説明

半導体製造工程管理システム

【課題】 フォト工程設備の稼働率の低下と作業者の工数増加を防止可能な半導体製造工程管理システムを提供する。
【解決手段】 ホストコンピュータ2とセルコンピュータ3aと搬送管理コンピュータ4を備え、ホストコンピュータ2の制御情報生成手段10が、記憶手段9に記憶されたロット情報データと装置情報データに基づいて、ロット選択を行い、当該ロットのロット情報データの処理条件データと、レチクル情報データのレチクル現在位置データとレチクル状態データを照合して、受入可能な装置の装置情報データを抽出し、最適な装置選択を行い、制御情報データを生成し、セルコンピュータ3aに送信し、セルコンピュータ3aのレチクルゴミ検査制御手段14が、制御情報データの選択された装置名とレチクル名からレチクルゴミ検査指示データを生成し、フォト工程設備5aへロットが搬入される前に、フォト工程設備5aにレチクルゴミ検査の指示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化膜の形成、薄膜の堆積、フォトリソグラフィー、エッチング、不純物ドーピング等の工程を管理する半導体製造工程管理システムに関し、更に詳しくは、レチクル管理とレチクルを使用するフォト工程の業務改善を可能にした半導体製造工程管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体製造工程管理システムでは、フォト工程設備へのロット供給制御は、先ず、ロット選択を行い、フォト工程設備に搬入後にレチクル収納情報及び使用限界を管理し、レチクルの配膳を最適化していた。フォト工程設備へのロットとレチクルの供給を適切に制御するための従来例として、下記の特許文献1、及び、特許文献2等に開示がある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−136295号公報
【特許文献2】特開2005−209780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の半導体製造工程管理システムでは、フォト工程設備へのロット供給制御は、先ず、ロット選択を行い、フォト工程設備に搬入後にレチクル収納情報及び使用限界を管理し、レチクルの配膳を最適化していたため、ロット搬入前にレチクル状態データをチェックできないため、露光不可能なロットがフォト工程設備に搬入される可能性があったため、無駄な搬送と待ち時間によりフォト工程設備の稼働率が低下する虞や、作業者の工数が増加するという問題があった。これに対し、上述した従来例では、単にレチクルの配膳を最適化した方法に過ぎず、ロットの仕掛制御において半導体製造工程管理システムによるレチクル現在位置データとレチクル状態データの管理とフォト工程設備にレチクルゴミ検査指示を行うための技術は開示されていない。
【0005】
本発明は、半導体製造工程管理システムのフォト工程設備における上記問題点に鑑みて考案されたものであり、その目的は、フォト工程設備の稼働率の低下と作業者の工数増加を防止可能な半導体製造工程管理システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための半導体製造工程管理システムは、半導体製造工程の全体を管理するホストコンピュータと、フォト工程を含む複数の製造工程を処理する各工程設備を個別に管理する1または複数のセルコンピュータと、前記各工程設備間において被製造物の搬送を行う搬送装置を管理する搬送管理コンピュータと、を備えてなる半導体製造管理システムであって、前記ホストコンピュータが、複数のロット情報を管理するためのロット情報データと複数の装置情報を管理するための装置情報データと複数のレチクルのレチクル現在位置データとレチクル状態データを管理するためのレチクル情報データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記ロット情報データ及び前記装置情報データから、ロット供給を制御するためのロット選択または複数ロット同時処理するためのバッチ組選択を行い、選択したロットの前記ロット情報データの処理条件データと、前記レチクル情報データのレチクル現在位置データとレチクル状態データを照合して、受入可能な装置の前記装置情報データを抽出し、その中から最適な装置選択を行い、制御情報データと搬送情報データを生成する制御情報生成手段と、前記記憶手段に記憶された前記ロット情報データ、前記装置情報データ、及び、前記レチクル情報データを、前記フォト工程設備で発生した事象報告データに基づいて自動的に更新する更新手段と、を備え、前記セルコンピュータが、前記制御情報生成手段が生成した前記制御情報データをディスパッチ情報データとして前記ホストコンピュータから受信し、前記工程