説明

半導電性ロール及び画像形成装置

【課題】抵抗値変動が抑制される半導電性ロールを提供する。
【解決手段】本実施の形態の半導電性ロール10は、電圧を印加されることによりイオン導電剤をイオン導電剤保持部材14側または弾性層18側へ移行させる電界を形成するイオン導電剤移行電極12の外周側に、イオン導電剤を保持したイオン導電剤保持部材14、電圧を印加されることにより外部部材との間に電界を形成する外部電界形成電極16、及びイオン導電剤を含有した弾性層18が順に積層されて構成されている。外部電界形成電極16の外周面には孔16Aが形成されており、イオン導電剤移行電極12に印加された電圧に応じて、イオン導電剤保持部材14に保持されたイオン導電剤が弾性層18側へ移行、または弾性層18に保持されたイオン導電剤がイオン導電剤保持部材14側へ移行可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導電性ロール及びそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置では、表面を帯電された像保持体上に静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーによって現像することで静電潜像に応じたトナー像が像保持体上に形成されている。そして、この像保持体上に形成されたトナー像は、半導電性ロールによって記録媒体に直接または中間転写体を介して記録媒体に転写される。この記録媒体上に転写されたトナー像が定着装置によって該記録媒体に定着されることで、記録媒体上に画像が形成されている。
【0003】
画像形成装置に搭載されている各種部材の中で、半導電性ロール等の半導電性部材の寿命は、一般的には抵抗値で判断されるが、この抵抗値は環境変動や通電等により変動することが知られている。特に、導電機構がイオン導電剤添加により調整されている場合には、通電時の分極によりイオン導電剤が像保持体、中間転写体、及び記録媒体等に移行してしまい、抵抗値が高くなる。抵抗値の変動が生じると、帯電または転写効率が悪くなり、画質劣化につながる場合がある。
【0004】
このような半導電性部材の抵抗値の変動抑制のための技術として、様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の技術によれば、部材の抵抗が上昇したときに、部材内部を加熱することによって、環境変化による抵抗変動を抑制している。
【特許文献1】特開2007−316198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抵抗値変動が抑制される半導電性ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、第1の電極部材と、前記第1の電極部材の外周側に設けられイオン導電剤を含有し弾性を有する弾性層と、前記弾性層に接触し前記イオン導電剤を予め保持した保持部材と、前記保持部材に接触する第2の電極部材と、を備えた半導電性ロールである。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記保持部材は、前記第2の電極部材の外周側に層状に設けられ、前記第1の電極部材は、筒状であって外周面に前記イオン導電剤が厚み方向に通過する孔を有し、内周面側に前記保持部材が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の半導電性ロールである。
【0008】
請求項3に係る発明は、少なくとも像保持体と、該像保持体表面を帯電する帯電ロールと、前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体表面に形成された潜像をトナー像として現像する現像手段と、該トナー像を記録媒体に転写する半導電性ロールとを備え、前記半導電性ロール及び前記帯電ロールの少なくとも一方が、請求項1または請求項2に記載の半導電性ロールであることを特徴とする画像形成装置である。
【0009】
請求項4に係る発明は、中間転写体を備え、前記半導電性ロールは、前記像保持体表面から前記中間転写体表面にトナー像を一次転写する一次転写ロールと、前記中間転写体表面に一次転写されたトナー像を前記記録媒体に転写する二次転写ロールと、前記二次転写ロールに対向して設けられる対向ロールと、を含み、前記一次転写ロール、前記二次転写ロール及び前記対向ロールの少なくとも一つが請求項1または請求項2に記載の半導電性ロールであることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置である。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記第1の電極部材へ電圧を印加する第1の電圧印加手段と、前記第2の電極部材へ電圧を印加する第2の電圧印加手段と、前記第1の電圧印加手段によって前記第1の電極部材へ電圧が印加されたときの少なくとも請求項1または請求項2に記載の半導電性ロールの抵抗を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定された抵抗値が予め定めた基準抵抗範囲内を維持するように、前記保持部材から前記弾性層へ前記イオン導電剤を移行、または前記弾性層から前記保持部材へ前記イオン導電剤を移行させるように、前記第2の電圧印加手段を制御する制御手段と、を備えた請求項3または請求項4に記載の画像形成装置である。
【0011】
請求項6に係る発明は、前記制御手段は、画像形成装置における画像形成処理中、及び画像形成処理後の少なくとも一方において、前記測定手段によって測定された抵抗値が予め定めた基準抵抗範囲内を維持するように、前記保持部材から前記弾性層へ前記イオン導電剤を移行、または前記弾性層から前記保持部材へ前記イオン導電剤を移行させるように、前記第2の電圧印加手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置である。
【0012】
請求項7に係る発明は、前記第1の電極部材へ電圧を印加する第1の電圧印加手段と、前記第2の電極部材へ電圧を印加する第2の電圧印加手段と、前記第1の電圧印加手段によって前記第1の電極部材へ電圧が印加されたときの少なくとも請求項1または請求項2に記載の半導電性ロールの抵抗を測定する測定手段と、前記測定手段によって測定された抵抗値に応じて、前記第2の電圧印加手段を制御する制御手段と、を備えた請求項3または請求項4に記載の画像形成装置である。
【0013】
請求項8に係る発明は、前記制御手段は、画像形成装置における画像形成処理中、及び画像形成処理後の少なくとも一方において、前記測定手段によって測定された抵抗値に応じて、前記保持部材から前記弾性層へ前記イオン導電剤を移行、または前記弾性層から前記保持部材へ前記イオン導電剤を移行させるように、前記第2の電圧印加手段を制御することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、本発明の第2の電極部材及び保持部材を有さない構成である場合に比べて、半導電性ロールにおける抵抗値変動が抑制される、という効果を奏する。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、第2の電極部材及び保持部材が、第1の電極部材の内周側に設けられた構成ではない場合に比べて、半導電性ロールの簡略化及び小型化が図れる、という効果を奏する。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、本発明の半導電性ロールを有さない構成である場合に比べて、長期間に渡り使用することができる、という効果が得られる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、本発明の半導電性ロールを有さない構成である場合に比べて、長期間に渡り使用することができる、という効果が得られる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、本発明の制御手段による制御を行わない場合に比べて、長期間に渡り使用することができる、という効果が得られる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、本発明の制御手段による制御を行わない場合に比べて、消費電力が抑制される、という効果が得られる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、本発明の制御手段による制御を行わない場合に比べて、長期間に渡り使用することができる、という効果が得られる。
【0021】
請求項8に係る発明によれば、本発明の制御手段による制御を行わない場合に比べて、消費電力が抑制される、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
図1及び図2に示すように、本実施形態の半導電性ロール10は、円柱状のイオン導電剤移行電極12の外周側に、イオン導電剤保持部材14、外部電界形成電極16、及び弾性層18が順に積層されて構成されている。具体的には、円柱状のイオン導電剤移行電極12の外周に、イオン導電剤保持部材14が層状に設けられている。そして、このイオン導電剤保持部材14の外周を覆うように、円筒状の外部電界形成電極16が設けられている。そして、この外部電界形成電極16の外周には弾性層18が設けられている。
【0024】
上記半導電性ロール10が、本発明の半導電性ロールに相当し、イオン導電剤移行電極12が、本発明の半導電性ロールの第2の電極部材に相当し、イオン導電剤保持部材14が、本発明の半導電性ロールの保持部材に相当する。また、外部電界形成電極16が、本発明の半導電性ロールの第1の電極部材に相当し、弾性層18が、本発明の半導電性ロールの弾性層に相当する。
【0025】
なお、本実施の形態において、半導電性とは、抵抗値が1×10Ω以上1×1011Ω以下の範囲であることを示している。この半導電性であることを示す抵抗値は、1×10Ω以上1×10Ω以下の範囲であることがより望ましい。半導電性ロール10の抵抗値が、1×10Ω以上1×1011Ω以下の範囲内であることで、半導電性ロール10を後述する画像形成装置の帯電ロール、転写ロール、バックアップロール等として搭載したときに、転写不良が抑制されると共に、低温低湿環境(10℃、15%RH)において接触部以後での剥離放電が抑制され、画質劣化が抑制される。
【0026】
この半導電性ロール10の抵抗値R(Ω)は、半導電性ロール10を金属板などの導電体上に置いて、半導電性ロール10の両端部に各4.9Nの荷重をかけ、半導電性ロール10の外部電界形成電極16に1.0kVの電圧Vを印加し、10秒後の半導電性ロール10の外部電界形成電極16及び金属板間に流れる電流値I(A)を読み取り、下記式(1)から求めた。なお、測定環境は22℃、55%RHとした。
R=V/I ・・・ 式(1)
【0027】
イオン導電剤移行電極12は、半導電性ロール10の支持部材として機能すると共に、イオン導電剤移行電極12の外周に設けられたイオン導電剤保持部材14に保持されているイオン導電剤を弾性層18側へ移行、または弾性層18に含有されているイオン導電剤をイオン導電剤保持部材14側へ移行させる電圧を印加するための電極として機能する。
【0028】
