特に、半導体レーザがファイスダウン実装される場合には、半導体レーザ素子がバンプ電極等を介してヒートシンク、ステム等にダイボンディングされ、そのダイボンディング時の熱が直接バンプ電極、保護膜37等に伝わることから、それに起因して、半導体レーザの特性に悪影響を及ぼす。つまり、熱で溶解されたバンプ電極等の材料(例えば、Au−Sn共晶材等)が固まる際に、熱による残留応力が発生し、歪みが生じる。その歪みが密着力の弱い部分に集中し、その結果、pパッド電極と絶縁膜との間、絶縁膜とpオーミック電極との間などに剥がれを生じさせる。
【0006】
また、半導体層とpオーミック電極との間に、絶縁膜、保護膜等が介在している場合には、これらの絶縁膜等と電極材料との密着性の悪さに起因して、半導体装置の製造工程で、電極の半導体層へのオーミック接続が損なわれたり、電極自体が剥がれたりするという課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、半導体レーザがファイスダウン実装される場合においても、さらに半導体層と電極とがオーミック接続された領域以外の領域において絶縁膜や保護膜等が介在している場合においても、電極材料との良好な密着性を得ることにより、電極の剥がれ等を防止して、信頼性が高く、低電圧化及び高輝度化を実現することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の半導体装置は、半導体層上に電気的に接続された電極を有する半導体装置であって、前記半導体層と電極との間の一部の領域において、誘電体膜と縮退半導体からなる密着膜とがこの順に積層され、かつ該密着膜が電極と接触するように介在してなることを特徴とする。
【0009】
これにより、電極材料の半導体層及び保護膜(誘電体膜)への良好な密着性を得ることができ、電極の剥がれ等を防止することができる。通常、半導体層がp型の窒化物半導体からなる場合、p型の窒化物半導体と電極との接続はオーミック接触を得るのが困難であり、かつ電極と半導体層との間又は半導体層を保護するための絶縁膜等と電極との密着性が弱い。したがって、このような場合に、本発明の効果を特に有効に発揮することができる。
【0010】
また、上記半導体装置は、密着膜がITO、IZO、GZO、AZOからなる群から選択される少なくとも1種であるか、誘電体膜がZrO2、SiO2、HfO2からなる群から選択される少なくとも1種であるか、電極が少なくともニッケル又はその合金を含む層から構成されていることが好ましい。
これら材料の組み合わせが相まって、より密着性を強固にすることができ、その結果、半導体装置の特性をより向上させることができる。
さらに、誘電体膜と同一材質の膜を含んでなり、半導体層の側面から半導体層上に配置する前記誘電体膜の端部を被覆する保護膜が形成されていることが好ましい。
これにより、フェイスダウン実装を行った場合においても、誘電体膜と保護膜との強固な密着性に起因して、実装時の応力を十分に緩和することができ、両者の剥がれを有効に防止することができる。
【0011】
半導体層表面にストライプ状のリッジが形成されており、かつ半導体層の側面から半導体層上に配置する前記誘電体膜の端部を被覆する保護膜を有し、該保護膜の上面が前記リッジ上面より高い位置に配置されてなるか、保護膜が多層構造で形成されてなることが好ましい。
これにより、フェイスダウン実装を行った場合においても、保護膜によるクッション作用により、リッジやリッジ周辺の膜の損傷や剥がれ等を有効に防止することができる。
【0012】
また、本発明の第2の半導体装置は、表面にストライプ状のリッジが形成された半導体層上に電気的に接続された電極を有する半導体装置であって、前記半導体層と電極との間の一部の領域において、第1絶縁膜が形成されており、前記半導体層の側面から半導体層上に配置され、前記第1絶縁膜と接触するように第2絶縁膜が形成されており、前記第1絶縁膜の少なくとも一部を被覆するように密着膜が形成されており、前記電極は、少なくとも半導体層と対向する面側に、半導体層側に突出する凸部を有し、かつ前記密着膜と接触するように配置されてなることを特徴とする。
これにより、半導体装置の平面積を増大させずに、密着膜と電極との接触面積を最大限に確保することができ、上述した第1の半導体装置の効果を発揮させることができる。
上記半導体装置は、第2絶縁膜の一部を第1絶縁膜が被覆していることが好ましい。
これにより、密着膜と接する余分な界面がないため、第2の絶縁膜と密着性の相性がよくない材料の密着膜も採用可能となる。
また、半導体層上に第2絶縁膜、第1絶縁膜、密着膜がこの順に積層されている領域を有することが好ましい。
これにより、密着膜と接する余分な界面がないため、第2の絶縁膜と密着性の相性がよくない材料の密着膜も採用可能となる。
【0013】
さらに、電極が形成された領域において、第2絶縁膜の上面がリッジ上面より高い位置に配置されてなることが好ましい。
これにより、クッション作用を得ることができ、リッジやリッジ周辺の膜の損傷や剥がれ等を有効に防止することができる。
さらに、本発明の第3の半導体装置は、表面にストライプ状のリッジが形成された半導体層上に電気的に接続された電極を有する半導体装置であって、前記半導体層と電極との間の一部の領域において、第1絶縁膜が形成されており、前記半導体層の側面から半導体層上に配置され、前記第1絶縁膜と接触するように第2絶縁膜が形成されており、前記第1絶縁膜の少なくとも一部を被覆し、その上面の一部がリッジ上面よりも高い位置に配置するように密着膜が形成されており、前記半導体層上に第2絶縁膜、第1絶縁膜、密着膜がこの順に積層されている領域を有し、前記電極は、少なくとも半導体層と対向する面側に、半導体層側に突出する凸部を有し、かつ前記密着膜と接触するように配置されてなることを特徴とする。
