説明

半導体装置

【課題】半導体モジュールと冷却装置の間の熱抵抗の増加を防止することが可能な半導体装置を得る。
【解決手段】半導体モジュール10を板バネ20で加圧しながら冷却装置30に固定する半導体装置において、半導体素子12の上面の面積の少なくとも半分以上が板バネ20の加圧部24の外周24a内に入るように配置し、半導体モジュール10の上面10aから、熱抵抗変化への影響が大きい半導体素子12上を重点的に加圧するようにした。これにより、半導体素子12直下における半導体モジュール10の変位を抑制することができ、半導体モジュール10を冷却装置30に安定して密着させることができる。その結果、半導体モジュール10と冷却装置30の間の熱抵抗の増加を防止することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、半導体モジュールを板バネで加圧しながら冷却装置にネジ締め固定する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等の移動体には、パワー半導体素子を複合化した半導体モジュールを冷却装置に固定した半導体装置が搭載されている。このような半導体装置において、半導体モジュールのブロック状の筐体を冷却装置に固定する際には、通常、半導体モジュールと冷却装置の間に熱伝導グリスを介在させている。
【0003】
しかし、熱伝導グリスの熱伝導率は、通常1W/mK〜5W/mK程度であり、銅(Cu)やアルミニウム(Al)の熱伝導率(各々400W/mK、200W/mK)に比べて非常に小さい。このため、熱伝導グリスが半導体モジュールと冷却装置の間に部分的に厚い状態で残っていると、半導体モジュールと冷却装置の間の熱抵抗が増加し好ましくない。
【0004】
半導体モジュールは、その中央部に設けられた貫通穴にネジを挿入することにより冷却装置に固定されるが、熱伝導グリスが部分的に厚くなるのを防ぐためには、半導体モジュールを冷却装置の搭載面に対して均一に押し付ける必要がある。しかし、半導体モジュールの底面は完全に平坦ではない上、樹脂封止型の筐体は剛性が不均一であるため、搭載面に対して均一に押し付けることが難しい。その結果、ネジ周辺にのみ押し付け力がかかり、ネジから遠くなるに従って半導体モジュールが浮き上がり、半導体モジュール全体が冷却装置の搭載面に密着しないという問題があった。
【0005】
例えば特許文献1に提示された半導体装置では、半導体モジュールをほぼ被うように配置されたペントルーフ型の板バネを介してネジを挿入することにより、ネジの加圧力を半導体モジュールの周辺に伝達するようにしている。しかし、ペントルーフ型の板バネでは、半導体モジュールにバネ加圧力を均一に印加することはできない。
【0006】
そこで近年、回転対称体である円錐台型の加圧部を有する板バネ(皿バネ)を用い、半導体モジュールにバネ加圧力を均一に印加する技術が提案されている。例えば特許文献2では、円錐台型の加圧部を有する板バネと、半導体モジュールの上面に対して一定の間隔を保つバネ接触部を有するバネ押さえを備え、このバネ押さえにより板バネの反転を抑制し、バネ加圧力の制御性を向上した半導体装置が提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3725103号公報
【特許文献2】特開2011−35265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、加圧部が円錐台型の板バネを用いた場合、ブロック状である半導体モジュールの四隅にはバネ加圧力を印加できず、半導体モジュールの四隅を冷却装置の搭載面に密着させることが難しい。そのため、高温環境下において、半導体モジュールの四隅は、バネで加圧されている部分に比べて熱による変形が大きくなる。特に、四隅付近に半導体素子が配置されている場合、その直下において半導体モジュールの変位が大きくなり、半導体モジュールと冷却装置との密着性が低下し、熱抵抗が増加するという問題があった。さらに、半導体モジュールの変位が繰り返し発生することで、熱伝導グリスのポンピングアウト現象が顕著になり、温度サイクルに対する耐久性が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、半導体モジュールを板バネで加圧しながら冷却装置に固定する半導体装置において、熱抵抗変化への影響が大きい半導体素子上を重点的に加圧することができ、半導体モジュールと冷却装置の間の熱抵抗の増加を防止することが可能な半導体装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る半導体装置は、半導体素子が樹脂封止され、中央部に第1貫通穴を有する半導体モジュールと、半導体モジュールの上面側に配置され、中央部に第2貫通穴を有する円錐台型の板バネと、半導体モジュールの下面側に配置され、中央部にネジ穴を有する冷却装置と、第1貫通穴及び第2貫通穴を通ってネジ穴に螺合され、半導体モジュール及び板バネを冷却装置に固定するネジを備えている。板バネは、第2貫通穴を有する底部と、底部の外周から立ち上がる直立部と、直立部の上端から外側に円錐台型に延びて半導体モジュール上面を押す加圧部を有し、半導体素子の上面の面積の半分以上が加圧部の外周内に入るように配置され、半導体モジュール上面から加圧されるものである。
