説明

半導体装置

【課題】半導体チップの搭載された薄型の配線基板を有する半導体装置において、信頼性の優れた半導体装置を提供する。
【解決手段】配線基板がスティフナを具備しており、かつ、前記配線基板の上の半導体チップとスティフナの間の領域に弾性率が0.5MPa以上10MPa以下の保護樹脂を充填したことを特徴とする半導体装置。前記保護樹脂として、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂から選択された材料を用いる。また、配線基板の厚さを0.05mm以上0.6mm以下にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板、半導体パッケージあるいは機能モジュール等の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、絶縁層に樹脂フィルムを用いた配線基板が多く用いられるようになった。絶縁フィルムを用いた配線基板は、基板全体の厚みを抑えることが出来る点で大変優れている。しかし、薄い基板は反りが生じやすく、また反りによって半導体チップの実装時に不具合が発生する恐れがある。
【0003】
薄型の配線基板の補強として、スティフナを貼り付ける方法が知られている(特許文献1)。スティフナを貼り付けることにより、基板全体の反りを低下させることができる。このスティフナ付き配線基板には、半導体チップとスティフナの間に薄型の配線基板のみの部分が存在する。薄型の配線基板のみの部分は半導体チップ、スティフナ等の剛性の高い材料に保持されていないため、これらの部分と比較して強度が低い。温度サイクル等の負荷をかけた際に、応力が薄型の配線基板のみの部分に集中する恐れがある。
【0004】
スティフナと薄型の配線基板の間の強度を高める方法として、補強樹脂を充填する方法(特許文献2)、第二のスティフナを配置する方法が報告されている(特許文献3)。補強樹脂および第二のスティフナを固定する樹脂にはエポキシ樹脂が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−284097号公報
【特許文献2】特開2000−133741号公報
【特許文献3】特開2007−227550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薄型の配線基板の半導体チップとスティフナの間を埋めるためには、エポキシ樹脂等の熱硬化樹脂は、弾性率が高く変形しにくいために適さない。弾性率が高い樹脂で補強すると、温度サイクル等による熱膨張などに耐え切れず、クラック等が発生する恐れがあるからである。そこで本発明では、弾性率が低く変形しやすい樹脂を用いて半導体チップとスティフナの間を埋め、柔軟性を有しながら配線基板を保護することが可能となる、信頼性の優れた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、半導体チップの搭載された導電パターンを有する配線基板において、該配線基板はスティフナを具備しており、かつ、前記配線基板の上の半導体チップとスティフナの間の領域に弾性率が0.5MPa以上10MPa以下の保護樹脂を充填したことを特徴とする半導体装置である。
【0008】
また、本発明は、上記配線基板の厚さが0.05mm以上0.6mm以下であることを特徴とする上記の半導体装置である。
【0009】
また、本発明は、上記保護樹脂が、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂から選択された材料であることを特徴とする上記の半導体装置である。
【0010】
また、本発明は、上記保護樹脂の厚さが60μm以上であることを特徴とする上記の半導体装置である。
【0011】
また、本発明は、上記半導体チップと上記配線基板が、フリップチップ接続されていることを特徴とする上記の半導体装置である。
【発明の効果】
【0012】
半導体チップとスティフナの間を弾性率の低い樹脂で満たすことによって、柔軟性を有しながら配線基板を保護することが可能となり、信頼性が高い配線基板、半導体パッケージ、あるいは機能モジュール等となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態における半導体装置を示す模式断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造方法の一例を説明する模式断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態における半導体装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の半導体装置101は、図1(a)に示されるように、半導体チップ104が配線基板102に搭載され、基板の外周部にスティフナ106を貼り付け、配線基板102上の、半導体チップ104とスティフナ106の間の領域に保護樹脂108を充填したことを特徴とする半導体装置101である。
【0015】
本発明の半導体装置101では、配線基板102上の、半導体チップ104とスティフナ106の間の領域に保護樹脂108を充填することにより、温度サイクル等の負荷がかかった際の半導体装置構成材料の伸縮が緩和され、信頼性を向上させることができる。この効果は特に配線基板102が薄い場合に有効である。具体的には、配線基板102の厚さが0.05mm以上0.6mm以下のときに特に有効である。0.05mm以下であると、配線基板102が薄すぎるために保護樹脂108による効果が弱く、0.6mm以上であると、保護樹脂108を用いる必要がなくなる。配線基板102を薄くすることにより、高密度化、軽量化が期待できる。