これにより、半導体装置の平面積を増大させずに、密着膜と電極との接触面積を最大限に確保することができ、上述した第1の半導体装置の効果を発揮させることができる。
【0014】
また、第2絶縁膜が、第1絶縁膜と同一材質の膜を含んでなることが好ましい。
これにより、第1絶縁膜と第2絶縁膜との強固な密着性に起因して、実装時の応力を十分に緩和することができ、両者の剥がれを有効に防止することができる。
【0015】
さらに、密着膜が、縮退半導体又は白金族系金属からなることが好ましい。
これにより、電極と半導体層又は絶縁膜等との密着性をより強固にすることができる。
また、電極が、第1絶縁膜上から第2絶縁膜上にかけて、密着膜を介して配置されていてもよい。
これにより、密着膜との密着面積を大きくすることができる。
さらに、フェイスダウン実装用であることが好ましい。
これにより、より、放熱性を確保することが可能となり、高性能の半導体装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体装置がファイスダウン実装される場合においても、さらに半導体層と電極とがオーミック接続された領域以外の領域において絶縁膜や保護膜等が介在している場合においても、電極材料との良好な密着性を得ることにより、電極の剥がれ等を防止して、信頼性が高く、低電圧化及び高輝度化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第1の半導体装置は、主として、半導体層、その上に形成される誘電体膜、密着膜及び電極から構成される。
ここで、本発明の半導体装置としては、半導体層をその構成の一部に含む装置の全てを包含する。例えば、発光素子、受光素子、CCD、トランジスタ、キャパシタ、抵抗、サイリスタ、光電変換装置等の変換装置、半導体レーザ及びこれらを2以上組み合わせた回路等が挙げられる。なかでも半導体レーザを構成する半導体層であることが適当である。
【0018】
誘電体膜としては、具体的には、SiO2、SiNx、AlN、Al23、Ta25、ZrO2、SiON、HfO2、Sc23、Y23、MgO等の単層又は積層層が挙げられる。なかでも、ZrO2、SiO2、HfO2が好ましい。これにより、後述する密着膜等の材料との組み合わせによって、より密着性を確保することができる。これらの膜は、例えば、スパッタリング法、ECRスパッタリング法、CVD法、ECR−CVD法、ECR−プラズマCVD法、蒸着法、EB法等の公知の方法で形成することができる。膜厚は、用いる材料等により適宜調整することができ、例えば、400〜2500オングストローム程度、好ましくは400〜1000オングストローム程度が挙げられる。
【0019】
誘電体膜は、半導体層上の一部の領域を露出させるように、半導体層の表面に形成することが好ましい。この誘電体膜を一部の領域を露出させるように形成するのは、後述するように、半導体層上に電極を接続させる領域を確保するとともに、誘電体膜によって電極との接続領域以外の半導体層表面を絶縁、保護等するためである。一部の領域を露出させるように誘電体膜を形成する方法としては、半導体層上全面に、誘電体膜を積層した後、当該分野で公知の方法、例えば、フォトリソグラフィ及びエッチング工程により所望の形状のマスクを形成し、このマスクを用いて誘電体膜をエッチングする方法が挙げられる。あるいは、リフトオフ法等を利用してもよい。
【0020】
密着膜は、誘電体膜上に形成されており、縮退半導体からなる。縮退半導体としては、例えば、ITO、IZO、GZO、AZO等の少なくとも1種が挙げられる。また、別の観点から、透明導電膜、例えば、380〜780nmの光の透過率が80%程度以上の膜から構成されていてもよい。さらに、電気伝導度が高い(例えば、比抵抗が1×10-3Ω・cm程度以下)膜から構成されていてもよい。なお、密着膜としては、縮退半導体以外の材料、例えば、白金系金属(例えば、Pd、Rh、Ru、Os、Ir、Pt等)又はこの酸化物を含む単層又は多層構造であってもよい。なかでも、縮退半導体の単層構造であることが好ましく、さらに、ITO、IZOがより好ましい。つまり、本来、誘電体膜、保護膜等(後述する第1及び第2絶縁膜を含む)の材料との密着性が良好とならない電極材料を用いる場合、および密着性が良好とならない形状又は位置で電極が形成される場合であっても、電極材料等に応じて、電極のより強固な密着性を確保するように、密着膜を設けることを意図する。
【0021】
なお、密着膜は、少なくとも誘電体膜上の一部を被覆するように形成されていることが必要であり、誘電体膜の全表面を被覆するように形成されていることが好ましい。つまり、少なくとも後述する電極が誘電体膜とは直接接触することなく、密着膜にのみ接触するように、密着膜が配置されていることが好ましい。したがって、密着膜は、誘電体膜上の一部のみに形成されていてもよいし、誘電体膜上の全部に、誘電体膜と同じ大きさ及び形状で形成されていてもよいし、誘電体膜の一部の上から半導体層上の一部の上にわたって形成されていてもよいし、誘電体膜よりも大きく、誘電体膜上の全表面を被覆し、かつ半導体層と直接接触するように形成されていてもよい。
【0022】
密着膜は、上述した誘電体膜と同様に、当該分野で公知の方法によって形成することができ、所定の形状にパターニングする場合には、上述したように、フォトリソグラフィ及びエッチング法、リフトオフ法等を利用することができる。パターニングは密着膜の形状によっては、上述した誘電体膜と同時に行ってもよい。密着膜の膜厚は、用いる材料等により適宜調整することができ、例えば、50〜500オングストローム程度、好ましくは100〜300オングストローム程度が挙げられる。
