説明

半導体装置

【課題】略矩形平面形状をなす半導体電子部品がアンダーフィル封止されてなる半導体装置において、半導体電子部品の隅の側面へのアンダーフィルの這い上がり不足を解消して十分なアンダーフィル封止強度を確保する。
【解決手段】ソルダーレジスト膜層3を有する基板2上に実装された略矩形平面形状を有する半導体電子部品10がアンダーフィル5封止されてなる半導体装置1aであって、ソルダーレジスト膜層には、前記半導体電子部品の実装領域の周囲に、当該半導体電子部品の外形形状にほぼ沿う略矩形平面状の外形をなす溝30が画成され、前記基板上において、前記溝の外形をなす前記略矩形の隅の内側に、電極パッド40が形成されるとともに、当該電極パッド上のソルダーレジストが開口し、前記電極パッド上には、半田突起50が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ソルダーレジスト膜層を有する基板上に実装された略矩形平面形状を有する半導体電子部品がアンダーフィル封止されてなる半導体装置に関する。具体的には、半導体装置の信頼性を向上させるためのアンダーフィル封止技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
LGA(Land Grid Array)、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などの半導体電子部品、あるいはインターポーザ上にベアチップを搭載した半導体電子部品などが基板上に実装されてなる半導体装置では、半導体電子部品は、微細なバンプを端子として、その端子が基板上の印刷配線における導体部分(端子パッド)に半田などによって接続されることで実装される。この半導体装置では、リフロー工程などにおいて基板が加熱されたり、高低差がある温度サイクルのある環境下に置かれたりすると、基板と半導体電子部品のパッケージを構成する樹脂などとの熱膨張差により上記の端子と端子パッドとの接続部に応力が発生する。この応力は、微細な接続部を断線させる原因となる。そして、このような断線を防止するための技術が本発明の対象であるアンダーフィル封止技術である。周知のごとく、アンダーフィル封止技術は、半導体電子部品と基板との隙間にアンダーフィル(例えば、熱硬化型の液状樹脂)を毛細管現象などを利用して充填した後、それを硬化させて固めることで接続の信頼性を確保するものである。
【0003】
図10(A)(B)に従来のアンダーフィル封止技術についての概略図を示した。(A)は、半導体電子部品10の側断面図であり、(B)は(A)に示した半導体電子部品10を基板2上に実装した半導体装置1cの側断面図である。半導体電子部品10は、半導体回路を構成するシリコン層11の下層に、ガラスによるパッシベーション層(12、13)やエポキシ樹脂による絶縁樹脂層(再配線層)14などが積層された構造となっている。基板2の表面にはプリント配線が形成されているとともに、その配線を保護するためにソルダーレジスト3が皮膜形成されている。また、周知のフォトリソグラフィ技術によってソルダーレジスト3の一部を開口することで、基板2上に実装される各種電子部品に対応する端子パッド4を基板2表層に露出させている。アンダーフィル5は、半導体電子部品10を実装した後、当該半導体電子部品10と基板2との隙間dに充填されて硬化される。
【0004】
しかし、従来のアンダーフィル封止技術では、(B)に示すように、半導体電子部品10の側面にアンダーフィル5が十分に這い上がらず、部品側面を十分にアンダーフィル5によって固定することができない場合があった。アンダーフィル5による半導体電子部品10の側面への這い上がりが不足すると、積層構造を有する半導体電子部品10の下層のみがアンダーフィル5によって固定されてしまうことになる。当然、半導体電子部品10内部の各層間でも熱膨張差による応力が発生する。そのため、下層のみがアンダーフィル5で固定されていると、その上層との界面に掛かる応力を緩和することができず、例えば、パッシベーション層12に亀裂が入ったり、パッシベーション層12と再配線層14との界面(12−14)に剥離が発生したりする。