イオン導電剤移行電極12としては、体積抵抗の常用対数値が6logΩcm以下、好ましくは3logΩcm以下の部材が用いられる。このイオン導電剤移行電極12としては、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属又は合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄などの材質で構成される。これらの材質であれば、強度及び電気的特性の点から、電極及び支持部材としていずれも使用される。
イオン導電剤移行電極12の外径φは、半導電性ロール10を構成したときに軸の撓みが抑制される観点から、0.1mm以上12mm以下の範囲であるのが好ましく、1mm以上5mm以下の範囲であるのがより望ましい。
【0029】
イオン導電剤保持部材14は、本実施の形態では、イオン導電剤移行電極12の外周に設けられている。具体的には、イオン導電剤保持部材14は、イオン導電剤移行電極12の外周側と外部電界形成電極16の内周側の領域を埋めるように設けられている。このイオン導電剤保持部材14は、内部にイオン導電剤を保持している。そして、イオン導電剤移行電極12に印加された電圧または電流に応じて、イオン導電剤保持部材14に保持されたイオン導電剤が弾性層18側へ移行、または弾性層18に保持されていたイオン導電剤がイオン導電剤保持部材14側へ移行する。イオン導電剤保持部材14に保持されたイオン導電剤が弾性層18側へ移行することで、弾性層18にはイオン導電剤が供給される。一方、弾性層18に保持されていたイオン導電剤がイオン導電剤保持部材14側に移行することで、弾性層18に保持されていたイオン導電剤の少なくとも一部がイオン導電剤保持部材14に回収されることとなる。このイオン導電剤保持部材14側から弾性層18側へのイオン導電剤の移行、及び弾性層18側からイオン導電剤保持部材14側へのイオン導電剤の移行の切り替えは、イオン導電剤移行電極12に印加される電圧または電流の極性を変更することで行われる。
【0030】
このイオン導電剤保持部材14としては、イオン導電剤保持部材14を構成するゴム材料や樹脂中に、イオン導電剤が充填された構成とされている。
【0031】
このイオン導電剤保持部材14を構成する樹脂としては、ポリヒドロキシル化合物として、一般の軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマー製造に用いられるポリオール、即ち、末端にポリヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及び両者の共重合物であるポリエーテルポリオールが挙げられるほか、ポリオール中でエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる所謂ポリマーポリオール等の一般的なポリオールが使用される。また、一般的な軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマー製造に使用されるポリイソシアネート、即ち、トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの混合物や変性物、例えば部分的にポリオール類と反応させて得られるプレポリマー等が用いられる。
【0032】
また、このイオン導電剤保持部材14を構成するゴム材料としては、エピクロロヒドリン、ポリウレタン、ニトリルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキシドゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、塩素化ポリイソプレン、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、水素化ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等、又はこれらの2種以上をブレンドしてなる材料が挙げられる。望ましくは、ウレタンゴム、ニトリルゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキシドゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)である。
【0033】
このイオン導電剤保持部材14に充填(保持)させるイオン導電剤としては、四級アンモニウム塩(例えばラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エトサルフェート塩、ハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等)等)、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩、各種ベタイン、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、等が挙げられる。
【0034】
また、イオン導電剤としては、多価アルコール(1,4ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびその誘導体と金属塩との錯体、モノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等)と金属塩の錯体も挙げられる。金属塩としては、例えばLiClO4、LiCF3SO3、LiAsF6、LiBF4、NaClO4、NaSCN、KSCN、NaCl等の周期律表第1族の金属塩;NH4+の塩等の電解質;Ca(ClO42、Ba(ClO42等の周期律表第2族の金属塩;これらに、少なくとも1個以上の水酸基、カルボキシル基、一級ないし二級アミン基等イソシアネートと反応する活性水素を有する基を持ったもの;等が挙げられる。この錯体として具体的には、PEL(LiClO4とポリエチレングリコールとの錯体)等が挙げられる。
【0035】
これらのイオン導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
これらのイオン導電剤の中でも、効果的に抵抗値の調整が可能な点で、特に多価イオンを形成し得る四級アンモニウム塩を用いることが好ましい。
【0037】
このイオン導電剤のイオン導電剤保持部材14への充填率は、イオン導電剤保持部材14がイオン導電剤を保持可能な最大量を100%としたときに、該最大量に対して5%以上であることが望ましく、30%以上であることが特に望ましい。イオン導電剤のイオン導電剤保持部材14への充填率が5%以上であると、イオン導電剤を効率良く移行することができるという効果を奏する。
【0038】
外部電界形成電極16は、円筒状であって、電圧または電流を印加されることによって半導電性ロール10の外部に設けられた各種部材(外部部材)との間に電界を形成するための電極として機能する。
【0039】
本実施の形態では、この外部電界形成電極16は、イオン導電剤保持部材14の外周を覆うように形成されている。そして、この外部電界形成電極16の外周面上には、図2に示すように、複数の孔16Aが設けられている。この孔16Aは、外部電界形成電極16の内周側に設けられたイオン導電剤保持部材14から外周側に設けられた弾性層18へ、または弾性層18からイオン導電剤保持部材14へイオン導電剤が通過可能な孔16Aであればよい。イオン導電剤の移行の観点から、外部電界形成電極16を隔てて(複数の孔16Aの内外で)イオン導電剤保持部材14と弾性層18とが直接接触していることが好ましい。
この孔16Aは、外部電界形成電極16の外周面の外周方向及び軸方向の全領域に渡って設けられている。
【0040】
このため、イオン導電剤保持部材14に保持されていたイオン導電剤を弾性層18側へ移行させる電圧または電流がイオン導電剤移行電極12に印加されると、印加された電圧に応じてイオン導電剤保持部材14に保持されていたイオン導電剤が孔16Aを通過して弾性層18側へと移行し、弾性層18側に保持される。一方、弾性層18に含有されていたイオン導電剤をイオン導電剤保持部材14側へ移行させる電圧または電流がイオン導電剤移行電極12に印加されると、弾性層18から孔16Aを通ってイオン導電剤保持部材14へイオン導電剤が移行する。
【0041】
外部電界形成電極16としては、表面抵抗率の常用対数値が6logΩ/□以下、望ましくは3logΩ/□以下の導電性(体積抵抗率が10Ωcm以下)の部材が用いられる。このイオン導電剤移行電極12としては、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属又は合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;など材質で構成される。これらの材質であれば、強度及び電気的特性の点から、電極及び支持部材としていずれも使用される。
この外部電界形成電極16の外径φは、3mm以上12mm以下の範囲であり、外部電界形成電極16の強度不足により撓むことで転写不良が発生することを抑制する観点から、厚みは0.05mm以上8mm以下であることが望ましいが、5mm以上15mm以下の範囲であり、厚みは1mm以上5mm以下であることが望ましい。
【0042】
弾性層18は、無発泡層だけから構成されるものであってもよいし、発泡層の表面(外側)に無発泡層を有するものであってもよい。また、この発泡層及び無発泡層は複数でも構わない。なお、弾性層18とは100Paの外力印加により変形しても、もとの形状に復元する材料から構成される層をいう。
弾性層18としては、ゴム材中にイオン導電剤を分散させた形態が挙げられる。
【0043】
この弾性層18を構成するゴム材料としては、エピクロロヒドリン、ポリウレタン、ニトリルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキシドゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、塩素化ポリイソプレン、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、水素化ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等、又はこれらの2種以上をブレンドしてなる材料が挙げられる。望ましくは、ウレタンゴム、ニトリルゴム、エピクロロヒドリン−エチレンオキシドゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)である。これらのゴム材料は弾性を有するため、いずれも弾性層18を構成する材料として好適に使用される。特にエピクロロヒドリンを主成分とする合成ゴムは、ゴム自体がある程度の通電性を有しているため優れている。
【0044】
弾性層18を無発泡層と発泡層とから構成する場合には、ゴム材料は主にエピクロロヒドリンゴムから構成されることが望ましく、他の1種類以上の有機ゴムであるNBR、EPDM、SBR、CR等をブレンドしても構わない。無発泡層と発泡層とに主に使用するエピクロロヒドリンゴムとしては、例えば日本ゼオン(株)製の各々体積抵抗値が違うGechron 1100、Gechron 3100、Gechron 3101、Gechron 3102、Gechron 3103、Gechron 3105、Gechron 3106等を使用し、狙いとする抵抗値を得るために2種類以上のグレードを組合せて使用してもよい。
【0045】
弾性層18に含有するイオン導電剤としては、上記イオン導電剤保持部材14に保持されるイオン導電剤と同じ種類のものが好適に用いられる。
【0046】