【0023】
電極は、電気的に接続させる領域以外においては、保護膜、密着膜、誘電体膜等を介して半導体層上に配置される。電極は、導電性材料により形成されているのであれば、その材料は特に限定されるものではなく、半導体層に対するオーミック接触が得られるが得られる材料であることが好ましい。
【0024】
例えば、電極を形成する半導体層が、後述するようにp型であれば、パラジウム、白金、ニッケル、金、チタン、タングステン、銅、銀、亜鉛、錫、インジウム、アルミニウム等の金属又は合金の単層膜又は積層膜により形成することができる。具体的には、Ni−Au系、Ni−Au−Pt系、Pd−Pt系、Ni−Pt系、Pt−Au系、ITO系等が挙げられる。より具体的には、p電極として、ITO、Ni/ITO、ITO/Pt、ITO/Rh、Ni/Au、Ni/Au/Pt、Pd/Pt、Rh/Ir/Pt、Pt/Au、Ir/Au、Ir/Pt等が挙げられる。なかでも、ニッケル又はその合金を含む単層膜、あるいは密着膜と接触する側においてニッケル又はその合金を含む層が配置された積層膜であることが好ましい。これにより、電極を強固に半導体層及び/又は絶縁膜、保護膜等に密着させることができる。電極の膜厚は、用いる材料等により適宜調整することができ、例えば、500〜1500オングストローム程度が適当である。
【0025】
また、この電極上に、通常パッド電極を形成してもよい。パッド電極(好ましくは、pパッド電極)は、多層構造であることが好ましい。これにより、電極剥がれを抑制することができる。
【0026】
パッド電極を構成し、電極に接触する第1層は、パラジウム、白金、ニッケル、金、チタン、タングステン、銅、銀、亜鉛、錫、インジウム、アルミニウムから選択されることが好ましい。第1層上に積層される第2層は、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、白金、タングステン、モリブデンから選択されることが好ましい。さらに第2層上には第3層が積層されることが好ましく、この層は、Auなどの一般的なバンプ電極と密着性のよい材料から選択することが好ましい。また、パッド電極の各層の間に別の材料層を有していてもよい。
【0027】
パッド電極の具体例は、Ti−Pt−Au、Ti−Pd−Au、W−Pt−Au、W−Pd−Auの多層膜が挙げられる。このような多層膜は、第1層を有することで、第1層より上の材料が電極に拡散し、それに起因して剥がれが生じることを防止する。また、第2層を有することで、Au−Snなどのメタライズ層が拡散してパッド電極が剥がれてしまうことを防止する。
【0028】
また、電極を形成する半導体層が、後述するようにn型であれば、Ti−Al系、V−Pt系、Ti−Al−Ti−Pt系、W−Al−W系、Ti−Mo−Ti−Pt系、Ti−Pt系等が挙げられる。この場合の電極の膜厚は、例えば、100nm〜10μm程度であることが好ましい。
【0029】
電極材料は、例えば、誘電体膜と同様に、当該分野で公知の方法等により形成することができる。電極材料は、半導体層上のほぼ全面に形成した後、フォトリソグラフィ及びエッチング工程、リフトオフ法、EB法等によりパターニングする。なお、電極は、少なくとも半導体層上にのみ形成していればよいが、半導体層の一部とオーミック接続するとともに、密着膜上において密着膜と強固に密着した状態で配置させることが好ましい。また、この際、電極が誘電体膜とは直接接触しないように形成することが重要である。
【0030】
本発明の半導体装置を構成する半導体層としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体層、GaAs、AlN、InP、GaN、AlGaN、AlInGaN、InN等のIII−V族化合物半導体層、ZnSe、CdTe、CdS等のII−VI族化合物半導体層等、種々の半導体層が挙げられる。なかでも、窒化物半導体、つまり、GaN、AlN、InN又はこれらの混晶(例えば、InxAlyGa1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)等が好ましい。半導体層は、p型不純物(例えば、Mg、Zn、Cd、Be、Ca、Ba等)又はn型不純物(例えば、Si、Sn、Ge、Se、C、Ti等)をドープされていてもよい。ドーピング濃度は、例えば、1×1016〜1019cm-3程度が挙げられる。特に、p型不純物を含有した窒化物半導体層がより好ましい。
【0031】
これらの半導体層は、MOVPE、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、HVPE(ハライド気相成長法)、MBE(分子線気相成長法)等、当該分野で公知の方法のいずれによっても形成することができる。
【0032】
本発明の半導体装置は、例えば、基板上に、n型半導体層、活性層、p型半導体層がこの順に積層されて形成されることが好ましい。
基板としては、半導体層とは異なる半導体、例えば、窒化物半導体と異なる材質からなる異種基板を用いることができる。例えば、C面、R面及びA面のいずれかを主面とするサファイア、スピネル(MgAl24)、GaAsのような基板、窒化物半導体と格子整合する酸化物基板、ZnS、ZnO、Si、SiC、AlN、GaN等の導電性基板等が挙げられる。好ましくは、異種基板上に結晶欠陥の少ない下地層(例えば、転位数が1×107個/cm2以下、好ましくは1×106個/cm2以下)を成長させた擬似基板であることが好ましい。また、これら擬似基板から異種基板を除去した半導体基板、窒化物半導体基板等であってもよい。これら擬似基板の下地層、半導体基板又は窒化物半導体基板は、n型不純物を含有していることが好ましい。
