説明

半導体装置

【課題】第1フレームの上に、制御素子が設けられている第2フレームをオーバーラップさせて配置した場合に、第1フレームに実装された電力用半導体素子が発熱しても、制御素子を、動作保証の範囲内に維持できる半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】電力用半導体素子(20a,20b)と第2フレーム(2)の間に、熱遮蔽体(11)が介装されており、熱遮蔽体(11)が電力用半導体素子(20a,20b)から制御素子(30)への熱伝達を遮る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力用半導体モジュールなどの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電力用半導体モジュールの動向として、その小型化が強く要望されている。
従来の電力用半導体モジュールは、主回路および制御回路の各々の回路配線において、平面状のリードフレームで、かつ、実質的に平面的に全ての回路構成をしているので、外形サイズが大きくなってしまう。これでは、電力用半導体モジュールを使用する装置自体の小型化高集積化も困難となる。
【0003】
また、量産時の低コスト化のために樹脂封止したパッケージ形状物が要望されている。そこで特許文献1では、図14に示すように電力用半導体素子20a,20bを配置した第1フレーム1の上に、制御素子30を配置した第2フレーム2をオーバーラップした状態に配置してモジュール全体の小型化を図る構成が提案されている。第1フレーム1は、モールド樹脂3から片面が露出した放熱器4に絶縁シート5を介して結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−124082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今、樹脂封止型の電力用半導体モジュールに対する要求として、さらなる高出力化が求められ、小型化の制約とあわせて発熱密度はさらに大きくなってきている。
電力用半導体モジュールの放熱機構を小型化すると、熱抵抗が大きくなり放熱特性は悪化する。モジュール小型化の流れは、そのまま、半導体素子のジャンクション温度の上昇に直結する。つまり、電力用半導体素子がオン・オフする際に自己発熱により発生する熱により半導体素子内部の温度上昇が大きくなる。従来のSi製電力用半導体トランジスタの場合、半導体素子のジャンクション温度が125℃に制限され、その範囲で電力用半導体モジュールの熱抵抗を設計しなければならなくモジュール小型化の阻害要因になってきた。
【0006】
炭化珪素、GaNといったワイドバンドギャップの半導体材料を用いた場合には、半導体素子のジャンクション温度を250℃以上、500℃以下と高温に設定できるため、モジュールのさらなる小型化が原理的に可能になる。
【0007】
上で説明したように、電力用半導体素子にワイドバンドギャップ材料を用いた場合には、ジャンクション温度を高く設定できるために、放熱機構を簡素化して熱抵抗を大きく設定できるのでモジュールの小型化が可能となる。しかし、このような状況下では、次に、制御素子の動作温度が制約事項となる。一般的に制御素子はSiの集積回路にて構成されるので、動作温度範囲を125℃以下に設定しなければならない。小型化するために、制御素子を電力用半導体素子の直近に配置した場合、その温度上昇が問題になるので、制御素子と電力用半導体素子間距離を離して配置しなければならない。この制約が電力用半導体モジュールの小型化を阻害する要因となる。
【0008】
特に、図14に示すように第1フレーム1の上に第2フレーム2をオーバーラップさせて配置した場合には、状況がさらに不利な状況となる。具体的には、第1フレーム1に実装されている電力用半導体素子20a,20bの発熱が、モールド樹脂3を熱伝導して第2フレーム2を過熱する。そして第2フレーム2を伝導した熱が、第2フレーム2に実装されている制御素子30を高温状態にする。Siで構成された制御素子30でシステム制御を実施する場合、制御素子30の温度が125℃を超えた時点で電力用半導体モジュール動作が保証されない状況になる。
【0009】