さらに、弾性層18には、上記イオン導電剤と共に電子導電剤を含有させてもよい。この電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種金属又は合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末が挙げられる。
【0047】
この弾性層18へのイオン導電剤及び電子導電剤の総添加量は、半導電性ロール10を調整した時の抵抗値が、後述する画像形成装置に搭載したときに求められる抵抗を実現可能な量であればよい。
【0048】
この弾性層18の体積抵抗率の常用対数値としては、具体的には、体積抵抗率の常用対数値が3logΩcm以上12logΩcm以下の範囲内であることが好ましい。詳細には、半導電性ロール10を画像形成装置の帯電ロールとして用いる場合には、弾性層18の体積抵抗率の常用対数値は3logΩcm以上6logΩcm以下であることが望ましい。また、半導電性ロール10を画像形成装置の一次転写ロールとして用いる場合には、弾性層18の体積抵抗の常用対数値は6logΩcm以上7.5logΩcm以下であることが望ましい。また、半導電性ロール10を画像形成装置の二次転写ロールとして用いる場合には、弾性層18の体積抵抗の常用対数値は6.5logΩcm以上7.5logΩcm以下であることが望ましい。さらに、半導電性ロール10を画像形成装置が単色の画像形成装置である場合における転写ロールとしては、弾性層18の体積抵抗の常用対数値は8logΩcm以上8.5logΩcm以下であることが望ましい。
また、半導電性ロール10を感光体上のトナーを直接記録媒体へ転写する直接転写用の転写ロールとして用いる場合には、弾性層18の体積抵抗の常用対数値は7logΩcm以上8logΩcm以下であることが望ましい。また、半導電性ロール10を画像形成装置のバックアップロールとして用いる場合には、弾性層18の体積抵抗率の常用対数値は6logΩcm以上7.5logΩcm以下であることが望ましい。
【0049】
なお、前記体積抵抗率の常用対数値の測定は、シート状の測定サンプルに対し、測定治具(R2702A/Bレジスティビティ・チェンバ:アドバンテスト社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用い、電場(印加電圧/組成物シート厚)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒印加後の電流値より、下記式(2)を用いて体積抵抗率を算出し、この常用対数値を求めることで算出した。
体積抵抗率(Ω・cm)=(19.63×印加電圧(V))/(電流値(A)×測定サンプルシート厚(cm)) ・・・ 式(2)
【0050】
また、弾性層18の硬度は、弾性層18の外周に接触する各種部材との接触状態の安定性や画質欠陥抑制の観点から、アスカーC硬度で10°以上90°以下の範囲であることが望ましい。
【0051】
なお、アスカーC硬度とは、日本ゴム協会標準規格SRIS 0101に準拠し、アスカーC型硬度計を用いて測定した硬さをいい、アスカーC硬度の測定は、3mm厚の測定シート表面にアスカーC型硬度計(高分子計器社製)の測定針を押圧し、1000g荷重の条件で行った。
【0052】
具体的には、半導電性ロール10を画像形成装置の帯電ロール(例えば、後述する画像形成装置20の帯電ロール83)として用いる場合には、後述する像保持体(図3中、像保持体79)へ傷を与えない観点から、弾性層18の硬度は30°以上60°以下であることが望ましい。また、半導電性ロール10を画像形成装置の一次転写ロール及び二次転写ロールとして用いる場合には、均一な転写ニップを実現する観点から、弾性層18の硬度は、20°以上40°以下であることが望ましい。また、半導電性ロール10を、画像形成装置のバックアップロールとして用いる場合には、弾性層18の硬度は、40°以上80°以下であることが望ましい。
【0053】
この弾性層18の厚みは、2mm以上7mm以下の範囲が望ましく、3mm以上5mm以下の範囲がより望ましい。2mm以上であると他の部材との接触部分における接触圧による変形が十分となり、接触部分の安定した形成が可能とされる。また、7mm以下であると、半導電性ロールの外径が大きくなりすぎる事が抑制され、画像形成装置に搭載することを考慮したときに、装置サイズが大きくなることが抑制されると考えられる。
【0054】
本実施の形態の半導電性ロール10の製造方法としては、例えば、円筒状の外部電界形成電極16に複数の孔16Aを設けた後に、この外部電界形成電極16の内周側にイオン導電剤保持部材14を充填する。そして、この外部電界形成電極16の内周側に充填されたイオン導電剤保持部材14内に、イオン導電剤移行電極12を配置する。そして、外部電界形成電極16の外周面に弾性層18を形成することにより製造される。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態の半導電性ロール10は、電圧を印加されることによりイオン導電剤をイオン導電剤保持部材14側または弾性層18側へ移行させる電界を形成するイオン導電剤移行電極12の外周側に、イオン導電剤を保持したイオン導電剤保持部材14、電圧を印加されることにより外部部材との間に電界を形成する外部電界形成電極16、及びイオン導電剤を含有した弾性層18が順に積層されて構成されている。外部電界形成電極16の外周面には孔16Aが形成されており、イオン導電剤移行電極12に印加された電圧に応じて、イオン導電剤保持部材14に保持されたイオン導電剤が弾性層18側へ移行、または弾性層18に保持されたイオン導電剤がイオン導電剤保持部材14側へ移行可能に構成されている。
【0056】
このため、弾性層18に保持されるイオン導電剤の量が容易に調整され、イオン導電剤移行電極12に印加する電圧または電流を調整することで、容易に弾性層18の抵抗値が調整される。従って、抵抗値の変動が抑制され、抵抗値変動が抑制された半導電性ロール10が提供される。このため、結果的には、半導電性ロール10の寿命低下が抑制されることとなる。
【0057】
なお、本実施の形態では、半導電性ロール10としては、上述のように、円柱状のイオン導電剤移行電極12の外周に、イオン導電剤保持部材14、外部電界形成電極16、及び弾性層18が順に積層された構成である場合を説明するが、画像形成装置に搭載されたときに、像保持体79やバックアップロール73(図3参照)等の外部部材との間に電界を形成する外部電界形成電極16と弾性層18とを備えた構成であり、且つ、イオン導電剤移行電極12に印加された電圧または電流に応じてイオン導電剤保持部材14に保持されているイオン導電剤を弾性層18側へ移行、または弾性層18に保持されているイオン導電剤をイオン導電剤保持部材14側へ移行させることの可能な構成であればよく、このような積層形態に限られない。なお、バックアップロール73が、本発明の画像形成装置の対向ロールに相当する。
【0058】
例えば、半導電性ロール10を外部電界形成電極16及び弾性層18から構成し、イオン導電剤移行電極12及びイオン導電剤保持部材14を別体として構成してもよい。この場合には、イオン導電剤保持部材14の外周面を弾性層18の外周面に接触配置した構成とすればよい。
【0059】
同様に、本実施の形態では、外部電界形成電極16は、円筒状であって、内周側にイオン導電剤移行電極12が設けられ外周側に弾性層18が設けられており、複数の孔16Aが設けられた構成である場合を説明するが、イオン導電剤保持部材14を保持すると共にイオン導電剤がイオン導電剤保持部材14と弾性層18との間を通過する孔16Aの設けられた構成であればよく、例えば、複数の孔16Aが設けられることで網目状に構成されていてもよい。
【0060】
また、本実施の形態では、外部電界形成電極16は、円筒状の部材の外周面に孔16Aが設けられた構成である場合を説明するが、内周側にイオン導電剤保持部材14を保持し、且つイオン導電剤の通過する孔等の通路が設けられたものであればよく、外周面に孔16Aを有する円筒状に限られない。
【0061】
この半導電性ロール10は、画像形成装置を構成する帯電装置における帯電ロール、転写装置における転写ロール(一次転写ロール、二次転写ロール)、バックアップロール等に好適に用いられる。
【0062】
以下、本実施の形態の半導電性ロール10が好適に適用される画像形成装置の一例を説明する。なお、本実施の半導電性ロール10が好適に適用される画像形成装置は、以下に説明する画像形成装置に限定されるわけではない。なお、下記においては図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0063】
図3に示すように、本実施の形態の画像形成装置20は、4連タンデム方式のフルカラー画像形成装置であり、4つのトナーカートリッジ71、1対の定着ロール72、バックアップロール73、テンションロール74、二次転写ロール75、用紙経路76、給紙手段77、レーザー発生装置78、4つの感光体(像保持体)79、4つの一次転写ロール80、駆動ロール81、転写クリーナー82、4つの帯電ロール83、感光体クリーナー84、現像器85、中間転写ベルト(中間転写体)86、除電ロール88等を主用な構成部材として含んでなる。また、画像形成装置20には、画像形成装置20の装置各部を制御するメインコントローラ22が設けられている。このメインコントローラ22の制御によって、画像形成装置20の装置各部が制御されて、記録媒体への画像形成が行われる。
【0064】
画像形成装置20が、本発明の画像形成装置に相当し、帯電ロール83、一次転写ロール80、バックアップロール73、及び二次転写ロール75の少なくとも1つが、本発明の半導電性ロールに相当する。
【0065】
次に、図3に示す画像形成装置20の構成について順次説明する。まず、像保持体79の周囲には、反時計回りに帯電ロール83、現像器85、中間転写ベルト86を介して配置された一次転写ロール80、感光体クリーナー84が配置され、これら1組の部材が、1つの色に対応した現像ユニットを形成している。また、この現像ユニット毎に、現像器85に現像剤を補充するトナーカートリッジ71がそれぞれ設けられており、各現像ユニットの像保持体79に対して、帯電ロール83と現像器85とに挟まれた位置の像保持体79表面に画像情報に応じたレーザー光を照射するレーザー発生装置78が設けられている。
【0066】
4つの色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に対応した4つの現像ユニットは、画像形成装置20内において水平方向に直列に配置されており、4つの現像ユニットの像保持体79と一次転写ロール80との接触部を挿通するように中間転写ベルト86が設けられている。中間転写ベルト86は、その内周側に以下の順序で反時計回りに設けられた、バックアップロール73、テンションロール74、および駆動ロール81により張架されている。なお、4つの一次転写ロール80は、中間転写ベルト86の、バックアップロール73からテンションロール74に移動する途中に、配置されている。また、中間転写ベルト86を介して駆動ロール81の反対側には中間転写ベルト86の外周面をクリーニングする転写クリーナー82が駆動ロール81に対して圧接するように設けられている。
【0067】