ベアチップをインターポーザ上に搭載した半導体電子部品では、ベアチップがインターポーザとの界面で剥離する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、アンダーフィルの這い上がり不足の原因について考察し、半導体電子部品の実装領域の周囲に溝を形成することで、供給したアンダーフィルをこの溝によって堰き止め、半導体電子部品の側面にアンダーフィルを這い上がらせるように構成した半導体装置を先に発明した(特願2008−115700)。なお、当該発明では、アンダーフィルが這い上がり易くなるように、半導体電子部品を基板とともに表面改質することで親水性を向上させた際、アンダーフィルが広範囲に流れ出して、封止対象外の電子部品が汚染されるのを防止するため、溝を縁取る2重輪郭線の内側の略矩形の輪郭線の隅の形状を最適化している。
【0006】
しかしながら、先の発明では、平面形状が矩形の導体電子部品を実装する場合、その矩形の隅の部分において、這い上がりが不十分となる事例が散見された。具体的には、合格品ではあるものの、微細な亀裂がごく僅かな確率で発生した。しかし、長期的な信頼性については未知であることから、半導体装置の製造過程において、半導体電子部品の隅の側面部分にアンダーフィルを手作業で塗布し直すなどの修復工程を追加していた。当然のことながら、この修復工程は、製造コストを増大させる要因となる。
【0007】
そこで、本発明は、略矩形平面形状を有する半導体電子部品がアンダーフィル封止されてなる半導体装置において、前記半導体電子部品の特に矩形の隅の部分の側面へのアンダーフィルの這い上がり不足を解消して十分なアンダーフィル封止強度を確保することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、ソルダーレジスト膜層を有する基板上に実装された略矩形平面形状を有する半導体電子部品がアンダーフィル封止されてなる半導体装置であって、
前記ソルダーレジスト膜層には、前記半導体電子部品の実装領域の周囲に、当該半導体電子部品の外形形状にほぼ沿う略矩形平面状の外形をなす溝が画成され、
前記基板上において、前記溝の外形をなす前記略矩形の隅の内側に、電極パッドが形成されるとともに、当該電極パッド上のソルダーレジストが開口し、
前記電極パッド上には、半田突起が形成されている半導体装置である。
【0009】
また、前記電極パッドが、前記溝の隅の形状に沿って屈曲する鈎型である半導体装置。および前記電極パッドの屈曲部の内側に円弧状に膨らむR部が形成され、当該R部が、前記略矩形平面形状を有する半導体電子部品の隅の下面と対面する半導体装置とすることもできる。
【0010】
前記R部が形成された電極パッドを備えた上記半導体装置では、前記電極パッド状に形成される半田突起が、前記半導体電子部品の下面と前記基板との間隙以上の高さとしたり、前記いずれかの半導体装置において、前記略矩形の平面形状をなす溝が、前記電極パッドを露出させるためのソルダーレジストの開口に連続するように形成されている半導体装置としたりすれば、より好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体装置によれば、矩形平面形状を有する半導体電子部品の隅の側面にも十分にアンダーフィルが這い上がった状態で固定されているため、高い封止強度を有し、加熱時や温度サイクル環境下において半導体電子部品が破壊しにくい、極めて信頼性の高い構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施例における半導体装置の概略構造図である。(A)は平面図であり、(B)は、(A)における要部拡大図である。
【図2】上記第1の実施例における半導体装置の要部断面図である。
【図3】上記第1の実施例の半導体装置に形成されている溝の構造図である。
【図4】上記第1の実施例の半導体装置の変更例を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例における半導体装置の要部拡大図である。
【図6】上記第2の実施例における半導体装置の要部断面図である。
【図7】上記第2の実施例の半導体装置における要部を構成する各部位の配置関係を説明するための図である。(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図8】上記第2の実施例の半導体装置における、半田堤の高さとアンダーフィルの高さとの関係を示す図である。