【0033】
なお、絶縁性基板を最終的に取り除かない場合、後述する、p電極およびn電極はいずれも半導体層上の同一面側に形成されることになり、フェイスアップ実装、すなわち半導体層側を主光取出し面とすることができる。また、フリップチップ実装、すなわち絶縁性基板側を主光取出し面としてもよい。この場合、p電極及びn電極の上には、外部電極等と接続させるためのメタライズ層(バンプ:Ag、Au、Sn、In、Bi、Cu、Znの金属又は合金及び半田等、特に、半田、Au−Sn共晶材、Agペースト、In合金等が好ましく、さらにボンディング強度の強い及び/又は放熱性の良いものがより好ましい)がそれぞれ形成され、このメタライズ層がサブマウント上に設けられた正負一対の外部電極とそれぞれ接続される。さらにサブマウントに対してワイアなどが配線される。また、最終的に基板を除去して、フェイスアップ実装又はフリップチップ実装のいずれに用いてもよい。さらに、基板に対して対向して(基板の両側に)、p電極及びn電極が配置してもよい。
【0034】
特に、投入電力を大きくして高出力のビームを得ようとするレーザ素子について、出力の増大に伴ってより放熱性を増大させたり、保護膜又は誘電体膜等の膜厚を増大させることが必要であるが、このような場合においても、装置中で最も熱の発生しやすい箇所にヒートシンクを設けるなどのファイスダウン実装を行う際の、電極と半導体層又は絶縁膜等との間の密着性を確保することにより、フェイスダウン実装をより確実に行うことが可能となる。また、絶縁膜等の膜厚の増大に起因する電極の剥がれ等も同時に解消することが可能となる。その結果、放熱性を確保することが可能となり、より高性能の半導体装置を提供することができる。
【0035】
また、基板は、積層半導体層の内部に微細なクラックの発生を防止するために、一面又は両面に、0.01〜0.3°程度又は0.05〜2°程度のオフアングル角で、ステップ状にオフアングルしたものを用いることが好ましい。オフアングル角をこのような角度にすることにより、横方向に成長する半導体層の内部の微細なクラックの発生を防止することができる。また、選択成長する半導体層の面状態がステップ状にならず、その上に素子構造を形成しても、ステップが強調されることなく、素子自体のショートや閾値の上昇を招くことがなく、よって、寿命特性を向上させることが可能となる。
【0036】
基板上には、半導体層等を形成する前に、バッファ層、下地層等の半導体層を成長させてもよい。また、これらの層を形成した後、基板を研磨などの方法により薄膜化、除去又はオフアングル角を導入してもよいし、素子構造を形成した後に薄膜化又は除去してもよい。
【0037】
特に、バッファ層を介することにより、基板と積層半導体層との間の格子定数の不整を緩和して、その上に形成される積層半導体層の転位を効率よく低減させることができる。バッファ層としては、低温、例えば200〜900℃程度で成長させたものが好ましく、例えば、AlN、GaN、AlGaN及びInGaN等が挙げられる。バッファ層の膜厚は、数十〜数百オングストローム程度が適当である。
【0038】
バッファ層上に、ラテラル成長による下地層を形成する場合には、さらに転位を低減させることができる。この下地層は、表面に凹凸を有する基板を用いるか、あるいは、バッファ層表面に周期的なストライプ状、格子状、網目状又は島状等の半導体層による成長核を形成し、さらに成長核を起点として、半導体層を、互いに接合するまで横方向に成長させることにより形成することができる。このような基板又はバッファ層を用いることにより、基板と下地層との界面に発生する応力を緩和することができ、半導体層等の歪み、転位などの欠陥を防止することができる。
【0039】
また、基板上にパターン化された保護膜を成長させ、保護膜上に半導体層を成長させた後、横方向成長を停止することにより周期配列されたT字状断面を有する半導体層を形成する。この半導体層には横方向に成長した領域に低欠陥領域が形成される。さらに、この半導体層の上面又は上面及び横方向成長した側面を成長核として、再度半導体層を、互いに接合するまで成長させ、基板の全面を被覆する半導体層を形成する。これにより、半導体層が互いに接合した部分の直下は空洞が形成され、接合部には転位が集中することなく低転位領域が広範囲で形成される。具体的な転位数は、上述したとおりである。
【0040】
ここでの保護膜としては、この膜の表面に半導体層が成長しないか、成長しにくい性質を有する膜であることが適当であり、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の酸化物;窒化チタン等の窒化物;これらの積層膜;タングステン、チタン、タンタル等の1200℃以上の融点を有する高融点金属等の膜が挙げられる。なかでも、酸化ケイ素及び窒化ケイ素が好ましい。これらの膜をパターン化して形成する方法として、フォトリソグラフィ技術を用いて所定形状のマスクを形成し、そのマスクを介して、例えば、蒸着、スパッタ法、CVD法等の気相成膜技術を用いて成膜する方法が挙げられる。保護膜のパターン化形状は、例えば、ドット状、ストライプ状、碁盤面状、メッシュ状等が挙げられ、なかでもストライプ状が好ましく、さらに、ストライプがオリエンテーションフラット面(例えば、サファイア面のA面)に垂直に配置する形状がより好ましい。
【0041】