また、中間転写ベルト86を介してバックアップロール73の反対側には給紙手段77から用紙経路76を経由して搬送される記録用紙の表面に、中間転写ベルト86の外周面に形成されたトナー像を転写するための二次転写ロール75が、バックアップロール73に対して圧接するように設けられている。バックアップロール73から駆動ロール81に到る中間転写ベルト86の外周面には、この外周面を除電するための除電ロール88が設けられている。
【0068】
この画像形成装置20においては、像保持体79へのトナー像の形成は、各色現像ユニット毎に行なわれ、帯電ロール83により反時計方向に回転する像保持体79表面を帯電した後に、レーザー発生装置78(露光装置)により帯電された像保持体79表面に潜像を形成し、次に、この潜像を現像器85から供給される現像剤により現像してトナー像を形成し、一次転写ロール80と像保持体79との圧接部に運ばれたトナー像を矢印A方向に回転する中間転写ベルト86の外周面に転写する。なお、トナー像を転写した後の像保持体79は、その表面に付着したトナーやゴミ等が感光体クリーナー84によりクリーニングされ、次のトナー像の形成に備える。
【0069】
詳細には、帯電ロール83は、像保持体79表面を一様に帯電する。この帯電ロール83による帯電は、例えば、帯電ロール83と像保持体79との間に電界を形成することによって行われる。この表面を帯電された状態にされた帯電ロール83上に、レーザー発生装置78からレーザー光が照射されることで、形成する対象の画像に応じた静電潜像が像保持体79上に形成される。各現像器85には、各現像ユニットに対応する色のトナー(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)が貯留されており、このトナーが対応する像保持体79に供給されることで、像保持体79上の静電潜像がトナーによって現像されてトナー像が形成される。像保持体79上に形成されたトナー像は、像保持体79の回転によって中間転写ベルト86に接触する領域に到達すると、中間転写ベルト86を介して設けられた一次転写ロール80によって中間転写ベルト86上に転写される。
【0070】
この一次転写ロール80による像保持体79から中間転写ベルト86へのトナー像の転写は、一次転写ロール80によって一次転写ロール80と像保持体79との間に、該像保持体79上に保持されているトナー像を構成する各トナーが中間転写ベルト86側へ移行する電界が形成されることで行われる。
【0071】
各色の現像ユニット毎に像保持体79上で現像されたトナー像は、画像情報に対応するように中間転写ベルト86の外周面上に順次重ね合わされた状態となる。この中間転写ベルト86上に転写されたトナー像は、中間転写ベルト86の搬送によってバックアップロール73と二次転写ロール75との間の領域に達する。
【0072】
ここで、画像形成装置20の底部には記録用紙をストックする給紙手段77が設けられており、記録用紙は、給紙手段77から用紙経路76を経由して2次転写部を構成するバックアップロール73と二次転写ロール75との圧接部を通過するように供給される。一次転写ロール80によって上記中間転写ベルト86上に転写されたトナー像がバックアップロール73と二次転写ロール75との圧接部に到達するタイミングで、この圧接部を記録用紙が通過することで、中間転写ベルト86上のトナー像が記録媒体に転写(2次転写)される。
【0073】
この二次転写は、バックアップロール73と二次転写ロール75との間に、これらの間を搬送される中間転写ベルト86上に転写されているトナー像を構成する各トナーが、同じくこれらの間を通過する記録媒体側へと移行する電界が形成されることで行われる。
【0074】
バックアップロール73と二次転写ロール75とによって、中間転写ベルト86からトナー像を転写された記録媒体は、さらに1対の定着ロール72の圧接部を挿通するように不図示の搬送ロールにより搬送される。そして、定着ロール72によって記録媒体上にトナー像が定着されて、記録媒体上に画像が形成されることとなる。この画像の形成された記録媒体は、不図示の搬送ロールによって搬送されて、最終的に画像形成装置20外へと排出される。
【0075】
上記構成の画像形成装置20において、本実施の形態の半導電性ロール10は、帯電ロール83、一次転写ロール80、バックアップロール73、及び二次転写ロール75(以下、総称する場合には「各ロール」と称する場合がある)として用いられる。これらの各ロールに、本実施の形態の抵抗値の抑制可能な構成とされた半導電性ロール10を用いることで、半導電性ロール10の抵抗変動が抑制され、結果的に、画像形成装置20の画質劣化が抑制されると共に、半導電性ロール10の寿命低下も抑制される。
【0076】
図4には、半導電性ロール10を、一次転写ロール80に用いた場合を示した。
【0077】
画像形成装置20の装置各部を制御するメインコントローラ22は、制御部22A、抵抗算出部22B、記憶部22Cを含んで構成されている。制御部22Aは、画像形成装置20の装置各部に信号授受可能に接続されており、画像形成装置20における上記画像形成処理を制御する。
【0078】
画像形成装置20には、一次転写ロール80、帯電ロール83、二次転写ロール75、及びバックアップロール73の各々において、転写処理時にこれらのロールの各々に転写電圧または転写電流を印加するための電圧印加部32が設けられており、上記制御部22Aに信号授受可能に接続されている装置各部には、この電圧印加部32も含まれる。
また、画像形成装置20には、半導電性ロール10を用いた各ロール(図4では一次転写ロール80)のイオン導電剤移行電極12に電圧を印加するための電圧印加部30が、各ロールに対応して設けられている。また、画像形成装置20には、半導電性ロール10として用いたロール(図4では一次転写ロール80)の各々の外部電界形成電極16に電圧を印加する電圧印加部32と外部電界形成電極16との間に、電圧印加部32によってイオン導電剤保持部材14に電圧が印加されたときの電流値、または電圧印加部32によってイオン導電剤保持部材14に電流が印加されたときの電圧値を測定するための電流測定部34が電気的に接続されている。これらの電圧印加部32、電流測定部34、及び電圧印加部30は、メインコントローラ22の制御部22Aに信号授受可能に接続されている。また、制御部22Aは、抵抗算出部22B及び記憶部22Cに信号授受可能に接続されている。
【0079】
なお、以下では、電圧印加部30及び電圧印加部32は電圧を印加するものとし、電流測定部34は電流を測定するものとする。なお、電圧印加部30及び電圧印加部32を、電流を印加するものとし、電流測定部34を、電圧を測定するものとしてもよい。
【0080】
制御部22Aが本発明の画像形成装置の制御部に相当し、電流測定部34及び抵抗算出部22Bが本発明の画像形成装置の測定手段に相当する。また、電圧印加部30が本発明の画像形成装置の第2の電圧印加手段に相当し、電圧印加部32が本発明の画像形成装置の第1の電圧印加手段に相当する。
【0081】
抵抗算出部22Bは、画像形成装置20における半導電性ロール10の設置環境における抵抗値として、システム抵抗値Rを算出する。具体的には、抵抗算出部22Bは、電圧印加部32によって外部電界形成電極16へ電圧が印加されたときに、電流測定部34によって測定された電流値に基づいて、システム抵抗値R(Ω)を算出する。
【0082】
この抵抗算出部22Bにおいて行われる、半導電性ロール10のシステム抵抗値R(Ω)の算出は、半導電性ロール10の外部電界形成電極16に電圧印加部32によって電圧Vを印加してから0.1秒後に、外部電界形成電極16と像保持体79との間に流れる電流値I(A)を電流測定部34によって測定し、式R=V/Iによって求める。
【0083】
このため、算出されたシステム抵抗値Rとは、半導電性ロール10を一次転写ロール80として用いた場合には、半導電性ロール10(一次転写ロール80)自体と、像保持体79自体と、これらの半導電性ロール10(一次転写ロール80)と像保持体79との間の領域と、を含む領域の抵抗値を示している。すなわち、半導電性ロール10(一次転写ロール80)自体と、像保持体79自体と、これらの半導電性ロール10(一次転写ロール80)と像保持体79の間の領域と、を含む領域の抵抗値が、システム抵抗値Rとして算出される。
【0084】
なお、半導電性ロール10を二次転写ロール75として用いた場合には、二次転写ロール75自体と、バックアップロール73自体と、二次転写ロール75とバックアップロール73との間の領域(すなわち、記録媒体が通過しているときには、この記録媒体も含む)と、を含む領域の抵抗値が、システム抵抗値Rとして算出されることとなる。
【0085】
記憶部22Cは、制御部22Aにおいて実行される、記録媒体に画像を形成する画像形成処理を実行するための処理プログラムや、該画像形成処理において割り込み処理される後述する抵抗調整プログラム(図5に示す処理ルーチン)を予め記憶すると共に、半導電性ロール10の抵抗値としての許容範囲である基準抵抗範囲の下限値と上限値の各々と、半導電性ロール10の抵抗値が該下限値を下回ったときに印加する電圧の極性、電圧値、及び電圧印加時間を示す低抵抗調整情報と、半導電性ロール10の抵抗値が該上限値を上回ったときに印加する電圧の極性、電圧値、及び電圧印加時間を示す高抵抗調整情報と、各種データを予め記憶する。
【0086】
この半導電性ロール10の抵抗値の許容範囲である基準抵抗範囲としては、半導電性ロール10を、帯電ロール83、一次転写ロール80、バックアップロール73、及び二次転写ロール75の各々として用いた場合に要求される抵抗値の範囲を、各適用するロールに応じて定めればよい。この要求される抵抗値の範囲とは、画像形成装置20の画像形成条件に応じて異なるが、各々のロール(帯電ロール83、一次転写ロール80、バックアップロール73、及び二次転写ロール75)に半導電性ロール10を適用したときに、各ロールにおいて画質劣化が生じない範囲の抵抗値の範囲を予め計測して定めておけばよい。
【0087】
例えば、半導電性ロール10を一次転写ロール80に適用した場合には、この基準抵抗範囲の上限値及び下限値としては、一次転写ロール80に求められる画質劣化の生じない範囲の抵抗値の範囲における上限値及び下限値が予め測定して定められる。
【0088】
また、上記記憶部22Cに予め記憶される上記低抵抗調整情報としては、半導電性ロール10を適用するロールの抵抗値が、要求される基準抵抗範囲の下限値を下回ったとき(すなわち、抵抗値が下限値より低いとき)に、抵抗値を上昇させて基準抵抗範囲内の抵抗値に戻すために必要な量のイオン導電剤を弾性層18からイオン導電剤保持部材14へ移行させるために必要な、イオン導電剤移行電極12に印加する電圧の極性、電圧値、及び電圧印加時間が予め測定して定められる。
【0089】
この弾性層18からイオン導電剤保持部材14へイオン導電剤を移行させるためにイオン導電剤移行電極12へ印加される電圧の極性は、イオン導電剤保持部材14及び弾性層18に保持されるイオン導電剤としてカチオン電荷を有するイオン導電剤を用いた場合には、マイナスの極性が定められる。
【0090】
そして、この低抵抗調整情報として定められる電圧値及び電圧印加時間は、基準抵抗範囲より低下した半導電性ロール10の抵抗値を基準抵抗範囲内に戻すために必要なイオン導電剤の量に応じて、予め測定して定めればよい。
【0091】
また、上記記憶部22Cに予め記憶される上記高抵抗調整情報としては、画像形成装置20に搭載した半導電性ロール10の抵抗値が、半導電性ロール10の搭載された箇所の各々において要求される基準抵抗範囲の下限値を上回ったとき(すなわち、抵抗値が上限値より高いとき)に、抵抗値を低くして基準抵抗範囲内の抵抗値に戻すために必要な量のイオン導電剤を、イオン導電剤保持部材14から弾性層18へ移行させるためにイオン導電剤移行電極12に印加する電圧の極性、電圧値、及び電圧印加時間が予め測定して定められる。