本発明は、電力用半導体素子20a,20bが設けられている第1フレーム1の上に、制御素子30が設けられている第2フレーム2をオーバーラップさせて配置するとともに、これを樹脂モールドすることで電力用半導体モジュールを小型化した場合に、電力用半導体素子20a,20bが発熱しても制御素子30のジャンクション温度を、動作保証の範囲内に維持できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置は、電力用半導体素子が設けられている第1フレームに、制御素子が設けられている第2フレームをオーバーラップさせて配置するとともに、これを樹脂モールドした半導体装置において、前記電力用半導体素子と前記第2フレームの間に、前記電力用半導体素子から前記第2フレームへの熱伝達を遮る熱遮蔽体が介装されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の半導体装置は、電力用半導体素子が設けられている第1フレームを放熱器の一方の面に熱結合し、制御素子が設けられている第2フレームを前記第1フレームにオーバーラップさせて配置するとともに、前記放熱器の他方の面を外部に露出するように樹脂モールドした半導体装置において、前記電力用半導体素子と前記第2フレームの間に、前記電力用半導体素子から前記第2フレームへの熱伝達を遮る熱遮蔽体を介装するとともに、前記熱遮蔽体から前記放熱器に放熱するよう前記熱遮蔽体が前記放熱器に熱的に結合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この構成によれば、第1フレームに実装されている電力用半導体素子の素子ジャンクション温度が上がっても、電力用半導体素子から第2フレームへの熱の伝達を間に介在した熱遮蔽体が熱の伝達を遮るので、第2フレームに実装されている制御素子の温度上昇を抑制でき、半導体装置の安定動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体装置の拡大断面図
【図2】図1の要部の断面図
【図3】同実施の形態の熱遮蔽体としての放熱板の拡大斜視図
【図4】同実施の形態の熱遮蔽体としての放熱板の設置位置の説明図
【図5】同実施の形態の半導体装置を樹脂モールドする途中の断面図
【図6】本発明の実施の形態2における第1,第2フレームの平面図、および第1フレームと第2フレームをオーバーラップさせて重ね合わせた状態の平面図
【図7】本発明の実施の形態3における熱遮蔽体としての放熱板の拡大斜視図と側面図
【図8】本発明の実施の形態4における熱遮蔽体としての放熱板の拡大斜視図
【図9】本発明の実施の形態5における熱遮蔽体としての放熱板の拡大斜視図と側面図
【図10】本発明の実施の形態6における熱遮蔽体としての放熱板の拡大平面図とその要部の拡大図ならびに別の実施例の要部の拡大図
【図11】本発明の実施の形態7における熱遮蔽体としての放熱板の拡大斜視図
【図12】本発明の実施の形態8における熱遮蔽体としての放熱板の拡大斜視図
【図13】本発明の実施の形態9における熱遮蔽体としての放熱板の側面図
【図14】従来の半導体モジュールの断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施の形態を図1〜図13に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1〜図5は本発明の実施の形態1を示す。
【0015】
図1は半導体装置としての半導体モジュールで、スイッチング素子、還流ダイオードなどの電力用半導体素子20a,20bが実装された第1フレーム1と、電力用半導体素子20a,20bに制御信号を供給する制御素子30が実装されている第2フレーム2の間に、熱遮蔽体としての放熱板11が介装されている点が、図14に示した従来の半導体モジュールとは異なる。
【0016】
第1フレーム1は、図3に示すようにリードフレームから吊りリードを切断して分離された複数のリード1a,1b,1c,1d,1e,1f,・・・からなっている。この複数のリード1a,1b,1c,1d,1e,1f,・・・は、熱伝導性が良好な絶縁シート5を介して放熱器4の上面に取り付けられている。
【0017】
リード1aの上面には、電力用半導体素子20a,20bが実装されている。電力用半導体素子20aと電力用半導体素子20bの間、電力用半導体素子20aとリード1bの間、電力用半導体素子20bとリード1cの間、電力用半導体素子20bとリード1dの間が、ワイヤー7a,7a,・・・によって電気接続されている。
【0018】
具体的には、電力用半導体素子20aはSi―IGBTまたはワイドバンドギャップ材料で構成されるスイッチング素子、電力用半導体素子20bはフリーホイールダイオードで、Si―FRDまたはワイドバンドギャップ材料で構成されるショットキーダイオードである。
【0019】
さらに、電力用半導体素子20aの上面と、電力用半導体素子20bの一部の上面を覆うように、コの字形に折れ曲がった放熱板11が第1フレーム1に取り付けられている。