本発明における半導体層を構成する活性層は、例えば、第1導電型半導体層と第2導電型半導体層との接合面に平行な面内であって、その内部においてストライプ状に電流が狭窄された領域、いわゆる導波路を有している。活性層は、単一の材料(元素又は化合物等、以下同義)での単層又は多層構造であってもよいが、異なる材料(組成元素が異なる化合物、組成元素の種類が同じで組成比が異なる化合物等、以下同義)での多層構造、特に量子井戸構造(単一量子又は多重量子井戸)であることが好ましい。なお、半導体層が下地層の上に形成されている場合には、導波路領域の下方の領域における下地層は、上述したような低転位領域が配置していることが好ましい。活性層は、単一の材料(元素又は化合物等、以下同義)での単層又は多層構造であってもよいが、異なる材料(組成元素が異なる化合物、組成元素の種類が同じで組成比が異なる化合物、以下同義)での多層構造、特に量子井戸構造(単一量子又は多重量子井戸)であることが好ましい。
【0042】
第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層は、活性層をサンドイッチするように配置しており、例えば、それぞれn型及びp型のクラッド層として形成されていることが適当である。また、クラッド層の他に、第1導電型半導体層としては、クラッド層と活性層との間あるいはクラッド層の活性層とは反対側に、光ガイド層、クラック防止層、コンタクト層、キャップ層等が、第2導電型半導体層としては、活性層とクラッド層との間あるいはクラッド層の活性層とは反対側に、電子閉じ込め層、光ガイド層、キャップ層、コンタクト層等が、1種又は2種以上組み合わせられて設けられていてもよい。
【0043】
本発明における半導体層の具体的例としては、基板上に、下地層、n型不純物ドープ窒化物半導体層からなるn型コンタクト層、n型不純物ドープInaGa1-aN(0.05≦a≦0.2)からなるクラック防止層(省略可能)、AlbGa1-bN(0.05≦b<0.3)を含んでなる超格子多層膜構造のn型クラッド層、クラッド層よりもバンドギャップエネルギーの小さい窒化物半導体層(InAlGaN)からなるn型ガイド層、IncGa1-cN(0≦c<1)からなる多重量子井戸構造の活性層、p型不純物ドープAldGa1-dN(0<d≦1)からなる少なくとも1層以上のp型電子閉じ込め層(省略可能)、クラッド層よりもバンドギャップエネルギーの小さい窒化物半導体層(InAlGaN)からなるp型ガイド層、AleGa1-eN(0.05≦e<0.3)を含んでなる超格子多層膜構造のp型クラッド層、p型不純物ドープ窒化物半導体層からなるp型コンタクト層からなるストライプ形状のリッジを有する窒化物半導体層の積層構造が挙げられる。
【0044】
基板自体が導電性を有していれば、下地層、n型コンタクト層等を省略し、基板の裏面側(活性層等が形成されていない側)に直接電極を形成してもよい。
第2導電型半導体層の表面には、ストライプ状のリッジが形成されていることが好ましい。リッジの幅は特に限定されるものではないが、0.1〜10μm程度、さらに0.5〜5μm程度が適当であり、1.5〜5μm程度がより好ましい。リッジの高さは、第2導電型半導体層の膜厚に依存して適宜調整することができ、例えば、0.2〜3μm程度が挙げられ、0.3〜0.5μm程度が好ましい。
【0045】
また、第2導電型半導体層、活性層及び第1導電型半導体層の一部は、例えば、リッジの一方向側において、通常、膜厚方向に一部除去されることにより第1導電型半導体層の上面の一部が露出されているが、これとは反対側、つまりリッジの他方側において、第2導電型半導体層の一部又は全部が、第2導電型半導体層と活性層の一部又は全部とが、第2導電型半導体層と活性層と第1導電型半導体層の一部又は全部とが膜厚方向に除去されていてもよい。これにより、活性層−第2導電型半導体層間(あるいは、さらに活性層−第1導電型半導体層間)の容量を小さくすることができ、ひいては、駆動初期のインピーダンスを安定化させ、より迅速にレーザ光を発振させることができるとともに、ウォーミングアップを短くし、タイムロスなく応答速度の速い装置を得ることが可能となる。
【0046】
本発明の半導体装置においては、さらに、保護膜が形成されていてもよい。保護膜は、少なくとも密着膜の一部を被覆していればよく、誘電体膜の一部を被覆していてもよい。誘電体膜を被覆する場合の形態は特に限定されるものではないが、半導体層上面、つまり、活性層における導波路領域の上方における光の閉じ込め効果を損ねずに十分な制御をすることができることが必要である。例えば、リッジが形成されている場合に、そのリッジの端部から5〜15μm程度離れたところまで、また別の観点から、半導体層(例えば、第2導電型半導体層)の幅にかかわらず、半導体層上面の60%程度以上、好ましくは80%程度以上被覆するように形成されていてもよい。保護膜の形成により、特にフェイスダウン実装時の保護膜/誘電体膜の界面における応力の十分に緩和することができ、両者の剥がれを有効に防止することができる。
【0047】
保護膜は、誘電体と同一材料(材質)の膜を含んで形成されていることが好ましい。ここで同一材料とは、例えば、誘電体膜がZr酸化物によって形成されている場合には、保護膜もZr酸化物を含んで形成されていることを意味する。なお、製造方法等によって、組成に若干の差異が生じていてもよい。また、誘電体膜がZr単層膜で形成されている場合には、保護膜はZr単層膜であってもよく、少なくともZr酸化物をその中に含む積層膜であってもよい。例えば、誘電体膜と接触する側において、Zr酸化物からなる膜が配置した積層膜が好ましく、Zr酸化物を下層のみに含むSi酸化物膜との2層構造積層膜(Zr酸化物/Si酸化物膜等)、Zr酸化物膜をSi酸化物膜の上下に配置した3層構造膜(Zr酸化物/Si酸化物/Zr酸化物膜等)等が挙げられる。また、別の観点から、保護膜は、Ti、Wとの密着性がよいSiNなどの窒化物を用いてもよいし、酸化物と窒化物との積層膜(例えばSiO2及びSiNの積層膜)としてもよい。