【0092】
このイオン導電剤保持部材14から弾性層18へイオン導電剤を移行させるためにイオン導電剤移行電極12へ印加される電圧の極性は、上記と同様に、イオン導電剤保持部材14及び弾性層18に保持されるイオン導電剤としてカチオン電荷を有するイオン導電剤を用いた場合には、プラスの極性となる。
【0093】
そして、この高抵抗調整情報として定められる電圧値及び電圧印加時間は、基準抵抗範囲より上昇した半導電性ロール10(一次転写ロール80)の抵抗値を基準抵抗範囲内に戻すために必要なイオン導電剤の量に応じて、予め測定して定めればよい。
【0094】
なお、本実施の形態では、電圧印加部30及び電圧印加部32は、電圧を印加するための電圧印加部であり、電流測定部34では、電圧印加部32によって外部電界形成電極16に電圧が印加されたときの電流値を測定し、記憶部22Cには、低抵抗調整情報及び高抵抗調整情報として、電圧の極性、電圧値、及び電圧印加時間を記憶する場合を説明する。しかし、このような形態に限られず、電圧印加部30及び電圧印加部32を、電流を印加するための電流印加部とし、電流測定部34では、電圧印加部32によって外部電界形成電極16に電流が印加されたときの電圧値を測定するものとしてもよい。そして、この場合には、記憶部22Cには、低抵抗調整情報及び高抵抗情報として、電圧に替えて、電流、すなわち、電流の極性、電流値、及び電流印加時間を記憶すればよい。
【0095】
次に、制御部22Aで実行される抵抗調整処理について、図5を用いて説明する。なお、以下では、説明を簡略化するために、半導電性ロール10を画像形成装置20の一次転写ロール80として搭載した場合を説明する。
【0096】
制御部22Aでは、画像形成装置20の図示を省略する電源スイッチが操作されることで、装置各部に電力が供給されると、上記に説明した画像形成処理を実行する。すなわち、各色現像ユニットにおいて、像保持体79が帯電ロール83によって一様に帯電され、この帯電された像保持体79上に静電潜像が形成された後にトナーによって現像されてトナー像が形成され、このトナー像が一次転写ロール80によって中間転写ベルト86上に順次転写される。そして、この中間転写ベルト86上に転写されたトナー像が、バックアップロール73及び二次転写ロール75によって記録媒体に転写され、記録媒体上に転写されたトナー像が記録媒体に定着されることで記録媒体に画像が形成される、一連の画像形成処理が実行される。
【0097】
ここで、制御部22Aでは、画像形成処理の実行中に、割り込み処理として、所定時間毎に図5に示す処理ルーチンが実行されて抵抗調整処理が実行される。この図5に示す処理ルーチンは、制御部22Aの制御による画像形成処理の実行中に、記憶部22Cに記憶されている抵抗調整プログラムを読み取ることで実行される。
【0098】
上記抵抗調整処理として、制御部22Aでは、図5に示す処理ルーチンを割り込み処理として実行してステップ102へ進む。ステップ100では、電流測定部34によって測定された電流値を読み取る。ステップ102の処理は、画像形成処理において、外部電界形成電極16にバイアス電圧の印加された状態の半導電性ロール10である一次転写ロール80に流れる電流の電流値を読み取る処理である。
【0099】
次のステップ104では、上記ステップ102で読み取った電流値と、電圧印加部32から外部電界形成電極16へ印加されたバイアス電圧の電圧値と、から一次転写ロール80の抵抗値の算出指示を示す抵抗値R算出指示信号を、抵抗算出部22Bへ出力する。
【0100】
抵抗値R算出指示信号を受け付けた抵抗算出部22Bでは、上記ステップ102で読み取られた電流値と、電圧印加部32から外部電界形成電極16へ印加されたバイアス電圧の電圧値と、から一次転写ロール80の抵抗値Rを算出する。
ここで、図4に示すように、一次転写ロール80は、外部電界形成電極16に電圧を印加されることで像保持体79との間に電界を形成することで、像保持体79上に保持されていたトナー像を中間転写ベルト86へ転写する。そして、この電流測定部34は、電圧印加部32と外部電界形成電極16との間に設けられている。このため、電流測定部34によって測定された電流値と、電圧印加部32から外部電界形成電極16へ印加された電圧の電圧値と、から算出された一次転写ロール80の抵抗値とは、外部電界形成電極16、像保持体79、及び外部電界形成電極16と像保持体79との間の抵抗の抵抗値(所謂、システム抵抗値)を示している。
【0101】
次のステップ106では、抵抗算出部22Bで算出された抵抗値Rを読取り、次のステップ108において、上記ステップ106で読み取った抵抗値Rが、記憶部22Cに記憶されている、半導電性ロール10の抵抗値としての許容範囲である基準抵抗範囲の下限値と上限値との範囲内であるか否かを判別する。
【0102】
ステップ108で肯定され、上記ステップ106で読み取った抵抗値Rが上記基準抵抗範囲内である場合には、本ルーチンを終了する。
【0103】
一方、上記ステップ108で否定され、上記ステップ106で読み取った抵抗値Rが基準抵抗の範囲外である場合には、ステップ110へ進む。
【0104】
ステップ110では、上記ステップ106で読み取った抵抗値Rが、上記基準抵抗範囲の下限値未満であるか否かを判別し、肯定され、下限値未満である場合には、ステップ112へ進む。
【0105】
ステップ112では、記憶部22Cから低抵抗調整情報を読み取り、読み取った低抵抗調整情報と、イオン導電剤を弾性層18からイオン導電剤保持部材14へ移行させて弾性層18からのイオン導電剤の吸収を指示する、イオン導電剤吸収指示信号を電圧印加部30へ出力する。
【0106】
ステップ112でイオン導電剤吸収指示信号を受け付けた電圧印加部30では、該イオン導電剤吸収指示信号に含まれる低抵抗調整情報を読み取り、該低抵抗調整情報に含まれる電圧値の電圧を、該低抵抗調整情報に含まれる電圧の極性で、該低抵抗調整情報に含まれる電圧印加時間の間継続してイオン導電剤移行電極12へ印加する。
【0107】
電圧印加部30からイオン導電剤移行電極12へ、該極性の該電圧値の電圧が該電圧印加時間印加されると、弾性層18に含有されていたイオン導電剤が外部電界形成電極16の孔16Aを通ってイオン導電剤保持部材14側へ移行し、イオン導電剤保持部材14に保持される。これによって、弾性層18からイオン導電剤の少なくとも一部がイオン導電剤保持部材14側へ吸収される。
【0108】
次のステップ114では、上記ステップ112でイオン導電剤吸収指示信号を出力してから、該イオン導電剤吸収指示信号に含まれる低抵抗調整情報の電圧印加時間を経過するまで否定判断を繰り返し、肯定されると、本ルーチンを終了する。
【0109】
上記ステップ110〜ステップ114の処理によって、基準抵抗範囲の下限値を下回った状態の一次転写ロール80において、弾性層18からイオン導電剤保持部材14側へイオン導電剤が移行することで、一次転写ロール80の抵抗値が基準抵抗範囲内に調整される。
【0110】
一方、上記ステップ110で否定されて、上記ステップ106で読み取った抵抗値Rが、上記基準抵抗範囲の下限値を超える場合には、ステップ116へ進む。
【0111】
ステップ116では、記憶部22Cから高抵抗調整情報を読み取り、読み取った高抵抗調整情報と、イオン導電剤をイオン導電剤保持部材14から弾性層18へ移行させて弾性層18へのイオン導電剤供給を指示する、イオン導電剤供給指示信号を電圧印加部30へ出力する。
【0112】
ステップ116でイオン導電剤供給指示信号を受け付けた電圧印加部30では、該イオン導電剤供給指示信号に含まれる高抵抗調整情報を読み取り、該高抵抗調整情報に含まれる電圧値の電圧を、該高抵抗調整情報に含まれる電圧の極性で、該高抵抗調整情報に含まれる電圧印加時間の間継続してイオン導電剤移行電極12へ印加する。
【0113】
電圧印加部30からイオン導電剤移行電極12へ、該極性の該電圧値の電圧が該電圧印加時間印加されると、イオン導電剤保持部材14に含有されていたイオン導電剤が外部電界形成電極16の孔16Aを通って弾性層18側へ移行する。これによって、イオン導電剤が弾性層18へ供給される。
【0114】
次のステップ118では、上記ステップ116でイオン導電剤供給指示信号を出力してから、該イオン導電剤供給指示信号に含まれる高抵抗調整情報の電圧印加時間を経過するまで否定判断を繰り返し、肯定されると、本ルーチンを終了する。
【0115】
上記ステップ110、ステップ116〜ステップ118の処理によって、基準抵抗範囲の上限値を上回った状態の一次転写ロール80において、イオン導電剤保持部材14から弾性層18へイオン導電剤が移行することで、一次転写ロール80の抵抗値が基準抵抗範囲内に調整される。
【0116】
以上説明したように、本実施の形態の画像形成装置20においては、半導電性ロール10を一次転写ロール80として搭載し、該一次転写ロール80について、上記図5を用いて説明した抵抗調整処理を割り込み処理として実行することで、一次転写ロール80の抵抗値が基準抵抗範囲内に調整される。
【0117】
このため、例えば、図6の線図42に示すように、本実施の形態の半導電性ロール10のように弾性層18へのイオン導電剤の供給または吸収を可能な構成としなかった場合には、線図42に示されるように、稼働時間の増加に伴って抵抗値が上昇して、基準抵抗範囲の上限値を超えてさらに上昇し、稼働時間Aの時点で一次転写ロール80としての寿命を示す上限抵抗であるシステム上限を超えてしまう。
一方、本実施の形態の画像形成装置20では、本実施の形態の半導電性ロール10を画像形成装置20のロール(例えば、一次転写ロール80)として搭載し、上記抵抗調整処理を行うことで、線図40に示すように、半導電性ロール10の抵抗値は基準抵抗範囲として定めた上限値を超えることはなく、該基準抵抗範囲の上限値と下限値の間の抵抗値となるように調整されることとなる。
【0118】
従って、半導電性ロール10の抵抗値の変動が抑制されることから、画像形成装置20においては画質劣化が抑制される。また、抵抗値変動による半導電性ロール10の寿命低下も抑制される。
【0119】
なお、図5に示す処理ルーチンでは、半導電性ロール10を一次転写ロール80として画像形成装置20に搭載する場合を説明したが、同様にして、一次転写ロール80、帯電ロール83、バックアップロール73、及び二次転写ロール75の内の何れか1つまたは複数について、半導電性ロール10を適用しても良い。
この場合には、記憶部22Cに、各ロールを識別する識別情報に対応づけて、上記基準抵抗範囲の上限値及び下限値を記憶すればよい。また、各ロールの識別情報に対応づけて、低抵抗調整情報、および高抵抗調整情報を予め記憶すればよい。そして、上記図5に示す処理ルーチンにおいて、ステップ102で各ロールに対応して設けられた電流測定部34の電流値測定結果から抵抗値調整対象の半導電性ロール10の抵抗値Rを算出し、調整対象の該半導電性ロール10の適用されているロールの識別情報に対応する基準抵抗範囲の上限値及び下限値、低抵抗調整情報、及び高抵抗調整情報に基づいて、上記ステップ108〜ステップ118の処理を行えばよい。
【0120】
