説明

半導体装置

【課題】小型化された半導体装置においても、効率よく放熱することが可能であり、放熱不足による劣化や故障を低減した半導体装置を提供する。
【解決手段】 本発明の半導体装置は、半導体素子10の一面が半田バンプ20を介してプリント基板2にフリップチップ実装された半導体装置1A(1)であって、前記半導体素子の他面が、弾性を有する放熱体3を介して前記半導体素子及び前記プリント基板とは異なる物体4に接触し、かつ、接触したときに前記放熱体が弾性変形した状態にあること、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱機構を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に「ウエハレベルCSP」と呼ばれる製法では、シリコンウエハ上に絶縁層、再配線層、封止層等を形成し、半田バンプを形成する。そして最終工程において、ウエハを所定のチップ寸法に切断することでパッケージ構造を具備した半導体チップを得ることが可能となる。ウエハレベルCSPの製造方法における特徴は、パッケージを構成する材料をすべてウエハの形状において加工することにある。すなわち、絶縁層、再配線層、封止樹脂層、半田バンプ等はすべてウエハをハンドリングすることで形成される。
【0003】
ウエハレベルCSPでは、完成した半導体装置は、半導体素子と同サイズという非常に小型になるという利点があるが、その反面、放熱性に問題がある。それはウエハレベルCSPが、基板に面実装されること、かつ小型であることから、シリコン基板裏面からの放熱がほとんど期待できないためである。一方で、半導体素子は微細化及び駆動周波数の高速化により、単位面積あたりの発熱量は増加し続けている。その結果、半導体素子の放熱不足による劣化や故障が問題となっている。
【0004】
これを解決する手段として、シリコン基板裏面にヒートシンクを取り付ける手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ヒートシンクでの放熱機能は、外気に対流熱伝導する表面積を増やすのみであり、また実装面積が小さいというウエハレベルCSPのメリットを活かすと、ヒートシンクのサイズは、チップサイズと同サイズ以下となってしまうため、発熱量の大きな半導体装置には放熱性が十分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−266419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、小型化された半導体装置においても、効率よく放熱することが可能であり、放熱不足による劣化や故障を低減した半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の半導体装置は、半導体素子の一面が半田バンプを介してプリント基板にフリップチップ実装された半導体装置であって、前記半導体素子の他面が、弾性を有する放熱体を介して前記半導体素子及び前記プリント基板とは異なる物体に接触し、かつ、接触したときに前記放熱体が弾性変形した状態にあること、を特徴とする。
本発明の請求項2に記載の半導体装置は、請求項1において、前記放熱体は、コイル状のばねであること、を特徴とする。
本発明の請求項3に記載の半導体装置は、請求項1において、前記放熱体は、板状のばねであること、を特徴とする。
本発明の請求項4に記載の半導体装置は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記放熱体は、銅またはアルミニウムからなること、を特徴とする。
本発明の請求項5に記載の半導体装置は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記放熱体は、その一端側を、絶縁性接着剤を介して前記半導体素子の前記他面に固定されていること、を特徴とする。
本発明の請求項6に記載の半導体装置は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記物体は、板状をなし、前記半導体素子よりも大きな面積を有すること、を特徴とする。
本発明の請求項7に記載の半導体装置は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記物体は、筐体であること、を特徴とする。
本発明の請求項8に記載の半導体装置は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記物体は、前記半導体素子のキャップであること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、半導体素子の他面が、弾性を有する放熱体を介して前記半導体素子及び前記プリント基板とは異なる物体に接触しているので、半導体素子自体の小型化がさらに進んだ場合においても、放熱体自身からの放熱に加え、該物体を介して効率よく放熱することができる。また、接触したときに前記放熱体が弾性変形した状態にあるので、例えば、ねじ止めなどの固定を行わなくても、放熱体と前記半導体素子及び前記物体との接触を確実に維持することができるので、設計自由度の高い半導体装置が得られる。これにより、前記半導体素子で発生した熱を、前記放熱体を介して前記物体に効率よく伝達することができる。その結果、本発明は、小型化された半導体装置においても、効率よく放熱することが可能であり、放熱不足による劣化や故障を低減した半導体装置の提供に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の半導体装置の第一実施形態を模式的に示す断面図。
【図2】図1に示す半導体装置において、半導体素子部分を拡大して示す図。
【図3】本発明の半導体装置の第二実施形態を模式的に示す断面図。
【図4】本発明の半導体装置の第三実施形態を模式的に示す断面図。
【図5】本発明の半導体装置の他の実施形態を模式的に示す断面図。
【図6】本発明の半導体装置の他の実施形態を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の半導体装置の好適な実施形態について説明する。
<第一実施形態>