【図9】上記第2の実施例の半導体装置において、半田堤の高さとアンダーフィルの封止状態との関係を示す図である。(A)は、半田堤が高いときの封止状態を示す図であり、(B)は、半田堤が低いときの封止状態を示す図である。
【図10】アンダーフィル封止技術についての説明図である。(A)は一般的な半導体電子部品の断面構造図であり、(B)は半導体電子部品をアンダーフィルで封止した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
===第1の実施例===
図1に本発明の第1の実施例における半導体装置1aの概略構造を示した。(A)はその平面図であり、(B)は(A)における要部100の拡大図である。また、図2に図1(A)におけるa−a矢視断面を示した。本実施例の半導体装置1aは、ガラスエポキシ基板の表面にプリント配線を印刷形成してなる基板2に、アンダーフィル5による封止の対象となる半導体電子部品10を実装した基本構造をなしている。本実施例において、半導体電子部品10は、基板2のほぼ中央に実装され、この半導体電子部品10の周囲にその他のICやチップ部品などの周辺部品20も実装されている。そして、基板2の表層には、プリント配線を保護するためのソルダーレジスト膜3が形成されている。
【0014】
ソルダーレジスト膜3は、リソグラフィ技術によってパターニング形成され、その膜3が実装部品(10,20)と端子接続を行う端子パッド4の部分で開口している。すなわち、端子パッド4の部分が基板2の表層に露出している。半導体電子部品10は、略矩形の平面形状の下面に多数の端子(図示せず)を備え、基板2と当該半導体部品10との下面との隙間dにはアンダーフィル5が充填された状態で硬化している。そして、本実施例の半導体装置1は、ソルダーレジスト3が、端子パッド4の部分に加え、半導体電子部品10の実装領域の周囲に溝30を形成するように開口している。
【0015】
また、溝30の隅、すなわち、略矩形平面形状をなす半導体電子部品10の四隅に対応する部分には、どの配線経路にも接続されていない電極パッド40aが形成されており、この部分のソルダーレジスト3もその電極パッド40aの形状に合わせて開口している。この例では、電極パッド40aの形状は、上記隅のコーナー形状に沿って屈曲する鈎型であり、このパッド40aにはリフロー半田付けによって半田突起50が形成される。
【0016】
===溝の構造===
上述したように、本実施例の半導体装置1aでは、アンダーフィル5封止の対象となる半導体電子部品10の実装領域の周囲にソルダーレジスト膜3を開口させてなる溝30が形成されている。図3に第1の実施例における上記溝30の形状を具体的に示した。当該溝30は、左右と上下の幅がそれぞれLw、Lhの略矩形平面形状の半導体電子部品10の外形にほぼ沿う形状の略矩形の平面形状をなし、この溝30の壁面の上縁によって、当該溝の幅wの2重輪郭線(31,32)が形成される。
【0017】
また、溝30の外形は、完全な矩形ではなく、矩形の1辺の外側に凸状となる凸部33を備えた形状となっている。アンダーフィル5は、この凸部33側から半導体電子部品10の下面に充填される。内側輪郭線31は、凸部33以外では略矩形形の半導体電子部品10の各辺15と距離tdを隔てて離間し、当該凸部33における内側輪郭線34は、半導体電子部品10において隣接する辺16と距離T(>td)を隔てて離間している。そして、この凸部33における内側輪郭線34の長さLsは、半導体電子部品10の辺(15,16)の長さLwより短く、当該凸部33における内側輪郭線31の両端35は、半導体電子部品10においてこれに平行する辺16の両端17より内側に位置している。
【0018】
そして、本実施例では、凸部33側から半導体電子部品10と基板2との隙間dに向けてのアンダーフィル5を充填するようにしている。すなわち、周辺部品20を含めて高密度に部品を基板2上に実装するためには、アンダーフィル5による封止領域を狭くする必要があり、溝30と半導体電子部品10との間隔tdを広くとることができない。しかも、基板2の表面において、溝30の外側にアンダーフィル5を付着させないようにするためには、アンダーフィル5の充填は、溝30の内側の輪郭線31と半導体電子部品10との間の位置から開始する必要がある。そこで、溝30の一辺に凸部33を設けて半導体電子部品10と溝30との間隔tdを一部広げてTとし、この部分33からアンダーフィル5を充填することで、必要最小限の領域に確実にアンダーフィル5が充填されるようにしている。
