説明

半導体装置

【課題】半導体素子を被接合部材に対して確実にはんだ接合し得る半導体装置を提供する。
【解決手段】IC素子20がはんだ接合されるリードフレーム11の接合面12には、内方に塗布されたはんだ30の外方への流出を防止する環状溝13が形成されている。そして、接合面12のうち環状溝13内の中心13aの近傍には、はんだ30に対する濡れ性を変化させた第1表面状態S1と第2表面状態S2とが上記中心13aから外方に向けて放射状に区分けされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだを用いることで半導体素子が被接合部材に接合される半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、はんだを用いることで半導体素子が被接合部材に接合される半導体装置に関する技術として、下記特許文献1に開示される半導体素子のマウント方法が知られている。この半導体素子のマウント方法では、リードフレームのヘッド部にはんだを供給してこのはんだ層を介して半導体素子をヘッド部に取り付けた後にリードフレームに対してスパンカ等で超音波振動を付与することで、はんだ層での巣の発生を抑制している。
【0003】
また、下記特許文献2に開示される半導体チップの接着方法では、表面に溝を形成した半導体支持基板に溶融はんだを滴下し、この溶融はんだを加圧面に突起部を有するはんだ拡張治具により加圧することで、溶融はんだが半導体支持基板上に形成した溝に沿って拡がり、溶融はんだの厚みがはんだ拡張治具の突起部の高さと同程度に形成される。その後、半導体チップを溶融はんだの上部より圧着することにより、溶融はんだは半導体支持基板上に形成した溝に沿って半導体チップの外側に拡がる。このとき半導体支持基板の表面に形成された溝は、半導体支持基板の表面積を増す役目を果たし、溶融はんだが半導体支持基板側に引き寄せられ半導体チップ下のはんだの厚みを増すことを防止し、半導体チップと半導体支持基板間に気泡が発生するのを抑制している。
【0004】
また、下記特許文献3に開示されるプリント板はんだ付け構造では、プリント板をはんだ付けする金属ケースの平面には、プリント板の大きさに応じて複数の溝部が設けられている。このとき、はんだの濡れ性やはんだの表面張力、およびはんだ付け時の熱分布状態等を考慮して各溝部の幅および数を選定して溝端部に余分なはんだを溜めることで、不安定な状態ではんだ付けされる部分を無くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平08−012878号公報
【特許文献2】特開平05−082568号公報
【特許文献3】実開平05−072182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のようにスパンカを用いてはんだに超音波を付与しても、その振動方向によってはんだの濡れ広がりがばらつくために、このはんだを用いた半導体素子の実装(接合)に悪影響を及ぼすという問題がある。また、上記特許文献2の接着方法のように単に複数の溝部が設けられてもスパンカ等を用いるために同様の悪影響が生じることとなる。また、上記特許文献3のはんだ付け構造のように、溝端部に余分なはんだを溜める構造では、はんだの厚さは制御できてもはんだの濡れ広がりを制御することができず、同様の悪影響が生じることとなる。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、半導体素子を被接合部材に対して確実にはんだ接合し得る半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の半導体装置では、はんだを用いることで半導体素子が被接合部材にはんだ接合される半導体装置であって、前記被接合部材の接合面には、内方に塗布された前記はんだの外方への流出を防止する環状溝が形成されており、前記接合面のうち前記環状溝内の中心の近傍には、前記はんだに対する濡れ性を変化させた第1表面状態と第2表面状態とが前記中心から外方に向けて放射状に区分けされるように設けられることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の半導体装置において、前記第1表面状態および前記第2表面状態は、前記環状溝内に形成される放射状溝とこの放射状溝が形成されない表面とにより前記はんだに対する濡れ性を変化させるように設けられることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の半導体装置において、前記第1表面状態および前記第2表面状態は、前記環状溝内に形成される表面粗さを放射状に区分けされるように変化させた2種類の表面により前記はんだに対する濡れ性を変化させるように