設備の内のフォト工程設備に対し前記処理条件データを指示し、前記フォト工程設備で発生した前記事象報告データを受信する通信手段と、前記通信手段を介して、前記制御情報生成手段が生成した前記制御情報データを前記ディスパッチ情報データとして前記ホストコンピュータから受信し、前記ディスパッチ情報データの前記装置情報データを照合して、キャリアを搬入するポート情報データを生成するポート情報生成手段と、前記通信手段を介して、前記制御情報生成手段が生成した前記制御情報データを前記ディスパッチ情報データとして前記ホストコンピュータから受信し、前記ディスパッチ情報データの選択された装置名とレチクル名からレチクルゴミ検査指示データを生成し、前記フォト工程設備へロットが搬入される前に、前記通信手段を介して、前記フォト工程設備に前記レチクルゴミ検査データによる検査指示を行うレチクルゴミ検査制御手段と、を備え、前記フォト工程設備が、塗布装置、露光装置、現像装置、レチクルゴミ検査装置、レチクル収納棚、及び、これらの装置群を制御管理し、前記フォト工程設備で発生した事象を、前記事象報告データとして、前記セルコンピュータの通信手段を介して、前記ホストコンピュータに報告するインラインコントローラを備え、前記搬送管理コンピュータが、前記制御情報生成手段が生成した前記搬送情報データに基づき、前記フォト工程設備へのロットの搬送制御を実行することを第1の特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するための半導体製造工程管理システムは、上記第1の特徴に加えて、更に、前記フォト工程設備に搬入予定のロットを処理可能なレチクルが搬入されると、前記インラインコントローラが、前記レチクルの搬入を前記事象報告データとして、前記セルコンピュータの通信手段を介して、前記ホストコンピュータに報告し、前記ホストコンピュータが、受信した前記事象報告データに基づいて、前記更新手段により前記装置情報データと前記レチクル情報データの前記レチクル現在位置データを更新し、前記制御情報生成手段により、当該フォト工程設備をロット受入可能な装置として抽出することを第2の特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するための半導体製造工程管理システムは、上記第1または第2の特徴に加えて、更に、前記フォト工程設備において、前記インラインコントローラが、前記セルコンピュータの前記レチクルゴミ検査制御手段から前記検査指示を受け取ると、前記レチクルゴミ検査装置にレチクルゴミ検査命令を行い、前記レチクルゴミ検査装置が、前記レチクルゴミ検査命令に従って、前記レチクル収納棚から検査対象のレチクルを搬送し、レチクルゴミ検査処理を行い、レチクルゴミ検査結果を前記インラインコントローラに報告し、前記インラインコントローラが、前記レチクルゴミ検査結果を前記事象報告データとして、前記セルコンピュータの通信手段を介して、前記ホストコンピュータに報告することを第3の特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するための半導体製造工程管理システムは、上記第3の特徴に加えて、更に、前記レチクルゴミ検査結果が合格の場合、前記セルコンピュータが、前記制御情報データの前記処理条件データを前記ディスパッチ情報データとして前記通信手段を介して前記フォト工程設備の前記インラインコントローラに指示し、前記ホストコンピュータが、前記制御情報生成手段が生成した前記搬送情報データを、前記搬送管理コンピュータを介して、前記搬送装置に送信して、前記ロットの搬送指示を行い、前記搬送装置が、前記搬送指示に基づき、前記ロットを前記フォト工程設備に搬入することを第4の特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するための半導体製造工程管理システムは、上記第3または第4の特徴に加えて、更に、前記レチクルゴミ検査結果が不合格の場合、前記セルコンピュータが、前記ホストコンピュータにレチクルゴミ検査結果が不合格であったこと、及び、前記ディスパッチ情報データをキャンセルしたことを報告し、前記ホストコンピュータが、前記更新手段により、前記レチクル情報データの前記レチクル状態データを使用不可とし、前記ロット情報データと前記装置情報データを更新して、改めて前記制御情報生成手段により前記ロット選択または前記バッチ組選択を行うことを第5の特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するための半導体製造工程管理システムは、上記第3乃至第5の何れかの特徴に加えて、更に、前記フォト工程設備の前記インラインコントローラが、前記セルコンピュータの前記レチクルゴミ検査制御手段から前記検査指示