半導体装置
【課題】半導体モジュールの面方向の熱膨張収縮が拘束されると、高さ方向の熱応力によって反りが発生し、グリースが塗布位置から流出する可能性がある。
【解決手段】半導体装置100は、平板状の冷却器2と、冷却器2上にグリースを介して載置された、半導体チップを樹脂モールドした半導体モジュール1と、平板状の冷却器の面方向において、半導体モジュールの温度変化に応じた寸法変化を許容するとともに、半導体モジュールの位置を位置決めする位置決め部材3とを備える。
【解決手段】半導体装置100は、平板状の冷却器2と、冷却器2上にグリースを介して載置された、半導体チップを樹脂モールドした半導体モジュール1と、平板状の冷却器の面方向において、半導体モジュールの温度変化に応じた寸法変化を許容するとともに、半導体モジュールの位置を位置決めする位置決め部材3とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱伝導性グリースを介して半導体モジュールを冷却器上に配置し、半導体モジュールを冷却器にボルト締結して位置決め固定した半導体装置が知られている。特許文献1では、パワーモジュールまたは冷却器に凹部または凸部を設けて、パワーモジュールと冷却器との間から流出するグリースを凹部に貯める、または、凸部で止める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−168772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、半導体モジュールを冷却器にボルト締結するので、半導体モジュールの面方向の熱膨張収縮が拘束される。従って、環境温度変化によって、半導体モジュールの高さ方向に熱応力が発生すると、半導体モジュールの反りが発生し、グリースが塗布位置から流出する可能性がある。
【0005】
本発明は、半導体モジュールの面方向の熱膨張収縮を拘束せず、半導体モジュールを位置決め固定することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による半導体装置は、平板状の冷却器と、冷却器上にグリースを介して載置された、半導体チップを樹脂モールドした半導体モジュールと、半導体モジュールの位置を位置決めする位置決め部材とを備える。位置決め部材は、平板状の冷却器の面方向において、半導体モジュールの温度変化に応じた寸法変化を許容する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、位置決め部材は、半導体モジュールの位置を位置決めするが、半導体モジュールの温度変化に応じた寸法変化を許容するので、半導体モジュールの面方向の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュールを位置決め固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)は、第1の実施形態における半導体装置の外観構成を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示す半導体装置を半分に割った状態を示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態における半導体装置の上面図である。
【図3】図3は、第1の実施形態における半導体装置の断面図である。
【図4】図4は、第1の実施形態の変形例1における半導体装置の上面図である。
【図5】図5は、第1の実施形態の変形例2における半導体装置の上面図である。
【図6】図6は、第2の実施形態における半導体装置の外観構成を示す斜視図である。
【図7】図7は、第2の実施形態における半導体装置の上面図である。
【図8】図8は、第2の実施形態における半導体装置の断面図である。
【図9】図9は、第3の実施形態における半導体装置の上面図である。
【図10】図10(a)は、第4の実施形態における半導体装置の外観構成を示す斜視図であり、図10(b)は、図10(a)に示す半導体装置を半分に割った状態を示す図である。
【図11】図11は、第4の実施形態における半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
図1(a)は、第1の実施形態における半導体装置100の外観構成を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示す半導体装置100を半分に割った状態を示す図である。図2は、第1の実施形態における半導体装置100の上面図である。図3は、第1の実施形態における半導体装置100の断面図であり、図1(b)の矢印Y1の方向から見た図である。
【0010】
第1の実施形態における半導体装置100は、平板状の冷却器2と、グリース5を介して冷却器2上に載置された半導体モジュール1と、半導体モジュール1を位置決めするための位置決め部材3とを備える。位置決め部材3は、4本のボルト4で冷却器2に取り付けられている。
【0011】
半導体モジュール1は、バスバー11の上に半導体チップ10を載置し、バスバー11の露出面および半導体チップ10をPPSやエポキシ樹脂等の絶縁性のモールド樹脂で樹脂モールドすることによって構成されている。バスバー11と冷却器2との間には、グリース5が塗布されている。なお、図3では、1つの半導体チップ10しか示していないが、半導体モジュール1は、複数の半導体チップ10を含むことができる。
【0012】