設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1に記載の半導体装置において、前記第1表面状態および前記第2表面状態は、前記環状溝内に施されるめっき処理とこのめっき処理が施されない表面とにより前記はんだに対する濡れ性を変えるように設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1に記載の半導体装置において、前記第1表面状態および前記第2表面状態は、前記環状溝内において放射状溝の形成と表面粗さの差とめっき処理とを含めた表面状態を変化させる構成の少なくとも2つ以上の組み合わせにより前記はんだに対する濡れ性を変えるように設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、半導体素子がはんだ接合される被接合部材の接合面には、内方に塗布されたはんだの外方への流出を防止する環状溝が形成されている。そして、接合面のうち環状溝内の中心の近傍には、はんだに対する濡れ性を変化させた第1表面状態と第2表面状態とが上記中心から外方に向けて放射状に区分けされている。
【0014】
このため、接合面の環状溝の中心に塗布されたはんだは、第1表面状態および第2表面状態のうち濡れ性の良い表面でより濡れ広がるため、放射状に濡れ広がることとなる。これにより、接合面上にてはんだの濡れ広がり方向が制御されて、不均一なはんだの濡れ広がりを防止することができる。さらに、濡れ広がったはんだは、環状溝に流れ込むことでそれ以上外方に流出しないので、所望の範囲を超えるはんだの濡れ広がりを抑制することができる。
したがって、はんだが所望の範囲に均一に濡れ広がるため、半導体素子を被接合部材に対して確実にはんだ接合することができる。
【0015】
請求項2の発明では、第1表面状態および第2表面状態は、環状溝内に形成される放射状の溝とこの溝が形成されない表面とによりはんだに対する濡れ性を変化させるように設けられる。これにより、環状溝内に放射状の溝を形成するだけで、はんだに対する濡れ性を変化させた第1表面状態および第2表面状態を容易に設けることができる。
【0016】
請求項3の発明では、第1表面状態および第2表面状態は、環状溝内に形成される表面粗さを放射状に区分けされるように変化させた2種類の表面によりはんだに対する濡れ性を変化させるように設けられる。これにより、表面粗さを放射状に区分けされるように変化させるだけで、はんだに対する濡れ性を変化させた第1表面状態および第2表面状態を容易に設けることができる。
【0017】
請求項4の発明では、第1表面状態および第2表面状態は、環状溝内に施されるめっき処理とこのめっき処理が施されない表面とによりはんだに対する濡れ性を変えるように設けられる。これにより、環状溝内のうち放射状の領域にめっき処理を施すだけで、はんだに対する濡れ性を変化させた第1表面状態および第2表面状態を容易に設けることができる。
【0018】
請求項5の発明では、第1表面状態および第2表面状態は、環状溝内において放射状溝の形成と表面粗さの差とめっき処理とを含めた表面状態を変化させる構成の少なくとも2つ以上の組み合わせによりはんだに対する濡れ性を変えるように設けられる。これにより、放射状溝、表面粗さの差やめっき処理等により表面状態を放射状に区分けされるように変化させるだけで、はんだに対する濡れ性を変化させた第1表面状態および第2表面状態を容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す説明図であり、図1(A)は、上面図を示し、図1(B)は、図1(A)の1B−1B線相当の切断面による断面図である。
【図2】図1の接合面の状態を示す上面図である。
【図3】図1の接合面に対するはんだの塗布状態示す斜視図である。
【図4】図1の接合面に対するはんだの濡れ広がりを示す説明図であり、図4(A)は、はんだの塗布直後の状態を示し、図4(B)は、はんだの濡れ広がり中の状態を示し、図4(C)は、はんだの濡れ広がり終了時の状態を示す。
【図5】図5(A)は、第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置の要部を示す説明図であり、図5(B)は、第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置の要部を示す説明図である。
【図6】図6(A)は、第1実施形態の第3変形例に係る半導体装置の要部を示す説明図であり、図6(B)は、第1実施形態の第4変形例に係る半導体装置の要部を示す説明図である。
