説明

半導体装置

【課題】小型化と高機能化とを図ることが可能な半導体装置を提供すること。
【解決手段】入力信号によって発光する発光素子と、上記発光素子からの光を受光することにより信号を出力するための起電力を生じる受光素子2と、を備える半導体装置A1であって、上記発光素子としての有機EL素子3が形成された発光側基板1Bと、受光素子2が形成された受光側基板1Aと、を備えており、有機EL素子3と受光素子2とが互いに正対するように、発光側基板1Bと上記受光側基板1Aとが透明絶縁膜4を介して対向しており、発光側基板1Bおよび受光側基板1Aには、集積回路が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば電子機器および通信機器の入出力手段、センサの信号絶縁、スイッチング電源などに用いられる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より入力信号によって発光する発光手段と、この発光手段からの光を受けると出力信号を発する受光手段とを備える半導体装置が、たとえば電子機器および通信機器の入出力手段、センサの信号絶縁、スイッチング電源などに用いられている。図6は、このような半導体装置に属するフォトカプラの一例を示している。同図に示されたフォトカプラXは、リードフレーム91A,91B,91C、LED素子92、受光素子93、ICチップ94、透明絶縁樹脂95、および樹脂パッケージ96を備えている。LED素子92は、リードフレーム91Aに搭載されており、入力側の発光手段として用いられる。受光素子93は、リードフレーム91Bに搭載されており、出力側の受光手段として用いられる。ICチップ94は、リードフレーム91Cに搭載されており、たとえば受光素子93の起電力に応じて出力信号を生成する。透明絶縁樹脂95は、LED素子92と受光素子93との間に介在しており、LED素子92からの光を透過させる絶縁性の樹脂からなる。樹脂パッケージ96は、不透明な樹脂からなり、LED素子92および受光素子93の保護や、フォトカプラX外からの光の遮蔽のために備えられている。フォトカプラXによれば、たとえば、互いに電圧が異なる回路どうしの信号授受を行うことができる。また、機械的な動作部分を備えないため、機械式のリレーに比べて長寿命であるという利点を有する。
【0003】
しかしながら、フォトカプラXを製造する際には、LED素子92からの光を受光素子93によって適切に受光できるように、リードフレーム91Aとリードフレーム91Bとを位置合わせしなければならない。また、LED素子92や受光素子93を駆動制御するためのICチップ94を、LED素子92や受光素子93とは別体としてリードフレーム91Cに設ける必要がある。フォトカプラXに、たとえば通信制御などの付加的な機能を追加するには、樹脂パッケージ96内に新たなICチップをさらに収容しなければならない。このように、従来技術によっては、フォトカプラXを小型としつつ高機能化を図ることが困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開2006−332184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、小型化と高機能化とを図ることが可能な半導体装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される半導体装置は、入力信号によって発光する発光素子と、上記発光素子からの光を受光することにより信号を出力するための起電力を生じる受光素子と、を備える半導体装置であって、上記発光素子としてのエレクトロルミネセンス素子が形成された発光側基板と、上記受光素子が形成された受光側基板と、を備えており、上記発光素子と上記受光素子とが互いに正対するように、上記発光側基板と上記受光側基板とが透明絶縁膜を介して対向しており、上記発光側基板および上記受光側基板の少なくとも一方には、集積回路が形成されていることを特徴としている。
【0007】
このような構成によれば、上記エレクトロルミネセンス素子と上記受光素子とが互いに正対するように上記発光側基板と上記受光側基板とを張り合わせることは比較的容易である。したがって、上記半導体装置の製造効率を高めることができる。また、エレクトロルミネセンス素子は、印刷を用いた製造方法によって形成できる程度の薄状である。このため、上記発光側基板と上記受光側基板とを互いに接近させることが可能であり、上記半導体装置の小型化を図るのに有利である。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記発光側基板および上記受光側基板は、Siからなり、上記発光側基板および上記受光側基板には、それぞれ集積回路が形成されている。このような構成によれば、上記半導体装置にたとえばドライバICや信号処理用ICとしての機能を持たせることが可能であり、上記半導体装置の高機能化を図ることができる。
【0009】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