位置決め部材3は、半導体モジュール1の外周を取り囲む枠状の形状であり、シリコーンゴム等の、半導体モジュール1を構成するモールド樹脂よりも剛性が低い弾性材で成形されている。枠状の位置決め部材3の各辺には、内側に向かって、すなわち、内部に載置されている半導体モジュール1に向かって突出する半円形状の凸部3Aが設けられている。また、半導体モジュール1の外周の四辺にはそれぞれ、位置決め部材3の凸部3Aと嵌合する、半円形状の凹部1Aが設けられている。すなわち、位置決め部材3の凸部3Aは、半導体モジュール1の外周に設けられている凹部1Aと嵌合することによって、半導体モジュール1を位置決め固定する。位置決め部材3の凸部3Aと半導体モジュール1の凹部1Aとを嵌合させる構造であるため、載置されている半導体モジュール1に位置決め部材3を取り付ける際に、容易に位置決めすることができる。また、位置決め部材3を冷却器2に固定する構造としているため、初期の塗布範囲にグリース5を留めておくことができる。
【0013】
図3に示すように、半導体モジュール1の凹部1Aは、半導体モジュール1の上面から底面まで設けられているわけではなく、上面から底面に向かう途中まで設けられている。同様に、位置決め部材3の凸部3Aは、位置決め部材3の上面から底面まで設けられているわけではなく、上面から底面に向かう途中まで設けられている。従って、位置決め部材3の凸部3Aが半導体モジュール1の凹部1Aと嵌合している状態では、凸部3Aの下側は空白ではなく、半導体モジュール1が存在する。これにより、振動等によって半導体モジュール1に上方向の力が加わっても、凸部3Aによって半導体モジュール1が上方向に抜けるのを防ぐことができる。
【0014】
上述したように、位置決め部材3は、弾性材で成形されているので、環境温度変化等に起因して半導体モジュール1が膨張・収縮しても、半導体モジュール1の動きに応じて、位置決め部材3も弾性変形するので、半導体モジュール1の面方向の動きが拘束されない。すなわち、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮が拘束されないので、面方向の熱応力が発生せず、半導体モジュール1の反りの発生を防止することができる。これにより、グリース5の流出を防ぐことができる。なお、面方向とは、平板状の冷却器2の平面に沿った方向、すなわち、冷却器2および半導体モジュール1の積層方向と垂直な平面に沿った方向である。
【0015】
以上、第1の実施形態における半導体装置100は、平板状の冷却器2と、冷却器2上にグリース5を介して載置された半導体チップ10を樹脂モールドした半導体モジュール1と、平板状の冷却器2の面方向において、半導体モジュール1の温度変化に応じた寸法変化を許容するとともに、半導体モジュールの位置を位置決めする位置決め部材3とを備える。このような構成としたことにより、位置決め部材3は、半導体モジュール1の位置を位置決めするが、半導体モジュール1の温度変化に応じた寸法変化を許容するので、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュール1を位置決め固定することができる。
【0016】
特に、位置決め部材3は、冷却器2の面方向において、熱膨張収縮する半導体モジュール1を弾性的に支持するので、半導体モジュール1の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュール1を位置決め固定することができる。
【0017】
また、位置決め部材3は、半導体モジュール1の周囲に当接する弾性体であるので、半導体モジュール1の周囲に当接することによって、容易に半導体モジュール1を位置決めしつつ、半導体モジュール1の熱膨張収縮を吸収することができる。
【0018】
<第1の実施形態の変形例1>
図4は、第1の実施形態の変形例1における半導体装置100Aの上面図である。この半導体装置100Aでは、位置決め部材3の四辺全てではなく、隣り合う二辺にだけ、凸部3Aが設けられている。また、半導体モジュール1の外周の四辺のうちの二辺に、凸部3Aと嵌合する凹部1Aが設けられている。従って、半導体モジュール1の外周の四辺のうち、凹部1Aが設けられていない辺は、位置決め部材3の内周面と当接している。
【0019】
第1の実施形態の変形例1における半導体装置100Aでも、位置決め部材3は、半導体モジュール1の位置を位置決めするが、半導体モジュール1の温度変化に応じた寸法変化を許容するので、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュール1を位置決め固定することができる。
【0020】
<第1の実施形態の変形例2>
図5は、第1の実施形態の変形例2における半導体装置100Bの上面図である。この半導体装置100Bでは、位置決め部材3に凸部3Aが設けられていない。同様に、半導体モジュール1の外周にも、凹部1Aが設けられていない。すなわち、矩形形状の半導体モジュール1の周囲は、矩形枠状の位置決め部材3と当接した状態で取り囲まれている。
【0021】
第1の実施形態の変形例2における半導体装置100Bでも、弾性体の位置決め部材3は、半導体モジュール1の位置を位置決めするが、半導体モジュール1の温度変化に応じた寸法変化を許容するので、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュール1を位置決め固定することができる。但し本変形例2においては、半導体モジュール1の正確な位置決めを行うためには、半導体モジュール1の外周面と位置決め部材3の内周面との面精度が要求されるため、上述のように半導体モジュール1と位置決め部材3とは凹部と凸部で勘合する形状とすることが望ましい。
【0022】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態における半導体装置200の外観構成を示す斜視図である。図7は、第2の実施形態における半導体装置200の上面図であり、図8は、図7のA−A’面で切断した場合の第2の実施形態における半導体装置200の断面図である。
【0023】
第2の実施形態における半導体装置200では、位置決め部材3の凸部3Bの形状が第1の実施形態における位置決め部材3の凸部3Aの形状と異なる。すなわち、位置決め部材3の凸部3Bは、矩形形状である。また、半導体モジュール1は、位置決め部材3の凸部3Bの形状に応じた、矩形の凹部1Bを有する。