【0019】
===表面改質処理と溝の機能について===
従来の半導体電子部品10は、パッケージ表面の親水性を向上させることで、アンダーフィル5が半導体電子部品10の側面に這い上がり易くなるようにしている。第1の実施例における半導体装置1aをはじめ、後述する第2の実施例における半導体装置1bにおいても、基板2と半導体電子部品10は、表面改質処理が施されており、基板2表面と半導体電子部品10のパッケージ表面の親水性を向上させている。それによって、アンダーフィル5が半導体電子部品10と基板2との隙間dに均一に充填され、かつ半導体電子部品10の側面の上層まで十分に這い上がるようにしている。なお、本実施例では、半導体電子部品10が実装された状態でプラズマクリーニングによる表面改質処理が施されている。
【0020】
第1の実施例において、上記の溝30は、表面改質処理によって、アンダーフィル5が半導体電子部品10の実装領域外に流動拡散するのを防止するための「ダム」として機能する。そして、基板2と半導体電子部品10との隙間dに充填されたアンダーフィル5が半導体電子部品10の実装領域の外に向かって流動拡散しようとする際、溝30の内側の輪郭線31におけるエッジ効果によってその拡散を堰き止めるとともに、アンダーフィル5を半導体電子部品10方向に押し戻すことで、より確実に半導体電子部品10の側面にアンダーフィル5が這い上がるようにしている。しかしながら、半導体電子部品10の四隅18の側面においてはその這い上がりが不足する、という事例が僅かながら存在した。
【0021】
===半田突起による堤防構造===
第1の実施例における半導体装置1aは、略矩形平面形状をなす半導体電子部品10の隅18の部分において、アンダーフィル5の這い上がり不足を解消するための構成を備えている。図1(B)に示したように、基板2上には、半導体電子部品10の実装領域の四隅に対応する位置に、どの配線経路にも接続されていない独立した電極パッド40aが形成されている。そして、この電極パッド40aの形成位置では、ソルダーレジスト3が開口し、電極パッド40aが露出している。さらに、この電極パッド40a上には、リフロー半田付けによって半田突起50が形成されている。
【0022】
アンダーフィル5は、この半田突起50によって溝30に流れる前に堰き止められるため、半導体電子部品10の四隅18の側面方向へ流動し、その結果、半導体電子部品10の四隅18では、その側面の上方まで十分に這い上がる。すなわち、半田突起50は、アンダーフィル5の堤防として機能し、電極パッド40aは、その堤防の土台として機能する。
【0023】
この電極パッド(以下、堤防電極)40aは、半田突起による堤防(以下、半田堤)50の土台として機能させることが必要であることから、その配設位置は、溝30の内側輪郭線31より半導体電子部品10の実装領域側に形成されることになる。なお、第1の実施例では、図1(B)に示したように、堤防電極40a上のソルダーレジスト3の開口41と溝30を形成するソルダーレジスト3の開口とが一体となっている。すなわち、溝の内側の輪郭線31が堤防電極40aを露出させるための開口41の輪郭に一致している。もちろん、図4に示すように、溝30とは別に堤防電極40aを露出させるための開口41を設けてもよい。しかし、溝30用の開口と堤防電極40a用の開口41とを個別に設ければ、自ずと、半導体電子部品10の周囲と溝30の内側輪郭線31との間隔tdをある程度離す必要が生じる。そのため、他の電子部品20の実装領域を狭め、半導体装置1aの実装密度を低下させることになる。したがって、第1の実施例のように、ソルダーレジスト3における堤防電極40aの開口と溝30の開口とは、一体となっている方が望ましい。
【0024】