なお、この実施の形態では放熱板11が請求の範囲における熱遮蔽体であって、電力用半導体素子20a,20bから第2フレーム2への熱伝達を放熱板11が遮っている。
【0020】
放熱板11は、電力用半導体素子20a,20bの上方を覆うカバー面11aと、一端が前記カバー面11aに接続された脚11b,11cとで構成されている。ここでは放熱板11の脚11b,11cが、リード1e,1fに接合されて放熱器4に熱的に結合されている。放熱板11の材質としては、銅またはアルミニウムなどを使用できる。
【0021】
第1フレーム1にオーバーラップさせて配置された第2フレーム2も、第1フレーム1と同様にリードフレームから吊りリードを切断して分離された複数のリードから構成されており、ここでは第2フレーム2のリード2aの上に制御素子30が設けられている。リード2aはリード2bによって第1フレーム1のリード1bに接合されている。制御素子30はワイヤー7b,7b,・・・によって第2フレーム2のその他のリードに電気接続されている。
【0022】
これらはモールド樹脂3によって覆われており、第1フレーム1のリード1a,第2フレーム2のリード2aなどがモールド樹脂3の外部に外部接続端子として引き出されている。放熱器4の下面がモールド樹脂3から外部に露出している。
【0023】
図5はモールド樹脂3の注入工程を示している。
図3に示すように接続の完了した第1フレーム1と第2フレーム2を、図5に示すように高温雰囲気中の金型12のキャビティー12aにセットして、その際に、樹脂流れが第1フレーム1,第2フレーム2に平行になるように注入口ゲート13からモールド樹脂3の注入を行って、放熱板11のカバー面11aの内面と電力用半導体素子20a,20bの上面との間、放熱板11のカバー面11aの上面と第2フレーム2の下面との間といった狭部に流動抵抗を少なくモールド樹脂3を導入することで、剥離、ボイドといった問題を回避している。モールド樹脂3が硬化後に金型12から取り外す。図1の14が注入口ゲート13の痕跡である。
【0024】
このように構成したため、電力用半導体素子20a,20bの発熱の一部は、リード1aと放熱器4を介してモールド樹脂3の外部に放熱される。また、電力用半導体素子20a,20bの発熱の一部は、モールド樹脂3を伝導して放熱板11に伝導する。放熱板11に伝導した熱の一部は、モールド樹脂3を介して第2のフレーム2に伝導するが、放熱板11に伝導した熱の一部が、リード1e,1fと放熱器4を介してモールド樹脂3の外部に放熱されるため、第2のフレーム2に実装されている制御素子30の温度上昇を、放熱板11が無い場合に比べて低温に抑えることができる。
【0025】
なお、図4に示すように、コの字形に折れ曲がった放熱板11のカバー面11aの内面と、電力用半導体素子20a,20bの上面との距離をyとし、放熱板11のカバー面11aの上面と、第2フレーム2の下面との距離をxとした場合、 x >y にした状態が好ましい。この設定にすることで、モールド樹脂3が入りにくい、放熱板11と第1フレーム1、半導体素子に囲まれる領域に、トランスファー圧力の損失を伴うことなくモジュール全体に樹脂を供給することが可能となる。
【0026】
更に、モールド樹脂3の注入については、第1フレーム1と第2フレーム2が重なっている部分において、第2フレーム2と放熱板11の間には凹凸部分が無いために、トランスファー圧力の損失が発生しにくいために、スムーズに樹脂が供給される。また、狭部となっているところでは樹脂圧力は高くなるので、第1フレーム1とモールド樹脂3、第2フレーム2とモールド樹脂3、モールド樹脂3と電力用半導体素子20a,20bの表面における樹脂密着性が向上してより信頼性が増す。特に、モールド樹脂3の注入速度については、電力用半導体素子20a,20bと放熱板11の間に注入されるモールド樹脂3が到達してから、電力用半導体素子20a,20bと放熱板11間の狭部の充填が完了するまでの期間は、その前後の注入期間よりも多少時間をかけて樹脂を充填することによって、狭部へも確実に充填できる。
【0027】
なお、放熱板11と第1フレーム1は金属接合されている構成が望ましい。この構成にすることで、放熱板11と第1フレーム1がしっかりと固定されるので、電力用半導体素子と樹脂、樹脂と第2金属板の密着性が確保され、樹脂剥がれ等の課題が発生しにくくなる。
【0028】
