説明

半導体装置

【課題】製造の容易化を図ることが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】この半導体装置は、素子搭載面11aを持つステム11と、そのステム11に取り付けられる取付端13bを有するキャップ13とを備えている。そして、Y方向に凹む凹部11cがステム11の素子搭載面11a側に形成されているとともに、キャップ13の取付端13bがX方向に鍔状に突出しており、ステム11の凹部11cにキャップ13の取付端13bが圧入されることにより、ステム11に対してキャップ13が固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子が搭載されるステムおよびそれに取り付けられる保護キャップを備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザなどを搭載した半導体装置(半導体レーザ装置)が知られており、たとえば、光ディスク装置のピックアップ用光源に用いられている。このような従来の半導体装置としての半導体レーザ装置では、半導体レーザを外部環境から保護し、半導体レーザの発熱を効率的に放熱することにより信頼性の向上を図っている。以下に、従来の半導体レーザ装置の構成の一例について簡単に説明する。
【0003】
従来の半導体レーザ装置は、半導体レーザと、半導体レーザが搭載されるステムと、そのステムに搭載される半導体レーザを覆うキャップとを少なくとも備えている。
【0004】
ステムは、半導体レーザの発熱を放熱することが可能な略円盤形状の金属部材からなっており、平面的に見て円形状の面(素子搭載面)に半導体レーザが搭載されるようになっている。また、キャップは、その形状が略円筒形状となるように加工されたものであり、一方端側に光取り出し用の窓部を有し、他方端側が開放端となっている。そして、ステムの素子搭載面に半導体レーザが搭載された状態において、ステムの素子搭載面側にキャップの開放端を溶接固定し、そのキャップで半導体レーザを覆うことによって、半導体レーザを外部環境から保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−48938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ステムおよびキャップが互いに溶接固定された従来の半導体レーザ装置では、ステムに対してキャップを溶接固定する工程が必要となるため、その製造の容易化を図るのが困難であるという問題点がある。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、製造の容易化を図ることが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一の局面による半導体装置は、半導体素子と、半導体素子が搭載される素子搭載面を持つステムと、ステムに取り付けられる取付端を有するキャップとを備えている。そして、素子搭載面の法線方向である第1方向に凹む凹部がステムの素子搭載面側に形成されているとともに、キャップの取付端が第1方向と直交する第2方向に鍔状に突出しており、ステムの凹部にキャップの取付端が圧入されることにより、ステムに対してキャップが固定されている。
【0009】
この一の局面による半導体装置では、上記のように、素子搭載面の法線方向である第1方向に凹む凹部をステムの素子搭載面側に形成するとともに、キャップの取付端を第1方向と直交する第2方向に鍔状に突出させ、ステムの凹部にキャップの取付端を圧入することによって、ステムおよびキャップを互いに溶接固定しなかったとしても、ステムに対してキャップを固定することができる。したがって、ステムに対してキャップを溶接固定する工程が不要となり、製造の容易化を図ることが可能となる。
【0010】
上記一の局面による半導体装置において、キャップの取付端の表面のうち、少なくともステムの凹部の内側面に接触する表面に滑り止め加工が施されていることが好ましい。このように構成すれば、キャップが抜け落ち難くなるので、ステムに対するキャップの固定が確実に行われた状態にすることができる。すなわち、製造の容易化を図ったとしても、ステムに対するキャップの固定の確実性が低下するのを抑制することができる。
【0011】
上記一の局面による半導体装置において、キャップの取付端の角部のうち、圧入工程の際にステムの凹部の縁と接触する角部がテーパ状に面取りされていることが好ましい。このように構成すれば、圧入工程の際に、キャップの取付端がステムの凹部の縁に引っ掛かるのを抑制することができる。このため、ステムの凹部へのキャップの取付端の圧入をスムーズに行うことができる。
【0012】