【0024】
位置決め部材3の凸部3Bの長さ寸法は、半導体モジュール1の凹部1Bの深さ寸法よりも短い。また、位置決め部材3の凸部3Bの幅寸法は半導体モジュール1の凹部1Bの幅寸法と同等である。すなわち、凸部3Bの突出方向先端は、凹部1Bの底面に対して離間しており、半導体モジュール1と位置決め部材3との間には、わずかな隙間が存在する。また、凸部3Bの幅方向端面は凹部1Bの内周面に当接している。これにより、半導体モジュール1の面方向の動きは拘束されるが、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮は拘束されない。すなわち、半導体モジュール1の面方向の熱膨張および収縮は、半導体モジュール1の中心を基点とした、半導体モジュール1の外周方向への寸法変化であり、これに対しては凸部3Bの突出方向先端と凹部1Bの底面とが離間していることから拘束されることは無い。一方で、凸部3Bの幅方向両端面は凹部1Bの内周面に当接しているため、半導体モジュール1自体の面方向の動きは拘束されて位置決めされる。
【0025】
上述の通り、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮が拘束されないので、面方向の熱応力が発生せず、半導体モジュール1の反りの発生を防止することができる。これにより、グリース5の流出を防ぐことができる。また、位置決め部材3の凸部3Bの幅寸法と、半導体モジュール1の凹部1Bの幅寸法が同等であるため、凸部3Bの幅方向両端面は凹部1Bの内周面に当接し、半導体モジュール1の位置を位置決めすることができる。
【0026】
なお、位置決め部材3の凸部3Bの長さ寸法と、半導体モジュール1の凹部1Bの深さ寸法、すなわち凸部3Bの突出方向先端と凹部1Bの底面との隙間は、半導体モジュール1の熱膨張収縮の大きさを考慮して、適切な値に設定すればよい。また、凸部3Bの幅方向両端面と凹部1Bの内周面とを接触させるために両者の幅寸法を同等としているが、設計的な寸法誤差は許容される。
【0027】
また、第2の実施形態における位置決め部材3の素材は、弾性材に限定されず、例えば、金属のような剛性材でもよい。
【0028】
さらにまた、第2の実施形態における凸部3Bの先端形状と凹部1Bの底面形状は、第1の実施形態とは異なり矩形状としているが、これは上述の通り、本第2の実施形態においては、凸部3Bの幅方向両端面と凹部1Bの内周面とが当接することによって半導体モジュール1の位置決めを行っているためであり、凸部3Bの先端形状と凹部1Bの底面形状は半導体モジュール1の位置決めに寄与しないためである。従って、凸部3Bの幅方向両端面と凹部1Bの内周面とが当接し、且つ凸部3Bの先端と凹部1Bの底面との間に隙間が設けられていれば、凸部3Bの先端形状と凹部1Bの底面形状はどのような形状であっても良い。
【0029】
なお上述の通り、半導体モジュール1の面方向の熱膨張および収縮は、半導体モジュール1の中心を基点とした、半導体モジュール1の外周方向への寸法変化であるため、半導体モジュール1の凹部1Bは、半導体モジュール1の各外周辺の中心に設けることが好ましい。
【0030】
以上、第2の実施形態における半導体装置200では、位置決め部材3は、冷却器2に固定されて外形が方形の枠状体であり、半導体モジュール1は、外形が枠状体の内周部よりも小さい略方形で枠状体内に載置され、外周の四辺に設けられた凹部1Bを有している。位置決め部材3は、半導体モジュール1の凹部1Aと対応する位置であって、枠状体の四辺から半導体モジュール1に向かって延びる凸部3Bを有し、凸部3Bの先端は凹部1Aの底面に対して離間するとともに、凸部3Bの幅方向両端面は凹部1Aの内周面に対して当接している。このような構成とすることにより、位置決め部材3は、半導体モジュール1の位置を位置決めするが、半導体モジュール1の温度変化に応じた寸法変化を許容するので、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュール1を位置決め固定することができる。
【0031】
<第3の実施形態>
図9は、第3の実施形態における半導体装置300の上面図である。第2の実施形態における半導体装置200では、位置決め部材3に凸部3Bが設けられ、半導体モジュール1に凹部1Bが設けられていたが、第3の実施形態における半導体装置300では、位置決め部材3に凹部3Cが設けられ、半導体モジュール1に凸部1Cが設けられている。
【0032】
半導体モジュール1の凸部1Cの長さ寸法は、位置決め部材3の凹部3Cの深さ寸法よりも短い。また、半導体モジュール1の凸部1Cの幅寸法は位置決め部材3の凹部3Cの幅寸法と同等である。すなわち、凸部1Cの突出方向先端は、凹部3Cの底面に対して離間しており、半導体モジュール1と位置決め部材3との間には、わずかな隙間が存在する。また、凸部1Cの幅方向端面は凹部3Cの内周面に当接している。これにより、半導体モジュール1の面方向の動きは拘束されるが、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮が拘束されない。すなわち、半導体モジュール1の面方向の熱膨張および収縮は、半導体モジュール1の中心を基点とした、半導体モジュール1の外周方向への寸法変化であり、これに対しては凸部1Cの突出方向先端と凹部3Cの底面とが離間していることから拘束されることは無い。一方で、凸部1Cの幅方向両端面は凹部3Cの内周面に当接しているため、半導体モジュール1自体の面方向の動きは拘束されて位置決めされる。
【0033】