【図7】接合面に形成される溝の参考形状を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る半導体装置10について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る半導体装置10を示す説明図であり、図1(A)は、上面図を示し、図1(B)は、図1(A)の1B−1B線相当の切断面による断面図である。図2は、接合面12の状態を示す上面図である。
【0021】
半導体装置10は、はんだを用いることで半導体素子が被接合部材に接合されて構成されており、図1(A),(B)に例示するように、IC素子20がはんだ30を用いてリードフレーム11の接合面12上にはんだ接合(ダイボンディング)されている。なお、リードフレーム11およびIC素子20は、特許請求の範囲に記載の「被接合部材」および「半導体素子」の一例に相当し得る。
【0022】
図1および図2に示すように、接合面12には、区形状の環状溝13と、この環状溝13の内方に放射状溝14とが形成されている。環状溝13は、はんだ接合されるIC素子20よりも範囲が広くなるように形成されており、その内方に塗布されたはんだ30の外方への流出を防止する機能を有する。なお、環状溝13は、一辺が4mmの矩形状で深さが0.15mmとなるように形成されているが、これに限らず、例えば、円環状に形成されてもよいし、IC素子20よりも範囲が狭くなるように形成されてもよい。
【0023】
放射状溝14は、環状溝13の中心13aを基準にして放射状に広がるように形成されている。具体的には、放射状溝14は、中心13aを基準に当該環状溝13に連通することなく8本の溝が等間隔に配置されるように形成される。これにより、環状溝13の内側において、はんだ30が比較的濡れ広がりやすい第1表面状態S1が放射状溝14により構成され、はんだ30が比較的濡れ広がりにくい第2表面状態S2が放射状溝14が形成されない表面により構成される。すなわち、接合面12のうち環状溝13内の中心13aの近傍には、はんだに対する濡れ性を変化させた第1表面状態S1と第2表面状態S2とが中心13aから外方に向けて放射状に区分けされるように設けられることとなる。なお、放射状溝14は、その深さが、例えば、0.05mmとなるように形成されている。
【0024】
次に、このように構成される接合面12に塗布されたはんだ30の濡れ広がり状態について、図3および図4を用いて説明する。図3は、接合面12に対するはんだ30の塗布状態示す斜視図である。図4は、接合面12に対するはんだ30の濡れ広がりを示す説明図であり、図4(A)は、はんだ30の塗布直後の状態を示し、図4(B)は、はんだ30の濡れ広がり中の状態を示し、図4(C)は、はんだ30の濡れ広がり終了時の状態を示す。
【0025】
まず、図3に示すように、リードフレーム11の接合面12のうち環状溝13の中心13aに対してはんだ30を塗布する。なお、本実施形態では、はんだ30の塗布方法としてはんだ供給装置40を用いた糸はんだによる塗布方法が採用されているが、これに限らず、例えば、はんだボールやはんだ箔による塗布方法を採用してもよい。また、複数のリードフレーム11の接合面12のそれぞれにはんだ30を塗布する場合には、はんだ供給装置40を移動させて各接合面12にはんだ30を塗布してもよいし、複数のはんだ供給装置40を用いて複数の接合面12に対してはんだ30を同時に塗布してもよい。
【0026】
上述のようなはんだ塗布直後では、はんだ30は、図4(A)に例示するように、環状溝13の中心13a近傍に位置している。そして、はんだ30が中心13aから濡れ広がる際、第1表面状態S1ではより濡れ広がり、第2表面状態S2では濡れ広がりにくいため、図4(B)に例示するように、はんだ30が放射状に濡れ広がる。
【0027】
そして、さらにはんだ30が濡れ広がると、第1表面状態S1を濡れ広がるはんだ30が環状溝13内に流れ込み、その後、第2表面状態S2を濡れ広がるはんだ30が環状溝13内に流れ込む。このように、濡れ広がるはんだ30がばらつくことなく環状溝13内に流れ込むので、はんだ30の濡れ広がりを、所望の範囲内、具体的には、環状溝13の範囲内に好適に抑制することができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置10では、IC素子20がはんだ接合されるリードフレーム11の接合面12には、内方に塗布されたはんだ30の外方への流出を防止する環状溝13が形成されている。そして、接合面12のうち環状溝13内の中心13aの近傍には、はんだ30に対する濡れ性を変化させた第1表面状態S1と第2表面状態S2とが上記中心13aから外方に向けて放射状に区分けされている。
【0029】
このため、接合面12の環状溝13の中心13aに塗布されたはんだ30は、濡れ性の良い表面(第1表面状態S1)でより濡れ広がるため、放射状に濡れ広がることとなる。これにより、接合面12上にてはんだ30の濡れ広がり方向が制御されて、不均一なはんだ30の濡れ広がりを防止することができる。さらに、濡れ広がったはんだ30は、環状溝13に流れ込むことでそれ以上外方に流出しないので、所望の範囲を超えるはんだ30の濡れ広がりを抑制することができる。