を受け取ると、レチクル検査指示に関する周期管理に基づいて検査周期に達しているか否かを判定し、検査周期に達していれば、前記レチクルゴミ検査装置にレチクルゴミ検査命令を行い、検査周期に達していなければ、前記レチクルゴミ検査装置にレチクルゴミ検査命令を行わずに、前記レチクルゴミ検査結果を合格とし、前記レチクルゴミ検査結果を前記事象報告データとして、前記セルコンピュータの通信手段を介して、前記ホストコンピュータに報告することを第6の特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するための半導体製造工程管理システムは、上記何れかの特徴に加えて、更に、前記インラインコントローラが、作業者が前記フォト工程設備の前記インラインコントローラの操作端末からオンライン操作を行うと、前記セルコンピュータの通信手段を介して、オンライン状態になったことを前記事象報告データとして前記ホストコンピュータに報告し、前記ホストコンピュータが、前記更新手段により、前記装置情報データの通信状態データをオンライン状態に更新することを第7の特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するための半導体製造工程管理システムは、上記何れかの特徴に加えて、更に、前記フォト工程設備の前記インラインコントローラが、前記セルコンピュータの通信手段を介して、前記レチクル収納棚に存在するレチクルを前記事象報告データとして前記ホストコンピュータに報告し、前記ホストコンピュータが、前記更新手段により、前記装置情報データと前記レチクル情報データの前記レチクル現在位置データを更新することを第8の特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するための半導体製造工程管理システムは、上記何れかの特徴に加えて、更に、前記フォト工程設備の前記インラインコントローラが、前記レチクル収納棚に対してレチクルの搬入或いは搬出が行われると、前記レチクル収納棚のレチクル収納情報を更新して、前記セルコンピュータの通信手段を介して、前記レチクル収納情報を前記事象報告データとして前記ホストコンピュータに報告し、前記ホストコンピュータが、前記更新手段により、前記レチクル情報データの前記レチクル現在位置データを更新することを第9の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記何れかの特徴の半導体製造工程管理システムによれば、半導体製造工程管理システムがフォト工程設備と前記通信手段を介してデータの送受信可能に接続しており、レチクル現在位置データとレチクル状態データを自動的に管理することが可能であり、前記セルコンピュータのレチクルゴミ検査制御手段が、前記通信手段を介して、前記制御情報生成手段が生成した前記制御情報データを前記ディスパッチ情報データとして前記ホストコンピュータから受信し、前記ディスパッチ情報データの選択された装置名とレチクル名からレチクルゴミ検査指示データを生成し、前記フォト工程設備へロットが搬入される前に、前記通信手段を介して、前記フォト工程設備に前記レチクルゴミ検査データによる検査指示を行うように構成されているので、当該検査結果に基づいて前記フォト工程設備へのロット搬入の可否を判断でき、露光不可能なロットがフォト工程設備に搬入されるのを排除でき、無駄な搬送と待ち時間によりフォト工程設備の稼働率が低下する問題や、作業者の工数が増加する問題を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明に係る半導体製造工程管理システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係る半導体製造工程管理システム1のシステム構成例を示す。図1に示すように、半導体製造工程管理システム1は、ホストコンピュータ2と、1または複数のセルコンピュータ3と、搬送管理コンピュータ4を備えて構成される。ここで、ホストコンピュータ2は、半導体製造工程の全体の管理を行い、セルコンピュータ3は、複数の製造工程を処理する各工程設備5を個別に管理し、搬送管理コンピュータ4は、各工程設備5間において被製造物の搬送を行う搬送装置6を管理する。また、工程設備5には、フォト工程を処理するフォト工程設備5aが含まれる。
【0018】
ホストコンピュータ2、各セルコンピュータ3、搬送管理コンピュータ4、各工程設備5、搬送装置6、及び、レチクル保管庫7は、データ通信用のネットワーク8に夫々接続している。これにより、ホストコンピュータ2と各セルコンピュータ3間、各セルコンピュータ3と各工程設備5間、ホストコンピュータ2と搬送管理コンピュータ4間、搬送管理コンピュータと搬送装置6間が、夫々、相互にオンラインでデータ通信可能である。特に、1または複数のセルコンピュータ3の内のフォト工程設備5aを管理するセルコンピュータ3a、フォト工程設備5a及びレチクル保管庫7は、相互にオンラインでデータ通信可能である。