上述の通り、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮が拘束されないので、面方向の熱応力が発生せず、半導体モジュール1の反りの発生を防止することができる。これにより、グリース5の流出を防ぐことができる。また、位置決め部材3の凹部3Cの幅寸法と、半導体モジュール1の凸部1Cの幅寸法とが同等であるため、凸部1Cの幅方向両端面は凹部3Cの内周面に当接し、半導体モジュール1の位置を位置決めすることができる。
【0034】
なお、第2の実施形態と同様に、半導体モジュール1の凸部1Cの長さ寸法と、位置決め部材3の凹部3Cの深さ寸法、すなわち凸部1Cの突出方向先端と凹部3Cの底面との隙間は、半導体モジュール1の熱膨張収縮の大きさを考慮して、適切な値に設定すればよい。また、凸部1Cの幅方向両端面と凹部3Cの内周面とを接触させるために両者の幅寸法を同等としているが、設計的な寸法誤差は許容される。
【0035】
また、第2の実施形態と同様に、位置決め部材3の素材は、弾性材に限定されず、例えば、金属のような剛性材でもよい。
【0036】
さらにまた、第2の実施形態と同様に、凸部1Cの先端形状と凹部3Cの底面形状はどのような形状であっても良い。
【0037】
また、第2の実施形態と同様に、半導体モジュール1の面方向の熱膨張および収縮は、半導体モジュール1の中心を基点とした、半導体モジュール1の外周方向への寸法変化であるため、半導体モジュール1の凸部1Cは半導体モジュール1の各外周辺の中心に設けることが好ましい。
【0038】
<第4の実施形態>
図10(a)は、第4の実施形態における半導体装置400の外観構成を示す斜視図であり、図10(b)は、図10(a)に示す半導体装置400を半分に割った状態を示す図である。第1の実施形態における半導体装置100では、半導体モジュール1の片面だけに冷却器2が設けられていたが、第4の実施形態における半導体装置400では、半導体モジュール1の両面に冷却器2が設けられている。
【0039】
図11は、第4の実施形態における半導体装置400の断面図であり、図10(b)の矢印Y2の方向から見た図である。半導体チップ10の両面はバスバー11と当接しており、それぞれのバスバー11は、グリース5を介して、冷却器2と接している。すなわち、半導体モジュール1は、2つの冷却器2によって挟み込まれる構造となっている。また、2つの冷却器2は、4本のボルト15で固定されている。
【0040】
半導体モジュール1を2つの冷却器2によって挟み込んだ第4の実施形態における半導体装置400において、半導体モジュール1の位置決め構造は、第1の実施形態における半導体装置100と同じである。すなわち、位置決め部材3の凸部3Aが半導体モジュール1の凹部1Aと嵌合することによって、半導体モジュール1を位置決め固定する。
【0041】
以上、第4の実施形態における半導体装置400によれば、半導体モジュール1の両面に冷却器2を配置する構造においても、第1の実施形態における半導体装置100と同様に、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュール1を位置決め固定することができる。
【0042】
本発明は、上述した第1〜第4の実施形態に限定されることはない。例えば、第1および第4の実施形態では、位置決め部材3の凸部3Aの形状、および、半導体モジュール1の凹部1Aの形状を半円形状としたが、半円形状に限定されることはない。また、第2の実施形態において、位置決め部材3の凸部3Bの形状、および、半導体モジュール1の凹部1Bの形状を矩形形状としたが、矩形形状に限定されることはない。同様に、第3の実施形態において、位置決め部材3の凹部3Cの形状と、半導体モジュール1の凸部1Cの形状も矩形形状に限定されることはない。
【0043】
第2および第3の実施形態では、半導体モジュール1の片面だけに冷却器2を設ける例を挙げて説明したが、第4の実施形態と同様に、半導体モジュール1の両面に冷却器2を設けることもできる。
【符号の説明】
【0044】
1…半導体モジュール
1A、1B、3C…凹部
2…冷却器
3…位置決め部材
3A、3B、1C…凸部
5…グリース
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱伝導性グリースを介して半導体モジュールを冷却器上に配置し、半導体モジュールを冷却器にボルト締結して位置決め固定した半導体装置が知られている。特許文献1では、パワーモジュールまたは冷却器に凹部または凸部を設けて、パワーモジュールと冷却器との間から流出するグリースを凹部に貯める、または、凸部で止める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−168772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、半導体モジュールを冷却器にボルト締結するので、半導体モジュールの面方向の熱膨張収縮が拘束される。従って、環境温度変化によって、半導体モジュールの高さ方向に熱応力が発生すると、半導体モジュールの反りが発生し、グリースが塗布位置から流出する可能性がある。
【0005】
本発明は、半導体モジュールの面方向の熱膨張収縮を拘束せず、半導体モジュールを位置決め固定することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による半導体装置は、平板状の冷却器と、冷却器上にグリースを介して載置された、半導体チップを樹脂モールドした半導体モジュールと、半導体モジュールの位置を位置決めする位置決め部材とを備える。位置決め部材は、平板状の冷却器の面方向において、半導体モジュールの温度変化に応じた寸法変化を許容する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、位置決め部材は、半導体モジュールの位置を位置決めするが、半導体モジュールの温度変化に応じた寸法変化を許容するので、半導体モジュールの面方向の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュールを位置決め固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)は、第1の実施形態における半導体装置の外観構成を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示す半導体装置を半分に割った状態を示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態における半導体装置の上面図である。