また、半導電性ロール10を、帯電ロール83、バックアップロール73、及び二次転写ロール75の各々に適用する場合には、画像形成装置20における画像形成処理中には、電圧印加部32から外部電界形成電極16へ、各々帯電ロール83に適用した場合には像保持体79の帯電に必要な電圧、バックアップロール73及び二次転写ロール75に適用した場合には、中間転写ベルト86上のトナー像の記録媒体への転写に必要な電圧値のバイアス電圧(またはバイアス電流)を印加すればよい。
【0121】
また、各ロールに適用した半導電性ロール10のシステム抵抗値Rは、一次転写ロール80に適用した場合と同様に、電圧印加部32からイオン導電剤移行電極12へ上記バイアス電圧を印加したときの電流値の電流測定部34による測定結果と、該バイアス電圧と、から求めればよい。
このため、算出された半導電性ロール10のシステム抵抗値Rとは、半導電性ロール10を帯電ロール83に適用した場合には、帯電ロール83自体と、像保持体79自体と、これらの帯電ロール83と像保持体79との間の領域と、を含む領域の抵抗値を示すこととなる。また、半導電性ロール10をバックアップロール73及び二次転写ロール75に適用した場合には、バックアップロール73自体と、二次転写ロール75自体と、これらのバックアップロール73と二次転写ロール75との間の領域と、を含む領域の抵抗値を、半導電性ロール10のシステム抵抗値Rとして算出すればよい。
【0122】
このようにすれば、半導電性ロール10を適用した各ロール(帯電ロール83、一次転写ロール80、バックアップロール73、及び二次転写ロール75)の各々において、抵抗値の変動が抑制される。
【0123】
なお、本実施の形態では、上記抵抗調整処理は、画像形成装置20における制御部22Aの制御による画像形成処理の実行中(所謂、ジョブ中)に、割り込み処理として実行される場合を説明した。
しかし、この抵抗調整処理は、画像形成処理の実行中にのみ行われる形態に限られず、画像形成処理後(所謂、ジョブ後)、及び画像形成処理実行中(ジョブ中)及び画像形成処理後(ジョブ後)の双方において実行されるようにしてもよい。この場合には、制御部22Aにおいて、画像形成処理実行中及び画像形成処理後のタイミングを判別し、該タイミングにおいて抵抗調整処理を実行すればよい。
【0124】
なお、この画像形成処理実行中(ジョブ中)とは、詳細には、半導電性ロール10の各搭載箇所において、電圧印加部32から半導電性ロール10へ外部部材(半導電性ロール10を一次転写ロール80として搭載した場合には、外部部材は像保持体79)との間に電界を形成することで画像形成処理に関する処理を行う最中を示している。この画像形成処理に関する処理とは、半導電性ロール10を一次転写ロール80、バックアップロール73、及び二次転写ロール75として搭載した場合には、トナー像の転写処理を示し、半導電性ロール10を帯電ロール83として搭載した場合には、像保持体79の帯電処理を示している。
【0125】
この各半導電性ロール10の搭載箇所における画像形成処理実行中であるか否かの判別は、例えば、一次転写ロール80、バックアップロール73、二次転写ロール75の中間転写ベルト86や記録媒体の搬送方向上流側に外部部材上に保持されたトナー像が、これらの各ロールによる転写領域に到達したことを示すセンサを設けておいて、センサによる信号入力によって判別すればよい。
【0126】
図5では、半導電性ロール10を一次転写ロール80として適用する場合を説明するので、この場合には、画像形成装置20における画像形成処理実行中には、電圧印加部32から外部電界形成電極16へ、像保持体79上に保持されたトナー像を中間転写ベルト86側へ移行させる電圧値のバイアス電圧が印加された状態となる。
【0127】
また、上記画像形成処理実行後(ジョブ後)とは、画像形成装置20において連続して画像形成を行ってから、次の画像形成を行うときにおいて、この先に実行された画像形成処理が終了してから次の画像形成処理が行われるまでの間を示している。
【0128】
この画像形成処理実行後の判別は、例えば、画像形成装置20において連続した画像形成処理が終了したときを判断することによって可能である。
【0129】
なお、この画像形成処理実行後(ジョブ後)に提供調整処理を行う場合には、電圧印加部32から各半導電性ロール10へ、各半導電性ロール10の搭載された箇所に応じた値及び極性の電圧(転写バイアス電圧や帯電バイアス電圧)を印加した後に、図5に示す抵抗調整処理を実行し、実行後に該電圧印加を終了すればよい。
【0130】
なお、本実施の形態では、上記抵抗調整処理は、画像形成装置20における制御部22Aの制御による画像形成処理の実行中に、割り込み処理として所定時間毎に実行される場合を説明したが、該画像形成処理中(ジョブ中)において、少なくとも半導電性ロール10の適用されたロール(一次転写ロール80、帯電ロール83、バックアップロール73、及び二次転写ロール75)の各々における転写処理中に、少なくとも該割り込み処理を実行することが好ましい。
【0131】
この転写処理とは、具体的には、画像形成処理において各ロールで行われる処理であって、具体的には、各ロールと外部部材との間に画像形成処理に必要な電界が形成される処理を示しており、例えば二次転写ロール75の場合は、トナー像の転写に必要な電界が形成されトナー像の転写が行われる処理を示している。
【0132】
例えば、半導電性ロール10を一次転写ロール80に適用した場合には、この転写処理とは、一次転写ロール80の外部電界形成電極16にバイアス電圧が印加されて、一次転写ロール80と外部部材としての像保持体79との間に電界が形成され、像保持体79上のトナー像が中間転写ベルト86側へ転写される処理である。
また、半導電性ロール10を二次転写ロール75に適用した場合には、この転写処理とは、二次転写ロール75の外部電界形成電極16にバイアス電圧が印加されて、二次転写ロール75とバックアップロール73と間に電界が形成され、中間転写ベルト86上のトナー像が記録媒体へ転写される処理である。
なお、帯電ロール83の場合には、像保持体79を帯電させるための電界が帯電ロール83によって形成される帯電処理を示している。
【0133】
このようにすれば、画像形成処理において各ロールで画像形成処理に必要な電界が形成されるときにのみ、少なくとも上記抵抗調整処理が行われることとなるため、省電力化が図られる。
【0134】
なお、上記実施の形態では、本実施の形態の半導電性ロール10を搭載する画像形成装置20として、カラー画像を形成するタンデム型の画像形成装置を用いる場合を説明するが、モノクロ画像を形成する画像形成装置において、像保持体を帯電する帯電ロールや、像保持体上に形成されたトナー像を記録媒体へ転写する転写ロールに適用してもよいことはいうまでもない。
【実施例】
【0135】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」「%」はすべて「質量部」「質量%」を意味する。
【0136】
<実施例1>
(半導電性ロールの作製)
外径Φ12mm×内径Φ8mmのSUM+Niメッキ(硫黄快削鋼にニッケルメッキを施したもの)円筒状部材を用意し、この外周に、Φ0.5mmの孔16Aを1.0mmのピッチで設けることによって、外部電界形成電極16を作製した。
【0137】
上記作製した円筒状の外部電界形成電極16の内周側に、イオン導電剤移行電極12として、外径Φ2mmのSUM+Niメッキの円柱状部材を配置し、これらを円筒形の射出成形用の金型の中に予め挿入し、四級アンモニウム塩(富士純薬株式会社製、商品名テトラメチルアンモニウムクロライド)を50%充填させたEPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム)を前記金型に射出した。
【0138】
上記イオン導電剤保持部材14としての、上記四級アンモニウム塩の充填されたEPDMゴム層は、EPDM(住友化学工業製、エスプレンE670F)100質量部、四級アンモニウム塩(富士純薬(株)社製、商品名テトラメチルアンモニウムクロライド)109.5質量部、ステアリン酸(日本油脂製、つばき)1質量部、亜鉛華(正同化学製、酸化亜鉛2種)5質量部、の配合からなる組成物をニーダーにて素練りした後、さらに硫黄(鶴見化学工業製、粉末硫黄)1.5質量部、加硫促進剤(大内新興化学工業製、ノクセラーTET)2質量部を加え、オープンロールにて練ることでシートを形成し、これをリボン状に予備成形し、それを上記射出成形機に投入する。
【0139】
次に、上記イオン導電剤保持部材14の外周側に、上記四級アンモニウム塩の添加により、体積抵抗率の常用対数値を7.2logΩcmに抵抗調整されたウレタン発泡材の弾性層18を成形した後に、外径Φ18に研磨した。
【0140】
この弾性層18の成形方法として、具体的には、下記方法で行った。
−弾性層の形成−
・ポリエステルポリオール(三洋化成製、サンエスターNO.22) 70質量部
・ポリエステルポリオール(三洋化成製、P−L2100) 20質量部
・イソシアネート(三菱化成ダウ製、PAPI−135) 35質量部
四級アンモニウム塩(富士純薬株式会社製、テトラメチルアンモニウムクロライド)
0.7質量部
整泡剤(東レ・ダウコーニング製、SZ−1327) 2質量部
【0141】
上記混合物を内径Φ20mmの円筒形な金型の中に予めΦ11のSUM+Niメッキ(硫黄快削鋼にニッケルメッキを施したもの)された円筒部材(ダミーのシャフト)を設け、前記金型を注入した。その後、100℃、30分で硬化させ、更にその後、80℃、60分で二次硬化させた。その後、脱型および円筒部材(ダミーシャフト)を抜き、弾性層18を得る。この弾性層18は、内径Φ11mm、外径Φ20mmのチューブ状のものであり、この内径Φ11mm部に、イオン導電剤移行電極12とイオン導電剤保持部材14と外部電界形成電極16が一体になったものを挿入し、それを、研削盤にて砥石研磨を行い、外径が18mmの半導電性ロール10を得た。なお、得られた弾性層18の体積抵抗値の常用対数値を測定したところ、22℃、55%RH環境下で7.2logΩであった。また、弾性層18のアスカーC硬度は30°であった。
また、作製した半導電性ロール10の抵抗値を測定したところ、1×10Ω以上1×1011Ω以下であり、半導電性を示していた。
【0142】
本実施例で作製した半導電性ロール10を、富士ゼロックス株式会社製のDocu Center−III C3300の二次転写ロールとして搭載すると共に、上記抵抗調整プログラム(図5に示す処理ルーチン)を記憶部22Cに予め記憶し、二次転写ロールにおいて中間転写ベルトから記録媒体へのトナー像の転写が行われるときに、上記図5に示す処理ルーチンの割り込み処理がなされるように改造した。
【0143】
なお、記憶部22Cには、さらに、半導電性ロール10の抵抗値の許容範囲である基準抵抗値の上限値として800MΩを示す情報を記憶した。また、半導電性ロール10の抵抗値が該上限値を上回ったときに印加する電圧の極性、電圧値、及び電圧印加時間を示す高抵抗調整情報として、二次転写ロールによってトナー像を二次転写される領域を記録媒体が通過している間(ジョブ中における転写処理中)には、50μAの電流を、該記録媒体が二次転写領域に到達してから通過し終わるまでの時間、プラス極性で印加し、該二次転写される領域を記録媒体が通過した後で且つ次の転写を行う前(ジョブ終了後)には、50μAの電流を60秒間プラス極性で印加することを示す、高抵抗調整情報を記憶した。
【0144】