堤防電極40aはその上に形成される半田堤50によってアンダーフィル5の流動を阻止できる形状であれば、どのような形状であってもよいが、半田堤50には、アンダーフィル5の流動を確実に堰き止める機能が要求され、半田堤50の平面形状は、ほぼ堤防電極40aの平面形状に沿うことから、第1の実施例における堤防電極40aのように、半導体電子部品10の隅18の形状に沿う鈎型とする方が好ましい。鈎型の堤防電極40aとすることで、その上に形成される半田堤50も鈎型に屈曲する平面形状となり、半導体電子部品10の実装領域の外側に向かって放射状に流動するアンダーフィル5を確実に堰き止め、そのアンダーフィル5を半導体電子部品10の隅18方向に押し戻す。それによって、半導体電子部品10の隅18の側面に確実にアンダーフィル5を這い上がらせることができる。
【0025】
===第2の実施例===
周知のごとく、WL(Wafer Level)−CSPは、半導体素子を形成するシリコンウェハを切り出す前に端子の形成や配線などを行い、それからウェハを切り出すという方法によって形成されたCSPである。このWL−CSPは、パッケージのサイズとICチップのサイズがほぼ一致し、樹脂からなるインターポーザと、この樹脂と熱収縮率が大きく異なるシリコンからなるICチップとがほぼ全面で接触した2層構造となる。そのため、他の半導体電子部品と比較して、インターポーザとチップ下面との界面での剥離が生じやすい。
【0026】
第2の実施例は、WL−CSPのような特に層間での剥離が生じやすい構造の半導体電子部品をアンダーフィルによって封止した半導体装置である。図5に第2の実施例における堤防電極40bの形状と配置を示した。この例において、堤防電極40bには、鈎型の屈曲部分の内側を円弧状に膨らませたR部が形成されており、そのR部42の一部が半導体電子部品10の実装領域内に位置するように配置されている。すなわち、半導体電子部品10の四隅18では、その下面が堤防電極40bと対向する。
【0027】
図6に図5におけるb−b矢視断面を示した。なお、この図6では、堤防電極40b上に半田堤50が形成されるとともに、アンダーフィル5が充填された状態を示している。堤防電極40bが半導体電子部品10の下面に潜り込むように形成されているため、この堤防電極40b上の半田堤50が、半導体電子部品10の隅18に近接し、アンダーフィル5を半導体電子部品10の隅18の近辺に集中させる。その結果、アンダーフィル5が高く這い上がる。
【0028】
===半田堤の高さについて===
第2の実施例は、半導体電子部品10の四隅18において、アンダーフィル5をより高く這い上がらせるための構成である。ところで、図6に示したように、アンダーフィル5の這い上がりの頂点付近5pは、実質的に封止作用がある添加剤(フィラー)が存在しない部分であり、この部分は目視により、透明な樹脂状になっていることで判別できる。したがって、アンダーフィル5の外観形状が高く這い上がっているように見えても、実際の封止効果が及ぶ実質的なアンダーフィル5eは、その這い上がりの頂点5pにまで及んでいない。そこで、WL−CSPのような構造の半導体電子部品に対してより確実にアンダーフィル5封止を施すための条件について検討したところ、実質的なアンダーフィル5eの這い上がりの高さが、半田堤50の高さに関係していることが判明した。
【0029】
図7に、半田堤50の高さと実質的なアンダーフィル5eの高さとの関係を説明するための概略図であり、半導体電子部品10と堤防電極40bと半田堤50のそれぞれ、あるいは相互の配置関係や寸法を示した。(A)は、平面図であり、(B)は、半田堤50を形成し、アンダーフィル5を充填した状態での(A)におけるc−c矢視断面である。なお、ここに示した半導体電子部品10は、WL−CSPであり、そのパッケージの四隅において、フィラーを含む実質的なアンダーフィル部分(以下、実効アンダーフィル:図中網掛け部分)5eを、上面に再配線層が形成されたインターポーザ14iとシリコン層11との界面(以下、SI境界)より上まで這い上がらせる必要がある。
【0030】
また、半導体装置1bにおける各部位の寸法は、溝30の幅Wd=0.1mm、堤防電極40bの鈎型分部の線幅Wp=0.15mm、同鈎型部分の長さLp=0.5mm、堤防電極40bにおけるR部42の半径Rp=0.15mmとなっている。さらに、当該堤防電極40bを露出させるためのソルダーレジスト開口41の輪郭線は、溝30の内側輪郭線31と一体となっており、階段状の直線部分の幅to=0.17mm、堤防電極40bのR部42に対応する部分の半径Ro=0.15mmとなっている。
【0031】