【図3】図3は、第1の実施形態における半導体装置の断面図である。
【図4】図4は、第1の実施形態の変形例1における半導体装置の上面図である。
【図5】図5は、第1の実施形態の変形例2における半導体装置の上面図である。
【図6】図6は、第2の実施形態における半導体装置の外観構成を示す斜視図である。
【図7】図7は、第2の実施形態における半導体装置の上面図である。
【図8】図8は、第2の実施形態における半導体装置の断面図である。
【図9】図9は、第3の実施形態における半導体装置の上面図である。
【図10】図10(a)は、第4の実施形態における半導体装置の外観構成を示す斜視図であり、図10(b)は、図10(a)に示す半導体装置を半分に割った状態を示す図である。
【図11】図11は、第4の実施形態における半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
図1(a)は、第1の実施形態における半導体装置100の外観構成を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)に示す半導体装置100を半分に割った状態を示す図である。図2は、第1の実施形態における半導体装置100の上面図である。図3は、第1の実施形態における半導体装置100の断面図であり、図1(b)の矢印Y1の方向から見た図である。
【0010】
第1の実施形態における半導体装置100は、平板状の冷却器2と、グリース5を介して冷却器2上に載置された半導体モジュール1と、半導体モジュール1を位置決めするための位置決め部材3とを備える。位置決め部材3は、4本のボルト4で冷却器2に取り付けられている。
【0011】
半導体モジュール1は、バスバー11の上に半導体チップ10を載置し、バスバー11の露出面および半導体チップ10をPPSやエポキシ樹脂等の絶縁性のモールド樹脂で樹脂モールドすることによって構成されている。バスバー11と冷却器2との間には、グリース5が塗布されている。なお、図3では、1つの半導体チップ10しか示していないが、半導体モジュール1は、複数の半導体チップ10を含むことができる。
【0012】
位置決め部材3は、半導体モジュール1の外周を取り囲む枠状の形状であり、シリコーンゴム等の、半導体モジュール1を構成するモールド樹脂よりも剛性が低い弾性材で成形されている。枠状の位置決め部材3の各辺には、内側に向かって、すなわち、内部に載置されている半導体モジュール1に向かって突出する半円形状の凸部3Aが設けられている。また、半導体モジュール1の外周の四辺にはそれぞれ、位置決め部材3の凸部3Aと嵌合する、半円形状の凹部1Aが設けられている。すなわち、位置決め部材3の凸部3Aは、半導体モジュール1の外周に設けられている凹部1Aと嵌合することによって、半導体モジュール1を位置決め固定する。位置決め部材3の凸部3Aと半導体モジュール1の凹部1Aとを嵌合させる構造であるため、載置されている半導体モジュール1に位置決め部材3を取り付ける際に、容易に位置決めすることができる。また、位置決め部材3を冷却器2に固定する構造としているため、初期の塗布範囲にグリース5を留めておくことができる。
【0013】
図3に示すように、半導体モジュール1の凹部1Aは、半導体モジュール1の上面から底面まで設けられているわけではなく、上面から底面に向かう途中まで設けられている。同様に、位置決め部材3の凸部3Aは、位置決め部材3の上面から底面まで設けられているわけではなく、上面から底面に向かう途中まで設けられている。従って、位置決め部材3の凸部3Aが半導体モジュール1の凹部1Aと嵌合している状態では、凸部3Aの下側は空白ではなく、半導体モジュール1が存在する。これにより、振動等によって半導体モジュール1に上方向の力が加わっても、凸部3Aによって半導体モジュール1が上方向に抜けるのを防ぐことができる。
【0014】
上述したように、位置決め部材3は、弾性材で成形されているので、環境温度変化等に起因して半導体モジュール1が膨張・収縮しても、半導体モジュール1の動きに応じて、位置決め部材3も弾性変形するので、半導体モジュール1の面方向の動きが拘束されない。すなわち、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮が拘束されないので、面方向の熱応力が発生せず、半導体モジュール1の反りの発生を防止することができる。これにより、グリース5の流出を防ぐことができる。なお、面方向とは、平板状の冷却器2の平面に沿った方向、すなわち、冷却器2および半導体モジュール1の積層方向と垂直な平面に沿った方向である。
【0015】
以上、第1の実施形態における半導体装置100は、平板状の冷却器2と、冷却器2上にグリース5を介して載置された半導体チップ10を樹脂モールドした半導体モジュール1と、平板状の冷却器2の面方向において、半導体モジュール1の温度変化に応じた寸法変化を許容するとともに、半導体モジュールの位置を位置決めする位置決め部材3とを備える。このような構成としたことにより、位置決め部材3は、半導体モジュール1の位置を位置決めするが、半導体モジュール1の温度変化に応じた寸法変化を許容するので、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュール1を位置決め固定することができる。
【0016】