【0011】
また、本発明の請求項3に係る半導体装置は、ヒートスプレッダ上に載置された半導体素子が樹脂封止され、中央部に第1貫通穴を有する半導体モジュールと、半導体モジュールの上面側に配置され、中央部に第2貫通穴を有する円錐台型の板バネと、半導体モジュールの下面側に配置され、中央部にネジ穴を有する冷却装置と、第1貫通穴及び第2貫通穴を通ってネジ穴に螺合され、半導体モジュール及び板バネを冷却装置に固定するネジを備えている。板バネは、第2貫通穴を有する底部と、底部の外周から立ち上がる直立部と、直立部の上端から外側に円錐台型に延びて半導体モジュール上面を押す加圧部を有し、ヒートスプレッダの上面の面積の半分以上が加圧部の外周内に入るように配置され、半導体モジュール上面から加圧されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る半導体装置によれば、半導体素子の上面の面積の半分以上が板バネの加圧部の外周内に入るように配置されているので、熱抵抗変化への影響が大きい半導体素子上を重点的に加圧することができ、半導体素子直下における半導体モジュールの変位を抑制することができる。これにより、半導体モジュールを冷却装置に安定して密着させることができ、半導体モジュールと冷却装置の間の熱抵抗の増加を防止することが可能である。
【0013】
本発明の請求項3に係る半導体装置によれば、半導体素子が載置されたヒートスプレッダの上面の面積の半分以上が板バネの加圧部の外周内に入るように配置されているので、加圧位置を半導体素子上に限定できない場合でも、複数個の半導体素子を一括して加圧することができ、半導体素子直下における半導体モジュールの変位を抑制することができる。これにより、半導体モジュールを冷却装置に安定して密着させることができ、半導体モジュールと冷却装置の間の熱抵抗の増加を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体装置を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る半導体モジュールの内部構造の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る半導体装置における半導体素子と板バネの加圧部の位置関係を示す上面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る半導体装置における半導体素子と板バネの加圧部の位置関係を示す上面図である。
【図5】本発明の比較例である半導体装置における半導体素子と板バネの加圧部の位置関係を示す上面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る半導体装置を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
以下に、本発明の実施の形態1に係る半導体装置について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態1に係る半導体装置を示す断面図、図2は、本実施の形態1に係る半導体モジュールの内部構造の一例を示す断面図である。なお、図中、同一部分には同一符号を付している。本実施の形態1に係る半導体装置100は、電気自動車やハイブリッド自動車等の移動体に用いられる半導体装置であり、図1に示すように、半導体モジュール10、板バネ20、冷却装置30、及びネジ40を備えている。
【0016】
半導体モジュール10は、図2に示すように、その中央部に第1貫通穴11を有している。半導体モジュール10に搭載された複数の半導体素子12は、ヒートスプレッダ13上に載置され、はんだ付けされている。ヒートスプレッダ13は、複数の半導体素子12の熱抵抗変化を分散させる。半導体素子12の表面電極(図示せず)は、電源接続用端子14と出力端子16に、直接またはワイヤ15を介して接続される。これらの半導体素子12、ヒートスプレッダ13及びワイヤ15等は、樹脂(例えばエポキシ樹脂)17で封止される。
【0017】