【0019】
ホストコンピュータ2は、記憶手段9と制御情報生成手段10と更新手段11を備える。記憶手段9は、複数のロット情報を管理するためのロット情報データと複数の装置情報を管理するための装置情報データと複数のレチクルのレチクル現在位置データとレチクル状態データを管理するためのレチクル情報データを記憶する。制御情報生成手段10は、記憶手段9に記憶されたロット情報データ及び装置情報データから、ロット供給を制御するためのロット選択または複数ロット同時処理するためのバッチ組選択を行い、選択したロットのロット情報データの処理条件データと、レチクル情報データのレチクル現在位置データとレチクル状態データを照合して、受入可能な装置の装置情報データを抽出し、その中から最適な装置選択を行い、制御情報データと搬送情報データを生成する。更新手段11は、記憶手段9に記憶されたロット情報データ、装置情報データ、及び、レチクル情報データを、各セルコンピュータ3及び搬送管理コンピュータ4からの事象報告データ、例えば、フォト工程設備で発生した事象報告データ等、に基づいて自動的に更新する。
【0020】
セルコンピュータ3aは、通信手段12とポート情報生成手段13とレチクルゴミ検査制御手段14を備える。通信手段12は、制御情報生成手段10が生成した制御情報データをディスパッチ情報データとしてホストコンピュータ2から受信し、フォト工程設備5aに対し処理条件データを指示し、フォト工程設備5aで発生した事象報告データを受信する。ポート情報生成手段13は、通信手段12を介して、制御情報生成手段10が生成した制御情報データをディスパッチ情報データとしてホストコンピュータ2から受信し、ディスパッチ情報データの装置情報データを照合して、キャリアを搬入するポートを選択するためのポート情報データを生成する。レチクルゴミ検査制御手段14は、通信手段12を介して、制御情報生成手段10が生成した制御情報データをディスパッチ情報データとしてホストコンピュータ2から受信し、ディスパッチ情報データの選択された装置名とレチクル名からレチクルゴミ検査指示データを生成し、フォト工程設備5aへロットが搬入される前に、通信手段12を介して、フォト工程設備5aにレチクルゴミ検査データによる検査指示を行う。
【0021】
尚、セルコンピュータ3a以外のセルコンピュータ3も、同様に通信手段12を備え、複数の工程設備5とネットワーク8を介してオンライン接続しており、ホストコンピュータ2の制御情報生成手段10から指示されたディスパッチ情報データのロット情報データ、装置情報データから処理条件データを生成し、各工程設備5の装置用コンピュータ(インラインコントローラ)に処理条件を指示可能な構成となっている。また、各工程設備5の装置用コンピュータは、セルコンピュータ3からの処理情報に基づく処理を、各工程設備5の装置に指示し、その処理結果としての事象報告データを、セルコンピュータ3の通信手段12を介してホストコンピュータ2に報告可能な構成となっている。
【0022】
搬送管理コンピュータ4は、制御情報生成手段10が生成した搬送情報データに基づき、搬送装置6に対して各工程設備5へのロットの搬送制御を実行する。
【0023】
図2に、半導体製造工程管理システム1とフォト工程設備5aとの関連、及び、フォト工程設備5aの構成例を示す。図2に示すように、本実施形態では、フォト工程設備5aは、塗布装置15、露光装置16、現像装置17、レチクルゴミ検査装置18、レチクル収納棚19、インラインコントローラ20、及び、ロットの格納及び搬送に用いるキャリアが搬入搬出される複数のポート21を備える。従って、レチクルを収納する設備としては、フォト工程設備5a内のレチクル収納棚19と、フォト工程設備5a外のレチクル保管庫7がある。
【0024】
インラインコントローラ20は、フォト工程設備5a内の各装置15〜19を制御管理し、フォト工程設備5aで発生した事象を、事象報告データとして、セルコンピュータ3aの通信手段12を介して、ホストコンピュータ2に送信する。
【0025】
次に、フォト工程の内の露光処理されるロットがフォト工程設備5aに搬入されるまでのホストコンピュータ2、セルコンピュータ3a、搬送管理コンピュータ4、フォト工程設備5a等において実行される各処理について、図3を参照して説明する。
【0026】
先ず、作業者がフォト工程設備5aのインラインコントローラ20の操作端末からネットワーク8にオンライン接続するオンライン操作を行うと、インラインコントローラ20は、セルコンピュータ3aの通信手段12を介して、オンライン状態になったことを事象報告データとしてホストコンピュータ2に報告する(ステップ#1)。ホストコンピュータ2は、更新手段11により、報告された事象報告データに基づいて、記憶手段9に記憶された装置情報データの通信状態データをオンライン状態に更新する(ステップ#2)。