【0016】
配線基板102は、ポリイミド等の絶縁樹脂層と銅などの導体層からなる。絶縁樹脂層には、エポキシ系樹脂等を用いることも可能である。導電パターンを一層のみ有する片面配線基板、導電パターンを二層有する両面配線基板、多層の導電パターンを持つ多層配線基板のいずれも使用可能である。配線基板102は、図3のように第二の配線基板110とはんだボール111等を介して接続するための外部接続端子(パッド)を有している。
【0017】
スティフナ106には銅、銅の合金、ステンレス、アルミニウム、42アロイ等の金属あるいは、樹脂、セラミック等を用いることができる。スティフナ接着剤107にはエポキシ系樹脂の接着剤などの公知の接着剤を用いればよい。
【0018】
保護樹脂108には、弾性率が0.5MPa以上10MPa以下の範囲の樹脂を用いることが好ましい。これにより、温度サイクル等における半導体装置構成材料の伸縮を緩和しながら、さらに配線基板102を保護することが可能となる。弾性率が0.5MPa以下だと、容易に変形できるために、保護樹脂108としての効力が十分でない。また、弾性率が10MPa以上であると、温度サイクル等の負荷をかけた際、半導体装置構成材料の伸縮を緩和できない恐れがある。保護樹脂108として、具体的にはシリコーン樹脂を用いることができる。シリコーン樹脂は弾性率が低く、変形しやすいことを特徴とする。これにより、柔軟性を有しながら保護することが可能となる。
【0019】
保護樹脂108の厚さは60μm以上であることが望ましい。60μm以下であると、保護樹脂108としての効果を十分に発揮することができない。60μm以上であれば、いずれの厚さでも可能であり、半導体チップ104の厚さに応じて厚さを変えることも可能である。半導体チップ104、スティフナ106の上も保護樹脂108で覆い、その上にリッド(蓋体)109を配置することもできる。また、シリコーン樹脂の他には、保護樹脂108としてウレタン樹脂等を用いることもできる。
【0020】
本発明に用いる半導体チップ104としては、トランジスタ、ダイオード、ICチップ等、さらには、セラミックコンデンサ、セラミック抵抗等の受動部品も搭載可能である。半導体チップ104をフェイスダウンしてバンプ105で薄型の配線基板102に電気接続させるフリップチップ接続は、半導体装置101の薄型化、高密度化が図れるために特に効果的であるが、ワイヤボンディング等フェイスアップの半導体チップ104を用いることも可能である。
【0021】
アンダーフィル層103を形成する材料には、公知の絶縁樹脂を用いることが可能である。シリカ等のフィラーを含有したエポキシ樹脂を用いることが一般的である。アンダーフィル層103を形成することにより、フリップチップ接続のバンプ105による接続部を保護するとともに、半導体チップ104と配線基板102の熱膨張等による効力を緩和することができる。
【0022】
また、図1(b)に示すように、半導体チップ104の上部にリッド109を配置しても良い。リッド(蓋体)109としては、金属、セラミックス、ガラス等公知の材料を用いることができる。また、保護樹脂108を半導体チップ104およびスティフナ106の上まで塗布し、その上にリッド109を取り付けることも可能である。リッド109を取り付けることにより、放熱特性を向上させることができる。さらに、剛性を高めることによる信頼性向上の効果も期待できる。また、熱伝導性の高いフィラー等が含まれた保護樹脂108を用いて半導体チップ104の上まで覆った後にリッド109を取り付けることにより、さらに高い放熱効果を発揮させることが可能となる。
【0023】
次に、本発明の半導体装置101の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、導電パターンが形成された配線基板102にスティフナ106を貼り付ける工程、半導体チップ104を実装する工程、保護樹脂108を充填する工程から構成されている。以下に詳細に説明する。
【0024】
まず、薄型の配線基板102にスティフナ106を貼り付ける。少なくとも半導体チップ104の搭載部を設けてある導電パターンに、接着剤を介してスティフナ106を貼り付ける(図2(b))。スティフナ接着剤107には公知の材料を使用可能である。具体的には、エポキシ樹脂の接着剤を使用することができる。このとき、半導体チップ104を先に実装することも可能であるが、先にスティフナ106を貼り付けることによって薄型の配線基板102の反りを低下させることができ、半導体チップ104を実装しやすくできる。
【0025】
次に、スティフナ106付き配線基板102に半導体チップ104を実装する(図2(c))。前述のように、実装方法としては半導体チップ104をバンプ105で配線基板102の配線に電気接続するフリップチップ接続、あるいは、ワイヤボンディング接続等の公知の接続方法を用いることができる。また、フリップチップ接続を行うとき必要に応じてアンダーフィル層103を形成する(図2(d))。アンダーフィル層103を形成する材料についても、公知の絶縁樹脂を用いることが可能である。具体的には、シリカを充填したエポキシ樹脂を用いることができる。
【0026】
次に、図2(e)に示すように、保護樹脂108を半導体チップ104とスティフナ106の間に充填する。また、図1(c)で示したように、半導体チップ104上にリッド109を取り付けた構造としてもよい。
【0027】
本発明の半導体装置101の製造方法として、配線基板102に半導体チップ104を実装し、アンダーフィル層103を形成した後、スティフナ106を貼り付け、保護樹脂108を充填することも可能である(図2(b')、(c'))。
以上の工程で、本発明の半導体装置101を製造することができる。