円錐台型の板バネ20は、半導体モジュール10の上面10a側に配置され、その底部22の中央部に第2貫通穴21を有している。また、板バネ20は、底部22の外周から立ち上がる直立部23と、直立部23の上端から外側に円錐台型に延びて半導体モジュール10の上面10aを押す加圧部24を有している。加圧部24の加圧力は、直立部23の長さやバネ定数により所定量に設計される。また、加圧部24の外周24aは、半導体モジュール10の上面10aの各辺よりも小さい直径を有するように設計される。
【0018】
半導体モジュール10の下面側に配置される冷却装置30は、その上面中央部にネジ穴31を有する。ネジ40は、板バネ20の第2貫通穴21及び半導体モジュール10の第1貫通穴11を通って冷却装置30のネジ穴31に螺合され、半導体モジュール10及び板バネ20を冷却装置30に固定する。なお、半導体モジュール10と冷却装置30の間には、熱伝導グリス(図示せず)が配置されている。
【0019】
以上のように構成された半導体装置100において、板バネ20の加圧部24は、半導体モジュール10の上面10aを、実験的に求められた最低必要荷重で加圧する。荷重の強さは板バネ20のたわみ量で調整され、所定のたわみ量が得られるようにネジ締めが行われる。これにより、ネジ40の加圧力を周辺に伝達し、半導体モジュール10の上面10aに均一で適正な加圧力を印加するものである。
【0020】
次に、本実施の形態1に係る半導体装置における半導体素子と板バネの加圧部の位置関係について、図3及び図4を用いて説明する。図3に示す半導体装置100の例では、複数の半導体素子12はいずれも、その上面の面積の半分以上が板バネ20の加圧部24の外周24a内に入るように配置されている。
【0021】
また、図4(a)に示す半導体装置100aの例では、上面の面積の半分以上が加圧部24の外周24a内に入っている半導体素子12aと、上面の面積全部が加圧部24の外
周24a内に入っている半導体素子12bが混在している。また、図4(b)に示す半導体装置100bの例では、4つの半導体素子12cの上面の面積全部が加圧部24の外周24a内に入るように配置されている。
【0022】
次に、比較例として、従来の半導体装置における半導体素子と板バネの加圧部の位置関係について、図5を用いて説明する。比較例の半導体装置100cでは、板バネ20による加圧力が印加されない半導体モジュール10の四隅付近に、半導体素子12dが配置されている。このため、半導体素子12dの上面の面積の半分以上が、加圧部24の外周24aの外側に配置されている。このような位置関係では、熱抵抗変化への影響が大きい半導体素子12d上を十分に加圧することができない。
【0023】
その結果、高温環境化において、四隅付近に配置された半導体素子12d直下における半導体モジュール10の変位が大きくなり、半導体モジュール10と冷却装置30との密着性が低下し、熱抵抗が増加するという問題が発生する。さらに、半導体モジュール10の変位が繰り返し発生することで、熱伝導グリスのポンピングアウト現象が顕著になり、温度サイクルに対する耐久性が低下する。
【0024】
この比較例に対し、本実施の形態1では、図3及び図4に示すように、半導体素子12(12a、12b、12c)を、その上面の面積の少なくとも半分以上が板バネ20の加圧部24の外周24a内に入るように配置し、半導体モジュール10の上面10aから、熱抵抗変化への影響が大きい半導体素子12上を重点的に加圧するようにしたものである。
【0025】
従って、本実施の形態1によれば、半導体素子12直下における半導体モジュール10の変位を抑制することができ、半導体モジュール10を冷却装置30に安定して密着させることができる。その結果、半導体モジュール10と冷却装置30の間の熱抵抗の増加を防止することができ、熱抵抗が低い状態で安定させることができる。
【0026】
また、半導体素子12直下における半導体モジュール10の変位を小さくすることができるため、その部分に塗布された熱伝導グリスのポンピングアウト現象を抑制することができる。その結果、長期に亘り安定した熱伝導性能を確保することができ、温度サイクルに対する耐久性の低下を防ぐことができる。
【0027】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置を示す上面図である。なお、図6中、図3と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。また、図6において、半導体素子の図示を省略しているが、本実施の形態2に係る半導体装置100dは、ヒートスプレッダ13上に半導体素子を搭載している。
【0028】