【0027】
引き続き、インラインコントローラ20は、セルコンピュータ3aの通信手段12を介して、レチクル収納棚19に収納されているレチクル在庫を事象報告データとしてホストコンピュータ2に報告する(ステップ#3)。ホストコンピュータ2は、更新手段11により、報告された事象報告データに基づいて、記憶手段9に記憶された装置情報データとレチクル情報データのレチクル現在位置データを更新する(ステップ#4)。
【0028】
更に、レチクル保管庫7からレチクル収納棚19へのレチクルの搬入、或いは、レチクル収納棚19からレチクル保管庫7へのレチクルの搬出が行われた場合は、インラインコントローラ20は、レチクル収納棚19のレチクル収納情報を更新して、セルコンピュータ3aの通信手段12を介して、更新されたレチクル収納情報を事象報告データとしてホストコンピュータ2に報告する(ステップ#5/#7)。ホストコンピュータ2は、更新手段11により、報告された事象報告データに基づいて、記憶手段9に記憶された装置情報データとレチクル情報データのレチクル現在位置データを更新する(ステップ#6/#8)。ここで、レチクル収納棚19へ搬入するレチクルは、インラインコントローラ20の操作端末から作業者の操作により、レチクル保管庫7に保管されているレチクル名がオンラインで読み出され、製造ロットを処理可能なレチクルの中から、使用限度及びレチクル状態と、当該フォト工程設備5aが装置選択されることを考慮して選択される。また、レチクル収納棚19から搬出するレチクルは、レチクル収納棚19に収納されているレチクルの中から、インラインコントローラ20の操作端末から作業者の操作により選択される。
【0029】
上記要領で、記憶手段9に記憶された装置情報データとレチクル情報データのレチクル現在位置データが更新されると、ホストコンピュータ2の制御情報生成手段10が、図4に例示する製造工程の処理フローを示すテーブルに従って、記憶手段9に記憶されたロット情報データと装置情報データから、ロット供給を制御するためのロット選択または複数ロット同時処理するためのバッチ組選択を行い、選択したロットのロット情報データの処理条件データと、前記テーブルで指示されるレチクルのレチクル情報データのレチクル現在位置データとレチクル状態データを照合し、受入可能な装置の装置情報データを抽出して、その中から最適な装置選択を行い、制御情報データを生成し、生成した制御情報データをセルコンピュータ3aにディスパッチ情報データとして指示する(ステップ#9)。具体的には、フォト工程設備5aをロット受入可能な装置として抽出する場合には、当該フォト工程設備5aのレチクル収納棚19に搬入予定のロットを処理可能なレチクルが収納されていることを、制御情報生成手段10が、記憶手段9に記憶されたレチクル情報データのレチクル現在位置データとレチクル状態データによって確認する。
【0030】
セルコンピュータ3aは、ホストコンピュータ2から通信手段12を介して、制御情報生成手段10が生成した制御情報データをディスパッチ情報データとして受信すると、レチクルゴミ検査制御手段14が、ディスパッチ情報データの選択された装置名とレチクル名からレチクルゴミ検査指示データを生成し、選択された装置であるフォト工程設備5aへロットが搬入される前に、通信手段12を介して、フォト工程設備5aにレチクルゴミ検査データによる検査指示を行う(ステップ#10)。
【0031】
フォト工程設備5aのインラインコントローラ20は、通信手段12を介して、セルコンピュータ3aのレチクルゴミ検査制御手段14から検査指示を受け取ると、レチクル検査指示に関する周期管理に基づいて検査周期に達しているか否かを判定する(ステップ#11)。インラインコントローラ20は、検査周期に達している場合は、レチクルゴミ検査装置18にレチクルゴミ検査命令を行い(ステップ#12)、検査周期に達していなければ、前記レチクルゴミ検査装置にレチクルゴミ検査命令を行わずに、前記レチクルゴミ検査結果を合格とする(ステップ#13)。
【0032】
レチクルゴミ検査装置18が、インラインコントローラ20からレチクルゴミ検査命令を受け取ると、レチクルゴミ検査命令に従って、レチクル収納棚19から検査対象のレチクルを搬送し、レチクルゴミ検査処理を開始し、インラインコントローラ20に対して、レチクルゴミ検査処理の開始を報告する(ステップ#14)。レチクルゴミ検査装置18は、レチクルゴミ検査処理が終了すると、レチクルゴミ検査結果をインラインコントローラ20に報告する(ステップ#15)。
【0033】