従って、電力用半導体素子20a,20bから放熱板11を経て放熱器4に至る熱抵抗が、電力用半導体素子20a,20bから放熱板11と第2フレーム2を介し制御素子30までの熱抵抗よりも小さくなって、例えば、スイッチング素子がSiC−MOSFETで、接合温度が250℃になるような厳しい条件化で使用されても、制御素子30自体の温度は動作可能温度範囲、例えば、125℃以下とすることが可能となる。また、放熱板11が電気的に接地されたリード1e,1fの一部に金属接合して構成することで電磁ノイズに対して強いモジュールとなる。
【0029】
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2を示す。
この実施の形態2は、実施の形態1の第1フレーム1と電力用半導体素子20a,20b、第2フレーム2と制御素子30を、具体的なインバータモジュールに適用した具体例を示している。
【0030】
複数の電力用半導体素子20a,20bがリード1h,1iに実装されている第1フレーム1の平面図を図6(a)に示す。複数の制御素子30a,30bがリード2kに実装されている第2フレーム2の平面図を図6(b)に示す。この第1フレーム1の上に第2フレーム2をオーバーラップさせて配置するとともに、第1フレーム1と第2フレーム2をリードによって接合してインバーター電力用半導体モジュールを構成している。電力用半導体素子20aはスイッチング素子である縦型IGBT素子、電力用半導体素子20bは還流ダイオードである。
【0031】
この電力用半導体モジュールの動作を説明する。
ハイサイド側の電力用半導体素子20aは、制御素子30aにより制御を行う。ロー側の電力用半導体素子20aは、制御素子LVIC素子により制御を行う。マイクロコンピュータ(図示せず)から出力されたハイサイド側の信号がHINU,HINV,HINWに入力される。ローサイド側の信号がLINU,LINV,LINWに入力される。
【0032】
その結果、ハイサイド側素子のゲート信号が、端子2k_2,2l_2に供給される。その際に、電源電圧分だけレベルシフトされた信号となる。ローサイド側素子のゲート信号は、端子2m_2に供給される。これらの信号は、中継用リード1k_1,1l_1,1m_1を介して電力用半導体トランジスタのゲートに対して信号が伝達される。接地されたリード1jに接続された放熱板4が、電力用半導体素子20a,20bを覆っているために、ノイズ、熱に強くなり、モジュールの小型化を実現することが可能となる。
【0033】
(実施の形態3)
図7は本発明の実施の形態3を示す。
この実施の形態3は、実施の形態1の放熱板11の別の実施例を示している。
【0034】
図7(a)(b)に示すように、放熱板11の内側と外側にはモールド樹脂3の注入方向(図5の矢印F方向)に沿って延びる溝15が形成されている。このように溝15を放熱板11に形成することによって、放熱板11のカバー面11aの内面と電力用半導体素子20a,20bの上面との間、放熱板11のカバー面11aの上面と第2フレーム2の下面との間といった狭部に流動抵抗を少なくモールド樹脂3を導入でき、剥離、ボイドといった問題を回避できる。
【0035】
(実施の形態4)
図8は本発明の実施の形態4を示す。
この実施の形態4は、実施の形態1の放熱板11の別の実施例を示している。
【0036】
図8に示すように放熱板11のカバー面11aには、放熱板11の内側と外側とを連通する窓状の貫通孔16が形成されている。このように構成した場合には、モールド樹脂3を注入する際に、放熱板11の内側から貫通孔16を介して放熱板11の外側にモールド樹脂3が流動し、放熱板11の外側から貫通孔16を介して放熱板11の内側にモールド樹脂3が流動できるので、モールド樹脂3を放熱板11の下側と上側に隙間なく回り込ませることができ、安定して樹脂封止できる。
【0037】
(実施の形態5)
図9は本発明の実施の形態5を示す。
この実施の形態5は、実施の形態1の放熱板11の別の実施例を示している。
【0038】
図9(a)(b)に示すように、放熱板11のコーナ部17の形状が曲線状になっている。この構成によると、モールド樹脂3を注入する際に、モールド樹脂3の周りに隙間無く回り込ませることができ、安定して樹脂封止できる。
【0039】
なお、図7,図8に示した放熱板11のコーナ部17の形状を曲線状に構成することもできる。
(実施の形態6)
図10は本発明の実施の形態6を示す。
【0040】
この実施の形態6は、実施の形態1の放熱板11の別の実施例を示している。
図10(a)に示すように、放熱板11のカバー面11aと脚11b,11cに多数の孔18が形成されている。孔18は図8の貫通孔16よりも小さい孔である。この構成によると、モールド樹脂3を注入する際に、放熱板11の内側から孔18を介して放熱板11の外側にモールド樹脂3が流動し、放熱板11の外側から孔18を介して放熱板11の内側にモールド樹脂3が流動できるので、モールド樹脂3を放熱板11の下側と上側に隙間無く回り込ませることができ、安定して樹脂封止できる。