上記一の局面による半導体装置において、ステムの素子搭載面側に設けられた押え部材をさらに備え、キャップの取付端が押え部材で押え付けられていることが好ましい。このように構成すれば、キャップの抜け落ちを確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、製造の容易化を図ることが可能な半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による半導体装置の斜視図(キャップの一部を破断した状態の図)である。
【図2】図1に示した一実施形態による半導体装置のステムの斜視図である。
【図3】図1に示した一実施形態による半導体装置のキャップの斜視図である。
【図4】図1に示した一実施形態による半導体装置のステムおよびキャップの詳細な構造を説明するための断面図である。
【図5】図4の2点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【図6】本発明の一実施形態による半導体装置のステムに押え部材が取り付けられた状態の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による半導体装置のステムの変形例(圧入用の凹部の平面形状を変更した例)を示した平面図である。
【図8】図7に示したステムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図1〜図5を参照して、本実施形態による半導体装置としての半導体レーザ装置の構成について詳細に説明する。
【0016】
本実施形態による半導体装置としての半導体レーザ装置は、キャンタイプレーザと称されるものであり、図1に示すような構造となっている。なお、このようなキャンタイプレーザは、光ディスク装置のピックアップ用光源として広く利用されている。
【0017】
具体的な構造としては、本実施形態の半導体レーザ装置は、半導体レーザ1およびフォトダイオード2を備えている。半導体レーザ1は、たとえば、AlGaInP系化合物などからなっており、赤色のレーザ光を生成して出射する機能を有している。また、フォトダイオード2は、半導体レーザ1から出射されたレーザ光を受光し、そのレーザ光の強度をモニタする機能を有している。すなわち、この半導体レーザ装置は、半導体レーザ1から出射されるレーザ光の強度をフォトダイオード2でモニタし、そのモニタ結果に基づいて駆動電流を制御することが可能となっている。なお、半導体レーザ1およびフォトダイオード2は、本発明の「半導体素子」の一例である。
【0018】
また、半導体レーザ1およびフォトダイオード2は、放熱基台であるステム11の素子搭載面11aに搭載されており、その発熱がステム11を介して放熱されるようになっている。このステム11は、図1および図2に示すように、鉄や銅などの金属材料を略円盤形状となるように成形したものであって、その表面に金メッキなどの表面処理が施されているとともに、平面的に見て円形状の面側に素子搭載面11aを持っている。さらに、ステム11の素子搭載面11a内には、四角柱状に突出する放熱ブロック11bが一体的に形成されている。なお、ステム11の放熱ブロック11bは、ステム11と一体化されたものであってもよいし、ステム11に後付けされたものであってもよい。
【0019】
そして、半導体レーザ1は、シリコンなどからなるサブマウント(ヒートシンク)3にジャンクションダウン方式で実装されているとともに、そのサブマウント3を介してステム11の放熱ブロック11bに取り付けられている。このため、半導体レーザ1の発熱部がステム11の放熱ブロック11bに近づけられた状態になっている。なお、半導体レーザ1の光出射面である前端面は、ステム11の素子搭載面11aと略平行になっているとともに、外側に向けられている。また、フォトダイオード2は、ステム11の素子搭載面11a内のうち、半導体レーザ1の後端面から出射されるレーザ光(モニタ光)を受光することが可能な位置に配置されている。すなわち、フォトダイオード2の受光面が半導体レーザ1の後端面と対向している。
【0020】
また、ステム11の素子搭載面11a側とは反対の裏面側には、3本のリード12a〜12cが設けられている。3本のリード12a〜12cのうちのリード12aおよび12bは、ステム11と電気的に絶縁されているとともに、ステム11を貫通して素子搭載面11a側に突出している。なお、このリード12aおよび12bのステム11への取り付けは、リード12aおよび12bをステム11に形成した貫通穴にガラス封入することによって行われている。また、3本のリード12a〜12cのうちの残りのリード12cについては、ステム11の素子搭載面11a側には突出しておらず、ステム11の裏面側に固着され、かつ、電気的に接続されている。
【0021】