インラインコントローラ20は、ステップ#13及びステップ#15のレチクルゴミ検査結果を事象報告データとして、セルコンピュータ3aに報告し、セルコンピュータ3aは、当該事象報告データをホストコンピュータ2に報告する(ステップ#16)。レチクルゴミ検査結果が合格の場合、セルコンピュータ3aは、レチクルゴミ検査結果が合格である旨の事象報告データをホストコンピュータ2に報告し(ステップ#17)、ステップ#9においてホストコンピュータ2からディスパッチ情報データとして指示された制御情報データの処理条件データをディスパッチ情報データとして通信手段12を介してフォト工程設備5aのインラインコントローラ20に指示する(ステップ#18)。更に、セルコンピュータ3aのポート情報生成手段13は、上記制御情報データの装置情報データを照合して、キャリアを搬入するポートを選択するためのポート情報データを生成し、通信手段12を介して、インラインコントローラ20に送信する(ステップ#19)。ホストコンピュータ2は、ステップ#9において生成した制御情報データを搬送情報データとして、フォト工程設備5aへのロットの搬送を搬送管理コンピュータ4に指示する(ステップ#20)。搬送管理コンピュータ4は、制御情報生成手段10が生成した搬送情報データに基づき、搬送装置6に対して、フォト工程設備5aへのロットの搬送を指示する。搬送装置6は、搬送指示に基づき、フォト工程設備5aのポート情報データで選択されるポートへ、露光処理の対象となるロットを格納したキャリアを搬入する(ステップ#21)。これにより、フォト工程設備5aの露光装置16において、露光処理が可能となる。
【0034】
一方、レチクルゴミ検査結果が不合格の場合、セルコンピュータ3aは、ステップ#9においてホストコンピュータ2からディスパッチ情報データとして指示された制御情報データを破棄し(ステップ#22)、レチクルゴミ検査結果が不合格である旨、及び、ディスパッチ情報データをキャンセルした旨の事象報告データをホストコンピュータ2に報告する(ステップ#23)。ホストコンピュータ2は、ステップ#9において制御情報生成手段10が生成した制御情報データを破棄し、一旦、ロット供給をキャンセルするとともに、記憶手段9に記憶されたレチクル情報データの該当するレチクルのレチクル状態データを使用不可とし、記憶手段9に記憶されたロット情報データと装置情報データを更新する(ステップ#24)。この結果、処理ステップがステップ#9に戻ることで、ホストコンピュータ2の制御情報生成手段10が、ステップ#9の処理を繰り返して、改めてロット選択またはバッチ組選択、及び、受入可能な別のフォト工程設備の選択を行うことができる。これにより、選択されたロットまたはバッチ組は、別のフォト工程設備へ供給可能となる。尚、レチクルゴミ検査で不合格となったレチクルは、フォト工程設備5aから搬出されて、洗浄処理等が行われる(ステップ#25)。
【0035】
上述のように、図3に示す処理手順によれば、レチクルゴミ検査制御手段14がフォト工程設備5aに対し、ロット供給前にレチクルゴミ検査指示を行うことで、レチクルゴミ検査結果に応じたロット制御が可能になり、フォト工程設備5aの稼働率が向上する。
【0036】
ところで、図3に示す処理手順のステップ#9では、制御情報データを生成した上で、生成した制御情報データをセルコンピュータ3aにディスパッチ情報データとして指示したが、当該ディスパッチ情報データのセルコンピュータ3aへの指示は、ステップ#17において、セルコンピュータ3aからレチクルゴミ検査結果が合格である旨の事象報告データを受け取ってから、セルコンピュータ3aにディスパッチ情報データとして指示しても良い。
【0037】
更に、ステップ#5または#7において、オンライン操作によって、レチクル収納棚19とレチクル保管庫7の間でレチクルの搬入または搬出が行われた場合に、インラインコントローラ20が、更新されたレチクル収納情報を事象報告データとしてホストコンピュータ2に報告するようにしたが、これに代えて、或いは、追加して、レチクル保管庫7に設けられたインラインコントローラは、レチクル保管庫7のレチクル収納情報を更新して、セルコンピュータ3aの通信手段12を介して、更新されたレチクル収納情報を事象報告データとしてホストコンピュータ2に報告するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、半導体製造工程管理システムに利用可能であり、特に、レチクル管理とレチクルを使用するフォト工程の業務改善に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る半導体製造工程管理システムのシステム構成例を示すブロック図
【図2】図1に半導体製造工程管理システムとフォト工程設備との関連、及び、フォト工程設備のシステム構成例を示すブロック図