【0041】
さらに、孔18の形状ならびに隣接する孔18の配置は、図10(b)(c)に示す拡大図のように、等距離に配置された頂点に多角形あるいは丸形の孔18を形成して、電力用半導体素子20a,20bを覆うような形状に変形加工されて構成にしてもよい。図10(b)では、隣接する孔18の中心間の距離をa=b=c=dとし、この位置にそれぞれ六角形の孔18を形成したが、図10(c)に示すように円形の孔18を形成したり、同様に三角形または四角形などの形状の孔18を多数形成して構成することもできる。
【0042】
(実施の形態7)
図11は本発明の実施の形態7を示す。
この実施の形態7は、実施の形態1の放熱板11の別の実施例を示している。
【0043】
図11に示すように、放熱板11の全体または一部が網で形成されていてもよい。この構成によると、モールド樹脂3を注入する際に、放熱板11の内側から網目19を通して放熱板11の外側にモールド樹脂3が流動し、放熱板11の外側から網目19を通して放熱板11の内側にモールド樹脂3が流動できるので、モールド樹脂3を放熱板11の下側と上側に隙間無く回り込ませることができ、安定して樹脂封止できる。
【0044】
なお、図8,図9に示した放熱板11のカバー面11aと脚11b,11cを網状に構成することもできる。
(実施の形態8)
図12は本発明の実施の形態8示す。
【0045】
この実施の形態8は、実施の形態1の放熱板11の別の実施例を示している。
図12に示すように、放熱板11の脚11b,11cに切れ込み11dを入れることで、モールド樹脂3を注入する際に、放熱板11の内側から切れ込み11dを通して放熱板11の外側にモールド樹脂3が流動し、放熱板11の外側から切れ込み11dを通して放熱板11の内側にモールド樹脂3が流動できるので、モールド樹脂3を放熱板11の下側と上側に隙間無く回り込ませることができ、安定して樹脂封止できる。
【0046】
なお、図7,図8,図9,図10,図11に示した放熱板11のカバー面11aと脚11b,11cに切れ込み11dを入れて構成することもできる。
(実施の形態9)
図13は本発明の実施の形態9を示す。
【0047】
上記の各実施の形態では、電力用半導体素子20a,20bの上を一つの放熱板11が覆っていたが、この実施の形態9では図12に示すように、電力用半導体素子20a,20bの上を複数の放熱板11A,11B,11Cが覆っている。詳しくは、電力用半導体素子20a,20bの上を覆っている放熱板11Aの上を、コの字形に折れ曲がった放熱板11Bが覆っている。さらに、放熱板11Bの上を、コの字形に折れ曲がった放熱板11Cが覆っている。放熱板11A,11B,11Cは何れも前記注入口ゲート13から注入されるモールド樹脂3が、放熱板11A,11B,11Cの内側に流れるよう、カバー面11aと脚11b,11cならびに配置された第1フレーム1とで形成される開口が、前記注入口ゲート13の側に向かって開くように揃えて配置されている。
【0048】
このように、放熱板11A,11B,11Cを複数積み重ねた構造で構成すれば電力用半導体素子が発熱した際に効果的に温度勾配をつけることが可能になりモジュール構造においてより応力を低減した構造を提供することが可能となる。
【0049】
例えば、電力用半導体素子として炭化珪素(SiC)を用いた場合、ジャンクション温度が250℃〜300℃に設定される。素子部でこのように高温になった場合、制御素子温度を100℃程度に低下させるためには150℃以上の温度勾配をつけなければならない。このように大きな温度勾配を制御するためには、一層の金属板で構成するのには困難が伴う。数層の金属板を配置することで温度勾配を制御するのが望ましい。温度勾配をより緩やかに設計することで応力の発生を抑制し、より高信頼性を有する電力用半導体素子を低減することが可能になる。
【0050】
放熱板11A,11B,11Cとしては、熱伝導率が大きい銅を材料主成分とする金属で構成するのが望ましい。その他、金属材料のFe,Ni,Co、その他金属を主成分とする合金でも構成可能である。
【0051】
スイッチング素子である電力用半導体素子20aは、Si―IGBTで構成される。しかし、近年、ワイドバンドギャップ材料で構成されるスイッチング素子が開発され、これらを適用した場合でも効果的に機能する。特に、炭化珪素(SiC)絶縁ゲート型トランジスタを搭載した場合、ジャンクション温度は200℃〜300℃に設定され本発明を適用したモジュールに搭載すれば、効果的に小型化・高出力化を実現することが可能になる。