図1および図2は、本発明に係る半導体装置の第1実施形態を示している。同図に示す半導体装置A1は、受光側基板1A、発光側基板1B、受光素子2、有機エレクトロルミネセンス(以下、EL)素子3、透明絶縁膜4、リードフレーム5、および樹脂パッケージ6を備えている。半導体装置A1は、入力側回路と出力側回路とを互いに絶縁した状態で、入力側回路からの入力信号を受けると出力側回路に出力信号を送る機能を有する。
【0012】
受光側基板1Aは、矩形状であり、Siからなる。受光側基板1Aには、受光素子2、複数のパッド11、および図4に示す集積回路8Aが形成されている。図4は、半導体装置A1のシステム構成を示している。複数のパッド11は、たとえばAuからなり、配線(図示略)によって受光素子2および集積回路8Aと接続されている。
【0013】
受光素子2は、たとえばフォトトランジスタまたはフォトダイオードであり、光を受けることにより起電力を生じる機能を有する。受光素子2は、受光側基板1Aに対していわゆる半導体プロセスを施すことによって作りこまれている。
【0014】
発光側基板1Bは、矩形状であり、Siからなる。本実施形態においては、発光側基板1Bは、受光側基板1Aよりも小とされている。発光側基板1Bには、有機EL素子3、複数のパッド14、および図4に示す集積回路8Bが形成されている。複数のパッド14は、たとえばAuからなり、配線(図示略)によって有機EL素子3および集積回路8Bと接続されている。
【0015】
有機EL素子3は、本発明で言うエレクトロルミネセンス素子の一例であり、入力信号を受けることにより発光する。有機EL素子3は、透明絶縁膜4を挟んで受光素子2と正対している。
【0016】
図2に示すように、有機EL素子3は、金属電極31、有機発光層32、および透明電極33が積層された構造とされている。金属電極31は、たとえばAlからなり、本実施形態においては共通電極とされている。透明電極33は、たとえばITOからなる透明な導電体からなり、本実施形態においては、個別電極とされている。有機発光層32は、たとえば正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの有機材料からなる複数の層が積層されたものである。金属電極31からの正孔と、透明電極33からの電子とが有機発光層32において再結合することにより、上記発光層の材料によって決められた波長の光が発せられる。有機EL素子3の形成は、たとえば金属電極31、有機発光層32、および透明電極33を印刷によって発光側基板1B上にパターン形成することによって行う。有機EL素子3は、透明な絶縁性材料からなる保護膜34によって保護されている。
【0017】
透明絶縁膜4は、受光側基板1Aと発光側基板1Bとの間に介在している。透明絶縁膜4は、有機EL素子3からの光を透過させる絶縁性の材料からなり、たとえばSiO2、SiN、ポリイミド樹脂を塗布することにより形成されている。透明絶縁膜4には、たとえばAuからなる複数のパッド12,13が形成されている。各パッド12と各パッド13とは、配線(図示略)によって互いに接続されている。
【0018】
図3は、半導体装置A1の製造工程において、透明絶縁膜4を挟んで受光側基板1Aおよび発光側基板1Bを張り合わせる工程を示している。なお、図3においては、集積回路8A,8Bを省略している。本実施形態においては、受光側基板1Aに受光素子2および集積回路8Aを作りこんだ後に、たとえば塗布を用いて透明絶縁膜4を形成する。次に、複数のパッド11,12,13を形成する。そして、あらかじめ有機EL素子3、集積回路8B、および複数のパッド14を形成しておいた発光側基板1Bを透明絶縁膜4に対して接合する。このとき、受光素子2と有機EL素子3とを正対させる。また、パッド13とパッド14との間には、導電性のバンプ7を介在させる。以上の工程により、受光側基板1Aと発光側基板1Bとを透明絶縁膜4を介して張り合わせることができる。
【0019】
図1に示すように、リードフレーム5は、ボンディングパッド5Aおよび複数のリード5Bを含んでおり、たとえばCu、Ni、およびこれらの合金からなる。ボンディングパッド5Aには、受光側基板1Aがボンディングされている。複数のリード5Bは、一端が樹脂パッケージ6から突出しており、半導体装置Aを回路基板などに実装するために用いられる。
【0020】
樹脂パッケージ6は、受光側基板1A、発光側基板1B、ボンディングパッド5A、および複数のリード5Bの一部ずつを覆っており、不透明な絶縁性の樹脂からなる。樹脂パッケージ6は、たとえばモールド成形技術によって形成される。
【0021】
集積回路8Aは、受光側基板1Aに作りこまれており、たとえば受光素子2を駆動制御するためのドライバICおよび信号処理用のICとしての機能を有している。集積回路8Bは、発光側基板1Bに作りこまれており、たとえば入力信号に応じて有機EL素子3を発光させるためのドライバICとしての機能を有している。
【0022】
次に、半導体装置A1の作用について説明する。
【0023】
本実施形態によれば、受光側基板1Aおよび発光側基板1Bに集積回路8A,8Bを作りこむことにより、有機EL素子3を発光させるためのドライバICとしての機能や受光素子2を制御するためのドライバICとしての機能を半導体装置A1に持たせることが可能である。したがって、半導体装置A1の高機能化を図るのに適しており、入力側回路と出力側回路とを互いに絶縁した状態で信号伝達を行ういわゆるインシュレータ機能をワンチップ構造で実現することができる。