また、記憶部22Cには、さらに、半導電性ロール10の抵抗値の許容範囲である基準抵抗値の下限値として10MΩを示す情報を記憶した。また、半導電性ロール10の抵抗値が該下限値を下回ったときに印加する電圧の極性、電圧値、及び電圧印加時間を示す低抵抗調整情報として、二次転写ロールによってトナー像を二次転写される領域を記録媒体が通過している間(ジョブ中における転写処理中)には、50μAの電流を該記録媒体が二次転写領域に到達してから通過し終わるまでの時間マイナス極性で印加し、ジョブ終了後には、50μAの電流を60秒間マイナス極性で印加することを示す、高抵抗調整情報を記憶した。
【0145】
これによって、既設の転写制御と別に、システム抵抗値Rである、バックアップロール自体と、中間体転写ベルト自体と、二次転写ロール自体と、これらのバックアップロール〜二次転写ロール間と、を含む領域のシステム抵抗値Rが800MΩを超えたときには、ジョブ中における転写処理中及びジョブ終了後60秒間の間に、イオン導電剤移行電極12から50μAの電流がプラスの極性で印可されるようにし、また、このシステム抵抗値Rが10MΩを下回ったときには、ジョブ中における転写処理中及びジョブ終了後60秒間の間に、イオン導電剤移行電極12から50μAの電流がマイナスの極性で印可されるようにした。
【0146】
―評価―
この状態の画像形成装置について、20℃、10%RHの環境下で、プロセススピード260mm/secで、A4用紙(坪量:200g/m)を縦送り(長辺方向で移動させる送り)にて、30%のベタ画像の連続書込を行い、半導電性ロール10の使用限度を測定したところ、800kpv(800×10枚)であった。評価結果を表1に示した。また、800kpv形成までの間に、転写不良はみられなかった。
【0147】
なお、この使用限度の評価は、転写効率が70%となったときを、半導電性ロール10が使用限度に到った時期、すなわち寿命に到達したときであるとした。
【0148】
<実施例2>
上記実施例1では、実施例1で調整した半導電性ロール10を富士ゼロックス株式会社製のDocu Center−III C3300の二次転写ロールとして搭載し、図5に示す抵抗調整処理として、ジョブ中における転写処理中と、ジョブ後と、の双方において、イオン導電剤移行電極12に電流を印加した。本実施例2では、ジョブ中にのみイオン導電剤移行電極12に電流を印加し、ジョブ後にはイオン導電剤移行電極12に電流を印加しない以外は、実施例1と同じ半導電性ロール10を用いて、実施例1と同じ評価を行った。
【0149】
すなわち、実施例2では、記憶部22Cに、半導電性ロール10の抵抗値の許容範囲である基準抵抗値の上限値として800MΩを示す情報を記憶した。また、半導電性ロール10の抵抗値が該上限値を上回ったときに印加する電圧の極性、電圧値、及び電圧印加時間を示す高抵抗調整情報として、ジョブ中における転写処理中に、50μAの電流を、該記録媒体が二次転写領域に到達してから通過し終わるまでの時間、プラス極性で印加することを示す、高抵抗調整情報を記憶した。
【0150】
また、記憶部22Cには、さらに、半導電性ロール10の抵抗値の許容範囲である基準抵抗値の下限値として10MΩを示す情報を記憶した。また、半導電性ロール10の抵抗値が該下限値を下回ったときに印加する電圧の極性、電圧値、及び電圧印加時間を示す低抵抗調整情報として、二次転写ロールによってトナー像を二次転写される領域を記録媒体が通過している間(ジョブ中における転写処理中)に、50μAの電流を、該記録媒体が二次転写領域に到達してから通過し終わるまでの時間マイナス極性で印加することを示す、高抵抗調整情報を記憶した。
【0151】
これによって、既設の転写制御と別に、システム抵抗値Rである、バックアップロール自体と、中間体転写ベルト自体と、二次転写ロール自体と、これらのバックアップロール〜二次転写ロール間と、を含む領域のシステム抵抗値Rが800MΩを超えたときには、ジョブ中における転写処理中に、イオン導電剤移行電極12から50μAの電流がプラスの極性で印可されるようにし、また、このシステム抵抗値Rが10MΩを下回ったときには、ジョブ中における転写処理中に、イオン導電剤移行電極12から50μAの電流がマイナスの極性で印可されるようにした。
【0152】
この状態の画像形成装置について、実施例1と同じ方法を用いて画像の連続書込を行い、半導電性ロール10の使用限度を実施例1と同じ評価方法を用いて測定したところ、500kpv(500×10枚)であった。また、500kpv形成までの間に、転写不良はみられなかった。評価結果を表1に示した。
【0153】
<実施例3>
上記実施例1では、実施例1で調整した半導電性ロール10を富士ゼロックス株式会社製のDocu Center−III C3300の二次転写ロールとして搭載し、図5に示す抵抗調整処理として、ジョブ中における転写処理中と、ジョブ後と、の双方において、イオン導電剤移行電極12に電流を印加した。本実施例3では、ジョブ後にのみイオン導電剤移行電極12に電流を印加し、ジョブ中にはイオン導電剤移行電極12に電流を印加しない以外は、実施例1と同じ半導電性ロール10を用いて、実施例1と同じ評価を行った。
【0154】
すなわち、実施例3では、記憶部22Cに、半導電性ロール10の抵抗値の許容範囲である基準抵抗値の上限値として800MΩを示す情報を記憶した。また、半導電性ロール10の抵抗値が該上限値を上回ったときに印加する電圧の極性、電圧値、及び電圧印加時間を示す高抵抗調整情報として、二次転写ロールによってトナー像を二次転写される領域を記録媒体が通過した後(ジョブ後)に、50μAの電流を60秒間、プラス極性で印加することを示す、高抵抗調整情報を記憶した。
【0155】
また、記憶部22Cには、さらに、半導電性ロール10の抵抗値の許容範囲である基準抵抗値の下限値として10MΩを示す情報を記憶した。また、半導電性ロール10の抵抗値が該下限値を下回ったときに印加する電圧の極性、電圧値、及び電圧印加時間を示す低抵抗調整情報として、二次転写ロールによってトナー像を二次転写される領域を記録媒体が通過した後(ジョブ後)に、50μAの電流を60秒間マイナス極性で印加することを示す、高抵抗調整情報を記憶した。
【0156】
これによって、既設の転写制御と別に、システム抵抗値Rである、バックアップロール自体と、中間体転写ベルト自体と、二次転写ロール自体と、これらのバックアップロール〜二次転写ロール間と、を含む領域のシステム抵抗値Rが800MΩを超えたときには、ジョブ後に、イオン導電剤移行電極12から50μAの電流がプラスの極性で60秒間印可されるようにし、また、このシステム抵抗値Rが10MΩを下回ったときには、ジョブ後に、イオン導電剤移行電極12から50μAの電流がマイナスの極性で60秒間印可されるようにした。
【0157】
この状態の画像形成装置について、実施例1と同じ方法を用いて画像の連続書込を行い、半導電性ロール10の使用限度を実施例1と同じ評価方法を用いて測定したところ、500kpv(500×10枚)であった。また、500kpv形成までの間に、転写不良はみられなかった。評価結果を表1に示した。
【0158】
<実施例4>
実施例1において用いた外部電界形成電極16に替えて、外径Φ12mm×内径Φ10mmのSUM+Niメッキ(硫黄快削鋼にニッケルメッキを施したもの)円筒状部材の外周に、Φ0.5mmの孔16Aを1.0mmのピッチで設けることによって作製した外部電界形成電極16を用いた以外は、実施例1と同じ材料構成及び同じ製法にて半導電性ロール10を調整し、調整した半導電性ロール10について実施例1と同じ方法を用いて評価を行った。実施例4における半導電性ロール10の使用限度を実施例1と同じ評価方法を用いて測定したところ、800kpv(800×10枚)以上で使用可能であることが確認された。
しかし、90万枚以上形成時において、二次転写ロールとしての半導電性ロール10の転写ニップ時(バックアップロールとの間で記録媒体を挟んで搬送したとき)に撓みが観察され、許容範囲内であるが、転写不良が発生した。これは、外部電界形成電極16の厚みが実施例1に比べて薄いためと考えられる。評価結果を表1に示した。
【0159】
<実施例5>
実施例1において用いた外部電界形成電極16に替えて、外径Φ12mm×内径Φ11.9mmのSUM+Niメッキ(硫黄快削鋼にニッケルメッキを施したもの)円筒状部材の外周に、Φ0.5mmの孔16Aを1.0mmのピッチで設けることによって作製した外部電界形成電極16を用いた。
【0160】
また、実施例1において用いたイオン導電剤移行電極12に替えて、外径Φ10mmのSUM+Niメッキ円筒状部材を用いた以外は、実施例1と同じ材料構成及び同じ製法にて半導電性ロール10を調整し、調整した半導電性ロール10について実施例1と同じ方法を用いて評価を行った。実施例5における半導電性ロール10の使用限度を実施例1と同じ評価方法を用いて測定したところ、300kpv(300×10枚)で使用可能であることが確認された。実施例1〜3に比べて、使用限度が減少した理由は、イオン導電剤保持部材14の厚みが実施例1〜3に比べて小さいためと考えられる。
なお、本実施例5では、上記300kpvの画像形成時において、二次転写ロールとしての半導電性ロール10の転写ニップ時(バックアップロールとの間で記録媒体を挟んで搬送したとき)に撓みが観察され、許容範囲内であるが、転写不良が発生した。これは、本実施例5で用いた半導電性ロール10のイオン導電剤移行電極12の外径Φ10mmであり、実施例1〜4で用いた半導電性ロール10のイオン導電剤移行電極12の外径外径Φ2mmより太いためと考えられる。
【0161】
<実施例6>
上記実施例1では、実施例1で調整した半導電性ロール10を富士ゼロックス株式会社製のDocu Center−III C3300の二次転写ロールとして搭載し、図5に示す抵抗調整処理として、ジョブ中における転写処理中と、ジョブ後(記録媒体が該二次転写される領域を通過した後)60秒間と、の双方において、イオン導電剤移行電極12に50μAの電流を印加した。
本実施例6では、ジョブ中における転写処理中と、ジョブ後30間と、の双方において、イオン導電剤移行電極12に3μAの電流を印加した以外は、実施例1と同じ半導電性ロール10を用いて、実施例1と同じ評価を行った。
【0162】
すなわち、実施例6では、記憶部22Cに、半導電性ロール10の抵抗値の許容範囲である基準抵抗値の上限値として800MΩを示す情報を記憶した。また、半導電性ロール10の抵抗値が該上限値を上回ったときに印加する電圧の極性、電圧値、及び電圧印加時間を示す高抵抗調整情報として、ジョブ中における転写処理中には、30μAの電流を、該記録媒体が二次転写領域に到達してから通過し終わるまでの時間、プラス極性で印加し、該二次転写される領域を記録媒体が通過した後(ジョブ終了後)には、30μAの電流を30秒間プラス極性で印加することを示す、高抵抗調整情報を記憶した。
【0163】
また、記憶部22Cには、さらに、半導電性ロール10の抵抗値の許容範囲である基準抵抗値の下限値として10MΩを示す情報を記憶した。また、半導電性ロール10の抵抗値が該下限値を下回ったときに印加する電圧の極性、電圧値、及び電圧印加時間を示す低抵抗調整情報として、二次転写ロールによってトナー像を二次転写される領域を記録媒体が通過している間(ジョブ中における転写処理中)には、30μAの電流を、該記録媒体が二次転写領域に到達してから通過し終わるまでの時間マイナス極性で印加し、該二次転写される領域を記録媒体が通過した後(ジョブ終了後)には、30μAの電流を30秒間プラス極性で印加することを示す、高抵抗調整情報を記憶した。
【0164】