まず、リフロー半田付け工程において、半導体電子部品10のバンプなどの端子と接続される端子パッドや堤防電極40bなどの電極パッド上に供給する半田の量を変え、半田の量に応じた高さの半田突起を形成することとした。なお、半田の供給量については、ソルダーマスクの開口面積によって調整した。周知のごとく、リフロー半田付けでは、ペースト状の半田を電極パッドに対応する位置を開口させたソルダーマスクを用いて印刷することで、各電極パッド上に半田が供給される。したがって、ソルダーマスクの開口面積を調整すれば半田突起の高さを調整することが可能となる。
【0032】
なお、バンプなどに対応する端子パッドへの半田供給量は、対応するソルダーマスクの面積が大きいほど、より多くの半田がパッド上に塗布されるため、半導体電子部品10下面の間隙dの高さ(実装ギャップ)Hcが大きくなる傾向にある。すなわち、パッド開口を変えて実装ギャップHcがアンダーフィルの封止効果に影響するか否かも評価した。ここでは、端子パッドに対応するソルダーレジストの開口直径0.13mmに対し、ソルダーマスクの開口の直径(端子パッド開口径)を0.19mmと0.20mmのいずれかとした。
【0033】
また、堤防電極40bに対するソルダーマスクの開口寸法(堤防電極開口サイズ)については、堤防電極40bの外形に対して+25μmおよび+50μmのいずれかとした。そして、上記端子パッド開口径と堤防電極開口サイズを条件としたときの、半田堤50の高さHsと、実効アンダーフィル5eの這い上がり高さをHfとの関係を評価した。評価に際しては、各種条件で作製した半導体装置1bをサンプルとして、同じ条件で作製したサンプルを3個ずつ作製した。なお、実装ギャップHcは、ソルダーレジスト3の膜面から半導体電子部品10の下面までの距離であり、ソルダーレジスト3の膜厚と堤防電極40などの電極パッドの厚さはほぼ同じである。
【0034】
表1に当該評価結果を示した。
【表1】

【0035】
当該表1では、サンプルとして作製した半導体装置1bについて、同じ製造条件ごとにa〜dの区分に分け、各区分に属する3個ずつのサンプルをa1〜a3,b1〜b3,c1〜c3,d1〜d3とし、各サンプルにおける半田堤の高さHsと実効アンダーフィル5eの高さHfを半導体電子部品10の実装ギャップを1としたときの相対値で示している。上記表1に示した評価結果から、端子パッド開口径と実効アンダーフィル5eの高さHfとの相関は見い出せないが、半田堤50の高さHsと実効アンダーフィル5eの高さHfとには相関がある、と言える。
【0036】
また、図8に、各サンプルにおける半田堤50の高さHsと実効アンダーフィル5eの高さHfとの関係をグラフにして示した。実効アンダーフィル5eの高さHfが、実装ギャップHcに対する相対値で1.6以上であれば、実効アンダーフィル5eが確実にSI境界まで這い上がっていると判定することとし、この判定基準に従えば、半田堤50の高さHsと実装ギャップHcとの関係がHs≧Hcであることがより望ましいと言える。また、半田堤50を確実に高くするためには、ソルダーマスクの開口面積を大きくすることが有効である、ということも確認できた。
【0037】
図9に、実効アンダーフィル5eのフィレット形状を示した。(A)は、実効アンダーフィル5eの高さHfが高いサンプルのフィレット形状であり、(B)は、Hfが低かったサンプルのフィレット形状である。(A)では、封止効果がある実効アンダーフィル5eがSI境界の上方まで這い上がっているとともに、アンダーフィル5は、その稜線5cが直線的、かつ垂直に立ち上がるようなフィレット形状となっていた。そして、SI境界において、実効アンダーフィル5eの厚さが十分にあった。また、前記稜線5cの麓部分5fは、半田堤50の頂点50pより半導体電子部品10側にあり、確実にアンダーフィル5の流動を堰き止めていることも確認できた。
【0038】
一方、(B)では、アンダーフィル5は、なだらかで下に凸となる円弧状の稜線5cを描くようなフィレット形状となり、SI境界部分における実効アンダーフィル5eの厚さもかなり不足している。サンプルによっては、実効アンダーフィル5eがSI境界にまで至らないものもあった。また、稜線5cの麓部分5fは、半田堤50の頂点50pを超え、サンプルの中には、溝30側にまで流動しているものもあった。