したがって、はんだ30が所望の範囲に均一に濡れ広がるため、IC素子20をリードフレーム11の接合面12に対して確実にはんだ接合することができる。
【0030】
特に、第1表面状態S1および第2表面状態S2は、環状溝13内に形成される放射状溝14とこの放射状溝14が形成されない表面とによりはんだ30に対する濡れ性を変化させるように設けられている。これにより、環状溝13内に放射状溝14を形成するだけで、はんだ30に対する濡れ性を変化させた第1表面状態S1および第2表面状態S2を容易に設けることができる。
【0031】
図5(A)は、第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置10の要部を示す説明図であり、図5(B)は、第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置10の要部を示す説明図である。図6(A)は、第1実施形態の第3変形例に係る半導体装置10の要部を示す説明図であり、図6(B)は、第1実施形態の第4変形例に係る半導体装置10の要部を示す説明図である。
【0032】
図5(A)に例示するように、第1実施形態の第1変形例として、放射状溝14aは、中心13aを基準に4本の溝が等間隔であって中心13aから最も離れた環状溝13の部位に向かうように形成されてもよい。また、図5(B)に例示するように、第1実施形態の第2変形例として、放射状溝14bは、中心13aを基準に4本の溝が等間隔であって中心13aから最も近い環状溝13の部位に向かうように形成されてもよい。また、上記放射状溝は、中心13aを基準に複数本の溝が等間隔に配置されるように形成されてもよい。
【0033】
また、図6(A)に例示するように、第1実施形態の第3変形例として、放射状溝14cは、中心13aを基準に4本の溝が等間隔であって中心13aから最も離れた環状溝13の部位に連結するように形成されてもよい。また、上記放射状溝は、中心13aを基準に複数本の溝が等間隔であって環状溝13の部位に連結するように形成されてもよい。
【0034】
また、放射状溝14に代えて、環状溝13の中心13aの近傍のみが放射状になる溝を採用してもよい。具体的には、図6(B)に例示するように、第1実施形態の第4変形例として、溝14dは、中心13aの近傍では当該中心13aを基準に4本の溝が等間隔に配置され、各溝の中間部位にて円環状に連結するように形成されてもよい。
【0035】
図7は、接合面12に形成される溝の参考形状を例示する説明図である。
なお、はんだ30の塗布状態等によっては、放射状溝14に代えて、環状溝13の中心13aの近傍には溝が形成されずこの中心13aを囲うように形成される環状の溝を採用してもよい。具体的には、図7(A)に例示するように、中心13aを囲うように矩形状の溝15が形成されてもよい。また、図7(B)に例示するように、矩形状の溝の四隅にそれぞれ円形状の溝を連結した溝15aが形成されてもよいし、図7(C)に例示するように、矩形状の溝の四隅にそれぞれ放射状の溝を連結した溝15cが形成されてもよい。
【0036】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る半導体装置10について説明する。
本第2実施形態では、第1表面状態S1および第2表面状態S2が、放射状溝と異なり、表面粗さの差を利用することで設けられる点が上記第1実施形態と異なる。
【0037】
第1表面状態S1および第2表面状態S2は、環状溝13内に形成される表面粗さを放射状に区分けされるように変化させた2種類の表面によりはんだ30に対する濡れ性を変化させるように設けられている。具体的には、例えば、図3に示す第2表面状態S2の表面粗さを、Sa:1.1〜3.0μmの間で、第1表面状態S1の表面粗さよりも粗くする。
【0038】
このように、表面粗さを放射状に区分けされるように変化させるだけで、はんだ30に対する濡れ性を変化させた第1表面状態S1および第2表面状態S2を容易に設けることができる。その他の作用効果は、上記第1実施形態および変形例等と同様である。
【0039】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る半導体装置10について説明する。
本第3実施形態では、第1表面状態S1および第2表面状態S2の一方にめっき処理を施すことで設けられる点が上記第1実施形態と異なる。
【0040】