これによって、既設の転写制御と別に、システム抵抗値Rである、バックアップロール自体と、中間体転写ベルト自体と、二次転写ロール自体と、これらのバックアップロール〜二次転写ロール間と、を含む領域のシステム抵抗値Rが800MΩを超えたときには、ジョブ中における転写処理中及びジョブ終了後60秒間の間に、イオン導電剤移行電極12から30μAの電流がプラスの極性で印可されるようにし、また、このシステム抵抗値Rが10MΩを下回ったときには、ジョブ中における転写処理中及びジョブ終了後60秒間の間に、イオン導電剤移行電極12から30μAの電流がマイナスの極性で印可されるようにした。
【0165】
この状態の画像形成装置について、実施例1と同じ方法を用いて画像の連続書込を行い、半導電性ロール10の使用限度を実施例1と同じ評価方法を用いて測定したところ、400kpv(400×10枚)であった。また、400kpv形成までの間に、転写不良はみられなかった。評価結果を表1に示した。
こように、実施例1に比べて使用限度が小さくなったのは、イオン導電剤移行電極12に印加する電流値及び電流印加時間が実施例1に比べて短かったためと考えられる。
【0166】
<実施例7>
実施例1では、イオン導電剤移行電極12及びイオン導電剤保持部材14を、外部電界形成電極16の内周側に設けた構成としたが、本実施例7では、イオン導電剤移行電極12及びイオン導電剤保持部材14を、半導電性ロール10と別体として設けて、イオン導電剤保持部材14の外周を弾性層18の外周面に接触配置し、実施例1と同じ割り込み処理を行い、実施例1と同じ評価を行った。
【0167】
本実施例7では、半導電性ロール10を下記方法にて作成した。
(半導電性ロールの作製)
本実施例7の半導電性ロール10においては、外部電界形成電極として、外径Φ2mmのSUM+Niメッキの円柱状部材を用意した。そして、この外部電界形成電極の外周側に、実施例1で用いた四級アンモニウム塩の添加により、体積抵抗率の常用対数値を7.2logΩcmに抵抗調整されたウレタン発泡材の弾性層を成形した後に、外径Φ18mmに研磨した。弾性層の成形方法としては、実施例1と同じ方法を用いた。これによって、半導電性ロール10を作製した。なお、得られた弾性層の体積抵抗値の常用対数値を測定したところ、22℃、55%RH環境下で7.2logΩであった。また、弾性層のアスカーC硬度は30°であった。
【0168】
次に、この半導電性ロール10へイオン導電剤を供給する部材として、まず、イオン導電剤移行電極12として、外径Φ2mmのSUM+Niメッキの円柱状部材を用意し、その外周に、イオン導電剤保持部材14として実施例1で用いた四級アンモニウム塩を50%充填させたEPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム)層を設けて、外径Φ8mmのロールを形成した。このEPDMゴム層の形成は、実施例1と同様に行った。
【0169】
そして、上記作製した半導電性ロール10を、富士ゼロックス株式会社製のDocu Center−III C3300の二次転写ロールとして搭載し、この半導電性ロール10の外周面に、上記調整した半導電性ロール10へイオン導電剤を供給する部材の外周面を接触配置させた。また、上記抵抗調整プログラム(図5に示す処理ルーチン)を記憶部22Cに予め記憶し、二次転写ロールにおいて中間転写ベルトから記録媒体へのトナー像の転写が行われるときに、上記図5に示す処理ルーチンの割り込み処理がなされるように改造した。
【0170】
なお、記憶部22Cには、実施例1と同じ情報を記憶した。これによって、既設の転写制御と別に、システム抵抗値Rである、バックアップロール自体と、中間体転写ベルト自体と、二次転写ロール自体と、これらのバックアップロール〜二次転写ロール間と、を含む領域のシステム抵抗値Rが800MΩを超えたときには、ジョブ中における転写処理中及びジョブ終了後60秒間の間に、イオン導電剤移行電極から50μAの電流がプラスの極性で印可されるようにし、また、このシステム抵抗値Rが10MΩを下回ったときには、ジョブ中における転写処理中及びジョブ終了後60秒間の間に、イオン導電剤移行電極から50μAの電流がマイナスの極性で印可されるようにした。
【0171】
この状態の画像形成装置について、実施例1と同じ評価方法を用いて評価を行ったところ、使用限度は400kpv(400×10枚)であった。評価結果を表1に示した。
【0172】
<比較例1>
実施例1において用いた半導電性ロール10に替えて、下記構成の半導電性ロール10を用い、該半導電性ロール10を、富士ゼロックス株式会社製のDocu Center−III C3300の二次転写ロールとして搭載し、既設の転写制御は行うが、実施例1で行った図5に示す割り込み処理については行わなかった以外は、実施例1と同じ評価方法を用いて評価を行った。
【0173】
本比較例1の半導電性ロール10においては、外部電界形成電極として、外径Φ2mmのSUM+Niメッキの円柱状部材を用意した。そして、この外部電界形成電極の外周側に、実施例1で用いた四級アンモニウム塩の添加により、体積抵抗率の常用対数値を7.2logΩcmに抵抗調整されたウレタン発泡材の弾性層を成形した後に、外径Φ18に研磨した。弾性層の成形方法としては、実施例1と同じ方法を用いた。
【0174】
本比較例1の画像形成装置について、実施例1と同じ方法を用いて画像の連続書込を行い、半導電性ロール10の使用限度を実施例1と同じ評価方法を用いて測定したところ、200kpv(200×10枚)であった。評価結果を表1に示した。
【0175】
【表1】

【0176】
表1に示されるように、抵抗調整処理を行った実施例1〜7の画像形成装置においては、抵抗調整処理を行わなかった比較例1に比べて、使用限度が長く寿命低下が抑制されていることが分かる。これは、実施例1〜7では、半導電性ロール10の抵抗値が調整されることで、抵抗変動が抑制されたことから、結果的に使用限度の向上が図られたためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本実施の形態の半導電性ロールの一例を示す断面図である。
【図2】本実施の形態の半導電性ロールの一例を示す断面図である。
【図3】本実施の形態の半導電性ロールが搭載される画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図4】本実施の形態の半導電性ロールを1次転写ロールとして画像形成装置に搭載した場合を示す模式図である。
【図5】本実施の形態の画像形成装置の制御部で実行される抵抗調整処理を示すフローチャートである。
【図6】従来の半導電性ロールを用いた場合、及び本実施の形態の半導電性ロールを用いた場合、の双方について、画像形成装置の稼働時間と抵抗値との関係を示す線図である。
【符号の説明】
【0178】
10 半導電性ロール
12 イオン導電剤移行電極
14 イオン導電剤保持部材
16 外部電界形成電極
18 弾性層
20 画像形成装置
22A 制御部
30 電圧印加部
32 電圧印加部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極部材と、
前記第1の電極部材の外周側に設けられイオン導電剤を含有し弾性を有する弾性層と、
前記弾性層に接触し前記イオン導電剤を予め保持した保持部材と、
前記保持部材に接触する第2の電極部材と、
を備えた半導電性ロール。
【請求項2】
前記保持部材は、前記第2の電極部材の外周側に層状に設けられ、
前記第1の電極部材は、筒状であって外周面に前記イオン導電剤が厚み方向に通過する孔を有し、内周面側に前記保持部材が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の半導電性ロール。
【請求項3】
少なくとも像保持体と、該像保持体表面を帯電する帯電ロールと、前記像保持体表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体表面に形成された潜像をトナー像として現像する現像手段と、該トナー像を記録媒体に転写する半導電性ロールとを備え、前記半導電性ロール及び前記帯電ロールの少なくとも一方が、請求項1または請求項2に記載の半導電性ロールであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
中間転写体を備え、
前記半導電性ロールは、前記像保持体表面から前記中間転写体表面にトナー像を一次転写する一次転写ロールと、
前記中間転写体表面に一次転写されたトナー像を前記記録媒体に転写する二次転写ロールと、前記二次転写ロールに対向して設けられる対向ロールと、を含み、
前記一次転写ロール、前記二次転写ロール及び前記対向ロールの少なくとも一つが請求項1または請求項2に記載の半導電性ロールであることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の電極部材へ電圧を印加する第1の電圧印加手段と、
前記第2の電極部材へ電圧を印加する第2の電圧印加手段と、
前記第1の電圧印加手段によって前記第1の電極部材へ電圧が印加されたときの少なくとも請求項1または請求項2に記載の半導電性ロールの抵抗を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された抵抗値が予め定めた基準抵抗範囲内を維持するように、前記保持部材から前記弾性層へ前記イオン導電剤を移行、または前記弾性層から前記保持部材へ前記イオン導電剤を移行させるように、前記第2の電圧印加手段を制御する制御手段と、
を備えた請求項3または請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、画像形成装置における画像形成処理中、及び画像形成処理後の少なくとも一方において、前記測定手段によって測定された抵抗値が予め定めた基準抵抗範囲内を維持するように、前記保持部材から前記弾性層へ前記イオン導電剤を移行、または前記弾性層から前記保持部材へ前記イオン導電剤を移行させるように、前記第2の電圧印加手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1の電極部材へ電圧を印加する第1の電圧印加手段と、
前記第2の電極部材へ電圧を印加する第2の電圧印加手段と、
前記第1の電圧印加手段によって前記第1の電極部材へ電圧が印加されたときの少なくとも請求項1または請求項2に記載の半導電性ロールの抵抗を測定する測定手段と、
前記測定手段によって測定された抵抗値に応じて、前記第2の電圧印加手段を制御する制御手段と、
を備えた請求項3または請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、画像形成装置における画像形成処理中、及び画像形成処理後の少なくとも一方において、前記測定手段によって測定された抵抗値に応じて、前記保持部材から前記弾性層へ前記イオン導電剤を移行、または前記弾性層から前記保持部材へ前記イオン導電剤を移行させるように、前記第2の電圧印加手段を制御することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。

【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−186027(P2010−186027A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29830(P2009−29830)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】