特に、位置決め部材3は、冷却器2の面方向において、熱膨張収縮する半導体モジュール1を弾性的に支持するので、半導体モジュール1の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュール1を位置決め固定することができる。
【0017】
また、位置決め部材3は、半導体モジュール1の周囲に当接する弾性体であるので、半導体モジュール1の周囲に当接することによって、容易に半導体モジュール1を位置決めしつつ、半導体モジュール1の熱膨張収縮を吸収することができる。
【0018】
<第1の実施形態の変形例1>
図4は、第1の実施形態の変形例1における半導体装置100Aの上面図である。この半導体装置100Aでは、位置決め部材3の四辺全てではなく、隣り合う二辺にだけ、凸部3Aが設けられている。また、半導体モジュール1の外周の四辺のうちの二辺に、凸部3Aと嵌合する凹部1Aが設けられている。従って、半導体モジュール1の外周の四辺のうち、凹部1Aが設けられていない辺は、位置決め部材3の内周面と当接している。
【0019】
第1の実施形態の変形例1における半導体装置100Aでも、位置決め部材3は、半導体モジュール1の位置を位置決めするが、半導体モジュール1の温度変化に応じた寸法変化を許容するので、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュール1を位置決め固定することができる。
【0020】
<第1の実施形態の変形例2>
図5は、第1の実施形態の変形例2における半導体装置100Bの上面図である。この半導体装置100Bでは、位置決め部材3に凸部3Aが設けられていない。同様に、半導体モジュール1の外周にも、凹部1Aが設けられていない。すなわち、矩形形状の半導体モジュール1の周囲は、矩形枠状の位置決め部材3と当接した状態で取り囲まれている。
【0021】
第1の実施形態の変形例2における半導体装置100Bでも、弾性体の位置決め部材3は、半導体モジュール1の位置を位置決めするが、半導体モジュール1の温度変化に応じた寸法変化を許容するので、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュール1を位置決め固定することができる。但し本変形例2においては、半導体モジュール1の正確な位置決めを行うためには、半導体モジュール1の外周面と位置決め部材3の内周面との面精度が要求されるため、上述のように半導体モジュール1と位置決め部材3とは凹部と凸部で勘合する形状とすることが望ましい。
【0022】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態における半導体装置200の外観構成を示す斜視図である。図7は、第2の実施形態における半導体装置200の上面図であり、図8は、図7のA−A’面で切断した場合の第2の実施形態における半導体装置200の断面図である。
【0023】
第2の実施形態における半導体装置200では、位置決め部材3の凸部3Bの形状が第1の実施形態における位置決め部材3の凸部3Aの形状と異なる。すなわち、位置決め部材3の凸部3Bは、矩形形状である。また、半導体モジュール1は、位置決め部材3の凸部3Bの形状に応じた、矩形の凹部1Bを有する。
【0024】
位置決め部材3の凸部3Bの長さ寸法は、半導体モジュール1の凹部1Bの深さ寸法よりも短い。また、位置決め部材3の凸部3Bの幅寸法は半導体モジュール1の凹部1Bの幅寸法と同等である。すなわち、凸部3Bの突出方向先端は、凹部1Bの底面に対して離間しており、半導体モジュール1と位置決め部材3との間には、わずかな隙間が存在する。また、凸部3Bの幅方向端面は凹部1Bの内周面に当接している。これにより、半導体モジュール1の面方向の動きは拘束されるが、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮は拘束されない。すなわち、半導体モジュール1の面方向の熱膨張および収縮は、半導体モジュール1の中心を基点とした、半導体モジュール1の外周方向への寸法変化であり、これに対しては凸部3Bの突出方向先端と凹部1Bの底面とが離間していることから拘束されることは無い。一方で、凸部3Bの幅方向両端面は凹部1Bの内周面に当接しているため、半導体モジュール1自体の面方向の動きは拘束されて位置決めされる。
【0025】
上述の通り、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮が拘束されないので、面方向の熱応力が発生せず、半導体モジュール1の反りの発生を防止することができる。これにより、グリース5の流出を防ぐことができる。また、位置決め部材3の凸部3Bの幅寸法と、半導体モジュール1の凹部1Bの幅寸法が同等であるため、凸部3Bの幅方向両端面は凹部1Bの内周面に当接し、半導体モジュール1の位置を位置決めすることができる。
【0026】
なお、位置決め部材3の凸部3Bの長さ寸法と、半導体モジュール1の凹部1Bの深さ寸法、すなわち凸部3Bの突出方向先端と凹部1Bの底面との隙間は、半導体モジュール1の熱膨張収縮の大きさを考慮して、適切な値に設定すればよい。また、凸部3Bの幅方向両端面と凹部1Bの内周面とを接触させるために両者の幅寸法を同等としているが、設計的な寸法誤差は許容される。
【0027】
また、第2の実施形態における位置決め部材3の素材は、弾性材に限定されず、例えば、金属のような剛性材でもよい。
【0028】
さらにまた、第2の実施形態における凸部3Bの先端形状と凹部1Bの底面形状は、第1の実施形態とは異なり矩形状としているが、これは上述の通り、本第2の実施形態においては、凸部3Bの幅方向両端面と凹部1Bの内周面とが当接することによって半導体モジュール1の位置決めを行っているためであり、凸部3Bの先端形状と凹部1Bの底面形状は半導体モジュール1の位置決めに寄与しないためである。従って、凸部3Bの幅方向両端面と凹部1Bの内周面とが当接し、且つ凸部3Bの先端と凹部1Bの底面との間に隙間が設けられていれば、凸部3Bの先端形状と凹部1Bの底面形状はどのような形状であっても良い。