【0024】
有機EL素子3は、たとえばLED素子とくらべて顕著に薄い。このため、受光側基板1Aと発光側基板1Bとの距離を縮小させることが可能である。したがって、半導体装置A1の小型化を図るのに有利である。また、受光素子2と有機EL素子3とが互いに正対するように受光側基板1Aと発光側基板1Bとを張り合わせることは、たとえば従来技術による構成のようにLED素子と受光素子とを正対させる構成と比べて容易である。
【0025】
たとえば、発光手段としてLED素子を備える構成においては、基板とLED素子とを一体化するには、たとえばGaNからなる基板を用いる必要がある。このような基板は、集積回路を形成するには不適である。これに対し、有機EL素子3は、たとえば印刷を用いた製造方法により形成することが可能であるため、発光側基板1Bの材質を集積回路の形成に適したSiとすることができる。
【0026】
図5は、本発明に係る半導体装置の第2実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。同図に示された半導体装置A2は、複数ずつの受光素子2と有機EL素子3とを備えている点が、上述した実施形態と異なっている。この構成においては、集積回路8BにWAN(Wide Area Network)との信号授受を行うための信号処理機能が組み込まれており、集積回路8AにLAN(Local Area Network)との信号授受を行うための信号処理機能が組み込まれている。複数ずつの受光素子2と有機EL素子3とは、互いに並列に信号を送受する構成とされている。
【0027】
このような構成とされた半導体装置A2によれば、WAN−LAN間の通信を行うためのモデムとしての機能をワンチップ構造で実現することができる。また、有機EL素子3は、印刷を用いた製造方法によって形成可能であるため、複数の有機EL素子3を発光側基板1Bに形成しても、極端に歩留まりが悪化するおそれが少ない。したがって、発光手段として複数のLED素子を備える構成と較べて、半導体装置A2の歩留まりを向上させることができる。
【0028】
本発明に係る半導体装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る半導体装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0029】
本発明で言うエレクトロルミネセンス素子は、有機EL素子に限定されず、たとえば無機EL素子であってもよい。本発明にかかる半導体装置は、入力側回路と出力側回路とを互いに絶縁させた状態で、光を介して信号の送受を行う機能を有するものであれば、様々な構成とすることが可能であり、フォトカプラ、フォトリレー、モデムなどとして構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る半導体装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る半導体装置の第1実施形態を示す要部断面図である。
【図3】本発明に係る半導体装置の第1実施形態の製造工程において、受光側基板と発光側基板とを張り合わせる工程を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る半導体装置の第1実施形態を示すシステム構成図である。
【図5】本発明に係る半導体装置の第2実施形態を示すシステム構成図である。
【図6】従来の半導体装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
A1,A2 半導体装置
1A 受光側基板
1B 発光側基板
2 受光素子
3 有機EL素子(エレクトロルミネセンス素子)
4 透明絶縁膜
5 リードフレーム
5A ボンディングパッド
5B リード
6 樹脂パッケージ
7 バンプ
8A,8B 集積回路
8B
11,12,13,14 パッド
31 金属電極
32 有機発光層
33 透明電極
34 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号によって発光する発光素子と、
上記発光素子からの光を受光することにより信号を出力するための起電力を生じる受光素子と、
を備える半導体装置であって、
上記発光素子としてのエレクトロルミネセンス素子が形成された発光側基板と、
上記受光素子が形成された受光側基板と、を備えており、
上記発光素子と上記受光素子とが互いに正対するように、上記発光側基板と上記受光側基板とが透明絶縁膜を介して対向しており、
上記発光側基板および上記受光側基板の少なくとも一方には、集積回路が形成されていることを特徴とする、半導体装置。
【請求項2】
上記発光側基板および上記受光側基板は、Siからなり、
上記発光側基板および上記受光側基板には、それぞれ集積回路が形成されている、請求項1に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−177218(P2008−177218A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6959(P2007−6959)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】