第1表面状態S1および第2表面状態S2は、環状溝13内に施されるめっき処理とこのめっき処理が施されない表面とによりはんだ30に対する濡れ性を変化させるように設けられている。具体的には、例えば、図3に示す第1表面状態S1に相当する領域のみにはんだ30に対する濡れ性を向上させるめっき処理を施す。
【0041】
このように、環状溝内のうち放射状の領域にめっき処理を施すだけで、はんだ30に対する濡れ性を変化させた第1表面状態S1および第2表面状態S2を容易に設けることができる。その他の作用効果は、上記第1実施形態および変形例等と同様である。
【0042】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る半導体装置10について説明する。
本第4実施形態では、第1表面状態S1および第2表面状態S2が、放射状溝、表面粗さの差やめっき処理等の表面状態を変化させる構成の少なくとも2つ以上の組み合わせにより設けられる点が上記第1実施形態と異なる。
【0043】
具体的には、例えば、図3に示す第1表面状態S1に相当する領域に放射状溝14を形成するとともに第2表面状態S2に相当する領域に表面粗さが粗くなる処理を施す。また、例えば、第1表面状態S1に相当する領域にめっき処理を施すとともに第2表面状態S2に相当する領域に表面粗さが粗くなる処理を施す。また、めっき処理を施した面の方が溝よりもはんだ30が濡れ広がりにくくなる場合には、第1表面状態S1に相当する領域に放射状溝14を形成するとともに第2表面状態S2に相当する領域にめっき処理を施してもよい。
【0044】
このように、放射状溝、表面粗さの差やめっき処理等により表面状態を放射状に区分けされるように変化させるだけで、はんだ30に対する濡れ性を変化させた第1表面状態S1および第2表面状態S2を容易に設けることができる。その他の作用効果は、上記第1実施形態および変形例等と同様である。
【0045】
なお、本発明は上記各実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)放射状溝14は、環状溝13に連通するように形成されてもよい。他の放射状溝についても同様である。
【0046】
(2)IC素子20等の半導体素子がはんだ接合される接合面は、リードフレーム11の接合面12に限らず、他のフレームなどの被接合部材の接合面であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…半導体装置
11…リードフレーム(被接合部材)
12…接合面
13…環状溝
14…放射状溝
20…IC素子(半導体素子)
30…はんだ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだを用いることで半導体素子が被接合部材にはんだ接合される半導体装置であって、
前記被接合部材の接合面には、内方に塗布された前記はんだの外方への流出を防止する環状溝が形成されており、
前記接合面のうち前記環状溝内の中心の近傍には、前記はんだに対する濡れ性を変化させた第1表面状態と第2表面状態とが前記中心から外方に向けて放射状に区分けされるように設けられることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1表面状態および前記第2表面状態は、前記環状溝内に形成される放射状溝とこの放射状溝が形成されない表面とにより前記はんだに対する濡れ性を変化させるように設けられることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1表面状態および前記第2表面状態は、前記環状溝内に形成される表面粗さを放射状に区分けされるように変化させた2種類の表面により前記はんだに対する濡れ性を変化させるように設けられることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1表面状態および前記第2表面状態は、前記環状溝内に施されるめっき処理とこのめっき処理が施されない表面とにより前記はんだに対する濡れ性を変えるように設けられることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1表面状態および前記第2表面状態は、前記環状溝内において放射状溝の形成と表面粗さの差とめっき処理とを含めた表面状態を変化させる構成の少なくとも2つ以上の組み合わせにより前記はんだに対する濡れ性を変えるように設けられることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−125786(P2012−125786A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278318(P2010−278318)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】