【実施例】
【0028】
<実施例1>
本発明に係る半導体装置101の実施例1を図面に基づいて以下に説明する。まず図2(a)に示すような薄型の配線基板102を用意する。薄型の配線基板102は、Cuを主体とした導電パターンを有し、絶縁樹脂層にはポリイミドを用いている。次に図2(b)に示すように、エポキシ系樹脂のスティフナ接着剤107を用いて、配線基板102にスティフナ106を貼り付ける。
【0029】
次に、配線基板102の半導体チップ搭載部に半導体チップ104を固着し、半導体チップ104と配線基板102とを電気的に接続する。半導体チップ104は配線基板102にバンプ105で電気接続させフリップチップ接続した。その後、図2(d)に示すように、半導体チップ104と配線基板102との間にアンダーフィル層103を形成する。
【0030】
次に、図2(e)に示すように、半導体チップ104とスティフナ106の間を保護樹脂108にて充填した。保護樹脂108にはシリコーン樹脂を使用した。ここで充填した保護樹脂108の厚さは300μmであった。以上の工程にて、本発明の半導体装置101が製造される。
【0031】
本発明の半導体装置101の信頼性試験を実施するため、本発明の半導体装置101を、図3に示すように第二の配線基板110に実装する。半導体装置101の配線基板102の外部接続用端子(パッド)と、第二の配線基板110の半導体装置搭載部とをはんだボール111で電気的に接続した。
【0032】
<比較例1>
比較例1として、保護樹脂108を充填しない半導体装置を製造した。保護樹脂108を充填しない点以外は、同様の工程にて製造した後、半導体装置の配線基板102の外部接続用端子(パッド)と、第二の配線基板110の半導体装置搭載部とをはんだボール111で電気的に接続した。
<比較例2>
比較例2として、半導体チップ104とスティフナ106の間にエポキシ系樹脂を充填した半導体装置の配線基板102の外部接続用端子(パッド)と、第二の配線基板110の半導体装置搭載部とをはんだボール111で電気的に接続した。
【0033】
[温度サイクル試験(TCT)による信頼性評価]
実施例1の半導体装置101および比較例1及び2によって得られた半導体装置について、信頼性評価試験を行った。試験に用いた配線基板102の大きさは45mm角であり、スティフナ106の開口部分の大きさは30mm角である。また、使用した半導体チップ104の大きさは、20mm角である。
【0034】
温度サイクル試験(TCT)は、気相にて−40℃の温度条件を30分と125℃の温度条件に30分さらすサイクルを3500回繰り返した。各温度の切り替え時間については、装置の能力の許す限り速やかに行った。
【0035】
保護樹脂108を充填した実施例1の半導体装置101では、3500サイクル後も、導体抵抗値上昇率は10%以下であった。一方、保護樹脂108を充填しない比較例1の半導体装置では、断線等によりオープンとなり、導体抵抗値は計測不可能であった。断面観察により、半導体チップ104とスティフナ106の間の裏面にあるはんだボール111にクラックが入っていた。また、エポキシ樹脂を充填した比較例2の半導体装置においても、断線等によりオープンとなり、導体抵抗値は計測不可能であった。比較例1の断面観察により、半導体チップ104とスティフナ106の間の裏面にあるはんだボール111および半導体装置の最外周にあるはんだボール111にクラックが入っていた。エポキシ樹脂を充填した比較例2の半導体装置では、アンダーフィル層103と充填したエポキシ樹脂との境目にもクラックが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、配線基板、半導体パッケージ、あるいは機能モジュール等の半導体装置101に使用できる。
【符号の説明】
【0037】
101・・・半導体装置
102・・・配線基板
103・・・アンダーフィル層
104・・・半導体チップ
105・・・バンプ
106・・・スティフナ
107・・・スティフナ接着剤
108・・・保護樹脂
109・・・リッド(蓋材)
110・・・第二の配線基板
111・・・はんだボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの搭載された導電パターンを有する配線基板において、該配線基板はスティフナを具備しており、かつ、前記配線基板の上の半導体チップとスティフナの間の領域に弾性率が0.5MPa以上10MPa以下の保護樹脂を充填したことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記配線基板の厚さが0.05mm以上0.6mm以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記保護樹脂が、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂から選択された材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記保護樹脂の厚さが60μm以上であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体チップと前記配線基板が、フリップチップ接続されていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−205887(P2010−205887A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49128(P2009−49128)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】