上記実施の形態1では、半導体素子12の上面の面積の半分以上が板バネ20の加圧部24の外周24a内に入るように配置することにより、半導体モジュール10の上面10aから半導体素子12上を重点的に加圧するようにした。しかし、半導体モジュール10には、複数個の半導体素子を複合化したものが存在するため、加圧部24による加圧位置を半導体素子上に限定することが難しい場合がある。
【0029】
そこで、本実施の形態2では、半導体素子が載置されたヒートスプレッダ13上面の面積の半分以上(望ましくは全部)が、板バネ20の加圧部24の外周24a内に入るように配置し、半導体モジュール10の上面から加圧するようにしたものである。以上のように構成された半導体装置100dにおいて、板バネ20の加圧部24は、半導体モジュール10の上面を、実験的に求められた最低必要荷重で加圧する。これにより、ネジ40の
加圧力を周辺に伝達し、半導体モジュール10の上面に均一で適正な加圧力を印加するものである。
【0030】
本実施の形態2によれば、複数個の半導体素子が載置されたヒートスプレッダ13の面積の半分以上を加圧することにより、加圧位置を半導体素子上に限定できないような場合でも、複数個の半導体素子を一括して加圧することができる。これにより、半導体モジュール10の変位を抑制することができ、半導体モジュール10を冷却装置30に安定して密着させることができるため、上記実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0031】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。例えば上記実施の形態1と本実施の形態2を組み合わせて、半導体素子12の上面の面積の半分以上、且つヒートスプレッダ13の面積の半分以上が、板バネ20の加圧部24の外周24a内に入るように配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車等の移動体に用いられる半導体装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 半導体モジュール、10a 上面、11 第1貫通穴、
12、12a、12b、12c、12d 半導体素子、13 ヒートスプレッダ、
14 電源接続用端子、15 ワイヤ、16 出力端子、17 樹脂、20 板バネ、
21 第2貫通穴、22 底部、23 直立部、24 加圧部、24a 外周、
30 冷却装置、31 ネジ穴、40 ネジ、
100、100a、100b、100c、100d 半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が樹脂封止され、中央部に第1貫通穴を有する半導体モジュールと、前記半導体モジュールの上面側に配置され、中央部に第2貫通穴を有する円錐台型の板バネと、前記半導体モジュールの下面側に配置され、中央部にネジ穴を有する冷却装置と、前記第1貫通穴及び前記第2貫通穴を通って前記ネジ穴に螺合され、前記半導体モジュール及び前記板バネを前記冷却装置に固定するネジを備え、
前記板バネは、前記第2貫通穴を有する底部と、前記底部の外周から立ち上がる直立部と、前記直立部の上端から外側に円錐台型に延びて前記半導体モジュール上面を押す加圧部を有し、前記半導体素子の上面の面積の半分以上が前記加圧部の外周内に入るように配置され、前記半導体モジュール上面から加圧されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体モジュールにおいて、前記半導体素子はヒートスプレッダ上に載置され、前記ヒートスプレッダの上面の面積の半分以上が前記加圧部の前記外周内に入るように配置されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
ヒートスプレッダ上に載置された半導体素子が樹脂封止され、中央部に第1貫通穴を有する半導体モジュールと、前記半導体モジュールの上面側に配置され、中央部に第2貫通穴を有する円錐台型の板バネと、前記半導体モジュールの下面側に配置され、中央部にネジ穴を有する冷却装置と、前記第1貫通穴及び前記第2貫通穴を通って前記ネジ穴に螺合され、前記半導体モジュール及び前記板バネを前記冷却装置に固定するネジを備え、
前記板バネは、前記第2貫通穴を有する底部と、前記底部の外周から立ち上がる直立部と、前記直立部の上端から外側に円錐台型に延びて前記半導体モジュール上面を押す加圧部を有し、前記ヒートスプレッダの上面の面積の半分以上が前記加圧部の外周内に入るように配置され、前記半導体モジュール上面から加圧されることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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