【0039】
===アンダーフィル封止試験===
次に、上記表1に示したa〜dの条件で作製したサンプルについて、アンダーフィル5による封止試験を行い、封止の信頼性を評価した。試験内容は、JEDEC(Joint Electron Device Engineering Councils:電子機器技術評議会)により規定された試験(耐候試験とリフロー工程とを組み合わせた試験)と、温度サイクルによる信頼性試験(耐温度サイクル試験)とした。なお、JEDEC規定の試験は、30℃60%の環境下に192時間放置した後、ピーク温度260℃でのリフロー工程を3回繰り返すことで行い、耐温度サイクル試験は、−40℃から80℃までの120℃の温度差を30分かけて昇温したのち、同じ割合で降温させるサイクルを200回繰り返すことで行った。
【0040】
そして、JEDECの規定試験において、条件cの五つのサンプルの内、二つのサンプルにおいて、半田堤50が変形していた。半田堤50が変形していたサンプルでは、半田堤50に十分な高さが無く、アンダーフィル5が半田堤50の外周に回り込むように流動していた。このことから、半田堤50がアンダーフィル5の外側に噴き出すなど、何らかの異常があったものと推測される。換言すれば、半田堤50を高くすることで、アンダーフィル5と半田堤50との接触面積を必用最小限に抑えることができ、半田堤50の変形を防止し、確実にアンダーフィル5を堰き止めることができる。
【0041】
なお、上記異常があった条件cの二つのサンプルを含め、全サンプルにおいて、耐温度サイクル試験後でも亀裂や剥離などは発生しなかった。すなわち、当該試験では、最も厳しい信頼性を要求されるWL−CSPを実装した半導体装置であっても、アンダーフィルによる封止強度を確保しつつ、基板上の周辺部品が不要なアンダーフィルによって汚染されることがなく、極めて信頼性が高い、ということが実証できた。その一方で、WL−CSPのように、剥離しやすい構造を有する半導体電子部品を封止する用途では、長期的な信頼性を考えると、条件bやdのように、より高き半田堤を形成することが必要であることを認識した。
【符号の説明】
【0042】
1a〜1c 半導体装置
2 基板
3 ソルダーレジスト層
4 端子パッド
5 アンダーフィル
5e 実効アンダーフィル部
10 半導体電子部品
14 再配線層
14i インターポーザ
30 溝
31 内側輪郭線
32 外側輪郭線
40 堤防電極
50 半田堤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルダーレジスト膜層を有する基板上に実装された略矩形平面形状を有する半導体電子部品がアンダーフィル封止されてなる半導体装置であって、
前記ソルダーレジスト膜層には、前記半導体電子部品の実装領域の周囲に、当該半導体電子部品の外形形状にほぼ沿う略矩形平面状の外形をなす溝が画成され、
前記基板上において、前記溝の外形をなす前記略矩形の隅の内側に、電極パッドが形成されるとともに、当該電極パッド上のソルダーレジストが開口し、
前記電極パッド上には、半田突起が形成されている
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、前記電極パッドは、前記溝の隅の形状に沿って屈曲する鈎型であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、前記電極パッドの屈曲部の内側に円弧状に膨らむR部が形成され、当該R部は、前記略矩形平面形状を有する半導体電子部品の隅の下面と対面することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3において、前記電極パッド状に形成される半田突起は、前記半導体電子部品の下面と前記基板との間隙以上の高さであることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、前記略矩形の平面形状をなす溝は、前記電極パッドを露出させるためのソルダーレジストの開口に連続するように形成されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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