【0048】
保護膜は、実質的に誘電体膜よりも厚膜、つまり、少なくとも半導体層の側面を種々のダメージ、作用等から保護するのに十分な膜厚を有していることが好ましい。具体的には、2000〜7000Å程度が適当であり、4000〜5000Å程度が挙げられる。特にSi酸化物とZr酸化物との積層膜では、Zr酸化物/Si酸化物膜の膜厚が200〜1300/1000〜40000Å程度、Zr酸化物/Si酸化物/Zr酸化物膜の膜厚が200〜1300/1000〜4000/200〜1300Å程度、総膜厚が4000〜5000Å程度が挙げられる。
【0049】
なお、半導体層がリッジを有している場合には、保護膜の上面は、リッジ上面よりも高い位置に配置していることが好ましい。これにより、リッジに対するクッション作用を発揮することができ、リッジやリッジ周辺の応力を緩和させることができる。
【0050】
また、本発明の第2及び3の半導体装置は、
(1)半導体層表面にストライプ状のリッジが形成されており、
(2)半導体層と電極との間の一部の領域において、第1絶縁膜が形成されており、
(3)半導体層の側面から半導体層上に配置され、第1絶縁膜と接触するように第2絶縁膜が形成されており、
(4)第1絶縁膜の少なくとも一部を被覆するように密着膜が形成されており、
(5)電極は、少なくとも半導体層と接続された面側に、半導体層側に突出する凸部を有し、かつ前記密着膜と接触するように配置されている以外は、実質的に第1の半導体装置
と同様の構成、部分又はこれに準じた構成を有し、同様又はこれに準じて機能する。このような構成を採用することにより、半導体装置の平面積を増大させずに、密着膜と電極との接触面積を最大限に確保することができる。
【0051】
ここで、第1絶縁膜は、上述した誘電体膜と、形状及び形成位置が一部異なることを除いて、同様の材料及び方法等で形成することができる。第1絶縁膜は、少なくとも後述する第2絶縁膜に接触しており、第1絶縁膜の一部が、後述する第2絶縁膜の少なくとも一部を被覆するように形成されていることが好ましい。これにより、密着膜と接する余分な界面がないため、第2の絶縁膜と密着性の相性がよくない材料の密着膜も採用可能となる。同時に、第1絶縁膜の一部は、半導体層の一部を被覆するように形成されていることが好ましい。
【0052】
また、第2絶縁膜は、上述した保護膜と、形状及び形成位置が一部異なることを除いて、同様の材料及び方法等で形成することができる。第2絶縁膜は、半導体層の上面の一部を直接被覆するように配置していること好ましい。これにより、半導体層上に第2絶縁膜及び第1絶縁膜がこの順に積層されている領域を有することができる。また、第2絶縁膜は、電極が形成された領域において、その上面がリッジ上面より高い位置に配置されるように形成されていることが好ましい。これにより、リッジに対するクッション作用を発揮することができ、リッジやリッジ周辺の応力を緩和させることができる。なお、第2絶縁膜は、第1絶縁膜と同一材質の膜を含んで形成されていることが好ましい。これにより、強固な密着性を確保することができる。
【0053】
密着膜は、主として、第1絶縁膜及び/又は第2絶縁膜と電極との密着性を確保するために形成される膜であり、実質的に上述したものと同様に形成することができる。特に、半導体基板上に、第2絶縁膜、第1絶縁膜及び密着膜がこの順に形成された領域(図3中の矢印a参照)が確保されるように、密着膜が配置していることが好ましい。これにより、密着膜と接する余分な界面がないため、第2の絶縁膜と密着性の相性がよくない材料の密着膜も採用可能となる。また、密着膜は、その上面の一部がリッジ上面よりも高い位置に配置するように形成されていることが好ましい(図3参照)。これによりクッション作用を確保することができる。
【0054】
電極は、少なくとも半導体層と対向する面側に、半導体層側に突出する凸部を有し、かつ密着膜と接触するように配置されていることが好ましい。この場合の凸部は、図3に示したように、リッジの両側において、一旦半導体層側に突出し、その両端で突出が戻るような形状であることを意味し、図2のp電極17に示したように、リッジの両側において一旦半導体層側に突出したままその両端が戻らないような形状、単にリッジの両側において屈曲したのみのものは含まれない。このような形状により、電極と密着膜との接触面を最大限に確保することができる。
【0055】
なお、この電極は、第1絶縁膜上に密着膜を介して配置されるのみならず、図4に示したように、第1絶縁膜上から第2絶縁膜上にかけて、密着膜を介して配置されていてもよい。これにより、密着膜との密着面積が大きくなるため、密着力が向上する。
【0056】
以下に、本発明の半導体装置の実施例を詳細に説明する。
実施例1