【0029】
なお上述の通り、半導体モジュール1の面方向の熱膨張および収縮は、半導体モジュール1の中心を基点とした、半導体モジュール1の外周方向への寸法変化であるため、半導体モジュール1の凹部1Bは、半導体モジュール1の各外周辺の中心に設けることが好ましい。
【0030】
以上、第2の実施形態における半導体装置200では、位置決め部材3は、冷却器2に固定されて外形が方形の枠状体であり、半導体モジュール1は、外形が枠状体の内周部よりも小さい略方形で枠状体内に載置され、外周の四辺に設けられた凹部1Bを有している。位置決め部材3は、半導体モジュール1の凹部1Aと対応する位置であって、枠状体の四辺から半導体モジュール1に向かって延びる凸部3Bを有し、凸部3Bの先端は凹部1Aの底面に対して離間するとともに、凸部3Bの幅方向両端面は凹部1Aの内周面に対して当接している。このような構成とすることにより、位置決め部材3は、半導体モジュール1の位置を位置決めするが、半導体モジュール1の温度変化に応じた寸法変化を許容するので、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュール1を位置決め固定することができる。
【0031】
<第3の実施形態>
図9は、第3の実施形態における半導体装置300の上面図である。第2の実施形態における半導体装置200では、位置決め部材3に凸部3Bが設けられ、半導体モジュール1に凹部1Bが設けられていたが、第3の実施形態における半導体装置300では、位置決め部材3に凹部3Cが設けられ、半導体モジュール1に凸部1Cが設けられている。
【0032】
半導体モジュール1の凸部1Cの長さ寸法は、位置決め部材3の凹部3Cの深さ寸法よりも短い。また、半導体モジュール1の凸部1Cの幅寸法は位置決め部材3の凹部3Cの幅寸法と同等である。すなわち、凸部1Cの突出方向先端は、凹部3Cの底面に対して離間しており、半導体モジュール1と位置決め部材3との間には、わずかな隙間が存在する。また、凸部1Cの幅方向端面は凹部3Cの内周面に当接している。これにより、半導体モジュール1の面方向の動きは拘束されるが、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮が拘束されない。すなわち、半導体モジュール1の面方向の熱膨張および収縮は、半導体モジュール1の中心を基点とした、半導体モジュール1の外周方向への寸法変化であり、これに対しては凸部1Cの突出方向先端と凹部3Cの底面とが離間していることから拘束されることは無い。一方で、凸部1Cの幅方向両端面は凹部3Cの内周面に当接しているため、半導体モジュール1自体の面方向の動きは拘束されて位置決めされる。
【0033】
上述の通り、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮が拘束されないので、面方向の熱応力が発生せず、半導体モジュール1の反りの発生を防止することができる。これにより、グリース5の流出を防ぐことができる。また、位置決め部材3の凹部3Cの幅寸法と、半導体モジュール1の凸部1Cの幅寸法とが同等であるため、凸部1Cの幅方向両端面は凹部3Cの内周面に当接し、半導体モジュール1の位置を位置決めすることができる。
【0034】
なお、第2の実施形態と同様に、半導体モジュール1の凸部1Cの長さ寸法と、位置決め部材3の凹部3Cの深さ寸法、すなわち凸部1Cの突出方向先端と凹部3Cの底面との隙間は、半導体モジュール1の熱膨張収縮の大きさを考慮して、適切な値に設定すればよい。また、凸部1Cの幅方向両端面と凹部3Cの内周面とを接触させるために両者の幅寸法を同等としているが、設計的な寸法誤差は許容される。
【0035】
また、第2の実施形態と同様に、位置決め部材3の素材は、弾性材に限定されず、例えば、金属のような剛性材でもよい。
【0036】
さらにまた、第2の実施形態と同様に、凸部1Cの先端形状と凹部3Cの底面形状はどのような形状であっても良い。
【0037】
また、第2の実施形態と同様に、半導体モジュール1の面方向の熱膨張および収縮は、半導体モジュール1の中心を基点とした、半導体モジュール1の外周方向への寸法変化であるため、半導体モジュール1の凸部1Cは半導体モジュール1の各外周辺の中心に設けることが好ましい。
【0038】
<第4の実施形態>
図10(a)は、第4の実施形態における半導体装置400の外観構成を示す斜視図であり、図10(b)は、図10(a)に示す半導体装置400を半分に割った状態を示す図である。第1の実施形態における半導体装置100では、半導体モジュール1の片面だけに冷却器2が設けられていたが、第4の実施形態における半導体装置400では、半導体モジュール1の両面に冷却器2が設けられている。
【0039】
図11は、第4の実施形態における半導体装置400の断面図であり、図10(b)の矢印Y2の方向から見た図である。半導体チップ10の両面はバスバー11と当接しており、それぞれのバスバー11は、グリース5を介して、冷却器2と接している。すなわち、半導体モジュール1は、2つの冷却器2によって挟み込まれる構造となっている。また、2つの冷却器2は、4本のボルト15で固定されている。
【0040】
半導体モジュール1を2つの冷却器2によって挟み込んだ第4の実施形態における半導体装置400において、半導体モジュール1の位置決め構造は、第1の実施形態における半導体装置100と同じである。すなわち、位置決め部材3の凸部3Aが半導体モジュール1の凹部1Aと嵌合することによって、半導体モジュール1を位置決め固定する。
【0041】
以上、第4の実施形態における半導体装置400によれば、半導体モジュール1の両面に冷却器2を配置する構造においても、第1の実施形態における半導体装置100と同様に、半導体モジュール1の面方向の熱膨張収縮を拘束することなく、半導体モジュール1を位置決め固定することができる。