これら3本のリード12a〜12cには、半導体レーザ1およびフォトダイオード2が電気的に接続された状態になっている。すなわち、ステム11の素子搭載面11a側に突出したリード12aの突出部分に、半導体レーザ1の一方電極がワイヤ(図示せず)を介して電気的に接続されているとともに、ステム11の素子搭載面11a側に突出したリード12bの突出部分に、フォトダイオード2の一方電極がワイヤ(図示せず)を介して電気的に接続されている。また、リード12cには、ステム11を介して、半導体レーザ1およびフォトダイオード2のそれぞれの他方電極が電気的に接続されている。そして、半導体レーザ1およびフォトダイオード2の外部機器への電気的な接続は、リード12a〜12cを外部機器に接続することによって行われる。
【0022】
また、図1に示すように、ステム11の素子搭載面11a側には、そこに搭載された半導体レーザ1およびフォトダイオード2を覆うキャップ13が固定されている。そして、そのキャップ13によって、半導体レーザ1およびフォトダイオード2や、それらに接続されるワイヤ(図示せず)などが保護されている。なお、キャップ13は、ハンドリングを容易にするための摘み部としても機能する。
【0023】
このキャップ13は、図1および図3に示すように、コバール(ニッケル、鉄およびコバルトの合金)などからなる金属板(厚み:約0.2mm)を略円筒形状となるように加工したものであり、その一方端側に平面的に見て円形状の開口部13aが形成された部分を持っている。なお、キャップ13の開口部13aは、半導体レーザ1の光出射面(前端面)から出射されるレーザ光を外側に取り出すためのものである。また、キャップ13の他方端側は開放されており、そのキャップ13の開放端を取付端13bとしている。そして、キャップ13の取付端13bがステム11の素子搭載面11a側に取り付けられている。
【0024】
ところで、本実施形態のキャップ13は、その開口部13aにガラス板などが嵌め込まれていないものである。すなわち、半導体レーザ1およびフォトダイオード2が搭載される領域は気密封止されていないことになる。なお、このような構成の場合には、製造時に気密作業が不要となり、製造の容易化を図ることができる。
【0025】
ここで、本実施形態では、図4に示すように、ステム11に対するキャップ13の固定が圧入固定によってなされ、溶接固定などは行われていない。なお、図4には、図面を見易くするために、半導体レーザ1やフォトダイオード2を省略し、ステム11およびキャップ13を互いに離間させた状態を図示している。
【0026】
具体的には、図2および図4に示すように、圧入用の凹部11cがステム11の素子搭載面11a側に形成されており、そのステム11の凹部11cにキャップ13の取付端13bが圧入されている。このステム11の凹部11cは、素子搭載面11aの法線方向であるY方向(第1方向)に凹む凹部であって、凹み深さが約0.2mmとなっているとともに、平面視において円形状の開口を持っている。なお、本実施形態では、ステム11の凹部11cの底面が素子搭載面11aとなっている。
【0027】
また、図3および図4に示すように、ステム11の凹部11cに圧入されるキャップ13の取付端13bは、全周にわたって外側に折り曲げられることでY方向と直交するX方向(第2方向)に突出されている。言い換えると、円環状の鍔部(フランジ部)がキャップ13の他方端側に設けられたようになっている。さらに、キャップ13の取付端13bは、その外径がステム11の凹部11cの開口径よりも若干大きくなるように形成されている。なお、キャップ13の取付端13cのX方向への突出量は、約0.5mm以下である。
【0028】
上記した形状となるようにキャップ13を加工すると、図4および図5に示すように、キャップ13の取付端13bの表面のうち、キャップ13の取付端13bの先端面13cがステム11の凹部11cの内側面に接触することになる。そして、本実施形態では、そのキャップ13の取付端13bの先端面13cに滑り止め加工が施されている。具体的に言うと、キャップ13の取付端13bの先端面13cがザラ面(梨地状の面)となるように表面処理されている。
【0029】
また、本実施形態では、キャップ13の取付端13bの角部のうち、圧入工程の際にステム11の凹部11cの縁と接触する角部がテーパ状に面取りされている。すなわち、キャップ13の取付端13bの一部がテーパ面13dとなっている。
【0030】
本実施形態では、上記のように、Y方向に凹む凹部11cをステム11の素子搭載面11a側に形成するとともに、キャップ13の取付端13bをX方向に鍔状に突出させ、ステム11の凹部11cにキャップ13の取付端13bを圧入することによって、ステム11およびキャップ13を互いに溶接固定しなかったとしても、ステム11に対してキャップ13を固定することができる。したがって、ステム11に対してキャップ13を溶接固定する工程が不要となり、製造の容易化を図ることが可能となる。
【0031】