本発明の半導体装置は、図1に示すように、サファイア基板10上に、GaNによるバッファ層及びアンドープGaN層からなる下地層11が形成されている。下地層11上には、Siを1×1018/cm3ドープさせたGaNからなるn型コンタクト層、In0.06Ga0.94Nからなるクラック防止層、アンドープのAlGaNからなるA層とSiを5×1018/cm3ドープしたGaNからなるB層とを交互積層させたn型クラッド層、n型光ガイド層によって、n型半導体層12が形成されている。さらに、n型半導体層12上には、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.05Ga0.95Nからなる障壁層とアンドープIn0.1Ga0.9Nからなる井戸層とを交互3回積層させ、その上に障壁層を積層させた多重量子井戸構造(MQW)の活性層13が形成されている。活性層13上には、Mgを1×1019/cm3ドープしたAlGaNからなるp型電子閉じ込め層、アンドープのGaNからなるp型光ガイド層、アンドープAl0.16Ga0.84Nからなる層とMgドープGaNからなる層とを交互積層させた超格子層からなるp型クラッド層、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNからなるp型コンタクト層によって、p型半導体層14が形成されている。
【0057】
これらp型半導体層、活性層及びn型半導体層のうち、p型半導体層、活性層及びn型半導体層の一部が除去されて、n型コンタクト層の表面を露出されており、この露出したn型コンタクト層上に、Ti−Alからなるn電極20が形成されている。
また、p型コンタクト層表面には、例えば、2μm程度の幅を有するストライプ状のリッジ14aが形成されており、リッジ14a上面を除くp型コンタクト層上面全面に、膜厚600オングストロームのZrO2からなる誘電体膜15が形成され、誘電体膜15の一部上に膜厚100オングストロームのITOからなる密着膜16が形成されている。
【0058】
リッジ14a上面から、その側面における密着膜16上にわたって、Ni−Au−Ptからなるp電極17が形成されており、リッジ14a上面において、p電極は半導体層とオーミック接続されている。
さらに、p電極17及びn電極20の上には、これらp電極17とn電極20との一部と、半導体層の上面及び側面とを被覆するSiO2からなる保護膜18が形成されており、p電極17及びn電極20に接続されるように、Ni−Ti−Auからなるpパッド電極19及びnパッド電極21が形成されている。
【0059】
また、このように構成された半導体装置との比較のために、密着膜16を形成しない以外、上述した半導体装置を同様の半導体装置を形成した。
得られた双方の半導体装置の特性検査としてVfを測定したところ、常温では、本発明の半導体装置は、密着膜であるITO膜を形成していないものに比較して、約0.1Vの低減傾向が認められた。具体的には、Vfは3.9V以下であった。
【0060】
また、本発明の半導体装置と、比較のための半導体装置とについて、100チップずつ、ボールシェア試験を行った。その結果、本発明の半導体装置においては、p電極/密着膜/誘電体膜の界面での電極剥がれが認められたものはなかった。一方、比較例における半導体装置では、100チップ中26チップで電極剥がれが認められた。
【0061】
さらに、本発明の半導体装置と、比較のための半導体装置とについて、100チップずつ、ダイシェア試験を行った。その結果、本発明の半導体装置においては、p電極/密着膜/誘電体膜の界面での電極剥がれが認められたものはなかった。一方、比較例における半導体装置では、100チップ中32チップで電極剥がれが認められた。
【0062】
なお、ボールシェア試験は、ワイヤとパッドとが接触しているワイヤのボール部を、治具を用い、この治具を水平方向に移動させた場合に、物理的にボール部が剥がれるか否かを観察することにより行った。また、ダイシェア試験は、治具を水平に移動させた際のチップの接合力を測定することにより行った。
【0063】
また、サファイア基板10の上にバッファ層及び下地層11を形成した後、サファイア基板10を除去して導電性基板とし、n電極20を導電性基板の下側に形成し、フェイスダウン実装を行った以外は、上記と同様の半導体装置を形成した。
得られた半導体装置において、上記と同様のボールシェア試験及びダイシェア試験のいずれにおいても、上記と同様に電極の剥がれが認められなかった。また、Vfも同様に低減傾向が認められた。
【0064】
実施例2
この実施例は、図2に示したように、基板として、窒化物半導体からなる下地層11のみを用い、この下地層11の裏面側にn電極20を配置した以外は、実質的に実施例1と同様の構成である。
このような構造によっても、実施例1と同様の効果が得られる。
【0065】
実施例3
この実施例は、図3に示したように、p型半導体層14の表面の一部と側面とを被覆する第2絶縁膜28が形成されており、この第2絶縁膜28の一部上からリッジ側面にかけて第1絶縁膜2が形成されており、この第1絶縁膜25の一部上を被覆する密着膜26が形成されている以外、実施例1と実質的に同様の構成である。
なお、この半導体装置においては、p型半導体層14上の一部領域において、第2絶縁膜28、第1絶縁膜25及び密着膜26がこの順に形成されている(矢印a)。また、密着膜26の上面の一部が、リッジ14a上面より高い位置に配置されている。
【0066】
さらに、電極27は、通常のp電極及びパッド電極とが一体化されて形成されたものであって、p型半導体層14と対向する面側に、p型半導体層14側に突出する凸部を有している。
このような構成により、実施例1と同等又はより以上に、密着膜と電極との強固な接着性を得ることができ、電極剥がれを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、半導体層をその構成の一部に含む装置、例えば、発光素子、受光素子、CCD、トランジスタ、キャパシタ、抵抗、サイリスタ、光電変換装置等の変換装置、半導体レーザ及びこれらを2以上組み合わせた回路等の全てに対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の半導体装置の一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の別の実施形態を示す概略断面図である。