【図3】本発明に係る半導体製造工程管理システムによるフォト工程において露光処理されるロットがフォト工程設備に搬入されるまでの処理手順を示すフローチャート
【図4】製造工程の処理フローを示すテーブルの一例を示す図
【符号の説明】
【0040】
1: 半導体製造工程管理システム
2: ホストコンピュータ
3、3a: セルコンピュータ
4: 搬送管理コンピュータ
5: 工程設備
5a: フォト工程設備
6: 搬送装置
7: レチクル保管庫
8: ネットワーク
9: 記憶手段
10: 制御情報生成手段
11: 更新手段
12: 通信手段
13: ポート情報生成手段
14: レチクルゴミ検査制御手段
15: 塗布装置
16: 露光装置
17: 現像装置
18: レチクルゴミ検査装置
19: レチクル収納棚
20: インラインコントローラ
21: ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造工程の全体を管理するホストコンピュータと、フォト工程を含む複数の製造工程を処理する各工程設備を個別に管理する1または複数のセルコンピュータと、前記各工程設備間において被製造物の搬送を行う搬送装置を管理する搬送管理コンピュータと、を備えてなる半導体製造管理システムであって、
前記ホストコンピュータは、
複数のロット情報を管理するためのロット情報データと複数の装置情報を管理するための装置情報データと複数のレチクルのレチクル現在位置データとレチクル状態データを管理するためのレチクル情報データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記ロット情報データ及び前記装置情報データから、ロット供給を制御するためのロット選択または複数ロット同時処理するためのバッチ組選択を行い、選択したロットの前記ロット情報データの処理条件データと、前記レチクル情報データのレチクル現在位置データとレチクル状態データを照合して、受入可能な装置の前記装置情報データを抽出し、その中から最適な装置選択を行い、制御情報データと搬送情報データを生成する制御情報生成手段と、
前記記憶手段に記憶された前記ロット情報データ、前記装置情報データ、及び、前記レチクル情報データを、前記フォト工程設備で発生した事象報告データに基づいて自動的に更新する更新手段と、を備え、
前記セルコンピュータは、
前記制御情報生成手段が生成した前記制御情報データをディスパッチ情報データとして前記ホストコンピュータから受信し、前記工程設備の内のフォト工程設備に対し前記処理条件データを指示し、前記フォト工程設備で発生した前記事象報告データを受信する通信手段と、
前記通信手段を介して、前記制御情報生成手段が生成した前記制御情報データを前記ディスパッチ情報データとして前記ホストコンピュータから受信し、前記ディスパッチ情報データの前記装置情報データを照合して、キャリアを搬入するポート情報データを生成するポート情報生成手段と、
前記通信手段を介して、前記制御情報生成手段が生成した前記制御情報データを前記ディスパッチ情報データとして前記ホストコンピュータから受信し、前記ディスパッチ情報データの選択された装置名とレチクル名からレチクルゴミ検査指示データを生成し、前記フォト工程設備へロットが搬入される前に、前記通信手段を介して、前記フォト工程設備に前記レチクルゴミ検査データによる検査指示を行うレチクルゴミ検査制御手段と、を備え、
前記フォト工程設備は、塗布装置、露光装置、現像装置、レチクルゴミ検査装置、レチクル収納棚、及び、これらの装置群を制御管理し、前記フォト工程設備で発生した事象を、前記事象報告データとして、前記セルコンピュータの通信手段を介して、前記ホストコンピュータに報告するインラインコントローラを備え、
前記搬送管理コンピュータは、前記制御情報生成手段が生成した前記搬送情報データに基づき、前記フォト工程設備へのロットの搬送制御を実行する、
ことを特徴とする半導体製造工程管理システム。
【請求項2】
前記フォト工程設備に搬入予定のロットを処理可能なレチクルが搬入されると、前記インラインコントローラは、前記レチクルの搬入を前記事象報告データとして、前記セルコンピュータの通信手段を介して、前記ホストコンピュータに報告し、
前記ホストコンピュータは、受信した前記事象報告データに基づいて、前記更新手段により前記装置情報データと前記レチクル情報データの前記レチクル現在位置データを更新し、前記制御情報生成手段により、当該フォト工程設備をロット受入可能な装置として抽出することを特徴とする請求項1に記載の半導体製造工程管理システム。
【請求項3】