また、本実施形態では、上記のように、キャップ13の取付端13bの先端面(ステム11の凹部11cの内側面に接触する表面)13cに滑り止め加工を施すことによって、キャップ13が抜け落ち難くなるので、ステム11に対するキャップ13の固定が確実に行われた状態にすることができる。すなわち、製造の容易化を図ったとしても、ステム11に対するキャップ13の固定の確実性が低下するのを抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態では、上記のように、キャップ13の取付端13bの一部をテーパ面13dとすることによって、圧入工程の際に、キャップ13の取付端13bのテーパ面13dをステム11の凹部11cの縁に当接させながら圧入を行えば、キャップ13の取付端13bがステム11の凹部11cの縁に引っ掛かるのを抑制することができる。このため、ステム11の凹部11cへのキャップ13の取付端13cの圧入をスムーズに行うことができる。
【0033】
なお、上記した実施形態の構成において、図6に示すように、ステム11の素子搭載面11a側に押え部材14を設け、その押え部材14でキャップ13の取付端13bを押え付けるようにしてもよい。このようにすれば、キャップ13の抜け落ちを確実に抑制することができる。なお、図6には、図面を見易くするために、半導体レーザ1やフォトダイオード2を省略した状態を図示している。
【0034】
また、上記した実施形態の構成において、図7および図8に示すように、円環形状の開口を持つ凹部11cをステム11の素子搭載面11a側に形成し、それを圧入用の凹部としてもよい。このように構成すれば、圧入固定をより強固にすることができる。
【0035】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0036】
たとえば、上記実施形態では、半導体レーザおよびフォトダイオードが搭載される半導体装置に本発明を適用する例について説明したが、本発明はこれに限らず、半導体レーザやフォトダイオード以外の素子が搭載される装置にも本発明を適用することができる。この場合、ステムに取り付けるリードの本数を変更してもよい。また、フォトダイオードの搭載を省略した装置にも本発明を適用することができる。
【0037】
また、上記実施形態では、キャップが略円筒形状となるように加工したが、本発明はこれに限らず、ステムの素子搭載面に搭載される半導体素子を覆うことが可能であれば、キャップの形状については円筒形状でなくてもよい。この場合には、キャップの形状に応じて、ステムの素子搭載面側に形成する圧入用の凹部の開口形状や凹み深さなどを変更すればよい。
【0038】
また、上記実施形態では、ステムが略円盤形状となるように成形したが、本発明はこれに限らず、ステムの形状については円盤形状でなくてもよい。また、ステムに形成される放熱ブロックの形状や配置位置を変更してもよい。さらに、ステムに取り付けられるリードの配置位置についても適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 半導体レーザ(半導体素子)
2 フォトダイオード(半導体素子)
11 ステム
11a 素子搭載面
11c 凹部
13 キャップ
13b 取付端
13c 先端面
13d テーパ面
14 押え部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子が搭載される素子搭載面を持つステムと、
前記ステムに取り付けられる取付端を有するキャップとを備え、
前記素子搭載面の法線方向である第1方向に凹む凹部が前記ステムの素子搭載面側に形成されているとともに、前記キャップの取付端が前記第1方向と直交する第2方向に鍔状に突出しており、
前記ステムの凹部に前記キャップの取付端が圧入されることにより、前記ステムに対して前記キャップが固定されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記キャップの取付端の表面のうち、少なくとも前記ステムの凹部の内側面に接触する表面に滑り止め加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記キャップの取付端の角部のうち、圧入工程の際に前記ステムの凹部の縁と接触する角部がテーパ状に面取りされていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ステムの素子搭載面側に設けられた押え部材をさらに備え、
前記キャップの取付端が前記押え部材で押え付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−219417(P2010−219417A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66358(P2009−66358)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】