【図3】本発明の半導体装置のさらに別の実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の半導体装置の別の実施形態を示す概略断面図である。
【図5】従来の半導体装置である半導体レーザを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0069】
10 サファイア基板
11 下地層
12 n型半導体層
13 活性層
14 p型半導体層
14a リッジ
15 誘電体膜
16、26 密着膜
17 p電極
18 保護膜
19 pパッド電極
20 n電極
21 nパッド電極
25 第1絶縁膜
27 電極
28 第2絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層上に電気的に接続された電極を有する半導体装置であって、前記半導体層と電極との間の一部の領域において、誘電体膜と縮退半導体からなる密着膜とがこの順に積層され、かつ該密着膜が電極と接触するように介在してなることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
半導体層がp型の窒化物半導体からなる請求項1に記載の装置。
【請求項3】
密着膜がITO、IZO、GZO、AZOからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
誘電体膜がZrO2、SiO2、HfO2からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
電極が少なくともニッケル又はその合金を含む層からなる請求項1〜4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
さらに、誘電体膜と同一材質の膜を含んでなり、半導体層の側面から半導体層上に配置する前記誘電体膜の端部を被覆する保護膜が形成されてなる請求項1〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】
半導体層表面にストライプ状のリッジが形成されており、かつ半導体層の側面から半導体層上に配置する前記誘電体膜の端部を被覆する保護膜を有し、該保護膜の上面が前記リッジ上面より高い位置に配置されてなる請求項1〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
保護膜が多層構造で形成されてなる請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
表面にストライプ状のリッジが形成された半導体層上に電気的に接続された電極を有する半導体装置であって、
前記半導体層と電極との間の一部の領域において、第1絶縁膜が形成されており、
前記半導体層の側面から半導体層上に配置され、前記第1絶縁膜と接触するように第2絶縁膜が形成されており、
前記第1絶縁膜の少なくとも一部を被覆するように密着膜が形成されており、
前記電極は、少なくとも半導体層と対向する面側に、半導体層側に突出する凸部を有し、かつ前記密着膜と接触するように配置されてなることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
第2絶縁膜の一部を第1絶縁膜が被覆してなる請求項9に記載の装置。
【請求項11】
半導体層上に第2絶縁膜、第1絶縁膜、密着膜がこの順に積層されている領域を有する請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
電極が形成された領域において、第2絶縁膜の上面がリッジ上面より高い位置に配置されてなる請求項9〜11のいずれか1つに記載の装置。
【請求項13】
表面にストライプ状のリッジが形成された半導体層上に電気的に接続された電極を有する半導体装置であって、
前記半導体層と電極との間の一部の領域において、第1絶縁膜が形成されており、
前記半導体層の側面から半導体層上に配置され、前記第1絶縁膜と接触するように第2絶縁膜が形成されており、
前記第1絶縁膜の少なくとも一部を被覆し、その上面の一部がリッジ上面よりも高い位置に配置するように密着膜が形成されており、
前記半導体層上に第2絶縁膜、第1絶縁膜、密着膜がこの順に積層されている領域を有し、
前記電極は、少なくとも半導体層と対向する面側に、半導体層側に突出する凸部を有し、かつ前記密着膜と接触するように配置されてなることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
第2絶縁膜が、第1絶縁膜と同一材質の膜を含んでなる請求項9〜13のいずれか1つに記載の装置。
【請求項15】
密着膜が、縮退半導体又は白金族系金属からなる請求項9〜14のいずれか1つに記載の装置。
【請求項16】
電極が、第1絶縁膜上から第2絶縁膜上にかけて、密着膜を介して配置されてなる請求項9〜15のいずれか1つに記載の装置。
【請求項17】
フェイスダウン実装用である請求項1〜16のいずれか1つに記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−128622(P2006−128622A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213917(P2005−213917)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】