図1は、本発明の半導体装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
本発明の半導体装置1A(1)は、半導体素子10の一面10aが半田バンプ20を介してプリント基板2にフリップチップ実装された半導体装置であって、前記半導体素子10の他面10bが、弾性を有する放熱体3を介して前記半導体素子10及び前記プリント基板2とは異なる物体4に接触し、かつ、接触したときに前記放熱体3が弾性変形した状態にあること、を特徴とする。
【0011】
本発明では、半導体素子10の他面10bが、弾性を有する放熱体3を介して前記半導体素子10及び前記プリント基板2とは異なる物体4に接触しているので、半導体素子10自体の小型化がさらに進んだ場合においても、放熱体3自身からの放熱に加え、該物体4を介して効率よく放熱することができる。また、接触したときに前記放熱体3が弾性変形した状態にあるので、例えば、ねじ止めなどの固定を行わなくても、放熱体3と前記半導体素子10及び前記物体4との接触を確実に維持することができる。これにより、前記半導体素子10で発生した熱を、前記放熱体3を介して前記物体4に効率よく伝達することができるので、設計自由度が高い半導体装置が得られる。その結果、本発明の半導体装置1A(1)は、小型化された半導体装置1A(1)においても、効率よく放熱することが可能であり、放熱不足による劣化や故障が低減されたものとなる。
【0012】
ここで図2は、図1に示す半導体装置1A(1)において、半導体素子部分を拡大して示す図である。
半導体素子10は、半導体基板11と、その表面に形成された電極パッド14と、半導体基板11の表面に設けられた絶縁樹脂層15と、この絶縁樹脂層15の上に配された第一配線部16と、を備えている。絶縁樹脂層15は、電極パッド14と整合する位置に開口部15aを有しており、第一配線部16は、絶縁樹脂層15の開口部15aを通して電極パッド14と電気的に接続されている。
【0013】
半導体基板11は、Siの他に、SiGe,GaAs等の化合物半導体からなる半導体ウエハでもよく、半導体ウエハをチップ寸法に切断(ダイシング)した半導体チップであってもよい。半導体基板11が半導体チップである場合は、まず、半導体ウエハの上に、各種半導体素子やIC等を複数組、形成した後、チップ寸法に切断することで複数の半導体チップを得ることができる。半導体基板11の厚さは、例えば50〜500μmである。
【0014】
半導体基板11の表面には、SiNまたはSiO2 等のパッシベーション膜(不動態化による絶縁層:不図示)が形成されている。
パッシベーション膜には、電極と整合する位置に開口部が設けられており、この開口部を通して電極パッド14が露出されている。パッシベーション膜は、例えばLP−CVD法等により形成することができ、その膜厚は例えば0.5〜3μmである。
【0015】
電極パッド14の材質としては、例えばアルミニウム(Al)や銅(Cu)、アルミニウム−シリコン(Al−Si)合金、アルミニウム−シリコン−銅(Al−Si−Cu)合金等の導電性に優れる材質が好適に用いられる。
【0016】
絶縁樹脂層15を構成する樹脂としては、ポリイミド、エポキシ、ポリベンゾオキサゾール等の絶縁樹脂が挙げられ。絶縁樹脂層15の形成方法としては、液状樹脂のスピンコートやスプレーコート、フィルム状樹脂のラミネート法等が挙げられる。絶縁樹脂層15の開口部15aは、例えばフォトリソグラフィ技術やスクリーン印刷を利用したパターニングなどにより形成することができる。フォトリソグラフィ技術を利用する場合には、感光性を有する絶縁樹脂が用いられる。
【0017】
第一配線部16は、各種金属や合金等の導電体などのうち1種あるいは2種以上を選択して用いることができる。第一配線部16は、複数の導電体の層が積層されたものであっても良い。第一配線部16の形成は、例えば、電解銅メッキ法等のメッキ法、スパッタリング法、蒸着法、または2つ以上の方法の組み合わせにより形成することができる。
【0018】
また、この半導体素子10では、第一配線部16に設けたパッド17の上に半田バンプ20を設けるとともに、第一配線部16のパッド17以外の部分は封止樹脂層18で覆って封止した構造にしている。封止樹脂層18には、パッド17と整合する位置に開口部18aが設けられ、半田バンプ20は、開口部18aに露呈されるパッド17を介して第一配線部16と電気的に接続される。
【0019】
封止樹脂層18は、絶縁樹脂層15を構成する絶縁樹脂と同一の絶縁樹脂から構成することもでき、または異なる絶縁樹脂から構成することもできる。封止樹脂層18を構成する絶縁樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。封止樹脂層18の形成方法としては、液状樹脂のスピンコートやスプレーコート、フィルム状樹脂のラミネート法等が挙げられる。封止樹脂層18の開口部18aは、例えばフォトリソグラフィ技術やスクリーン印刷を利用したパターニングなどにより形成することができる。フォトリソグラフィ技術を利用する場合には、感光性を有する絶縁樹脂が用いられる。
【0020】
半田バンプ20の形成方法としては、半田ペーストを印刷法にてパッド17上に転写したのちリフローしてバンプ状にする方法、半田ボールをボール搭載法にてパッド17上に載せたのちリフローしてパッド17と融着させる方法、めっき法にて形成する方法等が挙げられる。半田バンプ20を構成する半田としては、例えばSn−Pb共晶タイプ、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Zn、Sn−Zn―B合金等の鉛フリータイプが挙げられるが、本発明において半田の組成には特に制限はない。
【0021】
そして本発明の半導体装置1A(1)は、上述したような半導体素子10の他面10bが、弾性を有する放熱体3を介して前記半導体素子10及び前記プリント基板2とは異なる物体4に接触し、かつ、接触したときに前記放熱体3が弾性変形した状態にある。
【0022】
前記放熱体3は、例えばコイル状のばねとする。放熱体3をばねとすることで、放熱体3が弾性変形した状態において、例えば、ねじ止めなどの固定を行わなくても、放熱体3と前記半導体素子10及び前記物体4との接触を確実に維持することができる。