【0052】
還流ダイオードである電力用半導体素子20bは、Si―FRD(シリコンのファストリカバリダイオード)で構成される。しかし、還流ダイオードも、ワイドバンドギャップ材料で構成されるショットキーダイオードを用いればさらなる小型化・高出力化を実現することができる。この場合も、上で述べた理由と同様の理由でジャンクション温度が高く設定できるので更なるモジュールの小型化・高出力化を図ることが可能となる。
【0053】
その他、窒化ガリウム(GaN)を用いた、スイッチング素子、ダイオードを搭載しても得られる効果は同様である。
なお、放熱板11A,11B,11Cの具体的な形状としては、図3と図4に示した形状の放熱板11,図7〜図12の何れかに示した形状の放熱板11の1つまたは複数を組み合わせて構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、大電力制御が必要な空気調和装置などの各種のインバーター装置の小型化と、劣悪な使用環境における高信頼性の動作に寄与する。
【符号の説明】
【0055】
1 第1フレーム
1a,1b,1c,1d,1e,1f,1h,1i リード
2 第2フレーム
2k リード
3 モールド樹脂
4 放熱器
5 絶縁シート
7a,7b ワイヤー
11 放熱板(熱遮蔽体)
11a カバー面
11b,11c 脚
11d 切れ込み
11A,11B,11C 放熱板(熱遮蔽体)
12 金型
12a キャビティー
13 注入口ゲート
14 注入口ゲートの痕跡
15 溝
16 窓状の貫通孔
17 放熱板11のコーナ部
18 孔
19 網目
20a,20b 電力用半導体素子
30,30a,30b 制御素子
F モールド樹脂3の注入方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力用半導体素子が設けられている第1フレームに、制御素子が設けられている第2フレームをオーバーラップさせて配置するとともに、これを樹脂モールドした半導体装置において、
前記電力用半導体素子と前記第2フレームの間に、前記電力用半導体素子から前記第2フレームへの熱伝達を遮る熱遮蔽体が介装されている
半導体装置。
【請求項2】
電力用半導体素子が設けられている第1フレームを放熱器の一方の面に熱結合し、
制御素子が設けられている第2フレームを前記第1フレームにオーバーラップさせて配置して、
前記放熱器の他方の面を外部に露出するように樹脂モールドした半導体装置において、
前記電力用半導体素子と前記第2フレームの間に、前記電力用半導体素子から前記第2フレームへの熱伝達を遮る熱遮蔽体を介装するとともに、前記熱遮蔽体から前記放熱器に放熱するよう前記熱遮蔽体が前記放熱器に熱的に結合している
半導体装置。
【請求項3】
前記熱遮蔽体に、前記第1フレームの側と前記第2フレームの側を連通する孔が形成されている
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記熱遮蔽体は、前記第1フレームに実装された前記電力用半導体素子の上方を覆うカバー面と、一端が前記カバー面に接続され他端が前記放熱器に熱的に結合された脚と
を有している
請求項2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記熱遮蔽体の表面に、前記樹脂モールドの際の注入ゲート跡から前記第1,第2フレームの間に向かう方向に沿って延びる溝が形成されている
請求項1〜請求項4の何れかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記電力用半導体素子から前記熱遮蔽体を経て前記放熱器に至る熱抵抗が、前記電力用半導体素子から前記熱遮蔽体と前記第2フレームを介し前記制御素子までの熱抵抗よりも小さい
請求項2〜請求項5の何れかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記熱遮蔽体の脚に、切り欠きが形成されている
請求項4〜請求項6の何れかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−146711(P2012−146711A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1574(P2011−1574)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】