前記フォト工程設備において、前記インラインコントローラは、前記セルコンピュータの前記レチクルゴミ検査制御手段から前記検査指示を受け取ると、前記レチクルゴミ検査装置にレチクルゴミ検査命令を行い、前記レチクルゴミ検査装置は、前記レチクルゴミ検査命令に従って、前記レチクル収納棚から検査対象のレチクルを搬送し、レチクルゴミ検査処理を行い、レチクルゴミ検査結果を前記インラインコントローラに報告し、前記インラインコントローラは、前記レチクルゴミ検査結果を前記事象報告データとして、前記セルコンピュータの通信手段を介して、前記ホストコンピュータに報告することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体製造工程管理システム。
【請求項4】
前記レチクルゴミ検査結果が合格の場合、
前記セルコンピュータは、前記制御情報データの前記処理条件データを前記ディスパッチ情報データとして前記通信手段を介して前記フォト工程設備の前記インラインコントローラに指示し、
前記ホストコンピュータは、前記制御情報生成手段が生成した前記搬送情報データを、前記搬送管理コンピュータを介して、前記搬送装置に送信して、前記ロットの搬送指示を行い、
前記搬送装置は、前記搬送指示に基づき、前記ロットを前記フォト工程設備に搬入することを特徴とする請求項3に記載の半導体製造工程管理システム。
【請求項5】
前記レチクルゴミ検査結果が不合格の場合、
前記セルコンピュータは、前記ホストコンピュータにレチクルゴミ検査結果が不合格であったこと、及び、前記ディスパッチ情報データをキャンセルしたことを報告し、
前記ホストコンピュータは、前記更新手段により、前記レチクル情報データの前記レチクル状態データを使用不可とし、前記ロット情報データと前記装置情報データを更新して、改めて前記制御情報生成手段により前記ロット選択または前記バッチ組選択を行うことを特徴とする請求項3または4に記載の半導体製造工程管理システム。
【請求項6】
前記フォト工程設備の前記インラインコントローラは、前記セルコンピュータの前記レチクルゴミ検査制御手段から前記検査指示を受け取ると、レチクル検査指示に関する周期管理に基づいて検査周期に達しているか否かを判定し、検査周期に達していれば、前記レチクルゴミ検査装置にレチクルゴミ検査命令を行い、検査周期に達していなければ、前記レチクルゴミ検査装置にレチクルゴミ検査命令を行わずに、前記レチクルゴミ検査結果を合格とし、前記レチクルゴミ検査結果を前記事象報告データとして、前記セルコンピュータの通信手段を介して、前記ホストコンピュータに報告することを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の半導体製造工程管理システム。
【請求項7】
前記インラインコントローラは、作業者が前記フォト工程設備の前記インラインコントローラの操作端末からオンライン操作を行うと、前記セルコンピュータの通信手段を介して、オンライン状態になったことを前記事象報告データとして前記ホストコンピュータに報告し、
前記ホストコンピュータは、前記更新手段により、前記装置情報データの通信状態データをオンライン状態に更新することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の半導体製造工程管理システム。
【請求項8】
前記フォト工程設備の前記インラインコントローラは、前記セルコンピュータの通信手段を介して、前記レチクル収納棚に存在するレチクルを前記事象報告データとして前記ホストコンピュータに報告し、
前記ホストコンピュータは、前記更新手段により、前記装置情報データと前記レチクル情報データの前記レチクル現在位置データを更新することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の半導体製造工程管理システム。
【請求項9】
前記フォト工程設備の前記インラインコントローラは、前記レチクル収納棚に対してレチクルの搬入或いは搬出が行われると、前記レチクル収納棚のレチクル収納情報を更新して、前記セルコンピュータの通信手段を介して、前記レチクル収納情報を前記事象報告データとして前記ホストコンピュータに報告し、
前記ホストコンピュータは、前記更新手段により、前記レチクル情報データの前記レチクル現在位置データを更新することを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の半導体製造工程管理システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−10355(P2010−10355A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167365(P2008−167365)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】