なお、半導体素子10が半田バンプを介してフリップチップ実装されたプリント基板2を電子機器に組み立てる際に、放熱体3の自然長を半導体装置1A(1)の他面と物体4との間のスペースよりも長くする必要がある。これにより放熱体3が弾性変形した状態を維持することができる。
【0023】
前記放熱体3を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、半導体基板11を構成する材料より熱伝導率の高い材料が好ましい。放熱体3を、熱伝導性に優れた材料から構成することで、放熱体3自身から効率よく放熱できることに加え、前記半導体素子10で発生した熱を前記物体4に効率よく伝達することができる。
半導体基板11が一般的なSiからなる場合、Siよりも熱伝導率の高い材料として、例えば銅またはアルミニウムが挙げられる。
【0024】
前記放熱体3は、その一端側を、絶縁性接着剤を介して前記半導体素子10の他面10bに固定されていてもよい。これにより半導体素子10と放熱体3との絶縁性を確保することができる。
【0025】
前記物体4は、板状をなし、前記半導体素子10よりも大きな面積を有することが好ましい。物体4が板状をなし、前記半導体素子10よりも大きな面積を有することで、半導体素子10から放熱体3を介して伝達された熱を、面積の大きな板状部から効率よく放熱することができる。
このような物体4としては、特に限定されるものではないが、例えば、半導体素子10が半田バンプを介してフリップチップ実装されたプリント基板2が組み込まれる電子機器の筺体が挙げられる。
【0026】
このように、本発明の半導体装置では、小型化された場合においても、放熱体3自身からの放熱に加え、半導体素子10で発生した熱を、放熱体3を介して物体4に伝達させ、該物体4を介して効率よく放熱することが可能であり、放熱不足による劣化や故障を低減することができる。
【0027】
<第二実施形態>
次に、本発明の半導体装置の第二実施形態について説明する。
なお、以下に示す説明では、上述した実施形態と異なる部分について主に説明し、第一実施形態と同様の部分については、その説明を省略する。
図3は、本実施形態の半導体装置1B(1)の一構成例を模式的に示す断面図である。
【0028】
上述した第一実施形態では、放熱体3がコイル状のばねであったが、本実施形態においては、放熱体3が板状のばねとしている。放熱体3を板状のばねとし、放熱体3を平面状に構成することで、外気に露出する面積が広くなり、放熱体3の平面部からより多く放熱させることができる。また、前記半導体素子10で発生した熱を前記物体4に効率よく伝達することができる。
【0029】
<第三実施形態>
次に、本発明の半導体装置の第三実施形態について説明する。
なお、以下に示す説明では、上述した実施形態と異なる部分について主に説明し、第一実施形態と同様の部分については、その説明を省略する。
図4は、本実施形態の半導体装置1C(1)の一構成例を模式的に示す断面図である。
【0030】
上述した実施形態では、前記物体4が、電子機器の筺体であったが、本実施形態においては、前記物体4が、前記半導体素子10のキャップとしている。放熱体3を電子機器の筐体に接触させるのではなく、モジュールのアルミキャップ等に接触させることでも放熱効果を上げることが可能である。
【0031】
また、本発明の半導体装置は、上述したような実施形態の他にも様々な構成をとることができる。例えば図5に示すように、放熱体3を波型状のばねとしてもよい。また、図6に示すように、放熱体3を、弾性を有する球体としてもよい。また、放熱体3は、その全体が熱導電性の高い材料から構成されている必要はなく、少なくとも表面が熱導電性の高い材料から構成されていればよい。
【0032】
以上、本発明の半導体装置について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、半導体装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1A、1B、1C、1D、1E(1) 半導体装置、2 プリント基板、3 放熱体、4 物体、10 半導体素子、20 半田バンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子の一面が半田バンプを介してプリント基板にフリップチップ実装された半導体装置であって、
前記半導体素子の他面が、弾性を有する放熱体を介して前記半導体素子及び前記プリント基板とは異なる物体に接触し、かつ、接触したときに前記放熱体が弾性変形した状態にあること、を特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記放熱体は、コイル状のばねであること、を特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記放熱体は、板状のばねであること、を特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記放熱体は、銅またはアルミニウムからなること、を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記放熱体は、その一端側を、絶縁性接着剤を介して前記半導体素子の前記他面に固定されていること、を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記物体は、板状をなし、前記半導体素子よりも大きな面積を有すること、を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記物体は、筐体であること、を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記物体は、前記半導体素子のキャップであること、を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−178433(P2012−178433A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40161(P2011−40161)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】