【0042】
本発明は、上述した第1〜第4の実施形態に限定されることはない。例えば、第1および第4の実施形態では、位置決め部材3の凸部3Aの形状、および、半導体モジュール1の凹部1Aの形状を半円形状としたが、半円形状に限定されることはない。また、第2の実施形態において、位置決め部材3の凸部3Bの形状、および、半導体モジュール1の凹部1Bの形状を矩形形状としたが、矩形形状に限定されることはない。同様に、第3の実施形態において、位置決め部材3の凹部3Cの形状と、半導体モジュール1の凸部1Cの形状も矩形形状に限定されることはない。
【0043】
第2および第3の実施形態では、半導体モジュール1の片面だけに冷却器2を設ける例を挙げて説明したが、第4の実施形態と同様に、半導体モジュール1の両面に冷却器2を設けることもできる。
【符号の説明】
【0044】
1…半導体モジュール
1A、1B、3C…凹部
2…冷却器
3…位置決め部材
3A、3B、1C…凸部
5…グリース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の冷却器と、
前記冷却器上にグリースを介して載置された、半導体チップを樹脂モールドした半導体モジュールと、
前記平板状の冷却器の面方向において、前記半導体モジュールの温度変化に応じた寸法変化を許容するとともに、前記半導体モジュールの位置を位置決めする位置決め部材と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記位置決め部材は、前記冷却器の面方向において、熱膨張収縮する前記半導体モジュールを弾性的に支持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記位置決め部材は、前記半導体モジュールの周囲に当接する弾性体である、
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記位置決め部材は、前記冷却器に固定された、外形が方形の枠状体であり、
前記半導体モジュールは、外形が前記枠状体の内周部よりも小さい略方形で前記枠状体内に載置され、外周の四辺に設けられた凹部を有しており、
前記位置決め部材は、前記半導体モジュールの凹部に勘合する凸部であって、前記枠状体の四辺から前記半導体モジュールに向かって延びる、前記半導体モジュールの凹部の幅寸法と同等の幅寸法で形成された凸部を有し、該凸部の先端は前記凹部の底面に対して離間している、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記位置決め部材は、前記冷却器に固定されて、外形が方形の枠状体であり、
前記半導体モジュールは、外形が前記枠状体の内周部よりも小さい略方形で前記枠状体内に載置され、外周の四辺から外側に向かって延びる凸部を有しており、
前記位置決め部材は、前記半導体モジュールの凸部に勘合する、前記枠状体の四辺に設けられた前記半導体モジュールの凸部の幅寸法と同等の幅寸法を有する凹部を有し、該凹部の底面が前記半導体モジュールの凸部の先端に対して離間している、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項1】
平板状の冷却器と、
前記冷却器上にグリースを介して載置された、半導体チップを樹脂モールドした半導体モジュールと、
前記平板状の冷却器の面方向において、前記半導体モジュールの温度変化に応じた寸法変化を許容するとともに、前記半導体モジュールの位置を位置決めする位置決め部材と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記位置決め部材は、前記冷却器の面方向において、熱膨張収縮する前記半導体モジュールを弾性的に支持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記位置決め部材は、前記半導体モジュールの周囲に当接する弾性体である、
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記位置決め部材は、前記冷却器に固定された、外形が方形の枠状体であり、
前記半導体モジュールは、外形が前記枠状体の内周部よりも小さい略方形で前記枠状体内に載置され、外周の四辺に設けられた凹部を有しており、
前記位置決め部材は、前記半導体モジュールの凹部に勘合する凸部であって、前記枠状体の四辺から前記半導体モジュールに向かって延びる、前記半導体モジュールの凹部の幅寸法と同等の幅寸法で形成された凸部を有し、該凸部の先端は前記凹部の底面に対して離間している、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記位置決め部材は、前記冷却器に固定されて、外形が方形の枠状体であり、
前記半導体モジュールは、外形が前記枠状体の内周部よりも小さい略方形で前記枠状体内に載置され、外周の四辺から外側に向かって延びる凸部を有しており、
前記位置決め部材は、前記半導体モジュールの凸部に勘合する、前記枠状体の四辺に設けられた前記半導体モジュールの凸部の幅寸法と同等の幅寸法を有する凹部を有し、該凹部の底面が前記半導体モジュールの凸部の先端に対して離間している、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−89636(P2013−89636A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225966(P2011−225966)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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